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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092122
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20240701BHJP
【FI】
H02M3/28 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207831
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111121
【弁理士】
【氏名又は名称】原 拓実
(74)【代理人】
【識別番号】100200218
【弁理士】
【氏名又は名称】沼尾 吉照
(72)【発明者】
【氏名】濱川 友太
(72)【発明者】
【氏名】松尾 武
(72)【発明者】
【氏名】野崎 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】藤田 常仁
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730BB26
5H730BB61
5H730DD03
5H730DD16
5H730EE04
5H730EE07
5H730FD01
5H730FD11
5H730FD31
5H730FD61
5H730XX01
5H730XX04
5H730XX11
5H730XX19
5H730XX24
5H730XX38
5H730XX41
5H730XX42
(57)【要約】
【課題】 共振周波数の異常検出に用いられる複数の温度検出部のうち、一部の温度検出
器に故障が発生することによる電力変換装置自体の停止を防止する。
【解決手段】 電力変換装置は、電源からの電力を所望の電圧に調整する電圧調整回路と
、電圧調整回路が出力した電力を交流電力に変換するインバータと、インダクタンス及び
キャパシタンスを有する共振回路と、インバータの交流電力を変換する高周波変圧器と、
高周波変圧器から出力された交流電力を直流電力に変換する整流器と、共振回路の温度を
検出する温度検出部と、温度が所定の温度閾値以上である場合に、共振周波数の異常であ
ると検出して、共振周波数異常時の制御を行い、かつ、共振回路の温度検出部が異常であ
る場合に、温度検出部異常時の制御を行う制御部と、を備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源からの電力を所望の電圧に調整する電圧調整回路と、
前記電圧調整回路が出力した電力を交流電力に変換するインバータと、
インダクタンス及びキャパシタンスを有する共振回路と、
前記インバータの交流電力を変換する高周波変圧器と、
前記高周波変圧器から出力された交流電力を直流電力に変換する整流器と、
前記共振回路の温度を検出する2ヶ所以上の温度検出部と、
前記温度が所定の温度閾値以上である場合に、共振周波数の異常であると検出して、異
常時の制御を行い、かつ、前記共振回路の温度を検出する温度検出部の異常を検出し、温
度検出部が異常であると検出した場合に、異常箇所の温度検出部の出力を、前記共振周波
数異常検知処理から切り離す制御を行う制御部と、
を備えた電力変換装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記温度検出部の装置動作開始時から一定時間経過後の温度上昇値を計
算し、その温度上昇値から前記温度検出部の異常の判断を行う
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記温度検出部が検出した前記共振回路の温度と、前記共振回路とは異
なる箇所の温度を計測する温度計測部の温度を比較することで、前記温度検出部の異常の
判断を行う
請求項1記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記温度検出部の装置動作開始時に、共振回路の初期温度を計測し、そ
の初期温度から、前記温度検出部の異常の判断を行う
請求項1記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記温度検出部のうち1つが計測した温度と、該温度検出部以外の温度
検出部の温度の平均値を比較することで、前記温度検出部の異常の判断を行う
請求項1記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記温度検出部のうち、最大温度と最小温度を比較することで、前記温
度検出部の異常の判断を行う、
請求項1記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記温度検出部は、サーミスタである請求項1記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、入力直流電力を電気的に絶縁された直流電力に変換するDC/D
Cコンバータを有する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電力変換装置は小型・軽量化を行ってきたが、さらなる小型・軽量化が求められ
ている。
これを実現するための手段の一つとして、回路の一部に共振回路を利用したソフトスイ
ッチング機能を有するDC/DCコンバータを採用し、高周波化することで、装置内のリ
アクトル、トランスの外形・質量を低減し、電力変換装置としても小型・軽量化を図るも
のが提案されている。
一般的にこの回路方式では、共振回路を利用したソフトスイッチング(電流が小さいタ
イミングでスイッチング素子をターンオン、ターンオフ)をするため、高周波スイッチン
グであるにも関わらずスイッチング素子の損失も低く抑えることができる回路構成となっ
ている。
【0003】
しかしながら、このような回路構成を採った場合、何らかの原因で共振回路部の共振周
波数が低下すると、スイッチング素子に電流が流れている状態でターンオフ(ハードスイ
ッチング)することになるため、損失が増大する虞があった。また共振周波数が増加した
場合には,電流振幅が増すことによって各構成部品の抵抗損失が増大する虞もある。
このような問題を解消するために、共振回路に電流検出器を設けて共振電流を検出し、
共振周波数を監視して、あらかじめ定めた領域を逸脱した際に異常を検知し、装置を停止
させるという方法が提案されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6067136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の方法を採用するには電流検出器を設置する必要があるが、高周波の用途
では電流検出器の発熱が大きいため温度環境の厳しい用途の装置では採用が困難であると
いう課題があった。
また、高周波用電流検出器は外形が大きくなるため、装置内のスペースとのアンマッチ
やコストも増大するという新たな課題が生じていた。
さらに、上述した問題を克服したとしても、検出回路として、高速なマイコンやFPGAが
必要となるため、コストアップが生じるという課題があった。
【0006】
そこで、共振周波数が変化することで損失が増大することに着目して、複数の箇所にサ
ーミスタを取り付け、測定された温度から共振周波数の増加を検知することで、共振周波
数の異常検出をすることが考えられる。
【0007】
しかしながら、複数のサーミスタを取り付けて、複数の箇所を個別の設定値によって温
度監視をするため、サーミスタが検出した温度が規定値を超過すると、温度異常として装
置の保護機能が働き、装置全体が停止する。そのため、複数あるサーミスタのうち1つが
故障し、過温度を誤検知すると装置全体が停止することになる。
【0008】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、共振回路に複数あるサーミスタのうち1つ
が故障しても装置全体を過剰に停止させることなく、共振コンデンサの温度を監視し続け
ることができ、装置としての冗長性が向上することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態の電力変換装置は、電源からの電力を所望の電圧に調整する電圧調整回路と、
電圧調整回路が出力した電力を交流電力に変換するインバータと、インダクタンス及びキ
ャパシタンスを有する共振回路と、インバータの交流電力を変換する高周波変圧器と、高
周波変圧器から出力された交流電力を直流電力に変換する整流器と、共振回路の温度を検
出する温度検出部と、温度が所定の温度閾値以上である場合に、共振周波数の異常である
と検出して、共振周波数異常時の制御を行い、かつ、共振回路の温度検出部の異常を検出
して、温度検出部が異常である場合に、温度検出部が異常時の制御を行う制御部と、を備
える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1の実施形態に係る電力変換装置の構成図である。
図2図2は、共振周波数の正常時におけるスイッチング素子のゲート電圧及び各部の電流との関係の説明図である。
図3図3は、共振周波数の異常時におけるスイッチング素子のゲート電圧及び各部の電流との関係の説明図である。
図4図4は、第1の共振周波数異常検知処理の処理フローチャートである。
図5図5は、第2の共振周波数異常検知処理の処理フローチャートである。
図6図6は、第3の共振周波数異常検知処理の処理フローチャートである。
図7図7は、第1の実施形態におけるサーミスタ異常検知処理の処理フローチャートである。
図8図8は、第2の実施形態におけるサーミスタ異常検知処理の処理フローチャートである。
図9図9は、第3の実施形態におけるサーミスタ異常検知処理の処理フローチャートである。
図10図10は、第4の実施形態におけるサーミスタ異常検知処理の処理フローチャートである。
図11図11は、第5の実施形態におけるサーミスタ異常検知処理の処理フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、第1の実施形態に係る電力変換装置の構成図である。
電力変換装置は、直流電源PWと、電圧調整回路11と、共振方式単相ハーフブリッジ
インバータとしての共振インバータを構成する共振コンデンサ12U、12L、スイッチ
ング素子13U及びスイッチング素子13Lと、高周波変圧器14と、整流器15と、フ
ィルタコンデンサ16と、電流検出器17と、フィルタコンデンサ18と、制御部21と
、電圧調整回路11の入力電圧を検出する電圧検出部22と、共振コンデンサ12U及び
共振コンデンサ12Lの温度を代表する温度を検出する温度検出部23と、電力変換装置
の出力電圧を検出する電圧検出部24と、電流検出器17の出力信号に基づいて電力変換
装置の出力電流を検出する電流検出部25と、共振コンデンサ12U、12L及び周囲回
路を冷却する冷却ファン26と、を備えている。
【0012】
上記構成において、共振コンデンサ12U、12L、スイッチング素子13U、スイッ
チング素子13L、高周波変圧器14、整流器15、フィルタコンデンサ16及びフィル
タコンデンサ18は、共振回路RESを構成している。
【0013】
また、図1の例では、電圧調整回路11として、スイッチング素子11A、ダイオード
11B及びコイル11Cを有する降圧チョッパ回路を構成している場合を示している。し
かしながら、所望の電圧が得られるように調整を行えるのであれば、昇降圧チョッパ回路
、昇圧チョッパ回路、コンバータ等様々な回路を適用することが可能である。
また、高周波変圧器14は、漏れインダクタンス成分14Xを含んでいるものとする。
【0014】
また、制御部21は、電圧検出部22、温度検出部23、電圧検出部24、電流検出部
25と接続されている。電圧検出部24、電流検出部25にて出力を検出しながら、定め
られた制御特性に基づいてスイッチング素子11Aのゲート制御を行っている。
【0015】
また、図1においては、スイッチング素子11A、スイッチング素子13U及びスイッ
チング素子13LをIGBTとしているが、IGBTに限定するものではない。例えば、
SiC-MOSFETでも、パワートランジスタ、GTOサイリスタでも良い。
【0016】
図2は、共振周波数の正常時におけるスイッチング素子のゲート電圧及び各部の電流と
の関係の説明図である。
図2(A)及び図2(B)に示すように、スイッチング素子13Uのゲート電圧G13
U及びスイッチング素子13Lのゲート電圧G13Lは、所定のデッドタイムDTを介し
て排他的に“H”レベル(オン)/“L”レベル(オフ)が切り替わるようになっている

そして、スイッチング素子13Uがオン状態である場合に、図2(C)に示すように、
スイッチング素子13Uを電流I13Uが流れる。同様にスイッチング素子13Lがオン
状態である場合に、図2(D)に示すように、スイッチング素子13Lを電流I13Lが
流れる。
これらの結果、図2(E)に示すように、高周波変圧器14の一次側を電流Iin14
が流れることとなる。
【0017】
正常時には、制御部21は、スイッチング素子13U、13Lを設定したスイッチング
周期で制御している。
ここで、スイッチング素子13U、13L、高周波変圧器14、ダイオード整流器15
及びフィルタコンデンサ16、18の閉回路を構成する導体によって構成された配線のイ
ンダクタンスと高周波変圧器14の漏れインダクタンス14Xの合計値と、共振コンデン
サ12U、12Lによって共振回路RESを構成し、負荷に電力を供給する。
したがって、スイッチング周波数と共振周波数はソフトスイッチング(小さい電流での
ターンオフ)を実現するタイミングとなっている。
【0018】
すなわち、図2に示すように、スイッチング周期の前半では、スイッチング素子13U
のゲート電圧G13Uが“H”レベルとなっている期間の前半で電流I13Uが大きく流
れ、スイッチング素子13U、13Lの切替を行うために設定されているデッドタイムD
Tの期間においては電流I13Uが小さくなっており、ソフトスイッチングが行えるよう
になっている。
【0019】
さらにスイッチング周期の後半では、スイッチング素子13Lのゲート電圧G13Lが
“H”レベルとなっている期間の前半で電流I13Lが大きく流れ、スイッチング素子1
3U、13Lの切替を行うために設定されているデッドタイムDTの期間においては電流
I13Lが小さくなっており、ソフトスイッチングが行えるようになっている。
【0020】
図3は、共振コンデンサの容量減少などによる共振周波数の異常時におけるスイッチン
グ素子のゲート電圧及び各部の電流との関係の説明図である。
異常時においても、スイッチング周期Tの前半では、スイッチング素子13Uのゲート
電圧G13Uが“H”レベルとなっている期間の前半で電流I13Uが大きく流れ、スイ
ッチング素子13U、13Lの切替を行うために設定されているデッドタイムDTの期間
においては電流I13Uが小さくなっている。
【0021】
しかしながら、スイッチング素子13Uのゲート電圧G13Uが“H”レベルとなって
いる期間の前半で流れる電流の値は、正常時の場合と比較して、大きくなっており、回路
全体として発熱量が大きくなっている。
【0022】
同様に、スイッチング周期の後半では、スイッチング素子13Lのゲート電圧G13L
が“H”レベルとなっている期間の前半で電流I13Lが大きく流れ、スイッチング素子
13U、13Lの切替を行うために設定されているデッドタイムDTの期間においては電
流I13Lが小さくなっている。
【0023】
しかしながら、スイッチング素子13Lのゲート電圧G13Lが“H”レベルとなって
いる期間の前半で流れる電流の値は、正常時の場合と比較して、大きくなっており、消費
電力が増大するとともに、回路全体として発熱量が大きくなることとなっていた。
【0024】
より詳細には、共振回路全体のインダクタンスをL、共振回路全体のキャパシタンスを
Cとした場合に、共振周波数fは、(1)式で表される。
f=1/2π・√(L・C) …(1)
従って、キャパシタンスCが小さくなると、共振周波数は高くなり、回路全体としては
、所望の動作が行えなくなるのである。
【0025】
そこで、本実施形態においては、温度変化を検出することで、共振周波数の変化をとら
え、制御を行うようにしている。
すなわち、温度検出部23により、共振コンデンサ12U、12L、あるいは共振コン
デンサ12U、12Lに接続している導体の温度監視を行っている。
そして温度検出部23において、正常時に検出されるはずの温度領域を逸脱した場合に
は、温度検出部23の出力に基づいて制御部21が共振周波数が異常であること検出して
電力変換装置10を停止モードに移行する。
【0026】
以下、より詳細に制御部21の動作を説明する。
図4は、第1の共振周波数異常検知処理の処理フローチャートである。
共振周波数の定数が変化し共振周波数の異常状態において(ステップS01)、制御部
21は、温度検出23を介して共振回路、すなわち、共振コンデンサ12U、12L、あ
るいは共振コンデンサ12U、12Lに接続している導体の温度を計測して温度計測値A
を取得する(ステップS02)。
【0027】
続いて制御部21は、予め設定した温度閾値に相当する温度セット値Bと比較を行い、
温度計測値Aが温度セット値B以上(A≧B)であるか否かを判断する(ステップS03
)。
【0028】
ステップS03の判断において、温度計測値Aが温度セット値B以上(A≧B)である
場合には(ステップS03;Yes)、制御部21は、電力変換装置10の動作を停止シ
ーケンスへ移行し(ステップS04)、電力変換装置10の保護を図る。
【0029】
ステップS03の判断において、温度計測値Aが温度セット値B未満(A<B)である
場合には(ステップS03;No)、制御部21は、処理を再びステップS02に移行し
て同様の処理を繰り返すこととなる。
【0030】
図5は、第2の共振周波数異常検知処理の処理フローチャートである。
図4の処理においては、共振周波数が異常である場合には、電力変換装置10を停止シ
ーケンスへ移行させていたが、図5の処理では、出力電力を低減することにより電力変換
装置10の保護を図っている。
【0031】
共振周波数の定数が変化し共振周波数の異常状態において(ステップS11)、制御部
21は、温度検出23を介して共振回路、すなわち、共振コンデンサ12U、12L、あ
るいは共振コンデンサ12U、12Lに接続している導体の温度を計測して温度計測値A
を取得する(ステップS12)。
【0032】
続いて制御部21は、予め設定した温度閾値に相当する温度セット値Bと比較を行い、
温度計測値Aが温度セット値B以上(A≧B)であるか否かを判断する(ステップS13
)。
【0033】
ステップS13の判断において、温度計測値Aが温度セット値B以上(A≧B)である
場合には(ステップS13;Yes)、制御部21は、電力変換装置10の出力制御を行
い、出力を低減する出力低減モードに移行し(ステップS15)、電力変換装置10の保
護を図る。さらにさらなる出力低減が必要か否かを判断するために、処理を再びステップ
S12処理を移行して同様の処理を繰り返すこととなる。
【0034】
一方、ステップS13の判断において、温度計測値Aが温度セット値B未満(A<B)
である場合には(ステップS13;No)、制御部21は、出力制御を通常モードのまま
として処理を終了する(ステップS14)。
【0035】
図6は、第3の共振周波数異常検知処理の処理フローチャートである。
本例においては、共振回路を構成している共振コンデンサ12U、12Lを冷却するた
めの冷却装置として電力変換装置が冷却用ファン26を備えている場合について説明する

図4の処理においては、共振周波数が異常である場合には、電力変換装置10を停止シ
ーケンスへ移行させていたが、図6の処理では、共振コンデンサ12U、12L及び周囲
回路を冷却して、電力変換装置10の保護を図っている。
【0036】
共振周波数の定数が変化し共振周波数の異常状態において(ステップS21)、制御部
21は、温度検出23を介して共振回路、すなわち、共振コンデンサ12U、12L、あ
るいは共振コンデンサ12U、12Lに接続している導体の温度を計測して温度計測値A
を取得する(ステップS22)。
【0037】
続いて制御部21は、予め設定した温度閾値に相当する温度セット値Bと比較を行い、
温度計測値Aが温度セット値B以上(A≧B)であるか否かを判断する(ステップS23
)。
【0038】
ステップS23の判断において、温度計測値Aが温度セット値B以上(A≧B)である
場合には(ステップS23;Yes)、制御部21は、冷却ファンの動作制御を行うため
のファン動作指令を“H”レベルとして冷却ファンを動作させて(ステップS25)、共
振コンデンサ12U、12L及び周囲回路を冷却して、電力変換装置10の保護を図る。
【0039】
一方、ステップS23の判断において、温度計測値Aが温度セット値B未満(A<B)
である場合には(ステップS23;No)、制御部21は、冷却ファンの動作制御を行う
ためのファン動作指令を“L”レベルとして冷却ファンを停止、あるいは、停止状態を維
持して処理を終了する(ステップS24)。
以上の説明のように、本実施形態によれば、共振周波数の異常検出を容易かつ低コスト
で実現でき、電力変換装置10の保護を図ることができる。
【0040】
本発明の実施形態において、温度検出部としては、サーミスタが用いられ、共振コンデ
ンサ12U、12Lの端子、あるいは共振コンデンサ12U、12Lに接続している導体
に取り付けられており、それぞれ個別の温度セット値で温度監視を行っている。そのため
、上記4つのサーミスタのうち1つが故障した場合、共振周波数や温度監視部の実際の温
度が正常であっても、故障したサーミスタが過温度を誤検知して、装置を停止させる可能
性がある。
【0041】
図7は、第1の実施形態に係るサーミスタ異常検知方法を説明する処理フローチャート
である。電力変換装置の動作開始時に温度検出部23は、共振コンデンサ12U、12L
、あるいは共振コンデンサ12U、12Lに接続している導体に取り付けられているサー
ミスタが計測している初期温度T0を検出し、制御部21に記憶させる(ステップS32
)。装置が動作開始してから十分な時間t1が経過すると、その時点の温度Txを計測する
(ステップS33)。例えば、十分な時間t1を100秒とすると、制御部21は、装置
動作開始すると100秒カウントし、100秒カウントが終了した時点での温度Txを記
憶する。
【0042】
続いて制御部21は、装置動作開始時の各サーミスタの温度T0と装置動作開始からt1
秒後の各サーミスタの温度Txから温度上昇値を計算し、共振回路における各サーミスタ
が計測した温度上昇値がセット値以上(Tx-T0≧C)か否かを判断する(ステップS3
4)。
【0043】
ステップS34の判断において、各サーミスタで温度上昇値がセット値C以上(Tx-
T0≧C)である場合では(ステップS34;Yes)、制御部21は、その該当箇所の
サーミスタが正常に動作していると判断して、温度計測を継続し、その計測結果を図4
図6の共振周波数異常検知処理に用いて、サーミスタ異常検知処理を終了する(ステップ
S35)。
【0044】
一方、ステップS34の判断において、各サーミスタで温度上昇値がセット値C未満(
Tx-T0<C)である場合では(ステップS34;No)、制御部21は、その該当箇所
のサーミスタの温度上昇がない、もしくは温度上昇値が不十分のため、サーミスタが故障
していると判断して、故障箇所のサーミスタの出力を共振周波数異常検知処理から切り離
し、正常であるサーミスタのみ、図4図6の共振周波数異常検知処理の温度検出に利用
し、サーミスタ異常検知処理を終了する(ステップS36)。
以上のように、第1の実施形態によれば、装置開始からの各サーミスタの温度上昇値を
みることによって、共振周波数異常検知に用いる個々のサーミスタの異常を検知でき、サ
ーミスタの異常による過温度の誤検知を防止することで、電力変換装置を過剰に停止させ
ることがなくなる。
【0045】
図8は、第2の実施形態に係るサーミスタ異常検知方法を説明する処理フローチャート
である。装置動作開始後に温度検出部23は、共振コンデンサ12U、12L、あるいは
共振コンデンサ12U、12Lに接続している導体の温度TAを計測する(ステップS4
2)。また、温度の比較対象として、別の温度を見ているサーミスタの温度を計測する。
本実施形態においては、装置箱内の温度を計測しているサーミスタの温度計測値TBを用
いる(ステップS43)。
【0046】
続いて制御部21は、ある周期ごとに共振回路の各サーミスタの温度計測値TAと装置
箱内温度の計測値TBの温度差を計算し、その温度差が温度セット値D未満(|TA-TB
|<D)であるか否かを判断する(ステップS44)。
【0047】
ステップS44の判断において、共振回路の各サーミスタの温度計測値TAと装置箱内
の温度計測値TBの温度差が温度セット値D未満(|TA-TB|<D)である場合では(
ステップS44;Yes)、制御部21は、その該当箇所のサーミスタは、正常に動作していると判断し、温度計測を継続する(ステップS45)。
【0048】
ステップS44の判断において、共振回路の各サーミスタの温度計測値TAと装置箱内
の温度計測値TBの温度差が温度セット値D以上(|TA-TB|≧D)である場合では(ス
テップS44;No)、制御部21は、その該当箇所のサーミスタが出力した温度は、装置箱内の温度測定値に対して、サーミスタの温度が異常であるため、サーミスタが故障していると判断して、故障箇所のサーミスタの出力を共振周波数異常検知処理から切り離し、サーミスタ異常検知処理を終了する(ステップS46)。
【0049】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態とは、他の温度測定箇所と比較する点でこと
なるが、第1の実施形態と同様に、共振周波数異常検知に用いる個々のサーミスタの異常
を検知でき、サーミスタの異常による過温度の誤検知を防止することで、電力変換装置を
過剰に停止させることがなくなる。また、第2の実施形態のように他の温度測定箇所と比
較することにより、装置動作中は常時サーミスタ異常の検知を行うことが可能となる。
本実施形態では、他の温度測定箇所として装置箱内の温度を挙げているが、装置内での
他の温度測定箇所、例えば、コンバータユニット、インバータユニットなど、共振回路の
温度と比較できる箇所ならどこでも構わない。
【0050】
図9は、第3の実施形態に係るサーミスタ異常検知方法を説明する処理フローチャート
である。
第3の実施形態において、第1の実施形態と異なる点は、装置動作開始時のサーミスタ
の初期計測温度でサーミスタ異常を判断している点である。
【0051】
温度検出部23は、装置開始時に各サーミスタが検出する初期温度T0を計測する(ステ
ップS52)。
【0052】
続いて制御部21は、各サーミスタの初期温度T0が下限セット値Eより大きく、上限
セット値F未満(E<T0<F)であるか否かを判断する(ステップS53)。このセット値
Eは明らかに小さい値、Fは明らかに大きい値に設定する。例えば、使用するサーミスタ
の使用許容温度範囲や、装置の仕様温度範囲を考慮した値などに設定する。
【0053】
ステップS53の判断において、各サーミスタの初期温度T0が下限セット値Eより大
きく、上限セット値F未満(E<T0<F)である場合には、制御部21は、サーミスタが
正常に動作していると判断して、温度計測を継続する(ステップS54)。
【0054】
ステップS53の判断において、各サーミスタの初期温度T0が下限セット値E以下、
上限セット値F以上(T0≦E、F≦T0)である場合には、制御部21は、その該当箇所の
サーミスタは、明らかに異常な温度を出力しているため、故障していると判断し、故障箇
所のサーミスタの出力を共振周波数異常検知処理から切り離す(ステップS55)。
【0055】
第3の実施形態によれば、サーミスタが計測する初期温度が明らかな異常値であれば、
サーミスタが故障していると判断することで、サーミスタの異常を簡易的に検知すること
ができる。
【0056】
図10は、第4の実施形態に係るサーミスタ異常検知方法を説明する処理フローチャー
トである。
第4の実施形態において、第2の実施形態と異なる点は、故障判断のための温度比較対
象が、共振回路における故障判断対象以外のサーミスタの温度計測値の平均値である点で
ある。
【0057】
温度検出部23は、複数の箇所に取り付けられている、x個(x≧2)のサーミスタが計
測している温度(T1~Tx)を検出し、制御部21は、故障判断を行うサーミスタの温度T
a(a=1、2、…、x)以外の、温度の平均値Taveを計算する(ステップS63)。
【0058】
続いて制御部21は、平均値Taveと故障判断を行うサーミスタの温度Taの差を計算し
、その差分がセット値G未満(|Tave-Ta|<G)であるか否かを判断する(ステップS
64)。
【0059】
ステップS64の判断において、平均値Taveと故障判断を行うサーミスタの温度Taの
差分がセット値G未満(|Tave-Ta|<G)である場合には、制御部21は、その該当箇
所のサーミスタは、正常に動作していると判断し、温度計測を継続する(ステップS65
)。
【0060】
ステップS64の判断において、平均値Taveと故障判断を行うサーミスタの温度Taの
差分がセット値G以上(|Tave-Ta| ≧G)である場合には、制御部21は、その該当
箇所のサーミスタが故障していると判断して、故障箇所のサーミスタの出力を共振周波数
異常検知処理から切り離す。(ステップS66)。
他のサーミスタの故障判断も同様に、該サーミスタを除くすべてのサーミスタの温度の
平均値と比較して行う。
【0061】
第4の実施形態によれば、2個以上の、複数のサーミスタが取り付けられている場合、
共振回路の温度計測をしているサーミスタのうち1つの温度と、該サーミスタを除くすべ
ての共振回路のサーミスタの温度平均値と比較することで、共振周波数異常検知に用いる
個々のサーミスタの異常を検知できる。
【0062】
図11は、第5の実施形態に係るサーミスタ異常検知方法を説明する処理フローチャー
トである。
第5の実施形態において、他の実施形態と異なる点は、他の実施形態では、サーミスタの
故障判別を共振回路の複数のサーミスタそれぞれで行っているのに対し、第5の実施形態
では、サーミスタの故障判別を、最高温度箇所、最小温度箇所のサーミスタのみで行って
いる点である。
【0063】
制御部21は、温度検出部23が計測した共振回路のx個のサーミスタの温度(T1~T
x)のうち、最高温度Tmaxと最小温度Tminを抽出し(ステップS73)、最高温度Tmax
と最小温度Tminの差がセット値H未満(Tmax-Tmin<H)であるか否かを判断する(
ステップS74)。
【0064】
ステップS74の判断において、最高温度Tmaxと最小温度Tminの差がセット値H未満
(Tmax-Tmin<H)である場合には、すべてのサーミスタが正常に動作していると判断
し、温度計測を継続する(ステップS75)。
【0065】
ステップS74の判断において、最高温度Tmaxと最小温度Tminの差がセット値H以上
(Tmax-Tmin≧H)である場合には、最小温度を計測したサーミスタが故障していると
判断し、最小温度を計測した箇所のサーミスタの出力を共振周波数異常検知処理から切り
離し、残りのサーミスタのみで共振周波数異常検知を行い、サーミスタ異常検知処理を終
了する。なお、サーミスタの故障としては、抵抗値が増大する故障により検出温度が低く
なる割合が多いことから、最小温度Tminを計測したサーミスタを故障として判断してい
る。
【0066】
第5の実施形態によれば、共振回路温度計測箇所の最大温度と最小温度を見ることでサ
ーミスタの異常を簡易的に検知できる。
【0067】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり
、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々
な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置
き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含
まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0068】
例えば、電源からの電力を直流電力に変換して出力するチョッパと、チョッパが出力し
た直流電力を交流電力に変換するインバータと、共振回路を構成し、インバータの直流入
力部に二直列に接続される共振コンデンサと、インバータの交流電力を変換する高周波変
圧器と、を備えた電力変換装置をコンピュータにより制御するためのプログラムであって
、コンピュータを、共振回路の温度を検出する手段と、温度が所定の温度閾値以上である
場合に、共振周波数の異常であると検出して、異常時の制御を行う手段と、共振回路のサ
ーミスタの異常を検出して、異常時の制御を行う手段と、機能させるようにしても良い。
【0069】
また、サーミスタの異常検知として、第1の実施形態乃至第5の実施形態の故障判別の
複数を利用した論理和、論理積によって異常検知を行っても良い。
【0070】
以上の説明においては、温度検出部23を共振コンデンサ近傍に配置する構成としてい
たが、共振周波数の異常に応じた温度変化を検出できる箇所であれば、これに限られず、
高周波変圧器近傍など共振回路RESの様々な部位に配置することも可能であり、サーミ
スタの異常検知も同様に行うことも可能である。
【符号の説明】
【0071】
10…電力変換装置
11…電圧調整回路
12U、12L、12C…共振コンデンサ(キャパシタンス)
13U…スイッチング素子(上アーム:スイッチングトランジスタ)
13L…スイッチング素子(下アーム:スイッチングトランジスタ)
14…高周波変圧器
14X…漏れインダクタンス
15…ダイオード整流器
16、18…フィルタコンデンサ
17…電流検出器
21…制御部
22…電圧検出部
23…温度検出部
24…電圧検出部
25…電流検出部
26…冷却ファン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11