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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092157
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】静電容量式圧力センサー用織物
(51)【国際特許分類】
   G01L 5/00 20060101AFI20240701BHJP
   D03D 1/00 20060101ALI20240701BHJP
   D03D 15/533 20210101ALI20240701BHJP
   D03D 11/00 20060101ALI20240701BHJP
   G01L 1/14 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
G01L5/00 101Z
D03D1/00 Z
D03D15/533
D03D11/00 Z
G01L1/14 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207891
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000150774
【氏名又は名称】株式会社槌屋
(71)【出願人】
【識別番号】596024426
【氏名又は名称】槌屋ティスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江島 充晃
(72)【発明者】
【氏名】池上 智一
(72)【発明者】
【氏名】水野 莉沙
(72)【発明者】
【氏名】杖田 真子
(72)【発明者】
【氏名】河上 真
【テーマコード(参考)】
2F051
4L048
【Fターム(参考)】
2F051AA16
2F051AB06
2F051BA07
4L048AA52
4L048AB06
4L048AC13
4L048BA09
4L048CA05
4L048DA24
(57)【要約】
【課題】圧力を検知する感度の向上が図られた静電容量式圧力センサー用織物の提供。
【解決手段】静電容量式圧力センサー用織物は、たて糸群とよこ糸群とを備える。たて糸群は、たて絶縁糸を含むがたて導電糸を含まないたて絶縁領域と、たて導電糸を含むたて導電領域とにわたる。よこ糸群は、よこ絶縁糸を含むがよこ導電糸を含まないよこ絶縁領域と、よこ導電糸を含むよこ導電領域とにわたる。たて絶縁領域またはよこ絶縁領域に該当する部分には、織り組織をなす本体部が形成される。たて導電領域およびよこ導電領域の両方に該当する部分には、コンデンサーであるセンサセル部が形成される。センサセル部は、たて導電層およびよこ導電層を含む複数の層がセンサセル部の表裏方向に重ねられた重ね織り組織を備える。たて導電層は、たて導電糸を含むがよこ導電糸を含まない。よこ導電層は、よこ導電糸を含むがたて導電糸を含まない。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
たて絶縁糸とたて導電糸とを含むたて糸群、および、よこ絶縁糸とよこ導電糸とを含むよこ糸群を備える静電容量式圧力センサー用織物において、
前記たて糸群は、前記たて絶縁糸を含むが前記たて導電糸を含まない領域であるたて絶縁領域と、少なくとも前記たて導電糸を含む領域であるたて導電領域とにわたって分布され、
前記よこ糸群は、前記よこ絶縁糸を含むが前記よこ導電糸を含まない領域であるよこ絶縁領域と、少なくとも前記よこ導電糸を含む領域であるよこ導電領域とにわたって分布され、
前記たて絶縁領域および前記よこ絶縁領域の一方または両方に該当する部分には、前記たて糸群と前記よこ糸群とが織り組織をなす本体部が形成され、
前記たて導電領域および前記よこ導電領域のいずれにも該当する部分には、前記たて導電糸と前記よこ導電糸との間の距離に応じて静電容量が変化するコンデンサーであるセンサセル部が形成され、
前記センサセル部は、
前記たて導電糸を含むが前記よこ導電糸を含まない層であるたて導電層、および、
前記よこ導電糸を含むが前記たて導電糸を含まない層であるよこ導電層、
を含む複数の層が前記センサセル部の表裏方向に重ねられた重ね織り組織を備えている、
静電容量式圧力センサー用織物。
【請求項2】
請求項1に記載された静電容量式圧力センサー用織物であって、
前記たて導電層が、前記たて導電糸と前記よこ絶縁糸とからなる1枚の一重織り組織によって構成され、
前記よこ導電層が、前記よこ導電糸と前記たて絶縁糸とからなる1枚の一重織り組織によって構成されている、
静電容量式圧力センサー用織物。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載された静電容量式圧力センサー用織物であって、
前記重ね織り組織は、前記たて導電層と前記よこ導電層との間に、前記たて絶縁糸および前記よこ絶縁糸の少なくとも一方を含むが、前記たて導電糸および前記よこ導電糸のいずれも含まない層である絶縁層を備えている、
静電容量式圧力センサー用織物。
【請求項4】
請求項3に記載された静電容量式圧力センサー用織物であって、
前記絶縁層が、前記たて絶縁糸と前記よこ絶縁糸とからなる織り組織によって構成されている、
静電容量式圧力センサー用織物。
【請求項5】
請求項4に記載された静電容量式圧力センサー用織物であって、
前記たて導電層に含まれる前記たて導電糸が前記絶縁層に接結されている、
静電容量式圧力センサー用織物。
【請求項6】
請求項4に記載された静電容量式圧力センサー用織物であって、
前記よこ導電層に含まれる前記よこ導電糸が前記絶縁層に接結されている、
静電容量式圧力センサー用織物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、静電容量式圧力センサー用織物に関する。
【背景技術】
【0002】
たて絶縁糸とたて導電糸とを含むたて糸群、および、よこ絶縁糸とよこ導電糸とを含むよこ糸群を備える織物を静電容量式圧力センサー用として使用する技術思想は従来公知である(例えば特許文献1を参照)。ここで、特許文献1に開示された従来技術では、たて導電糸とよこ導電糸との間の距離に応じて静電容量が変化するコンデンサーであるセンサセル部を織物に形成する。そして、センサセル部を押す強さに応じた導電糸間の離間距離の変化を静電容量の変化として検出することで、圧力を検知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-086114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来技術では、センサセル部において、たて導電糸とよこ導電糸とは、織り合わされることで互いが互いを拘束する。このため、上記従来技術では、センサセル部を押す強さに応じた導電糸間の離間距離の変動幅が限定され、圧力を検知する感度に限界があった。
【0005】
本開示は、圧力を検知する感度の向上が図られた静電容量式圧力センサー用織物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示における1つの特徴によると、たて絶縁糸とたて導電糸とを含むたて糸群、および、よこ絶縁糸とよこ導電糸とを含むよこ糸群を備える静電容量式圧力センサー用織物が提供される。たて糸群は、たて絶縁糸を含むがたて導電糸を含まない領域であるたて絶縁領域と、少なくともたて導電糸を含む領域であるたて導電領域とにわたって分布される。よこ糸群は、よこ絶縁糸を含むがよこ導電糸を含まない領域であるよこ絶縁領域と、少なくともよこ導電糸を含む領域であるよこ導電領域とにわたって分布される。たて絶縁領域およびよこ絶縁領域の一方または両方に該当する部分には、たて糸群とよこ糸群とが1枚の織り組織をなす本体部が形成される。たて導電領域およびよこ導電領域のいずれにも該当する部分には、たて導電糸とよこ導電糸との間の距離に応じて静電容量が変化するコンデンサーであるセンサセル部が形成される。センサセル部は、たて導電層およびよこ導電層を含む複数の層がセンサセル部の表裏方向に重ねられた重ね織り組織を備えている。ここで、たて導電層は、たて導電糸を含むがよこ導電糸を含まない層である。また、よこ導電層は、よこ導電糸を含むがたて導電糸を含まない層である。
【0007】
ここで、本開示において、「たて糸群」および「よこ糸群」を構成する「糸」は、繊維を長尺の線状に引きそろえたものに限定されず、例えばリード線などの金属線や、布地を長尺に引き裂いたものなど、織物として織り込むことができる任意の長尺物を包含する概念とする。
【0008】
上記の静電容量式圧力センサー用織物によれば、センサセル部の重ね織り組織において、たて導電糸とよこ導電糸とは、それぞれが相異なる層に含まれるため、互いが互いを拘束することがない。したがって、上記の静電容量式圧力センサー用織物によれば、たて導電糸とよこ導電糸との離間距離の変動幅を確保して、これにより圧力を検知する感度の向上が図られた静電容量式圧力センサー用織物を提供することができる。
【0009】
他の側面によると、静電容量式圧力センサー用織物は、たて導電層が、たて導電糸とよこ絶縁糸とからなる1枚の一重織り組織によって構成され、よこ導電層が、よこ導電糸とたて絶縁糸とからなる1枚の一重織り組織によって構成されているものである。
【0010】
上記の静電容量式圧力センサー用織物によれば、たて導電糸は、たて導電層においてよこ絶縁糸に拘束され、よこ導電糸は、よこ導電層においてたて絶縁糸に拘束される。このため、センサセル部においては、たて導電糸およびよこ導電糸の位置のばらつきが抑えられる。したがって、上記の静電容量式圧力センサー用織物によれば、各たて導電糸と各よこ導電糸との間の、離間距離のばらつきおよび静電容量のばらつきを抑えて、これにより圧力を検知する感度の向上が図られた静電容量式圧力センサー用織物を提供することができる。
【0011】
他の側面によると、重ね織り組織は、たて導電層とよこ導電層との間に、たて絶縁糸およびよこ絶縁糸の少なくとも一方を含むが、たて導電糸およびよこ導電糸のいずれも含まない層である絶縁層を備えている。
【0012】
上記の静電容量式圧力センサー用織物によれば、コンデンサーであるセンサセル部において、たて導電糸とよこ導電糸との間に流れうる電流(具体的には例えばリーク電流またはショート電流など)が絶縁層によって抑えられる。これにより、センサセル部が上記電流によってうける悪影響のリスクが低減された静電容量式圧力センサー用織物を提供することができる。
【0013】
他の側面によると、上記絶縁層が、たて絶縁糸とよこ絶縁糸とからなる織り組織によって構成されている。
【0014】
上記の静電容量式圧力センサー用織物によれば、絶縁層においてたて絶縁糸とよこ絶縁糸とが織り組織をなすため、たて導電糸およびよこ導電糸の一方が絶縁層を突き抜けて他方に近接または接触するおそれが低減される。これにより、センサセル部が上記電流によってうける悪影響のリスクがさらに低減された静電容量式圧力センサー用織物を提供することができる。
【0015】
他の側面によると、静電容量式圧力センサー用織物は、たて導電層に含まれるたて導電糸が絶縁層に接結されているものである。
【0016】
上記の静電容量式圧力センサー用織物によれば、センサセル部において、たて導電糸は、絶縁層に接結されて拘束されることで、その位置ずれが抑えられる。したがって、上記の静電容量式圧力センサー用織物によれば、たて導電糸の位置ずれによるたて導電糸とよこ導電糸との間の静電容量の変動を抑えて、これにより圧力を検知する感度の向上が図られた静電容量式圧力センサー用織物を提供することができる。
【0017】
他の側面によると、静電容量式圧力センサー用織物は、よこ導電層に含まれるよこ導電糸が絶縁層に接結されているものである。
【0018】
上記の静電容量式圧力センサー用織物によれば、センサセル部において、よこ導電糸は、絶縁層に接結されて拘束されることで、その位置ずれが抑えられる。したがって、上記の静電容量式圧力センサー用織物によれば、よこ導電糸の位置ずれによるたて導電糸とよこ導電糸との間の静電容量の変動を抑えて、これにより圧力を検知する感度の向上が図られた静電容量式圧力センサー用織物を提供することができる。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、圧力を検知する感度の向上が図られた静電容量式圧力センサー用織物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本開示の第1の実施形態にかかる静電容量式圧力センサー用織物10を表した部分拡大表面図である。
図2図1のII部拡大図である。
図3図2のIII-III線断面矢視図である。
図4】本開示の第2の実施形態にかかる静電容量式圧力センサー用織物20を表した部分拡大表面図である。
図5図4の静電容量式圧力センサー用織物20を表した部分拡大裏面図である。
図6図4のVI-VI線断面矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本開示を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0022】
〈第1の実施形態〉
始めに、第1の実施形態にかかる静電容量式圧力センサー用織物10の構成(本明細書においては単に「第1の実施形態」とも記載する。)について、図1ないし図3を用いて説明する。この静電容量式圧力センサー用織物10は、図1に示すように、1枚の布帛13におけるたて方向片側(図1では下側)の端縁およびよこ方向片側(図1では左側)の端縁に、それぞれ複数の電極10A、10Bを取り付けたものである。本実施形態においては、電極10A、10Bは、それぞれ、布帛13の端縁を表裏両側(図示省略)から覆うように取り付けられる。これらの電極10A、10Bは、公知の導電ペーストを布帛13に塗布して固めたものであってよい。
【0023】
布帛13は、図2に示すように、たて糸群11とよこ糸群12とを製織してなる織物である。このたて糸群11は、複数本のたて絶縁糸11Aと複数本のたて導電糸11Bとを含む。また、よこ糸群12は、複数本のよこ絶縁糸12Aと複数本のよこ導電糸12Bとを含む。言いかえると、静電容量式圧力センサー用織物10は、たて絶縁糸11Aとたて導電糸11Bとを含むたて糸群11、および、よこ絶縁糸12Aとよこ導電糸12Bとを含むよこ糸群12を備える。
【0024】
本実施形態において、たて絶縁糸11Aおよびよこ絶縁糸12Aは、絶縁性の繊維からなる絶縁糸であり、白色の外観を呈する。また、たて導電糸11Bおよびよこ導電糸12Bは、導電性の繊維からなる芯糸に絶縁性の繊維からなるさや糸を巻き付けてなる導電カバーリング糸であり、黒色の外観を呈する。なお、図2においては、たて絶縁糸11Aおよびよこ絶縁糸12Aを細線で記載し、たて導電糸11Bおよびよこ導電糸12Bを太線で記載している。また、図3においては、たて絶縁糸11Aおよびよこ絶縁糸12Aを白色の糸として記載し、たて導電糸11Bおよびよこ導電糸12Bを色付きの糸として記載している。
【0025】
布帛13において、たて糸群11は、たて絶縁糸11Aを含むがたて導電糸11Bを含まない領域であるたて絶縁領域13Aと、たて導電糸11Bとたて絶縁糸11Aとが混在する領域であるたて導電領域13Bとにわたって分布される。よこ糸群12は、よこ絶縁糸12Aを含むがよこ導電糸12Bを含まない領域であるよこ絶縁領域13Cと、よこ導電糸12Bとよこ絶縁糸12Aとが混在する領域であるよこ導電領域13Dとにわたって分布される。
【0026】
本実施形態においては、たて絶縁領域13Aとたて導電領域13Bとは、それぞれが布帛13のたて方向に延びる帯状の領域であり、布帛13のよこ方向に交互に並ぶ。また、よこ絶縁領域13Cとよこ導電領域13Dとは、それぞれが布帛13のよこ方向に延びる帯状の領域であり、布帛13のたて方向に交互に並ぶ。
【0027】
たて絶縁領域13Aおよびよこ絶縁領域13Cの一方または両方に該当する部分には、たて糸群11とよこ糸群12とが織り組織(より詳しくは1枚の一重織り組織)をなす本体部14が形成される。この本体部14は、たて絶縁領域13Aおよびよこ絶縁領域13Cの両方に該当する織物組織14Aと、たて絶縁領域13Aおよびよこ導電領域13Dの両方に該当する織物組織14Bと、たて導電領域13Bおよびよこ絶縁領域13Cの両方に該当する織物組織14Cとからなる。本実施形態においては、織物組織14A、14B、14Cは、それぞれ、たて糸群11とよこ糸群12とを綾織りに織り上げた織り組織(斜文組織)によって構成される。なお、図3においては、簡単のため、本体部14の織り組織を、そのたて糸とよこ糸とが交互に浮き沈みする平組織の形で描いている。
【0028】
織物組織14A、14B、14Cの斜文組織は、例えば、四枚で正則な片面斜文織の組織である。ここで、「四枚」とは、たて糸が3本のよこ糸の上を通った後、1本のよこ糸の下を通る繰り返しパターンのことをいう。また、「正則」とは、織り組織のたてよこにおける最小の繰り返し単位(完全組織)に含まれるたて糸の本数とよこ糸の本数とが等しいことをいう。また、「片面斜文織」とは、組織の表側にてたて糸が露出するパターンと、組織の裏側にてよこ糸が露出するパターンとが、たてよこの違いを除いて同じパターンとなる斜文組織のことをいう。
【0029】
たて導電領域13Bおよびよこ導電領域13Dのいずれにも該当する部分には、それぞれ、たて導電糸11Bとよこ導電糸12Bとの間の距離に応じて静電容量が変化するコンデンサーであるセンサセル部15が形成される。このセンサセル部15は、布帛13において複数が島状に配置される。また、各センサセル部15は、その周囲が本体部14に囲まれた状態に形成される。本実施形態においては、各センサセル部15は、それぞれが長方形状または正方形状に形成されて、たてよこの格子状(図1参照)に並ぶ。
【0030】
センサセル部15は、図3に示すように、たて導電層15Aおよびよこ導電層15Bを含む複数の層がセンサセル部15の表裏方向(図3では上下方向)に重ねられた重ね織り組織を備えて構成される。本実施形態においては、センサセル部15は、たて導電層15Aおよびよこ導電層15Bの2つの層がセンサセル部15の表裏方向に重ねられた二重織り組織を備えて構成される。この二重織り組織において、たて導電層15Aは、布帛13における表側の帛面13Eに露出する。また、よこ導電層15Bは、布帛13における裏側の帛面13Fに露出する。また、各センサセル部15は、その周囲が1枚の一重織り組織をなす本体部14に囲まれることで、それぞれ袋状に作製される。
【0031】
たて導電層15Aは、たて導電糸11Bとよこ絶縁糸12Aとからなる1枚の一重織り組織によって構成され、よこ導電糸12Bを含まないようにされた層である。本実施形態においては、たて導電層15Aは、たて導電糸11Bとよこ絶縁糸12Aとを綾織りに織り上げた斜文組織(より詳しくは四枚で正則な片面斜文織の組織)をなす。なお、図3においては、簡単のため、たて導電層15Aの織り組織を、そのたて糸とよこ糸とが交互に浮き沈みする平組織の形で描いている。
【0032】
よこ導電層15Bは、よこ導電糸12Bとたて絶縁糸11Aとからなる1枚の一重織り組織によって構成され、たて導電糸11Bを含まないようにされた層である。本実施形態においては、よこ導電層15Bは、よこ導電糸12Bとたて絶縁糸11Aとを綾織りに織り上げた斜文組織(より詳しくは四枚で正則な片面斜文織の組織)をなす。なお、図3においては、簡単のため、よこ導電層15Bの織り組織を、そのたて糸とよこ糸とが交互に浮き沈みする平組織の形で描いている。
【0033】
すなわち、布帛13における表裏両側の帛面13E、13Fは、それぞれ、全体が同一種類の組織(本実施形態では斜文組織)をなす。また、たて絶縁糸11Aおよびよこ絶縁糸12Aの色が白色に統一され、たて導電糸11Bおよびよこ導電糸12Bの色が黒色に統一されていることから、布帛13の帛面13E、13Fにはチェック柄の意匠(図1の帛面13Eを参照)があらわれる。
【0034】
電極10Aは、図2に示すように、布帛13の各たて導電領域13Bに対して1つずつ取り付けられ、取り付けられたたて導電領域13Bに含まれる各たて導電糸11Bと導通する。また、電極10Bは、布帛13のよこ導電領域13Dに対して1つずつ取り付けられ、取り付けられたよこ導電領域13Dに含まれる各よこ導電糸12Bと導通する。この構成は、各センサセル部15を押す圧力の強さに応じた、たて導電糸11Bとよこ導電糸12Bとの離間距離の変化を、電極10A、10B間の静電容量(またはインピーダンス)の変化として検出することを可能とする。
【0035】
上述した第1の実施形態によれば、センサセル部15の重ね織り組織において、たて導電糸11Bとよこ導電糸12Bとは、それぞれが相異なる層に含まれるため、互いが互いを拘束することがない。したがって、第1の実施形態によれば、たて導電糸11Bとよこ導電糸12Bとの離間距離の変動幅を確保して、これにより圧力を検知する感度の向上が図られた静電容量式圧力センサー用織物10を提供することができる。
【0036】
さらに、第1の実施形態によれば、たて導電糸11Bは、たて導電層15Aにおいてよこ絶縁糸12Aに拘束され、よこ導電糸12Bは、よこ導電層15Bにおいてたて絶縁糸11Aに拘束される。このため、センサセル部15においては、たて導電糸11Bおよびよこ導電糸12Bの位置のばらつきが抑えられる。したがって、第1の実施形態によれば、各たて導電糸11Bと各よこ導電糸12Bとの間の、離間距離のばらつきおよび静電容量のばらつきを抑えて、これにより圧力を検知する感度の向上が図られた静電容量式圧力センサー用織物10を提供することができる。
【0037】
さらに、第1の実施形態によれば、静電容量式圧力センサー用織物10において重ね織り組織をなすセンサセル部15は、その周囲が1枚の一重織り組織をなす本体部14に囲まれる。このため、センサセル部15においては、そのたて導電層15Aおよびよこ導電層15Bの周囲が本体部14に拘束されることで、これらの位置ずれが抑えられる。したがって、第1の実施形態によれば、たて導電層15Aおよびよこ導電層15Bの位置ずれによるたて導電糸11Bとよこ導電糸12Bとの間の静電容量の変動を抑えて、これにより圧力を検知する感度の向上が図られた静電容量式圧力センサー用織物10を提供することができる。
【0038】
さらに、第1の実施形態によれば、布帛13において島状に配置されるセンサセル部15の周囲を本体部14で囲む構成のため、布帛13全体としての風合いは、もっぱら本体部14の風合いによって決まる。したがって、第1の実施形態によれば、複数の層が重ねられたセンサセル部15を有しながら、全体としては1枚の一重織り組織のような風合いのある静電容量式圧力センサー用織物10を提供することができる。
【0039】
〈第2の実施形態〉
続いて、第2の実施形態にかかる静電容量式圧力センサー用織物20の構成(本明細書においては単に「第2の実施形態」とも記載する。)について、図4ないし図6を用いて説明する。第2の実施形態は、第1の実施形態を変形した構成である。したがって、上記第1の実施形態の説明に登場した構成と共通する構成については、その構成に付した符号に「10」を加算した符号をつけることで対応させる。そして、これらの構成については、その詳細な説明を省略する。
【0040】
静電容量式圧力センサー用織物20は、図4ないし図6に示すように、第1の実施形態において静電容量式圧力センサー用織物10に形成されるセンサセル部15(図2参照)に代えてセンサセル部25を備えている。また、静電容量式圧力センサー用織物20は、図6に示すように、第1の実施形態において1枚の一重織り組織をなす本体部14(図3参照)に代えて、二重織り組織をなす本体部24を備えている。これら2点以外の点においては、静電容量式圧力センサー用織物20は、静電容量式圧力センサー用織物10と全く同じ構成を有している。
【0041】
センサセル部25は、図4および図5に示すように、たて絶縁領域23Aおよびよこ絶縁領域23Cのいずれにも該当する部分に形成されるコンデンサーである。このコンデンサーは、そのたて導電糸21Bとよこ導電糸22Bとの間の距離に応じて静電容量が変化するものである。
【0042】
センサセル部25は、図6に示すように、たて導電層25A、よこ導電層25B、および、絶縁層25Cを含む複数の層がセンサセル部25の表裏方向(図6では上下方向)に重ねられた重ね織り組織を備えて構成される。本実施形態においては、センサセル部25は、たて導電層25A、絶縁層25C、およびよこ導電層25Bの3つの層がこの順でセンサセル部25の表裏方向に重ねられた重ね織り組織を備えて構成される。言いかえると、センサセル部25の重ね織り組織は、たて導電層25Aとよこ導電層25Bとの間に絶縁層25Cを備えている。なお、各センサセル部25は、その周囲が本体部24に囲まれる(図4参照)ことで、それぞれ袋状に作製される。
【0043】
絶縁層25Cは、たて絶縁糸21Aおよびよこ絶縁糸22Aの両方を含むが、たて導電糸21Bおよびよこ導電糸22Bのいずれも含まない層である。本実施形態においては、絶縁層25Cは、たて絶縁糸21Aとよこ絶縁糸22Aとからなる織り組織によって構成されている。この織り組織は、例えば、たて絶縁糸21Aとよこ絶縁糸22Aとを綾織りに織り上げた斜文組織(より詳しくは四枚で正則な片面斜文織の組織)である。なお、図6においては、簡単のため、絶縁層25Cの織り組織を、そのたて糸とよこ糸とが交互に浮き沈みする平組織の形で描いている。
【0044】
たて導電層25Aは、浮き糸としてのたて導電糸21Bを、接結糸22Cによって絶縁層25Cに接結した組織によって構成され、よこ導電糸22Bを含まないようにされた層である。ここで、接結糸22Cは、絶縁層25Cに含まれる複数本のよこ絶縁糸22Aのうちの一部である。本実施形態においては、接結糸22Cは、4本(図4参照)でたて導電層25Aに含まれるすべてのたて導電糸21Bを絶縁層25Cに接結する。また、たて導電層25Aを構成するたて導電糸21Bおよび接結糸22Cは、布帛23における表側の帛面23Eに露出する。
【0045】
よこ導電層25Bは、浮き糸としてのよこ導電糸22Bを、接結糸21Cによって絶縁層25Cに接結した組織によって構成され、たて導電糸21Bを含まないようにされた層である。ここで、接結糸21Cは、絶縁層25Cに含まれる複数本のたて絶縁糸21Aのうちの一部である。本実施形態においては、接結糸21Cは、4本(図5参照)でよこ導電層25Bに含まれるすべてのよこ導電糸22Bを絶縁層25Cに接結する。また、よこ導電層25Bを構成するよこ導電糸22Bおよび接結糸21Cは、布帛23における裏側の帛面23Fに露出する。
【0046】
なお、図6においては、たて絶縁糸21A(接結糸21C)およびよこ絶縁糸22A(接結糸22C)を白色の糸として記載し、たて導電糸21Bおよびよこ導電糸22Bを色付きの糸として記載している。
【0047】
上述した第2の実施形態によれば、コンデンサーであるセンサセル部25において、たて導電糸21Bとよこ導電糸22Bとの間に流れうる電流(具体的には例えばリーク電流またはショート電流など)が絶縁層25Cによって抑えられる。これにより、センサセル部25が上記電流によってうける悪影響のリスクが低減された静電容量式圧力センサー用織物20を提供することができる。
【0048】
さらに、第2の実施形態によれば、絶縁層25Cにおいてたて絶縁糸21Aとよこ絶縁糸22Aとが織り組織をなすため、たて導電糸21Bおよびよこ導電糸22Bの一方が絶縁層25Cを突き抜けて他方に近接または接触するおそれが低減される。これにより、センサセル部25が上記電流によってうける悪影響のリスクがさらに低減された静電容量式圧力センサー用織物20を提供することができる。
【0049】
さらに、第2の実施形態によれば、センサセル部25において、たて導電糸21Bは、絶縁層25Cに接結されて拘束されることで、その位置ずれが抑えられる。したがって、第2の実施形態によれば、たて導電糸21Bの位置ずれによるたて導電糸21Bとよこ導電糸22Bとの間の静電容量の変動を抑えて、これにより圧力を検知する感度の向上が図られた静電容量式圧力センサー用織物20を提供することができる。
【0050】
さらに、第2の実施形態によれば、センサセル部25において、よこ導電糸22Bは、絶縁層25Cに接結されて拘束されることで、その位置ずれが抑えられる。したがって、第2の実施形態によれば、よこ導電糸22Bの位置ずれによるたて導電糸21Bとよこ導電糸22Bとの間の静電容量の変動を抑えて、これにより圧力を検知する感度の向上が図られた静電容量式圧力センサー用織物20を提供することができる。
【0051】
〈各種の形態〉
以上、本開示を実施するための形態について、上述した第1の実施形態および第2の実施形態をもって説明した。しかしながら、当業者であれば、本開示の目的を逸脱することなく種々の代用、手直し、変更が可能であることは明らかである。すなわち、本開示を実施するための形態は、本明細書に添付した請求の範囲の精神および目的を逸脱しない全ての代用、手直し、変更を含みうるものである。例えば、本開示を実施するための形態として、以下のような各種の形態を実施することができる。
【0052】
本開示において、「たて糸群」および「よこ糸群」を構成する「糸」は、上述したものに限定されない。例えば、本開示においては、たて導電糸およびよこ導電糸のうちの一方または両方に、適宜選択した種類の導電糸を採用することができる。
【0053】
ここで、採用可能な導電糸には、例えば構成繊維そのものによって導電性が担保されている糸、構成繊維の表面のめっきによって導電性が担保されている糸、構成繊維に含浸された物質によって導電性が担保されている糸などが含まれる。同様に、本開示においては、たて絶縁糸およびよこ絶縁糸のうちの一方または両方に、適宜選択した種類の絶縁糸を採用することができる。
【0054】
また、上記「導電糸」および「絶縁糸」は、その繊維を長尺の線状に引きそろえたものに限定されず、例えばリード線などの金属線や、布地を長尺に引き裂いたものなど、織物として織り込むことができる任意の長尺物とすることができる。
【0055】
ここで、表面に導電性を有する長尺物をたて導電糸およびよこ導電糸の一方または両方に採用する場合には、この長尺物を布帛の帛面に露出させることで、この布帛に静電気を逃がす帯電防止効果を持たせることができる。また、表面に抗菌性を有する長尺物をたて導電糸およびよこ導電糸の一方または両方に採用する場合には、この長尺物を布帛の帛面に露出させることで、この布帛に抗菌性を持たせることができる。
【0056】
また、表面に導電性を有する長尺物をたて導電糸およびよこ導電糸の両方に採用する場合には、これらがショートすることがないよう、たて導電層とよこ導電層との間に絶縁層を備えさせる構成が好ましい。すなわち、たて導電層とよこ導電層との間に絶縁層を備えさせる構成によれば、たて導電糸およびよこ導電糸として採用可能な長尺物のバリエーションを増やすことができる。
【0057】
本開示において、センサセル部の重ね織り組織の構成は、上述したものに限定されない。例えば、本開示においては、上記重ね織り組織として三重織り以上の重ね織り組織を採用することで、センサセル部に追加の層を備えさせることができる。ここで、採用可能な追加の層としては、例えばそれぞれが一重織り組織をなすたて導電層とよこ導電層との間に設定される絶縁層や、たて導電層またはよこ導電層をカバーしてこれが布帛の帛面に露出しないようにするカバー層などが含まれる。
【0058】
また、センサセル部の重ね織り組織に絶縁層を備えさせる場合にあっては、この絶縁層を、たて絶縁糸およびよこ絶縁糸の両方または一方のみを浮き沈みなく並べてなる層とすることができる。
【0059】
本開示において、たて導電領域およびよこ導電領域は、それぞれが導電糸と絶縁糸との混在領域となるものに限定されない。すなわち、例えば絶縁層においてたて絶縁糸およびよこ絶縁糸の一方のみを浮き沈みなく並べる場合には、同じく他方をたて導電領域またはよこ導電領域から省略することができる。また、例えばセンサセル部の重ね織り組織に絶縁層を備えさせない場合にあっては、たて導電領域およびよこ導電領域の両方から絶縁糸を省略することができる。
【0060】
本開示において、本体部は、1枚の一重織り組織(図3の本体部14を参照)または二重織り組織(図6の本体部24を参照)をなすものに限定されず、三重織り以上の重ね織り組織をなすものであってもよい。また、本体部の織り組織は、その一部が一重織り組織とされ、残りが重ね織り組織とされたものであってもよい。また、本体部の織り組織は、袋状に作製されたものであってもよい。袋状の織り組織は、例えば風通織りもしくは袋織りのような公知の重ね織り組織の構成、または、重ね織り組織の周囲を1枚の織り組織で囲った構成により実現することができる。
【0061】
本体部およびセンサセル部の各層において、たて糸群とよこ糸群とが浮き沈みする織り組織は斜文組織に限定されず、適宜選択した種類の織り組織に変更することができる。このような織り組織には、例えばたて糸群とよこ糸群とを平織りに織り上げた平組織やたて糸群とよこ糸群とをしゅす織りに織り上げたしゅす組織などが含まれる。また、本体部においては、例えば後述する「もじり織り」、「たてよろけ織り」、「よこよろけ織り」のような、特殊な織り組織を採用してもよい。ここで、「もじり織り」は、たて糸群に含まれる各たて糸のよこ方向の並び順が入れ替えられた部分を有する織り組織である。また、「たてよろけ織り」は、たて糸群に含まれる各たて糸がよこ方向に湾曲された織り組織である。また、「よこよろけ織り」は、よこ糸群に含まれる各よこ糸がたて方向に湾曲された織り組織である。
【0062】
本開示において、センサセル部は、布帛において複数がたてよこの格子状に並ぶものに限定されない。すなわち、センサセル部は、例えば布帛において複数がたて方向またはよこ方向のいずれかに一列に並ぶものであっても、布帛に1つだけ形成されるものであってもよい。また、上述した「もじり織り」または「たてよろけ織り」の織り組織を本体部に採用した場合には、布帛におけるセンサセル部のたて方向の並びをよこ方向に位置ずれさせることができる。また、上述した「よこよろけ織り」の織り組織を本体部に採用した場合には、布帛におけるセンサセル部のよこ方向の並びをたて方向に位置ずれさせることができる。
【0063】
上述した第2の実施形態において、たて導電糸21Bを絶縁層25Cに接結させる接結糸22Cの本数、および、よこ導電糸22Bを絶縁層25Cに接結させる接結糸21C(図6参照)の本数は、4本ずつに限定されず、その本数を適宜に変更してもよい。また、上記の接結糸22Cおよび接結糸21Cについては、その一方または両方を省略することができる。
【0064】
本開示において、電極は、布帛の端縁を表裏両側から覆うように導電ペーストを塗布して固めたものに限定されない。例えば、本開示においては、本体部において適宜選択した場所に電極を配設して導電糸と導通させる構成を採用することができる。また、電極の構成は、例えば導電糸と導通された金属部品や、布帛の帛面上に導電糸を露出状態に配置したものなど、適宜選択した構成に置き換えることができる。また、電極は、布帛における片側の帛面のみを覆うように設けたものであってもよい。
【符号の説明】
【0065】
10 静電容量式圧力センサー用織物
10A 電極
10B 電極
11 たて糸群
11A たて絶縁糸
11B たて導電糸
12 よこ糸群
12A よこ絶縁糸
12B よこ導電糸
13 布帛
13A たて絶縁領域
13B たて導電領域
13C よこ絶縁領域
13D よこ導電領域
13E 帛面
13F 帛面
14 本体部
14A 織物組織
14B 織物組織
14C 織物組織
15 センサセル部
15A たて導電層
15B よこ導電層
20 静電容量式圧力センサー用織物
20A 電極
20B 電極
21 たて糸群
21A たて絶縁糸
21B たて導電糸
21C 接結糸
22 よこ糸群
22A よこ絶縁糸
22B よこ導電糸
22C 接結糸
23 布帛
23A たて絶縁領域
23B たて導電領域
23C よこ絶縁領域
23D よこ導電領域
23E 帛面
23F 帛面
24 本体部
24A 織物組織
24B 織物組織
24C 織物組織
25 センサセル部
25A たて導電層
25B よこ導電層
25C 絶縁層
図1
図2
図3
図4
図5
図6