(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092165
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】水酸化ナトリウム水溶液の蒸発濃縮装置
(51)【国際特許分類】
C01D 1/04 20060101AFI20240701BHJP
B01D 1/26 20060101ALI20240701BHJP
B01D 1/28 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
C01D1/04
B01D1/26 Z
B01D1/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207910
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】390036663
【氏名又は名称】木村化工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183265
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 剣一
(72)【発明者】
【氏名】立野 隆彦
(72)【発明者】
【氏名】竹森 勇
【テーマコード(参考)】
4D076
【Fターム(参考)】
4D076AA16
4D076AA24
4D076BA35
4D076CD33
4D076DA02
4D076DA25
4D076DA35
4D076EA02Z
4D076EA03X
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4D076EA14X
4D076EA20Z
4D076FA34
4D076HA20
4D076JA04
(57)【要約】
【課題】省エネルギー性に優れ、CO
2排出量の少ない蒸発濃縮装置を提供する。
【解決手段】複数段(2段)の蒸発濃縮部1、2と、各蒸発濃縮部で発生した水蒸気を断熱圧縮して各蒸発濃縮部の加熱源とする圧縮機11、12と、最終濃縮液から熱を回収する熱回収熱交換器4と、供給液が最初に供給される段の蒸発濃縮部1の加熱源となる水蒸気を発生させる蒸気発生部3と、熱回収熱交換器にて回収した熱を、電力により温度レベルを上げて蒸気発生部に加熱源として供給するヒートポンプ5と、蒸気発生部からの水蒸気を、初段側の蒸発濃縮部が備える圧縮機11に供給するための初段側供給路6と、前の段の蒸発濃縮部1で凝縮しなかった水蒸気を、次の段の圧縮機12に供給するための後段側供給路7とを備え、複数段の蒸発濃縮部が備える各圧縮機における、断熱圧縮後の水蒸気温度が、断熱圧縮前の水蒸気温度よりも、20℃以上60℃以下の範囲で高くなるように構成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
NaOH濃度が26~32wt%の水酸化ナトリウム水溶液である供給液を蒸発濃縮して、NaOH濃度が48~50wt%の水酸化ナトリウム水溶液である濃縮液を得るための蒸発濃縮装置であって、
(a)前記供給液を蒸発させて段階的に濃縮する複数段の蒸発濃縮部と、
(b)前記複数段の蒸発濃縮部のそれぞれが備える圧縮機であって、前記複数段の蒸発濃縮部のそれぞれで発生した水蒸気を断熱圧縮することで昇温した圧縮水蒸気を当該蒸発濃縮部の加熱源として供給するように構成された圧縮機と、
(c)前記複数段の蒸発濃縮部のうち、水酸化ナトリウムの濃度が最も高くなる最終段の蒸発濃縮部で濃縮された濃縮液が有する熱を回収する熱回収熱交換器と、
(d)前記複数段の蒸発濃縮部のうち、前記供給液が最初に供給される段の蒸発濃縮部の加熱源となる水蒸気を発生させる蒸気発生部と、
(e)前記熱回収熱交換器にて前記濃縮液から回収した熱を、電力により温度レベルを上げて、前記蒸気発生部に加熱源として供給するように構成されたヒートポンプと、
(f)前記蒸気発生部から供給される水蒸気を、前記供給液が最初に供給される段の蒸発濃縮部が備える圧縮機に供給するための初段側供給路と、
(g)前記複数段の蒸発濃縮部のうちの前の段の蒸発濃縮部に加熱源として供給された水蒸気のうち、当該前の段の蒸発濃縮部の加熱に使用されなかった水蒸気を、次の段の蒸発濃縮部が備える圧縮機である後段側圧縮機に供給するための後段側供給路と、
を備え、
(h)前記複数段の蒸発濃縮部が備える各圧縮機における、断熱圧縮後の水蒸気温度が、断熱圧縮前の水蒸気温度よりも、20℃以上60℃以下の範囲で高くなるように構成されていること
を特徴とする蒸発濃縮装置。
【請求項2】
前記供給液が最初に供給される蒸発濃縮部で加熱源として用いられ、凝縮したドレンが前記蒸気発生部に戻され、前記蒸気発生部で発生した水蒸気が前記供給液が最初に供給される蒸発濃縮部に加熱源として供給されるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の蒸発濃縮装置。
【請求項3】
前記複数段の蒸発濃縮部として、2段以上4段以下の蒸発濃縮部を備えていることを特徴とする請求項1記載の蒸発濃縮装置。
【請求項4】
前記複数段の蒸発濃縮部として、前記供給液が最初に供給される段の蒸発濃縮部である第1蒸発濃縮部と、蒸発濃縮後の水酸化ナトリウムの濃度が最も高くなる最終段の蒸発濃縮部である第2蒸発濃縮部の2つの蒸発濃縮部を備えているとともに、
前記圧縮機として、前記蒸気発生部から供給される水蒸気と、前記第1蒸発濃縮部で発生した水蒸気とを断熱圧縮して、前記第1蒸発濃縮部に加熱源として供給する第1圧縮機と、前記第1蒸発濃縮部に加熱源として供給された水蒸気のうち、前記第1蒸発濃縮部で加熱に使用されなかった水蒸気と、前記第2蒸発濃縮部で発生した水蒸気とを断熱圧縮して、前記第2蒸発濃縮部に供給する第2圧縮機の2つの圧縮機を備えていること
を特徴とする請求項1記載の蒸発濃縮装置。
【請求項5】
前記第1蒸発濃縮部で加熱源として用いられ、凝縮したドレンが前記蒸気発生部に戻され、前記蒸気発生部で発生した水蒸気が前記第1蒸発濃縮部に加熱源として供給されるように構成されていることを特徴とする請求項4記載の蒸発濃縮装置。
【請求項6】
前記蒸気発生部と前記第1蒸発濃縮部が大気圧より低い圧力で操作され、前記第2蒸発濃縮部が大気圧より高い圧力で操作されるように構成されていることを特徴とする請求項4記載の蒸発濃縮装置。
【請求項7】
前記第1圧縮機の吸込み圧力が大気圧より低い圧力であり、前記第2圧縮機の吸込み圧力が大気圧より高い圧力であることを特徴とする請求項6記載の蒸発濃縮装置。
【請求項8】
前記供給液と、前記第2蒸発濃縮部で濃縮された第2濃縮液との熱交換を行う第1予熱器と、
前記供給液と、前記第1圧縮機から加熱源として前記第1蒸発濃縮部に供給された水蒸気が凝縮したドレンと前記第2圧縮機から加熱源として前記第2蒸発濃縮部に供給された水蒸気が凝縮したドレンの混合体との熱交換を行う第2予熱器と、
前記第1蒸発濃縮部において蒸発濃縮された濃縮液である第1濃縮液と、前記第2蒸発濃縮部で濃縮された第2濃縮液との熱交換を行う第3予熱器と、
前記第1濃縮液と、前記第2圧縮機から加熱源として前記第2蒸発濃縮部に供給された水蒸気が凝縮したドレンとの熱交換を行う第4予熱器と、
を備え、
前記第1予熱器および前記第2予熱器で予熱された前記供給液が前記第1蒸発濃縮部に供給され、
前記第3予熱器および前記第4予熱器で予熱された前記第1濃縮液が前記第2蒸発濃縮部に供給されるように構成されていること
を特徴とする請求項4~7のいずれかに記載の蒸発濃縮装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水酸化ナトリウム水溶液の蒸発濃縮装置に関し、詳しくは、水酸化ナトリウム水溶液の蒸発濃縮装置の省エネルギー性を向上させるための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
水酸化ナトリウムは、食塩(NaCl)を電解し、水酸化ナトリウム濃度が約30wt%の水溶液を得た後、水酸化ナトリウム濃度が48wt%程度になるまで蒸発濃縮して製品として出荷されている。
【0003】
そして、水酸化ナトリウム水溶液の蒸発濃縮装置として、特許文献1には、水酸化ナトリウム水溶液を加熱して水を蒸発させる蒸発器と、該蒸発器において加熱濃縮された濃縮液と蒸発水蒸気(ベーパ)を分離させる気液分離器とを備えた苛性ソーダ水溶液蒸発濃縮設備において、プレート型熱交換器を蒸発器に用いることを特徴とする水酸化ナトリウム水溶液の多重効用蒸発濃縮設備が開示されている。
【0004】
そして、この蒸発濃縮装置によれば、蒸発器に用いられているプレート型熱交換器の伝熱面での熱効率が高いため、蒸発濃縮設備を小型化することができ、水酸化ナトリウム水溶液を効率的に蒸発濃縮することができるとされている。
【0005】
また、特許文献2には、第1効用蒸発濃縮部から最終効用蒸発濃縮部までの複数の蒸発濃縮部を備えた多重効用式蒸発濃縮部と、予備蒸発濃縮部と、蒸発水蒸気を循環冷却水と熱交換させて凝縮させる最終効用蒸発濃縮部用コンデンサと、予備蒸発濃縮部における蒸発水蒸気を循環冷却水と熱交換させて凝縮させる予備蒸発濃縮部用コンデンサと、最終効用蒸発濃縮部用コンデンサで用いられ、蒸発水蒸気の凝縮熱により昇温した循環冷却水から回収した熱を、電力により温度レベルを上げて予備蒸発濃縮部に高温水として供給するように構成された第1のヒートポンプと、予備蒸発濃縮部用コンデンサで用いられ、蒸発水蒸気の凝縮熱により昇温した循環冷却水から回収した熱を、電力により温度レベルを上げて、第1効用蒸発濃縮部で用いられた加熱用水蒸気のドレンの加熱に用いてドレンを蒸発させ、ドレンの蒸発水蒸気を圧縮して第1効用蒸発濃縮部に供給するように構成された第2のヒートポンプとを備えた水酸化ナトリウムの蒸発濃縮装置が開示されている。
【0006】
そして、特許文献2の蒸発濃縮装置によれば、上述のように第1のヒートポンプと第2のヒートポンプとを用いて、2段階で熱を回収するシステムを構成しているので、従来の蒸発濃縮設備に比べて効率よく水酸化ナトリウム水溶液を濃縮することが可能になるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014-181139号公報
【特許文献2】特開2019-89678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の蒸発濃縮装置の場合、蒸発器に用いられているプレート型熱交換器の伝熱面での熱効率を向上させることにより、装置の小型化を図っているにすぎず、得られる省エネルギー効果にも限界があり、さらなる省エネルギー化の要請に十分に応えることができないのが実情である。
【0009】
また、特許文献2の蒸発濃縮装置の場合、最終効用蒸発濃縮部用コンデンサで用いられて昇温した循環冷却水や、予備蒸発濃縮部用コンデンサで用いられて蒸発水蒸気の凝縮熱により昇温した循環冷却水が有する熱(顕熱)を回収するために、第1および第2のヒートポンプを用いて省エネルギーを図っており、大きな省エネルギー効果を得ることを可能にしているが、さらなる省エネルギー効果の改善や、構成の自由度の向上などが求められているのが実情である。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するものであるが、ここで、上述した点と一部重なる部分もあるが、本発明が解決しようとしている課題について詳しく説明する。
【0011】
水酸化ナトリウムは、水溶液のBPR(沸点上昇)が高くなるという特徴的な物性を有しており、水酸化ナトリウム48wt%水溶液のBPRは45℃に達する。
【0012】
このような水酸化ナトリウムの蒸発濃縮装置には、多重効用方式の蒸発濃縮装置が広く採用されているが、蒸発濃縮の対象であるNaOH水溶液は、上述のようにBPRが高いため、多重効用の効用数はほぼ3重効用が限界となっている。
【0013】
さらに、3重効用方式の蒸発濃縮装置の理論COP(Coefficient Of Performance)(成績係数)は3であるが、実際の蒸発濃縮装置ではCOPが2.16程度となっており、省エネルギーの見地から改善の余地があるのが実情である。
【0014】
また、水酸化ナトリウムは腐食性が強いため、蒸発濃縮装置の構成材料として高価なニッケルが広く用いられており、材料コストを抑えるためには、装置をできるだけ小さくすることが必要になる。そこで、ヒーターにおける加熱側と被加熱側の温度差を大きくとり、伝熱面積を小さくする(すなわち、装置を小型化する)ことができるように、加熱源として、化石燃料を用いたボイラで発生させた、約1MPaGの高温、高圧の水蒸気を用いることが行われている。
【0015】
しかしながら、上述のように、水酸化ナトリウム水溶液のBPRが大きいため、蒸発濃縮装置において加熱側と被加熱側の温度差を大きくしようとすると、それだけ高温、高圧の水蒸気が必要になり、加熱側と被加熱側の温度差を大きくするのにも制約がある。
【0016】
また、国内で一般的に用いられている水酸化ナトリウム水溶液の蒸発濃縮装置における蒸発量は、通常5t/hrから20t/hr程度であり、このような大型の蒸発濃縮装置が各地で数多く稼働している。そのため、ボイラ蒸気を大量に使用している水酸化ナトリウム水溶液の蒸発濃縮装置のCO2排出量を削減することが、温室効果ガスの発生の抑制の見地からのみでなく、省エネルギーの見地からも喫緊の課題となっている。
【0017】
本発明は、特許文献1の蒸発濃縮装置のように、蒸発器にプレート型熱交換器を用いることを必ずしも必要とせず、また、特許文献2の蒸発濃縮装置のような第1のヒートポンプと第2のヒートポンプを組み合わせて用いた構成を必要とせずに、水酸化ナトリウム水溶液を効率よく蒸発濃縮することが可能で、省エネルギー性に優れ、CO2排出量を抑えることが可能な水酸化ナトリウム水溶液の蒸発濃縮装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するため、本発明の水酸化ナトリウム水溶液の蒸発濃縮装置は、
NaOH濃度が26~32wt%の水酸化ナトリウム水溶液である供給液を蒸発濃縮して、NaOH濃度が48~50wt%の水酸化ナトリウム水溶液である濃縮液を得るための蒸発濃縮装置であって、
(a)前記供給液を蒸発させて段階的に濃縮する複数段の蒸発濃縮部と、
(b)前記複数段の蒸発濃縮部のそれぞれが備える圧縮機であって、前記複数段の蒸発濃縮部のそれぞれで発生した水蒸気を断熱圧縮することで昇温した圧縮水蒸気を当該蒸発濃縮部の加熱源として供給するように構成された圧縮機と、
(c)前記複数段の蒸発濃縮部のうち、水酸化ナトリウムの濃度が最も高くなる最終段の蒸発濃縮部で濃縮された濃縮液が有する熱を回収する熱回収熱交換器と、
(d)前記複数段の蒸発濃縮部のうち、前記供給液が最初に供給される段の蒸発濃縮部の加熱源となる水蒸気を発生させる蒸気発生部と、
(e)前記熱回収熱交換器にて前記濃縮液から回収した熱を、電力により温度レベルを上げて、前記蒸気発生部に加熱源として供給するように構成されたヒートポンプと、
(f)前記蒸気発生部から供給される水蒸気を、前記供給液が最初に供給される段の蒸発濃縮部が備える圧縮機に供給するための初段側供給路と、
(g)前記複数段の蒸発濃縮部のうちの前の段の蒸発濃縮部に加熱源として供給された水蒸気のうち、当該前の段の蒸発濃縮部の加熱に使用されなかった水蒸気を、次の段の蒸発濃縮部が備える圧縮機である後段側圧縮機に供給するための後段側供給路と、
を備え、
(h)前記複数段の蒸発濃縮部が備える各圧縮機における、断熱圧縮後の水蒸気温度が、断熱圧縮前の水蒸気温度よりも、20℃以上60℃以下の範囲で高くなるように構成されていること
を特徴としている。
【0019】
本発明の蒸発濃縮装置においては、前記供給液が最初に供給される段の蒸発濃縮部で加熱源として用いられ、凝縮したドレンが前記蒸気発生部に戻され、前記蒸気発生部で発生した水蒸気が前記供給液が最初に供給される段の蒸発濃縮部に加熱源として供給されるように構成してもよい。
【0020】
本発明の蒸発濃縮装置においては、前記複数段の蒸発濃縮部として、2段以上4段以下の蒸発濃縮部を備えた構成とすることが好ましい。
【0021】
また、前記複数段の蒸発濃縮部として、前記供給液が最初に供給される段の蒸発濃縮部である第1蒸発濃縮部と、蒸発濃縮後の水酸化ナトリウムの濃度が最も高くなる最終段の蒸発濃縮部である第2蒸発濃縮部の2つの蒸発濃縮部を備えているとともに、
前記圧縮機として、前記蒸気発生部から供給される水蒸気と、前記第1蒸発濃縮部で発生した水蒸気とを断熱圧縮して、前記第1蒸発濃縮部に加熱源として供給する第1圧縮機と、前記第1蒸発濃縮部に加熱源として供給された水蒸気のうち、前記第1蒸発濃縮部で加熱に使用されなかった水蒸気と、前記第2蒸発濃縮部で発生した水蒸気とを断熱圧縮して、前記第2蒸発濃縮部に供給する第2圧縮機の2つの圧縮機を備えている構成とすることも可能である。
【0022】
また、前記第1蒸発濃縮部で加熱源として用いられ、凝縮したドレンが前記蒸気発生部に戻され、前記蒸気発生部で発生した水蒸気が前記第1蒸発濃縮部に加熱源として供給されるように構成されていてもよい。
【0023】
また、前記蒸気発生部と前記第1蒸発濃縮部が大気圧より低い圧力で操作され、前記第2蒸発濃縮部が大気圧より高い圧力で操作されるように構成されていることが好ましい。
【0024】
また、前記第1圧縮機の吸込み圧力が大気圧より低い圧力であり、前記第2圧縮機の吸込み圧力が大気圧より高い圧力であることが好ましい。
【0025】
また、前記供給液と、前記第2蒸発濃縮部で濃縮された第2濃縮液との熱交換を行う第1予熱器と、
前記供給液と、前記第1圧縮機から加熱源として前記第1蒸発濃縮部に供給された水蒸気が凝縮したドレンと前記第2圧縮機から加熱源として前記第2蒸発濃縮部に供給された水蒸気が凝縮したドレンの混合体との熱交換を行う第2予熱器と、
前記第1蒸発濃縮部において蒸発濃縮された濃縮液である第1濃縮液と、前記第2蒸発濃縮部で濃縮された第2濃縮液との熱交換を行う第3予熱器と、
前記第1濃縮液と、前記第2圧縮機から加熱源として前記第2蒸発濃縮部に供給された水蒸気が凝縮したドレンとの熱交換を行う第4予熱器と、
を備え、
前記第1予熱器および前記第2予熱器で予熱された前記供給液が前記第1蒸発濃縮部に供給され、
前記第3予熱器および前記第4予熱器で予熱された前記第1濃縮液が前記第2蒸発濃縮部に供給されるように構成することも可能である。
【発明の効果】
【0026】
本発明の水酸化ナトリウム水溶液の蒸発濃縮装置は、供給液を段階的に濃縮する複数段の蒸発濃縮部と、複数段の蒸発濃縮部のそれぞれで発生した水蒸気を断熱圧縮することで昇温した圧縮水蒸気を当該蒸発濃縮部の加熱源として供給するように構成された、複数段の蒸発濃縮部のそれぞれが備える圧縮機と、水酸化ナトリウムの濃度が最も高くなる段の蒸発濃縮部で濃縮された濃縮液が有する熱を回収する熱回収熱交換器と、供給液が最初に供給される段の蒸発濃縮部の加熱源となる水蒸気を発生させる蒸気発生部と、熱回収熱交換器にて濃縮液から回収した熱を電力により温度レベルを上げて蒸気発生部に加熱源として供給するヒートポンプと、蒸気発生部から供給される水蒸気を、供給液が最初に供給される蒸発濃縮部が備える初段側の圧縮機に供給するための初段側供給路と、複数段の蒸発濃縮部のうち前の段の蒸発濃縮部に加熱源として供給された水蒸気のうち、前の段の蒸発濃縮部の加熱に使用されなかった水蒸気を、次の段の蒸発濃縮部が備える後段側の圧縮機に供給するための後段側供給路とを備え、かつ、複数段の蒸発濃縮部が備える各圧縮機における、断熱圧縮後の水蒸気温度が、断熱圧縮前の水蒸気温度よりも、20℃以上60℃以下の範囲で高くなるように構成されているので、圧縮機にかかる負荷を抑制して、省エネルギー性を向上させることが可能になる。
【0027】
すなわち、供給液(水酸化ナトリウム水溶液)を所定の濃度にまで濃縮する蒸発濃縮部を複数段に分割して、段階的に濃縮することにより、各段における水酸化ナトリウム濃度の上昇によるBPRの上昇を抑制するようにしているので、例えば、一段で所定の濃度にまで濃縮する場合に比べて、圧縮機で消費されるエネルギーを低減することが可能になる。
【0028】
また、上述のように、熱回収熱交換器で濃縮液から熱を回収し、ヒートポンプで温度レベルを上げて蒸気発生部の加熱源として用い、発生した蒸気を供給液が最初に供給される段の蒸発濃縮部で用いるようにしているので、熱エネルギーを無駄なく利用することが可能になる。
【0029】
その結果、全体としての省エネルギー性に優れた蒸発濃縮装置を実現することが可能になる。
【0030】
本発明の蒸発濃縮装置において、供給液が最初に供給される段の蒸発濃縮部で加熱源として用いられ、凝縮したドレンを蒸気発生部に戻し、発生した水蒸気を供給液が最初に供給される段の蒸発濃縮部に加熱源として供給するようにした場合、供給液が最初に供給される段の蒸発濃縮部で凝縮したドレンを再利用することが可能になるとともに、通常は、常温より高い温度となるドレンを用いることにより、蒸気発生部における省エネルギーを図ることが可能になる。
【0031】
本発明の蒸発濃縮装置においては、前記複数段の蒸発濃縮部として、2段以上4段以下の蒸発濃縮部を備えた構成とすることが好ましい。
【0032】
なお、本発明の蒸発濃縮装置は、NaOH濃度が26~32wt%の水酸化ナトリウム水溶液である供給液を蒸発濃縮して、NaOH濃度が48~50wt%の水酸化ナトリウム水溶液である濃縮液を得るための蒸発濃縮装置であり、水酸化ナトリウム水溶液の、NaOH濃度の上昇によるBPRの上昇に対応して、蒸発濃縮部を複数段に分割し、NaOH濃度の最適化、すなわち、BPRの過度の増大の抑制を図ったMVR式の蒸発濃縮装置である。したがって、理論的には、蒸発濃縮部を細かく分割し、蒸発濃縮部の数を増やすほど省エネルギー効果を図ることができるが、通常は、2段以上4段以下の範囲で分割することで、省エネルギー効果と設備コストの負荷とをバランスさせることができる。なお、蒸発濃縮部を、2段あるいは3段に分割することがより望ましい。
【0033】
また、既存の水酸化ナトリウムの蒸発濃縮装置を改造することによっても本発明の構成を備えた蒸発濃縮装置とすることができるが、既設装置を本発明の蒸発濃縮装置に改造する場合には、既存の設備が例えば2重効用あるいは3重効用のものであれば、そのまま蒸発濃縮部が2分割あるいは3分割された構成を維持することができる。
【0034】
しかし、既存設備において、蒸発濃縮部を構成する熱交換器の伝熱面積が小さく、圧縮機のヘッドを必要以上に高く設定することが必要になる場合には、適切な伝熱面積を有する熱交換器に更新することが望ましい。
【0035】
また、複数段の蒸発濃縮部として、供給液が最初に供給される段の第1蒸発濃縮部と、蒸発濃縮後の水酸化ナトリウムの濃度が最も高くなる最終段の第2蒸発濃縮部の2つの蒸発濃縮部を備え、圧縮機として、蒸気発生部から供給される水蒸気と、第1蒸発濃縮部で発生した水蒸気とを断熱圧縮して、第1蒸発濃縮部に加熱源として供給する第1圧縮機と、第1蒸発濃縮部に加熱源として供給された水蒸気のうち、第1蒸発濃縮部で加熱に使用されなかった水蒸気と、第2蒸発濃縮部で発生した水蒸気とを断熱圧縮して、第2蒸発濃縮部に供給する第2圧縮機の2つの圧縮機を備えている構成とした場合、設備コストの増大を抑制しつつ、省エネルギー効率の高い蒸発濃縮装置を実現することが可能になる。
【0036】
また、第1蒸発濃縮部で加熱源として用いられ、凝縮したドレンが蒸気発生部に戻され、蒸気発生部で発生した水蒸気が第1蒸発濃縮部に加熱源として供給されるように構成した場合、第1蒸発濃縮部で凝縮したドレンを再利用することが可能になるとともに、通常は、常温より高い温度となるドレンを用いることにより、蒸気発生部における省エネルギーを図ることが可能になる。
【0037】
また、蒸気発生部と第1蒸発濃縮部を大気圧より低い圧力で操作し、第2蒸発濃縮部を大気圧より高い圧力で操作するようにした場合、熱回収熱交換器で回収した熱の温度レベルを上げるためのヒートポンプの負荷を抑制するとともに、第1圧縮機および第2圧縮機の負荷を抑制することが可能になり、省エネルギー効果をさらに向上させることができる。
【0038】
また、水酸化ナトリウムの濃度が低くBPRが小さい第1蒸発濃縮部は大気圧より低い圧力で操作し、水酸化ナトリウムの濃度が高くBPRが大きい第2蒸発濃縮部は大気圧より高い圧力で操作するようにした場合、第1圧縮機の吸込み圧力を大気圧より低い圧力とし、第2圧縮機の吸込み圧力を大気圧より高い圧力として操作することが可能になり、第1圧縮機および第2圧縮機の負荷を抑えることが可能になる。
【0039】
また、上述のように、第1予熱器~第4予熱器を備えた構成とすることにより、さらに熱エネルギーを効率よく回収して、省エネルギー効果を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】本発明の一実施形態(実施形態1)にかかる水酸化ナトリウム水溶液の蒸発濃縮装置の構成を示すフローシートである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下に本発明の実施形態を示して、本発明の特徴とするところをさらに詳しく説明する。
【0042】
<実施形態1>
本実施形態にかかる水酸化ナトリウム水溶液の蒸発濃縮装置は、NaOH濃度が26~32wt%の水酸化ナトリウム水溶液である供給液を蒸発濃縮して、NaOH濃度が48~50wt%の水酸化ナトリウム水溶液である濃縮液を得るための蒸発濃縮装置である。
【0043】
図1に示すように、本実施形態にかかる水酸化ナトリウムの蒸発濃縮装置100は、水酸化ナトリウム水溶液(供給液)を段階的に製品の濃度にまで蒸発濃縮するための複数段の蒸発濃縮部を備えている。
なお、本実施形態では、複数の蒸発濃縮部として、2段の蒸発濃縮部、すなわち、前の段(初段)の蒸発濃縮部である第1蒸発濃縮部1と、次の段(最終段)の蒸発濃縮部である第2蒸発濃縮部2とを備えた構成とされている。
【0044】
具体的に説明すると、第1蒸発濃縮部1は、例えば、NaOH濃度が28wt%の供給液が供給され、NaOH濃度が37.46wt%(中間濃度)になるまで蒸発濃縮が行われる段の蒸発濃縮部である。
【0045】
第2蒸発濃縮部2は、第1蒸発濃縮部1で濃縮されたNaOH濃度が37.46wt%の第1濃縮液(中間濃縮液)が供給され、NaOH濃度が製品濃度である48wt%になるまで蒸発濃縮が行われる段の蒸発濃縮部である。
【0046】
すなわち、本実施形態では、第1蒸発濃縮部1が、本発明における「供給液が最初に供給される段の蒸発濃縮部」となり、第2蒸発濃縮部2が、本発明における「水酸化ナトリウムの濃度が最も高くなる段の蒸発濃縮部」となる。
【0047】
また、本実施形態にかかる蒸発濃縮装置100において、第1蒸発濃縮部1は、当該第1蒸発濃縮部1で発生した水蒸気を断熱圧縮して昇温させ、当該第1蒸発濃縮部1の加熱源として供給するように構成された第1圧縮機11を備えている。
【0048】
さらに、第2蒸発濃縮部2は、当該第2蒸発濃縮部2で発生した水蒸気を断熱圧縮して昇温させ、当該第2蒸発濃縮部2の加熱源として供給するように構成された第2圧縮機12を備えている。
【0049】
なお、本実施形態では、第1圧縮機11として、大風量に対応しやすい遠心ファン式の圧縮機を用い、第2圧縮機12として、圧縮比が高い場合にも適用可能なスクリュ式の圧縮機を用いている。
【0050】
また、蒸発濃縮装置100は、NaOH濃度が28wt%の供給液が最初に供給される段の蒸発濃縮部である第1蒸発濃縮部1の加熱源となる水蒸気を発生させる蒸気発生部3を備えている。
【0051】
なお、本実施形態では、第1蒸発濃縮部1で加熱源として用いられ、凝縮したドレンが蒸気発生部3に戻されるように構成されている。このように構成することで、第1蒸発濃縮部1で凝縮した、通常は、常温より高い温度となるドレンを、蒸気発生部3で発生させる水蒸気の原料として再利用することが可能になり、省エネルギーを図るとともに、省資源にも資することができる。
【0052】
また、蒸発濃縮装置100は、NaOH濃度が最も高くなる段の蒸発濃縮部である第2蒸発濃縮部2で濃縮された第2濃縮液が有する熱を回収する熱回収熱交換器4と、熱回収熱交換器4にて第2濃縮液から回収した熱を、電力により温度レベルを上げて、蒸気発生部3に加熱源として供給するように構成された熱回収用のヒートポンプ5を備えている。
【0053】
また、蒸発濃縮装置100は、蒸気発生部3から供給される水蒸気を、第1蒸発濃縮部1が備える初段側の圧縮機(第1圧縮機)11に供給するための初段側供給路(第1供給路)6を備えており、第1供給路6は、第1蒸発濃縮部1で発生した水蒸気を第1圧縮機11に供給するための第1供給ライン26に接続されている。
また、蒸発濃縮装置100は、第1蒸発濃縮部1に加熱源として供給された水蒸気(すなわち、蒸気発生部3で発生した水蒸気と、第1蒸発濃縮部1で発生した水蒸気とを第1圧縮機11で圧縮した圧縮蒸気)のうち、第1蒸発濃縮部1の加熱に使用されなかった水蒸気を圧縮機(第2圧縮機)12に供給するための後段側供給路(第2供給路)7を備えており、第2供給路7は、第2蒸発濃縮部2で発生した水蒸気を第2圧縮機12に供給するための第2供給ライン27に接続されている。
【0054】
したがって、第1圧縮機11には、第1蒸発濃縮部1で蒸発した水蒸気と、蒸気発生部3で発生した水蒸気とが供給されることになる。
【0055】
また、第2圧縮機12には、第2蒸発濃縮部2で蒸発した水蒸気と、第1蒸発濃縮部1に加熱源として供給された水蒸気のうち第1蒸発濃縮部1で加熱に使用されなかった(凝縮しなかった)水蒸気とが供給されることになる。
【0056】
そして、本実施形態にかかる蒸発濃縮装置100においては、第1蒸発濃縮部1が備える第1圧縮機11、および、第2蒸発濃縮部2が備える第2圧縮機12における、断熱圧縮後の水蒸気温度が、断熱圧縮前の水蒸気温度よりも、20℃以上60℃以下の範囲で高くなるように構成されている。
【0057】
具体的には、後述するように、断熱圧縮前の水蒸気温度が86.5℃、第1圧縮機11における断熱圧縮後の水蒸気温度が120℃となるように構成されており、第1圧縮機で断熱圧縮することにより、断熱圧縮後の水蒸気温度(120℃)が、断熱圧縮前の水蒸気温度(86.5℃)よりも、33.5℃高くなるように構成されている。
【0058】
また、後述するように、第2圧縮機12では、断熱圧縮前の水蒸気温度が120℃、断熱圧縮後の水蒸気温度が170℃となるように構成されており、第2圧縮機で断熱圧縮することにより、断熱圧縮後の水蒸気温度(170℃)が、断熱圧縮前の水蒸気温度(120℃)よりも、50℃高くなるように構成されている。
【0059】
また、本実施形態にかかる蒸発濃縮装置100は、蒸気発生部3と第1蒸発濃縮部1が大気圧より低い圧力で操作され、第2蒸発濃縮部2が大気圧より高い圧力で操作されるように構成されている。
【0060】
なお、第1蒸発濃縮部1には、真空吸引ライン22が接続されており、真空吸引手段(真空ポンプ)21によって吸引することにより系内を所定の減圧状態とすることができるように構成されている。
【0061】
すなわち、真空吸引ライン22には、コンデンサ23、圧力制御弁24が配設されているとともに、第1蒸発濃縮部1で発生した水蒸気を第1圧縮機11に供給するための第1供給ライン26には、圧力指示調節計(PIC)25が接続されており、圧力制御弁24とPIC25とが連携して、系内の圧力を調整することができるように構成されている。
【0062】
本実施形態においては、第1圧縮機1の吸込み圧力が大気圧より低い圧力となり、第2圧縮機2の吸込み圧力が大気圧より高い圧力となるように構成されている。
【0063】
また、本実施形態にかかる蒸発濃縮装置100は、さらに、第1蒸発濃縮部1における第1濃縮液の循環などに用いられる第1ポンプ41、第2蒸発濃縮部2における第2濃縮液の循環などに用いられる第2ポンプ42、蒸気発生部において水の循環などに用いられる蒸気発生部用ポンプ43を備えている。
【0064】
本実施形態にかかる蒸発濃縮装置100は、上述のように構成されており、第1蒸発濃縮部1が備える第1圧縮機11における、断熱圧縮後の水蒸気温度(120℃)が、断熱圧縮前の水蒸気温度(86.5℃)よりも33.5℃高く、第2蒸発濃縮部2が備える第2圧縮機12における、断熱圧縮後の水蒸気温度(170℃)が、断熱圧縮前の水蒸気温度(120℃)より50℃高くなるように構成されており、第1圧縮機11および第2圧縮機12における断熱圧縮による昇温幅が20℃以上60℃以下の範囲に収まるように構成されていることから、圧縮機にかかる負荷を抑制して、省エネルギー性に優れ、CO2排出量の少ない水酸化ナトリウム水溶液の蒸発濃縮装置を実現することができる。
【0065】
また、本実施形態にかかる蒸発濃縮装置100においては、蒸気発生部3と第1蒸発濃縮部1が大気圧より低い圧力で操作され、第2蒸発濃縮部2が大気圧より高い圧力で操作され、第1圧縮機の吸込み圧力が大気圧より低く、第2圧縮機の吸込み圧力が大気圧より高くなるように構成されていることから、第1圧縮機11および第2圧縮機12における断熱圧縮による昇温幅を、上述のように圧縮機への負荷が小さく、CO2排出量の少ない、20℃以上60℃以下の範囲とすることができる。
【0066】
なお、本発明の蒸発濃縮装置において、蒸発濃縮部を、第1蒸発濃縮部1と第2蒸発濃縮部の2つに分割する場合、通常は、
(a)第1蒸発濃縮部1では、NaOH濃度が26~32wt%の供給液を、NaOH濃度が33~40wt%の中間濃度にまで濃縮するとともに、第1圧縮機11の断熱圧縮後の水蒸気温度が、断熱圧縮前の水蒸気温度よりも23~30℃の範囲で高くなるように構成し、
(b)第2蒸発濃縮部2では、上述のような中間濃度(33~40wt%)にまで濃縮された第1濃縮液(中間濃縮液)を、NaOH濃度が48~50wt%の製品濃度にまで濃縮するとともに、第2圧縮機12の断熱圧縮後の水蒸気温度が、断熱圧縮前の水蒸気温度よりも43~50℃の範囲で高くなるように構成することが好ましい。
【0067】
また、本実施形態にかかる蒸発濃縮装置100は、
図1に示すように、第1蒸発濃縮部1に供給される供給液と、第2蒸発濃縮部2で濃縮された第2濃縮液との熱交換を行う第1予熱器31と、第1蒸発濃縮部1に供給される供給液と、第1圧縮機11から加熱源として第1蒸発濃縮部1に供給された水蒸気が凝縮したドレンと第2圧縮機から加熱源として前記第2蒸発濃縮部に供給された水蒸気が凝縮したドレンの混合体との熱交換を行う第2予熱器32と、第1蒸発濃縮部1からの第1濃縮液と、第2蒸発濃縮部で濃縮された第2濃縮液との熱交換を行う第3予熱器33と、第1濃縮液と、第2圧縮機12から加熱源として第2蒸発濃縮部2に供給された水蒸気が凝縮したドレンとの熱交換を行う第4予熱器34と、を備えている。
【0068】
そして、第1予熱器31および第2予熱器32で予熱された供給液が第1蒸発濃縮部1に供給され、第3予熱器33および第4予熱器34で予熱された第1濃縮液が第2蒸発濃縮部2に供給されるように構成されている。
【0069】
本実施形態にかかる蒸発濃縮装置100は、上述のように、第1予熱器31、第2予熱器32、第3予熱器33、および第4予熱器34を備えているため、熱エネルギーを効率よく回収して、省エネルギー効果、CO2排出量削減効果をさらに向上させることができる。
【0070】
次に、
図1を参照しつつ、本発明の実施形態にかかる蒸発濃縮装置100の設計条件などについてさらに詳しく説明する。
【0071】
[供給液と濃縮液の条件]
本実施形態では、第1蒸発濃縮部1に供給される供給液(原料液)、および、第2蒸発濃縮部2から回収される濃縮液(製品)の条件は以下の通りである。
(a)供給液
・供給液(原料液)の第1蒸発濃縮部への供給量:15000kg/hr
・供給液(原料液)のNaOH濃度:28wt%
なお、供給液(原料液)は食塩(NaCl)の電解装置から供給される、NaOH濃度が28wt%の水酸化ナトリウム水溶液である。
(b)濃縮液
・濃縮液(製品)の回収量:8750kg/hr
・濃縮液(製品)のNaOH濃度:48wt%
・全蒸発量:6250kg/hr
濃縮液は、製品として出荷される、NaOH濃度が48wt%の水酸化ナトリウム水溶液である。
【0072】
[第1蒸発濃縮部の条件]
・供給液(NaOH濃度:28wt%)を、中間濃度であるNaOH:37.46wt%にまで濃縮する。
・供給液量:15000kg/hr
・蒸発量:3790kg/hr
・第1濃縮液(中間濃縮液)(NaOH:37.46wt%)の回収量(第2蒸発濃縮部に供給される液量):11210kg/hr
[第2蒸発濃縮部の条件]
・第1濃縮液(中間濃縮液)(NaOH濃度37.46wt%)を、製品濃度のNaOH48wt%にまで濃縮する。
・第2蒸発濃縮部への第1濃縮液の供給量:11210kg/hr
・蒸発量:2460kg/hr
・NaOH:48wt%の第2濃縮液(製品)の回収量:8750kg/hr
【0073】
[第1圧縮機の条件(仕様)]
・水蒸気量:3790kg/hr
・第1圧縮機の動力:382.9kW
・断熱圧縮前の水蒸気の温度(吸込温度):86.5℃
・断熱圧縮後の水蒸気の温度:120℃
・断熱圧縮による温度上昇幅:33.5℃(120℃-86.5℃)
なお、断熱圧縮による温度上昇幅:33.5℃は、第1蒸発濃縮部における第1濃縮液(中間濃縮液)(NaOH濃度:37.46wt%)のBPR28.5℃、第1蒸発濃縮部における熱交換器の温度差5℃を考慮した値である。
28.5℃+5℃=33.5℃
【0074】
[第2圧縮機の条件(仕様)]
・水蒸気量:2460kg/hr
・第2圧縮機の動力:346.9kW
・断熱圧縮前の水蒸気の温度(吸込温度):120℃
・断熱圧縮後の水蒸気の温度:170℃
・断熱圧縮による温度上昇幅:50℃(170℃-120℃)
なお、断熱圧縮による温度上昇幅:50℃は、第2蒸発濃縮部における濃縮液(NaOH濃度:48wt%)のBPR44℃、第2蒸発濃縮部における熱交換器の温度差が6℃を考慮した値である。
44℃+6℃=50℃
[熱回収用のヒートポンプの条件]
・型式:コベルコ・コンプレッサ株式会社製HR-95
・水蒸気量:132kg/hr
・動力7.38kW
・COP:7.5
[装置全体の総合COP]
水の全蒸発量:3790kg+2460kg=6250kg
ここで、水の全蒸発量6250kgは3925kWに相当
全動力=382.9kW+346.9kW+7.38kW=737.18kW
総合COP=全蒸発量÷全動力
=3925kW÷737.18kW=5.32
以上のように、本実施形態にかかる蒸発濃縮装置100の総合COPは5.32となる。
[CO2排出量]
ここで、本実施形態にかかる蒸発濃縮装置100におけるCO2排出量と、従来の蒸気加熱式の多重効用蒸発濃縮装置におけるCO2排出量との比較を行う。
なお、従来技術として、効率が良好であるとされる蒸気加熱式の3重効用蒸発濃縮装置を例にとって説明する。
(1)蒸気加熱式の3重効用蒸発濃縮装置(従来の蒸発濃縮装置)
・水の蒸発量:6250kg/hr
・COP:2.16
・蒸気量=水の蒸発量÷COP(2.16)
=6250kg/hr÷2.16
=2894kg/hr
ここで、蒸気量2894kg/hrは1817kWに相当
・年間運転時間:8000hr
・CO2排出係数:0.000216t/kWh(温対法の産業用蒸気排出係数)
・CO2排出量:1817kW×8000hr×0.000216t/kW=3140t/年
(2)本実施形態にかかる蒸発濃縮装置
・水の蒸発量:6250kg/hr
・COP:5.32
・電力量:737.18kWh
・年間運転時間:8000hr
・CO2排出係数:0.000351t/kWh(関西電力2020年度実績)
・CO2排出量:737.18kW×8000hr×0.000351t/kW=2070t/年
(3)CO2削減量および削減率
・CO2削減量
3140t/年―2070t/年=1070t/年
本実施形態にかかる蒸発濃縮装置の場合、従来の蒸気加熱式の3重効用蒸発濃縮装置に比べて、CO2の排出量を年間1070t削減することができる。
・CO2削減率
1-(2070t/3140t)×100=34.07%
このように、本実施形態の蒸発濃縮装置を用いた場合、従来の蒸気加熱式の3重効用蒸発濃縮装置に比べて、CO2の排出量を34.07%削減することが可能になることがわかる。
【0075】
なお、上記実施形態では、第1蒸発濃縮部1と、第2蒸発濃縮部2の2段の蒸発濃縮部を備えた蒸発濃縮装置について説明したが、本発明において、蒸発濃縮部の段数には特別の制約はない。ただし、通常は、2段以上4段以下の範囲で分割することで、省エネルギー効果と設備コストの負荷とをバランスさせることが可能になり、好ましい。
【0076】
本発明は、さらにその他の点においても上記実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲内において、応用、変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0077】
100 水酸化ナトリウム水溶液の蒸発濃縮装置
1 第1蒸発濃縮部
2 第2蒸発濃縮部
3 蒸気発生部
4 熱回収熱交換器
5 熱回収用のヒートポンプ
6 初段側供給路(第1供給路)
7 後段側供給路(第2供給路)
11 第1圧縮機
12 第2圧縮機
21 真空ポンプ
22 真空吸引ライン
23 コンデンサ
24 圧力制御弁
25 圧力指示調節計
26 第1供給ライン
27 第2供給ライン
31 第1予熱器
32 第2予熱器
33 第3予熱器
34 第4予熱器
41 第1ポンプ
42 第2ポンプ
43 蒸気発生部用ポンプ