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特開2024-92141部分放電診断システムおよび部分放電診断方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092141
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】部分放電診断システムおよび部分放電診断方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/12 20200101AFI20240701BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20240701BHJP
   H01H 33/00 20060101ALI20240701BHJP
   H02B 3/00 20060101ALI20240701BHJP
   H02B 13/065 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
G01R31/12 A
H02J13/00 301D
H01H33/00 A
H02B3/00 M
H02B13/065 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207859
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高野 俊也
(72)【発明者】
【氏名】伴野 幸造
(72)【発明者】
【氏名】中村 勇介
(72)【発明者】
【氏名】水出 隆
【テーマコード(参考)】
2G015
5G017
5G027
5G064
【Fターム(参考)】
2G015AA10
2G015BA04
2G015CA01
5G017EE02
5G027AA21
5G064AA04
5G064AC09
5G064BA02
5G064BA09
5G064CB08
5G064CB16
5G064DA02
(57)【要約】
【課題】処理の対象となる計測データを削減することができる部分放電診断システムおよび部分放電診断方法を提供することである。
【解決手段】実施形態の部分放電診断システムは、取得部と診断部と決定部とを持つ。取得部は、対象機器の部分放電に係る信号を計測するセンサが計測した計測データを取得する。診断部は、計測データに基づいて対象機器の部分放電に関する診断を行う。決定部は、診断の結果に基づいて、計測データを取得する量を決定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象機器の部分放電に係る信号を計測するセンサが計測した計測データを取得するデータ取得部と、
前記計測データに基づいて前記対象機器の部分放電に関する診断を行う診断部と、
前記診断の結果に基づいて、前記計測データを取得する量を決定する決定部と
を備える部分放電診断システム。
【請求項2】
前記対象機器の近傍に設けられ、前記センサから前記計測データを取得する監視装置と、
前記監視装置とネットワークを介して接続され、前記データ取得部、前記診断部および前記決定部を備える診断装置と
を備え、
前記データ取得部は、前記監視装置から前記ネットワークを介して送信された前記計測データを取得し、
前記決定部は、前記監視装置が前記センサから前記計測データを取得する量、または前記監視装置が前記計測データを前記診断装置に送信する量を決定する
請求項1に記載の部分放電診断システム。
【請求項3】
前記決定部は、前記診断の結果に基づいて、前記監視装置による前記計測データのハンドリングルールを、前記計測データを所定の時刻に送信する第一ルール、前記計測データを送信指示に基づいて送信する第二ルール、および前記計測データのうち所定の基準を満たさないものだけを所定の時刻に送信する第三ルールの何れかに決定し、前記ハンドリングルールを前記監視装置に送信する
請求項2に記載の部分放電診断システム。
【請求項4】
前記決定部は、前記計測データを送信する前記所定の時刻を、前記監視装置毎の単位時間あたりの通信容量の総和が、前記データ取得部の通信容量以下となる時刻に決定する
請求項3に記載の部分放電診断システム。
【請求項5】
前記第二ルールは、前記送信指示を受け付けるまで、単位期間ごとに得られた前記計測データを保持し、保持された前記計測データが所定の上限数に達した場合に最も古い計測データを破棄するルールである
請求項3に記載の部分放電診断システム。
【請求項6】
前記第三ルールに係る前記基準は、過去に収集された計測データである過去計測データとの距離が閾値より大きいことである
請求項3に記載の部分放電診断システム。
【請求項7】
前記距離は、前記過去計測データに基づいて形成された部分空間に前記計測データを射影し、前記計測データと射影後の前記計測データとの再構成誤差に基づいて算出される
請求項6に記載の部分放電診断システム。
【請求項8】
算出された前記再構成誤差に基づいて、前記第三ルールの前記閾値を調整する閾値調整部を備える
請求項7に記載の部分放電診断システム。
【請求項9】
取得した前記計測データと、当該計測データのハンドリングルールとを表示させる表示制御部
を備える請求項3に記載の部分放電診断システム。
【請求項10】
前記表示制御部は、さらに前記診断の結果を表示させる
請求項9に記載の部分放電診断システム。
【請求項11】
対象機器の部分放電に係る信号を計測するセンサが計測した計測データを取得するステップと、
前記計測データに基づいて前記対象機器の部分放電に関する診断を行うステップと、
前記診断の結果に基づいて、前記計測データを取得する量を決定するステップと
を備える部分放電診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は部分放電診断システムおよび部分放電診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチギアにおいて、機器の内部に発生する部分放電を監視し、機器の劣化状態を診断する部分放電診断システムが知られている。部分放電診断システムの中には、複数のサイトにおけるスイッチギアの状態を計測するためにネットワークを介して接続される遠隔のサーバに計測データを送信するものがある。また部分放電診断システムの中には、診断の根拠となったセンサの計測データを証拠のために保存するものがある。
このような部分放電診断システムにおいては、処理の対象となる計測データを削減することが望まれている。例えば、遠隔のサーバに計測データを送信する場合、データの通信量が多くなり、ネットワークの負荷が高くなる。また例えば、計測データを証拠のために保存する場合、計測データを記憶するためのデータベースの容量が多く必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2014/148049号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、処理の対象となる計測データを削減することができる部分放電診断システムおよび部分放電診断方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の部分放電診断システムは、取得部と診断部と決定部とを持つ。取得部は、対象機器の部分放電に係る信号を計測するセンサが計測した計測データを取得する。診断部は、計測データに基づいて対象機器の部分放電に関する診断を行う。決定部は、診断の結果に基づいて、計測データを取得する量を決定する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態に係る部分放電診断システムの構成を示す概略ブロック図。
図2】実施形態に係る監視装置の構成を示す概略ブロック図。
図3】実施形態に係る管理テーブルの構成例を示す図。
図4】実施形態に係る監視装置による計測データの取得手順を示すフローチャート。
図5】実施形態に係る監視装置による保留データの送信指示の処理手順を示すフローチャート。
図6】実施形態に係る監視装置による計測データの送信手順を示すフローチャート。
図7】実施形態に係る診断装置の構成を示す概略ブロック図。
図8】実施形態に係る診断装置による監視装置の登録手順を示すフローチャート。
図9】実施形態に係る診断装置による診断処理およびハンドリングルールの決定処理を示すフローチャート。
図10】少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の部分放電診断システムおよび部分放電診断方法を、図面を参照して説明する。
【0008】
図1は、実施形態に係る部分放電診断システム1の構成を示す概略ブロック図である。部分放電診断システム1は、複数のサイトSに設けられた対象機器Tに生じた部分放電を監視し、劣化状況を診断する。サイトSは例えば変電設備であってよい。対象機器Tは、例えばスイッチギアであってよい。各サイトSには、1つまたは複数の対象機器Tが設けられる。
【0009】
部分放電診断システム1は、複数の部分放電センサ10、複数の監視装置30、および診断装置50を備える。
複数の部分放電センサ10は、対象機器Tに対応して設けられる。部分放電センサ10は、対応する対象機器Tの部分放電によって発生する信号を計測する。部分放電センサ10の例としては、部分放電に伴って筐体を通る過渡接地電圧を計測するTEVセンサ、部分放電による振動を検出する振動センサ、部分放電による音波を検出するマイクなどが挙げられる。
【0010】
複数の監視装置30は、サイトSに対応して設けられる。監視装置30は、対応するサイトSに設けられた1または複数の部分放電センサ10から計測データを取得する。部分放電センサ10と監視装置30とは、同軸ケーブルなどによって接続される。監視装置30と診断装置50とはネットワークNを介して接続される。監視装置30は、取得した計測データをネットワークNを介して診断装置50に送信する。
【0011】
診断装置50は、複数の監視装置30から計測データを受信する。診断装置50は、受信した計測データに基づいて、各対象機器Tの部分放電に係る劣化状態を診断する。また、実施形態に係る診断装置50は、診断結果に基づいて、監視装置30による計測データの送信方法を決定する。
【0012】
図2は、実施形態に係る監視装置30の構成を示す概略ブロック図である。
監視装置30は、サンプリング部31、判定部32、再構成誤差算出部33、バッファ部34、データ送信部35、ルール受信部36を備える。
【0013】
サンプリング部31は、監視装置30に接続される1または複数の部分放電センサ10それぞれの計測データを取得する。具体的には、サンプリング部31は、以下の手順で計測データを取得する。サンプリング部31は、監視装置30に接続される1または複数の部分放電センサ10の1つを選択し、選択した部分放電センサ10からアナログ信号の入力を受け付ける。サンプリング部31は、入力されたアナログ信号を増幅し、必要な信号帯域の信号を抽出する。具体的にはサンプリング部31は、アナログ信号をAD変換のサンプリング周波数の1/2以下に帯域制限する。そして、サンプリング部31は帯域制限したアナログ信号をAD変換し、デジタルデータを得る。サンプリング部31は、一定周期で所定の収集期間の間計測したデジタルデータの時系列を、計測データとして取得する。
【0014】
判定部32は、診断装置50が決定したデータのハンドリングルールに従ってデータ送信部35による計測データの送信方法を判定する。判定部32は、監視装置30に接続される部分放電センサ10ごとのハンドリングルールを格納する管理テーブルを記憶する。判定部32は、管理テーブルに基づいて、データ送信部35を制御する。判定部32は、ハンドリングルールに従って計測データを送信するか、保存するか、破棄するかを判定する。判定部32は、送信しまたは保存する計測データをバッファ部34に記録する。
【0015】
図3は、実施形態に係る管理テーブルの構成例を示す図である。判定部32が持つ管理テーブルは、部分放電センサ10ごとに、部分放電センサ10の識別情報、ハンドリングルール、サンプリングタイミング、計測サンプル数、送信指定時刻、および送信時に付加すべきデータ種類を格納する。サンプリングタイミングおよび送信指定時刻は、監視装置30に接続される他の部分放電センサ10との重複が小さくなるように設定される。特に、送信指定時刻は、通信トラフィックの集中を避けるために、各収集期間における計測データのデータ量とネットワークNの通信容量とから決定される。送信指定時刻は、周期的な送信時刻(例えば毎日1時)、または単発的な送信時刻を指定することができる。単発的な送信時刻が指定された場合、判定部32は、計測データの送信後に、当該ハンドリングルールを前回のルールに戻す。
【0016】
実施形態に係るハンドリングルールは、第一ルール、第二ルールおよび第三ルールの三つから選択される。第一ルールは、計測データを所定の時刻に送信することを規定するハンドリングルールである。第二ルールは、計測データを保管しておき、送信指示を受信したときに、保管された計測データを所定の時刻に送信することを規定するハンドリングルールである。第三ルールは、計測データが所定の基準を満たさない場合に、当該計測データを所定の時刻に送信することを規定するハンドリングルールである。
【0017】
第二ルールは、例えば、計測データの傾向に変化がなく、安定している状態において適用される。第三ルールは、例えば過去と傾向が異なる計測データを収集したいときに適用される。
第二ルールおよび第三ルールは、いずれも第一ルールと比較して計測データの送信頻度が低いハンドリングルールである。つまり、第二ルールおよび第三ルールは、第一ルールより診断装置50がデータを取得する量が少なくなるハンドリングルールである。つまり、部分放電センサ10ごとにハンドリングルールを異ならせることで、部分放電センサ10ごとに診断装置50がデータを取得する量を異ならせることができる。
【0018】
再構成誤差算出部33は、過去の計測データを正常時のデータとみなし、当該過去の計測データの次元削減によって得られる部分空間に対して、計算対象の計測データの再構成誤差を求める。具体的には、再構成誤差算出部33は、以下の手順で再構成誤差を求める。再構成誤差算出部33は、過去の計測データの次元を削減することで、計測データの低次元空間への写像関数と、その逆写像関数を得る。再構成誤差算出部33は、計算対象の計測データを写像関数に適用して次元削減を行い、次元削減した計測データを逆写像関数に適用することで計測データを再構成する。そして、再構成誤差算出部33は、計算対象の計測データのロウデータと、再構成された計測データとのユークリッド距離を、再構成誤差として算出する。ユークリッド距離は、類似度の表現方法の一つである。なお、他の実施形態においては、ユークリッド距離に代えて、コサイン類似度などの他の類似度の尺度を用いてもよい。次元削減の手法としては、例えば主成分分析や、オートエンコーダを用いることができる。再構成誤差を求めるための過去の計測データは、例えば管理テーブルに記憶される。
【0019】
バッファ部34は、送信用データの記憶領域と、保留データの記憶領域とを備える。バッファ部34には、計測データと、当該計測データの収集時刻、部分放電センサ10の識別情報、送信指定時刻が、関連付けて記憶される。
【0020】
データ送信部35は、バッファ部34の送信用データの記憶領域に記録された計測データを、当該計測データに関連付けられた送信指定時刻に、診断装置50に送信する。データ送信部35は、診断装置50から送信指示を受信した場合に、バッファ部34の保留データの記憶領域に記録された計測データを、当該計測データに関連付けられた送信指定時刻に、診断装置50に送信する。
【0021】
ルール受信部36は、診断装置50からハンドリングルールを受信し、受信したハンドリングルールを判定部の管理テーブルに記録する。またルール受信部36は、診断装置50から保留データの送信指示を受信する。
【0022】
図4は、実施形態に係る監視装置30による計測データの取得手順を示すフローチャートである。監視装置30は、所定の制御周期ごとに以下に示す計測データの取得処理を実行する。
【0023】
監視装置30の判定部32は、管理テーブルを参照し、現在時刻がいずれかの部分放電センサ10のサンプリングタイミングであるか否かを判定する(ステップS1)。現在時刻がいずれの部分放電センサ10のサンプリングタイミングでもない場合(ステップS1:NO)、次の制御周期を待機する。現在時刻がいずれかの部分放電センサ10のサンプリングタイミングである場合(ステップS1:YES)、サンプリング部31は、管理テーブルにおいて当該部分放電センサ10の識別情報に関連付けられた計測サンプル数に従って計測データを得る(ステップS2)。次に、判定部32は、計測データを取得した部分放電センサ10の識別情報に関連付けられたハンドリングルールを特定する(ステップS3)。
【0024】
ハンドリングルールが第一ルールである場合、判定部32は、ステップS2で得られた計測データと部分放電センサ10の識別情報に関連付けられた送信指定時刻とをバッファ部34の送信用データの記憶領域に記録する(ステップS4)。
【0025】
ハンドリングルールが第二ルールである場合、バッファ部34の保留データの記憶領域に、ステップS2で得られた計測データを記録可能な容量が残っているか否かを判定する(ステップS5)。計測データを記録可能な容量が残っていない場合(ステップS5:NO)、判定部32は、バッファ部34の保留データの記憶領域に記録された計測データのうち、最も古いものを削除する(ステップS6)。ステップS2で得られた計測データを記録可能な容量が残っている場合(ステップ5:YES)、またはステップS6で容量を確保した場合、判定部32は、ステップS2で得られた計測データと部分放電センサ10の識別情報に関連付けられた送信指定時刻とをバッファ部34の保留データの記憶領域に記録する(ステップS7)。つまり、第二ルールは、送信指示を受け付けるまで計測データを保持し、保持された計測データが所定の上限数に達した場合に最も古い計測データを破棄するルールである。
【0026】
ハンドリングルールが第三ルールである場合、再構成誤差算出部33は、ステップS2で得られた計測データについて、管理テーブルにおいて当該部分放電センサ10の識別情報に関連付けられた過去の計測データを基準とする再構成誤差を求める(ステップS8)。判定部32は、ステップS8で算出した再構成誤差が所定の閾値より大きいか否かを判定する(ステップS9)。再構成誤差が閾値より大きい場合(ステップS9:YES)、判定部32は、ステップS2で得られた計測データと部分放電センサ10の識別情報に関連付けられた送信指定時刻とをバッファ部34の送信用データの記憶領域に記録する(ステップS10)。他方、再構成誤差が閾値以下である場合(ステップS9:NO)、判定部32は、ステップS2で得られた計測データをバッファ部34に記録せずに破棄する。
【0027】
図5は、実施形態に係る監視装置30による保留データの送信指示の処理手順を示すフローチャートである。監視装置30のルール受信部36が保留データの送信指示を受信すると、以下の処理を実行する。
ルール受信部36は、受信した送信指示に含まれる識別情報に基づいて、送信対象の部分放電センサ10を特定する(ステップS21)。ルール受信部36は、バッファ部34の保留データの記憶領域から、ステップS21で特定した部分放電センサ10に係る計測データをすべて特定する(ステップS22)。ルール受信部36は、特定した計測データをすべて送信用データの記憶領域へ移動する(ステップS23)。つまり、ルール受信部36は、特定した計測データを送信用データの記憶領域に記録し、当該計測データを保留データの記憶領域から削除する。
【0028】
図6は、実施形態に係る監視装置30による計測データの送信手順を示すフローチャートである。監視装置30は、所定の制御周期ごとに以下に示す計測データの送信処理を実行する。
【0029】
監視装置30のデータ送信部35は、バッファ部34の送信用データの記憶領域を参照し、現在時刻がいずれかの計測データの送信指定時刻であるか否かを判定する(ステップS41)。現在時刻がいずれの計測データの送信指定時刻でもない場合(ステップS41:NO)、次の制御周期を待機する。現在時刻がいずれかの計測データの送信指定時刻である場合(ステップS41:YES)、データ送信部35は、送信用データの記憶領域から該当の計測データを特定する(ステップS42)。データ送信部35は、特定した計測データをネットワークNを介して診断装置50に送信する(ステップS43)。データ送信部35は、計測データの送信に成功したか否かを判定する(ステップS44)。計測データの送信に失敗した場合(ステップS44:NO)、ステップS43に処理を戻し、計測データの再送信を試みる。
【0030】
計測データの送信に成功した場合(ステップS44:YES)、ステップS42で特定した計測データを、送信用データの記憶領域から削除する(ステップS45)。
【0031】
図7は、実施形態に係る診断装置50の構成を示す概略ブロック図である。
診断装置50は、データ取得部51、データ記憶部52、診断部53、決定部54、表示制御部55、登録管理部56、ルール送信部57を備える。
【0032】
データ取得部51は、複数の監視装置30から、ネットワークNを介して計測データを取得する。
データ記憶部52は、データ取得部51が取得した計測データを記憶する。
【0033】
診断部53は、データ記憶部52に記録された計測データに基づいて、対象機器Tの状態の診断を行う。診断部53は、新たな計測データと過去の計測データとの再構成誤差を算出し、対象機器Tが定常状態であるか、非定常状態であるかを診断する。また診断部53は、計測データに基づいて部分放電に係る劣化の有無を診断する。劣化の有無の診断方法の例としては、対象となる計測データを交流周期毎に切り出し、重ね合わせることで特定の位相にピークが発生しているかどうかを判定する方法、計測データが表す波形から部分放電の有無を判断する方法、あらかじめ部分放電信号を深層学習で学習させ、計測データに部分放電の特徴量が含まれているかどうかを診断する方法などが挙げられる。診断部53は、対象機器Tの状態を、定常状態、非定常状態、または異常状態の何れかに診断する。
【0034】
決定部54は、データ記憶部52への計測データの蓄積状況、および診断部53による部分放電の診断結果に基づいて、対象機器Tに係る計測データのハンドリングルールを決定する。
【0035】
表示制御部55は、診断部53による診断結果をディスプレイなどに表示させる。
登録管理部56は、監視装置30の登録および管理を行う。
ルール送信部57は、決定部54が決定したハンドリングルール、および保留データの送信要求を監視装置30に送信する。
【0036】
図8は、実施形態に係る診断装置50による監視装置30の登録手順を示すフローチャートである。診断装置50は、監視装置30から登録要求を受信すると、以下に示す登録処理を行う。
【0037】
登録管理部56は、受信した登録要求に含まれる監視装置30の識別情報に基づいて、既に登録されている監視装置30であるか否かを判定する(ステップS101)。登録要求に係る監視装置30が既に登録されている場合(ステップS101:YES)、登録処理を終了する。
【0038】
登録要求に係る監視装置30が未登録である場合(ステップS101:NO)、登録管理部56は、監視装置30の認証処理を行う(ステップS102)。認証処理は、例えば、監視装置30に対して予め発行された共通の電子証明書の検証を行い、電子証明書が正当である場合に、以後の通信に使用するための個別の電子証明書を発行する処理である。個別証明書の発行後、登録管理部56は、監視装置30に接続されている部分放電センサ10に対応した識別情報やデータ取得の付加情報を監視装置30から受信し、記憶しておく。認証処理が完了すると、決定部54は、当該監視装置30に接続される全ての部分放電センサ10について、ハンドリングルールを第一ルールに決定し、周期的な送信指定時刻を決定する(ステップS103)。具体的には、決定部54は、送信指定時刻を、監視装置30毎の単位時間あたりの通信容量の総和が、診断装置50のデータ取得部の通信容量以下となる時刻に決定する。登録管理部56は、各部分放電センサ10について決定したハンドリングルールを記憶する。ルール送信部57は、決定したハンドリングルールを当該監視装置30に送信する。
【0039】
これにより、新たな監視装置30に接続された各部分放電センサ10について、ハンドリングルールを設定することができる。新たな部分放電センサ10については、再構成誤差等の判断材料となるデータがないことため、ハンドリングルールを、逐次計測データを送信させる第一ルールに決定する。
【0040】
図9は、実施形態に係る診断装置50による診断処理およびハンドリングルールの決定処理を示すフローチャートである。診断装置50は、監視装置30から計測データを受信するたびに、以下に示す診断処理およびハンドリングルールの決定処理を実行する。
【0041】
データ取得部51は、監視装置30から計測データを取得し(ステップS121)、データ記憶部52に記録する。次に、診断部53は、ステップS121で取得した計測データに基づいて、対象機器Tの異常の有無を診断する(ステップS122)。診断部53が対象機器Tに異常がないと診断した場合(ステップS122:NO)、診断部53による診断回数が所定の閾値以下であるか否かを判定する(ステップS123)。閾値は、再構成誤差の基準とすることができる程度の計測データの数であってよい。診断回数が閾値以下である場合(ステップS123:YES)、決定部54は、計測データのサンプルを収集するために、ハンドリングルールを第一ルールに決定する(ステップS124)。ルール送信部57は、決定したハンドリングルールを監視装置30に送信する。
【0042】
他方、ステップS123において診断回数が閾値を超えている場合(ステップS123:NO)、診断部53は、データ記憶部52に記録された、同じ対象機器Tに係る過去の計測データを基準として、ステップS121で取得した計測データの再構成誤差を算出する(ステップS125)。診断部53は、再構成誤差が閾値を超えるか否かを判定する(ステップS126)。再構成誤差が閾値を超えない場合(ステップS126:NO)、診断部53は、対象機器Tの状態を定常状態であると診断する(ステップS127)。表示制御部55は、対象機器Tが定常状態であることを表示させる。
【0043】
次に、決定部54は、再構成誤差の算出のための過去の計測データを監視装置30に送信するか否かを判定する(ステップS128)。決定部54は、例えばデータ記憶部52に記録された同じ対象機器Tに係る過去の計測データの数が所定の閾値以上である場合や、当該対象機器Tについて定常状態であるとの診断結果が一定期間継続している場合に、再構成誤差の算出のための過去の計測データを監視装置30に送信すると判定してよい。過去の計測データを監視装置30に送信しないと判定した場合(ステップS128:NO)、決定部54は、計測データの送信量を低減するために、ハンドリングルールを第二ルールに決定する(ステップS129)。ルール送信部57は、決定したハンドリングルールを監視装置30に送信する。
【0044】
他方、過去の計測データを監視装置30に送信すると判定した場合(ステップS128:YES)、決定部54は、ハンドリングルールを第三ルールに決定する(ステップS130)。ルール送信部57は、決定したハンドリングルールと、過去の計測データとを監視装置30に送信する。
【0045】
ステップS127において再構成誤差が閾値を超える場合(ステップS126:YES)、診断部53は、対象機器Tの状態を非定常状態であると診断する(ステップS131)。表示制御部55は、対象機器Tが非定常状態であることを表示させる。決定部54は、対象機器Tの状態を監視するために、ハンドリングルールを第一ルールに決定する(ステップS132)。ルール送信部57は、決定したハンドリングルールを監視装置30に送信する。
【0046】
ステップS122において診断部53が対象機器Tに異常があると診断した場合(ステップS122:YES)、表示制御部55は、対象機器Tに異常があることを示す警告画面を表示させる。ルール送信部57は、監視装置30に当該対象機器Tに対応する部分放電センサ10の保留データの送信指示を送信する(ステップS133)。また、決定部54は、対象機器Tの状態を監視するために、ハンドリングルールを第一ルールに決定する(ステップS134)。ルール送信部57は、決定したハンドリングルールを監視装置30に送信する。
【0047】
これにより、診断装置50は、計測データに基づいて対象機器Tの診断を行い、また診断結果に応じたハンドリングルールを設定することができる。
【0048】
なお、診断装置50の決定部54は、ハンドリングルールを第二ルールまたは第三ルールに設定したことによって、一の対象機器Tについて所定の送信保留時間以上計測データの受信がない場合、当該対象機器Tのハンドリングルールを単発的な送信時刻を設定した第一ルールに決定する。これにより、各診断装置50は、長くても送信保留時間ごとに計測データを得て対象機器Tの診断を行うことができ、異常や非定常状態に気が付かないまま放置されてしまうことを防ぐことができる。
【0049】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、部分放電診断システム1は、データ取得部51と診断部53と決定部54とを持つ。データ取得部51は、対象機器Tの部分放電に係る信号を計測するセンサが計測した計測データを取得する。診断部53は、計測データに基づいて対象機器Tの部分放電に関する診断を行う。決定部54は、診断の結果に基づいて、計測データを取得する量を決定する。これにより、部分放電診断システム1は、処理の対象となる計測データを削減することができる。特に、部分放電診断システム1は、監視の必要性が高い対象機器Tについては計測データのデータ量を削減せずに監視の品質を維持しながら、監視の必要性が低い対象機器Tについては計測データのデータ量を削減することができる。
【0050】
〈コンピュータ構成〉
図10は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
コンピュータ70は、プロセッサ71、メインメモリ72、ストレージ73、インタフェース74を備える。
上述の監視装置30および診断装置50は、コンピュータ70に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でストレージ73に記憶されている。プロセッサ71は、プログラムをストレージ73から読み出してメインメモリ72に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、プロセッサ71は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域をメインメモリ72に確保する。プロセッサ71の例としては、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)、マイクロプロセッサなどが挙げられる。
【0051】
プログラムは、コンピュータ70に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、ストレージに既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。なお、他の実施形態においては、コンピュータ70は、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。この場合、プロセッサ71によって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。このような集積回路も、プロセッサの一例に含まれる。
【0052】
ストレージ73の例としては、磁気ディスク、光磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ73は、コンピュータ70のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース74または通信回線を介してコンピュータ70に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ70に配信される場合、配信を受けたコンピュータ70が当該プログラムをメインメモリ72に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、ストレージ73は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0053】
また、当該プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、当該プログラムは、前述した機能をストレージ73に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0055】
例えば、上述した実施形態に係る診断装置50は、ハンドリングルールとして、各対象機器Tについて計測データを送信するか、保留するか、一部を送信して残りを破棄するかを決定するが、これに限られない。つまり、上述した実施形態に係るハンドリングルールは、計測データの送信の制限に係るルールであるが、他の実施形態においては、例えば対象機器Tのデータのサンプリング頻度や、取得サンプル数、収集期間などを診断結果に応じて変化させるものであってもよい。この場合も、部分放電診断システム1は、診断装置50における取得した計測データの量を制御することができる。
【0056】
また、上述した実施形態に係る部分放電診断システム1は、計測データの再構成誤差によって定常状態か否かを判定するが、これに限られない。例えば、他の実施形態においては、計測データのマハラノビス距離によって定常状態か否かを判定してもよいし、通常時の計測データとの類似度(コサイン類似度など)によって定常状態か否かを判定してもよい。
【符号の説明】
【0057】
1…部分放電診断システム 10…部分放電センサ 30…監視装置 31…サンプリング部 32…判定部 33…再構成誤差算出部 34…バッファ部 35…データ送信部 36…ルール受信部 50…診断装置 51…データ取得部 52…データ記憶部 53…診断部 54…決定部 55…表示制御部 56…登録管理部 57…ルール送信部 70…コンピュータ 71…プロセッサ 72…メインメモリ 73…ストレージ 74…インタフェース N…ネットワーク S…サイト T…対象機器
図1
図2
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図9
図10