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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000922
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】釣竿用リールシート、釣竿及びナット
(51)【国際特許分類】
   A01K 87/06 20060101AFI20231226BHJP
   A01K 87/08 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
A01K87/06 B
A01K87/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099912
(22)【出願日】2022-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140822
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 光広
(72)【発明者】
【氏名】中川 慎太郎
【テーマコード(参考)】
2B019
【Fターム(参考)】
2B019AA06
2B019CB01
2B019CB03
2B019CB10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】外側筒状部と内側筒状部との間の固定を確実にしながらスムーズな回転を可能とし、装飾性を向上させることが可能なナットを備えた釣竿用リールシートを提供する。
【解決手段】ナットは、リール脚が載置されるリール脚載置部が形成されたリールシート本体の雄ネジ部に螺合し、移動フードを移動させるためのナットであって、リールシート本体の雄ネジ部に螺合する移動用の雌ネジ部を内周面に有し、端部で移動フードに係止されるナット基部15と、凸状部又は凹状部を有しナット基部15の外側に固定される内側筒状部16と、凸状部又は凹状部と係合する凹状部又は凸状部を有し、内側筒状部16の外側に固定されかつ外周面がナットの外周面の少なくとも一部となる外側筒状部17とを備え、外側筒状部は、内外方向に貫通した貫通孔を有し、外側筒状部の軸方向でみて、貫通孔の少なくとも一部と凹状部又は凸状部の少なくとも一部とは重なる位置に設けられる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リール脚が載置されるリール脚載置部が形成されたリールシート本体の雄ネジ部に螺合し、移動フードを移動させるためのナットであって、
該リールシート本体の雄ネジ部に螺合する移動用の雌ネジ部を内周面に有し、端部で該移動フードに係止されるナット基部と、
凸状部又は凹状部を有し、該ナット基部の外側に固定される内側筒状部と、
該凸状部又は該凹状部と係合する凹状部又は凸状部を有し、これにより該内側筒状部の外側に固定され、かつその外周面が前記ナットの外周面の少なくとも一部となる外側筒状部と、を備え、
該外側筒状部は、内外方向に貫通した貫通孔を有し、該外側筒状部の軸方向でみて、該貫通孔の少なくとも一部と前記凹状部又は前記凸状部の少なくとも一部とは重なる位置に設けられることを特徴とする移動フードを移動させるためのナット。
【請求項2】
前記凸状部と前記凹状部は、それぞれ2つ以上設けられる、請求項1に記載のナット。
【請求項3】
前記内側筒状部に前記凸状部が設けられ、前記外側筒状部に前記凹状部が設けられる、請求項1に記載のナット。
【請求項4】
前記凸状部と前記凹状部は、直方体形状を有する、請求項1に記載のナット。
【請求項5】
前記凸状部の長手方向の長さは、3mmから5mmの範囲の長さであり、前記凸状部の短手方向の長さは、0.5mmから1.5mmの範囲の長さであり、前記凸状部の高さは、0.3mmから1.0mmの範囲の高さである、請求項4に記載のナット。
【請求項6】
前記凹状部の長手方向の長さは、3mmから5mmの範囲の長さであり、前記凹状部の短手方向の長さは、0.5mmから1.5mmの範囲の長さであり、前記凹状部の高さは、0.3mmから1.0mmの範囲の高さである、請求項4に記載のナット。
【請求項7】
前記内側筒状部は、その外周面の前記軸方向のいずれかの端部に、壁部を備え、前記外側筒状部は、該壁部に当接するようにして該内側筒状部に固定される、請求項1に記載のナット。
【請求項8】
前記凸状部は、前記内側筒状部又は前記外側筒状部の、前記移動フード側の端部から5mmの範囲に設けられる、請求項1に記載のナット。
【請求項9】
前記貫通孔が占める領域は、前記外側筒状部の外周面の、前記ナットの外周面の少なくとも一部となる領域全体に対して50%から80%の範囲となるようにされる、請求項1に記載のナット。
【請求項10】
前記外側筒状部の径方向厚さは、0.3mmから1.5mmの範囲の厚さである、請求項1に記載のナット。
【請求項11】
前記外側筒状部の径は、10mmから30mmの範囲の大きさである、請求項1に記載のナット。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか1項に記載のナットを有する釣竿用リールシートと、竿体とを備えた釣竿。
【請求項13】
リール脚が載置されるリール脚載置部が形成されたリールシート本体と、該リールシート本体の外面に案内され、該リールシート本体の軸線方向に沿って移動可能に構成された移動フードと、該リールシート本体の外面に設けられ、該移動フードを該軸線方向に移動させるためのナットと、を備えた釣竿用リールシートであって、
該リールシート本体の雄ネジ部に螺合する移動用の雌ネジ部を内周面に有し、端部で該移動フードに係止されるナット基部と、
凸状部又は凹状部を有し、該ナット基部の外側に固定される内側筒状部と、
該凸状部又は該凹状部と係合する凹状部又は凸状部を有し、これにより該内側筒状部の外側に固定され、かつその外周面が前記ナットの外周面の少なくとも一部となる外側筒状部と、を備え、
該外側筒状部は、内外方向に貫通した貫通孔を有し、該外側筒状部の軸方向でみて、該貫通孔の少なくとも一部と前記凹状部又は前記凸状部の少なくとも一部とは重なる位置に設けられることを特徴とする移動フードを移動させるためのナット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナット、これを備えた釣竿用リールシート、該釣竿用リールシートを備えた釣竿に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、魚釣用リールの釣竿取付脚を釣竿に固定するための様々な装置が知られている。例えば、特許文献1に開示されたリール固定装置は、魚釣用リールの釣竿取付脚が載置される載置部を備えたリールシート本体を備えている。リールシート本体の一端には、釣竿取付脚の一端を固定する固定フードが設けられている。リールシート本体の他端には、固定フードに対向して移動可能に移動フードが取り付けられている。
【0003】
移動フードは、釣竿取付脚の他端が挿入される挿入部と、挿入部に回動自在に取り付けられる操作つまみと、を備えて構成されている。操作つまみは、リールシート本体の他端に形成されたねじ部に螺合する筒状の基部と、基部の外周面に装着される装飾用のカバー部材と、を備えて構成されている。カバー部材は、接着剤を用いて基部に固定されている。接着剤は、基部の外周面とカバー部材の内周面との両方に塗布される。
【0004】
また、特許文献2には、リールシート本体の雄ネジ部に螺合し、移動フードを移動させるためのナットであって、リールシート本体の雄ネジ部に螺合する移動用の雌ネジ部を内周面に有する内筒体と、該内筒体の外側に固定され、その外周面がナットの外周面の少なくとも一部となる外筒体とを備え、外筒体は、内外方向に貫通した貫通孔を有し、該貫通孔よりも移動フードから遠い位置に、内筒体の外周面と外筒体の内周面とを固定する固定部を備えている釣竿用リールシートのナットが開示されている。また、当該固定部は接着部とネジ部のうち少なくとも一方を有していることが好ましいとし、固定部が接着部を有している場合には、内筒体の外周面と外筒体の内周面とを接着により容易に固定することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-161234号公報
【特許文献2】特開2020-89310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示のリール固定装置では、基部の外周面とカバー部材の内周面との両方に接着剤を塗布していたため、組み付け時にカバー部材の端部等から余分な接着剤がはみ出して装飾性が損なわれるおそれがあったり、また、移動フードの装飾性を高めるために、貫通孔を形成したカバー部材を用いた場合には、はみ出した接着剤が貫通孔内に入り込み易いという問題があった。また、貫通孔を形成したカバー部材を用いるにしてもカバー部材の内面を基部と接着させるために、貫通孔が形成可能な領域が限定されてしまうという問題があった。
【0007】
また、特許文献2に開示の移動フードを移動させるためのナットでは、高い装飾性が得られると共にスムーズに回転させることができるとするものの、内筒体の外周面と外筒体の内周面とを固定する固定部を設け、内筒体の外周面と外筒体の内周面とを接着又はネジ止め構造により固定するものであるため、当該固定部の領域に貫通孔を形成することはできず、貫通孔が形成可能な領域が限定される結果、装飾性の向上にはやはり限界があるという問題があった。
【0008】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、外側筒状部と内側筒状部との間の固定を確実に行いながらスムーズな回転を可能とするだけでなく、装飾性を大幅に向上させることが可能なナット、これを備えた釣竿用リールシート、このような釣竿用リールシートを備えた釣竿を提供することにある。本発明のこれら以外の目的は、本明細書全体を参照することにより明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態に係るナットは、リール脚が載置されるリール脚載置部が形成されたリールシート本体の雄ネジ部に螺合し、移動フードを移動させるためのナットであって、該リールシート本体の雄ネジ部に螺合する移動用の雌ネジ部を内周面に有し、端部で該移動フードに係止されるナット基部と、凸状部又は凹状部を有し、該ナット基部の外側に固定される内側筒状部と、該凸状部又は該凹状部と係合する凹状部又は凸状部を有し、これにより該内側筒状部の外側に固定され、かつその外周面が前記ナットの外周面の少なくとも一部となる外側筒状部と、を備え、該外側筒状部は、内外方向に貫通した貫通孔を有し、該外側筒状部の軸方向でみて、該貫通孔の少なくとも一部と前記凹状部又は前記凸状部の少なくとも一部とは重なる位置に設けられる。
【0010】
本発明の一実施形態に係るナットにおいて、前記凸状部と前記凹状部は、それぞれ2つ以上設けられる。
【0011】
本発明の一実施形態に係るナットは、前記内側筒状部に前記凸状部が設けられ、前記外側筒状部に前記凹状部が設けられる。
【0012】
本発明の一実施形態に係るナットにおいて、前記凸状部と前記凹状部は、直方体形状を有するように構成される。
【0013】
本発明の一実施形態に係るナットにおいて、前記凸状部の長手方向の長さは、3mmから5mmの範囲の長さであり、前記凸状部の短手方向の長さは、0.5mmから1.5mmの範囲の長さであり、前記凸状部の高さは、0.3mmから1.0mmの範囲の高さであるように構成される。
【0014】
本発明の一実施形態に係るナットにおいて、前記凹状部の長手方向の長さは、3mmから5mmの範囲の長さであり、前記凹状部の短手方向の長さは、0.5mmから1.5mmの範囲の長さであり、前記凹状部の高さは、0.3mmから1.0mmの範囲の高さであるように構成される。
【0015】
本発明の一実施形態に係るナットにおいて、前記内側筒状部は、その外周面の前記軸方向のいずれかの端部に、壁部を備え、前記外側筒状部は、該壁部に当接するようにして該内側筒状部に固定されるように構成される。
【0016】
本発明の一実施形態に係るナットにおいて、前記凸状部は、前記内側筒状部又は前記外側筒状部の、前記移動フード側の端部から5mmの範囲内に設けられる。
【0017】
本発明の一実施形態に係るナットにおいて、前記貫通孔が占める領域は、前記外側筒状部の外周面の、前記ナットの外周面の少なくとも一部となる領域全体に対して50%から80%の範囲となるようにされる。
【0018】
本発明の一実施形態に係るナットにおいて、前記外側筒状部の径方向厚さは、0.3mmから1.5mmの範囲の厚さであるように構成される。
【0019】
本発明の一実施形態に係るナットにおいて、前記外側筒状部の径は、10mmから30mmの範囲の大きさであるように構成される。
【0020】
本発明の一実施形態に係る釣竿は、上記いずれかのナットを有する釣竿用リールシートと、竿体とを備えるように構成される。
【0021】
本発明の一実施形態に係る釣竿用リールシートは、リール脚が載置されるリール脚載置部が形成されたリールシート本体と、該リールシート本体の外面に案内され、該リールシート本体の軸線方向に沿って移動可能に構成された移動フードと、該リールシート本体の外面に設けられ、該移動フードを該軸線方向に移動させるためのナットと、を備えた釣竿用リールシートであって、該リールシート本体の雄ネジ部に螺合する移動用の雌ネジ部を内周面に有し、端部で該移動フードに係止されるナット基部と、凸状部又は凹状部を有し、該ナット基部の外側に固定される内側筒状部と、該凸状部又は該凹状部と係合する凹状部又は凸状部を有し、これにより該内側筒状部の外側に固定され、かつその外周面が前記ナットの外周面の少なくとも一部となる外側筒状部と、を備え、該外側筒状部は、内外方向に貫通した貫通孔を有し、該外側筒状部の軸方向でみて、該貫通孔の少なくとも一部と前記凹状部又は前記凸状部の少なくとも一部とは重なる位置に設けられる。
【発明の効果】
【0022】
上記実施形態によれば、外側筒状部と内側筒状部との間の固定を確実に行いながらスムーズな回転を可能とするだけでなく、装飾性を大幅に向上させることが可能なナット、これを備えた釣竿用リールシート、このような釣竿用リールシートを備えた釣竿を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る釣竿を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る釣竿用リールシートを示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係るナットの断面図を示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係るナットの外側筒状部と内側筒状部を示す図である。
図5】本発明の一実施形態に係るナットの外側筒状部を示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係るナットの内側筒状部を示す図である。
図7】本発明のその他の実施形態に係るナットの外側筒状部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る釣竿の実施形態について、添付図面を参照しながら具体的に説明する。複数の図面において共通する構成要素には当該複数の図面を通じて同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。
【0025】
図1は、本発明に係る釣竿の一実施形態を示す図である。図示のように、本発明の一実施形態による釣竿1は、竿体2と、竿体2にリールシート9を介して取り付けられたリール6と、竿体2に取り付けられた釣糸ガイド10と、を備える。図示の実施形態においては、リールシート9及び釣糸ガイド10の各々が、竿体の外周面に取り付けられる取付部品に該当する。
【0026】
竿体2は、例えば、元竿3、中竿5、及び穂先竿7等を連結することによって構成されている。これらの各竿体は、例えば、並継ぎ式に継合される。元竿3、中竿5、及び穂先竿7は、振出方式、逆並継方式、インロー方式、又はこれら以外の公知の任意の継合方式により継合され得る。竿体2は、単一の竿体から構成されていてもよい。
【0027】
元竿3、中竿5、及び穂先竿7は、例えば、繊維強化樹脂製の管状体で構成されている。この繊維強化樹脂製の管状体は、強化繊維にマトリクス樹脂を含浸させた繊維強化樹脂プリプレグ(プリプレグシート)を芯金に巻回し、このプリプレグシートを加熱して硬化させることにより作成される。このプリプレグシートに含まれる強化繊維として、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、及びこれら以外の任意の公知の強化繊維を用いることができる。当該プリプレグシートに含まれるマトリクス樹脂として、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を用いることができる。プリプレグシートが硬化された後には、芯金が脱芯される。また、管状体の外表面は、適宜研磨される。各竿体は、中実状に構成されてもよい。
【0028】
図示の実施形態において、元竿3、中竿5及び穂先竿7には、リールシート9に装着されるリール6から繰り出される釣糸を案内する複数の釣糸ガイド10(釣糸ガイド10A~10D)が設けられている。より具体的には、元竿3には釣糸ガイド10Aが設けられ、中竿5には釣糸ガイド10Bが設けられ、穂先竿7には釣糸ガイド10Cが設けられている。穂先竿7の先端には、トップガイド10Dが設けられているが、詳細は省略する。
【0029】
次に、図2を参照して、リールシート本体12及びナット8を備えるリールシート9について説明する。リールシート本体12は、魚釣用リール6のリール脚6aが載置されるリール脚載置面(リール脚載置部)12aをその軸方向に沿って有するリールシート本体12を備えている。リールシート本体12は、全体として筒状に形成されている。また、リールシート本体12は、合成樹脂(例えばポリアミド系合成繊維やABS樹脂等)あるいは金属(例えばSUS、アルミニウム、チタン、真鍮等)等の適宜の材料から形成されている。リールシート本体12は、例えば、60-160mmの長さを有するよう構成できるが、これに限られない。
【0030】
また、このリールシート本体12は、リール脚載置面12aの反対側を僅かに膨出させ、握持する手で握り込んだときに、母指球またはその近部を支えることで握持し易い湾曲形状の外面を有する握り部12bを形成してある。
【0031】
リールシート本体12のリール脚載置面12aは、平坦または、リールシート本体12のリール脚載置面12aに隣接する他の周方向の部位(例えば握り部12b)よりも大きな曲率をもって略平坦に形成することができ、かつ、図2に示すリールシート本体12の軸方向に延びた状態に形成されている。リールシート本体12には、一端(竿元側)に固定フード14が一体的に配設されている。リールシート本体12のリール脚載置面12aの一端は、固定フード14の内部に配設されている。
【0032】
リールシート本体12は、他端(竿尻側)に案内溝が形成された筒状体およびネジ部(雄ネジ部)18が一体的に設けられている。筒状体には、リールシート本体12のリール脚載置面12aに連続して、又は、僅かな段差をもって筒状部載置面16aが形成されている。本発明の一実施形態では、リール脚載置面(リール脚載置部)12aと筒状部載置面16aとの間は、リール脚6aの裏面(底面)6bが載置される後述するリール脚保持部28の裏面保持部およびリール脚載置面12aの間をできるだけ面一にするように、リール脚保持部28の裏面保持部が配設される分の段差が形成されている。筒状部載置面16aは、ネジ部(雄ネジ部)18にも連続して形成されている。他端(竿尻側)において、筒状体およびネジ部18の外側には、移動フード22が軸方向に移動自在に装着される。ここで、該リールシート本体12と該移動フード22、又は該リールシート本体12と該移動フード22と後述するナット8とを含めてリールシート9と呼ぶことがあるが、詳細は省略する。
【0033】
図2に示すように、リールシート本体12の固定フード14には、リール脚6aの一端を受け入れる開口部14aが移動フード22に向けて開口されている。この固定フード14の開口部14aは、リールシート本体12の前方に向けて次第に内面の高さが低くなるように形成されている。この開口部14aにリール脚6aの一端を受け入れ、リール脚6aの一端が開口部14aにより押圧されたときに、このリール脚6aを固定フード14内に配設されたリール脚載置面12a側に向けて付勢する(押し付ける)。
【0034】
なお、固定フード14は、リールシート本体12に一体的に配設されている場合に限らず、金属又は硬質の合成樹脂でリールシート本体12と別体構造に形成し、リールシート本体12に強固に固定してもよい。金属で形成する場合には、リール6のリール脚6aに当接する部位に樹脂製部材を配置し、金属間の接触による各部材の損傷を防止することが好ましい。
【0035】
移動フード22は、リールシート本体12のネジ部(雄ネジ部)18が挿通される軸方向孔を貫通させたスリーブ状に形成してあり、フード本体26と、このフード本体26の内側に固定されたリール脚保持部28とを有する。移動フード22のフード本体26の後部(竿尻側)には、本発明の一実施形態に係るナット8が回転自在に連結されている。当該ナット8は、例えば、合成樹脂、金属、ポリアミド系合成繊維、ABS樹脂、アルミニウム、真鍮等により形成され、フード本体26は例えば金属(SUS、真鍮)等により形成され、リール脚保持部28は、例えば、ポリアミド系合成繊維等により形成されている。
【0036】
ナット8はネジ部(雄ネジ部)18に螺合する雌ネジ部24を内周側に形成し、外周側は滑り難く回転操作し易く形成されている。ナット8の前端部は、フード本体26の後端部と相対回転自在でかつ抜け止めされた状態で連結(係止)されている。より詳細には、ナット8は係止部25(後述の図3参照)を備え、フード本体26の後端の被係止部23(後述の図3参照)に係止され、自在に相対回転を可能としつつ抜け止めするよう構成することができる。なお、ナット8とフード本体26との連結構造は、様々に考えられ、特定の態様に限定されるものではない。
【0037】
ナット8は、リールシート本体12のネジ部(雄ネジ部)18に螺合され、かつ、回転可能に配設されている。既述の通り、フード本体26はナット8に連結されているため、ネジ部(雄ネジ部)18に対してナット8を正方向に回転させると、ナット8が固定フード14に対して近接するとともに移動フード22のフード本体26が固定フード14に対して近接する。一方、ネジ部(雄ネジ部)18に対してナット8を逆方向に回転させるとナット8が固定フード14に対して離隔すると共に移動フード22のフード本体26が固定フード14に対して離隔する。
【0038】
このナット8の回転によりリールシート本体12の軸方向に移動されるフード本体26は、前方および内周側に開口し、魚釣用リール6のリール脚6aの後端を受け入れるリール脚保持部28が配設された状態で固定される開口部26aを有する。このフード本体26の開口部26aは、移動フード22をリールシート本体12のネジ部(雄ネジ部)18に装着したときに、固定フード14の開口部14aに対向する。フード本体26の開口部26aは、固定フード14の開口部14aとは逆に、後方に向けて次第に内面の高さが低くなるように形成されている。
【0039】
次に、図2、3、4、5及び6を参照して、本発明の一実施形態に係るナット8の詳細について更に説明する。図3は、本発明の一実施形態に係るナット8及び移動フード22の中心軸を通る断面図を示す。図4は、本発明の一実施形態に係るナット8の分解図の一部を示す。図5、6は、本発明の一実施形態に係るナット8の各構成部材の正面図及び上面図をそれぞれ示している。
【0040】
本発明の一実施形態に係るナット8は、リール脚6aが載置されるリール脚載置部12aが形成されたリールシート本体12の雄ネジ部18に螺合し、移動フード22を移動させるためのナット8であって、該リールシート本体12の雄ネジ部18に螺合する移動用の雌ネジ部24を内周面に有し、端部で該移動フード22に係止されるナット基部15と、凸状部(図示しない)又は凹状部19を有し、該ナット基部15の外側に固定される内側筒状部16と、該凸状部(図示しない)又は該凹状部19と係合する凹状部(図示しない)又は凸状部20を有し、これにより該内側筒状部16の外側に固定され、かつその外周面が前記ナットの外周面の少なくとも一部となる外側筒状部17と、を備え、該外側筒状部17は、内外方向に貫通した貫通孔21を有し、該外側筒状部17の軸方向(X)でみて、該貫通孔21の少なくとも一部と前記凹状部(図示しない)又は前記凸状部20の少なくとも一部とは重なる位置に設けられる。なお、内側筒状部16に凸状部又は凹状部のいずれかを設けるようにし、外側筒状部17にはこれらのいずれかと係合するように凹状部又は凸状部のいずれかを設けることができる。また、貫通孔21の形状、構造、寸法、数は種々様々に考えられ、詳細は省略するがその他の態様として図7に示すような貫通孔21が形成された外側筒状部17を使用することもできる。なお、図示の例はあくまで例示であり、特定の態様に限定することを意図するものではない。
【0041】
ここで、図5(a)に示すように、当該軸方向でみて、貫通孔21が当該軸方向に延伸する領域と、凸状部20が形成される領域とが重複する位置に設けられている。すなわち、本明細書においては、当該軸方向における位置が同じである場合であって、外側筒状部17の周方向でみて異なる周方向位置に設けられる凸状部20と貫通孔21が、当該周方向位置は異なっていても、当該軸方向において同じ若しくは重複する位置にある場合、「軸方向でみて重なる位置」にあると定義される。
【0042】
本発明の一実施形態に係るナットによれば、外側筒状部と内側筒状部との間の固定を確実に行いながらスムーズな回転を可能とするだけでなく、装飾性を大幅に向上させることが可能なナットを提供することが可能となる。より具体的には、従来の方法では、外側筒状部と内側筒状部との間の固定を行うために、接着又はネジ止めのために所定の軸方向長さに亘って、固定を行う領域を設ける必要があり、当該領域はほぼ周方向全体に亘って装飾のための貫通孔等の形成ができなくなってしまう(装飾性を犠牲にせざるを得ない)という問題が発生していた。これに対して、本発明の一実施形態に係るナットによれば、該外側筒状部17に形成された貫通孔21と凸状部20とが重なる位置若しくは少なくとも一部が重なる位置に設けることが可能となるため、装飾性向上のための貫通孔21を従来よりも更に広範な領域に設けることができ、外側筒状部と内側筒状部との間の固定を確実に行いながらも装飾性を大幅に高めることが可能となった。
【0043】
本発明の一実施形態に係るナット8において、凸状部と凹状部は、それぞれ2つ以上設けられる(図5の例では、外側筒状部17に2つの凸状部20、図6の例では、内側筒状部16に2つの凹状部19が設けられている)。ここで、図5に示すように、これらの2つの凸状部20は、周方向で略180度の間隔を隔てるようにして設けられているが、これらの位置に限定されるものではなく、これよりも大きな若しくは小さな角度を隔てるようにしても構わない。また、3つの凸状部20を設ける場合は、隣接する凸状部の間隔を周方向でみて略120度とすることができるが、これに限られない。凹状部10についても、上述と同様のことが言える。凸状部19及び凹状部20を形成する数や位置(周方向位置や軸方向位置)は種々様々に考えられ、特定の態様に限定することを意図するものではない。これにより、内外筒状部の確実な係止が可能となる。
【0044】
本発明の一実施形態に係るナット8は、既述の通り、内側筒状部16に凸状部が設けられ、外側筒状部17に凹状部が設けられるようにしてもよい。
【0045】
本発明の一実施形態に係るナット8において、凸状部20の形状、及び凹状部20の空間が占める形状は、例えば、直方体形状を有するように構成される。なお、直方体形状の場合、実際の加工上の制約(例えば、エンドミル加工による制約)から端部、端面又は角部が丸み付け又はR状に形成される場合もあり、必ずしも数学的に厳密なものではないことに留意されたい。例えば、凸状部20が、直方体形状であっても、ナット8の径方向へ突出する側の端面の角部が丸み付けされたり、また、ナット8の径方向で側面の外側の端部がR状に形成されてもよい。直方体形状の上面、側面が凸状若しくは凹状に湾曲して形成されてもよい。また、凸状部20は、直方体形状でなくても、例えば、ナット8の径方向の断面でみて台形形状若しくは逆台形形状であって、角部が適宜丸み付け又はR状に形成されてもよい。また、当該形状は、その他に、立方体等も考えられるが、形状、構造は種々様々に考えられ、図示の例はあくまで例示であり、特定の態様に限定することを意図するものではない。
【0046】
本発明の一実施形態に係るナット8において、立方体(例えば、直方体)である場合、凸状部20の長手方向の長さは、3mmから5mmの範囲の長さであり、凸状部20の短手方向の長さは、0.5mmから1.5mmの範囲の長さであり、凸状部20の高さは、0.3mmから1.0mmの範囲の高さであるように構成される。当該凸状部20の寸法は、種々様々に考えられ、図示の例はあくまで例示であり、特定の態様に限定することを意図するものではない。これにより、内外筒状部の確実な係止が可能となる。
【0047】
本発明の一実施形態に係るナット8において、立方体(例えば、直方体)である場合、凹状部19の長手方向の長さは、3mmから5mmの範囲の長さであり、凹状部19の短手方向の長さは、0.5mmから1.5mmの範囲の長さであり、凹状部19の高さは、0.3mmから1.0mmの範囲の高さであるように構成される。当該凹状部19の寸法は、種々様々に考えられ、図示の例はあくまで例示であり、特定の態様に限定することを意図するものではない。これにより、内外筒状部の確実な係止が可能となる。
【0048】
本発明の一実施形態に係るナット8において、内側筒状部16は、その外周面の当該軸方向のいずれかの端部(移動フード22とは反対側の端部)に、壁部27を備え、外側筒状部17は、該壁部27に当接するようにして該内側筒状部16に固定される(図3参照)。また、本発明の一実施形態に係るナット8において、ナット基部15は、段部29を備え、内側筒状部16及び外側筒状部17は、該段部29の側壁30に当接するようにして該ナット基部15に固定される(図3参照)。このようにして、内外筒状部の確実な係止が可能となる。
【0049】
また、図5(a)に示すように、本発明の一実施形態に係るナット8において、凸状部20は、内側筒状部16又は外側筒状部17の、移動フード22側の端部(図5(a)の紙面の左右方向の左側端部)からXのいずれかの範囲内に設けることができる。当該範囲は、例えば、当該端部から5mm迄の領域とすることができる。より望ましくは、当該範囲は、当該端部から3mm迄の領域とすることができる。このようにして、内外筒状部の確実な係止が可能となる。
【0050】
本発明の一実施形態に係るナット8において、外側筒状部17の外周面の表面積全体(貫通孔がない場合における外周面の表面積)における貫通孔21が占める領域の表面積は、外側筒状部17の外周面の、当該ナット8の外周面の少なくとも一部となる領域全体の表面積(貫通孔がない場合における外周面の表面積)に対して50%から80%の範囲となるようにされる。このようにして、内外筒状部の確実な係止が可能となる。
【0051】
本発明の一実施形態に係るナット8において、外側筒状部17の径方向厚さは、0.3mmから1.5mmの範囲の厚さであるように構成される。また、本発明の一実施形態に係るナット8において、外側筒状部17の径は、10mmから30mmの範囲の大きさであるように構成される。
【0052】
本発明の一実施形態に係る釣竿1は、上記いずれかのナット8を有する釣竿用リールシート9と、竿体2とを備えるように構成される。このようにして、外側筒状部と内側筒状部との間の固定を確実に行いながらスムーズな回転を可能とするだけでなく、装飾性を大幅に向上させることが可能なナットを有する釣竿用リールシートを備えた釣竿を提供することが可能となる。
【0053】
また、図2、3、4に示すように、本発明の一実施形態に係る釣竿用リールシート9は、リール脚6aが載置されるリール脚載置部12aが形成されたリールシート本体12と、該リールシート本体12の外面に案内され、該リールシート本体12の軸線方向に沿って移動可能に構成された移動フード22と、該リールシート本体12の外面に設けられ、該移動フード22を該軸線方向に移動させるためのナット8と、を備えた釣竿用リールシート9であって、該リールシート本体12の雄ネジ部18に螺合する移動用22の雌ネジ部24を内周面に有し、端部で該移動フード22に係止されるナット基部15と、凸状部(図示しない)又は凹状部19を有し、該ナット基部15の外側に固定される内側筒状部16と、該凸状部(図示しない)又は該凹状部19と係合する凹状部(図示しない)又は凸状部20を有し、これにより該内側筒状部16の外側に固定され、かつその外周面が前記ナット8の外周面の少なくとも一部となる外側筒状部17と、を備え、該外側筒状部17は、内外方向に貫通した貫通孔21を有し、該外側筒状部17の軸方向でみて、該貫通孔21の少なくとも一部と該凹状部(図示しない)又は該凸状部20の少なくとも一部とは重なる位置に設けられる。
【0054】
本発明の一実施形態に係る釣竿用リールシートによれば、外側筒状部と内側筒状部との間の固定を確実に行いながらスムーズな回転を可能とするだけでなく、装飾性を大幅に向上させることが可能なナットを備えた釣竿用リールシートを提供することが可能となる。
【0055】
次に、本発明の一実施形態に係るナットを使用した場合の外側筒状部と内側筒状部との間の接着強度(固定強度)を確認する試験(トルク試験)の結果を説明する。当該試験は、竿管保持部を有するトルクメーターを使用して、当該保持部に竿管を固定し、該竿管に取付けられたリールシートのリールシート本体に螺合されたナットを回転方向に力を掛けた際のトルクを測定し(トルクメーター使用)、5kgf・cmから100kgf・cmまでの広い範囲で接着強度(固定強度)に問題がないことが確認された。
【0056】
その結果、図4図7のいずれの外側筒状部を備えるナットを使用した場合であっても、外側筒状部と内側筒状部とが分離することはなく、良好な接着強度(固定強度)を保つことが判明した。このように、本発明の一実施形態に係るナットによれば、外側筒状部と内側筒状部との間の固定を確実に行うことができることが判明した。これにより、本発明の一実施形態に係るナットにより、外側筒状部と内側筒状部との間の固定を確実に行いながらスムーズな回転を可能とするだけでなく、装飾性を大幅に向上させることが可能となっている。
【0057】
本明細書で説明された各構成要素の寸法、材料、及び配置は、実施形態中で明示的に説明されたものに限定されず、この各構成要素は、本発明の範囲に含まれうる任意の寸法、材料、及び配置を有するように変形することができる。また、本明細書において明示的に説明していない構成要素を、説明した実施形態に付加することもできるし、各実施形態において説明した構成要素の一部を省略することもできる。
【符号の説明】
【0058】
1 釣竿
2 竿体
3 元竿
5 中竿
6 リール
6a リール脚
7 穂先竿
8 ナット
9 リールシート
10 釣糸ガイド
12 リールシート本体
12a リール脚載置面
14 固定フード
15 ナット基部
16 内側筒状部
17 外側筒状部
18 ネジ部(雄ネジ部)
19 凹状部
20 凸状部
21 貫通孔
22 移動フード
23 被係止部
24 雌ネジ部
25 係止部
26 フード本体
27 壁部
28 リール脚保持部
29 段部
30 側壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7