(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092233
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】電気化学反応セルスタック
(51)【国際特許分類】
H01M 8/2465 20160101AFI20240701BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20240701BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20240701BHJP
C25B 9/23 20210101ALI20240701BHJP
C25B 9/77 20210101ALI20240701BHJP
C25B 9/60 20210101ALI20240701BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20240701BHJP
【FI】
H01M8/2465
C25B1/04
C25B9/00 A
C25B9/23
C25B9/77
C25B9/60
H01M8/12 101
H01M8/12 102A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208013
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】519322392
【氏名又は名称】森村SOFCテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥村 浩志
(72)【発明者】
【氏名】大橋 駿太
(72)【発明者】
【氏名】藤堂 佑介
【テーマコード(参考)】
4K021
5H126
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021CA15
4K021DB06
4K021DB46
4K021DB53
5H126AA23
5H126BB06
5H126EE11
5H126FF03
5H126GG12
(57)【要約】
【課題】ガス流路に供給されたガスが流れ制限部の配置領域に流れ込むことを効果的に抑制する。
【解決手段】電気化学反応セルスタックは、電解質層と、電解質層を挟んで第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極と、を含む単セルと、空気極と燃料極とのいずれか一方の電極に面するガス流路を画定する流路画定部と、をそれぞれ有する電気化学反応単位を、複数備える。複数の電気化学反応単位の少なくとも1つは、さらに、ガス流路の一部に配置される流れ制限部を備える。流れ制限部は、弾性を有し、単セルおよび流路画定部のうち、第1の方向に対向する第1の対向部と第2の対向部との間に、圧縮代と膨張代とを有する状態で挟み込まれている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質層と、前記電解質層を挟んで第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極と、を含む単セルと、前記空気極と前記燃料極とのいずれか一方の電極に面するガス流路を画定する流路画定部と、をそれぞれ有する電気化学反応単位を、複数備える電気化学反応セルスタックにおいて、
前記複数の電気化学反応単位の少なくとも1つは、さらに、前記ガス流路の一部に配置される流れ制限部を備え、
前記流れ制限部は、弾性を有し、前記単セルおよび前記流路画定部のうち、前記第1の方向に対向する第1の対向部と第2の対向部との間に、圧縮代と膨張代とを有する状態で挟み込まれている、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【請求項2】
請求項1に記載の電気化学反応セルスタックにおいて、
前記第1の対向部と前記第2の対向部との間には、前記第1の対向部と前記第2の対向部との前記第1の方向の離間距離が第1の距離である小スペースと、前記第1の対向部と前記第2の対向部との前記第1の方向の離間距離が前記第1の距離よりも長い第2の距離である大スペースとが形成されており、
前記流れ制限部は、前記小スペースと前記大スペースとにわたって配置される第1の流れ制限材と、前記小スペースには配置されず、前記大スペースにおいて前記第1の流れ制限材に重ねて配置される第2の流れ制限材とを有する、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【請求項3】
請求項1に記載の電気化学反応セルスタックにおいて、
前記流れ制限部は、前記第1の方向視で、前記電解質層と前記空気極と前記燃料極とが重なる電気化学反応領域を横切る第2の方向の少なくとも一方側に配置され、
前記流路画定部は、前記第1の方向視で、前記第2の方向に交差する第3の方向において、前記流れ制限部の一端部と対向する第3の対向部と、前記流れ制限部の他端部と対向する第4の対向部とを有し、
前記第3の方向において、前記流れ制限部の前記一端部と前記流路画定部の前記第3の対向部との間の第3の距離と、前記流れ制限部の前記他端部と前記流路画定部の前記第4の対向部との間の第4の距離とは互いに異なる、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【請求項4】
請求項1に記載の電気化学反応セルスタックにおいて、
前記流れ制限部は、セラミックフェルトにより形成されている、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、電気化学反応セルスタックに関する。
【背景技術】
【0002】
水素と酸素との電気化学反応を利用して発電を行う燃料電池の種類の1つとして、固体酸化物形の燃料電池(以下、「SOFC」という。)が知られている。SOFCは、一般に、複数の構成単位(以下、「発電単位」という。)が所定の方向(以下、「第1の方向」という。)に並べて配置された燃料電池スタックの形態で利用される。各発電単位は、燃料電池単セル(以下、単に「単セル」という。)と、単セル用セパレータとを有する。単セルは、固体酸化物を含む電解質層と、電解質層を挟んで上記所定の方向に互いに対向する空気極および燃料極とを備える。また、単セル用セパレータには貫通孔が形成されており、単セル用セパレータにおける貫通孔を取り囲む部分が単セルの周縁部と接合されている。このような構成の単セル用セパレータにより、単セルの空気極に面する空気室と燃料極に面する燃料室とが区画される。
【0003】
このような燃料電池スタックの中には、単セルの空気極に面する空気室と燃料極に面する燃料室とのいずれか一方のガス流路の一部に配置される流れ制限部を備えるものがある(例えば、特許文献1参照)。流れ制限部は、例えばガス流路を画定する一対の対向部の間に配置されることにより、ガス流路に供給されたガスの流れを制限する機能を果たす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば燃料電池スタックの温度変化等に応じて上記一対の対向部が変位したり変形したりすることがある。従来の燃料電池スタックの構成では、流れ制限部は、一対の対向部の変位や変形等に追従できず、流れ制限部によるガスの流れを制限する効果が変動し、例えばガス流路に供給されたガスが流れ制限部の配置領域に流れ込むことを十分に抑制できないといった問題が生じる。
【0006】
なお、このような課題は、単セル用セパレータに限らず、単セルとガス流路を画定する流路画定部とを備え、そのガス流路の一部に流れ制限部が配置される燃料電池スタックにも共通の課題である。また、このような課題は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形の電解セル(以下、「SOEC」という。)の構成単位である電解セル単位を複数備える電解セルスタックにも共通の課題である。なお、本明細書では、燃料電池単セルと電解単セルとをまとめて電気化学反応単セルと呼び、燃料電池発電単位と電解セル単位とをまとめて電気化学反応単位と呼び、燃料電池スタックと電解セルスタックとをまとめて電気化学反応セルスタックと呼ぶ。また、このような課題は、SOFCやSOECに限らず、他のタイプの電気化学反応セルスタックにも共通の課題である。
【0007】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0009】
(1)本明細書に開示される電気化学反応セルスタックは、電解質層と、前記電解質層を挟んで第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極と、を含む単セルと、前記空気極と前記燃料極とのいずれか一方の電極に面するガス流路を画定する流路画定部と、をそれぞれ有する電気化学反応単位を、複数備える電気化学反応セルスタックにおいて、前記複数の電気化学反応単位の少なくとも1つは、さらに、前記ガス流路の一部に配置される流れ制限部を備え、前記流れ制限部は、弾性を有し、前記単セルおよび前記流路画定部のうち、前記第1の方向に対向する第1の対向部と第2の対向部との間に、圧縮代と膨張代とを有する状態で挟み込まれている。
【0010】
本電気化学反応セルスタックでは、例えば流れ制限部が圧縮代と膨張代との少なくとも一方を有しない状態で配置された構成に比べて、温度変化等に伴う第1の対向部および第2の対向部の変位や変形に追従するように流れ制限部が変形する。このため、本電気化学反応セルスタックによれば、ガス流路に供給されたガスが流れ制限部の配置領域に流れ込むことを効果的に抑制することができる。また、流れ制限部が膨張代を有するため、固定具や接合材を用いなくても、流れ制限部自身の弾性により生じる面圧と摩擦とによって、ガス流路内における流れ制限部の位置ずれが抑制される。
【0011】
(2)上記電気化学反応セルスタックにおいて、前記第1の対向部と前記第2の対向部との間には、前記第1の対向部と前記第2の対向部との前記第1の方向の離間距離が第1の距離である小スペースと、前記第1の対向部と前記第2の対向部との前記第1の方向の離間距離が前記第1の距離よりも長い第2の距離である大スペースとが形成されており、前記流れ制限部は、前記小スペースと前記大スペースとにわたって配置される第1の流れ制限材と、前記小スペースには配置されず、前記大スペースにおいて前記第1の流れ制限材に重ねて配置される第2の流れ制限材とを有する構成としてもよい。本電気化学反応セルスタックによれば、第1の対向部と第2の対向部とが凹凸スペースを形成する形態において、例えば流れ制限部が1つの部材で形成された構成に比べて、複雑な形状の部材を要することなく、ガス流路に供給されたガスが流れ制限部の配置領域に流れ込むことを効果的に抑制することができる。
【0012】
(3)上記電気化学反応セルスタックにおいて、前記流れ制限部は、前記第1の方向視で、前記電解質層と前記空気極と前記燃料極とが重なる電気化学反応領域を横切る第2の方向の少なくとも一方側に配置され、前記流路画定部は、前記第1の方向視で、前記第2の方向に交差する第3の方向において、前記流れ制限部の一端部と対向する第3の対向部と、前記流れ制限部の他端部と対向する第4の対向部とを有し、前記第3の方向において、前記流れ制限部の前記一端部と前記流路画定部の前記第3の対向部との間の第3の距離と、前記流れ制限部の前記他端部と前記流路画定部の前記第4の対向部との間の第4の距離とは互いに異なる構成としてもよい。本電気化学反応セルスタックによれば、例えば、第3の距離と第4の距離とが同じである構成に比べて、流れ制限部の外周側に流れ込むガスの流路の最小断面積が小さい分だけ、ガス流路に供給されたガスが流れ制限部の配置領域に流れ込むことを、より効果的に抑制することができる。
【0013】
(4)上記電気化学反応セルスタックにおいて、前記流れ制限部は、セラミックフェルトにより形成されている構成としてもよい。本電気化学反応セルスタックによれば、比較的に加工がしやすいセラミックフェルトを用いることにより、ガス流路に供給されたガスが流れ制限部の配置領域に流れ込むことを、より効果的に抑制することができる。
【0014】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、電気化学反応セルスタック(燃料電池スタックまたは電解セルスタック)、それらの製造方法等の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図
【
図2】
図1のII-IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図
【
図3】
図1のIII-IIIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図
【
図4】
図1のIV-IVの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図
【
図5】
図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図
【
図6】
図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図
【
図7】
図4に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のYZ断面構成を示す説明図
【
図8】
図5から
図7のVIII-VIIIの位置における発電単位102のXY断面構成を示す説明図
【
図9】
図5から
図7のIX-IXの位置における発電単位102のXY断面構成を示す説明図
【
図10】互いに外形形状が異なる空気極側流れ制限部200,200Aを例示する説明図
【発明を実施するための形態】
【0016】
A.実施形態:
A-1.構成:
(燃料電池スタック100の構成)
図1は、本実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図であり、
図2は、
図1(および後述する
図8および
図9)のII-IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図であり、
図3は、
図1(および後述する
図8および
図9)のIII-IIIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図であり、
図4は、
図1(および後述する
図8および
図9)のIV-IVの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向と呼び、Z軸負方向を下方向と呼ぶものとするが、燃料電池スタック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。
図5以降についても同様である。
【0017】
燃料電池スタック100は、複数の(本実施形態では7つの)燃料電池発電単位(以下、単に「発電単位」という。)102と、下端用セパレータ189と、一対のエンドプレート104,106とを備える。7つの発電単位102は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向)に並べて配置されている。一対のエンドプレート104,106のうちの一方(以下、「上側エンドプレート104」という。)は、7つの発電単位102と下端用セパレータ189とから構成される集合体(以下、「発電ブロック103」という。)の上側に配置されており、一対のエンドプレート104,106のうちの他の(以下、「下側エンドプレート106」という。)は、発電ブロック103の下側に配置されている。一対のエンドプレート104,106は、7つの発電単位102と下端用セパレータ189とから構成される集合体(以下、「発電ブロック103」という。)を上下から挟むように配置されている。
【0018】
図1および
図4に示すように、燃料電池スタック100を構成する各層(上側エンドプレート104、各発電単位102、下端用セパレータ189)のZ軸方向回りの外周の4つの角部付近には、各層を上下方向に貫通する孔が形成されており、下側エンドプレート106のZ軸方向回りの外周の4つの角部付近における上側の表面には、孔(ネジ孔)が形成されている。これらの各層に形成され互いに対応する孔同士が上下方向に連通して、上下方向に延びるボルト孔109を構成している。以下の説明では、ボルト孔109を構成するために燃料電池スタック100の各層に形成された孔も、ボルト孔109と呼ぶ場合がある。
【0019】
各ボルト孔109にはボルト22が挿入されている。各ボルト22の下端部は下側エンドプレート106に形成されたネジ孔に螺号しており、各ボルト22の上端部にはナット24が嵌められている。ナット24の下側の表面は、絶縁シート26を介してエンドプレート104の上側の表面に当接している。このような構成のボルト22およびナット24により、燃料電池スタック100の各層が一体に締結されている。なお、絶縁シート26は、例えばマイカシートや、セラミック繊維シート、セラミック圧粉シート、ガラスシート、ガラスセラミック複合剤等により構成される。
【0020】
また、
図1から
図3に示すように、燃料電池スタック100を構成する各層(各発電単位102、下端用セパレータ189、下側エンドプレート106)のZ軸方向回りの周縁部には、各層を上下方向に貫通する4つの孔が形成されており、各層に形成され互いに対応する孔同士が上下方向に連通して、最上部の発電単位102から下側エンドプレート106にわたって上下方向に延びる連通孔108を構成している。以下の説明では、連通孔108を構成するために燃料電池スタック100の各層に形成された孔も、連通孔108と呼ぶ場合がある。
【0021】
図1および
図2に示すように、燃料電池スタック100のZ軸方向回りの外周を構成する1つの辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸正方向側の辺)の付近に位置する1つの連通孔108は、燃料電池スタック100の外部から酸化剤ガスOGが導入され、その酸化剤ガスOGを各発電単位102の後述する空気室166に供給するガス流路である酸化剤ガス供給マニホールド161として機能し、該辺の反対側の辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸負方向側の辺)の付近に位置する1つの連通孔108は、各発電単位102の空気室166から排出されたガスである酸化剤オフガスOOGを燃料電池スタック100の外部へ排出するガス流路である酸化剤ガス排出マニホールド162として機能する。なお、酸化剤ガスOGとしては、例えば空気が使用される。
【0022】
また、
図1および
図3に示すように、燃料電池スタック100のZ軸方向回りの外周を構成する辺の内、上述した酸化剤ガス排出マニホールド162として機能する連通孔108に最も近い辺の付近に位置する他の1つの連通孔108は、燃料電池スタック100の外部から燃料ガスFGが導入され、その燃料ガスFGを各発電単位102の後述する燃料室176に供給するガス流路である燃料ガス供給マニホールド171として機能し、上述した酸化剤ガス供給マニホールド161として機能する連通孔108に最も近い辺の付近に位置する他の1つの連通孔108は、各発電単位102の燃料室176から排出されたガスである燃料オフガスFOGを燃料電池スタック100の外部へ排出するガス流路である燃料ガス排出マニホールド172として機能する。なお、燃料ガスFGとしては、例えば都市ガスを改質した水素リッチなガスが使用される。
【0023】
図2および
図3に示すように、燃料電池スタック100には、4つのガス通路部材27が設けられている。各ガス通路部材27は、中空筒状の本体部28と、本体部28の側面から分岐した中空筒状の分岐部29とを有している。分岐部29の孔は本体部28の孔と連通している。各ガス通路部材27の分岐部29には、ガス配管(図示せず)が接続される。
図2に示すように、酸化剤ガス供給マニホールド161の位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス供給マニホールド161に連通しており、酸化剤ガス排出マニホールド162の位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス排出マニホールド162に連通している。また、
図3に示すように、燃料ガス供給マニホールド171の位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス供給マニホールド171に連通しており、燃料ガス排出マニホールド172の位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス排出マニホールド172に連通している。なお、各ガス通路部材27と下側エンドプレート106の表面との間には、絶縁シート26が介在している。
【0024】
(エンドプレート104,106の構成)
一対のエンドプレート104,106は、Z軸方向視での外形が略矩形の平板状の部材であり、例えばステンレス等の導電材料により形成されている。一対のエンドプレート104,106の中央付近には、それぞれ、Z軸方向に貫通する孔32,34が形成されている。Z軸方向視で、一対のエンドプレート104,106のそれぞれに形成された孔32,34の内周線は、後述する各単セル110を内包している。そのため、各ボルト22およびナット24による締結によって生じるZ軸方向の圧縮力は、主として各発電単位102の周縁部(後述する各単セル110より外周側の部分)に作用する。また、本実施形態では、上側エンドプレート104は、燃料電池スタック100のプラス側の出力端子として機能し、下側エンドプレート106は、燃料電池スタック100のマイナス側の出力端子として機能する。
【0025】
(下端用セパレータ189の構成)
下端用セパレータ189は、Z軸方向視での外形が略矩形の平板状の部材であり、例えば金属により形成されている。下端用セパレータ189の周縁部は、発電ブロック103と下側エンドプレート106との間に挟み込まれた状態で、下側エンドプレート106と例えば溶接により接合されており、下側エンドプレート106と電気的に接続されている。
【0026】
(発電単位102の構成)
図5は、
図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図であり、
図6は、
図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図であり、
図7は、
図4に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のYZ断面構成を示す説明図である。また、
図8は、
図5から
図7のVIII-VIIIの位置における発電単位102のXY断面構成を示す説明図であり、
図9は、
図5から
図7のIX-IXの位置における発電単位102のXY断面構成を示す説明図である。
【0027】
図5から
図7に示すように、発電単位102は、燃料電池単セル(以下、「単セル」という。)110と、単セル用セパレータ120と、空気極側フレーム130と、燃料極側フレーム140と、燃料極側集電部材144と、発電単位102の最上層および最下層を構成する一対のインターコネクタ190および一対のIC用セパレータ180とを備えている。単セル用セパレータ120、空気極側フレーム130、燃料極側フレーム140、IC用セパレータ180におけるZ軸方向回りの周縁部には、各マニホールド161,162,171,172として機能する各連通孔108を構成する孔と、各ボルト孔109を構成する孔とが形成されている。
【0028】
単セル110は、電解質層112と、電解質層112のZ軸方向の一方側(上側)に配置された空気極114と、電解質層112のZ軸方向の他方側(下側)に配置された燃料極116と、電解質層112と空気極114との間に配置された反応防止層118とを備える。なお、本実施形態の単セル110は、燃料極116で単セル110を構成する他の層(電解質層112、空気極114、反応防止層118)を支持する燃料極支持形の単セルである。
【0029】
電解質層112は、Z軸方向視で略矩形の平板形状部材であり、固体酸化物(例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア))を含むように構成されている。すなわち、本実施形態の単セル110は、電解質として固体酸化物を用いる固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。空気極114は、Z軸方向視で電解質層112より小さい略矩形の平板形状部材であり、例えばペロブスカイト型酸化物(例えば、LSCF(ランタンストロンチウムコバルト鉄酸化物))を含むように構成されている。燃料極116は、Z軸方向視で電解質層112と略同じ大きさの略矩形の平板形状部材であり、例えば、Ni(ニッケル)、Niとセラミック粒子からなるサーメット、Ni基合金等により形成されている。反応防止層118は、Z軸方向視で空気極114と略同じ大きさの略矩形の平板形状部材であり、例えばGDC(ガドリニウムドープセリア)を含むように構成されている。反応防止層118は、空気極114から拡散した元素(例えば、Sr)が電解質層112に含まれる元素(例えば、Zr)と反応して高抵抗な物質(例えば、SrZrO3)が生成されることを抑制する機能を有する。
【0030】
単セル用セパレータ120は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の貫通孔121が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、フェライト系ステンレス等の金属により形成されている。単セル用セパレータ120の板厚は、比較的薄く、例えば0.05mm以上、0.2mm以下程度である。単セル用セパレータ120における貫通孔121を取り囲む部分(以下、「貫通孔周囲部」という。)は、単セル110(電解質層112)の周縁部における上側の表面に対向している。単セル用セパレータ120は、その対向した部分に配置されたロウ材(例えばAgロウ)により形成された接合部124により、単セル110(電解質層112)と接合されている。単セル用セパレータ120により、空気極114に面する空気室166と燃料極116に面する燃料室176とが区画され、単セル110の周縁部における一方の電極側から他方の電極側へのガスのリーク(クロスリーク)が抑制される。なお、空気室166と燃料室176とは、特許請求の範囲におけるガス流路の一例である。
【0031】
単セル用セパレータ120は、単セル用セパレータ120の貫通孔周囲部(貫通孔121を取り囲む部分)を含む内側部126と、内側部126より外周側に位置する外側部127と、内側部126と外側部127とを連結する連結部128とを備える。本実施形態では、内側部126および外側部127は、Z軸方向に略直交する方向に延びる略平板状である。また、連結部128は、内側部126と外側部127との両方に対して下側に突出するように湾曲した形状となっている。連結部128における下側(燃料室176側)の部分は凸部となっており、連結部128における上側(空気室166側)の部分は凹部となっている。このため、連結部128は、Z軸方向における位置が内側部126および外側部127とは異なる部分を含んでいる。
【0032】
単セル用セパレータ120における貫通孔121付近には、ガラスを含むガラスシール部125が配置されている。ガラスシール部125は、接合部124に対して空気室166側に位置しており、単セル用セパレータ120の貫通孔周囲部の表面と、単セル110(本実施形態では電解質層112)の表面との両方に接触するように形成されている。ガラスシール部125により、単セル110の周縁部における一方の電極側から他方の電極側へのガスのリーク(クロスリーク)が効果的に抑制される。
【0033】
インターコネクタ190は、略矩形の平板形状の平板部150と、平板部150から空気極114側に突出した複数の略柱状の空気極側集電部134とを有する導電性の部材であり、金属(例えば、フェライト系ステンレス)により形成されている。本実施形態では、インターコネクタ190の表面(空気室166に面する表面)に、例えばスピネル型酸化物により構成された導電性の被覆層194が形成されている。以下では、被覆層194に覆われたインターコネクタ190を、単にインターコネクタ190という。各発電単位102において、上側のインターコネクタ190(の平板部150)は、単セル110に対して空気室166を挟んで上側に配置されている。上側のインターコネクタ190(の各空気極側集電部134)は、例えばスピネル型酸化物により構成された導電性接合材196を介して、単セル110の空気極114に接合されており、これにより単セル110の空気極114に電気的に接続されている。また、各発電単位102において、下側のインターコネクタ190は、単セル110に対して燃料室176を挟んで下側に配置されており、後述する燃料極側集電部材144を介して、単セル110の燃料極116に電気的に接続されている。インターコネクタ190は、発電単位102間の電気的導通を確保すると共に、発電単位102間での反応ガスの混合を抑制する。なお、本実施形態では、2つの発電単位102が隣接して配置されている場合、1つのインターコネクタ190は、隣接する2つの発電単位102に共有されている。すなわち、ある発電単位102における上側のインターコネクタ190は、その発電単位102の上側に隣接する他の発電単位102における下側のインターコネクタ190と同一部材である。また、燃料電池スタック100は下端用セパレータ189を備えているため、燃料電池スタック100において最も下側に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ190を備えていない(
図2から
図4参照)。
【0034】
IC用セパレータ180は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の貫通孔181が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、フェライト系ステンレス等の金属により形成されている。IC用セパレータ180の板厚は、比較的薄く、例えば0.05mm以上、0.2mm以下程度である。IC用セパレータ180における貫通孔181を取り囲む部分(以下、「貫通孔周囲部」という。)は、インターコネクタ190の平板部150の周縁部における上側の表面に例えば溶接により接合されている。ある発電単位102に含まれる一対のIC用セパレータ180のうち、上側のIC用セパレータ180は、該発電単位102の空気室166と、該発電単位102に対して上側に隣り合う他の発電単位102の燃料室176とを区画する。また、ある発電単位102に含まれる一対のIC用セパレータ180のうち、下側のIC用セパレータ180は、該発電単位102の燃料室176と、該発電単位102に対して下側に隣り合う他の発電単位102の空気室166とを区画する。このように、IC用セパレータ180により、発電単位102の周縁部における発電単位102間のガスのリークが抑制される。なお、燃料電池スタック100において最も上側に位置する発電単位102の上側のインターコネクタ190に接合されたIC用セパレータ180は、上側エンドプレート104に電気的に接続されている。
【0035】
IC用セパレータ180は、IC用セパレータ180の貫通孔周囲部(貫通孔181を取り囲む部分)を含む内側部186と、内側部186より外周側に位置する外側部187と、内側部186と外側部187とを連結する連結部188とを備える。本実施形態では、内側部186および外側部187は、Z軸方向に略直交する方向に延びる略平板状である。また、連結部188は、内側部186と外側部187との両方に対して下側に突出するように湾曲した形状となっている。連結部188における下側(空気室166側)の部分は凸部となっており、連結部188における上側(燃料室176側)の部分は凹部となっている。このため、連結部188は、Z軸方向における位置が内側部186および外側部187とは異なる部分を含んでいる。
【0036】
図5から
図8に示すように、空気極側フレーム130は、中央付近にZ軸方向に貫通する略矩形の孔131が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、マイカ等の絶縁体により形成されている。空気極側フレーム130の孔131は、空気極114に面する空気室166を構成する。空気極側フレーム130は、単セル用セパレータ120の周縁部における上側の表面と、上側のIC用セパレータ180の周縁部における下側の表面とに接触しており、両者の間のガスシール性(すなわち、空気室166のガスシール性)を確保するシール部材として機能する。また、空気極側フレーム130によって、発電単位102に含まれる一対のIC用セパレータ180間(すなわち、一対のインターコネクタ190間)間が電気的に絶縁される。また、空気極側フレーム130には、酸化剤ガス供給マニホールド161と空気室166とを連通する酸化剤ガス供給連通流路132と、空気室166と酸化剤ガス排出マニホールド162とを連通する酸化剤ガス排出連通流路133とが形成されている。
【0037】
図5から
図7および
図9に示すように、燃料極側フレーム140は、中央付近にZ軸方向に貫通する略矩形の孔141が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。燃料極側フレーム140の孔141は、燃料極116に面する燃料室176を構成する。燃料極側フレーム140は、単セル用セパレータ120の周縁部における下側の表面と、下側のIC用セパレータ180の周縁部における上側の表面とに接触している。また、燃料極側フレーム140には、燃料ガス供給マニホールド171と燃料室176とを連通する燃料ガス供給連通流路142と、燃料室176と燃料ガス排出マニホールド172とを連通する燃料ガス排出連通流路143とが形成されている。
【0038】
図5から
図7に示すように、燃料極側集電部材144は、燃料室176内に配置されている。燃料極側集電部材144は、インターコネクタ対向部146と、電極対向部145と、電極対向部145とインターコネクタ対向部146とをつなぐ連接部147とを備えており、例えば、ニッケルやニッケル合金、ステンレス等により形成されている。電極対向部145は、燃料極116の下側の表面に接触しており、インターコネクタ対向部146は、インターコネクタ190(の平板部150)の上側の表面に接触している。ただし、上述したように、燃料電池スタック100において最も下側に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ190を備えていないため、該発電単位102における燃料極側集電部材144のインターコネクタ対向部146は、下端用セパレータ189に接触している。燃料極側集電部材144は、このような構成であるため、燃料極116とインターコネクタ190(または下端用セパレータ189)とを電気的に接続する。なお、燃料極側集電部材144の電極対向部145とインターコネクタ対向部146との間には、例えばマイカにより形成されたスペーサー149が配置されている。そのため、燃料極側集電部材144が温度サイクルや反応ガス圧力変動による発電単位102の変形に追随し、燃料極側集電部材144を介した燃料極116とインターコネクタ190(または下端用セパレータ189)との電気的接続が良好に維持される。
【0039】
本実施形態では、空気室166は、単セル110とインターコネクタ190と単セル用セパレータ120とIC用セパレータ180と空気極側フレーム130とによって画定されている。これらの部材のうち、単セル110以外の部材が、特許請求の範囲における流路画定部の一例である。また、燃料室176は、単セル110とインターコネクタ190と単セル用セパレータ120とIC用セパレータ180と燃料極側フレーム140とによって画定されている。これらの部材のうち、単セル110以外の部材が、特許請求の範囲における流路画定部の一例である。
【0040】
A-2.燃料電池スタック100の動作:
図2および
図5に示すように、酸化剤ガス供給マニホールド161の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して酸化剤ガスOGが供給されると、酸化剤ガスOGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して酸化剤ガス供給マニホールド161に供給され、酸化剤ガス供給マニホールド161から各発電単位102の酸化剤ガス供給連通流路132を介して、空気室166に供給される。また、
図3および
図6に示すように、燃料ガス供給マニホールド171の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料ガスFGが供給されると、燃料ガスFGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して燃料ガス供給マニホールド171に供給され、燃料ガス供給マニホールド171から各発電単位102の燃料ガス供給連通流路142を介して、燃料室176に供給される。
【0041】
各発電単位102の空気室166に酸化剤ガスOGが供給され、燃料室176に燃料ガスFGが供給されると、単セル110において酸化剤ガスOGおよび燃料ガスFGの電気化学反応による発電が行われる。この発電反応は発熱反応である。各発電単位102において、単セル110の空気極114は上側のインターコネクタ190に電気的に接続され、燃料極116は燃料極側集電部材144を介して下側のインターコネクタ190(または、下端用セパレータ189)に電気的に接続されている。すなわち、燃料電池スタック100に含まれる複数の発電単位102は、電気的に直列に接続されている。また、最も上側に位置する発電単位102の上側のインターコネクタ190およびIC用セパレータ180は、上側エンドプレート104に電気的に接続されており、最も下側に位置する発電単位102の燃料極側集電部材144に電気的に接続された下端用セパレータ189は、下側エンドプレート106に電気的に接続されている。そのため、燃料電池スタック100の出力端子として機能するエンドプレート104,106から、各発電単位102において生成された電気エネルギーが取り出される。なお、SOFCは、比較的高温(例えば700℃から1000℃)で発電が行われることから、起動後、発電により発生する熱で高温が維持できる状態になるまで、燃料電池スタック100が加熱器(図示せず)により加熱されてもよい。
【0042】
図2および
図5に示すように、各発電単位102の空気室166から酸化剤ガス排出連通流路133を介して酸化剤ガス排出マニホールド162に排出された酸化剤オフガスOOGは、酸化剤ガス排出マニホールド162の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。また、
図3および
図6に示すように、各発電単位102の燃料室176から燃料ガス排出連通流路143を介して燃料ガス排出マニホールド172に排出された燃料オフガスFOGは、燃料ガス排出マニホールド172の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示しない)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。
【0043】
なお、本実施形態の燃料電池スタック100では、
図8および
図9に示すように、Z軸方向視で、酸化剤ガス供給マニホールド161に連通する酸化剤ガス供給連通流路132と、燃料ガス排出マニホールド172に連通する燃料ガス排出連通流路143とが、単セルの一の辺に(同じ方向に)対向するように配置されており、かつ、酸化剤ガス排出マニホールド162に連通する酸化剤ガス排出連通流路133と、燃料ガス供給マニホールド171に連通する燃料ガス供給連通流路142とが、単セルの一の辺に対して単セル110の中心点を挟んで対向する他の辺に(同じ方向に)対向するように配置されている。すなわち、本実施形態の発電単位102(燃料電池スタック100)は、空気室166における酸化剤ガスOGの主たる流れ方向(X軸正方向からX軸負方向へ向かう方向)と燃料室176における燃料ガスFGの主たる流れ方向(X軸負方向からX軸正方向へ向かう方向)とが略反対方向(互いに対向する方向)である、カウンターフロータイプのSOFCである。
【0044】
A-3.流れ制限部(200,300)の構成:
本実施形態の燃料電池スタック100では、各発電単位102は、流れ制限部(200,300)を備える。流れ制限部は、空気極側流れ制限部200と燃料極側流れ制限部300とを含む。
【0045】
A-3-1.流れ制限部(200,300)の配置:
空気極側流れ制限部200は、空気室166の一部に配置されている。具体的には、
図4および
図8に示すように、空気極側流れ制限部200は、上下方向視で発電領域E(
図8の点線枠参照)の外側に配置されている。発電領域Eは、上下方向視で、電解質層112と空気極114と燃料極116とが重なる領域である。また、空気極側流れ制限部200は、上下方向視で、空気室166への酸化剤ガスOGの供給口(酸化剤ガス供給連通流路132)から発電領域Eに至る経路と、発電領域Eから酸化剤オフガスOOGの排出口(酸化剤ガス排出連通流路133)に至る経路との両方に重ならないように配置されている。より具体的には、空気極側流れ制限部200は、上下方向視で、空気室166における酸化剤ガスOGの主たる流れ方向(
図8の白抜き矢印参照 X軸負方向)に直交する幅方向(Y軸方向)において、発電領域Eの両側のそれぞれに配置されている。酸化剤ガスOGの主たる流れ方向は、空気室166において酸化剤ガスOGのほとんどが流れる主経路の方向であり、例えば酸化剤ガス供給連通流路132から酸化剤ガス排出連通流路133に向かう直進方向である(以下、単に「ガス流れ方向」ということがある)。
【0046】
燃料極側流れ制限部300は、燃料室176の一部に配置されている。具体的には、
図4および
図9に示すように、燃料極側流れ制限部300は、上下方向視で発電領域E(
図9の点線枠参照)の外側に配置されている。また、燃料極側流れ制限部300は、上下方向視で、燃料室176への燃料ガスFGの供給口(燃料ガス供給連通流路142)から発電領域Eに至る経路と、発電領域Eから燃料オフガスFOGの排出口(燃料ガス排出連通流路143)に至る経路との両方に重ならないように配置されている。より具体的には、燃料極側流れ制限部300は、上下方向視で、燃料室176における燃料ガスFGの主たる流れ方向(
図9の白抜き矢印参照 X軸正方向)に直交する幅方向(Y軸方向)において、発電領域Eの両側のそれぞれに配置されている。燃料ガスFGの主たる流れ方向は、燃料室176において燃料ガスFGのほとんどが流れる主経路の方向であり、例えば燃料ガス供給連通流路142から燃料ガス排出連通流路143に向かう直進方向である(以下、単に「ガス流れ方向」ということがある)。なお、幅方向は、特許請求の範囲における第2の方向の一例であり、ガス流れ方向は、特許請求の範囲における第3の方向の一例である。
【0047】
A-3-2.流れ制限部(200,300)の圧縮代と膨張代:
流れ制限部200,300は、いずれも弾性を有する材料により形成されており、本実施形態では、絶縁性を有するアルミナ製フェルトにより形成されている。流れ制限部200,300は、各ガス室166,176において上下方向に互いに対向する一対の対向部の間に、圧縮代と膨張代とを有する状態で挟み込まれている。ここで、流れ制限部200,300が圧縮代と膨張代とを有する状態であるか否かは、次の方法により確認することができる。まず、流れ制限部200,300について、次の3つの上下方向の厚みを測定する。
「解体前厚み」:非運転時において燃料電池スタック100に配置された流れ制限部200,300(
図4等参照)の厚みである。この解体前厚みは、例えばCT(Computed Tomography)装置を用いた観察により測定することができる。また、この解体前厚みは、CT装置を用いずに、燃料電池スタック100を切断して得られた断面の写真から測定することもできる。
「解体後厚み」:燃料電池スタック100を解体して取り出された自然状態の流れ制限部200,300の厚みである。
「加圧時厚さ」:上記自然状態の流れ制限部200,300に対して上下方向に荷重を付与して圧縮変形させ、かつ、流れ制限部200,300が損傷(破断等)しないときの最小厚みである。
そして、「解体前厚み」<「解体後厚み」の条件を満たす場合、流れ制限部200,300は、膨張代がある状態で挟み込まれていると判断できる。「解体前厚み」>「加圧時厚さ」の条件を満たす場合、流れ制限部200,300は、圧縮代がある状態で挟み込まれていると判断できる。
【0048】
具体的には、
図4に示すように、空気極側流れ制限部200は、空気室166の天井面を構成するIC用セパレータ180およびインターコネクタ190と、空気室166の底面を構成する単セル用セパレータ120との間に、圧縮代と膨張代とを有する状態で挟み込まれている。このとき、IC用セパレータ180およびインターコネクタ190は、特許請求の範囲における第1の対向部の一例であり、単セル用セパレータ120は、特許請求の範囲における第2の対向部の一例である。
【0049】
燃料極側流れ制限部300は、燃料室176の天井面を構成する単セル用セパレータ120および単セル110(燃料極116)と、燃料室176の底面を構成するIC用セパレータ180との間に、圧縮代と膨張代とを有する状態で挟み込まれている。このとき、単セル用セパレータ120および単セル110は、特許請求の範囲における第1の対向部の一例であり、IC用セパレータ180は、特許請求の範囲における第2の対向部の一例である。
【0050】
A-3-3.流れ制限部(200,300)の上下方向の厚み:
図7には、流れ制限部200,300の周辺部分X1の構成が拡大して示されている。なお、
図7の全体構成では、流れ制限部200,300が省略されている。
図7に示すように、流れ制限部200,300を挟み込む一対の対向部の表面は凹凸形状を有している。
【0051】
具体的には、空気室166の天井面では、インターコネクタ190がIC用セパレータ180に対して下方に突出している。このため、空気極側流れ制限部200が配置される空間には、小スペースS1と大スペースS2とが存在する。小スペースS1は、インターコネクタ190と単セル用セパレータ120とが第1の距離L1だけ離間して対向する空間である。大スペースS2は、単セル用セパレータ120とIC用セパレータ180とが第2の距離L2だけ離間して対向する空間である。第2の距離L2は、第1の距離L1よりも長い。
【0052】
空気極側流れ制限部200は、第1の流れ制限部材210と第2の流れ制限部材220とを含む(
図7の拡大図参照)。第1の流れ制限部材210は、小スペースS1と大スペースS2との両方にわたって配置されている。第2の流れ制限部材220は、小スペースS1には配置されず、大スペースS2において第1の流れ制限部材210に重ねて配置されている。第1の流れ制限部材210と第2の流れ制限部材220とは、上下方向において互いに密着するように配置されている。また、第1の流れ制限部材210と第2の流れ制限部材220とは、いずれも全体にわたって厚みが均一な板状部材である。第2の流れ制限部材220の上下方向の厚みD2は、第1の流れ制限部材210の上下方向の厚みD1よりも厚い。
【0053】
燃料室176の天井面では、単セル110が単セル用セパレータ120に対して下方に突出している。このため、燃料極側流れ制限部300が配置される空間には、小スペースS3と大スペースS4とが存在する。小スペースS3は、単セル用セパレータ120とIC用セパレータ180とが第1の距離L3だけ離間して対向する空間である。大スペースS4は、単セル用セパレータ120とIC用セパレータ180とが第2の距離L4だけ離間して対向する空間である。第2の距離L4は、第1の距離L3よりも長い。
【0054】
燃料極側流れ制限部300は、第1の流れ制限部材310と第2の流れ制限部材320とを含む。第1の流れ制限部材310は、小スペースS3と大スペースS4との両方にわたって配置されている。第2の流れ制限部材320は、小スペースS3には配置されず、大スペースS4において第1の流れ制限部材310に重ねて配置されている。第1の流れ制限部材310と第2の流れ制限部材320とは、上下方向において互いに密着するように配置されている。また、第1の流れ制限部材310と第2の流れ制限部材320とは、いずれも全体にわたって厚みが均一な板状部材である。第2の流れ制限部材320の上下方向の厚みは、第1の流れ制限部材310の上下方向の厚みよりも厚い。
【0055】
A-3-4.流れ制限部(200,300)と流路画定部との間の隙間:
図8に示すように、空気極側フレーム130の孔131を形成する内周面は、空気室166の外周を画定する。孔131は、上下方向視で略矩形である。すなわち、孔131を形成する内周面は、ガス流れ方向(X軸方向)に沿った一対の平行面131x,131xと、ガス流れ方向に交差(直交)する一対の交差面131y,131yとを有している。空気室166には、2つの空気極側流れ制限部200が配置されており、各空気極側流れ制限部200は、ガス流れ方向に長い長尺状であり、一対の平行面131x,131xのそれぞれに沿うように配置されている。空気極側流れ制限部200の上流側の端部と、上流側に位置する交差面131yとの距離を、上流側距離L5とし、空気極側流れ制限部200の下流側の端部と、下流側に位置する交差面131yとの距離を、下流側距離L6とする。上流側距離L5と下流側距離L6とは互いに異なっている。上流側距離L5と下流側距離L6との差は、例えば0.1mm以上とすることができる。なお、
図8では、上流側距離L5が下流側距離L6より短くなっているが、上流側距離L5が下流側距離L6より長くてもよい。なお、各交差面131yは、特許請求の範囲における第3の対向部および第4の対向部の一例であり、上流側距離L5と下流側距離L6とは、特許請求の範囲における第3の距離および第4の距離の一例である。
【0056】
図9に示すように、燃料極側フレーム140の孔141を形成する内周面は、燃料室176の外周を画定する。孔141は、上下方向視で略矩形である。すなわち、孔141を形成する内周面は、ガス流れ方向(X軸方向)に沿った一対の平行面141x,141xと、ガス流れ方向に交差する一対の交差面141y,141yとを有している。燃料室176には、2つの燃料極側流れ制限部300が配置されており、各燃料極側流れ制限部300は、ガス流れ方向に長い長尺状であり、一対の平行面141x,141xのそれぞれに沿うように配置されている。燃料極側流れ制限部300の上流側の端部と、上流側に位置する交差面141yとの距離を、上流側距離L7とし、燃料極側流れ制限部300の下流側の端部と、下流側に位置する交差面141yとの距離を、下流側距離L8とする。上流側距離L7と下流側距離L8とは互いに異なっている。上流側距離L7と下流側距離L8との差は、例えば0.1mm以上とすることができる。なお、
図9では、上流側距離L7が下流側距離L8より短くなっているが、上流側距離L7が下流側距離L8より長くてもよい。なお、各交差面141yは、特許請求の範囲における第3の対向部および第4の対向部の一例であり、上流側距離L7と下流側距離L8とは、特許請求の範囲における第3の距離および第4の距離の一例である。
【0057】
A-3-5.流れ制限部(200,300)の外形形状:
図10は、互いに外形形状が異なる空気極側流れ制限部200,200Aを例示する説明図である。同図(A)には、比較例の空気極側流れ制限部200Aが示されており、同図(B)には、上記空気極側流れ制限部200が示されている。各図(A)(B)には、上下方向視において、空気極側流れ制限部200,200Aと空気極側フレーム130の一部とが示されている。
【0058】
図8および
図10に示すように、孔131を形成する内周面は、各角部が上下方向視で円弧状の曲面に形成されている。上下方向視で、比較例の空気極側流れ制限部200Aの外形形状は、この内周面に沿う曲面形状とされている。このため、比較例の空気極側流れ制限部200Aと孔131を形成する内周面との間に隙間が形成され難くい。このため、空気室166に供給された酸化剤ガスOGが、比較例の空気極側流れ制限部200Aの外周側の迂回経路(空気極側流れ制限部200Aと孔131を形成する内周面との間の経路)に流れ込むことを抑制できるメリットがある。
【0059】
但し、比較例の空気極側流れ制限部200Aでは、次のデメリットがある。すなわち、燃料電池スタック100の製造過程で、製造ロボット(図示しない)が、空気極側流れ制限部200Aを空気室166に配置する場合、空気極側流れ制限部200Aを空気室166の所定の位置に正確に配置できないおそれがある。すなわち、製造ロボットが、空気極側流れ制限部200Aを撮像し、その撮像画像に対して、例えば幅方向(Y方向)とガス流れ方向(X軸方向)との直交する2方向の座標系に基づき、空気極側流れ制限部200Aの中心位置を認識する場合、その中心位置を正確に特定できないおそれがある。なぜなら、空気極側流れ制限部200Aのガス流れ方向の両端部Xa,Xaは、いずれも曲面である。このため、空気極側流れ制限部200Aの両端の位置を正確に特定することができず、その結果、ガス流れ方向における空気極側流れ制限部200Aの中心位置を正確に特定できないおそれがあるからである。なお、空気極側流れ制限部200Aの幅方向の両端部Ya,Yaは、その幅方向に略直交する直線部分を有するため、幅方向における空気極側流れ制限部200Aの中心位置を正確に特定できる可能性がある。
【0060】
これに対して、
図10(B)に示すように、空気極側流れ制限部200のガス流れ方向の両端部Xb,Xbは、そのガス流れ方向に略直交する直線部分を有し、かつ、空気極側流れ制限部200の幅方向の両端部Yb,Ybは、その幅方向に略直交する直線部分を有する。具体的には、第1の流れ制限部材210のガス流れ方向の両端部Xb,Xbは、そのガス流れ方向に略直交する直線部分を有する。また、第1の流れ制限部材210の幅方向の両端部Yb,Ybは、その幅方向に略直交する直線部分を有する。第2の流れ制限部材220のガス流れ方向の両端部Xb,Xbは、そのガス流れ方向に略直交する直線部分を有する。また、第2の流れ制限部材220の幅方向の両端部Yb,Ybは、その幅方向に略直交する直線部分を有する。なお、第1の流れ制限部材210と第2の流れ制限部材220とは、いずれも、上下方向視の形状が、全ての辺が直線である多角形に形成されている。
【0061】
このような多角形状に形成された空気極側流れ制限部200では、上記比較例の空気極側流れ制限部200Aに比べて、孔131を形成する内周面との間に隙間が形成され易い。これに対して、上述したように、空気極側流れ制限部200を、上流側距離L5と下流側距離L6とが互いに異なるように配置することで、空気室166に供給された酸化剤ガスOGが、空気極側流れ制限部200の外周側の迂回経路(空気極側流れ制限部200と孔131を形成する内周面との間の経路)に流れ込むことを抑制できる。なお、燃料極側流れ制限部300の外形形状も、空気極側流れ制限部200と同様に多角形状に形成されている。
【0062】
A-4.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の燃料電池スタック100は、流れ制限部200,300を備える(
図4、
図7から
図9参照)。流れ制限部200,300は、各ガス室166,176において上下方向に互いに対向する一対の対向部の間に、圧縮代と膨張代とを有する状態で挟み込まれている。このため、本実施形態では、例えば流れ制限部が圧縮代と膨張代との少なくとも一方を有しない状態で配置された構成に比べて、温度変化等に伴う一対の対向部の変位や変形に追従するように流れ制限部が変形する。従って、本実施形態によれば、ガス流路(空気室166、燃料室176)に供給されたガス(酸化剤ガスOG、燃料ガスFG)が流れ制限部200,300の配置領域に流れ込むことを効果的に抑制することができる。また、流れ制限部200,300に荷重が加わることに起因して流れ制限部200,300が破損することを抑制することができる。また、流れ制限部200,300が膨張代を有するため、固定具や接合材を用いなくても、流れ制限部200,300自身の弾性により生じる面圧と摩擦とによって、ガス流路内における流れ制限部200,300の位置ずれが抑制される。
【0063】
本実施形態では、流れ制限部200,300は、第1の流れ制限部材210,310と第2の流れ制限部材220,320とを部分的に重ね合わせて上下方向の凹凸が形成された構成である(
図7の拡大図参照)。このため、本実施形態によれば、一対の対向部が凹凸スペースS1~S4を形成する形態において、例えば流れ制限部200,300が1つの部材で形成された構成に比べて、複雑な形状の部材を要することなく、ガス流路(空気室166、燃料室176)に供給されたガスが流れ制限部200,300の配置領域に流れ込むことを効果的に抑制することができる。
【0064】
本実施形態では、流れ制限部200,300は、上流側距離L5,L7と下流側距離L6,L8とが互いに異なるように配置されている(
図8および
図9参照)。このため、本実施形態によれば、例えば、上流側距離L5,L7と下流側距離L6,L8とが同じである構成に比べて、流れ制限部200,300の外周側に流れ込むガスの流路の最小断面積が小さい分だけ、ガス流路に供給されたガスが流れ制限部200,300の配置領域に流れ込むことを、より効果的に抑制することができる。
【0065】
本実施形態では、流れ制限部200,300は、アルミナ製フェルトにより形成されている。このため、本実施形態によれば、比較的に加工がしやすいセラミックフェルトを用いることにより、ガス流路に供給されたガスが流れ制限部200,300の配置領域に流れ込むことを、より効果的に抑制することができる。
【0066】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0067】
上記実施形態における燃料電池スタック100の構成や燃料電池スタック100を構成する各部分の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、空気室166と燃料室176との両方に流れ制限部200,300を配置する構成であったが、例えば、空気室166と燃料室176とのいずれか一方だけに流れ制限部を配置する構成でもよい。
【0068】
上記実施形態では、ガス流路として、空気室166および燃料室176を例示したが、ガス流路は、必ずしも四方が囲まれた空間である必要はなく、要するに、空気極と燃料極とのいずれか一方の電極に面する空間であればよい。また、「流路画定部」として、単セル用セパレータ120やIC用セパレータ180等を挙げたが、これに限らず、例えば金属支持基板を有する、いわゆるメタルサポート型の燃料電池スタックでは、その金属支持基板は、流路画定部の一例である。
【0069】
上記実施形態では、燃料電池スタック100に含まれるすべての発電単位102が流れ制限部200,300を備えているが、必ずしも燃料電池スタック100に含まれるすべての発電単位102が流れ制限部200,300を備えている必要はなく、少なくとも1つの発電単位102が流れ制限部200,300を備えていればよい。
【0070】
流れ制限部200,300の構成は種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、流れ制限部200,300は、2つの流れ規制部材を部分的に重ね合わせて上下方向の凹凸が形成された構成であったが、3つ以上の流れ規制部材を部分的に重ね合わせて上下方向の凹凸が形成された構成でもよい。また、流れ制限部200,300は、第1の流れ制限部材210,310と第2の流れ制限部材220,320とが一体的に形成された構成でもよい。また、流れ制限部200,300は、上下方向の凹凸を有しない平板状の形状でもよい。
【0071】
流れ制限部200,300は、上下方向視で発電領域Eに対して幅方向の両側に配置されていたが、例えば、発電領域Eに対して幅方向の一方側だけに配置されてもよい。また、流れ制限部200,300は、上下方向視で発電領域Eに対してガス流れ方向の少なくとも一方側において、ガスの主経路に重ならない位置に配置されてもよい。例えば空気極側流れ制限部200を、空気極側フレーム130の孔131を形成する上記直交面131yにおける幅方向の端部付近に配置して、空気室166の角部へのOGの流れ込みを抑制してもよい。
【0072】
流れ制限部200,300の形成材料として、アルミナ製フェルトを例示したが、弾性を有する材料であればよく、例えば、アルミナ製フェルト以外のセラミックフェルト、マイカやバーミキュライト等でもよい。また、流れ制限部200,300の形成材料として、弾性を有する材料と弾性を有さない材料とを組み合わせて全体して弾性を有する構成としてもよい。さらに、作動温度がSOFCより低い燃料電池に本発明を適用する場合には、流れ制限部200,300の形成材料として耐熱性のゴムを用いてもよい。また、上記実施形態では、流れ制限部200,300の外形形状は、多角形状であったが、上記比較例の空気極側流れ制限部200Aと同じ形状でもよいし、それら以外の任意の形状でもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、一対のエンドプレート104,106に孔32,34が形成されているが、一対のエンドプレート104,106の少なくとも一方について該孔32,34が形成されていなくてもよい。また、上記実施形態では、一対のエンドプレート104,106がターミナルプレートとして機能するが、一対のエンドプレート104,106とは別に、ターミナルプレートを設けてもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、インターコネクタ190は導電性の被覆層194を含んでいるが、インターコネクタ190が該被覆層194を含んでいなくてもよい。また、上記実施形態では、単セル110が反応防止層118を有しているが、単セル110が反応防止層118を有さないとしてもよい。また、上記実施形態において、燃料電池スタック100に含まれる単セル110の個数(発電単位102の個数)は、あくまで一例であり、単セル110の個数は燃料電池スタック100に要求される出力電圧等に応じて適宜決められる。また、上記実施形態における各部材を構成する材料は、あくまで例示であり、各部材が他の材料により構成されていてもよい。
【0075】
また、上記実施形態の燃料電池スタック100は、カウンターフロータイプのSOFCであるが、本明細書に開示される技術は、コフロータイプのSOFCにも同様に適用可能である。なお、コフロータイプのSOFCでは、Z軸方向視で、燃料ガス供給連通流路142と酸化剤ガス供給連通流路132とは、単セル110の一の辺に対向するように配置され、かつ、燃料ガス排出連通流路143と酸化剤ガス排出連通流路133とは、単セル110の該一の辺に対して単セル110の中心点を挟んで対向する他の辺に対向するように配置されているような構成を有している。また、本明細書に開示される技術は、クロスフロータイプのSOFCにも同様に適用可能である。
【0076】
また、上記実施形態では、燃料ガスに含まれる水素と酸化剤ガスに含まれる酸素との電気化学反応を利用して発電を行う燃料電池スタック100を対象としているが、本明細書に開示される技術は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形電解セル(SOEC)の構成単位である電解単セルを複数備える電解セルスタックにも同様に適用可能である。なお、電解セルスタックの基本的な構成は、例えば特開2016-81813号公報に記載されているように公知であるが、おおよそ以下の通りである。すなわち、電解セルスタックの構成は、上述した実施形態の燃料電池スタック100の構成において、「発電単位」を「電解セル単位」と読み替え、「単セル」を「電解単セル」と読み替え、「酸化剤ガス供給マニホールド」を「空気排出マニホールド」と読み替え、「酸化剤ガス排出マニホールド」を「空気供給マニホールド」と読み替え、「燃料ガス供給マニホールド」を「水素排出マニホールド」と読み替え、「燃料ガス排出マニホールド」を「水蒸気供給マニホールド」と読み替え、「酸化剤ガス供給連通流路」を「空気排出連通流路」と読み替え、「酸化剤ガス排出連通流路」を「空気供給連通流路」と読み替え、「燃料ガス供給連通流路」を「水素排出連通流路」と読み替え、「燃料ガス排出連通流路」を「水蒸気供給連通流路」と読み替えた構成である。
【0077】
電解セルスタックの運転の際には、空気極114がプラス(陽極)で燃料極(水素極)116がマイナス(陰極)となるように、電解セルスタックに電圧が印加される。また、ガス通路部材27を介して水蒸気供給マニホールドに原料ガスとしての水蒸気が供給される。なお、供給される水蒸気に、水素ガスが含まれていてもよい。水蒸気供給マニホールドに供給された水蒸気は、水蒸気供給マニホールドから各電解セル単位の水蒸気供給連通流路を介して燃料室176に供給され、各電解単セルにおける水の電気分解反応に供される。各電解単セルにおける水の電気分解反応により燃料室176で発生した水素ガスは、余った水蒸気と共に水素排出連通流路を介して水素排出マニホールドに排出され、水素排出マニホールドからガス通路部材27を経て電解セルスタックの外部に取り出される。
【0078】
また、電解セルスタックの運転の際には、電解セルスタックの温度の制御等のために、必要により空気が電解セルスタックの内部に供給される。この場合には、ガス通路部材27を介して空気供給マニホールドに供給された空気が、空気供給マニホールドから各電解セル単位の空気供給連通流路を介して、空気室166に供給される。空気室166に供給された空気は、空気極114で生成される酸素とともに空気排出連通流路を介して空気排出マニホールドに排出され、空気排出マニホールドからガス通路部材27を経て電解セルスタックの外部に排出される。
【0079】
このような構成の電解セルスタックにおいても、上記実施形態における燃料電池スタック100と同様の構成を採用することにより、上記実施形態における燃料電池スタック100の作用効果と同様の作用効果を奏する。
【0080】
また、上記実施形態では、固体酸化物形燃料電池(SOFC)を例に説明したが、本明細書に開示される技術は、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)や固体高分子形燃料電池(PEFC)といった他のタイプの燃料電池(または電解セル)にも適用可能である。
【符号の説明】
【0081】
22:ボルト 24:ナット 26:絶縁シート 27:ガス通路部材 28:本体部 29:分岐部 32,34,131,141:孔 100:燃料電池スタック 102:発電単位 103:発電ブロック 104,106:エンドプレート 108:連通孔 109:ボルト孔 110:単セル 112:電解質層 114:空気極 116:燃料極 118:反応防止層 120:単セル用セパレータ 121,181:貫通孔 124:接合部 125:ガラスシール部 126,186:内側部 127,187:外側部 128,188:連結部 130:空気極側フレーム 131x,141x:平行面 131y,141y:交差面 132:酸化剤ガス供給連通流路 133:酸化剤ガス排出連通流路 134:空気極側集電部 140:燃料極側フレーム 142:燃料ガス供給連通流路 143:燃料ガス排出連通流路 144:燃料極側集電部材 145:電極対向部 146:インターコネクタ対向部 147:連接部 149:スペーサー 150:平板部 161,162,171,172:マニホールド 166:空気室 176:燃料室 180:IC用セパレータ 189:下端用セパレータ 190:インターコネクタ 194:被覆層 196:導電性接合材 200,200A:空気極側流れ制限部 210,310:第1の流れ制限部材 220,320:第2の流れ制限部材 E:発電領域