(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092128
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】表面改質酸化チタン、表面改質酸化チタンの製造方法、分散液、組成物、化粧料
(51)【国際特許分類】
C01G 23/04 20060101AFI20240701BHJP
A61K 8/29 20060101ALI20240701BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
C01G23/04 B
A61K8/29
A61Q17/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207839
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000108719
【氏名又は名称】タキロンシーアイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(72)【発明者】
【氏名】有銘 盛辰
【テーマコード(参考)】
4C083
4G047
【Fターム(参考)】
4C083AB241
4C083AB242
4C083BB23
4C083BB25
4C083CC02
4C083CC19
4C083EE03
4C083EE50
4C083FF01
4G047CA02
4G047CB04
4G047CC01
4G047CD03
(57)【要約】
【課題】本発明は、活性酸素の発生を充分に抑制でき、また、分散性に優れる表面改質酸化チタンおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の表面改質酸化チタンは、酸化チタン粒子の表面がケイ素化合物で処理された表面改質酸化チタンであり、ビタミンE混合試験の前後の色差ΔEが、5.0以下である、表面改質酸化チタン。
表面改質酸化チタンの製造方法は、超臨界二酸化炭素の存在下にて、酸化チタン粒子およびケイ素化合物を容器内で接触させること;容器内を減圧することで、二酸化炭素を除去して酸化チタン粒子およびケイ素化合物の混合物を回収すること、および;混合物を加熱することで、酸化チタン粒子およびケイ素化合物を反応させること;を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化チタン粒子の表面がケイ素化合物で処理された表面改質酸化チタンであり、
ビタミンE混合試験の前後の色差ΔEが、5.0以下である、表面改質酸化チタン。
【請求項2】
前記ケイ素化合物が、シラン化合物、シリコーン化合物およびシランカップリング剤からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の表面改質酸化チタン。
【請求項3】
前記酸化チタン粒子の表面が、水酸化アルミニウムでも処理されている、請求項1に記載の表面改質酸化チタン。
【請求項4】
超臨界二酸化炭素の存在下にて、酸化チタン粒子およびケイ素化合物を容器内で接触させること、
前記容器内を減圧することで、二酸化炭素を除去して前記酸化チタン粒子および前記ケイ素化合物の混合物を回収すること、および、
前記混合物を加熱することで、前記酸化チタン粒子および前記ケイ素化合物を反応させること、
を含む、表面改質酸化チタンの製造方法。
【請求項5】
前記ケイ素化合物が、シラン化合物、シリコーン化合物およびシランカップリング剤からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記ケイ素化合物で処理する前の前記酸化チタン粒子の表面が、水酸化アルミニウムで処理されている、請求項4に記載の製造方法。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか一項に記載の表面改質酸化チタンと、分散媒とを含む、分散液。
【請求項8】
請求項1~3のいずれか一項に記載の表面改質酸化チタンと、分散媒と、樹脂と、を含む、組成物。
【請求項9】
請求項1~3のいずれか一項に記載の表面改質酸化チタンと、化粧品基剤原料と、を含む、化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面改質酸化チタン、表面改質酸化チタンの製造方法、分散液、組成物、化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
日焼け止め等に使用される顔料粉体には、活性酸素の発生の抑制のために表面処理を施すことがある。表面処理された顔料粉体を得るための表面処理方法として、乾式方法、湿式方法がある(例えば、特許文献1、2)。
乾式方法では、表面処理剤と顔料粉体とを直接的に接触させて混合する。
湿式方法では、表面処理剤を媒体に溶解または懸濁させてから顔料粉体を混合した後、媒体を除去する。媒体を除去した後、必要に応じて粉砕が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-181136号公報
【特許文献2】特開2007-238690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、乾式方法では、細かい酸化チタン粒子の粉体の内部まで表面処理剤を充分に接触させることができない。この場合、未処理の酸化チタン粒子が残る結果、活性酸素の発生を充分に抑制できない。湿式方法では、媒体を除去するときに粉体が凝集しやすい。凝集した粉体を細かく粉砕することは容易ではない。
【0005】
本発明は、活性酸素の発生を充分に抑制でき、また、分散性に優れる表面改質酸化チタンおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記の態様を有する。
[1]酸化チタン粒子の表面がケイ素化合物で処理された表面改質酸化チタンであり;ビタミンE混合試験の前後の色差ΔEが、5.0以下である、表面改質酸化チタン。
[2]前記ケイ素化合物が、シラン化合物、シリコーン化合物およびシランカップリング剤からなる群から選ばれる少なくとも1種である、[1]に記載の表面改質酸化チタン。
[3]前記酸化チタン粒子の表面が、水酸化アルミニウムでも処理されている、[1]または[2]に記載の表面改質酸化チタン。
[4]超臨界二酸化炭素の存在下にて、酸化チタン粒子およびケイ素化合物を容器内で接触させること;前記容器内を減圧することで、二酸化炭素を除去して前記酸化チタン粒子および前記ケイ素化合物の混合物を回収すること、および;前記混合物を加熱することで、前記酸化チタン粒子および前記ケイ素化合物を反応させること;を含む、表面改質酸化チタンの製造方法。
[5]前記ケイ素化合物が、シラン化合物、シリコーン化合物およびシランカップリング剤からなる群から選ばれる少なくとも1種である、[4]に記載の製造方法。
[6]前記ケイ素化合物で処理する前の前記酸化チタン粒子の表面が、水酸化アルミニウムで処理されている、[4]または[5]に記載の製造方法。
[7][1]~[3]のいずれかに記載の表面改質酸化チタンと、分散媒とを含む、分散液。
[8][1]~[3]のいずれかに記載の表面改質酸化チタンと、分散媒と、樹脂と、を含む、組成物。
[9][1]~[3]のいずれかに記載の表面改質酸化チタンと、化粧品基剤原料と、を含む、化粧料。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、活性酸素の発生を充分に抑制でき、また、分散性に優れる表面改質酸化チタンおよびその製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<表面改質酸化チタン>
本発明の表面改質酸化チタンは、酸化チタン粒子の表面がケイ素化合物で処理された表面改質酸化チタンである。「ケイ素化合物で処理された」とは、ケイ素化合物および酸化チタン粒子の間の相互作用により、ケイ素化合物が酸化チタン粒子に対して接触または結合することをいう。
接触としては、例えば、物理吸着が挙げられる。結合としては、例えば、イオン結合、水素結合、共有結合が挙げられる。酸化チタン粒子およびケイ素化合物については後述する。
【0009】
(表面改質酸化チタンの色差ΔE)
本発明の表面改質酸化チタンのビタミンE混合試験の前後の色差ΔEは、5.0以下である。ビタミンE混合試験の前後の色差ΔEとは、ビタミンEとの混合の前後における表面改質酸化チタンのL*a*b*表色系色度図における色差である。該色差ΔEが5.0以下であるため、表面改質酸化チタンにおいては活性酸素の発生が充分に抑制されている。
【0010】
「L*」は、JIS Z 8781-4:2013「測色-第4部:CIE 1976 L*a*b*色空間」(対応国際規格ISO 11664-4:2008)において定義される明度の相関量である。また、「a*」および「b*」は、JIS Z 8781-4:2013「測色-第4部:CIE 1976 L*a*b*色空間」(対応国際規格ISO 11664-4:2008)において定義される色座標である。
ビタミンE混合試験の前後の色差ΔEの測定方法は以下に述べる通りである。
【0011】
ビタミンEと混合する前の表面改質酸化チタンについて、以下の通り測定を実施する。
表面改質酸化チタンを含む粉体:3gとシクロペンタシロキサン:5gとを混合することでブランク溶液を調製する。
次いで、ブランク溶液を入れた光路長0.1mm石英セルを紫外可視近赤外分光光度計(日立ハイテクサイエンス社製、型番:UH4150)にセットする。積分球を用いて混合液の拡散反射スペクトルを測定した後、測定結果からブランク溶液のL1
*、a1
*、b1
*を算出する。
【0012】
ビタミンEと混合した後の表面改質酸化チタンについて、以下の通り測定を実施する。
ビタミンEおよびシクロペンタシロキサンを混合することで、ビタミンE濃度が2質量%のシクロペンタシロキサン混合溶媒を予め調製する。
表面改質酸化チタンを含む粉体:3gとシクロペンタシロキサン混合溶媒:5gとを混合することで、ビタミンE混合済みのサンプル溶液を調製する。サンプル溶液について上述した手法により拡散反射スペクトルを測定した後、測定結果からサンプル溶液のL2
*、a2
*、b2
*を算出する。
【0013】
以上の結果から、色差ΔE=((L2
*-L1
*)2+(a2
*-a1
*)2+(b2
*-b1
*)2)1/2を算出する。L1
*、a1
*、b1
*、L2
*、a2
*、b2
*は、L*a*b*表色系色度図における値を示す。
【0014】
本実施形態において、ビタミンE混合試験の前後の色差ΔEが5.0以下となることにより、表面改質酸化チタンの分散性が向上する理由は不明である。該色差ΔEが小さくなる理由は、活性酸素の発生が抑制されているためと推測される。
しかし、ケイ素化合物が酸化チタン粒子の表面をどのように修飾しているかを直接測定する方法はない。そのため、ケイ素化合物が酸化チタン粒子の表面をどのように表面修飾することにより、該色差ΔEが小さくなっているかは不明である。表面修飾剤が酸化チタン粒子の表面に均一に、かつ緻密に存在しているためとも推測されるが、それだけでは説明がつかないことも想定される。
【0015】
色差ΔEが5.0以下となることで、活性酸素の発生を充分に抑制でき、また、分散性が向上するという作用効果は、複数の要因の複雑な絡み合いによって発現していると推察される。例えば、製造時の条件として、ケイ素化合物を超臨界二酸化炭素に溶かした後に、酸化チタン粒子と混合することは、その要因の一つであり得る。ケイ素化合物は酸化チタン粒子より非極性分子の溶媒との相溶性が良いため、分散性の向上に寄与し得ると推測される。
しかし、表面改質酸化チタンの特徴を、ケイ素化合物をあらかじめ超臨界二酸化炭素に溶かした後に表面修飾することで発現する表面状態により直接的に記述ないし特定することは、およそ不可能であると考えられる。
【0016】
本発明者は、様々な検討を行った結果、該色差ΔEに着目し、あらかじめケイ素化合物を超臨界二酸化炭素に溶かした後に表面処理することで、該色差ΔEが5.0以下となることを見出した。該色差ΔEが5.0以下である表面改質酸化チタンは分散性に優れ、活性酸素の発生を充分に抑制できる。
以上の観点から該色差ΔEは4.5以下であることが好ましく、4.0以下であることがより好ましく、3.5以下であることがさらに好ましく、3.0以下であることが特に好ましい。
【0017】
(好ましい実施形態に係る表面改質酸化チタンの性状)
表面改質酸化チタンのD90は、1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがより好ましく、0.4μm以下であることがさらに好ましく、0.3μm以下であることが特に好ましい。
D90が1μm以下である表面改質酸化チタンは、化粧料に配合する用途に有用である。D90の下限は0.05μmであってもよく、0.1μmであってもよい。
表面改質酸化チタンのD90の上限値および下限値は、任意に組み合わせることができる。表面改質酸化チタンのD90とは、粒度分布の累積体積百分率が90%のときの粒径である。
【0018】
表面改質酸化チタンの比表面積は特に限定されるものではないが、1.5m2/g以上であることが好ましく、10.0m2/g以上であることがより好ましく、30.0m2/g以上であることがさらに好ましい。
表面改質酸化チタンの比表面積は、例えば、300m2/g以下であってもよく、150m2/g以下であることが好ましく、100m2/g以下であることがより好ましい。必要に応じて、表面改質酸化チタンの比表面積は、80m2/g以下であってもよく、60m2/g以下であってもよく、50m2/g以下であってもよい。表面改質酸化チタンの比表面積の上限値および下限値は、任意に組み合わせることができる。
表面改質酸化チタンの比表面積が1.5~300m2/gであると、紫外線の光散乱および反射が起きやすい。
【0019】
表面改質酸化チタンの比表面積(単位:m2/g)とは、BET法で求めたBET比表面積のことである。
表面改質酸化チタンの比表面積を測定する方法としては、例えば、全自動比表面積測定装置(商品名:Macsorb HM Model-1201、マウンテック社製)を用いたBET法が挙げられる。
【0020】
(酸化チタン粒子)
ケイ素化合物で処理する前の酸化チタン粒子の比表面積は、特に限定されるものではないが、1.5m2/g以上であることが好ましく、10.0m2/g以上であることがより好ましく、30.0m2/g以上であることがさらに好ましい。該比表面積は、300m2/g以下であることが好ましく、150m2/g以下であることがより好ましい。必要に応じて、該比表面積は、100m2/g以下であってもよく、80m2/g以下であってもよく、50m2/g以下であってもよい。
【0021】
処理前の酸化チタン粒子の比表面積と、表面改質酸化チタンの比表面積とは、ケイ素化合物の付着の仕方によって多少前後するが大きくは変化しない。そのため、所望の比表面積の表面改質酸化チタンを得るためには、所望の比表面積を有する酸化チタン粒子を用いればよい。よって、表面改質酸化チタンの比表面積の詳細および好ましい態様は、酸化チタン粒子の比表面積と同内容とすることができる。
【0022】
ケイ素化合物で処理する前の酸化チタン粒子の平均一次粒子径は、3~200nmが好ましく、5~100nmがより好ましく、10~100nmがさらに好ましい。該平均一次粒子径が前記数値範囲内の下限値以上であると、活性酸素の発生をさらに充分に抑制できる表面改質酸化チタンが得られやすい。該平均一次粒子径が前記数値範囲内の上限値以下であると、分散性にさらに優れる表面改質酸化チタンが得られやすい。
ケイ素化合物で処理する前の酸化チタン粒子の平均一次粒子径の上限値および下限値は、任意に組み合わせることができる。ケイ素化合物で処理する前の酸化チタン粒子の平均一次粒子径は、電子顕微鏡下でランダムに選択した200個の粒子の粒子径を計測し、その粒子径の平均値として算出する。
【0023】
ケイ素化合物で処理する前の酸化チタン粒子の表面は、水酸化アルミニウムで表面処理されていてもよい。水酸化アルミニウムで表面処理された酸化チタン粒子をケイ素化合物でさらに処理することで、分散性に優れる表面改質酸化チタンが得られやすい。
【0024】
(ケイ素化合物)
ケイ素化合物としては、例えば、シラン化合物、シリコーン化合物、シランカップリング剤が挙げられる。
ケイ素化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
シラン化合物としては、例えば、アルキルシラン、フルオロアルキルシランが挙げられる。
アルキルシランとしては、例えば、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシランが挙げられる。
フルオロアルキルシランとしては、例えば、トリフルオロメチルエチルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシランが挙げられる。
シラン化合物としては、アルキルシランが好ましく、オクチルトリエトキシシランが特に好ましい。シラン化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
シリコーン化合物としては、例えば、シリコーンオイル、メチコン、ジメチコン、ハイドロゲンジメチコン、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルジメチコン、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン、(アクリレーツ/アクリル酸トリデシル/メタクリル酸トリエトキシシリルプロピル/メタクリル酸ジメチコン)コポリマー、トリエトキシカプリリルシランが挙げられる。
シリコーンオイルとしては、例えば、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンが挙げられる。
シリコーン化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。シリコーン化合物として、これらのシリコーン化合物の共重合体を用いてもよい。
【0027】
シランカップリング剤としては、例えば、下式(1)で表されるアルコキシ基を有するシランカップリング剤が挙げられる。
【0028】
R1Si(OR2)3・・・(1)
式(1)中、R1は、炭素数1~18のアルキル基、フルオロアルキル基またはフェニル基であり、R2は、炭素数1~4のアルキル基である。
【0029】
シランカップリング剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
シランカップリング剤としては、アルキルアルコキシシラン、アリルアルコキシシラン、アルキル基を側鎖に有するポリシロキサン、アリル基を側鎖に有するポリシロキサンが好ましい。
【0030】
アルキルアルコキシシランとしては、例えば、テトラメトキシオルソシラン、テトラエトキシオルソシラン、テトラプロポキシオルソシラン、テトラブトキシオルソシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシランが挙げられる。
アルキルアルコキシシランは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
シランカップリング剤として、シロキサン骨格を主鎖とし、かつ、分子構造内にアルコキシ基とアクリル基とを有するポリマー型シランカップリング剤を用いてもよい。該ポリマー型シランカップリング剤としては、例えば、ジメトキシジフェニルシラン-トリエトキシカプリリルシランクロスポリマー、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルジメチコン、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコンが挙げられる。
【0032】
シランカップリング剤として、フルオロアルキルアルコキシシランを用いてもよい。該フルオロアルキルアルコキシシランとしては、例えば、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、パーフルオロオクチルトリエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシランが挙げられる。
【0033】
シランカップリング剤としては、分子内にオクチル基を有するシランカップリング剤が好ましい。具体的には、ナチュラルオイルやエステル油からシリコーンオイルまでの幅広い極性の油相に対応可能なシランカップリング剤がより好ましい。該シランカップリング剤としては、n-オクチルトリエトキシシラン、n-オクチルトリメトキシシランおよびジメトキシジフェニルシラン-トリエトキシカプリリルシランクロスポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1種が特に好ましい。
【0034】
表面改質酸化チタンを化粧料に適用する場合、ケイ素化合物としては、例えば、メチコン、ジメチコン、ハイドロゲンジメチコン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、トリエトキシカプリリルシランが好ましく挙げられる。
【0035】
<表面改質酸化チタンの製造方法>
表面改質酸化チタンは、下記の(i)、(ii)および(iii)を含む製造方法によって製造できる。
(i):超臨界二酸化炭素の存在下にて、酸化チタン粒子およびケイ素化合物を容器内で接触させること。
(ii):該容器内を減圧することで、二酸化炭素を除去して酸化チタン粒子およびケイ素化合物の混合物を回収すること。
(iii):該混合物を加熱することで、酸化チタン粒子およびケイ素化合物を反応させること。
ここで、酸化チタン粒子およびケイ素化合物の詳細および好ましい態様は、上述の内容と同じである。
【0036】
二酸化炭素の臨界温度(Tc)は31℃であり、臨界圧力(Pc)は7.4MPaである。超臨界二酸化炭素とは、臨界温度(Tc)以上でかつ臨界圧力(Pc)以上の圧力である二酸化炭素をいう。
超臨界二酸化炭素には、気体に近い高拡散性、液体に近い溶解力、表面張力がないこと、瞬時に気体になるという性質上の特徴がある。超臨界二酸化炭素には、僅かな圧力変化によって密度が急変するという性質もある。
臨界圧力(Pc)および臨界温度(Tc)を僅かに超えた超臨界二酸化炭素の圧力をさらに増加させると、超臨界二酸化炭素の密度が急増する。そのため、臨界圧力を超えた領域で、二酸化炭素に対する溶質の溶解度が急激に増加する。逆に、超臨界二酸化炭素の圧力を減少させると、二酸化炭素に対する溶質の溶解度を急激に低下させることができる。そのため、減圧操作のみで溶質と超臨界二酸化炭素との分離が可能となる。
【0037】
前記(i)、(ii)および(iii)を含む製造方法によれば、超臨界二酸化炭素にケイ素化合物を溶解させることができる。超臨界二酸化炭素の存在下にて、酸化チタン粒子およびケイ素化合物を接触させることによって、酸化チタン粒子の表面にケイ素化合物を均一に効率よく吸着させることができる。
加えて、酸化チタン粒子およびケイ素化合物を接触させた後、系内の圧力、温度を調整することにより、超臨界二酸化炭素を瞬時に気体の二酸化炭素とすることができる。気体の二酸化炭素として乾燥させることで系内から瞬時に除去することができるため、乾燥時の凝集を抑制しながら、酸化チタン粒子およびケイ素化合物の混合物を効率よく回収することができる。
【0038】
回収した混合物においては、酸化チタン粒子の表面にケイ素化合物が均一かつ緻密に吸着した複合粒子が存在する。よって、超臨界二酸化炭素の存在下で混合した酸化チタン粒子およびケイ素化合物を加熱することで、酸化チタン粒子の表面を効率よく、かつ緻密にケイ素化合物で処理できる。結果、活性酸素の発生を充分に抑制でき、また、分散性に優れる表面改質酸化チタンが得られると考えられる。
【0039】
前記(i)において、超臨界二酸化炭素の存在下にて、酸化チタン粒子およびケイ素化合物を容器内で接触させる際の容器内の温度条件、圧力条件は、上述した超臨界二酸化炭素の性質を踏まえて当業者によって適宜設定され得る。前記(ii)において二酸化炭素を除去する際の容器内の温度条件、圧力条件も、上述した超臨界二酸化炭素の性質を踏まえて当業者によって適宜設定され得る。
【0040】
前記(iii)において、酸化チタン粒子およびケイ素化合物を反応させる際の条件は特に限定されない。酸化チタン粒子およびケイ素化合物の各性状に応じて、当業者によって適宜設定され得る。
【0041】
製造時の酸化チタン粒子およびケイ素化合物の混合比率は、特に限定されるものではない。例えば、ケイ素化合物の割合は、酸化チタン粒子100質量部に対して1~100質量部であることが好ましく、2~50質量部であることがより好ましく、2~30質量部であることがさらに好ましい。ケイ素化合物の割合が前記数値範囲内の下限値以上であると、処理反応が進みやすいため、酸化チタン粒子の表面を充分に改質しやすい。結果、活性酸素の発生をさらに充分に抑制できる表面改質酸化チタンが得られやすい。ケイ素化合物の割合が前記数値範囲内の上限値以下であると、製造物中にケイ素化合物が単体で遊離しにくくなる。そのため、処理時間の短縮を図ることができる。
【0042】
製造時の酸化チタン粒子およびケイ素化合物の混合比率は、得られる表面改質酸化チタンの粉体における酸化チタン粒子およびケイ素化合物に由来する化学構造の質量比とは、多少前後するが大きくは変化しない。そのため、所望の質量比の表面改質酸化チタンの粉体を得るためには、製造時の酸化チタン粒子およびケイ素化合物の混合比率を所望の値とすればよい。よって、表面改質酸化チタンにおける酸化チタン粒子およびケイ素化合物に由来する化学構造の質量比の詳細および好ましい態様は、製造時の酸化チタン粒子およびケイ素化合物の混合比率と同内容とすることができる。
【0043】
<表面改質酸化チタンの用途>
以下、表面改質酸化チタンの用途についていくつかの例を挙げながら説明する。以下の記載は用途の代表例であり、これらに限定されるものではない。
【0044】
(分散液)
分散液は、表面改質酸化チタンと分散媒とを含む。分散液は、粘度が高いペースト状の分散体を包含し得る。
分散媒は、表面改質酸化チタンを分散できるものであれば、特に限定されない。例えば、表面改質酸化チタンを化粧料用途で用いる場合には、化粧料に処方することが可能な分散媒を用いればよい。
【0045】
分散媒としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン;
オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状ポリシロキサン;
アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン;
流動パラフィン、スクワラン、イソパラフィン、分岐鎖状軽パラフィン、ワセリン、セレシン、ドデカン、イソドデカン、トリデカン、テトラデカン、ヘキサデカン、イソヘキサデカン、オクタデカン等の炭化水素油;
イソプロピルミリステート、セチルイソオクタノエート、グリセリルトリオクタノエート、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、安息香酸アルキル(C12-15)等のエステル油;
ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸;
ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オクチルドデカノール、イソステアリルアルコール等の高級アルコール;のような疎水性の分散媒が挙げられる。
【0046】
疎水性の分散媒の他にも、分散媒として、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール、オクタノール、グリセリン等のアルコール;
酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン等のエステル;
ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル;
ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、1-フェニルプロパン、イソプロピルベンゼン、n-ブチルベンゼン、tert-ブチルベンゼン、sec-ブチルベンゼン、o-、m-またはp-キシレン、2-、3-または4-エチルトルエン等の芳香族炭化水素;
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン;
ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド;アセトニトリル等のニトリル;
オレイン酸、ホホバ油、オリーブ油、ココナッツオイル、グレープシード油、ヒマシ油、米ぬか油、馬油、ミンク油等のナチュラルオイル;が挙げられる。
分散媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
表面改質酸化チタンを化粧料用途で用いる場合には、分散媒としては、鎖状ポリシロキサン、環状ポリシロキサン、変性ポリシロキサン、炭化水素油、エステル油、高級脂肪酸、高級アルコール、ナチュラルオイル、エタノール、グリセリンが好ましい。
【0048】
分散液は、その特性を損なわない範囲において、一般的に用いられる添加剤をさらに含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、防腐剤、分散剤、分散助剤、安定剤、水溶性バインダー、増粘剤、油溶性薬剤、油溶性色素類、油溶性蛋白質類、UV吸収剤が挙げられる。
【0049】
分散液における粒度分布の累積体積百分率が50%のときの粒径(D50)は特に限定されるものではないが、300nm以下であることが好ましく、250nm以下であることがより好ましく、200nm以下であることがさらに好ましい。D50の上限値は、150nm以下であってもよく、100nm以下であってもよい。該D50の下限値は、特に限定されず、例えば、20nm以上であってもよく、40nm以上であってもよく、60nm以上であってもよい。D50の上限値および下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0050】
分散液における粒度分布の累積体積百分率が90%のときの粒径(D90)は、350nm以下であることが好ましく、300nm以下であることがより好ましく、250nm以下であることがさらに好ましい。
該D90の下限値は、特に限定されず、例えば、60nm以上であってもよく、80nm以上であってもよく、100nm以上であってもよい。D90の上限値および下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0051】
分散液のD50が300nm以下の場合には、この分散液を用いて製造した化粧料を皮膚に塗布した場合に、表面改質酸化チタンが均一に分布しやすく、紫外線遮蔽効果が向上するため好ましい。分散液のD90が350nm以下の場合には、分散液の透明性が高くなるため好ましい。
【0052】
分散液における粒度分布の累積体積百分率の測定方法としては、例えば、動的光散乱式粒径分布測定装置(マイクロトラック・ベル社製、型番:NANOTRAC WAVE)を用いた方法が挙げられる。
【0053】
分散液における表面改質酸化チタンの含有量は、目的とする分散液の特性に応じて適宜調整される。
分散液を化粧料に用いる場合、分散液における表面改質酸化チタンの含有量は、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましい。また、分散液における表面改質酸化チタンの含有量は、90質量%以下であることが好ましく、85質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることがさらに好ましい。
分散液における表面改質酸化チタンの含有量の上限値および下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0054】
分散液における表面改質酸化チタンの含有量が前記数値範囲内であると、分散液において表面改質酸化チタンが充分に高濃度となりやすい。そのため、化粧料の処方の自由度が向上しやすい。また、分散液の粘度を取り扱いが容易な範囲に調整しやすい。
【0055】
表面改質酸化チタンの含有量が37.5質量%であるとき、分散液の20℃における粘度は5000mPa・s以下が好ましく、3000mPa・s以下がより好ましく、1000mPa・s以下がさらに好ましい。該粘度が前記上限値以下であると、分散性に優れた分散液であると言える。分散液の該粘度の下限値は特に限定されるものではないが、例えば、10mPa・sであってもよく、100mPa・sであってもよく、300mPa・sであってもよい。
分散液の20℃における粘度は、音叉振動式粘度計(株式会社エー・アンド・デイ社 型番:SV-10)によって測定される。測定値はサンプル測定開始後5分経過したときの値を用いる。
【0056】
分散液の製造方法は、特に限定されない。例えば、分散装置を用いて表面改質酸化チタンを分散媒に機械的に分散させる方法が挙げられる。
分散装置は特に限定されない。例えば、撹拌機、自公転式ミキサー、ホモミキサー、超音波ホモジナイザー、サンドミル、ボールミル、ロールミルが挙げられる。
【0057】
(組成物)
組成物は、表面改質酸化チタンと分散媒と樹脂とを含む。
組成物における表面改質酸化チタンの含有量は、目的とする組成物の特性に応じて適宜調整される。組成物における表面改質酸化チタンの含有量は、例えば、10~40質量%であることが好ましく、20~40質量%であることがより好ましい。
【0058】
組成物における表面改質酸化チタンの含有量が上記範囲であると、組成物において表面改質酸化チタンが高濃度になりやすい。そのため、表面改質酸化チタンの特性が充分に得られ、かつ、表面改質酸化チタンを均一に分散した組成物が得られる。
【0059】
組成物の分散媒は、工業用途で一般的に用いられるものであれば特に限定されない。
分散媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール;
酢酸メチル、酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン;等が挙げられる。
組成物における分散媒の含有量は、特に限定されず、目的とする組成物の特性に応じて適宜調整される。
【0060】
樹脂は、工業用途で一般的に用いられるものであれば特に限定されない。樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂が挙げられる。
組成物における樹脂の含有量は、特に限定されず、目的とする組成物の特性に応じて適宜調整される。
【0061】
組成物は、その特性を損なわない範囲において、一般的に用いられる添加剤を含んでいてもよい。
添加剤としては、例えば、重合開始剤、分散剤、防腐剤が挙げられる。
【0062】
組成物の製造方法は、特に限定されない。例えば、表面改質酸化チタン、樹脂および分散媒を混合装置で機械的に混合する方法が挙げられる。上述の分散液と樹脂とを混合装置で機械的に混合する方法で組成物を調製してもよい。
混合装置としては、例えば、撹拌機、自公転式ミキサー、ホモミキサー、超音波ホモジナイザーが挙げられる。
【0063】
組成物の用途は特に限定されない。例えば、ロールコート法、フローコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、はけ塗り法、浸漬法等の通常の塗布方法により、ポリエステルフィルム等のプラスチック基材に組成物を塗布することにより、塗膜を形成することができる。
【0064】
(化粧料)
化粧料は、表面改質酸化チタンと化粧品基剤原料とを含む。化粧料は、表面改質酸化チタンおよび化粧品基剤原料に加えて、分散媒をさらに含むことがある。
化粧品基剤原料とは、化粧品の主成分となり得る原料のことである。化粧品基剤原料としては、例えば、油性原料、水性原料、界面活性剤、粉体原料が挙げられる。
【0065】
油性原料としては、例えば、油脂、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル油が挙げられる。
水性原料としては、例えば、精製水、アルコール、増粘剤が挙げられる。
粉末原料としては、例えば、有色顔料、白色顔料、パール剤、体質顔料が挙げられる。
【0066】
化粧品基剤原料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。化粧品基剤原料としては、油性原料の単独使用、粉末原料の単独使用、油性原料および粉末原料の併用が好ましく、油性原料の単独使用がより好ましい。
【0067】
化粧料においては、表面改質酸化チタンが油成分または油相に含まれていることが好ましい。
油性化粧料やエマルションの油相に用いられる油成分は、化粧料で一般的に使用されているものであれば特に限定されない。例えば、シリコーンオイル、油脂、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル油、ナチュラルオイルが挙げられる。
【0068】
化粧料における表面改質酸化チタンの含有量は、目的とする化粧料の特性に応じて適宜調整される。例えば、表面改質酸化チタンの含有量の下限は、0.01質量%以上であってもよく、0.1質量%以上であってもよく、1質量%以上であってもよい。また、表面改質酸化チタンの含有量の上限は、50質量%以下であってもよく、40質量%以下であってもよく、30質量%以下であってもよい。
化粧料における表面改質酸化チタンの含有量の上限値および下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0069】
化粧料は、油性化粧料であってもよく、表面改質酸化チタンを油相に含むエマルションタイプの化粧料であってもよく、表面改質酸化チタンを油剤と混合した後に、油剤を除去して成型する粉末固形化粧料等のような、その製造過程または最終形態において、表面改質酸化チタンが油成分(油相)に含有されている化粧料であってもよい。
エマルションタイプの化粧料は、O/W型のエマルションであってもよく、W/O型のエマルションであってもよい。
【0070】
化粧料は、例えば、乳液、クリーム、サンスクリーン、ファンデーション、口紅、頬紅、アイシャドー等の化粧品の基剤に、表面改質酸化チタンまたは上述の分散液を配合することにより得られる。
化粧料は、例えば、表面改質酸化チタンまたは上述の分散液を油相に配合することでO/W型のまたはW/O型のエマルションとした後、そのエマルションと化粧料の原料とを配合することにより得られる。
【0071】
以下、化粧料の例として、日焼け止め化粧料について具体的に説明する。
紫外線を、特に長波長紫外線(UVA)を効果的に遮蔽し、かつ、粉っぽさやきしみの少ない良好な使用感を得るためには、日焼け止め化粧料における表面改質酸化チタンの含有量の下限は、0.01質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく、1質量%以上であることがさらに好ましい。また、日焼け止め化粧料における表面改質酸化チタンの含有量の上限は、50質量%以下であってもよく、40質量%以下であってもよく、30質量%以下であってもよい。日焼け止め化粧料における表面改質酸化チタンの含有量の上限値および下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0072】
日焼け止め化粧料は、必要に応じて、疎水性分散媒、表面改質酸化チタン以外の無機微粒子や無機顔料、親水性分散媒、油脂、界面活性剤、保湿剤、増粘剤、pH調整剤、栄養剤、酸化防止剤、香料等をさらに含んでいてもよい。
【0073】
疎水性分散媒としては、例えば、流動パラフィン、スクワラン、イソパラフィン、分岐鎖状軽パラフィン、ワセリン、セレシン等の炭化水素油;
イソプロピルミリステート、セチルイソオクタノエート、グリセリルトリオクタノエート等のエステル油;
デカメチルシクロペンタシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーン油;
ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸;
ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール等の高級アルコール;が挙げられる。
【0074】
化粧料に含まれる表面改質酸化チタン以外の無機微粒子や無機顔料としては、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム(アパタイト)、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、カオリン、タルク、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、黄酸化鉄、γ-酸化鉄、チタン酸コバルト、コバルトバイオレット、酸化ケイ素が挙げられる。
【0075】
日焼け止め化粧料は、有機系紫外線吸収剤を少なくとも1種さらに含んでもよい。
有機系紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾイルメタン系紫外線吸収剤、安息香酸系紫外線吸収剤、アントラニル酸系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、ケイ皮酸系紫外線吸収剤、シリコーン系ケイ皮酸紫外線吸収剤が挙げられる。
【0076】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2,2’-ヒドロキシ-5-メチルフェニルベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニルベンゾトリアゾールが挙げられる。
【0077】
ベンゾイルメタン系紫外線吸収剤としては、例えば、ジベンザラジン、ジアニソイルメタン、4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン、1-(4’-イソプロピルフェニル)-3-フェニルプロパン-1,3-ジオン、5-(3,3’-ジメチル-2-ノルボルニリデン)-3-ペンタン-2-オンが挙げられる。
【0078】
安息香酸系紫外線吸収剤としては、例えば、パラアミノ安息香酸(PABA)、PABAモノグリセリンエステル、N,N-ジプロポキシPABAエチルエステル、N,N-ジエトキシPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAブチルエステル、N,N-ジメチルPABAメチルエステルが挙げられる。
【0079】
アントラニル酸系紫外線吸収剤としては、例えば、ホモメンチル-N-アセチルアントラニレートが挙げられる。
【0080】
サリチル酸系紫外線吸収剤としては、例えば、アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p-2-プロパノールフェニルサリシレートが挙げられる。
【0081】
ケイ皮酸系紫外線吸収剤としては、例えば、オクチルメトキシシンナメート(メトキシケイヒ酸エチルヘキシル)、ジ-パラメトキシケイ皮酸-モノ-2-エチルヘキサン酸グリセリル、オクチルシンナメート、エチル-4-イソプロピルシンナメート、メチル-2,5-ジイソプロピルシンナメート、エチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、メチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、プロピル-p-メトキシシンナメート、イソプロピル-p-メトキシシンナメート、イソアミル-p-メトキシシンナメート、オクチル-p-メトキシシンナメート(2-エチルヘキシル-p-メトキシシンナメート)、2-エトキシエチル-p-メトキシシンナメート、シクロヘキシル-p-メトキシシンナメート、エチル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、2-エチルヘキシル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、グリセリルモノ-2-エチルヘキサノイル-ジパラメトキシシンナメートが挙げられる。
【0082】
シリコーン系ケイ皮酸紫外線吸収剤としては、例えば、[3-ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル-1-メチルプロピル]-3,4,5-トリメトキシシンナメート、[3-ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル-3-メチルプロピル]-3,4,5-トリメトキシシンナメート、[3-ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリルプロピル]-3,4,5-トリメトキシシンナメート、[3-ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリルブチル]-3,4,5-トリメトキシシンナメート、[3-トリス(トリメチルシロキシ)シリルブチル]-3,4,5-トリメトキシシンナメート、[3-トリス(トリメチルシロキシ)シリル-1-メチルプロピル]-3,4-ジメトキシシンナメートが挙げられる。
【0083】
上記以外の有機系紫外線吸収剤としては、例えば、3-(4’-メチルベンジリデン)-d,l-カンファー、3-ベンジリデン-d,l-カンファー、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチルエステル、2-フェニル-5-メチルベンゾキサゾール、5-(3,3’-ジメチル-2-ノルボルニリデン)-3-ペンタン-2-オン、シリコーン変性紫外線吸収剤、フッ素変性紫外線吸収剤が挙げられる。
【実施例0084】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明する。ただし、本発明は以下の実施例の記載に限定されない。
【0085】
<原料、略称>
(酸化チタン粒子)
TTO-51A:水酸化アルミニウム(Al(OH)3)で表面処理された、平均一次粒子径が20nmである二酸化チタン微粒子の粉体(石原産業社製品)。
TTO-55A:水酸化アルミニウム(Al(OH)3)で表面処理された、平均一次粒子径が40nmである二酸化チタン微粒子の粉体(石原産業社製品)。
【0086】
(ケイ素化合物)
KF-9901:ハイドロゲンジメチコン(信越化学工業社製品)
KF-99:メチコン(信越化学工業社製品)
KBE-3083:オクチルトリエトキシシラン(信越化学工業社製品)
【0087】
<実施例1>
TTO-51A:100gとKF-9901:3gを混合し、耐圧容器内に投入した。二酸化炭素ガスを耐圧容器に注入し、超臨界状態となるまで圧力を上げ、温度を調整した。その後、超臨界二酸化炭素の存在下にて、TTO-51AおよびKF-9901を混合することで、TTO-51Aの表面にKF-9901を充分に接触させた。
次いで、耐圧容器内を減圧することで、超臨界二酸化炭素を二酸化炭素ガスとした。二酸化炭素ガスを分離することで、混合物の粉体を取り出した。その後、粉体を120℃のオーブン内に入れることで加熱処理した。加熱処理によって、TTO-51AおよびKF-9901を反応させ、実施例1の表面改質酸化チタンの粉体を得た。
【0088】
<実施例2~6>
酸化チタン粒子の種類、ケイ素化合物の種類、酸化チタン粒子に対するケイ素化合物の混合比率(処理剤量)を表1に示す通りに変更した以外は、実施例1と同じ手法により各例の表面改質酸化チタンの粉体を得た。
【0089】
<比較例1>
TTO-51Aをヘンシェルミキサーで高速撹拌中に、KF-9901をTTO-51Aに対して混合比率(処理剤量)が3質量%となるように液滴下した。5分間撹拌後に得られた粉体を120℃のオーブンで加熱処理することで比較例1の粉体を得た。
【0090】
<比較例2~6、9、10>
酸化チタン粒子の種類、ケイ素化合物の種類、酸化チタン粒子に対するケイ素化合物の混合比率(処理剤量)を表1、表2に示す通りに変更した以外は、比較例1と同じ手法により各例の粉体を得た。
【0091】
<比較例7>
KF-9901を秤量し濃度が3質量%となるようにメチルエチルケトンに溶解した。この溶液100gにTTO-51Aを100g加えた後に、超音波分散機(エスエムテー社製品「UH-600S」、ホーン直径20mm、目盛7)で超音波照射を5分間行った。次いで、メチルエチルケトンをロータリーエバポレーターで完全に除去した後、得られた粉体を120℃のオーブンで加熱処理することで比較例7の粉体を得た。
【0092】
<比較例8>
比較例8では、TTO-51Aを表面処理せずにそのまま以下の評価を行った。
【0093】
<測定、評価>
(色差ΔE)
ビタミンE混合試験の前後の色差ΔEは、以下に述べる通りの手法で測定した。
ビタミンEと混合する前の各例の粉体について、以下の通り測定を実施した。
粉体:3gとシクロペンタシロキサン:5gとを混合することでブランク溶液を調製した。次いで、ブランク溶液を入れた光路長0.1mm石英セルを紫外可視近赤外分光光度計(日立ハイテクサイエンス社製、型番:UH4150)にセットした。積分球を用いて混合液の拡散反射スペクトルを測定した後、測定結果からブランク溶液のL1
*、a1
*、b1
*を算出した。
【0094】
ビタミンEと混合した後の各例の粉体について、以下の通り測定を実施した。
ビタミンEおよびシクロペンタシロキサンを混合することで、ビタミンE濃度が2質量%のシクロペンタシロキサン混合溶媒を予め調製した。
粉体:3gとシクロペンタシロキサン混合溶媒:5gとを混合することで、ビタミンE混合済みのサンプル溶液を調製した。サンプル溶液について上述した手法により拡散反射スペクトルを測定した後、測定結果からサンプル溶液のL2
*、a2
*、b2
*を算出した。
【0095】
以上の結果から、色差ΔE=((L2
*-L1
*)2+(a2
*-a1
*)2+(b2
*-b1
*)2)1/2を算出した。
【0096】
(分散性)
粉体:30gとシクロペンタシロキサン:50gとを混合した。得られた分散液の20℃、における粘度を音叉振動式粘度計(株式会社エー・アンド・デイ社 型番:SV-10)を用いて測定した。分散状態を以下の基準で測定した。
A:分散液の粘度が1000mPa・s未満である。分散状態は良好である。
B:分散液の粘度が1000mPa・s以上5000mPa・s未満である。分散状態はやや不良である。
C:分散液の粘度が5000mPa・s以上である。分散状態は不良である。
【0097】
<結果>
各例の結果を表1、表2に示す。
【0098】
【0099】
【0100】
実施例1~6では、色差ΔEが5.0以下であった。そのため、活性酸素の発生を充分に抑制できていた。また、分散性に優れる表面改質酸化チタンが得られた。対して、比較例1~10では、分散性に劣る結果であった。色差ΔEが5.0を超えた比較例1~10では、活性酸素の発生を充分に抑制できないと考えられる。