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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092199
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】圧排器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/02 20060101AFI20240701BHJP
   A61M 1/00 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
A61B17/02
A61M1/00 160
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207963
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】522250220
【氏名又は名称】藤本 礼尚
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(72)【発明者】
【氏名】藤本 礼尚
【テーマコード(参考)】
4C077
4C160
【Fターム(参考)】
4C077AA30
4C077BB10
4C077DD21
4C077EE04
4C077KK25
4C077PP07
4C160AA08
4C160AA11
4C160MM33
(57)【要約】
【課題】圧排と吸引とを同時に簡単に行うことができ、使い捨てに適しており、かつ、製造が容易な圧排器具を提供する。
【解決手段】圧排器具1は、組織の圧排に用いられる圧排器具であって、手術用の吸引管2が装着されることにより、吸引管2と圧排器具1とを着脱可能な状態で一体化する装着部11と、装着部11に沿って設けられ、組織を圧排する圧排面12aを備える圧排部12とを備えることにより、圧排と吸引とを同時に簡単に行うことができ、使い捨てに適しており、かつ、製造が容易とした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織の圧排に用いられる圧排器具であって、
手術用の吸引管が装着されることにより、前記吸引管と前記圧排器具とを着脱可能な状態で一体化する装着部と、
前記装着部に沿って設けられ、組織を圧排する圧排面を備える圧排部と、
を備える圧排器具。
【請求項2】
請求項1に記載の圧排器具において、
前記圧排部の幅は、前記装着部の外形幅よりも大きく形成されている、圧排器具。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の圧排器具において、
前記装着部は、前記吸引管が挿入可能な管状に形成されている、圧排器具。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の圧排器具において、
前記装着部は、前記吸引管が係合な形状に形成されている、圧排器具。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の圧排器具において、
前記装着部の先端位置は、前記圧排部の先端位置よりも後端側にある、圧排器具。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載の圧排器具において、
前記装着部は、装着される前記吸引管の先端位置を前記吸引管の軸線方向において調節可能である、圧排器具。
【請求項7】
請求項1又は請求項2に記載の圧排器具において、
前記装着部と前記圧排部との間に、前記圧排面と前記装着部との間の距離を離間させる離間構造部を備える、圧排器具。
【請求項8】
請求項1又は請求項2に記載の圧排器具において、
前記装着部の軸線周りで前記吸引管と前記圧排器具とが相対的に回転することを抑制する回転抑制部を備える、圧排器具。
【請求項9】
請求項1又は請求項2に記載の圧排器具において、
可撓性を備える材料により形成されている、圧排器具。
【請求項10】
請求項1又は請求項2に記載の圧排器具において、
当該圧排器具は、脳内組織の圧排に用いられる、圧排器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、組織の圧排に用いられる圧排器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、人体等の手術時に、組織を押圧することにより組織を避ける圧排を行い、必要な術野を確保し、より奥まった部位の施術を可能とするための圧排器具が用いられている。例えば、特許文献1には、脳神経外科手術における圧排に用いられる脳べらに関する発明が開示されている。
【0003】
また、手術中に血液等の体液が施術部位に溜まることがあり、これを外部に排出するために吸引管が用いられる。脳べら等の圧排器具と吸引管とを同時に使用することは限られた施術空間では難しい。しかし、組織を圧排しながら体液の排出と施術とを同時に行う必要がある場合が多い。そのため、従来はガーゼ等で組織を保護しながら吸引管自体で組織を圧排した状態で吸引が行われていた。
【0004】
また、非特許文献1には、手術中に不要な体液を吸引するための金属製の吸引管の幅を広げて「suction spatula(吸引へら)」として形成した例が開示されている。この非特許文献1に記載の「吸引へら」によれば、組織を圧排しながら不要な体液の吸引を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-149101号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Ma´rton Eordogh, Dennis Pasler, Henry W.S. Schroeder "Suction Spatula for Surgery of Vestibular Schwannomas in Supine Position Technical Note" WORLD NEUROSURGERY 138,p.174-p.177,JUNE 2020
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献1に開示されている「吸引へら」は、金属を加工して吸引管としての機能も備えて構成したものであり、比較的高価なものとなる。そのため、従来の吸引管が使用後に再生処理(洗浄・消毒・滅菌等)されて再利用されることと同様に、非特許文献1に開示の「吸引へら」についても再利用が想定される。しかし、非特許文献1に開示の「吸引へら」は、微細な吸引孔が形成されていることから、完全な再生処理が難しく、より完全な再生処理を行うためには、その再生処理がより煩雑となる。その一方で、非特許文献1に開示されている「吸引へら」は、コスト面や廃棄物処理の観点で、いわゆる使い捨てとしての利用にも適さないものであった。また、非特許文献1に開示されている「吸引へら」は、多数の微細な吸引孔を金属管に設けており、この多数の吸引孔にバリ等が発生しないようにしたり、バリの処理を行ったりする必要もあり、製造が容易なものではなかった。
【0008】
本開示の課題は、圧排と吸引とを同時に簡単に行うことができ、使い捨てに適しており、かつ、製造が容易な圧排器具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本開示の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
【0010】
第1の開示は、組織の圧排に用いられる圧排器具(1、1B、1C)であって、手術用の吸引管(2)が装着されることにより、前記吸引管(2)と前記圧排器具(1、1B、1C)とを着脱可能な状態で一体化する装着部(11)と、前記装着部(11)に沿って設けられ、組織を圧排する圧排面(12a)を備える圧排部(12、12C)と、を備える圧排器具(1、1B、1C)である。
【0011】
第2の開示は、第1の開示に記載の圧排器具(1、1B、1C)において、前記圧排部(12、12C)の幅は、前記装着部(11)の外形幅よりも大きく形成されている、圧排器具(1、1B、1C)である。
【0012】
第3の開示は、第1の開示又は第2の開示に記載の圧排器具(1、1B、1C)において、前記装着部(11)は、前記吸引管(2)が挿入可能な管状に形成されている、圧排器具(1、1B、1C)である。
【0013】
第4の開示は、第1の開示から第3の開示までのいずれかに記載の圧排器具(1、1B、1C)において、前記装着部(11)は、前記吸引管(2)が係合な形状に形成されている、圧排器具である。
【0014】
第5の開示は、第1の開示から第3の開示までのいずれかに記載の圧排器具(1、1B、1C)において、前記装着部(11)の先端位置は、前記圧排部(12、12C)の先端位置よりも後端側にある、圧排器具(1、1B、1C)である。
【0015】
第6の開示は、第1の開示から第4の開示までのいずれかに記載の圧排器具(1、1B、1C)において、前記装着部(11)は、装着される前記吸引管(2)の先端位置を前記吸引管(2)の軸線方向において調節可能である、圧排器具(1、1B、1C)である。
【0016】
第7の開示は、第1の開示から第5の開示までのいずれかに記載の圧排器具(1、1B、1C)において、前記装着部(11)と前記圧排部(12、12C)との間に、前記圧排面(12a)と前記装着部(11)との間の距離を離間させる離間構造部(13)を備える、圧排器具(1、1B、1C)である。
【0017】
第8の開示は、第1の開示から第6の開示までのいずれかに記載の圧排器具(1B)において、前記装着部(11)の軸線周りで前記吸引管(2)と前記圧排器具(1B)とが相対的に回転することを抑制する回転抑制部(14)を備える、圧排器具(1B)である。
【0018】
第9の開示は、第1の開示から第7の開示までのいずれかに記載の圧排器具(1、1B、1C)において、可撓性を備える材料により形成されている、圧排器具(1、1B、1C)である。
【0019】
第10の開示は、第1の開示から第8の開示までのいずれかに記載の圧排器具(1、1B、1C)において、当該圧排器具(1、1B、1C)は、脳内組織の圧排に用いられる、圧排器具(1、1B、1C)である。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、圧排と吸引とを同時に簡単に行うことができ、使い捨てに適しており、かつ、製造が容易な圧排器具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1実施形態の圧排器具1に吸引管2が装着された状態を示す斜視図である。
図2】圧排器具1と吸引管2との装着を解除した状態を示す分解斜視図である。
図3】圧排器具1の3面図である。
図4】吸引管2の管部2aの先端位置を圧排部12の先端位置12bよりも先端側(+X側)へ調節した状態を示す斜視図である。
図5】吸引管2の管部2aの先端位置を圧排部12の先端位置12bよりも先端側(+X側)へ突出する位置に調節した状態を示す上面図及び正面図である。
図6】吸引管2とともに圧排器具1を屈曲させた例を示す図である。
図7】第2実施形態の圧排器具1Bに吸引管2が装着された状態を示す斜視図である。
図8】第3実施形態の圧排器具1Cの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示を実施するための一形態について図面等を参照して説明する。
【0023】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の圧排器具1に吸引管2が装着された状態を示す斜視図である。図2は、圧排器具1と吸引管2との装着を解除した状態を示す分解斜視図である。図3は、圧排器具1の3面図である。図3(a)は上面図であり、図3(b)は正面図であり、図3(c)は側面図である。
【0024】
なお、図1を含め、以下に示す各図は、模式的に示した図であり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張したり、省略したりして示している。また、以下の説明では、具体的な数値、形状、材料等を示して説明を行うが、これらは、適宜変更することができる。また、図中には、説明の便宜のためX、Y、Zの直交座標を設け、以下の説明ではこの座標を用いて各部の向き等の説明を行う。圧排器具1及び吸引管2の長手方向をX軸方向とし、使用時に先端側となる側を+X側、後端側(手前側)となる側を-Xとした。また、X軸方向にそれぞれ直交する方向にY軸方向とZ軸方向を設けている。Y軸方向は、屈曲していない図1の状態における圧排面12aに直交する方向である。
【0025】
圧排器具1は、装着部11と、圧排部12と、離間構造部13とを備えており、吸引管2が装着されて、吸引管2とともに手術において用いられる。本実施形態の圧排器具1は、脳内組織の圧排に用いられる圧排器具であり、脳べらとしての機能を備えている。圧排器具1は、人体に悪影響を及ぼさない材料であればどのような材料により形成されてもよいが、例えば、シリコーン樹脂やゴムにより形成することが望ましい。特に軟質のシリコーン樹脂やゴムを用いて圧排器具1を形成し、圧排器具1が適度な可撓性を備えることが、圧排時に組織に負担を与えにくい点で望ましい。
【0026】
装着部11は、吸引管2の管部2aが装着されることにより、吸引管2と圧排器具1とを着脱可能な状態で一体化する。具体的には、本実施形態の装着部11は、吸引管2の管部2aが挿入可能な貫通孔11aを有する管状に形成されている。貫通孔11aの内径は、吸引管2の管部2aの外径と同等か、僅かに小さく形成されていることが望ましい。これにより、装着部11の弾性変形を利用して管部2aを圧入気味に挿入して吸引管2を装着することになる。よって、吸引管2と圧排器具1との相対位置が変化し難くなり、施術をより安定して行うことができる。
【0027】
ここで、吸引管2の管部2aの外形寸法は、市販されている汎用品で2mm、2.5mm、3mm、3.5mm、4mmが主に用いられている。よって、装着部11の貫通孔11aの内径は、これらに対応できる内径で複数種類用意するとよい。例えば、管部2aの外形寸法が2mmの吸引管2を装着する圧排器具1では、装着部11の貫通孔11aの内径は、1.9mm~2.0mm程度とするとよい。また、圧排器具1をシリコーン樹脂やゴムにより形成する場合には、装着部11の貫通孔11aの内径に成形型の離型性を良好にするための抜け勾配を設けてもよい。抜け勾配を貫通孔11aの内径に設ける場合には、後端側(-X側)の内径が先端側(+X側)の内径より大きくすることが、吸引管2の管部2aの装着作業を容易にするために望ましい。装着部11のX軸方向における設置範囲は、用途に応じて適宜設定することができるが、例えば、100mm以上200mm以下とすることが望ましい。なお、本実施形態では装着部11は分割されておらず1つのみ設けた例を示したが、装着部11は例えば、2カ所や3カ所、4カ所以上等、複数に分けてそれぞれが離間して設けられていてもよい。装着部11が複数に分けて設けられている場合には、上記の設置範囲とは、最も-X側にある装着部から最も+X側にある装着部まで範囲である。
【0028】
また、装着部11の先端位置11bは、圧排部12の先端位置12bよりも後端側(-X側)にある。すなわち、圧排面12aの法線方向(-Y側)から装着部11を見たときに圧排部12により装着部11の先端位置11bは見えない位置にある。よって、この先端位置11bに吸引管2の管部2aの先端を合わせて吸引管2を装着すれば、圧排部12によって組織を圧排した領域で吸引を行え、吸引管2の管部2aの先端が組織に接触したり、組織自体を吸引したりするリスクを低減できる。なお、装着部11が複数に分けて設けられている場合には、上述した装着部11の先端位置とは、最先端側(最も+X側)の位置を指すものである。
【0029】
一方で、圧排部12の先端付近で体液を吸引したいという場合も想定される。そのような場合に対応できるように、装着部11は、装着される吸引管2の管部2aの先端位置を吸引管2の軸線方向(X軸方向)において調節可能である。図4は、吸引管2の管部2aの先端位置を圧排部12の先端位置12bよりも先端側(+X側)へ突出する位置に調節した状態を示す斜視図である。図5は、吸引管2の管部2aの先端位置を圧排部12の先端位置12bよりも先端側(+X側)へ突出する位置に調節した状態を示す上面図(図5(a))及び正面図(図5(b))である。図5に示すように吸引管2の管部2aの先端位置を圧排部12の先端位置12bよりも先端側(+X側)へ突出させても、管部2aの先端位置が先端位置12bを超えない範囲において使用可能である。この状態であれば、図5に示すように、圧排面12aの法線方向(-Y側)から装着部11を見たときに圧排部12により装着部11の先端位置11bは見えない位置にある。図4及び図5に示すように、吸引管2の管部2aの先端位置を圧排部12の先端位置12bよりも先端側(+X側)へ突出させれば、体液の吸引をより深い位置で行うことができる。そして、管部2aの先端位置が先端位置12bを超えない範囲において使用することにより、管部2aが組織に接触したり、組織を吸引したりすることを防ぐことができる。なお、装着部11の先端位置11bと圧排部12の先端位置12bとのX軸方向の間隔は、例えば、3mm以上15mm以下とすることが望ましい。
【0030】
圧排部12は、装着部11に沿って鍔状(フランジ状)に設けられ、組織を圧排する圧排面12aを備えている。圧排面12aは、屈曲させない状態では平坦に形成されている。圧排部12の先端(+X側の先端)は、Y軸方向(上方、又は、下方)から見た形状が略円弧形状に形成されており、組織を損傷するリスクを低減している。なお、圧排部12の先端(+X側の先端)は、Y軸方向(上方、又は、下方)から見た形状は、円弧形状に限らず、楕円形状の一部や、放物線形状の一部、双曲線形状の一部等、丸みを帯びていることが望ましく、角を丸めた多角形形状であってもよく、適宜変更可能である。圧排部12の幅は、装着部11の外形幅よりも大きく形成されている。したがって、圧排を行う際に、吸引管2の管部2aで直接圧排するよりも広い圧排面12aで圧排することができ、組織への負担を軽減できる。
【0031】
また、圧排部12は、圧排時の押圧方向となるY軸方向の厚さが装着部11よりも薄く形成されており、さらに、可撓性を備える。これにより、過度な力が誤って加わった場合であっても圧排部12が撓むことにより過度な力を逃がしつつ、撓んだ圧排部12を視認することにより施術者にも危険性を認知させることができ、組織への損傷を抑制することができる。
【0032】
本実施形態では、圧排部12の幅は12mmとし、圧排部12の長手方向の長さは100mmとし、厚さは1mmとした。なお、圧排部12の幅、長さ、厚さは、手術内容に応じて、適宜変更してもよいが、例えば、圧排部12の幅は7mm以上25mm以下、長さは120mm以上220mm以下、厚さは0.5mm以上2.5mm以下とすることが望ましい。
【0033】
離間構造部13は、装着部11と圧排部12との間にあって、圧排面12aと装着部11との間の距離を離間させる。これにより、吸引管2の先端位置が圧排面12aによって圧排されている組織から離間することができ、吸引管2の管部2aが組織に接触したり組織を吸引したりすることを防止できる。離間構造部13によって吸引管2と圧排面12aとを離間させる距離は、手術内容によって適宜設定することができるが、例えば、0.1mm以上3mm以下とすることが望ましい。また、離間構造部13を設けることにより、圧排器具1の強度を高めることができる。よって、離間構造部13のY軸方向の厚さを変更することにより、圧排器具1の屈曲特性(剛性)を屈曲し難く(剛性を高く)したり、屈曲しやすく(剛性を弱く)したりすることができる。
【0034】
吸引管2は、手術によって施術部位に発生する血液等の体液を吸引する手術用の器具である。吸引管2は、管部2aと、持ち手2bと、開口部2cとを備えている。管部2aは、所定の外径で延在するパイプであり、必要に応じて屈曲可能である。持ち手2bは、施術者が把持しやすいようなブロック状に設けられている。また、持ち手2bには、開口部2cが設けられている。開口部2cを指で塞ぐことにより、管部2aの先端からの吸引が行われ、開口部2cを開放すると開口部2cから大気が吸引されることから、管部2aの先端からの吸引が停止、又は、管部2aの先端からの吸引力が低下する。本実施形態の圧排器具1に装着される吸引管2は、市販されている汎用品である。よって、施術者は、圧排器具1に吸引管2を装着することで、圧排しながら吸引を行うことを同時に行うことができるだけでなく、従来から使い慣れた吸引管2を使うことができる。
【0035】
また、従来から吸引管や脳べらは、施術部位の状況に応じて適宜屈曲して用いることが行われていた。図6は、吸引管2とともに圧排器具1を屈曲させた例を示す図である。本実施形態においても、軟質のシリコーン樹脂やゴムを用いて圧排器具1を形成して、圧排器具1が可撓性を備える場合には、吸引管2の管部2aを屈曲させることができる。圧排器具1は、例えば図6に示すように屈曲することができ、組織の形状に合わせてより使いやすい形態で用いることが可能である。
【0036】
本実施形態の圧排器具1を用いた施術手順(圧排方法)について説明する。先ず、圧排器具1の装着部11に吸引管2の管部2aを装着し、管部2aの先端位置を用途に応じて設定(調節)する。手術中に術野を確保する等の必要に応じて、圧排器具1の圧排面12aを脳や臓器等の組織に当てて押圧し、組織を退かす。また、血液等の体液の除去が必要な場合には、圧排を継続しながら吸引管2の開口部2cを指で押さえることにより管部2aの先端から体液の吸引を行うことができる。
【0037】
以上説明したように、第1実施形態によれば、圧排器具1は、吸引管2を装着することにより、体液の吸引と組織の圧排とを片手で簡単に行うことができ、手術をより安全に行うことができる。また、圧排器具1は、シリコーン樹脂やゴム等により形成することにより、成形型を用いた成形によって製造が容易となり、安価に提供でき、使い捨てに適したものとすることができる。また、金属製の圧排器具よりも安全性を高めることができる。
【0038】
(第2実施形態)
図7は、第2実施形態の圧排器具1Bに吸引管2が装着された状態を示す斜視図である。第2実施形態の圧排器具1Bは、回転抑制部14を有している点で第1実施形態の圧排器具1と異なる他は、第1実施形態の圧排器具1と同様な形態である。よって、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
【0039】
回転抑制部14は、圧排部12を吸引管2の持ち手2bとY軸方向で重なる位置まで延長した形態で構成されている。回転抑制部14は、持ち手2bと係合することにより、装着部11の軸線周りで吸引管2と圧排器具1Bとが相対的に回転することを抑制する。よって、より安定して圧排と吸引とを行うことが可能となる。
【0040】
(第3実施形態)
図8は、第3実施形態の圧排器具1Cの上面図である。第3実施形態の圧排器具1Cは、圧排部12Cの形状が第1実施形態の圧排器具1と異なる他は、第1実施形態の圧排器具1と同様な形態である。よって、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
【0041】
第3実施形態の圧排器具1Cの圧排部12Cは、先端側(+X側)の幅が第1実施形態よりも狭く形成されている。また、圧排部12Cの幅は、先端側(+X側)から後端側(-X側)へ向かうにしたがって徐々に幅が広くなっている。ここで、最後端(-X側)の端部では、第1実施形態の圧排部12の幅と同等になっていてもよい。具体的には、本実施形態では、圧排部12Cの幅は、先端で8mmであり、後端で12mmとなっている。なお、圧排部12Cの先端の幅及び後端の幅は、手術内容に応じて適宜設定可能であるが、例えば、先端の幅は4mm以上20mm以下、後端の幅は7mm以上25mm以下とすることが望ましい。このように構成することにより、より狭い施術空間であっても作業を容易に行うことができる。
【0042】
(変形形態)
以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本開示の範囲内である。
【0043】
(1)各実施形態において、脳の手術に用いられる脳べらの機能を備える圧排器具である例を挙げて説明を行った。これに限らず、例えば、圧排器具は、腹部等の他の部位の手術に適用してもよい。
【0044】
(2)各実施形態において、圧排器具は、シリコーン樹脂やゴム等により形成されている例を挙げて説明した。これに限らず、使い捨てとせずに再利用することを重視する場合には、例えば、金属によって圧排器具を形成してもよい。
【0045】
(3)各実施形態において、圧排器具の装着部は、管状に形成されている例を挙げて説明した。これに限らず、例えば、吸引管に係合する管状(環状)、フック形状等の係合部が複数、離間して配列された装着部としてもよく、装着部の具体的な形状は適宜変更可能である。
【0046】
(4)第2実施形態において、回転抑制部14は、圧排部12を吸引管2の持ち手2bとY軸方向で重なる位置まで延長して構成した例を挙げて説明した。これに限らず、例えば、持ち手2bの外形形状の一部を覆う形態で持ち手2bと係合するような回転抑制部としてもよく、回転抑制部の具体的な形態は適宜変更可能である。
【0047】
なお、各実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本開示は以上説明した各実施形態によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0048】
1、1B、1C 圧排器具
2 吸引管
2a 管部
2b 持ち手
2c 開口部
11 装着部
11a 貫通孔
11b 先端位置
12、12C 圧排部
12a 圧排面
12b 先端位置
13 離間構造部
14 回転抑制部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8