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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092119
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/35 20060101AFI20240701BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20240701BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20240701BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
A61K8/35
A61Q11/00
A61K8/25
A61K8/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207825
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】二木 美咲
(72)【発明者】
【氏名】坂本 里絵
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB292
4C083AB322
4C083AB371
4C083AB372
4C083AB441
4C083AB442
4C083AC111
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC131
4C083AC132
4C083AC302
4C083AD202
4C083AD302
4C083AD352
4C083AD551
4C083AD552
4C083CC41
4C083DD17
4C083DD23
4C083DD27
4C083EE01
(57)【要約】
【課題】ヒノキチオールと特定の粘土鉱物粉末とを含有する口腔用組成物に関して、黒粒の発生を抑制する。
【解決手段】口腔用組成物は、(A)ヒノキチオールと、(B)アルミニウム原子を含有する粘土鉱物粉末と、(C)多価アルコールと、を含有している。口腔用組成物は、(A)ヒノキチオールの含有量に対する(C)多価アルコールの含有量の質量比〔(C)/(A)〕が700以上である。さらに、口腔用組成物は、(A)ヒノキチオールの含有量及び(B)アルミニウム原子を含有する粘土鉱物粉末の含有量の合計に対する(C)多価アルコールの含有量の質量比〔(C)/{(A)+(B)}〕が7.0以上である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ヒノキチオールと、
(B)アルミニウム原子を含有する粘土鉱物粉末と、
(C)多価アルコールと、を含有し、
前記(A)ヒノキチオールの含有量に対する前記(C)多価アルコールの含有量の質量比〔(C)/(A)〕が700以上であり、且つ、
前記(A)ヒノキチオールの含有量及び前記(B)アルミニウム原子を含有する粘土鉱物粉末の含有量の合計に対する前記(C)多価アルコールの含有量の質量比〔(C)/{(A)+(B)}〕が7.0以上である
口腔用組成物。
【請求項2】
前記(C)多価アルコールは、グリセリン、ソルビット、プロピレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも一種である
請求項1に記載の口腔用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
天然由来の抗菌剤であるヒノキチオールを口腔用組成物に配合することが行われている。こうしたヒノキチオールは、金属イオンへの結合によって錯体を形成することで変色を引き起こすことが知られている。特許文献1には、ヒノキチオールとキレート剤とを組み合わせて配合した口腔用組成物が開示されている。ヒノキチオールとキレート剤とを組み合わせて配合することによって変色を抑制している。
【0003】
また、粘土鉱物を配合した口腔用の組成物が知られている。たとえば特許文献2には、スメクタイト族粘土鉱物を配合した歯磨剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-150155号公報
【特許文献2】特開2022-59956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本件発明者は、ヒノキチオールと特定の粘土鉱物とを組み合わせた組成物を調製したところ、当該組成物を55℃で放置した際に、組成物の変色とは異なる現象として、肉眼で見える黒い粒状の物質(以下「黒粒」という。)が多数発生することを確認した。
【0006】
ヒノキチオールと特定の粘土鉱物とを組み合わせた口腔用組成物において、経時変化による黒粒の発生を抑制することによって、口腔用組成物の外観を良好な状態に維持することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための口腔用組成物は、(A)ヒノキチオールと、(B)アルミニウム原子を含有する粘土鉱物粉末と、(C)多価アルコールと、を含有し、前記(A)ヒノキチオールの含有量に対する前記(C)多価アルコールの含有量の質量比〔(C)/(A)〕が700以上であり、且つ、前記(A)ヒノキチオールの含有量及び前記(B)アルミニウム原子を含有する粘土鉱物粉末の含有量の合計に対する前記(C)多価アルコールの含有量の質量比〔(C)/{(A)+(B)}〕が7.0以上であることを要旨とする。
【0008】
上記口腔用組成物では、前記(C)多価アルコールは、グリセリン、ソルビット、プロピレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の口腔用組成物によれば、黒粒の発生を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、口腔用組成物の一実施形態について説明する。
本実施形態の口腔用組成物は、(A)ヒノキチオールと、(B)アルミニウム原子を含有する粘土鉱物粉末と、(C)多価アルコールと、を特定の質量比で含有している。口腔用組成物は、(A)ヒノキチオールの含有量に対する(C)多価アルコールの含有量の質量比〔(C)/(A)〕が700以上である。さらに、口腔用組成物は、(A)ヒノキチオールの含有量及び(B)アルミニウム原子を含有する粘土鉱物粉末の含有量の合計に対する(C)多価アルコールの含有量の質量比〔(C)/{(A)+(B)}〕が7.0以上である。
【0011】
<(A)ヒノキチオール>
ヒノキチオールは、タイワンヒノキ、青森ヒバ等の天然樹木に含まれる成分である。口腔用組成物が含有するヒノキチオールとしては、上記天然樹木から公知の方法によって抽出、精製したヒノキチオールを採用することができる。口腔用組成物が含有するヒノキチオールは、公知の方法によって合成したヒノキチオールを採用してもよい。ヒノキチオールは、市販品を用いることができる。
【0012】
口腔用組成物におけるヒノキチオールの含有量は、上記特定の質量比を満たしている範囲であれば特に限定されないが、たとえば0.001質量%以上0.2質量%以下である。以下では、口腔用組成物における各成分の含有量について「質量%」を「%」に省略して表記することがある。上記含有量の上限値は、0.1%であることが好ましく、より好ましくは0.05%である。上記含有量の下限値は、0.01%であることが好ましく、より好ましくは0.02%である。当該範囲の上限値又は下限値は、たとえば0.005、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、又は0.1%であってもよい。
【0013】
<(B)アルミニウム原子を含有する粘土鉱物粉末>
口腔用組成物が含有する、アルミニウム原子を含有する粘土鉱物粉末は、特定の粘土鉱物の粉末である。アルミニウム原子を含有する粘土鉱物粉末は、市販品を用いることができる。
【0014】
アルミニウム原子を含有する特定の粘土鉱物としては、たとえば、カオリン族粘土鉱物、スメクタイト族粘土鉱物、バーミキュライト族粘土鉱物、雲母族粘土鉱物、緑泥石族粘土鉱物等が挙げられる。
【0015】
口腔用組成物に採用できる粘土鉱物の具体例としては、たとえば、カオリン、モンモリロナイト、ベントナイト、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、マイカ、セリサイト等が挙げられる。
【0016】
口腔用組成物は、上記粘土鉱物より選ばれる一種の粘土鉱物の粉末を単独で含有していてもよいし、二種以上の粘土鉱物の粉末を組み合わせて含有していてもよい。
口腔用組成物では、上記粘土鉱物のうち、カオリン族粘土鉱物及びスメクタイト族粘土鉱物からなる群より選ばれる少なくとも一種の粘土鉱物の粉末を用いることが好ましい。より好ましくは、カオリン族粘土鉱物のカオリン、及びスメクタイト族粘土鉱物のモンモリロナイトのうち少なくとも一種である。
【0017】
口腔用組成物におけるアルミニウム原子を含有する粘土鉱物粉末の含有量は、上記特定の質量比を満たしている範囲であれば特に限定されないが、たとえば0.5%以上10%以下である。上記含有量の上限値は、8%であることが好ましく、より好ましくは6%である。上記含有量の下限値は、1%であることが好ましく、より好ましくは2%である。当該範囲の上限値又は下限値は、たとえば1、2、3、4、5、6、7、8、又は9%であってもよい。
【0018】
アルミニウム原子を含有する粘土鉱物粉末の粒子径は特に制限されない。アルミニウム原子を含有する粘土鉱物粉末の粒子径は、例えば、メディアン径(D50)が、50nm以上200μm以下であることが好ましい。メディアン径(D50)の下限値は、0.1μmであることがより好ましく、0.2μmであることがさらに好ましい。メディアン径(D50)の上限値は、150μmであることがより好ましく、100μmであることがさらに好ましい。メディアン径(D50)は、粘土鉱物粉末の粒度分布における中央値の粒子径を意味する。粒度分布の測定方法は特に制限されない。例えばレーザ回折式粒度分布測定装置等の公知の装置を用いて測定することができる。
【0019】
<(C)多価アルコール>
口腔用組成物に採用できる多価アルコールとしては、特に限定されないが、たとえばグリセリン、ソルビット(ソルビトール)、プロピレングリコール、プロパンジオール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。多価アルコールは、市販品を用いることができる。
【0020】
口腔用組成物は、上記多価アルコールより選ばれる一種の多価アルコールを単独で含有していてもよいし、二種以上の多価アルコールを組み合わせて含有していてもよい。
口腔用組成物が含有する多価アルコールとしては、グリセリン、ソルビット、プロピレングリコールなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0021】
口腔用組成物における多価アルコールの含有量は、上記特定の質量比を満たしている範囲であれば特に限定されないが、たとえば20%以上90%以下である。上記含有量の上限値は、70%であることが好ましく、より好ましくは50%である。上記含有量の下限値は、30%であることが好ましく、より好ましくは40%である。当該範囲の上限値又は下限値は、たとえば30、40、50、60、70又は80%であってもよい。
【0022】
<配合比率>
口腔用組成物における(A)ヒノキチオール、(B)アルミニウム原子を含有する粘土鉱物粉末、及び(C)多価アルコールの配合比率について説明する。
【0023】
口腔用組成物では、(A)ヒノキチオールの含有量に対する(C)多価アルコールの含有量の質量比〔(C)/(A)〕が700以上である。質量比〔(C)/(A)〕の上限値は特に制限されないが、たとえば90000であることが好ましい。上記質量比〔(C)/(A)〕の上限値は、10000であることがより好ましく、さらに好ましくは4700である。上記質量比〔(C)/(A)〕の下限値は、800であることが好ましく、より好ましくは900である。当該範囲の上限値又は下限値は、たとえば800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、4700、5000、6000、7000、8000又は9000であってもよい。
【0024】
口腔用組成物では、(A)ヒノキチオールの含有量及び(B)アルミニウム原子を含有する粘土鉱物粉末の含有量の合計に対する(C)多価アルコールの含有量の質量比〔(C)/{(A)+(B)}〕が7.0以上である。質量比〔(C)/{(A)+(B)}〕の上限値は特に制限されないが、たとえば90であることが好ましい。上記質量比〔(C)/{(A)+(B)}〕の上限値は、70であることがより好ましく、さらに好ましくは45である。上記質量比〔(C)/{(A)+(B)}〕の下限値は、8.0であることが好ましく、より好ましくは9.0である。当該範囲の上限値又は下限値は、たとえば8.0、9.0、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70又は80であってもよい。
【0025】
<その他成分>
口腔用組成物は、適用目的、形態、用途等に応じて、前述した成分以外のその他成分を含有してもよい。その他成分としては、たとえば、増粘剤、発泡剤、香料、研磨剤、アルコール類、甘味成分、薬用成分、着色剤、安定化剤、キレート剤、pH調整剤等が挙げられる。その他成分は、口腔用組成物に配合される公知のものを使用することができる。口腔用組成物は、上記のその他成分のそれぞれについて、一種のみを単独で含有するものであってもよいし、二種以上を組み合わせて含有するものであってもよい。
【0026】
増粘剤としては、たとえばポリアクリル酸ナトリウム、カラギーナン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、ヒドロキシエチルセルロース、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、アルギン酸プロピレングリコールエステル等が挙げられる。
【0027】
発泡剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤または両性界面活性剤等を配合することができる。たとえばノニオン界面活性剤としてはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルグルコシドが挙げられる。アニオン界面活性剤としてアルキル硫酸塩、カチオン界面活性剤としては、モノアルキルトリメチルアンモニウム塩が挙げられる。両性界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の酢酸ベタイン型、N-ココイル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム等のイミダゾリン型、N-ラウリルジアミノエチルグリシン等のアミノ酸型等を配合することができる。
【0028】
香料としては、たとえば、アネトール、オイゲノール、カルボン、ウインターグリーン、サリチル酸メチル、チモール、丁字油、セージ油、オシメン油、シトロネロール等が挙げられる。
【0029】
研磨剤としては、たとえば、歯磨用リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、第二リン酸カルシウム、第三リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、シリカ、ゼオライト、メタリン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ピロリン酸カルシウム、ベンガラ、硫酸カルシウム、無水ケイ酸が挙げられる。炭酸カルシウムは、軽質炭酸カルシウムでもよいし、重質炭酸カルシウムでもよい。
【0030】
甘味成分としては、たとえば、サッカリンナトリウム、アセスルファームカリウム、ステビオサイド、ステビアエキス、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、ペリラルチン、タウマチン、アスパラチルフェニルアラニルメチルエステル、p-メトキシシンナミックアルデヒド等が挙げられる。
【0031】
薬用成分としては、たとえば、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、フッ化第1スズ、フッ化ストロンチウム等のフッ化物、塩化セチルピリジニウム塩等のカチオン性殺菌剤、ピロリン酸ナトリウムやポリリン酸ナトリウム等の縮合リン酸塩、リン酸一水素ナトリウム、リン酸三ナトリウム等のリン酸塩、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、塩酸ピリドキシン、トコフェロール酢酸エステル等のビタミン剤、デキストラナーゼ、ムタナーゼ等のグルカナーゼ酵素、プロテアーゼ、リゾチーム等の分解酵素、塩化亜鉛、クエン酸亜鉛、塩化ストロンチウム、硝酸カリウム等の無機塩類、クロロフィル、グリセロホスフェート等のキレート性化合物、脂を溶解するポリエチレングリコール等、塩化ナトリウム、乳酸アルミニウム等が挙げられる。
【0032】
着色剤としては、たとえば、緑色1号、緑色3号、青色1号、黄色4号、黄色5号、赤色102号、赤色3号等の法定色素、銅クロロフィンナトリウム、酸化チタン等が挙げられる。
【0033】
安定化剤としては、たとえば、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、乳酸カルシウム、ラノリン、トリアセチン、ヒマシ油、硫酸マグネシウム等が挙げられる。
キレート剤としては、たとえば、エデト酸、エデト酸ナトリウム塩、エデト酸カリウム塩、フィチン酸等が挙げられる。
【0034】
pH調整剤としては、たとえば、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、酒石酸、酢酸、硝酸、リン酸、ピロリン酸、グリセロリン酸、並びにこれらのカリウム塩、ナトリウム塩及びアンモニウム塩等の各種塩、水酸化ナトリウム等が挙げられる。口腔用組成物は、pH調整剤を配合することにより、pHが4以上9以下、特に5以上7以下の範囲になるように調整されていることが好ましい。
【0035】
<適用形態、用途、及び剤形>
口腔用組成物の適用形態は、特に限定されず、たとえば、医薬品、医薬部外品、化粧品として使用することができる。口腔用組成物の用途としては、公知のものを適宜採用することができる。たとえば、咀嚼剤、口腔内溶解剤、口腔内崩壊剤、舌ケア剤、口中清涼剤、練歯磨剤、洗口剤、含漱剤、液体歯磨剤、バイオフィルム分散剤、口臭予防剤、歯茎マッサージ剤、口腔用湿潤付与剤、舌苔除去剤、口腔内塗布剤、口腔殺菌剤、咽喉殺菌剤、口腔咽喉剤、歯周病治療剤、義歯装着剤、義歯コーティング剤、義歯安定化剤、義歯保存剤、義歯洗浄剤、インプラントケア剤等が用途として挙げられる。
【0036】
口腔用組成物の剤形は、特に限定されず、たとえば、軟膏剤、ペースト剤、パスタ剤、スプレー剤、ジェル剤、液剤、懸濁剤、ガム剤等に適用することができる。
口腔用組成物は、水を含有していてもよい。水の種類は特に限定されず、たとえば蒸留水、純水、超純水、精製水、水道水等を用いることができる。口腔用組成物は、アルコールを含有していてもよい。アルコールの種類は特に限定されず、たとえばエタノールを用いることができる。水とアルコールを混合して用いることもできる。
【0037】
<作用及び効果>
本実施形態の作用について説明する。
まず、黒粒に関して説明する。黒粒は、ヒノキチオールと、アルミニウム原子を含有する粘土鉱物粉末と、を配合した組成物を放置することで発生することが確認された黒い粒状の物質である。より詳しくは、上記組成物を55℃で1カ月間放置したところ、組成物に多数の黒粒が発生することを確認した。黒粒は、組成物の全体に分散していた。黒粒の大きさは、肉眼で見える大きさであった。組成物に生じた他の変化として、組成物が褐色に変色していた。黒粒の発生は、組成物自体の色が変わる変色とは区別される現象である。
【0038】
これに対して本実施形態の口腔用組成物では、55℃で1カ月間放置しても、黒粒が確認されない。(A)ヒノキチオールと、(B)アルミニウム原子を含有する粘土鉱物粉末と、(C)多価アルコールと、を特定の質量比で含有している本実施形態の口腔用組成物によれば、黒粒の発生を抑制することができる。本実施形態の口腔用組成物は、口腔用組成物の変色を抑制する作用を発揮しなくてもよい。
【0039】
本実施形態の効果について説明する。
(1)本実施形態の口腔用組成物によれば、ヒノキチオールと、アルミニウム原子を含有する粘土鉱物粉末と、を配合していても、黒粒の発生を抑制することができる。黒粒の発生を抑制することによって、口腔用組成物の外観を良好な状態に維持することができる。
【0040】
(2)仮に、黒粒の発生した口腔用組成物が使用者の目に止まった場合、使用者が不快に感じるおそれがある。たとえば、口腔用組成物に異物が混入しているかのような印象を使用者に与えるおそれがある。本実施形態の口腔用組成物によれば、こうした誤った印象を使用者に与えることを抑制することができる。
【0041】
(3)多価アルコールとしてグリセリン、ソルビット、プロピレングリコールなる群より選ばれる少なくとも一種を含有する。したがって、黒粒の発生を抑制する効果をより好適に奏する。
【0042】
(4)天然由来の殺菌剤であるヒノキチオールと、天然由来の特定の粘土鉱物粉末と、を含有する口腔用組成物を提供することができる。たとえば、口腔用組成物のうち天然由来の成分が占める割合を大きくすることができる。これによって、天然由来の成分を好む使用者に向けた付加価値を高めることができる。
【実施例0043】
口腔用組成物について、以下の実施例に基づいてさらに詳細に説明する。なお、口腔用組成物は、実施例欄に記載の構成に限定されるものではない。
表1に示す実施例1~12、及び表2に示す比較例1~6の口腔用組成物を常法に従って各成分を混合することによって製造した。各成分は、市販品を使用した。
【0044】
なお、表1及び表2において、各成分の右側に記載した数字は、各成分の含有量(質量%)を意味し、残部の精製水と合計で100質量%となるように配合した。口腔用組成物は、ペースト状の形態を有していた。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
<評価試験>
実施例1~12、及び比較例1~6の口腔用組成物について、経時変化によって黒粒が発生するか否かを評価した。
【0048】
評価方法は、以下の通りである。
口腔用組成物をそれぞれ密封した後、55℃で1カ月間放置した。その後、口腔用組成物を適量採取して白い紙の上に塗り広げた。黒粒の有無を肉眼で確認した。評価基準は、以下の通りである。評価は、評価者3名によって行った。評価結果は、評価者全員で一致した。評価結果を表1及び表2に示す。
【0049】
・評価基準
○(良好):肉眼では黒粒が見えない。
×(不可):肉眼で黒粒が見える。
【0050】
<評価結果>
実施例1~12は、いずれも評価が良好であった。すなわち、黒粒の発生を抑制することができた。また、黒粒の発生が抑制されていることによって、口腔用組成物の外観は良好な状態が維持されていた。比較例1~6は、いずれも評価が不可であった。
【0051】
実施例1~12では、質量比〔(C)/(A)〕が700以上であり且つ質量比〔(C)/{(A)+(B)}〕が7.0以上である。これに対して、比較例1~4では、質量比〔(C)/(A)〕が700未満であり且つ質量比〔(C)/{(A)+(B)}〕が7.0未満である。また、比較例5では、質量比〔(C)/(A)〕が700以上であるが質量比〔(C)/{(A)+(B)}〕が7.0未満である。また、比較例6では、質量比〔(C)/{(A)+(B)}〕が7.0以上であるが質量比〔(C)/(A)〕が700未満である。
【0052】
この結果から、黒粒の発生を抑制する効果は、(A)ヒノキチオールと、(B)アルミニウム原子を含有する粘土鉱物粉末と、(C)多価アルコールと、を特定の質量比で含有していることによる効果であることがわかる。具体的には、質量比〔(C)/(A)〕が700以上であり且つ質量比〔(C)/{(A)+(B)}〕が7.0以上であることによって奏する効果である。
【0053】
さらに、各実施例から以下のことがわかる。
実施例2では、ヒノキチオールの含有量が0.005%であり比較的少ない。このため質量比〔(C)/(A)〕が4700となり比較的大きい。実施例2の結果から、ヒノキチオールの含有量が少ない場合でも黒粒の発生を抑制できることがわかる。
【0054】
実施例6では、モンモリロナイトの含有量が1%であり比較的少ない。このため質量比〔(C)/{(A)+(B)}〕が42.1となり比較的大きい。実施例6の結果から、(B)アルミニウム原子を含有する粘土鉱物粉末の含有量が少ない場合でも黒粒の発生を抑制できることがわかる。
【0055】
各実施例の結果から、(C)成分としては、多価アルコールの組み合わせ、多価アルコール中における各種多価アルコールの質量比を変更しても、黒粒の発生を抑制できることがわかる。特に実施例10及び実施例11では、プロピレングリコールの含有量が比較的多い。この場合でも黒粒の発生を抑制できることがわかる。
【0056】
<参考例>
表2に示す参考例1~3の口腔用組成物を常法に従って各成分を混合することによって製造した。表2に示すように、参考例1~3は、(A)ヒノキチオール及び(B)アルミニウム原子を含有する粘土鉱物粉末のうちいずれか一方を含有している。参考例1~3の口腔用組成物は、上記実施例及び比較例の評価試験と同様の条件である55℃で1カ月間放置しても、黒粒が発生していなかった。このことから、(A)ヒノキチオール及び(B)アルミニウム原子を含有する粘土鉱物粉末のうちいずれか一方を含有している口腔用組成物では、経時変化によって黒粒が発生しないことがわかる。経時変化による黒粒の発生は、ヒノキチオールと、アルミニウム原子を含有する粘土鉱物粉末と、を含有する口腔用組成物に生じる現象であることを確認できた。