(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092180
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】スロットルグリップ装置
(51)【国際特許分類】
B62K 23/04 20060101AFI20240701BHJP
F02D 11/02 20060101ALI20240701BHJP
G05G 5/03 20080401ALI20240701BHJP
G05G 25/00 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
B62K23/04
F02D11/02 R
G05G5/03 Z
G05G25/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207937
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000222934
【氏名又は名称】東洋電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚
(74)【代理人】
【識別番号】100118278
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 聡
(72)【発明者】
【氏名】篠原 広廉
(72)【発明者】
【氏名】金谷 陽斗
【テーマコード(参考)】
3D013
3G065
3J070
【Fターム(参考)】
3D013CH01
3G065BA01
3G065CA23
3G065JA03
3G065KA11
3G065KA14
3J070AA02
3J070BA05
3J070BA17
3J070BA71
3J070CD12
3J070CD15
3J070DA01
3J070DA04
(57)【要約】
【課題】部品点数を抑えることができるとともに、摺動抵抗を安定して生じさせることができるスロットルグリップ装置を提供することを目的とする。
【解決手段】スロットルグリップ装置1は、ハンドルバー10の中心軸O10周りに初期位置から回転可能に支持されたスロットルパイプ3と、スロットルパイプ3の回転に連動して、ハンドルバー10の中心軸O10周りに回転可能に支持されたロータ4と、ロータ4を介してスロットルパイプ3を初期位置に向けて付勢する捩りコイルバネ5とを備える。ロータ4は、スロットルパイプ3と係合する第1係合部42と、捩りコイルバネ5と係合する第2係合部44を有する。第1係合部42は、第2係合部44とハンドルバー10の中心軸O10とを結んだ仮想線VL44に直交し、かつ、ハンドルバー10の中心軸O10を通る仮想線L10に対して、第2係合部44とは反対側に配置される。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のハンドルバーに対して固定された中空のケースと、
前記ケースに対し前記ハンドルバーの軸方向の一方側に配置され、該ハンドルバーの軸周りに初期位置から回転可能に支持されたスロットルパイプと、
前記ケース内に配置され、前記スロットルパイプの回転に連動して、前記ハンドルバーの軸周りに回転可能に支持されたロータと、
前記スロットルパイプが回転した際、前記ロータを介して前記スロットルパイプを前記初期位置に向けて付勢する付勢部材と、を備え、
前記ロータは、前記スロットルパイプと係合する第1係合部と、前記付勢部材と係合する第2係合部を有し、
前記第1係合部および前記第2係合部の配置数は、それぞれ、1つであり、
前記第1係合部は、前記第2係合部と前記ハンドルバーの軸とを結んだ線に直交し、かつ、該ハンドルバーの軸を通る線に対して、前記第2係合部とは反対側に配置される、スロットルグリップ装置。
【請求項2】
前記第1係合部と前記第2係合部とは、前記ハンドルバーの軸を挟んで略対向する、請求項1に記載のスロットルグリップ装置。
【請求項3】
前記ハンドルバーの軸方向から見たとき、前記第1係合部と前記ハンドルバーの軸とを結ぶ第1仮想線と、前記第2係合部と前記ハンドルバーの軸とを結ぶ第2仮想線とがなす角は、180°±90°である、請求項1に記載のスロットルグリップ装置。
【請求項4】
前記付勢部材は、コイル状に巻回された捩りコイルバネであり、
前記スロットルパイプが回転した際、前記捩りコイルバネは、縮径する方向に捩られるとともに、前記ロータは、前記ケースに対して摺動する、請求項1に記載のスロットルグリップ装置。
【請求項5】
前記スロットルパイプを回転させるのに要する力は、前記スロットルパイプの回転角度に応じて変化する、請求項4に記載のスロットルグリップ装置。
【請求項6】
前記スロットルパイプを回転させるのに要する力は、前記捩りコイルバネを縮径させる力と、前記ロータと前記ケースとの間に生じる摺動抵抗との和であり、
前記摺動抵抗は、前記スロットルパイプの回転角度に比例して増加する、請求項4に記載のスロットルグリップ装置。
【請求項7】
前記ロータが前記ケースに対して摺動する際、前記ロータの摺動面および前記ケースの摺動面の当接する位置が前記スロットルパイプの回転に伴って変化する、請求項4に記載のスロットルグリップ装置。
【請求項8】
前記ロータは、円環状をなすロータ側円環状部を有し、
前記ケースは、円環状をなし、前記ロータ側円環状部の内側に嵌合するケース側円環状部を有し、
前記ロータ側円環状部の内周面が前記ロータの摺動面として機能し、前記ケース側円環状部の外周面が前記ケースの摺動面として機能する、請求項7に記載のスロットルグリップ装置。
【請求項9】
前記スロットルパイプは、前記ロータに向かって突出して設けられた凸部を有し、
前記第1係合部は、前記凸部が挿入される凹部で構成される、請求項1に記載のスロットルグリップ装置。
【請求項10】
前記付勢部材は、コイル状に巻回された捩りコイルバネであり、
前記第2係合部は、前記捩りコイルバネの一端部が挿入される凹部で構成され、
前記捩りコイルバネの他端部は、前記ケースと係合する、請求項1に記載のスロットルグリップ装置。
【請求項11】
前記第1係合部と前記第2係合部との位置関係は、前記スロットルパイプの回転角度によらず維持される、請求項1に記載のスロットルグリップ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スロットルグリップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車のハンドルバーには、運転手のスロットル操作を受け付けるスロットルグリップ装置が取り付けられる。スロットルグリップ装置としては、例えば特許文献1に記載されたスロットルグリップ装置が知られている。このスロットルグリップ装置は、ハンドルバーの中心軸周りに回転可能に配置されたスロットルグリップと、スロットルグリップに連動して回転し得る連動部材と、スロットルグリップの回転時に抵抗力を生じさせて回転負荷を生じさせ得る抵抗手段とを備える。抵抗手段は、連動部材の周方向に沿って摺動可能に組み付けられた摺動部材と、摺動部材に対して付勢力を付与して、連動部材の回転に伴って摺動抵抗を生じさせ得る付勢手段とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のスロットルグリップ装置では、抵抗手段を構成するための部材を有する分、スロットルグリップ装置の部品点数が増大して大型化することとなり、その大きさによっては、ハンドルバーへの取り付けが困難となる場合がある。また、部品点数の増大は、経年劣化する部品の増大につながり、結果、摺動抵抗を安定して生じさせるのが困難となる場合もある。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものである。本発明は、部品点数を抑えることができるとともに、摺動抵抗を安定して生じさせることができるスロットルグリップ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のスロットルグリップ装置は、車両のハンドルバーに対して固定された中空のケースと、前記ケースに対し前記ハンドルバーの軸方向の一方側に配置され、該ハンドルバーの軸周りに初期位置から回転可能に支持されたスロットルパイプと、前記ケース内に配置され、前記スロットルパイプの回転に連動して、前記ハンドルバーの軸周りに回転可能に支持されたロータと、前記スロットルパイプが回転した際、前記ロータを介して前記スロットルパイプを前記初期位置に向けて付勢する付勢部材と、を備え、前記ロータは、前記スロットルパイプと係合する第1係合部と、前記付勢部材と係合する第2係合部を有し、前記第1係合部および前記第2係合部の配置数は、それぞれ、1つであり、前記第1係合部は、前記第2係合部と前記ハンドルバーの軸とを結んだ線に直交し、かつ、該ハンドルバーの軸を通る線に対して、前記第2係合部とは反対側に配置される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、部品点数を抑えることができるとともに、摺動抵抗を安定して生じさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】
図1に示すスロットルグリップ装置の分解斜視図である。
【
図3】スロットルパイプとロータとの位置関係を示す分解斜視図である。
【
図4】
図3と異なる方向から見たときのスロットルパイプとロータとの位置関係を示す分解斜視図である。
【
図5】ロータと付勢部材との位置関係を示す分解斜視図である。
【
図6】スロットルパイプ、ロータ、付勢部材の位置関係を示す斜視図である。
【
図7】付勢部材とケースとの位置関係を示す斜視図である。
【
図8】ロータとケースとの位置関係を示す斜視図である。
【
図9】
図1に示すスロットルグリップ装置を矢印A方向から見たときの、スロットルパイプ、ロータ、付勢部材、ケースの位置関係を示す断面図(矢印α方向への回転操作前の状態)である。
【
図10】
図1に示すスロットルグリップ装置を矢印A方向から見たときの、スロットルパイプ、ロータ、付勢部材、ケースの位置関係を示す断面図(矢印α方向への回転操作後の状態)である。
【
図11】スロットルを操作したときのスロットルの回転角度とトルクとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。しかしながら、以下の実施形態に記載されている構成はあくまで例示に過ぎず、本発明の範囲は実施形態に記載されている構成によって限定されることはない。例えば、本発明を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0010】
図1は、スロットルグリップ装置の斜視図である。
図2は、
図1に示すスロットルグリップ装置の分解斜視図である。
図1に示すスロットルグリップ装置1は、車両のハンドルバー10に取り付けて用いられる。車両としては、本実施形態では自動二輪車としているが、これに限定されず、例えば、自動二輪車以外も含む鞍乗り型車両であってもよい。なお、「鞍乗り型車両」とは、運転者(乗員)が車体に跨って乗車する車両全般を含み、自動二輪車(原動機付き自転車も含む)のみならず、ATV(不整地走行車両)に分類される三輪車両や四輪車両、ジェットスキー、スノーモービル等を含むバーハンドルを備える車両である。また、スロットルグリップ装置1は、
図1に示す構成では車両の右側のハンドルバー10に取り付けられた状態を一例としているが、左側でも同様に取り付け可能である。
【0011】
図1、
図2に示すように、スロットルグリップ装置1は、中空のケース2と、スロットルグリップ(不図示)が装着されるスロットルパイプ3と、スロットルパイプ3とともに回転するロータ4と、ロータ4を初期位置に付勢する付勢部材である捩りコイルバネ5と、車両のECU等と電気的に接続されたセンサ基板20とを備える。運転者は、スロットルグリップを把持して、ハンドルバー10の中心軸(軸)O10周りに回転操作することで車両のアクセル操作を行うことができる。この回転操作として、運転者から見て手前方向(一方向)となる矢印α方向に、スロットルグリップを初期位置から回転させた場合には、車両はスロットル開状態(アクセル開状態)となる。また、スロットル開状態から、矢印α方向と反対方向(他方向)の矢印β方向にスロットルグリップを回転させた場合には、車両はスロットル閉状態(アクセル閉状態)となる。なお、「初期位置」とは、運転者がスロットルグリップから手を放した状態で、当該スロットルグリップが矢印α方向および矢印β方向のいずれにも回転していない中立状態となる位置のことを言う。また、スロットルグリップ装置1では、スロットルグリップの矢印α方向への回転限界と、矢印β方向への回転限界とが規制されている。
【0012】
また、以下では、
図1~
図5、
図7、
図8中、中心軸O10方向の右側(一方側)を「車両の外側」と言い、中心軸O10方向の左側(他方側)を「車両の中心側」と言うことがある。同様に、
図6中、中心軸O10方向の下側(一方側)を「車両の外側」と言い、中心軸O10方向の上側(他方側)を「車両の中心側」と言うことがある。また、車両の前側を単に「前側」と言い、車両の後側を単に「後側」と言うことがある。
【0013】
ケース2は、ケース本体6と、ケース本体6に装着される蓋部材7と、ケース本体6と間でハンドルバー10を挟持するクランプ部材8とを有する。ケース本体6は、リング状の基部61と、基部61から車両の中心側に向かって突出形成された突出部62とを有する。ハンドルバー10は、基部61を挿通することができる。突出部62は、基部61の中で、前側に配置されている。突出部62の後側には、クランプ部材8が配置される。そして、突出部62とクランプ部材8との間で、ハンドルバー10を挟持することができる。また、突出部62とクランプ部材8との挟持状態は、ビス(ボルト)11を用いた締結、すなわち、ビス止めによって維持される。これにより、車両のハンドルバー10に対してケース2を固定することができる。なお、ハンドルバー10に対するケース2の固定方法については、挟持状態を維持するビス止めによる方法に限定されない。また、基部61には、車両の外側に向かって開口する凹部63が形成されている。この凹部63には、ロータ4および捩りコイルバネ5が収納され、その収納状態を蓋部材7が車両の外側から覆う。これにより、ロータ4および捩りコイルバネ5がケース2で保護される。
【0014】
蓋部材7は、リング状の基部71と、基部71から車両の中心側に向かって突出形成された複数の爪部72とを有する。ハンドルバー10は、基部71を挿通することができる。複数の爪部72は、中心軸O10周りに等角度間隔に配置され、ケース本体の基部61に係合する。これにより、蓋部材7がケース本体6に装着される。また、基部71には、車両の外側に向かって開口する凹部73が形成されている。この凹部73には、センサ基板20が収納され、その収納状態を不図示の小蓋部材やポッティング等の封止手段で覆う。これにより、センサ基板20が保護される。
【0015】
蓋部材7は、各爪部72よりも中心軸O10から遠い位置に、車両の中心側に向かって突出形成された突出部74を有する。突出部74は、凹部73に連通する中空状となっており、その内側に磁気センサ(不図示)を備えるセンサ基板20が配置される。磁気センサとしては、特に限定されず、例えば、ホール素子等が挙げられる。そして、ロータ4には、磁気センサに対向するマグネット(不図示)が保持されている。これにより、磁気センサは、運転者がスロットルグリップを回転操作した際、ロータ4の回転に伴う磁束密度の変化を検出する。この検出結果は、ロータ4の回転角、すなわち、スロットルグリップの回転角として、電気信号として車両のECU等へ送信される。
【0016】
図1、
図2に示すように、スロットルパイプ3は、ケース2に対し、車両の外側に配置されている。スロットルパイプ3は、円筒状をなす部材である。これにより、ハンドルバー10は、スロットルパイプ3を挿通することができる。スロットルパイプ3の外周部には、スロットルグリップ(不図示)が固定して装着される。これにより、スロットルパイプ3は、スロットルグリップの回転操作に連動して、中心軸O10周りに初期位置から矢印α方向に回転したり、それとは反対に、矢印β方向に回転して初期位置に戻ったりすることができる。また、スロットルパイプ3には、車両の中心側の端部に、板状のフランジ部31が突出して形成されている。フランジ部31は、その周方向に沿って幅が拡大した拡幅部311を有する。拡幅部311には、車両の中心側、すなわち、ロータ4に向かってブロック状に突出して設けられた1つの凸部32を有する。凸部32は、ロータ4と係合する部分である。
【0017】
図3は、スロットルパイプとロータとの位置関係を示す分解斜視図である。
図4は、
図3と異なる方向から見たときのスロットルパイプとロータとの位置関係を示す分解斜視図である。ケース2内には、ロータ4が中心軸O10周りに回転可能に配置されている。
図3、
図4に示すように、ロータ4は、リング状をなす部材である。これにより、ハンドルバー10は、ロータ4を挿通することができる。ロータ4には、車両の外側に向かって開口した1つの凹部41が形成されている。凹部41には、スロットルパイプ3の凸部32が挿入される。これにより、スロットルパイプ3が矢印α方向に回転した際、凹部41の一部に、凸部32の回転方向前方に位置する縁部321が当接し、係合する。以下、縁部321が係合したこの部分を「第1係合部42」と言う。ロータ4は、第1係合部42を介してスロットルパイプ3からの回転力が伝達される。これにより、ロータ4は、スロットルパイプ3の矢印α方向に回転に連動して、スロットルパイプ3と同じ方向、すなわち、矢印α方向に回転することができる。
【0018】
図5は、ロータと付勢部材との位置関係を示す分解斜視図である。
図6は、スロットルパイプ、ロータ、付勢部材の位置関係を示す斜視図である。
図7は、付勢部材とケースとの位置関係を示す斜視図である。ケース2内には、ロータ4よりも車両の中心側に、捩りコイルバネ5が配置されている。捩りコイルバネ5は、スロットルパイプ3が矢印α方向に回転した際、ロータ4を介してスロットルパイプ3を初期位置に向けて付勢する付勢部材である。
図5~
図7に示すように、捩りコイルバネ5は、中心軸O10周りにコイル状に巻回され、中心径が縮径、拡径可能な捩りコイルバネ(トーションバネ)である。ハンドルバー10は、捩りコイルバネ5を挿通することができる。捩りコイルバネ5の一端部は、中心軸O10側に向かって屈曲したフック部51となっている。同様に、捩りコイルバネ5の他端部も、中心軸O10側に向かって屈曲したフック部52となっている。
【0019】
図5、
図6に示すように、ロータ4には、車両の中心側に向かって開口した1つの凹部43が形成されている。凹部43には、捩りコイルバネ5のフック部51が挿入される。これにより、スロットルパイプ3が矢印α方向に回転した際、凹部43の一部に、フック部51が当接し、係合する。以下、フック部51が係合したこの部分を「第2係合部44」と言う。
図7に示すように、ケース2のケース本体6の凹部63には、さらに深く窪んだ1つの凹部64が形成されている。凹部64には、捩りコイルバネ5のフック部52が挿入されて係合する。ケース2はハンドルバー10に対して固定されているため、フック部52は、捩りコイルバネ5の縮径、拡径に関わらず、すなわち、スロットルパイプ3(ロータ4)の回転の有無に関わらず、位置が規制される。
【0020】
スロットルグリップ装置1では、スロットルパイプ3が矢印α方向に回転した際、ロータ4も矢印α方向に回転する。このとき、捩りコイルバネ5は、フック部52の位置がそのままに、フック部51がロータ4の第2係合部44から矢印α方向への押圧力を受ける。これにより、フック部51が矢印α方向に移動して、捩りコイルバネ5は縮径する方向に捩られる。このように捩られた捩りコイルバネ5は、ロータ4を介してスロットルパイプ3を初期位置に向けて付勢することができる。そして、スロットルパイプ3に対する矢印α方向への回転力を解除することにより、スロットルパイプ3を初期位置に戻すことができる。
【0021】
図8は、ロータとケースとの位置関係を示す斜視図である。
図8に示すように、ロータ4は、円環状をなすロータ側円環状部45を有する。ロータ側円環状部45は、ハンドルバー10が挿通する部分である。このロータ側円環状部45は、車両の中心側、すなわち、ケース2のケース本体6側に向かって突出している。ケース2のケース本体6は、円環状をなすケース側円環状部65を有する。ケース側円環状部65は、ロータ側円環状部45と同様に、ハンドルバー10が挿通する部分である。このケース側円環状部65は、車両の外側、すなわち、ロータ4側に向かって突出しており、ロータ側円環状部45の内側に嵌合する。そして、ロータ4が中心軸O10周りに回転することにより、ロータ側円環状部45の内周面とケース側円環状部65の外周面とが摺動し合う。このようにスロットルグリップ装置1では、ロータ側円環状部45の内周面がロータ4の摺動面451として機能し、ケース側円環状部65の外周面がケース本体6(ケース2)の摺動面651として機能する。
【0022】
なお、スロットルグリップ装置1では、ケース2、スロットルパイプ3、ロータ4の構成材料としては、特に限定されず、例えば、硬質の金属材料や樹脂材料等を用いることができる。また、捩りコイルバネ5の構成材料としては、特に限定されず、例えば、ステンレスやばね鋼等各種の弾性材料を用いることができる。
【0023】
次に、第1係合部42と第2係合部44との位置関係について説明する。
図9は、
図1に示すスロットルグリップ装置を矢印A方向から見たときの、スロットルパイプ、ロータ、付勢部材、ケースの位置関係を示す断面図(矢印α方向への回転操作前の状態)である。
図10は、
図1に示すスロットルグリップ装置を矢印A方向から見たときの、スロットルパイプ、ロータ、付勢部材、ケースの位置関係を示す断面図(矢印α方向への回転操作後の状態)である。なお、
図9、
図10では、ロータ4のロータ側円環状部45と、ケース本体6のケース側円環状部65との間の間隙を誇張して描いている。
図9、
図10に示すように、第1係合部42は、第2係合部44と中心軸O10とを結んだ仮想線(線)VL44に直交し、かつ、中心軸O10を通る仮想線(線)VL10に対して、第2係合部44とは反対側に配置される。換言すれば、第1係合部42と第2係合部44とは、中心軸O10を挟んで略対向する(中心軸O10を介して互いに反対側に位置する。具体的には、中心軸O10方向から見たとき、第1係合部42と中心軸O10とを結ぶ仮想線VL42(第1仮想線)と、第2係合部44と中心軸O10とを結ぶ仮想線VL44(第2仮想線)とがなす角θは、好ましくは180°±90°であり、より好ましくは180°±10°である。
【0024】
前述したように、第1係合部42と第2係合部44とは、ロータ4の一部で構成されている。これにより、第1係合部42と第2係合部44との位置関係は、スロットルパイプ3の回転角度によらず維持される。なお、ケース本体6の凹部63に係合する捩りコイルバネ5のフック部52の位置は、
図9、
図10に示す位置に限定されず、例えば、捩りコイルバネ5を構成する線材の巻回数に応じて任意に適宜変更可能である。
【0025】
図9に示す状態、すなわち、スロットルパイプ3が初期位置に位置する状態では、ロータ4の第2係合部44には、捩りコイルバネ5のフック部51から捩りコイルバネ5の付勢力F1が予め付与されている。また、この付勢力F1により、ロータ4の第1係合部42は、スロットルパイプ3の凸部32に押し付けられて、当該凸部32から反力F2を受ける。そして、付勢力F1と反力F2との合力F3により、ロータ4の摺動面451は、ケース本体6の摺動面651に押し付けられる。これにより、スロットルパイプ3を回転操作した際には、迅速に(瞬時に)摺動面451と摺動面651との間に摺動抵抗(フリクション)を生じさせることができる。運転者は、この摺動抵抗を、スロットルが開状態となる操作感として感じることができる。さらにこの摺動抵抗により、一定のスロットル開度を容易に保持することが可能となり、スロットル操作時の操作性が向上する。また、
図9に示す状態では、ロータ4がケース本体6に対して押し付けられているため、ロータ4とケース本体6との間でのガタの発生を抑制することができる。これにより、
図9に示す状態からのスロットル操作を円滑におこなうことができる。
【0026】
図9に示す状態から
図10に示すように、スロットルパイプ3が矢印α方向に回転した際には、ロータ4の第1係合部42は、スロットルパイプ3の凸部32にさらに押し付けられて移動する。このとき、第1係合部42は、凸部32から反力F2’を受ける。反力F2’は、反力F2よりも大きさが増大している。また、捩りコイルバネ5は、フック部52の位置がそのままに、フック部51がロータ4の第2係合部44に押し付けられて移動する。これにより、捩りコイルバネ5は、縮径する方向に捩られることなり、その結果、付勢力F1よりも大きさが増大した付勢力F1’を第2係合部44に付与する。そして、付勢力F1’と反力F2’との合力F3’により、ロータ4の摺動面451は、ケース本体6の摺動面651にさらに押し付けられる。なお、合力F3’は、合力F3よりも大きさが増大している。また、摺動面451は、摺動面651に対して摺動することができる。これにより、運転者は、摺動面451と摺動面651との間に生じる摺動抵抗を、スロットルが開状態中である感覚として感じることができる。なお、
図10に示す状態での摺動抵抗は、合力F3’が合力F3よりも大きい分、
図9に示す状態での摺動抵抗よりも大きさが増大している。すなわち、摺動抵抗は、スロットルパイプ3の初期位置からの回転角度に比例して増加する。また、運転者が
図10に示す状態でのスロットルグリップ(スロットルパイプ3)から手を放して、スロットルパイプ3を初期位置に戻すときには、反力F2が存在しない。また、このとき、スロットルパイプ3を初期位置に回転させる付勢力F1のみ発生する。従って、付勢力F1と反力F2との合力F3は発生しない。これにより、付勢力F1でスロットルパイプ3を確実に初期位置へ戻すことができる。
【0027】
以上のようにスロットルグリップ装置1では、捩りコイルバネ5を縮径させるロータ4と、ロータ4を収納するケース2の間で、スロットルグリップ操作時の摺動抵抗を生じさせることができる。これにより、スロットルグリップ装置1は、例えば特許文献1に記載のスロットルグリップ装置が有するような抵抗手段を構成するための部材が無い分、部品点数を抑えることができる。これにより、スロットルグリップ装置1は、小型化が図られ、よって、例えば、スロットルグリップ装置1の商品性を向上させたり、車体やスロットルグリップ装置1の設計時のレイアウト性を向上させたりすることができる。また、スロットルグリップ装置1では、部品点数が抑えられている分、経年劣化する部品を少なくすることができる。これにより、スロットルグリップ操作時の摺動抵抗を長期にわたって安定して生じさせることができる。
【0028】
また、
図9、
図10に示すように、ロータ4の摺動面451がケース本体6の摺動面651に対して摺動する際、摺動面451と摺動面651とが当接し合う位置がスロットルパイプ3の回転に伴って変化する。これにより、摺動面451および摺動面651での摩耗を分散させ抑制することができ、よって、摺動面451および摺動面651の耐久性が向上するとともに、長期にわたる摺動抵抗の安定した発生に寄与する。
【0029】
また、スロットルグリップ装置1では、スロットルパイプ3を回転させるのに要する力は、捩りコイルバネ5を縮径させる力と、ロータ4の摺動面451とケース本体6の摺動面651との間に生じる摺動抵抗との和である。前述したように、この摺動抵抗は、スロットルパイプ3の初期位置からの回転角度に比例して増加する。これにより、スロットルパイプ3を回転させるのに要する力は、スロットルパイプ3の回転角度に応じて変化する。運転者は、この力の加減によって、スロットルがどの程度開状態であるのかを感じることができる。
【0030】
また、スロットルグリップ装置1では、第1係合部42および第2係合部44の配置数は、それぞれ、1つである。これに対し、例えば各係合部が複数配置されている場合、意図しない(スロットルの開状態の正確な把握に邪魔となる)摺動抵抗が生じるおそれがある。スロットルグリップ装置1では、このような不具合を抑制することができる。また、各係合部が複数配置されている場合に比べて、第1係合部42および第2係合部44の厳格な寸法管理を省略することができ、スロットルグリップ装置1の生産性が向上するという利点もある。
【0031】
図11は、スロットルを操作したときのスロットルの回転角度とトルクとの関係を示すグラフである。
図11の矢印B方向に示すように、スロットルの回転角度が零、すなわち、初期位置からスロットル操作を行うのに要する第1トルク(スロットルパイプ3を回転させるのに要する力)は、スロットルグリップ(スロットルパイプ3)の回転角度に比例して増加する。これについては、前述したとおりである。また、
図11の矢印C方向に示すように、スロットルの開状態から閉状態に戻すスロットル操作を行うのに要する第2トルクは、スロットルグリップの回転角度に比例して減少する。また、このスロットル操作では、すなわち、スロットルパイプ3を初期位置に戻すときには、前述したように付勢力F1と反力F2との合力F3は発生しないため、ロータ4の摺動面451とケース本体6の摺動面651との間の摺動抵抗が抑制される。これにより、たとえ摺動面451と摺動面651との間のグリス切れが生じた場合でも、スロットルグリップがより確実に初期位置に戻ることができる。
【0032】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。前述したように、スロットルグリップ装置1は、スロットルグリップを初期位置から矢印α方向に回転操作することにより、車両に対するスロットルコントロール機能を発揮させるよう構成されている。一方、従来のスロットルグリップ装置として、車両に対するクルーズコントロール機能を発揮させるよう構成された装置が知られている(例えば特開2021-38672号公報参照)。スロットルグリップ装置1は、スロットルコントロール機能の他に、さらにクルーズコントロール機能を発揮させるよう構成されている場合にも適用可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 スロットルグリップ装置
2 ケース
3 スロットルパイプ
4 ロータ
42 第1係合部
44 第2係合部
5 捩りコイルバネ(付勢部材)
10 ハンドルバー
O10 中心軸(軸)