(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092230
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
A01D 67/00 20060101AFI20240701BHJP
A01D 69/02 20060101ALI20240701BHJP
A01D 41/12 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
A01D67/00 L
A01D69/02
A01D41/12 Z
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208002
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 正道
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 学
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 雅一
(72)【発明者】
【氏名】玉田 晋太郎
(72)【発明者】
【氏名】古川 博司
(72)【発明者】
【氏名】大原 一志
(72)【発明者】
【氏名】土居 義典
【テーマコード(参考)】
2B074
2B076
【Fターム(参考)】
2B074AA05
2B074AB01
2B074AC02
2B074AD05
2B074AD06
2B074AF02
2B074BA03
2B074CE01
2B074CG05
2B074CH01
2B074DA01
2B074DA02
2B074DA03
2B074DA06
2B074DF07
2B074GB01
2B076AA03
2B076BA04
2B076DA09
2B076DA19
2B076EC23
2B076ED30
(57)【要約】
【課題】本発明は、バッテリーを搭載し電動モータで機能装置を駆動するコンバインにおいて、収穫作業の進行に伴って変動する走行車体の重量バランスを重いバッテリーを走行車体上で移動することで修正して、収穫作業を安定して行えるコンバインとすることを課題とする。
【解決手段】バッテリー48を搭載するバッテリー搭載台10を機体フレーム1に横スライド可能に設け、車体傾斜検出手段で機体フレーム1の傾斜を検出し、車体傾斜が大きくなる場合に前記バッテリー搭載台10を傾斜上方向へ移動させて機体フレーム1の重量バランスを修正することを特徴とするコンバイとする。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリー(48)を搭載するバッテリー搭載台(10)を機体フレーム(1)に横スライド可能に設け、車体傾斜検出手段で機体フレーム(1)の傾斜を検出し、車体傾斜が大きくなる場合に前記バッテリー搭載台(10)を傾斜上方向へ移動させて機体フレーム(1)の重量バランスを修正することを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
バッテリー搭載台(10)をグレンタンク(7)下部で横スライド可能に設け、車体傾斜検出手段で機体フレーム(1)がグレンタンク(7)側に傾くのを検出するとバッテリー搭載台(10)をグレンタンク(7)下から横へスライドすることを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
車体傾斜検出手段をグレンタンク(7)下部に設けた重量センサ(14)としたことを特徴とする請求項2に記載のコンバイン。
【請求項4】
機体フレーム(1)の後部に燃料タンク(15)を設け、バッテリー搭載台(10)を機体フレーム(1)の前後にスライド可能に設け、車体傾斜検出手段で機体フレーム(1)が前に浮き上がるのを検出するとバッテリー搭載台(10)を後方へスライドすることを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項5】
車体傾斜検出手段を燃料タンク(15)の燃料計としたことを特徴とする請求項4に記載のコンバイン。
【請求項6】
車体傾斜検出手段を機体フレーム(1)の傾きを検出する車体傾斜センサ(11)としたことを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項7】
穀稈移送経路に摩擦発電帯(49)を設け、摩擦発電帯(49)で発生する電力をバッテリー(48)に給電することを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインの走行装置をエンジンで駆動して脱穀装置等の機能装置を電動モータで駆動するコンバイン或いは走行装置を含めたすべての機能装置を電動モータで駆動するコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
コンバインは、特開2020―198818号公報に記載されているように、クローラ走行装置で走行する走行車体に、圃場に植生する穀稈を刈り取る刈取装置と刈取穀稈を機体上に設ける脱穀装置に送り上げる搬送装置と刈取穀稈から穀粒を脱穀して選別する脱穀選別装置等の機能装置と穀粒を溜めるグレンタンクを搭載して構成され、走行車体に搭載したエンジンの動力でクローラ走行装置や刈取装置や脱穀装置等の機能装置を全て駆動する。
【0003】
また、特開2012―55223号公報に記載のコンバインは、クローラ走行装置をエンジンで駆動し、脱穀装置等の機能装置は走行車体に搭載したバッテリーと電動モータで駆動するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020―198818号公報
【特許文献2】特開2012―55223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記第一のコンバインは走行車体に搭載したエンジンで刈取装置と搬送装置と脱穀選別装置とグレンタンクに溜まった穀粒を機外に排出する穀粒排出オーガの全てが駆動されているために、エンジンが出力の大きな大型で重いものとなり、刈取装置や脱穀選別装置等の機能装置への動力伝動機構が複雑になっている。
【0006】
また、コンバインは柔らかい圃場を走行しているので、収穫作業が進行するに伴ってグレンタンクに穀粒が貯留されてグレンタンク側が重くなって走行車体が傾いたり、燃料タンクの燃料が少なくなると燃料タンク側が軽くなって走行車体が傾いたりして、穀稈の刈取高さが変動して収穫作業が難しくなる。
【0007】
本発明は、バッテリーを搭載し電動モータで機能装置を駆動するコンバインにおいて、収穫作業の進行に伴って変動する走行車体の重量バランスを重いバッテリーを走行車体上で移動することで修正して、収穫作業を安定して行えるコンバインとすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
【0009】
請求項1の発明は、バッテリー48を搭載するバッテリー搭載台10を機体フレーム1に横スライド可能に設け、車体傾斜検出手段で機体フレーム1の傾斜を検出し、車体傾斜が大きくなる場合に前記バッテリー搭載台10を傾斜上方向へ移動させて機体フレーム1の重量バランスを修正することを特徴とするコンバイとする。
【0010】
請求項2の発明は、バッテリー搭載台10をグレンタンク7下部で横スライド可能に設け、車体傾斜検出手段で機体フレーム1がグレンタンク7側に傾くのを検出するとバッテリー搭載台10をグレンタンク7下から横へスライドすることを特徴とする請求項1に記載のコンバインとする。
【0011】
請求項3の発明は、車体傾斜検出手段をグレンタンク7下部に設けた重量センサ14としたことを特徴とする請求項2に記載のコンバインとする。
【0012】
請求項4の発明は、機体フレーム1の後部に燃料タンク15を設け、バッテリー搭載台10を機体フレーム1の前後にスライド可能に設け、車体傾斜検出手段で機体フレーム1が前に浮き上がるのを検出するとバッテリー搭載台10を後方へスライドすることを特徴とする請求項1に記載のコンバインとする。
【0013】
請求項5の発明は、車体傾斜検出手段を燃料タンク15の燃料計としたことを特徴とする請求項4に記載のコンバインとする。
【0014】
請求項6の発明は、車体傾斜検出手段を機体フレーム1の傾きを検出する車体傾斜センサ11としたことを特徴とする請求項1に記載のコンバインとする。
【0015】
請求項7の発明は、穀稈移送経路に摩擦発電帯49を設け、摩擦発電帯49で発生する電力をバッテリー48に給電することを特徴とする請求項1に記載のコンバインとする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明で、バッテリー48は重量物であるので、車体傾斜検出手段が機体フレーム1の傾きを検出するとバッテリー48を搭載したバッテリー搭載台10を傾斜上方向に移動することで機体フレーム1の重量バランスを均等にして機体フレーム1の傾きを修正するので、コンバインの刈取を圃場面と並行にして穀稈の刈取位置が均一になって収穫が安定する。
【0017】
請求項2の発明で、穀粒を溜めるグレンタンク7は穀粒が溜ると重くなり機体フレーム1が傾くが、車体傾斜検出手段が傾きを検出するとバッテリー搭載台10をグレンタンク7下方から遠ざかる横位置にスライドして機体フレーム1の重量バランスを良くすることで機体フレーム1が傾くのを防いで、コンバインの刈取を圃場面と並行にして穀稈の刈取位置が均一になって収穫が安定する。
【0018】
請求項3の発明で、グレンタンク7に穀粒が溜って重くなったことを重量センサ14の重量測定で判断して機体フレーム1の重量バランスを修正できる。
【0019】
請求項4の発明で、燃料タンク15は満タンから燃料が使用されて軽くなるとバッテリー搭載台10を燃料タンク15側へスライドして機体フレーム1の重量バランスを修正するので、コンバインの刈取を圃場面と並行にして穀稈の刈取位置が均等になって収穫が安定する。
【0020】
請求項5の発明で、燃料タンク15の燃料が少なくなって軽くなることを燃料計の残燃料で検出できるので、車体傾斜検出手段11を別に設ける必要が無く、構成を簡略化できる。
【0021】
請求項6の発明で、車体傾斜検出手段が車体傾斜センサ11であると機体フレーム1の傾きを前後左右の全方位で検出出来て、バッテリー搭載台10のスライド移動を傾斜上方向へ調整出来る。
【0022】
請求項7の発明で、穀稈の刈取収穫作業で、穀稈の移送動作で摩擦発電帯49と接触することで発生する電力をバッテリー48に充電補充して電動モータを駆動するので、コンバインの燃料消費を抑えて収穫作業を永く出来る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態にかかるコンバインの正面図である。
【
図5】同コンバインの機体フレーム1の平面図である。
【
図6】(A)、(B)同コンバインのグレンタンク7の下部で横桟1aに重量センサ14を設けた図である。
【
図7】同コンバインの機体フレーム1の平面図である。
【
図8】(A)、(B)同コンバインの概略右側面図である。
【
図9】同上刈取駆動部の回路図を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施例に示すコンバインは、汎用コンバインで、まず、その実施例の全体構成を示し、その後、発明にかかる構成を説明する。
【0025】
汎用コンバインは、
図1~3に示すように、機体フレーム1の下側に土壌面を走行する左右一対のクローラからなる走行装置2が設けられ、機体フレーム1の前側に圃場の穀稈を収穫する刈取前処理装置3が設けられ、刈取前処理装置3の後方左側に収穫された穀稈を脱穀・選別処理する脱穀装置4が設けられ、刈取前処理装置3の後方右側に操縦者が搭乗する操縦部5が設けられている。操縦部5を囲むキャビン59の天板上にソーラーパネル60を設け、日光で発電する電力をバッテリー48に充電する。なお、ソーラーパネルはグレンタンク7の天板上やフィーダハウス3Dの天板上にも設けても良い。
【0026】
操縦部5の下側にエンジンを内装するエンジンルーム6が設けられ、操縦部5の後側に脱穀・選別処理された穀粒を貯留するグレンタンク7が設けられ、グレンタンク7の後側に穀粒を外部に排出する排出オーガ8が設けられている。前記エンジンから走行装置2と脱穀装置4と排出オーガ8に動力伝動機構で駆動力が伝動される。
【0027】
刈取前処理装置3は、圃場の穀稈を起立させながら後側に搬送する搬送装置3Aと、搬送装置3Aの後側下部に搬送された穀稈の株元を切断する刈刃装置3Bと、搬送装置3Aの後側に搬送された穀稈を左側に寄せ集めるオーガ装置3Cと、寄せ集められた穀稈を脱穀装置4に搬送するフィーダハウス3Dから構成されている。刈取前処理装置3は、電動モータ46から動力伝動機構で伝動される動力で駆動される。
【0028】
図4は、刈取前処理装置3を電動化したコンバインを示し、走行装置2と脱穀装置4はエンジンからの動力を駆動軸や伝動ベルトからなる動力伝動機構を介して駆動・伝動している。
【0029】
脱穀装置4の前側でフィーダハウス3Dに電動モータ46を装着し、刈取駆動部47を介して搬送装置3Aや刈刃装置3Bやオーガ装置3C及びフィーダハウス3D内の搬送装置からなる刈取前処理装置3を駆動する。
【0030】
図5は、機体フレーム1の平面図を示し、横桟1aにローラで横スライドするバッテリー搭載台10を設けて厚みの薄いバッテリー48を搭載し、バッテリー搭載台10をスクリューモータ13で横桟1a上を左右に移動させるようにしている。また、横桟1aには機体フレーム1の左右傾斜を検出する車体傾斜センサ11を設け、機体フレーム1が右側のグレンタンク7側へ傾くとスクリューモータ13を駆動してバッテリー搭載台10が左側に移動して機体フレーム1を水平に戻すように制御する。
【0031】
図6は、グレンタンク7の下部で横桟1aに重量センサ14を設けた実施例で、
図6(A)の如く、グレンタンク7に穀粒が溜って機体フレーム1が右側に傾くとバッテリー搭載台10を左側に移動して(B)の如く機体フレーム1を水平に戻す。
【0032】
図7は、別の実施例で、機体フレーム1の平面図を示し、縦桟1bにローラでスライドするバッテリー搭載台10を設けて厚みの薄いバッテリー48を搭載し、バッテリー搭載台10をスクリューモータ13で縦桟1b上を前後に移動させるようにしている。機体フレーム1の後部には燃料タンク15を設け、その下部に重量センサ14を設けている。
図8(A)の如く、グレンタンク7に穀粒が溜って機体フレーム1が後側に傾くとバッテリー搭載台10を左側に移動して(B)の如く機体フレーム1を水平に戻す。
【0033】
なお、バッテリー搭載台10のスライド方向は機体フレーム1の右後部から左前部に向かう方向にしても良い。そうすることでグレンタンク7側への走行装置2の沈み込みを防止できる。
【0034】
また、操縦部5を囲むキャビン59の天板上や脱穀装置4の天板上やグレンタンク7の天板上に設けるソーラーパネル60で発電した電力をバッテリー48に充電して、電動モータ46を駆動するようにするとコンバインの燃料消費を低減できる。
【0035】
また、フィーダハウス3Dや搬送装置3A内や脱穀装置4の扱網に摩擦発電帯49を張り付けて送られる穀稈や脱穀処理物との摩擦による発電電力をバッテリー48に蓄えて利用することも考えられる。
【0036】
図9は前述した刈取駆動部47の回路図を示している。符号50は電路情報を計測・表示・伝送する計測表示ユニットと遮断器を一体化した遮断器(ノーヒューズ遮断器・漏電遮断器・漏電アラーム遮断器)である。バッテリー48からの電力は遮断器50を介して電動モータ46に供給される構成としている。
【0037】
電動モータ46の出力軸46aからフィーダハウス3D上部の刈取伝動軸51を駆動する構成としている。
【0038】
バッテリー48には外部電源接続部52が装備されている。
【符号の説明】
【0039】
1 機体フレーム
7 グレンタンク
10 バッテリー搭載台
11 車体傾斜センサ
14 重量センサ
15 燃料タンク
48 バッテリー
49 摩擦発電帯