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特開2024-92179FSK信号識別装置、FSK信号識別方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092179
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】FSK信号識別装置、FSK信号識別方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04L 27/14 20060101AFI20240701BHJP
   H04L 27/144 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
H04L27/14 A
H04L27/144
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207936
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】島村 淳一
(57)【要約】
【課題】 FSK信号を復調せずに正確に識別すること。
【解決手段】 実施形態によれば、FSK信号識別装置は、スペクトラム生成部と、ピーク算出部と、ピークペアリング部と、特徴量生成部と、特徴量マッチング部とを具備する。スペクトラム生成部は、受信した信号から生成されたデジタルIQ信号のスペクトラムを生成する。ピーク算出部は、スペクトラムから時間フレームごとの周波数のピークを算出する。ピークペアリング部は、異なるピークをペアリングして、時間と周波数との組み合わせ情報をペアごとに生成する。特徴量生成部は、組み合わせ情報から特徴量を生成する。特徴量マッチング部は、特徴量と、予め用意された参照信号の信号特徴量とを比較してFSK信号を識別する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタルIQ信号からスペクトラムを生成するスペクトラム生成部と、
前記スペクトラムから時間フレームごとの周波数のピークを算出するピーク算出部と、
異なるピークをペアリングして、時間と周波数との組み合わせ情報をペアごとに生成するピークペアリング部と、
前記組み合わせ情報から特徴量を生成する特徴量生成部と、
前記特徴量と、予め用意された参照信号の信号特徴量とを比較してFSK信号を識別する特徴量マッチング部とを具備する、FSK信号識別装置。
【請求項2】
前記参照信号を生成する参照信号生成部と、
前記参照信号の前記信号特徴量を蓄積する参照信号特徴量蓄積部とをさらに具備し、
前記特徴量マッチング部は、前記参照信号特徴量蓄積部から前記信号特徴量を取得して対象のFSK信号の特徴量と比較する、請求項1に記載のFSK信号識別装置。
【請求項3】
前記デジタルIQ信号のサンプリングレートを変換するサンプリングレート変更部をさらに具備する、請求項1または2に記載のFSK信号識別装置。
【請求項4】
コンピュータが、受信した信号から生成されたデジタルIQ信号のスペクトラムを生成する過程と、
コンピュータが、前記スペクトラムから時間フレームごとの周波数のピークを算出する過程と、
コンピュータが、異なるピークをペアリングして、時間と周波数との組み合わせ情報をペアごとに生成する過程と、
コンピュータが、前記組み合わせ情報から特徴量を生成する過程と、
コンピュータが、前記特徴量と、予め用意された参照信号の信号特徴量とを比較してFSK信号を識別する過程とを具備する、FSK信号識別方法。
【請求項5】
コンピュータに、受信した信号から生成されたデジタルIQ信号のスペクトラムを生成させる命令と、
コンピュータに、前記スペクトラムから時間フレームごとの周波数のピークを算出させる命令と、
コンピュータに、異なるピークをペアリングして、時間と周波数との組み合わせ情報をペアごとに生成させる命令と、
コンピュータに、前記組み合わせ情報から特徴量を生成させる命令と、
コンピュータに、前記特徴量と、予め用意された参照信号の信号特徴量とを比較してFSK信号を識別させる命令とを含む、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、FSK信号識別装置、FSK信号識別方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
FSK(Frequency Shift Keying)変調された信号(FSK信号)を識別することは、例えば電波源の特定などに応用することができ、その他にも様々なニーズがある。受信した信号を復調することができれば、FSK信号を識別することは比較的容易である。つまり、未知のFSK信号を受信してデジタル復調し、シンボル列を生成し、シンボル列と所望のシンボル列とを比較して、FSK信号を識別することができる。
【0003】
信号を復調するには、中心周波数、通信速度、シフト幅、トーン数、あるいはシンボルパターンなどの信号諸元を知ることが必要である。これらを正確に測定することが信号を正確に識別する前提となる。当然ながら、誤った測定値で復調すると、正しいシンボル列を得ることができず、識別の結果も正確ではなくなる。
【0004】
その対策として、あらゆる信号諸元を設定し、設定された全ての信号諸元を用いて受信信号を復調し、結果を比較する方法が考えられる。しかし、対象の信号諸元やシンボル列の数が多くなればなるほど計算量が増えてしまい、リソースが大量に消費されてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-136493号公報
【特許文献2】特許第5115991号公報
【特許文献3】特許第5971768号公報
【特許文献4】特許第4950963号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】An Industrial-Strength Audio Search Algorithm Avery Li-chun Wang , Th Floor Block F
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
FSK信号を識別するには、対象とする信号を復調することが必要であった。このため、期待した精度を得られなかったり、大量の計算機資源が必要であった。このような課題を解決し得る技術が求められる。
【0008】
ところで、例えばスマートフォンアプリで知られるように、音声データから曲名を識別する技術がある。しかし、この技術をFSK信号の識別に応用することは難しい。例えば、キーを変えただけで曲を識別できなくなる。キーが変わることは中心周波数が変化することと同様で、この技術をFSK信号の識別に応用するには中心周波数を高い精度で合わせる必要がある。そもそもFSK信号はトーン信号なので、音声信号とは信号の性質が著しく異なる。例えば、FSK信号はピーク周波数の時間変化が少ないことから、音声データと比較して同じ特徴量が多く発生する。このため信号ごとの特徴量の違いが小さくなり、対象信号の識別の精度が劣化してしまう。
【0009】
そこで、目的は、FSK信号を復調せずに正確に識別することの可能なFSK信号識別装置、FSK信号識別方法、およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態によれば、FSK信号識別装置は、スペクトラム生成部と、ピーク算出部と、ピークペアリング部と、特徴量生成部と、特徴量マッチング部とを具備する。スペクトラム生成部は、デジタルIQ信号からスペクトラムを生成する。ピーク算出部は、スペクトラムから時間フレームごとの周波数のピークを算出する。ピークペアリング部は、異なるピークをペアリングして、時間と周波数との組み合わせ情報をペアごとに生成する。特徴量生成部は、組み合わせ情報から特徴量を生成する。特徴量マッチング部は、特徴量と、予め用意された参照信号の信号特徴量とを比較してFSK信号を識別する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態に係わるFSK信号識別装置の一例を示すブロック図である。
図2図2は、図1に示されるFSK信号識別装置の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図3図3は、スペクトラムの生成について説明するための図である。
図4図4は、スペクトラムごとのピークの算出について説明するための図である。
図5図5は、ピークペアリングについて説明するための図である。
図6図6は、ピークペアリングについて説明するための図である。
図7図7は、図6に示されるスペクトラムでのペアリング処理について説明するための図である。
図8図8は、ハッシュ値の生成の一例について説明するための図である。
図9図9は、図1に示されるFSK信号識別装置の処理手順の別の例を示すフローチャートである。
図10図10は、マッチング処理について説明するための図である。
図11図11は、FSK信号識別装置の機能を実装可能なコンピュータの一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<構成>
図1は、実施形態に係わるFSK信号識別装置の一例を示すブロック図である。図1において、アンテナ10は実空界から到来する電波を受信し、受信部20に出力する。受信部20は、アンテナ10からのアナログ信号をデジタルに変換し、互いに直交する成分を含むデジタルIQ信号を出力する。
【0013】
信号検出部30は、受信部20からデジタルIQ信号を取得し、信号を検出する。信号検出部30は、検出した信号を抽出し信号識別装置40に出力する。
【0014】
信号識別装置40は、信号検出部30からのデジタルIQ信号の特徴量と、予め準備した比較対照のための信号(以下、参照信号と表記する)の特徴量(区別のため信号特徴量とする)とを比較し、その結果に基づいてFSK信号を識別する。
【0015】
図1において、信号識別装置40は、特徴量計算部60、参照信号情報管理部50、および、特徴量マッチング部70を備える。特徴量計算部60は、信号検出部30からのデジタルIQ信号の特徴量を計算する。参照信号情報管理部50は、参照信号の信号諸元の管理、それぞれの信号諸元を用いたデジタルIQ信号の生成、および、参照信号の信号特徴量の蓄積などを行う。特徴量マッチング部70は、信号検出部30からのデジタルIQ信号の特徴量と、参照信号の信号特徴量とのマッチング処理を行う。
【0016】
特徴量計算部60は、サンプリングレート変更部61、スペクトラム生成部62、ピーク算出部63、ピークペアリング部64、および、特徴量生成部65を備える。
【0017】
サンプリングレート変更部61は、信号検出部30からのデジタルIQ信号を、帯域幅などに応じて適切なサンプリングレートに変換する。スペクトラム生成部62は、サンプリングレートを変換したデジタルIQ信号から、例えば高速フーリエ変換(FFT)等の手法によりスペクトラムの時系列データを生成する。
【0018】
ピーク算出部63は、スペクトラム生成部62で生成されたスペクトラムの時系列データから、時間フレームごとの周波数のピーク値を算出する。
ピークペアリング部64は、ピーク算出部63で算出されたピークの時系列データから、異なるピークどうしのペアを作成し、ペアリングする。そして、ピークペアリング部64は、時間と周波数との組み合わせ情報をペアごとに生成する。
特徴量生成部65は、ピークペアリング部64で生成された、ピークのペアごとの組み合わせ情報を入力としてハッシュ値を生成し、特徴量とする。
【0019】
一方、参照信号情報管理部50は、参照信号諸元情報蓄積部51、参照信号生成部52、および、参照信号特徴量蓄積部53を備える。
参照信号諸元情報蓄積部51は、参照信号の信号諸元を管理する。ここで、実施形態では、例えば通信速度、シフト幅、シンボルパターンなどを信号諸元とする。
参照信号生成部52は、参照信号諸元情報蓄積部51において管理される信号諸元を用いて複数の参照信号を生成する。さらに、参照信号生成部52は、これらの参照信号に由来するデジタルIQ信号を生成する。生成されたデジタルIQ信号は、特徴量計算部60に入力されてその信号特徴量を予め計算される。
参照信号特徴量蓄積部53は、特徴量計算部60で計算された信号特徴量を、その元になる参照信号の識別情報(ID)と対応付けて蓄積する。
【0020】
特徴量マッチング部70は、信号検出部30からのデジタルIQ信号の特徴量と、参照信号の信号特徴量とのマッチング処理を行う。つまり特徴量マッチング部70は、信号検出部30からのデジタルIQ信号の特徴量と、参照信号の信号特徴量とを比較し、その結果に基づいてFSK信号を識別する。
【0021】
<作用>
次に、上記構成における作用を説明する。
図2は、図1に示されるFSK信号識別装置の処理手順の一例を示すフローチャートである。図2を参照して、参照信号の生成とその信号特徴量の計算について説明する。
【0022】
(ステップS1)
参照信号生成部52は、参照信号諸元情報蓄積部51に蓄積された信号諸元(通信速度、シフト幅、シンボルパターン)を取得する。
【0023】
(ステップS2)
参照信号生成部52は、ステップS1で取得した信号諸元を反映するデジタルIQ信号を生成する。生成されたデジタルIQ信号は、特徴量計算部60のスペクトラム生成部62に入力される。
【0024】
(ステップS3)
スペクトラム生成部62は、スペクトラムの時系列データを生成する。
図3に示されるように、スペクトラム生成部62は、参照信号生成部52から取得したデジタルIQ信号を、スライディングポイント数(Ns)ずつずらしながらFFT処理を施す。これにより、時間=t1でのスペクトラム、時間=t2でのスペクトラム、、、時間tnでのスペクトラム、というように、スペクトラムの時系列データが生成される。ここで、NFはFFTポイント数を表す。
【0025】
(ステップS4)
ピーク算出部63は、スペクトラム生成部62で生成されたスペクトラムの時系列データから、各時間に対応するスペクトラムごとにピークを求める。
図4(b)に示されるように、それぞれのスペクトラムの波形は周波数のピークを持つ。予め定められた閾値とピーク値とを比較し、閾値以上のピークを採用する。採用されたピークは、図4(a)に示されるように、例えば(時間,周波数)の形式で保存される。ピーク算出部63は、(時間,周波数)の形式のピーク情報をピークペアリング部64に入力する。
【0026】
(ステップS5)
ピークペアリング部64は、与えられたピーク情報をもとにペアリング処理を行う。すなわちピークペアリング部64は、以下に示す1)~3)の手順で、複数のピークのペアを生成する(ペアリング)。
【0027】
1) それぞれのピークに、時系列順に番号を付与する。同じ時間にあるピークについては、周波数が低いピークから昇順に順番を付与する。
【0028】
2) 各ピークについて、N番以上離れたピーク(Nは2以上の自然数)から順番にペアを生成する。1つのピークについては最大でM個のペアを(Mは2以上の自然数)生成する。そして、生成されたペアごとにピークペアリング情報を生成する。
【0029】
図5、および図6はピークペアリングについて説明するための図である。例えばN=2,M=3とすると、図5の例では、ピーク1はピーク2とはペアリングをせず、ピーク3とから順にペアリングする。すなわちピーク1はピーク3、ピーク4、ピーク5とペアリングする。
【0030】
3) ピークペアリング情報は、(Tx,Bx,Ty,By)の形式で保存される。こここで、ピークペアリング情報の成分はそれぞれ以下のとおりである。
Tx:基準ピークの時間
Bx:基準ピークの周波数bin番号
Ty:対象ピークの時間
By:対象ピークの周波数bin番号
図6に示されるように、実施形態においては、基準ピークのbin番号とペア対象ピークのbin番号とが同じ場合には、ピークペアリング情報として採用しない。すなわち図6において、周波数bin番号=10に1,2,3,4の4つのピークが表れているが、これらはピークペアとして採用されない。
【0031】
図7は、図6に示されるスペクトラムでのペアリング処理について説明するための図である。N=2,M=3の設定では、ピーク1のペアリングの候補は、ピーク3、ピーク4、およびピーク5である。ただしピーク3、ピーク4については、周波数bin番号が同じであるので、ペアとして採用しない。従ってペアリング処理ではピーク1と5に関するピークペアリング情報(t1,10,t5,25)が生成される。
【0032】
(ステップS6)
再び図2に戻って説明を続ける。ピークペアリング部64は、生成したピークペアリング情報を特徴量生成部65に入力する。
特徴量生成部65は、ピークペアリング情報をハッシュ関数に渡してハッシュ値を生成する。上記のとおり、ピークペアリング情報を(Tx,Bx,Ty,By)で表すと、特徴量生成部65は、(Ty-Tx,By-Bx)をハッシュ関数に入力する。すなわち実施形態では、(対象ピークの時間-基準ピークの時間,対象ピークの周波数bin番号-基準ピークの周波数bin番号)を用いてハッシュ値を生成し、これを特徴量とする。
【0033】
周波数bin番号の差を取ることで、トーン周波数の相対値を処理に用いることができる。これにより、中心周波数の変化に対する抗たん性を持たせることができ、単純な曲名識別技術によっては得られない、高い識別精度を得ることが可能になる。
【0034】
図8は、ハッシュ値の生成の一例について説明するための図である。実施形態では、ハッシュ値の計算に際して、例えば入力の(Ty-Tx)成分をXビットにエンコードし、(By-Bx)成分をYビットにエンコードし、さらに数ビットを付加してZビットの整数値にエンコードする。ここで、XはTy-Txの取り得る最大値に依存し、YはBy-Bxの取り得る最大値に依存する。そして、ハッシュ値Hと基準ピークの時間Txとを対応付けて、(Tx,H)を信号の特徴量とする。
【0035】
(ステップS7)
再び図2に戻って説明を続ける。特徴量生成部65は、生成した参照信号の特徴量を、参照信号の識別情報(ID)と対応付けて参照信号特徴量蓄積部53に保存する。参照信号特徴量蓄積部53に保存される特徴量の形式は、
ハッシュ値H→[(信号識別ID、基準ピークの時間Tx),...]
となる。ハッシュ値と(信号識別ID、基準ピークの時間Tx)の関係は必ずしも1対1である必要はなく、1つのハッシュ値に複数の(信号識別ID、基準ピークの時間Tx)が紐づくこともある。
【0036】
図9は、図1に示されるFSK信号識別装置の処理手順の別の例を示すフローチャートである。図9を参照して、受信したFSK信号の識別について説明する。
【0037】
(ステップS11)
アンテナ10で捕捉されたのち受信部20によりデジタルIQに変換され、信号検出部30で検出された信号は、特徴量計算部60のサンプリングレート変更部61に入力される。サンプリングレート変更部71は、入力されたデジタルIQ信号を、信号の帯域幅などに応じて適切なサンプリングレートに変換する。
【0038】
(ステップS12)
スペクトラム生成部62は、ステップS3と同様の手順によりスペクトラムの時系列データを生成する。
(ステップS13)
ピーク算出部63は、スペクトラム生成部62で生成されたスペクトラムの時系列データから、ステップS4と同様の手順によりスペクトラムのピークを算出する。
【0039】
(ステップS14)
ピークペアリング部64は、与えられたピーク情報をもとに、ステップS5と同様の手順によりペアリング処理を行う。
【0040】
(ステップS15)
特徴量生成部65は、ピークペアリング部64から渡されたピークペアリング情報を用いて、ステップS6と同様の手順によりハッシュ値を求め、特徴量を生成する。生成された特徴量は、特徴量マッチング部70に渡される。
【0041】
(ステップS16)
特徴量マッチング部70は、特徴量生成部65から渡された特徴量と、参照信号特徴量蓄積部53に保存されている特徴量とを比較照合し、マッチング処理を行う。すなわち特徴量マッチング部70は、以下に示す4)~6)の手順でマッチング処理を行い、受信したFSK信号を識別する。
【0042】
4) 特徴量マッチング部70は、参照信号特徴量蓄積部53を探索して、受信信号の特徴量のハッシュ値と合致するハッシュ値を取得する。合致するハッシュ値があれば、受信信号の基準ピークの時間Tz→[(信号識別ID、基準ピークの時間Tx),...]を保持する。
【0043】
5) 特徴量マッチング部70は、手順4)で求めた関係式を、信号識別IDごとに、
受信信号の基準ピークの時間Tz→[基準ピークの時間Tx1,…]
として一覧にまとめる。以下に例を示す。
【0044】
<信号識別ID:03>
5→[11,23]
6→[12]
11→[17,34]
・・・
<信号識別ID:21>
12→[3,13,16]
20→[12]
22→[4,14]
・・・
6) 特徴量マッチング部70は、識別対象の基準ピークの時間Txから、以下のように受信信号の基準ピークの時間Tzを減算する。
【0045】
[基準ピークの時間Tx1-受信信号の基準ピークの時間Tz,…]
以下に例を示す。
【0046】
<信号識別ID:03>
5→[11,23] ⇒ [6,18]
6→[12] ⇒ [6]
11→[17,34] ⇒ [6,22]
・・・
<信号識別ID:21>
12→[3,13,16] ⇒ [-9,1,4]
20→[12] ⇒ [-8]
22→[4,25] ⇒ [-18,3]
(ステップS17)
4) 特徴量マッチング部70は、手順6)で求めたすべての値のヒストグラムを作成する。そして、ヒストグラムの最大値が既定のしきい値を超えている場合、識別対象の受信信号は該当の信号識別IDの信号と判定する。
【0047】
図10は、マッチング処理について説明するための図である。図10(b)に示されるように、<信号識別ID:21>のヒストグラムはしきい値を超えていない。よって対象信号は、<信号識別ID:21>の参照信号に該当しない。一方、図10(a)に示されるように、<信号識別ID:3>のヒストグラムはしきい値を超えている。よって対象信号は、<信号識別ID:03>の参照信号に該当すると結論付けられる。
【0048】
<効果>
以上説明したようにこの実施形態では、受信したFSK信号のスペクトログラムを生成し、スペクトログラムのピークの周波数位置と時間位置とをセットとしてハッシュ値を求める。一方、様々な信号諸元に基づいて参照信号を予め生成し、同様に、ハッシュ値に基づく特徴量を計算してデータベースに蓄積する。そして、識別対象のFSK信号の特徴量と、参照信号の特徴量とをマッチングさせ、その結果に基づいてFSK信号を識別できるようにした。
【0049】
以上の過程において、受信したFSK信号を復調する必要がない。従って実施形態によれば、受信したFSK信号を復調するために必要な信号諸元(中心周波数、通信速度、シフト幅、および、トーン数)を、信号から測定し取得する必要がない。
【0050】
これらのことから、実施形態によれば、FSK信号を復調せずに正確に識別することの可能なFSK信号識別装置、FSK信号識別方法、およびプログラムを提供することが可能となる。従って、識別の精度を向上させることができるのに加え、大量の計算機資源を必要とせず、FSK信号を識別することが可能になる。
【0051】
図11は、FSK信号識別装置40の機能を実装可能なコンピュータの一例を示すブロック図である。図11において、汎用コンピュータとしてのFSK信号識別装置40は、CPUなどのプロセッサ86と、ROM(Read Only Memory)88やRAM(Random Access Memory)90やHDD(ハードディスクドライブ)92などの記憶装置と、各種機器とのインタフェースであるI/F部82と、出力情報などの各種情報を出力する出力部80と、ユーザによる操作を受付ける入力部94と、各部を接続するバス96とを備える。
【0052】
上記構成において、プロセッサ86が、ROM88からプログラムをRAM90上に読み出して実行することにより、図1に示される各部が汎用のコンピュータで実現される。
【0053】
なお、FSK信号識別装置40で実行される各処理を実行するためのプログラムは、HDD92のファイルシステムに記憶されていてもよいし、または、ROM88に予め組み込まれて提供されてもよい。
【0054】
さらに、FSK信号識別装置40で実行される処理を実行するためのプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM、CD-R、メモリカード、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されてコンピュータプログラムプロダクトとして提供されるようにしてもよい。また、当該プログラムを、インターネットなどのネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するようにしてもよい。
【0055】
実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示するものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0056】
10…アンテナ、20…受信部、30…信号検出部、40…FSK信号識別装置、50…参照信号情報管理部、51…参照信号諸元情報蓄積部、52…参照信号生成部、53…参照信号特徴量蓄積部、60…特徴量計算部、61…サンプリングレート変更部、62…スペクトラム生成部、63…ピーク算出部、64…ピークペアリング部、65…特徴量生成部、70…特徴量マッチング部、71…サンプリングレート変更部、80…出力部、82…I/F部、86…プロセッサ、88…ROM、90…RAM、94…入力部、96…バス。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11