(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092214
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】ステープラ
(51)【国際特許分類】
B27F 7/19 20060101AFI20240701BHJP
B25C 5/02 20060101ALN20240701BHJP
B25C 5/15 20060101ALN20240701BHJP
【FI】
B27F7/19
B25C5/02 Z
B25C5/15
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022207982
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006301
【氏名又は名称】マックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】進藤 拓志
(72)【発明者】
【氏名】亀田 太志
【テーマコード(参考)】
3C054
3C068
【Fターム(参考)】
3C054CB04
3C054CC06
3C054CD05
3C054CE12
3C068AA04
3C068BB01
3C068CC06
3C068EE15
(57)【要約】
【課題】クリンチャの外形の小型化を図ることができるステープラを提供する。
【解決手段】電動ステープラは、軸部511と、軸部511よりも先端側に位置するステープル当接部512と、軸部511よりも基端側に位置するバネ当接部513とを有するとともに、軸部511を支点に回動可能に構成され、回動によりステープル当接部512とバネ当接部513とがそれぞれ反対方向に回動する一対の第1クリンチャ510及び第2クリンチャ520と、第1クリンチャ510と第2クリンチャ520との間に介在し第1クリンチャ510と第2クリンチャ520とを仕切る仕切り板530と、一端側が仕切り板530に固定され、他端側がバネ当接部513に当接可能な第1板バネ540とを備える。
【選択図】
図5A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部と、前記軸部よりも先端側に位置するステープル当接部と、前記軸部よりも基端側に位置するバネ当接部とを有するとともに、前記軸部を支点に回動可能に構成され、回動により前記ステープル当接部と前記バネ当接部とがそれぞれ反対方向に回動する一対のクリンチャと、
前記一対のクリンチャの間に介在し、一方の前記クリンチャと他方の前記クリンチャとを仕切る仕切り板と、
一端側が前記仕切り板に固定され、他端側が前記バネ当接部に当接可能な弾性部材と
を備えるステープラ。
【請求項2】
前記弾性部材は、板バネであり、前記クリンチャが前記軸部を支点に所定角度以上回動すると、前記バネ当接部に当接する
請求項1に記載のステープラ。
【請求項3】
前記弾性部材、前記バネ当接部、前記軸部及び前記ステープル当接部は、前記仕切り板の長手方向に沿って順に配置される
請求項2に記載のステープラ。
【請求項4】
前記仕切り板は、ステープルの脚部を前記ステープル当接部に誘導する拾い込み部を有し、
前記拾い込み部は、前記クリンチャが前記所定角度回動した位置にあるとき、前記ステープル当接部よりも手前に位置する
請求項3に記載のステープラ。
【請求項5】
前記クリンチャの外側を囲むケースを備え、
前記ケースは、ステープルの脚部を前記ステープル当接部に誘導する拾い込み部を有し、
前記拾い込み部は、前記クリンチャが前記所定角度回動した位置にあるとき、前記クリンチャの前記ステープル当接部よりも手前に位置する
請求項3に記載のステープラ。
【請求項6】
前記板バネは、前記仕切り板と一体に形成される
請求項4に記載のステープラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ステープラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ドライバ機構により用紙束にステープルを打ち込み、用紙束を貫通したステープルの脚部をクリンチャ部によって折り曲げることで綴じ処理を自動で行う電動ステープラが知られている。電動ステープラは、例えば、用紙に画像を印刷する画像形成装置内や後処理を実行する後処理装置内に実装される。
【0003】
近年では、画像形成装置、後処理装置の小型化が求められている。これに伴い、後処理装置内に実装される電動ステープラの小型化が求められている。特に電動ステープラの高さ寸法は、後処理装置内の用紙の搬送経路を決定する要因の一つとなる。
【0004】
特許文献1には、ステープルの脚部に当接する2つのアンビル部材と、垂直に変位してアンビル部材を回動させる駆動部材を備えたクリンチャの構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のクリンチャ構造では、駆動部材の上方にアンビル部材が配置されているため、クリンチャの高さ方向の寸法が大きくなる。このような場合に、クリンチャ構造の外側を通過する用紙の搬送経路を採用すると、クリンチャの高さ寸法に応じて用紙の搬送経路の位置(高さ方向)が決まるので、画像形成装置や後処理装置が大型化してしまうという問題があった。
【0007】
そこで、本開示は、上記課題を解決するために、クリンチャ構造の小型化を図ることができるステープラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係るステープラは、軸部と、前記軸部よりも先端側に位置するステープル当接部と、前記軸部よりも基端側に位置するバネ当接部とを有するとともに、前記軸部を支点に回動可能に構成され、回動により前記ステープル当接部と前記バネ当接部とがそれぞれ反対方向に回動する一対のクリンチャと、前記一対のクリンチャの間に介在し、一方の前記クリンチャと他方の前記クリンチャとを仕切る仕切り板と、一端側が前記仕切り板に固定され、他端側が前記バネ当接部に当接可能な弾性部材とを備える。
つまり、ステープラは、ステープル当接部と軸部とバネ当接部が順に配置されたクリンチャを備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、クリンチャの先端側にステープル当接部を設け基端側にバネ当接部を設けるので、クリンチャ部の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施の形態に係る電動ステープラの前方斜視図である。
【
図2】本実施の形態に係る電動ステープラの後方斜視図である。
【
図3A】本実施の形態に係るクリンチャ部を示す斜視図である。
【
図3B】本実施の形態に係るクリンチャ部の平面図である。
【
図3C】本実施の形態に係るクリンチャ部の底面図である。
【
図4A】本実施の形態に係る
図3Bに示すクリンチャ部のA-A’線断面図である。
【
図4B】本実施の形態に係る
図4Aに示すクリンチャ部要部断面図である。
【
図5A】本実施の形態に係るケースを取り外したクリンチャ部の前方斜視図である。
【
図5B】本実施の形態に係るケースを取り外したクリンチャ部の後方斜視図である。
【
図6】本実施の形態に係るクリンチャ部の仕切り板を示す斜視図である。
【
図7】本実施の形態に係るクリンチャ部のケースを示す斜視図である。
【
図8A】本実施の形態に係るテーブルがホームポジションにある場合における電動ステープラの動作の一例を示す図、
【
図8B】本実施の形態に係るテーブルがホームポジションにある場合におけるクリンチャ部の動作の一例を示す図である。
【
図9A】本実施の形態に係るクランプ工程を行う場合における電動ステープラの動作の一例を示す図である。
【
図9B】本実施の形態に係るクランプ工程を行う場合におけるクリンチャ部の動作の一例を示す図である。
【
図10A】本実施の形態に係る貫通工程を行う場合における電動ステープラの動作の一例を示す図である。
【
図10B】本実施の形態に係る貫通工程を行う場合におけるクリンチャ部の動作の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0012】
[電動ステープラ1の構成例]
図1は、本実施の形態に係る電動ステープラ1の前方斜視図である。
図2は、本実施の形態に係る電動ステープラ1の後方斜視図である。
【0013】
本実施の形態に係る電動ステープラ1は、例えば、用紙に所定の画像を形成する画像形成装置内や、画像形成装置の用紙搬送方向の下流側に接続される後処理装置内に実装される。電動ステープラ1は、画像形成装置により所定の画像が形成された複数枚の用紙からなる用紙束に対してステープルを用いて綴じ処理を実行する。具体的には、電動ステープラ1は、用紙束をクランプ(挟持)するクランプ工程と、クランプした用紙束にステープルを貫通させる貫通工程と、用紙束を貫通したステープルの脚部を折り曲げるクリンチ工程と、を順に実行して用紙束に対して綴じ処理を行う。
【0014】
電動ステープラ1は、
図1及び
図2に示すように、ステープルが収容されるカートリッジ20と、カートリッジ20が着脱可能に取り付けられるステープラ本体10と、ステープラ本体10に対して変位可能に設けられるレバー60と、を備える。また、電動ステープラ1は、ステープルを用紙束に向けて打ち出すドライバ機構30と、ドライバ機構30に対して昇降可能なテーブル40と、ドライバ機構30によって打ち出されて用紙を貫通したステープルの脚部を折り曲げるクリンチャ部50と、を備える。
【0015】
なお、本実施の形態において、ドライバ機構30が設けられる側を電動ステープラ1の前側とし、レバー60が設けられる側を電動ステープラ1の後側とする。また、テーブル40及びクリンチャ部50が設けられる側を電動ステープラ1の上側とし、その反対側を下側とする。
【0016】
ステープラ本体10のドライバ機構30の上方の位置であって、テーブル40と対向する位置には、用紙束が載置される載置台70が設けられている。ドライバ機構30は、ステープラ本体10内の前部側に配置され、駆動機構32の駆動に基づいて載置台70に対して上下移動可能に構成される。ドライバ機構30は、図示しないフォーミングプレートによりステープルの両端を折り曲げて略U字状に成形するとともに、略U字状に成形したステープルを用紙束に向けて打ち出す。
【0017】
テーブル40は、ドライバ機構30及び載置台70の上側に対向して配置される。テーブル40は、フレーム12を介して駆動機構32に接続され、駆動機構32の駆動に基づいて載置台70に対して接近方向及び離間方向に移動可能に構成される。テーブル40の載置台70に対向する面(部位)は、載置台70との間で用紙束をクランプするクランプ部80として機能する。テーブル40及びクランプ部80は、用紙束をクランプするクランプ位置と用紙束をクランプしないホームポジションとの間を移動可能に構成される。
【0018】
クリンチャ部50は、テーブル40の前端部であって、ドライバ機構30に対向する位置に配置されている。クリンチャ部50は、ドライバ機構30との協働で、用紙束を貫通したステープルの脚部を押圧して内側に折り曲げることにより用紙束をステープルにより綴じる。なお、クリンチャ部50の構成等については後述する。
【0019】
カートリッジ20は、ステープラ本体10の後部に設けられる装着部110に着脱可能に取り付けられる。カートリッジ20内には、シート状の連結ステープルが積載されたリフィル300が収容される。リフィル300内の連結ステープルは、ドライバ機構30の図示しない送り出し機構によりフォーミング位置に搬送される。
【0020】
[クリンチャ部50の構成例]
次に、クリンチャ部50の構成等について詳細に説明する。
図3Aは本実施の形態に係るクリンチャ部50を示す斜視図、
図3Bはクリンチャ部50の平面図、
図3Cはクリンチャ部50の底面図である。
図4Aは
図3Bに示すクリンチャ部50のA-A’線断面図、
図4Bは
図4Aの要部断面図である。
図5Aはケース550を取り外したクリンチャ部50の前方斜視図、
図5Bはケース550を取り外したクリンチャ部50の後方斜視図である。
図6はクリンチャ部50の仕切り板530を示す斜視図である。
図7はクリンチャ部50のケース550を示す斜視図である。
【0021】
クリンチャ部50は、
図3A及び
図5A等に示すように、一対の第1クリンチャ510及び第2クリンチャ520と、第1クリンチャ510と第2クリンチャ520とを仕切る仕切り板530と、第1クリンチャ510を付勢可能な第1板バネ540と、第2クリンチャ520を付勢可能な第2板バネ542と、これらを収容するケース550とを備える。
【0022】
第1クリンチャ510は、細長の平板形状からなり、仕切り板530の前面に平面的に重なるように配置される。第1クリンチャ510は、第1クリンチャ510の基端側に設けられる軸部511と、軸部511よりも先端側に位置するステープル当接部512と、軸部511よりも基端側に位置するバネ当接部513と、第1クリンチャ510の先端部から上方に突出する被押圧部514とを有する。
【0023】
軸部511は、
図5Aに示すように、第1クリンチャ510を厚み方向に貫通する軸孔を有する。軸部511には、ケース550の前壁550aの内面に形成された第1支持軸551が係合される。これにより、第1クリンチャ510は第1支持軸551周りに回動可能に支持され、第1クリンチャ510が軸部511を支点に回動すると、ステープル当接部512とバネ当接部513とがそれぞれ反対方向に回動する。
【0024】
ステープル当接部512は、第1クリンチャ510の下面の一部により構成され、用紙束を貫通したステープルの一方の脚部を受けて折り曲げる。ステープル当接部512は、クランプ工程、貫通工程時に斜め上方に傾斜した開位置に移動し、クリンチ工程時、ホームポジション時に仕切り板530の長手方向に沿った略水平方向の閉位置に移動する。
【0025】
バネ当接部513は、第1クリンチャ510の基端部から外側に突出している。バネ当接部513は、第1板バネ540の下面に当接可能であり、クランプ工程時に第1板バネ540に当接することで下方に付勢され、反対側のステープル当接部512側を上方に移動させる。また、バネ当接部513は、第1クリンチャ510のステープル当接部512がステープルの脚部によって押し上げられて第1クリンチャ510が回動したときに、クランプ部80の裏面に当接することで第1クリンチャ510の回動を規制するストッパとしても機能する。本実施の形態では、バネ当接部513の上面が第1板バネ540の下面と当接し、バネ当接部513の下面が、クランプ部80の裏面と当接する。
【0026】
第2クリンチャ520は、細長の平板形状からなり、第1クリンチャ510の先端側を基準にして対称に配置されるとともに仕切り板530の後面に平面的に重なるように配置される。第2クリンチャ520は、第2クリンチャ520の基端側に設けられる軸部521と、軸部521よりも先端側に位置するステープル当接部522と、軸部521よりも基端側に位置するバネ当接部523と、第2クリンチャ520の先端部から上方に突出する被押圧部524とを有する。
【0027】
軸部521は、
図5Bに示すように、第2クリンチャ520を厚み方向に貫通する軸孔を有する。軸部521には、ケース550の後壁550bの内面に形成された第2支持軸552が係合される。これにより、第2クリンチャ520は、第2支持軸552周りに回動可能に構成される。第2クリンチャ520が軸部521を支点に回動すると、ステープル当接部522とバネ当接部523とがそれぞれ反対方向に回動する。
【0028】
ステープル当接部522は、第2クリンチャ520の下面の一部により構成され、用紙束を貫通したステープルの他方の脚部を受けて折り曲げる。ステープル当接部522は、クランプ工程、貫通工程時に斜め上方に傾斜した開位置に移動し、クリンチ工程時、ホームポジション時に仕切り板530の長手方向に沿った略水平方向の閉位置に移動する。
【0029】
バネ当接部523は、第2クリンチャ520の基端部から外側に突出している。バネ当接部523は、第2板バネ542の下面に当接可能であり、クランプ工程時に第2板バネ542に当接することで下方に付勢され、反対側のステープル当接部522側を上方に移動させる。また、バネ当接部523は、第2クリンチャ520のステープル当接部522がステープルの脚部によって押し上げられて第2クリンチャ520が回動したときに、クランプ部80の裏面に当接することで第2クリンチャ520の回動を規制するストッパとしても機能する。本実施の形態では、バネ当接部523の上面が第2板バネ542の下面と当接し、バネ当接部523の下面が、クランプ部80の裏面と当接する。
【0030】
仕切り板530は、
図3A及び
図6等に示すように、第1クリンチャ510等よりも長い細長の平板からなり、第1クリンチャ510と第2クリンチャ520との間に介在される。仕切り板530は、用紙束を貫通したステープルの一方の脚部を第1クリンチャ510に誘導する第1拾い込み部535と、用紙束を貫通したステープルの他方の脚部を第2クリンチャ520に誘導する第2拾い込み部536とを有する。
【0031】
第1拾い込み部535は、仕切り板530の第1クリンチャ510と対向する面であって、その下端から上方に向かって第1クリンチャ510に徐々に近づく方向に傾斜する傾斜面を有する。第1拾い込み部535は、用紙束を貫通する一方の脚部の上方に位置し、下側から上昇する用紙束を貫通したステープルの一方の脚部を傾斜面により受けてスライドさせることで第1クリンチャ510のステープル当接部512に誘導する。クランプ工程時において、第1拾い込み部535の傾斜面の上端の位置P1は、
図4A及び
図4Bに示すように、第1板バネ540の付勢により傾斜する第1クリンチャ510のステープル当接部512の位置P2よりも下方(手前)に位置している。これは、第1拾い込み部535が第1クリンチャ510のステープル当接部512よりも下方に位置する場合に、第1クリンチャ510と仕切り板530との間に隙間があると、用紙束を貫通したステープルの一方の脚部が隙間に挿入して抜けなくなってしまい、綴じ不良が発生する場合があるからである。本実施の形態では、ステープルが下方から上方に向かって打ち込まれるため、第1拾い込み部535の傾斜面の上端の位置P1は、ステープル当接部512の位置P2よりも下方に位置しているが、下方に限定するものではなく、ステープルが打ち込まれる方向の手前側であればよい。
【0032】
第2拾い込み部536は、
図4A及び
図4Bに示すように、仕切り板530の第2クリンチャ520と対向する面であって、その下端から上方に向かって第2クリンチャ520に徐々に近づく方向に傾斜する傾斜面を有する。第2拾い込み部536は、用紙束を貫通する他方の脚部の上方に位置し、下側から上昇する用紙束を貫通したステープルの他方の脚部を傾斜面により受けてスライドさせることで第2クリンチャ520のステープル当接部522に誘導する。クランプ工程時において、第2拾い込み部536の傾斜面の上端の位置P1は、第1拾い込み部535と同様に、第2板バネ542の付勢により傾斜する第2クリンチャ520のステープル当接部522の位置P2よりも下方(手前)に位置している。本実施の形態では、ステープルが下方から上方に向かって打ち込まれるため、第2拾い込み部536の傾斜面の上端の位置P1は、ステープル当接部522の位置P2よりも下方に位置しているが、下方に限定するものではなく、ステープルが打ち込まれる方向の手前側であればよい。
【0033】
第1板バネ540は、
図5A及び
図6等に示すように、一端側が仕切り板530の一端側の側壁530aに固定され、他端側が第1クリンチャ510のバネ当接部513に当接可能な位置まで延びる。本実施の形態では、第1板バネ540は、仕切り板530の一端側の側壁530aの下端部を内側に折り曲げる加工することで仕切り板530に一体形成されている。なお、第1板バネ540は、仕切り板530とは別部品によって構成してもよい。第1板バネ540は、弾性変形可能であり、第1クリンチャ510のバネ当接部513が当接されると、バネ当接部513を下方に付勢する。なお、第1板バネ540は弾性部材の一例である。
【0034】
第2板バネ542は、
図5B及び
図6等に示すように、一端側が仕切り板530の他方側の側壁530bに固定され、他端側が第2クリンチャ520のバネ当接部523に当接可能な位置まで延びる。本実施の形態では、第2板バネ542は、仕切り板530の他端側の側壁530bの下端部を内側に折り曲げる加工することで仕切り板530に一体形成されている。なお、第2板バネ542は、仕切り板530とは別部品によって構成してもよい。第2板バネ542は、弾性変形可能であり、第2クリンチャ520のバネ当接部523が当接されると、バネ当接部523を下方に付勢する。なお、第2板バネ542は弾性部材の一例である。
【0035】
ケース550は、
図3A、
図4A及び
図7に示すように、側面形状が略逆U字状であり、第1クリンチャ510、第2クリンチャ520及び仕切り板530を覆う。ケース550の前壁550aの内面(仕切り板530に対向する面)には、
図7に示すように、第1クリンチャ510を回動可能に支持する第1支持軸551が形成される。第1支持軸551は、前壁550aの内面から突出し、第1クリンチャ510の前側から第1支持軸551に係合可能である。
【0036】
ケース550の後壁550bの内面(仕切り板530に対向する面)には、
図7に示すように、第2クリンチャ520を回動可能に支持する第2支持軸552が形成される。第2支持軸552は、後壁550bの内面から突出し、第2クリンチャ520の後側から第2支持軸552に係合可能である。
【0037】
ケース550の上壁550cには、開口部550dが形成される。開口部550dの下方には第1クリンチャ510及び第2クリンチャ520が配置される。これにより、第1クリンチャ510の被押圧部514及び第2クリンチャ520の被押圧部524は、第1クリンチャ510及び第2クリンチャ520の回動に応じて、開口部550dから突出可能となっている。
【0038】
また、ケース550の前壁550aの内面であって、第1クリンチャ510の第1拾い込み部535と対向する位置には、
図4B及び
図7に示すように、第3拾い込み部555が形成される。第3拾い込み部555は、ケース550の下端から上方に向かって第1クリンチャ510に徐々に近づく方向に傾斜する傾斜面を有する。第3拾い込み部555は、下側から上昇する用紙束を貫通した一方の脚部の先端を受け、そのステープルの一方の脚部を傾斜面に沿ってスライドさせることで第1クリンチャ510のステープル当接部512に誘導する。第3拾い込み部555の傾斜面の上端の位置は、クランプ工程時における第1クリンチャ510のステープル当接部512の位置よりも下方に位置している。
【0039】
また、ケース550の前壁550aの内面であって、第1クリンチャ510の第2拾い込み部536と対向する位置には、
図7に示すように、第4拾い込み部556が形成される。第4拾い込み部556は、ケース550の下端から上方に向かって第2クリンチャ520に徐々に近づく方向に傾斜する傾斜面を有する。第4拾い込み部556は、下側から上昇する用紙束を貫通した他方の脚部の先端を受け、そのステープルの他方の脚部を傾斜面に沿ってスライドさせることで第2クリンチャ520のステープル当接部522に誘導する。第4拾い込み部556の傾斜面の上端の位置は、第3拾い込み部555と同様に、クランプ工程時における第2クリンチャ520のステープル当接部522の位置よりも下方に位置している。
【0040】
本実施の形態によれば、第1クリンチャ510側では、第1板バネ540、バネ当接部513、軸部511、ステープル当接部512及び被押圧部514が第1クリンチャ510(仕切り板530)の長手方向に沿ってこの順に並んで配置される。さらには、第1板バネ540、バネ当接部513、軸部511及びステープル当接部512は、仕切り板530の長手方向に沿って略一列に配置される。これにより、テーブル40がホームポジションに位置する場合において、第1板バネ540、バネ当接部513、軸部511、ステープル当接部512及び被押圧部514を仕切り板530の高さ寸法の範囲内に収まるように配置でき、ケース550の上壁550cからほぼ突出しない構成とすることができる。同様に、第2クリンチャ520側では、第2板バネ542、バネ当接部523、軸部521、ステープル当接部522及び被押圧部524が第2クリンチャ520(仕切り板530)の長手方向に沿ってこの順に並んで配置される。これにより、第2クリンチャ520側においても、第2板バネ542、バネ当接部523、軸部521、ステープル当接部522及び被押圧部524をケース550の上壁550cからほぼ突出しない構成とすることができる。
【0041】
[電動ステープラ1の動作例]
次に、本実施の形態に係る電動ステープラ1の綴じ処理時における動作の一例について説明する。
図8Aは本実施の形態に係るテーブル40がホームポジションにある場合における電動ステープラ1の動作の一例を示す図、
図8Bは、テーブル40がホームポジションにある場合におけるクリンチャ部50の動作の一例を示す図である。
図9Aはクランプ工程を行う場合における電動ステープラ1の動作の一例を示す図、
図9Bはクランプ工程を行う場合におけるクリンチャ部50の動作の一例を示す図である。
図10Aは貫通工程を行う場合における電動ステープラ1の動作の一例を示す図、
図10Bは貫通工程を行う場合におけるクリンチャ部50の動作の一例を示す図である。
【0042】
図8A及び
図8Aに示すように、テーブル40がホームポジションにある場合、第1クリンチャ510の被押圧部514及び第2クリンチャ520の被押圧部524は、クリンチャリンク52によって下方に押圧されている。そのため、第1クリンチャ510における被押圧部514とは反対側のバネ当接部513は上方に移動する。これに伴い、バネ当接部513の上面に当接している第1板バネ540は、バネ当接部513によって押し上げられることで弾性変形して撓む。
【0043】
同様に、第2クリンチャ520における被押圧部524とは反対側のバネ当接部523は上方に移動する。これに伴い、バネ当接部523の上面に当接している第2板バネ542は、バネ当接部523によって押し上げられることで弾性変形して撓む。
【0044】
次に、クランプ工程が実行される。複数枚の用紙が載置台70に載置されると、駆動機構32の駆動によりフレーム12を介してテーブル40が下降していく。これにより、
図9A及び
図9Bに示すように、載置台70上に載置された用紙束がクランプ部80によってクランプされる。テーブル40がクランプ位置まで下降すると、クリンチャリンク52による押圧が解除され(負荷がなくなり)、これに伴って、
図9Bに示すように、第1板バネ540が撓み分復元することで第1クリンチャ510のバネ当接部513を押し下げる。これにより、第1クリンチャ510は、軸部511を支点として反時計周りに回動することで被押圧部514が上側に移動する。
【0045】
同様に、クリンチャリンク52による押圧が解除されると、第2板バネ542が撓み分復元することで第2クリンチャ520のバネ当接部523を押し下げる。これに伴い、第2クリンチャ520が軸部521を支点として時計周りに回動することで被押圧部524が上方に移動する。第1クリンチャ510及び第2クリンチャ520のそれぞれは仕切り板530の中央部に向かって斜め上方に傾斜して互いに開いた姿勢となる。このとき、第1クリンチャ510のステープル当接部512が第1拾い込み部535等の上方に位置し、第2クリンチャ520のステープル当接部522が第2拾い込み部536等の上方に位置する。このようにして、ステープルの脚部の先端を受ける状態が完了する。
【0046】
次に、貫通工程が実行される。駆動機構32の駆動によりドライバ機構30が上昇すると、図示しないフォーミングプレートによりステープルの両端を折り曲げて略U字状に成形するとともに、略U字状に成形したステープルを用紙束に向けて打ち出す。これに伴い、ドライバ機構30とともにステープルが載置台70に向かって上昇し、ステープルの脚部が載置台70上の用紙束を貫通する。
【0047】
用紙束を貫通したステープルSの一方の脚部は、
図9Bの破線に示すように、仕切り板530の第1拾い込み部535又はケース550の第3拾い込み部555に当接してその傾斜面をスライドすることでステープル当接部512側に誘導される。ステープル当接部512側に誘導されたステープルSの脚部は、
図10A及び
図10Bに示すように、ステープル当接部512に衝突してステープル当接部512を押し上げ、第1クリンチャ510を軸部511を支点として反時計周りに回動させる。
【0048】
同様に、用紙束を貫通したステープルSの他方の脚部は、
図9Bの破線で示すように、仕切り板530の第2拾い込み部536又はケース550の第4拾い込み部556に当接してその傾斜面525aをスライドすることでステープル当接部522に誘導される。ステープル当接部522側に誘導されたステープルの脚部は、
図10A及び
図10Bに示すように、ステープル当接部522に衝突してステープル当接部522を押し上げ、第2クリンチャ520を軸部521を支点として時計周りに回動させる。このとき、回動する第1クリンチャ510の被押圧部514及び第2クリンチャ520の被押圧部524によってクリンチャリンク52も同時に押し上げられる。
【0049】
また、第1クリンチャ510が押し上げられると、
図10Bに示すように、第1クリンチャ510が反時計周りに回動することでバネ当接部513が第1板バネ540から離れる。これにより、第1板バネ540は、負荷が掛かっていないフリーの状態となる。第1クリンチャ510が上方に移動するステープルの一方の脚部によりさらに回動すると、バネ当接部513がクランプ部80の裏面に当接することで第1クリンチャ510の回動が規制(停止)される。本実施の形態では、バネ当接部513の上面が第1板バネ540の下面と当接し、バネ当接部513の下面が、クランプ部80の裏面と当接する。
【0050】
同様に、第2クリンチャ520が押し上げられると、
図10Bに示すように、第2クリンチャ520が時計周りに回動することでバネ当接部523が第2板バネ542から離れる。これにより、第2板バネ542は、負荷が掛かっていないフリーの状態となる。このとき、第2クリンチャ520が上方に移動するステープルの他方の脚部によりさらに回動すると、バネ当接部523がクランプ部80の裏面に当接することで第2クリンチャ520の回動が規制される。本実施の形態では、バネ当接部523の上面が第2板バネ542の下面と当接し、バネ当接部523の下面が、クランプ部80の裏面と当接する。
【0051】
続けて、クリンチ工程が実行される。ドライバ機構30がさらに上昇すると、これに伴いステープルも上昇する。これにより、第1クリンチャ510の上側への回動は規制されているので、ステープルの一方の脚部は第1クリンチャ510の傾斜するステープル当接部512に沿うようにゆるやかに湾曲する。同様に、ステープルの他方の脚部は、第2クリンチャ520の上側への回動も規制されているので、第2クリンチャ520の傾斜するステープル当接部522に沿うようにゆるやかに湾曲する。
【0052】
次に、クリンチャリンク52が図示しないカムによって、第1クリンチャ510の被押圧部514及び第2クリンチャ520の被押圧部524を押圧する。これに伴い、第1クリンチャ510が軸部511を支点として時計周りに回動し、第1クリンチャ510のステープル当接部512が下方に移動することで、ステープルの湾曲した一方の脚部を押圧して内側に折り曲げる。
同様に、第2クリンチャ520が軸部521を支点として反時計周りに回動し、第2クリンチャ520のステープル当接部522が下方に移動することで、ステープルの湾曲した他方の脚部を押圧して内側に折り曲げる。このようにして、ステープルの両方の脚部が内側に折り曲げられ、用紙束がステープルによって綴じられる。
【0053】
このとき、第1クリンチャ510のバネ当接部513が上方に移動し、第1板バネ540が弾性力に抗して押し上げられることで弾性変形して撓む。同様に、第2クリンチャ520のバネ当接部523が上方に移動し、第2板バネ542が弾性力に抗して押し上げられることで弾性変形して撓む。
【0054】
次に、リターン工程が実行される。リターン工程では、駆動機構32の駆動により、図示しないフレームを介してテーブル40が上昇してホームポジションに戻るとともに、ドライバ機構30が下降してホームポジションに戻る(
図A1参照)。これにより、テーブル40と載置台70との間が開口し、次の用紙束を綴じ処理する準備が整う。
【0055】
以上説明したように、本実施の形態によれば、第1板バネ540を仕切り板530に固定するとともに、仕切り板530の長手方向に沿うように第1板バネ540、第1クリンチャ510のバネ当接部513、軸部511及びステープル当接部512を並んで配置したので、テーブル40がホームポジションに位置する場合、第1板バネ540、バネ当接部513、軸部511、ステープル当接部512及び被押圧部514を仕切り板530の高さ寸法の範囲内に収まるように配置でき、ケース550の上壁550cと略面一となる構成とすることができる。第2クリンチャ520側でも同様に、第2板バネ542、バネ当接部523、軸部521、ステープル当接部522及び被押圧部524を仕切り板530の高さ寸法の範囲内に収まるように配置でき、ケース550の上壁550cからほぼ突出しない構成とすることができる。これにより、クリンチャ部50の高さ寸法を抑えることができるので、クリンチャ部50の小型化を図ることができる。その結果、例えば画像形成装置や後処理装置において用紙の搬送経路を低い位置に設定できるので、装置全体の小型化を図ることができる。
【0056】
また、本実施の形態によれば、クランプ工程時において、第1拾い込み部535の傾斜面の上端の位置及び第3拾い込み部555の傾斜面の上端の位置P1を、第1クリンチャ510のステープル当接部512の位置P2よりも下方に位置させるので、用紙束を貫通したステープルの脚部を確実に第1クリンチャ510のステープル当接部512に誘導できる。これにより、ステープルが第1クリンチャ510と仕切り板530やケース550との隙間に入って綴じ処理が行えない等の綴じ不良の発生を防止できる。第2拾い込み部536及び第4拾い込み部556についても同様の効果を奏することができる。
【0057】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示の技術的範囲はかかる例に限定されない。本開示の技術分野における通常の知識を有する者であれば、請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0058】
例えば、上述した実施の形態では、第1クリンチャ510及び第2クリンチャ520をステープルの脚部を受ける位置に付勢する弾性部材として、第1板バネ540及び第2板バネ542を用いた例について説明したが、これに限定されることはない。例えば、軸部511,521にねじりコイルバネを取り付けて第1クリンチャ510及び第2クリンチャ520の位置を調整するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 電動ステープラ
50 クリンチャ部
510 第1クリンチャ(クリンチャ)
511 軸部
512 ステープル当接部
513 バネ当接部
520 第2クリンチャ(他のクリンチャ)
521 軸部
522 ステープル当接部
523 バネ当接部
530 仕切り板
535 第1拾い込み部
536 第2拾い込み部
540 第1板バネ(弾性部材)
542 第2板バネ(弾性部材)
550 ケース
555 第3拾い込み部
556 第4拾い込み部