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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092205
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】給湯器
(51)【国際特許分類】
   F24H 1/14 20220101AFI20240701BHJP
   F24H 15/174 20220101ALI20240701BHJP
   F24H 15/215 20220101ALI20240701BHJP
   F24H 15/219 20220101ALI20240701BHJP
   F24H 15/32 20220101ALI20240701BHJP
   F24H 15/31 20220101ALI20240701BHJP
   F24H 15/365 20220101ALI20240701BHJP
【FI】
F24H1/14 B
F24H15/174
F24H15/215
F24H15/219
F24H15/32
F24H15/31
F24H15/365
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207971
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000112015
【氏名又は名称】株式会社パロマ
(74)【代理人】
【識別番号】100166017
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 和政
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 俊輝
【テーマコード(参考)】
3L034
【Fターム(参考)】
3L034BA25
3L034BB02
3L034CA03
(57)【要約】
【課題】燃焼の段階が高く切り替わっても出湯温度のオーバーシュートを抑えやすい技術を提供する。
【解決手段】給湯器1において、制御部61は、ガスバーナ部12が下位段階で燃焼しているときに要求インプットが燃焼中の当該下位段階の範囲の上限値を超えた場合、要求インプットを当該下位段階での要求インプットの中間値よりも低い変更値に変更して変更値に対応した供給量のガスをガスバーナ部12に供給するように調節部を調節する一時的動作を行った後、燃焼の段階を当該下位段階よりも高い段階に切り替えて要求インプットに対応した供給量のガスをガスバーナ部12に供給するように調節部を調節する切替後動作を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを燃焼させるガスバーナを有し、燃焼の段階が複数段階に切り替わるガスバーナ部と、
前記ガスバーナ部へ前記ガスを供給する経路をなし、前記ガスバーナ部の複数の領域に前記ガスを供給可能とされたガス供給管と、
前記ガス供給管に設けられ、前記ガスバーナ部の複数の領域の中から前記ガスの供給先を選択することにより前記燃焼の段階を切り替え且つ前記ガスバーナ部への前記ガスの供給量を調節する調節部と、
前記ガスバーナ部で前記ガスが燃焼して生じる排気によって加熱される伝熱管を備える熱交換器と、
外部から水を導入する水入口と前記伝熱管との間に設けられ、前記伝熱管に水を供給する経路をなす入水管と、
前記伝熱管の下流側に接続され、前記伝熱管から供給される湯を流す経路をなす出湯管と、
前記入水管又は前記出湯管を流れる水の温度を検出する温度検出部と、
予め設定された設定温度と前記温度検出部によって検出される温度とに基づいて前記ガスバーナ部での燃焼出力を示す値である要求インプットを算出し、前記要求インプットに対応した段階で前記ガスバーナ部を燃焼させ且つ前記要求インプットに対応した供給量の前記ガスを前記ガスバーナ部に供給するように前記調節部を制御する制御部と、
を備える給湯器であって、
複数の前記燃焼の段階のうちの最大段階を除く下位段階に対応付けて前記要求インプットの範囲が定められており、
前記制御部は、前記ガスバーナ部が前記下位段階で燃焼しているときに前記要求インプットが燃焼中の当該下位段階の前記範囲の上限値を超えた場合、前記要求インプットを当該下位段階での前記要求インプットの中間値よりも低い変更値に変更して前記変更値に対応した供給量の前記ガスを前記ガスバーナ部に供給するように前記調節部を調節する一時的動作を行った後、前記燃焼の段階を当該下位段階よりも高い段階に切り替えて前記要求インプットに対応した供給量の前記ガスを前記ガスバーナ部に供給するように前記調節部を調節する切替後動作を行う
給湯器。
【請求項2】
前記変更値は、前記下位段階に対応付けられた前記要求インプットの前記範囲の下限値である
請求項1に記載の給湯器。
【請求項3】
前記制御部は、前記変更値に対応した供給量の前記ガスを前記ガスバーナ部に供給するように前記調節部を調節して一定時間待機するように前記一時的動作を行った後、前記切替後動作を行う
請求項1又は請求項2に記載の給湯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、給湯器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の燃焼段を備えた給湯器が開示されている。この給湯器は、バーナと、熱交換器と、交換器の通水量を制御する通水量制御手段と、出湯管内の湯温を検出する温度検出手段と、を備える。更に、この給湯器は、温度検出手段から得られる検出温度を設定温度に一致させる出湯温制御を実行する運転制御手段を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-200123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の給湯器では、予め設定された設定温度や温度検出部によって検出される水温などに基づいてガスバーナ部での燃焼出力を示す値である要求インプットを算出し、要求インプットに対応した段階でガスバーナ部を燃焼させ且つ要求インプットに対応した供給量のガスをガスバーナ部に供給するように制御を行うことで、状況に適した段階で適切に燃焼を行いやすくなる。しかし、この種の給湯器では、要求インプットが急上昇し、段数を高くする必要が生じた場合、要求インプットを変更せずに段数だけを高くしてしまうと、出湯温度が設定温度よりも高くなりすぎるようなオーバーシュートが生じやすくなる。
【0005】
本開示の目的の一つは、燃焼の段階が高く切り替わっても出湯温度のオーバーシュートを抑えやすい技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一つである給湯器は、
ガスを燃焼させるガスバーナを有し、燃焼の段階が複数段階に切り替わるガスバーナ部と、
前記ガスバーナ部へ前記ガスを供給する経路をなし、前記ガスバーナ部の複数の領域に前記ガスを供給可能とされたガス供給管と、
前記ガス供給管に設けられ、前記ガスバーナ部の複数の領域の中から前記ガスの供給先を選択することにより前記燃焼の段階を切り替え且つ前記ガスバーナ部への前記ガスの供給量を調節する調節部と、
前記ガスバーナ部で前記ガスが燃焼して生じる排気によって加熱される伝熱管を備える熱交換器と、
外部から水を導入する入水口と、
前記水入口と前記伝熱管との間に設けられ、前記伝熱管に水を供給する経路をなす入水管と、
前記伝熱管の下流側に接続され、前記伝熱管から供給される湯を流す経路をなす出湯管と、
前記入水管又は前記出湯管を流れる水の温度を検出する温度検出部と、
予め設定された設定温度と前記温度検出部によって検出される温度とに基づいて前記ガスバーナ部での燃焼出力を示す値である要求インプットを算出し、前記要求インプットに対応した段階で前記ガスバーナ部を燃焼させ且つ前記要求インプットに対応した供給量の前記ガスを前記ガスバーナ部に供給するように前記調節部を制御する制御部と、
を備える給湯器であって、
複数の前記燃焼の段階のうちの最大段階を除く下位段階に対応付けて前記要求インプットの範囲が定められており、
前記制御部は、前記ガスバーナ部が前記下位段階で燃焼しているときに前記要求インプットが燃焼中の当該下位段階の前記範囲の上限値を超えた場合、前記要求インプットを当該下位段階での前記要求インプットの中間値よりも低い変更値に変更して前記変更値に対応した供給量の前記ガスを前記ガスバーナ部に供給するように前記調節部を調節する一時的動作を行った後、前記燃焼の段階を当該下位段階よりも高い段階に切り替えて前記要求インプットに対応した供給量の前記ガスを前記ガスバーナ部に供給するように前記調節部を調節する切替後動作を行う。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る技術は、燃焼の段階が高く切り替わっても出湯温度のオーバーシュートを抑えやすい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係る給湯器を概略的に例示する説明図である。
図2図2は、第1実施形態に係る給湯器で行われる出湯制御の流れを例示するフローチャートである。
図3図3は、第1実施形態に係る給湯器における、各燃焼段でのガス供給量(インプット要求量)と目標回転数との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下では、本開示の実施形態が列記されて例示される。なお、以下で例示される特徴は、矛盾しない組み合わせでどのように組み合わされてもよい。
【0010】
〔1〕ガスを燃焼させるガスバーナを有し、燃焼の段階が複数段階に切り替わるガスバーナ部と、
前記ガスバーナ部へ前記ガスを供給する経路をなし、前記ガスバーナ部の複数の領域に前記ガスを供給可能とされたガス供給管と、
前記ガス供給管に設けられ、前記ガスバーナ部の複数の領域の中から前記ガスの供給先を選択することにより前記燃焼の段階を切り替え且つ前記ガスバーナ部への前記ガスの供給量を調節する調節部と、
前記ガスバーナ部で前記ガスが燃焼して生じる排気によって加熱される伝熱管を備える熱交換器と、
外部から水を導入する入水口と、
前記水入口と前記伝熱管との間に設けられ、前記伝熱管に水を供給する経路をなす入水管と、
前記伝熱管の下流側に接続され、前記伝熱管から供給される湯を流す経路をなす出湯管と、
前記入水管又は前記出湯管を流れる水の温度を検出する温度検出部と、
予め設定された設定温度と前記温度検出部によって検出される温度とに基づいて前記ガスバーナ部での燃焼出力を示す値である要求インプットを算出し、前記要求インプットに対応した段階で前記ガスバーナ部を燃焼させ且つ前記要求インプットに対応した供給量の前記ガスを前記ガスバーナ部に供給するように前記調節部を制御する制御部と、
を備える給湯器であって、
複数の前記燃焼の段階のうちの最大段階を除く下位段階に対応付けて前記要求インプットの範囲が定められており、
前記制御部は、前記ガスバーナ部が前記下位段階で燃焼しているときに前記要求インプットが燃焼中の当該下位段階の前記範囲の上限値を超えた場合、前記要求インプットを当該下位段階での前記要求インプットの中間値よりも低い変更値に変更して前記変更値に対応した供給量の前記ガスを前記ガスバーナ部に供給するように前記調節部を調節する一時的動作を行った後、前記燃焼の段階を当該下位段階よりも高い段階に切り替えて前記要求インプットに対応した供給量の前記ガスを前記ガスバーナ部に供給するように前記調節部を調節する切替後動作を行う
給湯器。
【0011】
上記〔1〕の給湯器は、ガスバーナ部を燃焼中の下位段階から高い段階に切り替える場合に、一旦は燃焼中の下位段階において相対的に低い出力で燃焼させるように一時的動作を行った後、高い段階に切り替えて切替後動作を行うことができる。このようにすれば、切り替え前の下位段階から切替後の高い段階に切り替える場合に、切り替わりの完了前に加熱された湯水が伝熱管を通過する前に切替後の高い段階でも加熱されてしまうことに起因する出湯温度のオーバーシュートを抑制しやすくなる。
【0012】
〔2〕前記変更値は、前記下位段階に対応付けられた前記要求インプットの前記範囲の下限値である
〔1〕に記載の給湯器。
【0013】
上記〔2〕の給湯器は、切り替え前の下位段階から切替後の高い段階に切り替える場合に、切り替わり完了前に加熱された湯水が伝熱管を通過する前に切替後の高い段階でも加熱されてしまうことに起因する出湯温度のオーバーシュートをより一層抑制しやすくなる。
【0014】
〔3〕前記制御部は、前記変更値に対応した供給量の前記ガスを前記ガスバーナ部に供給するように前記調節部を調節して一定時間待機するように前記一時的動作を行った後、前記切替後動作を行う
〔1〕又は〔2〕に記載の給湯器。
【0015】
上記〔3〕の給湯器は、切り替え前の下位段階から切替後の高い段階に切り替える場合に、出力が抑えられた状態で一定時間待機するように一時的動作を行った後、切替後動作を行うことができるため、切替前の通常動作時に加熱された水が切替後動作を開始した時点で伝熱管内に多く残存していることを確実に抑えることができ、出湯温度のオーバーシュートをより一層抑制しやすくなる。
【0016】
<第1実施形態>
以下の説明は、第1実施形態に関する。
1.給湯器1の基本構成
図1に示される給湯器1は、給湯栓2などの出湯箇所へ湯を供給可能に構成されている。給湯器1は、燃焼室11を有し、燃焼室11内には、バーナ群12A,12B,12Cを備えたガスバーナ部12、一次熱交換器13、二次熱交換器14、電極15、イグナイター16、及びフレームロッド17などが配設されている。
【0017】
一次熱交換器13は、バーナ群12A,12B,12Cでの燃焼に伴って発生する高温の排気中から主に顕熱を回収する熱交換器である。一次熱交換器13は、伝熱管13Aを備え、伝熱管13Aには、入水管41から二次熱交換器14を介して供給された水が流入し、伝熱管13Aを流れた水は、出湯管43へと流入するようになっている。二次熱交換器14は、一次熱交換器13での熱交換に伴って温度が低下した排気中から主に潜熱を回収する熱交換器である。ドレン排水管18は、二次熱交換器14で発生したドレンを排出するための管であり、ドレン排水管18の下流端には中和器19が設けられている。
【0018】
給湯器1は、ファンモータ20及びファン21を有し、ファンモータ20によってファン21を回転駆動することにより、燃焼室11内へ空気を供給する。燃焼室11の上部には、排気トップ22が設けられ、排気トップ22を介して燃焼室11外への排気ができる構造とされている。燃焼室11には、周囲が異常な高温状態となったときに溶断することで給湯器1の作動を強制停止させる過熱防止装置23が付設されている。
【0019】
給湯器1は、バーナ群12A,12B,12Cへのガス供給路となるガス供給管31を備えている。ガス供給管31は、上流端側がガス供給源(例えば、都市ガス内管やプロパンガス用配管等)に接続された本管32と、本管32から複数に分岐した支管33A,33B,33Cとで構成されている。支管33A,33B,33Cの下流端にはノズル34A,34B,34Cが設けられ、各ノズル34A,34B,34Cを介してバーナ群12A,12B,12Cへガスを供給可能に構成されている。ガス供給管31の本管32には元電磁弁35、及びガス比例制御弁36が設けられ、支管33A,33B,33Cには切替電磁弁37A,37B,37Cが設けられている。
【0020】
給湯器1は、通水用配管として、二次熱交換器14への入水路をなす入水管41と、一次熱交換器13に設けられた伝熱管13Aからの出湯路をなす出湯管43と、入水管41の流路途中から分岐して出湯管43へと連通するバイパス管45とを備えている。入水管41は、その上流端側が水供給源(例えば、水道管)に接続され、入水管41の上流端側から下流端側に至る流路の途中には、上流端側から順に、上流側から下流側へと流れる水を濾過するストレーナー51、入水管41内を流れる水量を検出する水量センサ52、入水管41内を流れる水量を増減制御する水量制御モータ53、及び一次熱交換器13へ流れる水の温度を検出する入水温検出用サーミスタ54などが設けられている。入水路の途中には、凍結予防ヒーター55が設けられている。
【0021】
出湯管43は、その下流端側が出湯箇所(本実施形態においては給湯栓2のある箇所)に接続され、出湯管43の上流端側から下流端側に至る流路の途中には、上流端側から順に、一次熱交換器13から流出する湯の温度を検出する内胴出口湯温検出用サーミスタ56、出湯管43とバイパス管45の合流点よりも下流側において湯の温度を検出する出湯温検出用サーミスタ57、及び圧力逃がし弁付水抜栓58などが設けられている。バイパス管45には、バイパス管45内を流れる水量を増減制御するバイパス制御モータ59が設けられている。
【0022】
給湯器1は、制御部61と、リモートコントローラ62(以下、リモコン62ともいう)とを備えている。制御部61は、CPU,ROM,RAMなどを備えたマイクロコンピュータを内蔵しており、上述した各種センサ(フレームロッド17、入水温検出用サーミスタ54、内胴出口湯温検出用サーミスタ56、及び出湯温検出用サーミスタ57など)から情報を入力するとともに、上述した各種電磁弁(元電磁弁35、ガス比例制御弁36、切替電磁弁37A,37B,37Cなど)、各種モータ(ファンモータ20、水量制御モータ53、バイパス制御モータ59)、イグナイター16などを制御する。
【0023】
リモコン62は、利用者からの入力操作(例えば、様々な情報を入力する操作など)を受け付ける入力部と利用者に対する情報表示や音声出力を行う出力部などのユーザーインターフェースを備え、その入力部から入力された情報が制御部61へ伝達されるとともに、制御部61から伝達される情報に基づいて出力部から情報表示や音声出力を行う仕組みになっている。
【0024】
2.給湯器1の基本動作
以上のように構成された給湯器1においては、利用者が給湯栓2を開くと、水入口より流入した水は、水量センサ52、二次熱交換器14を経て一次熱交換器13へと向かう。このとき、水量センサ52からは、流速に応じた周波数の信号が出力され、この信号が規定周波数に達したことを制御部61が感知すると、制御部61はファンモータ20を制御してファン21を回転させる。制御部61は、水量センサ52の信号に基づいて、入水管41を流れる水の量(通水量)を検知する。
【0025】
ファン21が回転してプリパージ動作が行われた後、イグナイター16が作動し、電極15から放電する。続いて、元電磁弁35と切替電磁弁37A~37Cが開かれ、ガス比例制御弁36が緩点火動作となり、バーナ群12A~12Cに点火する。点火後、フレームロッド17にて炎を検知し、燃焼していることを確認したら緩点火動作を終了する。
【0026】
緩点火動作を終了すると、続いて温度制御が開始される。出湯温検出用サーミスタ57で検出した湯温と利用者が任意に設定する設定温度(例えば、利用者がリモコン62を操作することによって情報入力し、制御部61において登録された設定温度)との間に差があると、そのことを制御部61が判断し、ガス比例制御弁36及び切替電磁弁37A~37Cの開閉によって、ガス量を連続的に変化させて出湯温度を一定に保つように制御する。このとき、制御部61からは、ガス比例制御弁36によるガス量の変化に応じて、ファンモータ20へ信号が送られ、これにより、常にガス量と空気量の関係が所定の関係に保たれる。
【0027】
以上のような給湯が行われている状況において、利用者が給湯栓2を閉じると、水量センサ52からの周波数の信号がなくなり、入水管41を流れる水の量(通水量)が閾値未満となるので、制御部61は、元電磁弁35、切替電磁弁37A~37Cを閉じて消火し、ポストパージ動作に入る。その後、ポストパージ動作がタイムアップすると、ファン21は停止する。
【0028】
給湯時には、制御部61が、入水温検出用サーミスタ54によって検出される入水温度、利用者がリモコン62を操作して任意に設定可能な設定温度、及び水量センサ52によって検出される流量(入水管41の通水量)、に基づいて、上記設定温度での出湯に必要な燃焼出力(以下、インプットとも称する。)を算出する。そして、制御部61は、必要な燃焼出力(インプット)に対応するフィードフォワード制御(以下、FF制御と称する。)を行い、必要な燃焼出力(インプット)に対応する燃焼段を設定するとともに、ファン21の回転数、及びガス比例制御弁36の開度を設定する。
【0029】
上述の燃焼段は、切替電磁弁37A~37Cのいずれを開いていずれを閉じるか、その組み合わせによって切り替えられ、本実施形態の場合は、燃焼段を四段階に切り替え可能となっている。四段階ある燃焼段は、各段で対応可能な燃焼出力(インプット)の数値範囲が、図2に示すように異なる数値範囲となっている。各燃焼段におけるインプットは、ファン21の回転数、及びガス比例制御弁36の開度に応じて決まる。図2では、各燃焼段におけるインプットとファン21の回転数との対応関係がグラフ化されている。
【0030】
給湯器1の設計上、i番目(但し、iは1≦i<nを満たす整数。本実施形態の場合はn=4。)の燃焼段におけるインプットの上限値は、i+1番目の燃焼段における燃焼出力の下限値よりも大きく、i+1番目の燃焼段における燃焼出力の上限値よりも小さくなるように定められている。そのため、i番目の燃焼段で対応可能なインプットの数値範囲と、i+1番目の燃焼段で対応可能なインプットの数値範囲は、互いの一部が重複する数値範囲になっている。
【0031】
給湯器1では、上述のFF制御により、必要な燃焼出力(インプット)に対応する燃焼段が設定され、ファン21の回転数、及びガス比例制御弁36の開度が設定された後には、更に設定温度と出湯温度との温度差に基づいてフィードバック制御(以下、FB制御と称する。)が行われる。すなわち、設定温度と出湯温度との温度差に基づいて、この温度差が小さくなるようにファン21の回転数、及びガス比例制御弁36の開度の調整が行われる。
【0032】
3.給湯処理
制御部61は、例えば図2のような流れで給湯制御を行う。制御部61は、電源投入後に図2の給湯制御を実行し、ステップS11にて燃焼開始条件が成立したか否かを判断する。燃焼開始条件は、例えば「水量センサ52によって検出された水量(例えば単位時間当たりの水量)(以下、単に「水量」ともいう)が所定の閾値以上であること」であってもよいし、別の条件であってもよい。燃焼開始条件が成立するまでは待機状態となり、制御部61は、待機状態のときにはS11におけるNoの判断を繰り返す。
【0033】
制御部61は、ステップS11において燃焼開始条件が成立したと判断した場合(S11:Yes)、ステップS12にて点火処理を実行し、ガスバーナ部12に点火させる。制御部22Aは、ステップS12の点火処理の終了後、ステップS13にて燃焼終了条件が成立したか否かを判断する。燃焼終了条件は、例えば「水量センサ52によって検出された水量(例えば単位時間当たりの水量)が所定の閾値未満であること」であってもよいし、別の条件(給湯器1に対して燃焼の終了を指示する所定操作が行われたこと、燃焼を停止させる条件として予め定められた停止条件が成立したこと等)であってもよい。制御部61は、ステップS13において燃焼終了条件が成立していないと判断した場合(S13:No)、ステップS14において、ガス供給量(要求インプット)を算出する。制御部61は、ステップS14の実行時点又は実行直前での、水量センサ52によって検出された水量(入水量)と、目標温度として設定された設定温度と、サーミスタ57によって検出される温度(出湯温度)とに基づいて、公知の演算方法でガス供給量(要求インプット)を算出する。ガス供給量(要求インプット)の算出方法は、出湯温度を設定温度に近づけるような演算(例えば公知のフィードバック演算)であればよく、例えば、特開2010-117053号公報に開示されるような方法であってもよく、特開2018-200123号公報に開示されるような方法であってもよく、その他の公知の方法であってもよい。
【0034】
このように、制御部61は、ステップS14では、予め設定された設定温度と、サーミスタ57(温度検出部)によって検出される温度と、に基づいてガスバーナ部12での燃焼出力を示す値であるガス供給量(要求インプット)を算出する。更に、制御部61は、ステップS14の処理で算出された上記ガス供給量(要求インプット)に基づいて、目標回転数も決定する。
【0035】
代表例では、ガスバーナ部12を構成するバーナ群12A,12B,12Cは、互いに数が異なる複数のバーナからなる。バーナ群12A,12B,12Cのうち、バーナ群12Aのガスバーナの数が最も多く、バーナ群12Cのガスバーナの数が最も少なく、バーナ群12Bのガスバーナの数は、バーナ群12Aよりも少なく、バーナ群12Cよりも多い。出湯温制御では、制御部61は、バーナの数が最小となるバーナ群12Cのみの単独燃焼を1段、次にバーナの数が多いバーナ群12Bのみの単独燃焼を2段、次にバーナの数が多くなるバーナ群12B,12Cの同時燃焼を3段、次にバーナの数が多くなるバーナ群12A,12Bの同時燃焼を4段として、必要なガス供給量(要求インプット)に応じてガスバーナ部12の燃焼の段階(以下、燃焼段階又は燃焼段ともいう)を4段階に切り替える切替制御を実行する。
【0036】
代表例では、図3のように、各燃焼段ごとに、ガス供給量(要求インプット)とファンの目標回転数との対応関係が定められており、いずれの燃焼段の上記対応関係においても、ガス供給量(要求インプット)が大きいほど目標回転数を大きくするように定めている。例えば、1段目の燃焼段の要求インプットの上限値(第1上限値)は、2段目の燃焼段の要求インプットの下限値(第2下限値)よりも大きく、2段目の燃焼段の要求インプットの上限値(第2上限値)は、3段目の燃焼段の要求インプットの下限値(第3下限値)よりも大きく、3段目の燃焼段の要求インプットの上限値(第3上限値)は、4段目の燃焼段の要求インプットの下限値(第4下限値)よりも大きい。1段目の燃焼段の要求インプットの下限値(第1下限値)は、2段目の燃焼段の要求インプットの下限値(第2下限値)よりも小さく、2段目の燃焼段の要求インプットの下限値(第2下限値)は、3段目の燃焼段の要求インプットの下限値(第3下限値)よりも小さく、3段目の燃焼段の要求インプットの下限値(第3下限値)は、4段目の燃焼段の要求インプットの下限値(第4下限値)よりも小さい。このように、複数の燃焼の段階のうちの最大段階(4段目)を除く下位段階(1~3段目)に対応付けて要求インプットの範囲が定められており、最大段階(4段目)にも要求インプットの範囲が定められている。
【0037】
制御部61は、ステップS14で算出したガス供給量が、このステップS14の時点での燃焼段のガス供給量の範囲内である場合、処理をステップS16に進め、通常燃焼動作を行う。制御部61は、処理をステップS16に進める場合、燃焼段を切り替えず、ステップS14で算出されたガス供給量(要求インプット)で特定される供給量のガスを供給するようにガス比例制御弁(調節部)を制御する。なお、この場合、現在の燃焼段に対応付けて定められた要求インプットと目標回転数との対応関係に基づいてファン21の目標回転数も決定する。例えば、ステップS14の時点での燃焼段が2段目であり、ステップS14で算出されたガス供給量が2段目のガス供給量の範囲の下限値(第2下限値)以上且つ上限値(第2上限値)以下である場合、燃焼段を2段目から切り替えず、ステップS14の時点での燃焼段(2段目)に対応付けて定められたガス供給量と目標回転数との対応関係(図3における符号L2の関係を示す演算式等の情報)に基づき、当該対応関係においてステップS14で算出されたガス供給量に対応付けられた目標回転数を決定する。
【0038】
本実施形態では、ガス比例制御弁36、切替電磁弁37A,37B,37Cが調節部の一例に相当する。制御部61は、ステップS14で算出したガス供給量(要求インプット)に対応した段階でガスバーナ部12を燃焼させ且つこの要求インプットに対応した供給量のガスをガスバーナ部12に供給するように調節部を制御する。
【0039】
制御部61は、ステップS14で算出したガス供給量(要求インプット)が、このステップS14の時点での燃焼段のガス供給量の範囲外である場合、処理をステップS17に進め、切替燃焼動作を行う。制御部61は、ステップS17の切替燃焼動作では、ステップS14の時点での燃焼段から、ステップS14で算出されたガス供給量(要求インプット)に対応する燃焼段へと燃焼の段階(段数)を切り替え、切替後の新たな段数で上記ガス供給量(要求インプット)での燃焼を行う。
【0040】
制御部61は、ガスバーナ部12が下位段階(1~3段目)で燃焼しているときにステップS14で算出された要求インプットが燃焼中の当該下位段階の範囲の上限値を超えた場合、ステップS17で切替燃焼動作を行う際には、直近のステップS14で算出された要求インプットに代えて、当該下位段階での要求インプットの中間値よりも低い変更値(具体的には、当該下位段階での要求インプットの範囲の下限値)を用い、当該変更値に対応した供給量のガスをガスバーナ部12に供給するように上記調節部を調節する一時的動作を行う。この一時的動作の際には、直近のステップS14の時点での燃焼の段階(下位段階)を維持しつつ、上記変更値のガス供給量のガスをガスバーナ部12に一定時間供給するように一時的動作を行う。そして、制御部61は、このように一時的動作を行った後、燃焼の段階を当該下位段階(一時的動作を行った燃焼の段階)よりも高い段階に切り替え、直近のステップS14で算出したガス供給量(要求インプット)に対応した供給量のガスをガスバーナ部12に供給するように上記調節部を調節する切替後動作を行う。
【0041】
例えば、ステップS14の開始時点でガスバーナ部12が3段目で燃焼しているときにステップS14で算出された要求インプットが燃焼中の3段目の要求インプットの範囲(図3のL3の範囲)の上限値を超えて4段目の要求インプットの範囲内となった場合、ステップS17で切替燃焼動作を行う際には、要求インプットを3段目の要求インプットの中間値よりも低い変更値(具体的には、3段目の要求インプットの範囲の下限値(第3下限値))に変更して当該変更値に対応した供給量のガスをガスバーナ部12に供給するように上記調節部を調節する一時的動作を行う。この一時的動作は、一定時間継続させることが望ましい。そして、制御部61は、このように一時的動作を一定時間行った後、燃焼の段階を3段目よりも高い4段目に切り替えて、直近のステップS14で算出された要求インプットに対応した供給量のガスをガスバーナ部12に供給するように上記調節部を調節する切替後動作を行う。
【0042】
なお、上述の例では、一時的動作を行う場合、一時的動作に続いて切替燃焼動作を行うが、一時的動作の後、切替後動作の前に、一時的動作の燃焼の段階(燃焼段)又は一時的動作の燃焼段よりも大きく切替後動作の燃焼段よりも小さい燃焼段で燃焼を行う中間動作を行い、中間動作の後に切替後動作に切り替えるようにしてもよい。この中間動作は、中間動作の燃焼段での中間値(当該燃焼段でのガス供給量の下限値と上限値とを加算して2で割った値)の供給量のガスをガスバーナ部12に供給するように上記調節部を調節するとよい。
【0043】
制御部22Aは、ステップS13において燃焼終了条件が成立したと判断した場合、処理をステップS19に進め、元電磁弁35及び切替電磁弁37A,37B,37Cを閉塞状態とし、燃焼動作を停止させる。
【0044】
4.効果の例
給湯器1は、ガスバーナ部12を燃焼中の下位段階から高い段階に切り替える場合に、一旦は燃焼中の下位段階において相対的に低い出力で燃焼させるように一時的動作を行った後、高い段階に切り替えて切替後動作を行うことができる。このようにすれば、切り替え前の下位段階から切替後の高い段階に切り替える場合に、切り替わりの完了前に加熱された湯水が伝熱管を完全に通過する前に切替後の高い段階でも加熱されてしまうことに起因する出湯温度のオーバーシュートを抑制しやすくなる。
【0045】
給湯器1では、変更値が上記下位段階に対応付けられた要求インプットの範囲の下限値であるため、出湯温度のオーバーシュートをより一層抑制しやすくなる。
【0046】
給湯器1は、切り替え前の下位段階から切替後の高い段階に切り替える場合に、出力が抑えられた状態で一定時間待機するように一時的動作を行った後、切替後動作を行うことができるため、切替前の通常動作時に加熱された水が切替後動作を開始した時点で伝熱管内に多く残存していることを確実に抑えることができ、出湯温度のオーバーシュートをより一層抑制しやすくなる。
【0047】
<他の実施形態>
本発明は、上記記述及び図面によって説明された実施形態に限定されるものではない。例えば、上述又は後述の実施形態の特徴は、矛盾しない範囲であらゆる組み合わせが可能である。また、上述又は後述の実施形態のいずれの特徴も、必須のものとして明示されていなければ省略することもできる。さらに、上述された実施形態は、次のように変更されてもよい。
【0048】
上記実施形態では、変更値は、変更直前の下位段階に対応付けられた要求インプットの範囲の下限値であったが、上記変更値は、変更直前の下位段階に対応付けられた要求インプットの範囲の中間値(当該下位段階に対応付けられた要求インプットの範囲の上限値と下限値とを加算して2で割った値)よりも低い値であればよく、例えば、上記変更値が上記中間値よりも小さい値であって且つ上記下限値よりも若干大きい値であってもよい。
【0049】
なお、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、今回開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示された範囲内又は特許請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0050】
1 :給湯器
12 :ガスバーナ部
12A :バーナ
12B :バーナ
12C :バーナ
13 :一次熱交換器(熱交換器)
13A :伝熱管
31 :ガス供給管
36 :ガス比例制御弁(調節部)
37A :切替電磁弁(調節部)
37B :切替電磁弁(調節部)
37C :切替電磁弁(調節部)
41 :入水管
43 :出湯管
54 :入水温検出用サーミスタ(温度検出部)
56 :内胴出口湯温検出用サーミスタ(温度検出部)
57 :出湯温検出用サーミスタ(温度検出部)
図1
図2
図3