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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092137
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】分離膜カセット
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20230101AFI20240701BHJP
   B01D 63/08 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
C02F1/44 A
B01D63/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207854
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】安東 秀明
(72)【発明者】
【氏名】服部 翔太
(72)【発明者】
【氏名】井上 駿之介
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA02
4D006HA48
4D006JA18A
4D006JA19A
4D006JA30A
4D006JA31Z
4D006KA31
4D006KA44
4D006KB22
4D006KC02
4D006KC14
4D006MA03
4D006PA01
4D006PB08
4D006PB24
4D006PC62
(57)【要約】
【課題】膜保護板と膜保護板に隣り合う分離膜エレメント、および、膜保護板に近接する分離膜エレメント同士の散気流路が狭くなっても、分離膜カセットの外に散気が逃げない分離膜カセットを提供することにある。
【解決手段】シート状の分離膜の透過側の面が互いに対向するように袋状に貼り合わされ、前記分離膜の間に集水流路が配置されるとともに、前記集水流路内の透過水を前記分離膜の外部へ排出する集水部を有する分離膜エレメントを、対向する2枚の膜保護板の間に、前記膜保護板と膜面が平行になるように複数配列させる分離膜カセットであって、前記分離膜カセットの側面において一方の前記膜保護板から他の前記膜保護板に向けてリブを備えることを特徴とする分離膜カセット。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の分離膜の透過側の面が互いに対向するように袋状に貼り合わされ、対向する前記分離膜の間に集水流路が配置されるとともに、前記集水流路内の透過水を前記分離膜の外部へ排出する集水部を有する分離膜エレメントを、対向する2枚の膜保護板の間に、前記膜保護板と膜面が平行になるように複数配列させる分離膜カセットであって、前記分離膜カセットの側面において一方の前記膜保護板から他の前記膜保護板に向けてリブを備えることを特徴とする分離膜カセット。
【請求項2】
前記リブが、前記膜保護板と前記膜保護板に隣り合う分離膜エレメントとの隙間を覆うものであることを特徴とする請求項1に記載の分離膜カセット。
【請求項3】
前記リブが、前記膜保護板と前記膜保護板に隣り合う分離膜エレメントとの隙間、および、分離膜エレメント間の隙間を覆うものであることを特徴とする請求項1に記載の分離膜カセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜分離活性汚泥処理で使用される分離膜カセットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、平膜状や中空糸膜状の分離膜は、水処理分野や食品工業分野に使われるようになってきており、例えば分離膜を配設した分離膜エレメントや、この分離膜エレメントを複数配置した分離膜モジュールが水浄化処理装置に使用されている。分離膜エレメントによる分離法に使用される分離膜には、その孔径や分離機能の点から、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜、逆浸透膜、正浸透膜などがあり、これらの膜は、例えば海水、かん水、有害物を含んだ水などから飲料水を得る場合や、工業用超純水の製造、排水処理、有価物の回収などに用いられており、目的とする分離成分及び分離性能によって使い分けられている。
【0003】
また、分離膜活性汚泥法(Membrane Bioreactor; MBR)は、活性汚泥槽に分離膜を浸漬し、活性汚泥と処理水を膜で分離する処理方法である。MBRは、省スペースで、良好な水質が得られるため、国内では小規模な施設を中心に、新設の多い海外では10万m/dayを超える大規模な施設に導入が進められている。
【0004】
活性汚泥処理は、処理槽内で好気性の微生物を飼育するために槽内への散気が必要である。この散気する装置を具備したエアレーションブロック(ABL)を、膜ユニット(以下、「エレメントブロック(EBL)」という)の下方に据え付ければ、散気による気液混合流がエレメントブロック内を上昇し、膜表面(膜面)の汚れをかきとることができるので、膜面洗浄しつつ固液分離を行うことができ、低コストでの膜ろ過運転が可能となる。この場合、通常、エレメントブロックとエアレーションブロックを合わせて分離膜モジュールと称されている。
【0005】
従来、平膜状の分離膜エレメントは、平板状で強度のある多孔性の支持板の表裏全面に、膜(半透膜)の周辺部分を熱融着などで固定したものである。この分離膜エレメントを複数枚平行に重ね、内部に溝を有し上下のみを開放した直方体状のモジュールハウジングに挿入したものがエレメントブロックである。
【0006】
また、近年では支持板を使用しない袋状の分離膜エレメントが主流となりつつある。分離膜の周辺をシールし、一部に穴をあけて、透過液の取り出し口を取り付けたものである。この袋状の分離膜エレメントは軽量であることから、複数枚束ねて使用することができ、これらは分離膜カセットと称されている。この分離膜カセットを、モジュールフレーム内に単一もしくは複数個収容したものが従来とは別のエレメントブロックである。
【0007】
支持板を使用しない袋状の分離膜エレメントについては、特許文献1に示すような分離膜モジュールが知られている。特許文献1の分離膜モジュールの構造を模式的に示した斜視図を図1に、この分離膜モジュールに収容される分離膜カセットの構造を模式的に示した斜視図を図2に示す。図2では、対向する2枚の膜保護板の間に、膜保護板と膜面が平行になるように複数配列させる分離膜カセットの構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2022-101940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の分離膜モジュールは、可撓性で、軽量な支持板のないエレメント構造のため、隣り合う分離膜エレメント同士、および分離膜エレメントと膜保護板の間隔を狭くすることができる。しかしながら、下方からの散気に対して、分離膜エレメント同士は互いに撓みながらも散気流路を確保することができるが、汚泥性状によっては、分離膜カセット側面の膜保護板と膜保護板に隣り合う分離膜エレメントについては、分離膜エレメントは撓むが、膜保護板は分離膜エレメントに比べて剛性があり、撓みにくいため、相対的に散気流路が狭くなる場合があった。また、運転期間によっては、気液混合流による分離膜カセット内外の静圧差により、膜保護板が分離膜エレメント方向に変形して散気流路が狭くなることもあった。さらには、運転トラブルにより散気装置の散気穴が詰まるなど、分離膜カセットの中央部に散気が偏った場合、複数の分離膜エレメントが膜保護板の方向に撓み、膜保護板に隣り合う分離膜エレメントが膜保護板に押し付けられることで、膜保護板と膜保護板に隣り合う分離膜エレメントの散気流路が狭くなることもあった。この場合、膜保護板に近接する分離膜エレメント同士の散気流路も狭くなる。これらのように、膜保護板と膜保護板に隣り合う分離膜エレメント、および、膜保護板に近接する分離膜エレメント同士の散気流路が狭くなると、分離膜カセットの外に散気が漏れて、分離膜エレメントの膜面に汚泥が詰まり、運転性能が低下するという課題があった。
【0010】
本発明の目的は、膜保護板と膜保護板に隣り合う分離膜エレメント、および、膜保護板に近接する分離膜エレメント同士の散気流路が狭くなっても、分離膜カセットの外に散気が逃げない分離膜カセットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、かかる課題を解決するため、以下の構成を有するものである。
【0012】
(1)シート状の分離膜の透過側の面が互いに対向するように袋状に貼り合わされ、前記分離膜の間に集水流路が配置されるとともに、前記集水流路内の透過水を前記分離膜の外部へ排出する集水部を有する分離膜エレメントを、対向する2枚の膜保護板の間に、前記膜保護板と膜面が平行になるように複数配列させる分離膜カセットであって、前記分離膜カセットの側面において一方の前記膜保護板から他の前記膜保護板に向けてリブを備えることを特徴とする分離膜カセット。
【0013】
(2)前記リブが、前記膜保護板と前記膜保護板に隣り合う分離膜エレメントとの隙間を覆うものであることを特徴とする(1)に記載の分離膜カセット。
【0014】
(3)前記リブが、前記膜保護板と前記膜保護板に隣り合う分離膜エレメントとの隙間、および、分離膜エレメント間の隙間を覆うものであることを特徴とする(1)に記載の分離膜カセット。
【発明の効果】
【0015】
可撓性で、軽量な支持板のないエレメント構造であって、分離膜カセット側面の膜保護板と膜保護板に隣り合う分離膜エレメント、および、膜保護板に近接する分離膜エレメント同士の散気流路が狭くなるような分離膜カセットの状態においても、分離膜カセットの外に散気が漏れることがなく、分離膜エレメントの膜面に汚泥が詰まることを防止し、運転性能を高く維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】特許文献1の分離膜モジュールの構造を模式的に示した斜視図である。
図2】特許文献1の分離膜カセットの構造を模式的に示した斜視図である。
図3】本発明の分離膜カセット、モジュールを構成する分離膜エレメントの実施形態の一例を、分離膜エレメントの厚さ方向中心の平面で切断して示した断面図である。
図4】従来技術の分離膜カセットの実施形態の一例を示す斜視図である。
図5】従来技術の分離膜モジュールの実施形態の一例を示す斜視図である。
図6】従来技術のエレメントブロックの実施形態の一例を示す斜視図である。
図7】本発明の分離膜カセットの実施形態の一例を示す斜視図である。
図8図7の上面図である。
図9図8の概略図である。
図10図8の別の概略図である。
図11】本発明の分離膜カセットの別の実施形態の一例を示す斜視図である。
図12】本発明の分離膜カセットの上面概略図で、リブ構造を模式的に示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明するが、本発明はこれら図面に示す実施態様に限定されるものではない。
【0018】
図3は、本発明の分離膜カセット、モジュールを構成する分離膜エレメント1の実施形態の一例を、分離膜エレメント1の厚さ方向中心の平面で切断して示す断面図である。また分離膜エレメント1とともに、集水管7およびチューブ6を記載する。
【0019】
分離膜エレメント1は、主として2枚の平膜状の分離膜2を、透過側の面が互いに対向するように配置した分離膜対で構成し、この分離膜対の周縁部4が封止された袋状の構造をしている。分離膜エレメント1は、封止した周縁部4よりも内側の分離膜2の透過側表面領域にろ過水が流通する集水流路部材を備えている。
【0020】
ここで、「分離膜対」を構成する分離膜は、分離可能な2枚の分離膜であってもよいし、折り畳まれた1枚の分離膜であってもよい。なお、対向する分離膜の透過側の面の間には、間隙が設けられる。
【0021】
集水流路部材は、通水性のあるシート状部材、例えば不織布、織布、ネット等でもよいが、分離膜対の互いに対向する透過側の面の両方に接着する樹脂部3によって形成されることが好ましい。樹脂部3の形状は、好ましくはドット状、線状、または格子状であるとよい。また周縁部4の一部には集水部5が設けられ、この集水部5において集水流路が外部と連通し、ろ過水が取り出される。
【0022】
分離機能層としては、孔径制御、耐久性の点で架橋高分子が好ましく使用され、成分の分離性能の点で多孔性支持層上に、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物とを重縮合させてなる分離機能層、有機無機ハイブリッド機能層などが積層された膜を好適に用いることができる。また、セルロース膜、ポリフッ化ビニリデン膜、ポリエーテルスルホン膜、ポリスルホン膜のような多孔性支持層であって、分離機能と支持体機能との両方を有する膜を用いることもできる。つまり、分離機能層と多孔性支持層とが、単一の層で実現されてもよい。
【0023】
図4に、従来技術の分離膜カセットの実施形態の一例を示す。分離膜カセット10は、例えば、分離膜エレメント1の四隅に設けた貫通孔11にそれぞれシャフト16を通すようにして、分離膜エレメント1を複数平行に並べることで構成される。
【0024】
隣接する分離膜エレメントの間には、被処理水およびエアーの流路を確保するためのクリアランス保持部材12が設けられ、クリアランス保持部材12は、特に限定されるものではないが、耐久性および衝撃吸収性の観点から、ポリウレタン製のワッシャやカラー、またはニトリルゴムやシリコンゴムに代表されるゴム製ワッシャやカラーなどが好適に使用される。このようなクリアランス保持部材12を配置することで、分離膜カセット10には適度な剛性とともに曝気のエネルギーを逃がすような柔軟性が加わり、下部の散気装置(図示せず)からの散気に対する優れた耐久性を示すこととなる。
【0025】
集水ノズル5は、貫通孔11の位置と干渉しないように、分離膜エレメント1の側面に配列されている。「干渉しないように」とは、集水ノズル5が、貫通孔11とは離間するように設けられること、つまり異なる位置に設けられることを意味する。集水ノズル5が集水流路に連通するのに対して、貫通孔11は、透過水の漏れ防止のために、封止部または樹脂部等によって集水流路とは隔離された構造とする。よって、集水ノズル5と貫通孔11とは、離間するように設けられることが好ましい。
【0026】
分離膜カセット10の両端部には、EBLフレームに収容する際の、膜面への物品衝突による傷防止やハンドリング性を考慮して膜保護板13が備えられている。膜保護板13は、例えば、分離膜カセットを懸架するためのシャフトに、クリアランス保持部材12を介して膜保護板13を配置させ、膜保護板13の外部で、ねじ切りをしたシャフト16にナットを用いて固定すればよい。ここでの膜保護板13の断面形状は板状であり、材質は、ステンレス、アルミなどの各種金属、PET樹脂、PP樹脂、PVC樹脂やABS樹脂などの各種熱可塑性樹脂、など任意に選択可能である。また、膜保護板13の上部には、EBLフレームに収容する際のハンドリング性を考慮して、取手部14が備えられている。
【0027】
被処理水およびエアーの流路を確保するために、分離膜カセット10の下部には櫛歯状部材(図示せず)を、膜保護板13の下部には櫛歯状部材を設置するための固定部15を備えた方が好ましい。
【0028】
図5に、従来技術の分離膜モジュール20の実施形態の一例を示す。分離膜カセット10を単一または複数個収容するためのEBLフレーム21の下方には、ブロワ(図示せず)に連結されている散気装置22があり、活性汚泥槽内の被処理水中に沈められた分離膜モジュール20の分離膜エレメントに向けて散気が噴出され、散気水流により分離膜エレメント1の表面が物理洗浄され、被処理水である汚泥をろ過する際の目詰まりを防止する。
【0029】
分離膜エレメント1を透過した水は、平膜に挟まれた内部の集水流路を通って、集水部に取り付けられた集水ノズル5を経由して分離膜エレメントの系外に取り出される。集水ノズルはチューブ6を介して分離膜カセットの集水管7に接続され、集水管の下流側に接続された吸引ポンプ(図示せず)により、分離膜エレメント1内部に陰圧をかけ、透過水を取り出す。
【0030】
図6に、従来技術のエレメントブロック(EBL)25の実施形態の一例を示す。EBLフレーム21は、分離膜カセット10を収容するためのラックの役割を果たす構造物である。EBLフレーム21の下部には、散気装置(図示せず)が配設され、EBLフレーム21は鉛直方向の下部および上部に、分離膜エレメントに散気・汚泥流を流せるようにするための上下面開口部26を有する。EBLフレーム21は散気装置とはボルト等で結合されていても良いし、あるいは、散気装置の上部にガイド等を介してフレームを積載させても良い。EBLフレーム21は、被処理液中に浸漬させ、ぬれて重量の増加した分離膜モジュールを、被処理液(汚泥)貯留タンク外部につり上げる際に、自身あるいは分離膜モジュールの形状を保持可能な強度を有するものであれば、構造、部材は特に限定されない。
【0031】
EBLフレーム21は、側面にも分離膜カセット10を出し入れ可能な側面開口部27を有する。このような構造にすることで、分離膜カセット10毎にフレームより着脱可能となるため、メンテナンスおよび分離膜カセット10の交換または取り出しを容易にすることができる。
【0032】
また、分離膜カセット10を出し入れする際、シャフトの端部ないしは固定部材を通過せしめるためのレールをフレームに備えることが好ましい。こうすることで、分離膜カセットを懸架させる際の位置決めになるとともに、ハンドリング性が向上する。さらには、分離膜カセットと側面開口部27の空隙の距離を狭くすることも可能となるため、分離膜エレメント1の充填率をさらに上げることができる。
【0033】
フレームおよびシャフト押さえ具等を構成する主要構造材の材質は、ステンレス、アルミなどの各種金属、PP樹脂、PVC樹脂やABS樹脂などの各種熱可塑性樹脂、またポリウレタン樹脂やエポキシ樹脂などの各種熱硬化性樹脂など任意に選択可能である。
【0034】
図7に、本発明の分離膜カセット30の実施形態の一例を示す。分離膜カセット30の両端部には、EBLフレームに収容する際の、膜面への物品衝突による傷防止やハンドリング性を考慮して膜保護板31が備えられている。膜保護板は、例えば、分離膜カセットを懸架するためのシャフトに、クリアランス保持部材を介して膜保護板を配置させ、膜保護板の外部で、ねじ切りをしたシャフト部にナットを用いて固定すればよい。シャフトやクリアランス保持部材、その他の分離膜カセット部材については、膜保護板31を除いて、図4で示した分離膜カセット10と同じものが使用できる。
【0035】
図8図7の分離膜カセットの上面模式図である。分離膜カセット30の両端部には膜保護板31Aと膜保護板31Bが備えられている。膜保護板31Aと膜保護板31Bは同一部材、同一形状であると、構成の簡素化による誤組立の防止や、構成部材点数の削減によるコスト削減の観点から好ましい。ここでは、膜保護板31Aを中心に説明するが、分離膜カセット30は、膜面方向の中心線Cに対して線対称な構造であるため、膜保護板31Bについても同じである。膜保護板31Aの上面および上面に平行でかつ膜面に対して垂直方向の断面形状はコの字状であり、膜保護板31Aから膜保護板31Bに向けて両端部にリブ32を備えている。
【0036】
図9に分離膜カセット30上面概略図の一例を示す。両端リブ32の内面距離D1は、分離膜エレメント1の幅によって決まり、分離膜エレメント1の幅より大きければよいが、槽内に設置する分離膜モジュールの省スペース性の観点から、分離膜エレメント1の幅に対して、好ましくは1mm~6mm、より好ましくは1mm~3mm大きく設定される。なお、分離膜エレメント1と膜保護板32Aは、膜面方向に対して中央で揃っていることが好ましいため、この場合、分離膜エレメント端部と、その分離膜エレメントと隣接するリブ間の距離D2は、好ましくは0.5mm~3mm、より好ましくは0.5~1.5mmとなる。リブの厚みSは、省スペース性および強度面を考慮して設定すればよいが、成形性の観点から、好ましくは1mm~6mm、より好ましくは2~4mmとなる。
【0037】
これらのように、分離膜エレメント1に隣接するリブ32を設けることで、膜保護板31Aと膜保護板31Aに隣り合う分離膜エレメント1との隙間、および膜保護板近傍の分離膜エレメント1同士の隙間が狭くなっても、下方からの散気が分離膜カセット30の外に漏れ出すことはない。
【0038】
図10は、図9とは別の分離膜カセット30の上面概略図である。膜保護板31Aの両端のリブ32の高さHは、最低限、膜保護板31Aと膜保護板31Aに隣り合う分離膜エレメント1との隙間Gを覆うものである。こうすることで、膜保護板31Aと膜保護板31Aに隣り合う分離膜エレメント1の隙間Gが狭くなっても、下方からの散気が分離膜カセット30の外に漏れ出すことはない。
【0039】
また、図11に分離膜カセット30の別の実施形態の一例を示すが、膜保護板31Aおよび膜保護板32Bの両端リブ高さHを調整することで、膜保護板31Aと膜保護板31Bとの間をリブで覆う範囲を、好ましくは30~100%、さらには好ましくは50~100%(と設定できる(図11は100%)。こうすることで、分離膜エレメント同士の隙間、特には、膜保護板近傍の分離膜エレメント同士の隙間が狭くなっても、下方からの散気が分離膜カセットの外に漏れ出すことはない。
【0040】
また、図12に示すように、リブ32構造については、図7図11に示すような一体型でもよいし、リブ延設板33を膜保護板のリブに外付けする構造でも構わない。リブ延設板33を外付けする場合は、ボルト接合、溶接、接着固定など、膜保護板材質に応じて適切に選定すればよい。膜保護板材質は、ステンレス、アルミなどの各種金属、PET樹脂、PP樹脂、PVC樹脂やABS樹脂などの各種熱可塑性樹脂、など任意に選択可能であるが、成形性、コスト、重量を考慮して、PP樹脂が好適に使用される。さらに、フィラーやタルクをPP樹脂に添加すると強度アップとなるためなお良い。
【0041】
前述した膜保護板31Aと膜保護板31Bとの間をリブ32で覆う範囲や、リブ32の構造については、分離膜カセットを使用する環境、すなわち、廃水種類や生物処理、散気条件などを考慮して、任意に設定すればよい。
【0042】
図7および図11の分離膜カセット30の実施形態において、膜保護板31には、気液混合流による分離膜カセット内外の静圧差が生じ、長期的には膜保護板31が分離膜エレメント方向に変形して散気流路が狭くなる恐れがある。この変形を防止すべく、膜保護板の剛性アップのため、膜保護板のリブ反対面は、格子状リブ35を複数設置することが好ましい。格子形状は正方形、長方形、菱形状、任意で構わない。格子状リブ34の厚みや数、リブ間隔、範囲については、膜保護板31の強度面と重量、また、EBLフレームの構造に併せて任意に設定すればよい。
【実施例0043】
(実施例1)
図7に示す分離膜カセット30を6個使用して、図5に示す形態の分離膜モジュールを1台製作した。
【0044】
膜保護板のリブ形態を図9および図10にて説明する。分離膜エレメント1と膜保護板31Aを、膜面方向に対して中央で揃え、両端リブ32の内面距離D1を481mm、D2を2mmに設定した。リブの厚みSは、省スペース性および強度面を考慮して2mmとした(図9)。膜保護板31Aの両端のリブ32の高さHは、膜保護板31Aと膜保護板31Aに隣り合う分離膜エレメント1との隙間Gを覆うように、15mmに設定した(図10)。
【0045】
この分離膜モジュールを活性汚泥槽に浸漬し、フラックス0.3m/day、ABL部より1500L/min/MDの散気を与え、約3ヶ月間運転した結果、膜間圧力差(TMP)の上昇速度は0.05kPa/dayであった。また、運転後の分離膜モジュールを活性汚泥槽から引き上げ、分離膜カセットの外観を観察したところ、膜保護板31Aと膜保護板31Aに隣り合う分離膜エレメント1との隙間、および膜保護板近傍の分離膜エレメント1同士の隙間に汚泥ケークは形成されていなかった。
【0046】
(比較例1)
一方、図4に示す分離膜カセット10を6個使用して、同じく図5に示す形態の分離膜モジュールを1台製作した。膜保護板にはリブを設けなかった。実施例と同じ活性汚泥槽に、同じタイミングで、同じ期間、同じ条件で運転評価した結果、膜間圧力差(TMP)の上昇速度は、0.25kPa/dayであり、実施例に比べて運転性が悪かった。また、運転後の分離膜モジュールを活性汚泥槽から引き上げ、分離膜カセットの外観を観察したところ、膜保護板31Aと膜保護板31Aに隣り合う分離膜エレメント1との隙間に顕著な汚泥ケークが形成されており、膜保護板近傍の分離膜エレメント1同士の隙間にも汚泥ケークが散見された。
【符号の説明】
【0047】
1 分離膜エレメント
2 分離膜
3 樹脂部
4 周縁部
5 集水部
6 チューブ
7 集水管
10 従来技術の分離膜カセット
11 貫通孔
12 クリアランス保持部材
13 膜保護板
14 取手部
15 固定部
16 シャフト
20 分離膜モジュール
21 EBLフレーム
22 散気装置
25 エレメントブロック
26 上下面開口部
27 側面開口部
30 本発明の分離膜カセット
31 膜保護板A,膜保護板B
32 リブ
33 リブ延設板
34 格子状のリブ
D1 リブの内面距離D1
D2 分離膜エレメントと隣接するリブ間の距離
S リブの厚み
G 膜保護板と膜保護板に隣り合う分離膜エレメントとの隙間
H リブ高さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12