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特開2024-92158成形型、樹脂成形装置、及び、樹脂成形品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092158
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】成形型、樹脂成形装置、及び、樹脂成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/68 20060101AFI20240701BHJP
【FI】
B29C33/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207892
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】390002473
【氏名又は名称】TOWA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】吉田 雄介
(72)【発明者】
【氏名】大西 洋平
(72)【発明者】
【氏名】砂田 衛
(72)【発明者】
【氏名】森田 健
(72)【発明者】
【氏名】森上 篤
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202AD07
4F202AH33
4F202AH37
4F202CA09
4F202CB01
4F202CL02
4F202CM72
4F202CM90
4F202CQ01
4F202CQ05
(57)【要約】
【課題】樹脂成形品の成形不良や離型不良の発生を防止することが可能な成形型を提供する。
【解決手段】一方の型と、前記一方の型に対向して配置され、離型フィルムが配置されるキャビティを有する他方の型と、を具備する成形型であって、前記他方の型は、前記キャビティの主面を形成する主面部材と、前記キャビティの側面を形成する側面部材と、を具備し、前記一方の型に対向する前記側面部材の対向面には、複数の第1吸引孔部と、隣接する前記第1吸引孔部同士を連結する第2吸引孔部と、を含み、前記離型フィルムを吸着する離型フィルム吸着孔が形成され、前記対向面において、前記第2吸引孔部が隣接する前記第1吸引孔部同士を連結するために延びる方向に垂直な方向における長さについて、前記第1吸引孔部が、前記第2吸引孔部よりも大きい。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の型と、前記一方の型に対向して配置され、離型フィルムが配置されるキャビティを有する他方の型と、を具備する成形型であって、
前記他方の型は、前記キャビティの主面を形成する主面部材と、前記キャビティの側面を形成する側面部材と、を具備し、
前記一方の型に対向する前記側面部材の対向面には、複数の第1吸引孔部と、隣接する前記第1吸引孔部同士を連結する第2吸引孔部と、を含み、前記離型フィルムを吸着する離型フィルム吸着孔が形成され、
前記対向面において、前記第2吸引孔部が隣接する前記第1吸引孔部同士を連結するために延びる方向に垂直な方向における長さについて、前記第1吸引孔部が、前記第2吸引孔部よりも大きい、
成形型。
【請求項2】
前記第1吸引孔部は、前記第2吸引孔部に対して、前記キャビティ側、又は、前記キャビティと反対側の少なくとも一方に突出するように形成されている、
請求項1に記載の成形型。
【請求項3】
前記離型フィルム吸着孔は、前記キャビティの周囲を連続的に連なって囲むように形成されている、
請求項1又は請求項2に記載の成形型。
【請求項4】
前記側面部材は、
前記離型フィルム吸着孔よりも前記キャビティ側の部分を構成する内側部材と、
前記内側部材と別の部材により構成され、前記離型フィルム吸着孔よりも前記キャビティと反対側の部分を構成する外側部材と、
を具備する、
請求項3に記載の成形型。
【請求項5】
前記第1吸引孔部は、前記外側部材に形成されている、
請求項4に記載の成形型。
【請求項6】
前記側面部材の前記対向面における前記離型フィルム吸着孔よりも前記キャビティ側には、凹状部と、前記凹状部の内側において空気を吸引可能な第3吸引孔部と、が形成されている、
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の成形型。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の成形型を具備する樹脂成形装置。
【請求項8】
請求項7に記載の樹脂成形装置を用いた樹脂成形品の製造方法であって、
前記離型フィルムを前記他方の型に配置するフィルム配置工程と、
前記離型フィルムが配置された前記他方の型を用いて樹脂成形を行う樹脂成形工程と、
を含む、樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形型、樹脂成形装置、及び、樹脂成形品の製造方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、樹脂成形品を取り出し易くするために離型フィルムが設けられる成形型が開示されている。特許文献1に記載の成形型には、離型フィルムを吸着するための吸着孔及び隙間が形成されている。具体的には、特許文献1に記載の成形型には、キャビティの外側に、離型フィルムを吸着保持可能な吸着孔が形成されている。また特許文献1に記載の成形型には、キャビティの内側(圧縮金型と枠状金型との間)に、離型フィルムを吸着保持可能な隙間が形成されている。前記成形型の吸着孔及び隙間には真空ポンプが接続され、それぞれ独立して吸引を行うことができるように構成されている。
【0003】
このように構成された成形型において、まず吸着孔により離型フィルムが吸着され、離型フィルムが成形型の表面に吸着固定される。その後、前記隙間により離型フィルムが吸着されることで、離型フィルムがキャビティの形状に沿って吸着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-298096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のようにキャビティの外側の吸着孔で離型フィルムを吸着した後に、キャビティの内側の隙間から離型フィルムを吸着する場合、前記隙間からの吸着によって離型フィルムに大きい応力がかかる場合がある。離型フィルムに大きい応力がかかると、離型フィルムにシワが入ったり、離型フィルムが滑ったりするなど、離型フィルムが適切に保持できず、樹脂成形品の成形不良や離型不良が発生する可能性がある点で、改善の余地があった。
【0006】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、樹脂成形品の成形不良や離型不良の発生を防止することが可能な成形型、樹脂成形装置、及び、樹脂成形品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、この課題を解決するため、本発明に係る成形型は、一方の型と、前記一方の型に対向して配置され、離型フィルムが配置されるキャビティを有する他方の型と、を具備する成形型であって、前記他方の型は、前記キャビティの主面を形成する主面部材と、前記キャビティの側面を形成する側面部材と、を具備し、前記一方の型に対向する前記側面部材の対向面には、複数の第1吸引孔部と、隣接する前記第1吸引孔部同士を連結する第2吸引孔部と、を含み、前記離型フィルムを吸着する離型フィルム吸着孔が形成され、前記対向面において、前記第2吸引孔部が隣接する前記第1吸引孔部同士を連結するために延びる方向に垂直な方向における長さについて、前記第1吸引孔部が、前記第2吸引孔部よりも大きいものである。
【0008】
また、本発明に係る樹脂成形装置は、前記成形型を具備するものである。
【0009】
また、本発明に係る樹脂成形品の製造方法は、前記樹脂成形装置を用いた樹脂成形品の製造方法であって、前記離型フィルムを前記他方の型に配置するフィルム配置工程と、前記離型フィルムが配置された前記他方の型を用いて樹脂成形を行う樹脂成形工程と、を含むものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、樹脂成形品の成形不良や離型不良の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係る樹脂成形装置の全体的な構成を示した平面模式図。
図2】成形モジュールの構成を示した側面模式図。
図3】下型を示した平面図。
図4】下型を示した平面断面図。
図5】(a)図3のA部分を示した拡大図。(b)S-S断面図。
図6】(a)第1吸着部が離型フィルムを吸着する様子を示した断面図。(b)第2吸着部が離型フィルムを吸着する様子を示した断面図。(c)第3吸着部が離型フィルムを吸着する様子を示した断面図。
図7】(a)第2実施形態に係る下型を示した平面図。(b)B部分を示した拡大図。
図8】第3実施形態に係る下型を示した平面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<樹脂成形装置1の全体構成>
まず図1を用いて、本発明の第1実施形態に係る樹脂成形装置1について説明する。なお、図1を用いた説明では、図中に示した矢印X及びYを用いて方向を定義する。樹脂成形装置1は、封止前基板W1を樹脂封止し、樹脂成形品(封止済基板W2)を製造するものである。なお、本実施形態では、樹脂封止される前の基板を封止前基板W1、樹脂封止された後の基板を封止済基板W2とそれぞれ称している。また本実施形態では、圧縮成形法によって樹脂成形を行う樹脂成形装置1を例示している。
【0013】
樹脂成形装置1は、構成要素として、基板供給・収納モジュール10、成形モジュール20及び材料供給モジュール30を具備する。各構成要素は、他の構成要素に対して着脱可能かつ交換可能である。
【0014】
基板供給・収納モジュール10は、封止前基板W1を成形モジュール20へと供給し、成形モジュール20から受け取った封止済基板W2を収納するものである。なお、封止前基板W1としては、リードフレームをはじめとして、その他種々の基板(ガラスエポキシ製基板、セラミック製基板、樹脂製基板、金属製基板)を用いることが可能である。基板供給・収納モジュール10は、主として封止前基板供給部11、封止済基板収納部12、基板載置部13及び基板搬送機構14を具備する。
【0015】
基板載置部13は、封止前基板供給部11、封止済基板収納部12及び基板搬送機構14との間で、封止前基板W1及び封止済基板W2の受け渡しを適宜行うものである。基板載置部13は、基板供給・収納モジュール10内において、Y方向に移動することができる。封止前基板供給部11は、基板載置部13へと封止前基板W1を供給することができる。封止済基板収納部12は、基板載置部13から受け取った封止済基板W2を収納することができる。基板搬送機構14は、基板供給・収納モジュール10及び成形モジュール20内をX方向及びY方向に移動することができる。基板搬送機構14は、封止前基板W1及び封止済基板W2を、基板供給・収納モジュール10及び成形モジュール20に亘って適宜搬送することができる。
【0016】
成形モジュール20は、樹脂成形を行うものである。本実施形態では、3つの成形モジュール20が設けられた樹脂成形装置1を例示しているが、成形モジュール20の個数は限定するものではない。成形モジュール20は、主として型締め機構100及び成形型200を具備する。
【0017】
成形型200は、上型200U(図2等参照)と、上型200Uに対して昇降可能な下型200Dと、を具備する。なお、上型200U及び下型200Dは、それぞれ、本願の一方の型及び他方の型の実施の一形態である。下型200Dには、樹脂成形品の形状に対応したキャビティCが形成される。型締め機構100は、下型200Dを昇降させることで、成形型200の型締め、及び、型開きを行うことができる。なお、成形モジュール20のより具体的な構成については、後述する。
【0018】
材料供給モジュール30は、離型フィルムF及び樹脂材料を成形モジュール20へと供給するものである。材料供給モジュール30は、主として材料載置部31、離型フィルム供給機構32、樹脂材料収容部33、樹脂材料投入機構34及び材料搬送機構35を具備する。
【0019】
材料載置部31は、離型フィルムF及び樹脂材料収容部33を載置可能なものである。材料載置部31は、材料供給モジュール30内において、X方向及びY方向に移動することができる。離型フィルム供給機構32は、材料載置部31へと離型フィルムFを供給することができる。
【0020】
樹脂材料収容部33は、略枠状の形状であり、材料載置部31へ供給された離型フィルムFと一体となって、樹脂材料投入機構34から供給される樹脂材料を収容することができる。材料搬送機構35は、材料供給モジュール30及び成形モジュール20内をX方向及びY方向に移動することができる。材料搬送機構35は、一体となった離型フィルムF及び樹脂材料収容部33を、樹脂材料とともに成形モジュール20へ搬送することができる。
【0021】
<樹脂成形装置1を用いた樹脂成形方法>
以下では、上述の如く構成された樹脂成形装置1による樹脂成形方法の一例について説明する。
【0022】
本実施形態に係る樹脂成形品の製造方法は、主として基板搬入工程、フィルム配置工程、型締め工程、樹脂成形工程、型開き工程及び搬出工程を含む。以下、順に説明する。
【0023】
まず、基板搬入工程において、成形型200に封止前基板W1が搬入される。具体的には、基板搬入工程において、封止前基板供給部11から基板載置部13へと封止前基板W1が供給される。基板搬送機構14は、基板載置部13に載置された封止前基板W1を受け取り、成形モジュール20の成形型200へと搬送する。
【0024】
次に、フィルム配置工程において、成形型200(下型200D)に離型フィルムF及び樹脂材料が配置される。具体的には、フィルム配置工程において、離型フィルム供給機構32から材料載置部31へと離型フィルムFが供給される。この際、材料載置部31において、離型フィルムFを適宜切断して所定の大きさにすることも可能である。材料載置部31に載置された離型フィルムFは、その上に載置された樹脂材料収容部33と一体となって樹脂材料を収容可能な箱状を形成する。一体となった離型フィルムF及び樹脂材料収容部33に、樹脂材料投入機構34から樹脂材料が投入され、樹脂材料を収容した離型フィルムF及び樹脂材料収容部33が材料載置部31に載置される。材料搬送機構35は、樹脂材料を収容した離型フィルムF及び樹脂材料収容部33を受け取り、成形モジュール20へと移動し、樹脂材料が収容された離型フィルムF及び樹脂材料収容部33を成形型200(下型200D)に配置する。その後、後述のように、離型フィルムFが下型200Dに保持され、下型200DのキャビティCに樹脂材料が供給される。樹脂材料がキャビティCに供給された後で、材料搬送機構35によって樹脂材料収容部33が成形型200から搬出され、材料供給モジュール30へと戻される。
【0025】
次に、型締め工程において、成形型200の型締めが行われる。具体的には、型締め工程において、下型200Dに設けられた加熱機構(不図示)によって、キャビティC内に収容された樹脂材料が加熱される。次に、型締め機構100が駆動されることで、下型200Dが上型200Uに向かって上昇する。下型200Dが所定の位置まで上昇すると、下型200Dの上面と上型200Uの下面とが直接的に、又は、封止前基板W1を介して間接的に接触し、下型200Dに形成されたキャビティCが上型200Uや封止前基板W1によって上方から塞がれる。この状態でさらに下型200Dが押し上げられることで、下型200Dに収容された樹脂材料が加圧される。
【0026】
次に、樹脂成形工程において、樹脂材料が硬化されて樹脂成形が行われる。具体的には、樹脂成形工程において、樹脂材料を加圧した状態で所定時間待機する。これによって樹脂材料を硬化させて、封止前基板W1に対して樹脂成形を行い、樹脂成形品(封止済基板W2)を得ることができる。
【0027】
次に、型開き工程において、成形型200が開かれる。具体的には、型開き工程において、型締め機構100が駆動されることで下型200Dが上型200Uから離れるように下降する。これによって成形型200が開かれ、封止済基板W2を取り出すことができる状態となる。
【0028】
次に、搬出工程において、樹脂成形品(封止済基板W2)が成形型200から搬出される。具体的には、搬出工程において、基板搬送機構14は成形型200の封止済基板W2を受け取り、受け取った封止済基板W2を基板供給・収納モジュール10の基板載置部13へと受け渡す。封止済基板収納部12は、基板載置部13から封止済基板W2を受け取り、受け取った封止済基板W2を収納する。
【0029】
このように樹脂成形装置1においては、成形モジュール20に封止前基板W1、離型フィルムF及び樹脂材料等を供給し、樹脂成形を行うことができる。また複数の成形モジュール20で並行して樹脂成形を行うことができ、効率的に樹脂成形品を製造することができる。なお、上述の樹脂成形装置1の各部の動作は、図示せぬ制御装置によって適宜制御することができる。
【0030】
<成形モジュール20の構成>
以下では、成形モジュール20の具体的な構成について説明する。図2に示すように、成形モジュール20は、主として型締め機構100及び成形型200等を具備する。
【0031】
型締め機構100は、下型200Dを昇降させて型締め及び型開き等を行うものである。型締め機構100は、主として基台101、支柱102、下型ベース部材103、上型ベース部材104及び駆動機構105等を具備する。
【0032】
基台101は、成形型200等を支持するものである。基台101には、複数の支柱102が固定される。複数の支柱102は、基台101から上方に延びるように設けられる。支柱102の上下中途部には、下型ベース部材103が上下に移動可能となるように設けられる。支柱102の上端部には、上型ベース部材104が固定される。
【0033】
駆動機構105は、下型200Dを昇降させるためのものである。駆動機構105としては、ボールねじ機構、油圧シリンダ、トグル機構等を用いることができる。駆動機構105は、基台101と下型ベース部材103との間に配置される。駆動機構105は、基台101と下型ベース部材103との間で上下に伸縮することで、下型ベース部材103を上下に昇降させることができる。
【0034】
成形型200は、上型200U及び下型200Dから構成され、樹脂材料を成形するためのキャビティCを形成するものである。
【0035】
上型200Uは、適宜の上下方向の幅を有するように形成される。上型200Uは、樹脂を成形するための面(型面)を下方に向けて配置される。上型200Uの型面は、凹凸のない平面状に形成される。上型200Uは、上型ベース部材104の底面に固定される。上型200Uの型面には、基板(封止前基板W1及び封止済基板W2)を吸着可能な吸着孔(不図示)が適宜形成される。
【0036】
図2及び図3に示すように、下型200Dは、下型ベース部材103の上面に配置される。下型200Dの上面(型面)は、上型200Uの型面と上下方向に対向するように配置される。下型200Dは、主として主面部材210及び側面部材220等を具備する。
【0037】
主面部材210は、キャビティCの主面を形成するものである。本実施形態では、主面部材210は下型200Dであるため、主面は底面になる。主面部材210は、平面視矩形状に形成される。主面部材210は、適宜の上下方向の幅を有するように形成される。主面部材210は、下型ベース部材103の上面に載せられた状態で配置される。
【0038】
側面部材220は、キャビティCの側面を形成し、主面部材210を側方から囲むものである。側面部材220は、適宜の上下方向の幅を有するように形成される。側面部材220は、主として中空部221を具備する。
【0039】
中空部221は、側面部材220の中央を上下に貫通するように形成される。中空部221は、平面視矩形状に形成される。中空部221は、平面視において、主面部材210の外形と概ね一致するような形状に形成される。
【0040】
このように側面部材220は、平面視矩形状の枠状に形成される。側面部材220の中空部221には主面部材210が配置される。側面部材220は、弾性部材220aを介して、下型ベース部材103の上面に載せられた状態で配置される。弾性部材220aは、例えば上下に伸縮可能な圧縮コイルばね等により形成される。側面部材220の上面は、主面部材210の上面よりも上方に位置する。このように構成された主面部材210及び側面部材220に囲まれた部分(主面部材210の上方、かつ側面部材220の内側)が、樹脂成形を行うためのキャビティCとなる。
【0041】
このように構成された下型200Dの型面には離型フィルムFが配置され、配置された離型フィルムFの上のキャビティCに対応する部分には樹脂材料が供給されている。その後、離型フィルムFが下型200Dに吸着されることによって樹脂材料がキャビティC内に供給される。また、上型200Uには封止前基板W1が吸着されて保持される。この状態で型締め機構100によって上型200Uと下型200Dを型締めし、封止前基板W1に対して樹脂を圧縮成形し、封止済基板W2を得ることができる。
【0042】
<下型200Dの構成>
ここで、下型200Dには、離型フィルムFを吸着して保持するための吸着孔等が適宜形成される。以下では、離型フィルムFを吸着するための下型200Dの構造について、具体的に説明する。
【0043】
図3から図5までに示すように、下型200Dは、離型フィルムFを吸着するための第1吸着部230、第2吸着部240及び第3吸着部250を具備する。
【0044】
第1吸着部230は、側面部材220の上面に離型フィルムFを吸着するためのものである。第1吸着部230は、主として第1吸引孔部231、第2吸引孔部232及び吸引経路233を具備する。
【0045】
図3及び図5に示す第1吸引孔部231は、側面部材220の上面と、吸引経路233とを接続するように、上下方向に沿って形成される貫通孔である。第1吸引孔部231は、平面視円形状に形成される。第1吸引孔部231は、平面視においてキャビティCの周囲を囲むように複数並べて形成される。第1吸引孔部231は、平面視において、キャビティCの形状に沿った矩形状に並ぶように形成される。第1吸引孔部231は、概ね等間隔に並べられる。隣接する第1吸引孔部231同士は、例えば0.05mm以上の距離を空けるように形成される。本実施形態の第1吸引孔部231は、平面視において直径1~5mmの円形状に形成されている。
【0046】
なお、第1吸引孔部231の形状は円形状に限るものではなく、平面視における面積が、直径1~5mmの円の面積(約0.5~20mm)に相当するようなその他の形状に形成することも可能である。また本実施形態では、隣接する第1吸引孔部231同士の間隔が概ね一定となるように複数の第1吸引孔部231を並べて形成されているが、例えば複数の第1吸引孔部231が不等間隔に形成することも可能である。
【0047】
第2吸引孔部232は、側面部材220の上面と、吸引経路233とを接続するように、上下方向に沿って形成される貫通孔である。第2吸引孔部232は、平面視において、1つの第1吸引孔部231から、その第1吸引孔部231と隣接する他の第1吸引孔部231まで延びるように形成される。このようにして第2吸引孔部232は、隣接する第1吸引孔部231同士を接続するように形成される。平面視における第2吸引孔部232の幅H(第2吸引孔部232が隣接する第1吸引孔部231同士を接続するために延びる方向に対して垂直な方向の長さである幅H)は、概ね一定となるように形成される。第2吸引孔部232の幅Hは、例えば離型フィルムFの厚さの4倍以下になるように形成される。
【0048】
第2吸引孔部232の幅Hは、第1吸引孔部231の幅(第2吸引孔部232が隣接する第1吸引孔部231同士を接続するために延びる方向に対して垂直な方向における第1吸引孔部231の最大の長さ。本実施形態では、第1吸引孔部231の直径)よりも小さく形成されている。これによって、第1吸引孔部231は、第2吸引孔部232に対して、第2吸引孔部232の幅方向両側(例えば図5(a)においては、紙面左右方向)にそれぞれ突出するように形成されている。すなわち、第1吸引孔部231は、第2吸引孔部232に対して、下型200Dの内側(キャビティC側)、及び、外側(キャビティCと反対側)に突出するように形成されている。
【0049】
第1吸引孔部231及び第2吸引孔部232は、平面視において交互に連なるように形成される。また第1吸引孔部231及び第2吸引孔部232は、キャビティCの周囲を囲むように形成される。本実施形態では、第1吸引孔部231及び第2吸引孔部232は、途切れることなくキャビティCを囲むように形成される。すなわち、第1吸引孔部231及び第2吸引孔部232は、平面視において、端の無い環状に形成され、第1吸引孔部231及び第2吸引孔部232は、連続的に連なってキャビティCの周り全体を囲んでいる。このように、側面部材220の上面(型面)に開口する第1吸引孔部231及び第2吸引孔部232によって、離型フィルムFを吸着するための吸着孔が形成されている。なお、第1吸引孔部231及び第2吸引孔部232は、本願の離型フィルム吸着孔の実施の一形態である。
【0050】
図4及び図5に示す吸引経路233は、第1吸引孔部231及び第2吸引孔部232から空気を吸引するためのものである。吸引経路233は、第1吸引孔部231及び第2吸引孔部232の下方に形成される。吸引経路233は、側面部材220の上下中途部から、下方に向かって延びるように形成される。吸引経路233は、平面視において、第1吸引孔部231及び第2吸引孔部232に沿って延びるように形成される。すなわち吸引経路233も、平面視において端の無い環状に形成される。吸引経路233の上部は、第1吸引孔部231及び第2吸引孔部232に接続される。吸引経路233の下部には、適宜形成された空気の流通経路を介して真空ポンプ等の吸引装置(不図示)が接続される。この吸引装置を作動させて空気を吸引することで、吸引経路233を介して第1吸引孔部231及び第2吸引孔部232から空気を吸引し、離型フィルムFを側面部材220の上面に吸着することができる。
【0051】
なお、上述のように、第1吸引孔部231、第2吸引孔部232及び吸引経路233はキャビティCの周囲を途切れることなく、連続的に連なって囲むように形成されている。このため側面部材220は、第1吸引孔部231等を挟んで、平面視において第1吸引孔部231等よりも外側の部分と、内側の部分と、に分離されている。以下では、側面部材220のうち、第1吸引孔部231等よりも外側の部分を外側部材222と称し、第1吸引孔部231等よりも内側の部分を内側部材223と称する。
【0052】
図3から図5までに示す第2吸着部240は、側面部材220(内側部材223)の上面に離型フィルムFを吸着するためのものである。第2吸着部240は、主として凹状部241、吸引孔部242及び吸引経路243を具備する。
【0053】
図3及び図5に示す凹状部241は、内側部材223の上面に形成された凹状の部分である。凹状部241は、キャビティCの周囲に複数形成される。本実施形態では、凹状部241は、平面視において矩形状に形成されたキャビティCの各辺に沿うように、4つ形成される。凹状部241は、キャビティCの各辺に平行な直線状に形成される。4つの凹状部241は、互いに接続されないように、適宜の間隔を空けて形成される。凹状部241は、長手方向断面視において、中央に向かって下方に傾斜するようなV字状に形成される。
【0054】
吸引孔部242は、内側部材223の上面と、吸引経路243とを接続するように、上下方向に沿って形成される貫通孔である。なお、吸引孔部242は、本願の第3吸引孔部の実施の一形態である。吸引孔部242は、平面視円形状に形成される。吸引孔部242は、平面視において凹状部241の内側に形成される。吸引孔部242は、各凹状部241に複数形成される。
【0055】
図4及び図5に示す吸引経路243は、吸引孔部242から空気を吸引するためのものである。吸引経路243は、吸引孔部242の下方に形成される。吸引経路243は、内側部材223の上下中途部から、下方に向かって延びるように形成される。吸引経路243は、平面視において、凹状部241及び吸引孔部242に沿って延びるように形成される。また吸引経路243は、平面視においてキャビティCを囲むような、端の無い環状に形成される。吸引経路243の上部は、吸引孔部242に接続される。吸引経路243の下部には、適宜形成された空気の流通経路を介して真空ポンプ等の吸引装置(不図示)が接続される。この吸引装置を作動させて空気を吸引することで、吸引経路243を介して吸引孔部242から空気を吸引し、離型フィルムFを内側部材223の上面(凹状部241)に吸着することができる。
【0056】
図3から図5までに示す第3吸着部250は、キャビティCに離型フィルムFを吸着するためのものである。第3吸着部250は、主面部材210の外側面と、側面部材220(内側部材223)の内側面(中空部221)との間の隙間によって形成される。主面部材210と側面部材220との間には、平面視において主面部材210の全周に亘るように隙間が形成される。これによって第3吸着部250は、平面視においてキャビティCを囲むような、端の無い環状に形成される。第3吸着部250の下部には、適宜形成された空気の流通経路を介して真空ポンプ等の吸引装置(不図示)が接続される。この吸引装置を作動させて空気を吸引することで、第3吸着部250から空気を吸引し、離型フィルムFをキャビティCの内側面に沿うように吸着することができる。
【0057】
第1吸着部230、第2吸着部240及び第3吸着部250による空気の吸引は、それぞれ独立して行うことが可能である。例えば、第1吸着部230、第2吸着部240及び第3吸着部250に接続された空気の流通経路にそれぞれバルブを設け、各バルブの開閉を適宜制御することで、第1吸着部230、第2吸着部240及び第3吸着部250をそれぞれ任意のタイミングで吸引させることができる。
【0058】
なお本実施形態では、説明のために第1吸着部230、第2吸着部240及び第3吸着部250の寸法(大きさや位置等)を適宜誇張して図示している。実際の第1吸着部230等の寸法は、図示されたものに限らない。
【0059】
<離型フィルムFの吸着>
以下では図6を用いて、フィルム配置工程において、上述のように構成された下型200Dに離型フィルムFが吸着される様子について説明する。なお、本実施形態では、実際は、前述のように離型フィルムFの上に樹脂材料が載っているが、以下の図、説明では樹脂材料については省略している。
【0060】
まず図6(a)に示すように、離型フィルムFが下型200D上に配置されると、第1吸着部230による空気の吸引が行われる。これによって、第1吸引孔部231及び第2吸引孔部232を介して空気が吸引され、側面部材220の上面に離型フィルムFが吸着される。
【0061】
ここで、図5(a)に示すように、第1吸着部230は、比較的面積の大きい第1吸引孔部231を有しているため、離型フィルムFを比較的大きい吸着力で保持することができる。さらに、隣接する第1吸引孔部231の間を第2吸引孔部232で接続しているため、隣接する第1吸引孔部231の間でも離型フィルムFを吸着することができる。特に本実施形態では、第1吸引孔部231及び第2吸引孔部232が、連続的に連なって、途切れることなくキャビティCを囲むように形成されている。このように連続する第1吸引孔部231及び第2吸引孔部232によって、隙間なく吸着力を発揮することができるため、離型フィルムFを強固に保持することができる。これによって、離型フィルムFが下型200Dの熱によって下型200Dの型面から離れるように変形しようとした場合であっても、離型フィルムFを保持し続けることができ、第1吸着部230からの空気の漏れを防止することができる。
【0062】
さらに、比較的大きな第1吸引孔部231同士を幅の狭い第2吸引孔部232で接続することで、第1吸着部230の吸着力によって離型フィルムFが第1吸引孔部231内へと引き込まれるのを防止することができる。これによって、離型フィルムFの吸着不良(シワの発生や、滑りの発生等)を防止することができる。
【0063】
次に図6(b)に示すように、第1吸着部230による空気の吸引が行われた状態で、第2吸着部240による空気の吸引が行われる。これによって、吸引孔部242を介して空気が吸引され、凹状部241に離型フィルムFが吸着される。このように凹状部241に離型フィルムFを引き込むことで、離型フィルムFを引き伸ばして、離型フィルムFに張力を付与することができる。
【0064】
次に図6(c)に示すように、第1吸着部230及び第2吸着部240による空気の吸引が行われた状態で、第3吸着部250による空気の吸引が行われる。これによって、キャビティCの内面に沿うように離型フィルムFが吸着される。このように離型フィルムFを引き込むことで、離型フィルムFをさらに引き伸ばして、離型フィルムFに張力を付与することができる。なお、実際は、このとき、離型フィルムFとともに樹脂材料(不図示)がキャビティC内に供給される。
【0065】
このように本実施形態では、第1吸着部230により離型フィルムFを吸着した後で、第2吸着部240及び第3吸着部250による吸着を行うことで、離型フィルムFに張力を付与している。この際、上述のように第1吸着部230によって離型フィルムFを強固に保持しているため、第2吸着部240及び第3吸着部250による吸着に起因する離型フィルムFの吸着不良(シワの発生や、滑りの発生等)を防止することができる。これによって、樹脂成形品の成形不良や離型不良の発生を防止することができる。
【0066】
以上、本発明の第1実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の技術的思想の範囲内で適宜の変更が可能である。
【0067】
例えば、本実施形態で説明した樹脂成形装置1の各部の構成(形状、配置、個数等)は特に限定するものではなく、任意に変更することが可能である。
【0068】
また、本実施形態では、上型200Uに基板(封止前基板W1等)を吸着して保持するものとしたが、本発明はこれに限るものではない。例えば、下型200Dで基板を保持する構成とすることも可能である。
【0069】
また、本実施形態では、第1吸引孔部231を平面視円形状に形成した例(図5(a)参照)を示したが、本発明はこれに限るものではなく、第1吸引孔部231を任意の形状に形成することも可能である。例えば、第1吸引孔部231を、平面視三角形状や四角形状などの多角形状、楕円状、その他任意の形状に形成することが可能である。
【0070】
また、本実施形態では、第2吸引孔部232を一定の幅Hを有する溝状(スリット状)に形成した例(図5(a)参照)を示したが、本発明はこれに限るものではなく、第2吸引孔部232を任意の形状に形成することも可能である。例えば、第2吸引孔部232を、平面視円形状、多角形状、その他任意の形状に形成することが可能である。なお、この場合でも、第2吸引孔部232の幅H(最小幅、又は、最大幅)を、離型フィルムFを引き込まない程度に小さく設定することが望ましい。
【0071】
また、本実施形態で示した第1吸引孔部231及び第2吸引孔部232の寸法(第1吸引孔部231の面積及び直径、第2吸引孔部232の幅H等)は一例であり、任意に変更することが可能である。
【0072】
また、本実施形態では、第1吸引孔部231及び第2吸引孔部232を、平面視においてキャビティCの形状に沿った矩形状に並ぶように形成した例を示したが、本発明はこれに限るものではなく、任意の形状に並べて形成することが可能である。
【0073】
また、本実施形態では、複数の第1吸引孔部231を概ね等間隔に並べた例を示したが、本発明はこれに限るものではなく、例えば不等間隔に並べるなど、任意の間隔で並べることが可能である。
【0074】
また、本実施形態では、平面視矩形状の成形型200を例に挙げて説明したが、成形型200の形状はこれに限るものではなく、例えば平面視円形状など、任意の形状の成形型200を用いることが可能である。
【0075】
また、本実施形態で用いた離型フィルムFの形状は特に限定するものではない。離型フィルムFとして、例えば矩形状、円形状等の離型フィルムFを用いることが可能である。また離型フィルムFの形状は、成形型200等の形状に応じて適宜選択することも可能である。
【0076】
また、本実施形態で用いた離型フィルムFの材質は特に限定するものではない。離型フィルムFとして、例えば樹脂フィルム、金属箔、ゴムシート等、若しくは、これらを複合したものを用いることが可能である。
【0077】
また、本実施形態では、第2吸着部240(図5参照)を具備する成形型200(下型200D)を例示したが、本発明はこれに限るものではなく、第2吸着部240を具備していない成形型200にも適用することが可能である。
【0078】
また、本実施形態では、樹脂材料は離型フィルムFとともに下型200Dに搬送される例を説明したが、本発明はこれに限るものではなく離型フィルムFと樹脂材料とは別々に下型200Dに搬送されることが可能である。
【0079】
また、本実施形態では、離型フィルムFを下型200Dに吸着して保持させる例を説明したが、本発明はこれに限るものではなく、上型200Uに離型フィルムFを吸着して保持させることが可能である。
【0080】
<第2実施形態>
以下では、図7を用いて、第2実施形態に係る下型200Dについて説明する。
【0081】
第2実施形態に係る下型200Dは、第1実施形態に係る下型200D(図3及び図5参照)の第1吸引孔部231とは形状の異なる第1吸引孔部234を有している点で、第1実施形態とは異なっている。よって以下では主にこの相違点について説明し、その他の第1実施形態と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0082】
第1吸引孔部234は、平面視半円状に形成されている。第1吸引孔部234は、第2吸引孔部232に対して、下型200Dの外側(キャビティCと反対側)にのみ突出するように形成されている。すなわち第1吸引孔部234は、外側部材222の内側面に形成されている。
【0083】
このように、第1実施形態とは異なり、第1吸引孔部234を半円状に形成することも可能である。この場合であっても、離型フィルムFが第1吸引孔部234に引き込まれるのを防止しながら、離型フィルムFを強固に保持することができる。
【0084】
また第2実施形態のように、第1吸引孔部234を外側にのみ突出するように形成することで、第2吸引孔部232の内側(キャビティC側)にスペースを確保することができ、例えば第1吸着部230全体を下型200Dの内側に近づけて形成することができる。これによって、下型200Dの小型化を図ることもできる。
【0085】
また第2実施形態のように、第1吸引孔部234を外側部材222のみに形成することで、第1吸引孔部234を形成する際の加工工程を簡素化することができる。これによって、下型200Dの製造コストの削減を図ることができる。
【0086】
なお第2実施形態では、第1吸引孔部234を、第2吸引孔部232に対して外側にのみ突出するように形成した例を示したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、第1吸引孔部234を、第2吸引孔部232に対して内側にのみ突出するように形成することも可能である。また、第2吸引孔部232に対して外側にのみ突出する第1吸引孔部234と、第2吸引孔部232に対して内側にのみ突出する第1吸引孔部234と、を組み合わせることも可能である。
【0087】
<第3実施形態>
以下では、図8を用いて、第3実施形態に係る下型200Dについて説明する。
【0088】
第3実施形態に係る下型200Dは、キャビティCを囲むように形成された第1吸引孔部231及び第2吸引孔部232の一部が途切れている点で、第1実施形態と異なっている。具体的には、第3実施形態においては、下型200Dの四隅付近において、第1吸引孔部231及び第2吸引孔部232が途切れるように形成されている。
【0089】
このように、第1吸引孔部231及び第2吸引孔部232を一部途切れるように形成することで、第2吸着部240や第3吸着部250で離型フィルムFを吸着した際に、過剰な張力が離型フィルムFに加わって、離型フィルムFのシワや滑り等が発生するのを防止することができる。
【0090】
なお、このように第1吸引孔部231及び第2吸引孔部232を一部途切れるように形成する場合、第1実施形態のように側面部材220を2つの部材(外側部材222及び内側部材223)に分けるのではなく、一体の部材で形成することが可能である。
【0091】
また、第1吸引孔部231及び第2吸引孔部232は、任意の部分で途切れさせることが可能であり、この途切れさせる部分は、例えば下型200Dの各部の形状や各吸引部の吸着力等に応じて任意に決定することが可能である。
【0092】
<付記>
本開示の第1側面の成形型200は、
上型200U(一方の型)と、前記上型200Uに対向して配置され、離型フィルムFが配置されるキャビティCを有する下型200D(他方の型)と、を具備する成形型200であって、
前記下型200Dは、前記キャビティCの主面を形成する主面部材210と、前記キャビティCの側面を形成する側面部材220と、を具備し、
前記上型200Uに対向する前記側面部材220の対向面には、複数の第1吸引孔部231と、隣接する前記第1吸引孔部231同士を連結する第2吸引孔部232と、を含み、前記離型フィルムFを吸着する離型フィルム吸着孔(第1吸引孔部231及び第2吸引孔部232)が形成され、
前記対向面において、前記第2吸引孔部232が隣接する前記第1吸引孔部231同士を連結するために延びる方向に垂直な方向における長さについて、前記第1吸引孔部231が、前記第2吸引孔部232よりも大きい。
本開示の第1側面の成形型200によれば、樹脂成形品の成形不良や離型不良の発生を防止することができる。すなわち、比較的大きな第1吸引孔部231を、比較的幅の狭い第2吸引孔部232で連結することで、比較的大きい吸着力で離型フィルムFを吸着しながらも、離型フィルムFが第1吸引孔部231に引き込まれるのを防止することができる。これによって、離型フィルムFの吸着不良(シワの発生や、滑りの発生等)を防止することができ、離型フィルムFの吸着不良に起因する樹脂成形品の成形不良や離型不良の発生を防止することができる。
【0093】
第1側面に従う第2側面の成形型200において、
前記第1吸引孔部231は、前記第2吸引孔部232に対して、前記キャビティC側、又は、前記キャビティCと反対側の少なくとも一方に突出するように形成されている。
本開示の第2側面の成形型200によれば、第1吸引孔部231を比較的簡素に形成することができる。
【0094】
第1又は第2側面に従う第3側面の成形型200において、
前記離型フィルム吸着孔(第1吸引孔部231及び第2吸引孔部232)は、前記キャビティCの周囲を連続的に連なって囲むように形成されている。
本開示の第3側面の成形型200によれば、キャビティCの全周に亘って離型フィルムFを強固に保持することができる。これによって、離型フィルムFの吸着不良をより効果的に防止することができる。
【0095】
第3側面に従う第4側面の成形型200において、
前記側面部材220は、
前記離型フィルム吸着孔よりも前記キャビティC側の部分を構成する内側部材223と、
前記内側部材223と別の部材により構成され、前記離型フィルム吸着孔よりも前記キャビティCと反対側の部分を構成する外側部材222と、
を具備する。
本開示の第4側面の成形型200によれば、側面部材220を内側部材223と外側部材222とに分離することで、離型フィルム吸着孔(第1吸引孔部231及び第2吸引孔部232)を容易に加工することができる。
【0096】
第4側面に従う第5側面の成形型200において、
前記第1吸引孔部231は、前記外側部材222に形成されている。
本開示の第5側面の成形型200によれば、第1吸引孔部231を外側部材222に形成することにより、内側部材223の小型化を図ることができ、ひいては成形型200の小型化を図ることができる。
【0097】
第1から第5側面に従う第6側面の成形型200において、
前記側面部材220の前記対向面における前記離型フィルム吸着孔よりも前記キャビティC側には、凹状部241と、前記凹状部241の内側において空気を吸引可能な吸引孔部242(第3吸引孔部)と、が形成されている。
本開示の第6側面の成形型200によれば、凹状部241に離型フィルムFを引き込むことで、離型フィルムFに張力を付与することができる。これによって、離型フィルムFの吸着不良をより効果的に防止することができる。
【0098】
本開示の第7側面の樹脂成形装置1は、
第1から第6側面までのいずれかの成形型200を具備する。
本開示の第7側面の樹脂成形装置1によれば、樹脂成形品の成形不良や離型不良の発生を防止することができる。
【0099】
本開示の第8側面の樹脂成形品の製造方法は、
第7側面の樹脂成形装置1を用いた樹脂成形品の製造方法であって、
前記離型フィルムFを前記下型200Dに配置するフィルム配置工程と、
前記離型フィルムFが配置された前記下型200Dを用いて樹脂成形を行う樹脂成形工程と、
を含む。
本開示の第8側面の樹脂成形品の製造方法によれば、樹脂成形品の成形不良や離型不良の発生を防止することができる。
【符号の説明】
【0100】
1 樹脂成形装置
200 成形型
200D 下型
200U 上型
210 主面部材
220 側面部材
222 外側部材
223 内側部材
230 第1吸着部
231 第1吸引孔部
232 第2吸引孔部
240 第2吸着部
241 凹状部
242 吸引孔部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2022-12-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の型と、前記一方の型に対向して配置され、離型フィルムが配置されるキャビティを有する他方の型と、を具備する成形型であって、
前記他方の型は、前記キャビティの主面を形成する主面部材と、前記キャビティの側面を形成する側面部材と、を具備し、
前記一方の型に対向する前記側面部材の対向面には、複数の第1吸引孔部と、隣接する前記第1吸引孔部同士を連結する第2吸引孔部と、を含み、前記離型フィルムを吸着する離型フィルム吸着孔が形成され、
前記対向面において、前記第2吸引孔部が隣接する前記第1吸引孔部同士を連結するために延びる方向に垂直な方向における長さについて、前記第1吸引孔部が、前記第2吸引孔部よりも大きい、
成形型。
【請求項2】
前記第1吸引孔部は、前記第2吸引孔部に対して、前記キャビティ側、又は、前記キャビティと反対側の少なくとも一方に突出するように形成されている、
請求項1に記載の成形型。
【請求項3】
前記離型フィルム吸着孔は、前記キャビティの周囲を連続的に連なって囲むように形成されている、
請求項1に記載の成形型。
【請求項4】
前記側面部材は、
前記離型フィルム吸着孔よりも前記キャビティ側の部分を構成する内側部材と、
前記内側部材と別の部材により構成され、前記離型フィルム吸着孔よりも前記キャビティと反対側の部分を構成する外側部材と、
を具備する、
請求項3に記載の成形型。
【請求項5】
前記第1吸引孔部は、前記外側部材に形成されている、
請求項4に記載の成形型。
【請求項6】
前記側面部材の前記対向面における前記離型フィルム吸着孔よりも前記キャビティ側には、凹状部と、前記凹状部の内側において空気を吸引可能な第3吸引孔部と、が形成されている、
請求項1に記載の成形型。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の成形型を具備する樹脂成形装置。
【請求項8】
請求項7に記載の樹脂成形装置を用いた樹脂成形品の製造方法であって、
前記離型フィルムを前記他方の型に配置するフィルム配置工程と、
前記離型フィルムが配置された前記他方の型を用いて樹脂成形を行う樹脂成形工程と、
を含む、樹脂成形品の製造方法。