(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092236
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】応力センサー及び応力検出用シート
(51)【国際特許分類】
G01L 1/14 20060101AFI20240701BHJP
G01L 5/00 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
G01L1/14 J
G01L5/00 101Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208016
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000231361
【氏名又は名称】NISSHA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100158610
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 新吾
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【弁理士】
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】人見 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】渡津 裕次
【テーマコード(参考)】
2F051
【Fターム(参考)】
2F051AB06
2F051BA07
(57)【要約】
【課題】検出分解能を維持したまま大型化しても、応力センサーの配線数を大幅に削減でき、大型化が容易な応力センサーを提供する。
【解決手段】応力センサー1では、第2電極層3は、各対の第1列電極31及び第2列電極32の間に、各行において第1方向に延びるM本の第1溝35及び第1方向と交差する第2方向に延びるM本の第2溝36を有する。各対の第1行電極21は、N列の第1溝35と重なるように配置されている。各対の第2行電極22は、N列の第2溝36と重なるように配置されている。検出回路5は、N対の第1列電極31及び第2列電極32を電極毎に異なるタイミングで駆動する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
M行N列(ただし、M,Nは2以上の整数)に分けて検出するためのM×N個の検出領域と重なり、互いに対向するように設けられている第1電極層及び第2電極層と、
前記第1電極層と前記第2電極層との間に在って両電極層を電気的に絶縁するとともに弾性変形可能な材料からなる絶縁弾性体層と、
前記第1電極層及び前記第2電極層に接続されている検出回路と
を備え、
前記第1電極層は、N列に渡って延びていて互いに絶縁されているM対の第1行電極及び第2行電極と、M対の前記第1行電極及び前記第2行電極と前記検出回路とを接続するM本の第1行配線及びM本の第2行配線とを含み、
前記第2電極層は、M行に渡って延びていて互いに絶縁されているN対の第1列電極及び第2列電極と、N対の前記第1列電極及び前記第2列電極と前記検出回路とを接続するN本の第1列配線及びN本の第2列配線とを含み、
前記第2電極層は、各対の前記第1列電極及び前記第2列電極の間に、各行において第1方向に延びるM本の第1溝及び前記第1方向と交差する第2方向に延びるM本の第2溝を有し、
各対の前記第1行電極は、N列の前記第1溝と重なるように配置され、
各対の前記第2行電極は、N列の前記第2溝と重なるように配置され、
前記検出回路は、
N対の前記第1列電極及び前記第2列電極を電極毎に異なるタイミングで駆動することにより、
M行N列に配置されている前記第1溝における前記第1方向に直交するせん断応力を検出し、
M行N列に配置されている前記第2溝における前記第2方向に直交するせん断応力を検出し、
M対の前記第1行電極及び前記第2行電極とN対の前記第1列電極及び前記第2列電極とが交差するM行N列における押圧力を検出するように構成されている、応力センサー。
【請求項2】
前記第1行電極及び前記第2行電極並びに前記第1行配線及び前記第2行配線は、同一面内に配置されている同一部材からなり、
前記第1列電極及び前記第2列電極並びに前記第1列配線及び前記第2列配線は、同一面内に配置されている同一部材からなる、
請求項1に記載の応力センサー。
【請求項3】
前記各第1行電極は、前記第1溝と重なる複数の応力検出部に比べて互いに隣接する前記応力検出部の間の連絡部が細くなっている、
請求項1または請求項2に記載の応力センサー。
【請求項4】
前記各第1行電極が、各検出領域において、複数箇所で前記第1溝と重なるように構成されている、
請求項1または請求項2に記載の応力センサー。
【請求項5】
前記各第2行電極は、各検出領域において、複数箇所で前記第2溝と重なるように構成されている、
請求項1または請求項2に記載の応力センサー。
【請求項6】
表面に、M×N個の前記検出領域と重なり、弾性を有する弾性層を備える、
請求項1または請求項2に記載の応力センサー。
【請求項7】
裏面に、M×N個の前記検出領域と重なるシリコーンフィルムを備える、
請求項1または請求項2に記載の応力センサー。
【請求項8】
M行N列(ただし、M,Nは2以上の整数)に分けて検出するためのM×N個の検出領域と重なり、互いに対向するように設けられている第1電極層及び第2電極層と、
前記第1電極層と前記第2電極層との間に在って両電極層を電気的に絶縁するとともに弾性変形可能な材料からなる絶縁弾性体層と、
を備え、
前記第1電極層は、N列に渡って延びていて互いに絶縁されているM対の第1行電極及び第2行電極と、M対の前記第1行電極及び前記第2行電極をシート外の回路に接続するためのM本の第1行配線及びM本の第2行配線とを含み、
前記第2電極層は、M行に渡って延びていて互いに絶縁されているN対の第1列電極及び第2列電極と、N対の前記第1列電極及び前記第2列電極をシート外の回路に接続するためのN本の第1列配線及びN本の第2列配線とを含み、
前記第2電極層は、各対の前記第1列電極及び前記第2列電極の間に、各行において第1方向に延びるM本の第1溝及び前記第1方向と交差する第2方向に延びるM本の第2溝を有し、
各対の前記第1行電極は、N列の前記第1溝と重なるように配置され、
各対の前記第2行電極は、N列の前記第2溝と重なるように配置されている、応力検出用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、応力を検出する応力センサーに関し、特にせん断応力及び圧縮応力を検出する応力センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1(特許第6699954号公報)に記載されているようなシートを用いる応力センサーがある。この応力センサーは、シート面に対する法線方向の押圧によって応力センサー内の弾性体が圧縮されることを使って圧縮応力(押圧力)を検出する。また、この応力センサーは、シート面に対して面内方向の異なる2つの方向(X方向とY方向)に生じるせん断応力を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているような2方向のせん断応力と圧縮応力を検出できる従来の応力センサーの検出用シートの基本的な断面構成が、
図12に示されている。
図12に示されている従来の応力センサーの検出用シート900は、
図13に示されているj本の第1帯状電極910と、
図14に示されているk本の第2帯状電極920と、
図15に示されているj×k個のセグメント電極930とを備えている。互いに隣接するセグメント電極930の間には、溝935が形成されている。
第1帯状電極910は、配置を考慮して詳細に見ると、1行目に配置されている第1帯状電極α1からj行目に配置されている第1帯状電極αjまでのj本の電極に分類できる。第2帯状電極920は、配置を考慮して詳細に見ると、1列目に配置されている第2帯状電極β1からk列目に配置されている第2帯状電極βkまでのk本の電極に分類できる。また、セグメント電極930は、配置を考慮して詳細に見ると、1行1列目に配置されているセグメント電極γ(1,1)からj行k列目に配置されているセグメント電極γ(j,k)までのj×k個の電極に分類できる。
j×k個のセグメント電極930は、フレキシブル配線基板940に形成されている。フレキシブル配線基板940には、j×k個のセグメント電極930に接続されているj×k個のスルーホール945が設けられている。j×k個のスルーホール945は、外部の回路に接続するためのj×k本の配線950に接続されている。
【0005】
セグメント電極930と第2帯状電極920との間には、弾性体960が配置されている。外部から従来の応力センサーの検出用シート900に力が加わると弾性体960が変形する。弾性体960が変形すると、第1帯状電極910及び第2帯状電極920とセグメント電極930の間の静電容量が変化する。この静電容量の変化に基づいて、せん断応力及び圧縮応力を検出することができる。なお、第1帯状電極910と第2帯状電極920との間には、第1帯状電極910と第2帯状電極920を絶縁するために絶縁フィルム971が配置されている。また、応力センサーの検出用シート900の表面と裏面には、外部の電界の影響を緩和するために、共通電位GNDに接続されている導電フィルム981,982が配置されている。絶縁のために、導電フィルム981と第1帯状電極910の間に絶縁フィルム972が配置され、導電フィルム982と配線950の間に絶縁フィルム973が配置されている。
【0006】
従来の応力センサーの検出用シート900のような構成では、例えば、2行2列でせん断応力を検出するのに、
図16に示されているような、3行3列に配置されている9個のセグメント電極930と、2本の第1帯状電極910と、2本の第2帯状電極920とが必要になる。
図16の検出用シート900を用いると、2行2列のX方向のせん断応力とY方向のせん断応力を検出することができる。
このように、従来の応力センサーの検出用シート900では、マトリクス状に配置されている多数のセグメント電極930並びに第1帯状電極910及び第2帯状電極920によって多数の箇所で圧縮応力及びせん断応力を検出することができる。
しかしながら、j×k個のセグメント電極930に対して外部の回路との接続を図るためには、j×k本の配線950が必要になる。また、配線950とセグメント電極930との接続のためにスルーホール945を形成できるフレキシブル配線基板940が必要になる。
【0007】
図12に示されているような検出シート用900を備える従来の応力センサーでは、検出分解能を維持したまま、配線数を増加させずに大型化することが難しい。検出分解能を維持したまま検出用シート900を大型化すると、セグメント電極930の個数が増えて配線950の本数が増える。配線950の本数が増えると、フレキシブル配線基板940と接続するための外部の回路のコネクタピンの本数も増え、検出用シート900と外部の回路との着脱が困難になる。また、検出用シート900を大型化すると、検出用シート900に用いられるフレキシブル配線基板940も大型化してフレキシブル配線基板940が高価なものとなる。
本発明の課題は、検出分解能を維持したまま大型化しても、応力センサーの配線数を大幅に削減でき、大型化が容易な応力センサーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
本発明の一見地に係る応力センサーは、第1電極層及び第2電極層と、絶縁弾性体層と、検出回路とを備えている。第1電極層及び第2電極層は、M行N列(ただし、M,Nは2以上の整数)に分けて検出するためのM×N個の検出領域と重なり、互いに対向するように設けられている。絶縁弾性体層は、第1電極層と第2電極層との間に在って両電極層を電気的に絶縁するとともに弾性変形可能な材料からなる。検出回路は、第1電極層及び第2電極層に接続されている。第1電極層は、N列に渡って延びていて互いに絶縁されているM対の第1行電極及び第2行電極と、M対の第1行電極及び第2行電極と検出回路とを接続するM本の第1行配線及びM本の第2行配線とを含んでいる。第2電極層は、M行に渡って延びていて互いに絶縁されているN対の第1列電極及び第2列電極と、N対の第1列電極及び第2列電極と検出回路とを接続するN本の第1列配線及びN本の第2列配線とを含んでいる。第2電極層は、各対の第1列電極及び第2列電極の間に、各行において第1方向に延びるM本の第1溝及び第1方向と交差する第2方向に延びるM本の第2溝を有する。各対の第1行電極は、N列の第1溝と重なるように配置されている。各対の第2行電極は、N列の第2溝と重なるように配置されている。検出回路は、N対の第1列電極及び第2列電極を電極毎に異なるタイミングで駆動することにより、M行N列に配置されている第1溝における第1方向に直交するせん断応力を検出し、M行N列に配置されている第2溝における第2方向に直交するせん断応力を検出し、M対の第1行電極及び第2行電極とN対の第1列電極及び第2列電極とが交差するM行N列における押圧力を検出するように構成されている。
このような構成を有する応力センサーは、M本の第1行配線及びM本の第2行配線並びにN本の第1列配線及びN本の第2列配線を設けることで、M行N列の第1方向及び第2方向のせん断応力並びに圧縮応力を検出できるように配線するための配線数を大幅に削減することができる。
【0009】
上述の応力センサーは、第1行電極及び第2行電極並びに第1行配線及び第2行配線は、同一面内に配置されている同一部材からなり、第1列電極及び第2列電極並びに第1列配線及び第2列配線は、同一面内に配置されている同一部材からなるように構成することができる。このように構成された応力センサーは、第1行電極及び第2行電極、第1行配線及び第2行配線、第1列電極及び第2列電極並びに第1列配線及び第2列配線を含む例えば検出用シートを薄くすることができる。また、行列に配置される電極間距離が等しくなるので、電極間距離が異なることによる第1方向と第2方向のせん断応力についての感度の差を無くすことができる。
上述の応力センサーは、各第1行電極は、第1溝と重なる複数の応力検出部に比べて互いに隣接する応力検出部の間の連絡部が細くなっている。このように構成された応力センサーは、連絡部が細くない場合に比べて多軸干渉を抑制することができる。
上述の応力センサーは、各第1行電極が、各検出領域において、複数箇所で第1溝と重なるように構成することができる。このように構成された応力センサーは、第1行電極と第1溝の重なる箇所が1個所だけの場合に比べて多軸干渉が発生し難くなる。
上述の応力センサーは、各第2行電極は、各検出領域において、複数箇所で第2溝と重なるように構成することができる。このように構成された応力センサーは、第2行電極と第2溝の重なる箇所が1個所だけの場合に比べて多軸干渉が発生し難くなる。
上述の応力センサーは、表面に、M×N個の検出領域と重なり、弾性を有する弾性層を備えるように構成することができる。このように構成された応力センサーは、弾性層で応力が分散されて多軸干渉が発生し難くなる。
上述の応力センサーは、裏面に、M×N個の検出領域と重なるシリコーンフィルムを備えるように構成することができる。このように構成された応力センサーは、裏面のシリコーンフィルムにより検出領域を含む例えば検出用シートが滑らなくなり、せん断応力を測定しやすくなる。
【0010】
本発明の一見地に係る応力検出用シートは、第1電極層及び第2電極層と絶縁弾性体層とを備える。第1電極層及び第2電極層は、M行N列(ただし、M,Nは2以上の整数)に分けて検出するためのM×N個の検出領域と重なり、互いに対向するように設けられている。絶縁弾性体層は、第1電極層と第2電極層との間に在って両電極層を電気的に絶縁するとともに弾性変形可能な材料からなる。第1電極層は、N列に渡って延びていて互いに絶縁されているM対の第1行電極及び第2行電極と、M対の第1行電極及び第2行電極をシート外の回路に接続するためのM本の第1行配線及びM本の第2行配線とを含む。第2電極層は、M行に渡って延びていて互いに絶縁されているN対の第1列電極及び第2列電極と、N対の第1列電極及び第2列電極をシート外の回路に接続するためのN本の第1列配線及びN本の第2列配線とを含む。第2電極層は、各対の第1列電極及び第2列電極の間に、各行において第1方向に延びるM本の第1溝及び第1方向と交差する第2方向に延びるM本の第2溝を有する。各対の第1行電極は、N列の第1溝と重なるように配置されている。各対の第2行電極は、N列の第2溝と重なるように配置されている。
このような構成を有する応力検出用シートは、M本の第1行配線及びM本の第2行配線並びにN本の第1列配線及びN本の第2列配線を設けることで、M行N列の第1方向及び第2方向のせん断応力並びに圧縮応力を検出できるように配線するための配線数を大幅に削減することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の応力センサーによれば、検出分解能を維持したまま大型化しても配線数を大幅に削減でき、大型化が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の応力センサーの構成例を示す概念図である。
【
図2】第1実施形態に係る4行4列の基本的な第1電極層と第2電極層の構成例を示す平面図である。
【
図3】検出回路の基本的な静電容量の測定手順を説明するためのフローチャートである。
【
図4】第1実施形態の静電容量の測定に係る各検出領域のコンデンサを模式的に示す平面図である。
【
図5】第1実施形態の応力センサーの検出用シートの断面構成を示す模式的な断面図である。
【
図6】第2実施形態に係る応力センサーの構成例を示す概念図である。
【
図7】
図6の第1電極層の構成を示す平面図である。
【
図8】
図6の第2電極層の構成を示す平面図である。
【
図9】第2実施形態の静電容量の測定に係る各検出領域のコンデンサを模式的に示す平面図である。
【
図10】第2実施形態の応力センサーの検出用シートの断面構成を示す模式的な断面図である。
【
図11】第3実施形態に係る応力センサーの検出用シートの構成例を示す模式的な平面図である。
【
図12】従来の応力センサーの検出用シートの断面構成を示す模式的な断面図である。
【
図13】従来の応力センサーの検出用シートの第1帯状電極を示す平面図である。
【
図14】従来の応力センサーの検出用シートの第1帯状電極を示す平面図である。
【
図15】従来の応力センサーの検出用シートのセグメント電極を示す平面図である。
【
図16】従来の2行2列のX方向のせん断応力とY方向のせん断応力、及び各セグメント電極に印加される押圧力を検出する検出用シートの構成を説明するための模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1実施形態>
(1)応力センサーの基本的な構成
図1には、第1実施形態について、応力センサー1の基本的な構成の概要が示されている。
図1に示されているように、応力センサー1は、第1電極層2と、第2電極層3と、絶縁弾性体層4と、検出回路5とを備えている。なお、
図1において、第1電極層2と第2電極層3と絶縁弾性体層4とを見て区別し易くするため、第1電極層2と第2電極層3と絶縁弾性体層4は、実際とは異なり、互いにずらして描かれている。
応力センサー1は、M行N列(ただし、M,Nは2以上の整数)に分けて検出するためのM×N個の検出領域DAを有している。応力センサー1では、それぞれの検出領域DAで個別に応力を検出することができる。言い換えると、M×N個の箇所で押圧力(圧縮応力)を検出でき、M×N個の箇所で第1方向のせん断応力を検出でき、M×N個の箇所で第2方向のせん断応力を検出できる。
図1に示されている応力センサー1のうちの検出回路5以外の部分は、応力検出用シート8である。
第1電極層2は、検出回路5に接続するためのM本の第1行配線23及びM本の第2行配線24を含んでいる。なお、
図1においては、1行目の第1行配線23と第2行配線24及び、M行目の第1行配線23とM行目の第2行配線24を記載し、他の行の第1行配線23と第2行配線24の記載は省略している。
第2電極層3は、検出回路5に接続するためのN本の第1列配線33及びN本の第2列配線34を含んでいる。
図1においては、1列目の第1列配線33と第2列配線34及び、N列目の第1列配線33とN列目の第2列配線34を記載し、他の列の第1列配線33と第2列配線34の記載は省略している。
絶縁弾性体層4は、弾性変形可能な絶縁性の材料からなる。絶縁弾性体層4は、第1電極層2と第2電極層3との間に在って、第1電極層2と第2電極層3を電気的に絶縁している。
【0014】
(2)各検出領域の基本的な構成
図2には、4行4列の基本的な第1電極層2と第2電極層3の構成の一例が示されている。
図2には、検出領域DAが配置されている応力検出用シート8を表側から見た場合の第1電極層2と第2電極層3の構成が示されている。
図2には、応力検出用シート8のうち第1電極層2と第2電極層3の構成のみが記載され、絶縁弾性体層4などの他の構成の記載は省かれている。
第1電極層2は、2列に渡って延びていて互いに絶縁されている2対の第1行電極21及び第2行電極22と、2対の第1行電極21及び第2行電極22と検出回路5とを接続する2本の第1行配線23及び2本の第2行配線24とを含んでいる。
第2電極層3は、2行に渡って延びていて互いに絶縁されている2対の第1列電極31及び第2列電極32と、2対の第1列電極31及び第2列電極32と検出回路5とを接続する2本の第1列配線33及び2本の第2列配線34とを含んでいる。
第2電極層3は、各対の第1列電極31及び第2列電極32は、各行において第1方向に延びる2本の第1溝35及び第1方向と交差する第2方向に延びる2本の第2溝36を有している。
各対の第1行電極21は、2列の第1溝35と重なるように配置されている。また、各対の第2行電極22は、2列の第2溝36と重なるように配置されている。なお、第2行電極22と重なっている溝は僅かに第1方向に延びる部分を有しているが、第2溝36は、このような第1方向に延びる部分以外の部分である。
図2において、1行1列目に配置された検出領域DAが検出領域DA(1,1)であり、2行1列目に配置された検出領域DAが検出領域DA(2,1)であり、1行2列目に配置された検出領域DAが検出領域DA(1,2)であり、2行2列目に配置された検出領域DAが検出領域DA(2,2)である。
【0015】
(3)検出回路における応力の検出
検出回路5は、2対の第1列電極31及び第2列電極32を電極毎に異なるタイミングで駆動する。つまり、第1列電極31と第2列電極32がドライブ電極であり、第1行電極21と第2行電極22がセンス電極である。
図3に示されているように、検出回路5は、まず、1列目の第1列電極31を駆動する(ステップST1)。そして、検出回路5は、1行目の第1行電極21と第2行電極22を使って1列目の第1列電極31との間の静電容量を測定するとともに、2行目の第1行電極21と第2行電極を使って1列目の第1列電極31との間の静電容量を測定する(ステップST2)。1列目の第2列電極32を駆動する(ステップST3)。そして、検出回路5は、1行目の第1行電極21と第2行電極22を使って1列目の第2列電極32との間の静電容量を測定するとともに、2行目の第1行電極21と第2行電極を使って1列目の第2列電極32との間の静電容量を測定する(ステップST4)。ステップST1~ST4による1列目についての静電容量の測定の結果を用いて、検出回路5は、1行1列及び2行1列における第1方向のせん断応力、第2方向のせん断応力及び押圧力を検出する。言い換えると、ステップST1~ST4では、検出領域DA(1,1),DA(2,1)における第1方向のせん断応力、第2方向のせん断応力及び押圧力が検出される。
次に、検出回路5は、2列目の第1列電極31を駆動する(ステップST5)。そして、検出回路5は、1行目の第1行電極21と第2行電極22を使って2列目の第1列電極31との間の静電容量を測定するとともに、2行目の第1行電極21と第2行電極を使って2列目の第1列電極31との間の静電容量を測定する(ステップST6)。2列目の第2列電極32を駆動する(ステップST7)。そして、検出回路5は、1行目の第1行電極21と第2行電極22を使って2列目の第2列電極32との間の静電容量を測定するとともに、2行目の第1行電極21と第2行電極を使って2列目の第2列電極32との間の静電容量を測定する(ステップST8)。ステップST5~ST8による2列目についての静電容量の測定の結果を用いて、検出回路5は、1行2列及び2行2列における第1方向のせん断応力、第2方向のせん断応力及び押圧力を検出する。言い換えると、ステップST5~ST8では、2列目の検出領域DA(1,2),DA(2,2)における第1方向のせん断応力、第2方向のせん断応力及び押圧力が検出される。
なお、応力センサー1は、第1方向のせん断応力、第2方向のせん断応力及び押圧力の検出において、検出前に、応力が掛かっていない状態で、静電容量を測定するキャリブレーションを行う。
【0016】
(4)応力の検出のための計算
次に、
図4を用いて、各検出領域DAにおける第1方向のせん断応力、第2方向のせん断応力及び押圧力の検出について説明する。
図4には、1つの検出領域DAで形成される4つのコンデンサCoR,CoL,CoU,CoDが斜線で示されている。コンデンサCoLは、第1行電極21と第1列電極31の重なり部分で構成される。コンデンサCoRは、第1行電極21と第2列電極32の重なり部分で構成される。コンデンサCoUは、第2行電極22と第1列電極31の重なり部分で構成される。コンデンサCoDは、第2行電極22と第2列電極32の重なり部分で構成される。
荷重が印加された場合について、これら4つのコンデンサCoR,CoL,CoU,CoDの静電容量を、それぞれCR,CL,CU,CDと表記する。また、荷重が印加されていないときのコンデンサCoR,CoL,CoU,CoDの静電容量を、それぞれCR
BL,CL
BL,CU
BL,CD
BLと表記する。
静電容量CLは、第1行電極21と第1列電極31の間に生じる静電容量である。静電容量CRは、第1行電極21と第2列電極32の間に生じる静電容量である。静電容量CUは、第2行電極22と第1列電極31の間に生じる静電容量である。静電容量CDは、第2行電極22と第2列電極32の間に生じる静電容量である。
第1方向、第2方向のせん断応力F1、F2及び、応力検出用シート8の面に対して垂直な方向の圧縮応力Fvは、定数K1,K2,KvとCU、CD、CL,CRを用いると下記の[1]式、[2]式及び[3]式のように計算できる。
F1=K1×{CD/(CU+CD)-CD
BL/(CU
BL+CD
BL)} ・・・[1]
F2=K2×{CR/(CL+CR)-CR
BL/(CL
BL+CR
BL)} ・・・[2]
Fv=Kv×{(CL+ CR+CU+CD)/(CL
BL+CR
BL+CU
BL+CD
BL)-1} ・・・[3]
上述のF1,F2及びFvを、次のP1,P2,Pvを用いて書き直すと、[4]式、[5]式及び[6]式になる。
P1=CD/(CU+CD)-1/2
P2=CR/(CL+CR)-1/2
Pv=CL+CR+CU+CD
F1=K1×[P1-P1
BL] ・・・[4]
F2=K2×[P2-P2
BL] ・・・[5]
Fv=Kv×Pv/Pv
BL ・・・[6]
ただし、添え字BLは、応力の掛かっていない状態でのP1,P2,Pvの値を示している。また、K1は感度曲線[P1/F1]の傾きの逆数、K2は感度曲線[P2/F2]の傾きの逆数、Kvは感度曲線[Pv/Fv]の傾きの逆数である。
図4に示されているように、各第1行電極21は、第1溝35と重なる応力検出部21aに比べて互いに隣接する応力検出部21aの間の連絡部21bが細くなっている。応力検出部21aは、長方形状であって、長辺が第1溝35に沿って延びている。応力検出部21aと連絡部21bの幅が同じ場合に比べて、応力検出部21aの幅が大きくなることによって、応力の変化に対する静電容量の変化が大きくなるので、応力を検出し易くなる。また、連絡部21bの幅が小さいことによって、多軸干渉が発生するのを抑制することができる。ここでいう多軸干渉とは、検出対象の応力が検出対象以外の応力の影響を受ける現象であり、例えば、第1せん断応力を検出する際に、第1せん断応力の大きさが圧縮応力の大きさによって変化するような現象である。
【0017】
(5)検出用シートの断面構成
図5には、第1実施形態に係る応力センサー1の応力検出用シート8の基本的な断面構成の概要が示されている。応力検出用シート8は、上部電極層UDLと下部電極層LDLと絶縁弾性体層4とを備えている。絶縁弾性体層4の上には、第1電極層2が配置され、絶縁弾性体層4の下には、第2電極層3が配置されている。具体的には、例えば、絶縁弾性体層4の上面に接着剤によって第1電極層2が接着され、絶縁弾性体層4の下面に接着剤によって第2電極層3が接着されている。言い換えると、上部電極層UDLと下部電極層LDLの間に絶縁弾性体層4が挟まるように、上部電極層UDLと下部電極層LDLに絶縁弾性体層4が接着剤によって接着されている。
絶縁弾性体層4には、弾性変形可能な材料として、例えばフォーム材が用いられている。
上部電極層UDLでは、上から順に、保護層71、導電層72、絶縁層73、第1電極層2が設けられている。保護層71及び絶縁層73は、例えば絶縁性フィルムによって構成されている。保護層71には、圧力を分散させることのできる弾性変形可能な材料を用いることが好ましい。また、導電層72及び第1電極層2は、例えば導電性接着剤(導電ペースト)によって構成されている。導電層72は、外部の電界の影響を緩和するために、共通電位GNDに接続されている。
下部電極層LDLでは、下から順に、保護層81、導電層82、絶縁層83、第2電極層3が設けられている。保護層81及び絶縁層83は、例えば絶縁性フィルムによって構成されている。保護層81には、例えば、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂またはゴムからなる滑り止め性能を有する滑り止めシートを用いることが好ましい。また、導電層82及び第2電極層3は、例えば導電性接着剤(導電ペースト)によって構成されている。導電層82は、外部の電界の影響を緩和するために、共通電位GNDに接続されている。
【0018】
<第2実施形態>
(6)応力センサーの全体構成
図6には、第2実施形態について、応力センサー1の全体構成の概要が示されている。
図6に示されているように、応力センサー1は、第1電極層2と、第2電極層3と、検出回路5とを備えている。
図6には、絶縁弾性体層4が示されていないが、
図6の応力センサー1も、
図1の応力センサー1と同様に絶縁弾性体層4を有している(
図10参照)。
図6の応力センサー1は、3行3列に分けて検出するための9個の検出領域DAを有している。検出領域DAは、配置されている場所で区別する場合には、行列の表示を添えて表示され、例えばM行N列の検出領域には符号「DA(M,N)」が付されている。例えば、検出領域DA(2,2)は、2行2列目に配置された検出領域である。検出領域DA(2,2)では、2行2列目において、押圧力(圧縮応力)、第1方向のせん断応力、第2方向のせん断応力を検出できる。
図6に示されている応力センサー1のうちの検出回路5以外の部分は、応力検出用シート8である。
検出回路5は、センス回路51とドライブ回路52とを含んでいる。
【0019】
(7)第1電極層と第2電極層の構成
図7には、第1電極層2が示されている。第1行電極21及び第2行電極22は、配置されている場所で区別する場合には、行の表示を添えて表示され、例えば1行目のものには符号「-1」が付されている。第1電極層2は、3列に渡って延びていて互いに絶縁されている3対の第1行電極21-1~21-3及び第2行電極22-1~22-3と、3対の第1行電極21-1~21-3及び第2行電極22-1~22-3と検出回路5のセンス回路51とを接続する3本の第1行配線23-1~23-3及び3本の第2行配線24-1~24-3とを含んでいる。
図8には、第2電極層3が示されている。第1列電極31及び第2列電極32は、配置されている場所で区別する場合には、列の表示を添えて表示され、例えば1列目のものには符号「-1」が付されている。第2電極層3は、3行に渡って延びていて互いに絶縁されている3対の第1列電極31-1~31-3及び第2列電極32-1~31-3と、3対の第1列電極31-1~31-3及び第2列電極32-1~32-3と検出回路5のドライブ回路52とを接続する3本の第1列配線33-1~33-3及び3本の第2列配線34-1~34-3とを含んでいる。
【0020】
(8)検出回路による応力の検出
検出回路5のドライブ回路52は、3対の第1列電極31及び第2列電極32を電極毎に異なるタイミングで駆動する。ドライブ回路52は、例えば、最初に1列目の第1列電極31-1と第2列電極32-1を駆動し、次に2列目の第1列電極31-2と第2列電極32-2を駆動し、その次に3列目の第1列電極31-3と第2列電極32-3を駆動する。
このうち、1つの検出領域DAに注目した場合、せん断応力が計算できることについて、
図9を用いて説明する。3行3列目にある検出領域DAにおける検出に寄与するドライブ電極が
図9に示されている。3行3列目の検出領域DA(3,3)には、ドライブ電極として、第1列電極31-3と第2列電極32-3が含まれ、センス電極として、第1行電極21-3と第2行電極22-3が含まれている。
第1行電極21と第1列電極31の重なり部分で構成されるコンデンサは、4つのコンデンサCoL1,CoL2,CoL3,CoL4である。第1行電極21と第2列電極32の重なり部分で構成されるコンデンサは、4つのコンデンサCoR1,CoR2,CoR3,CoR4である。第2行電極22と第1列電極31の重なり部分で構成されるコンデンサは、2つのコンデンサCoD1,CoD2である。第2行電極22と第2列電極32の重なり部分で構成されるコンデンサは、2つのコンデンサCoU1,CoU2である。
各第1行電極21が、各検出領域DAにおいて、複数箇所(ここでは4箇所)で第1溝35と重なるように構成されている。各第2行電極22は、各検出領域DAにおいて、複数箇所(ここでは2箇所)で第2溝36と重なるように構成されている。各検出領域DAにおいて、第1行電極21と第1溝35が複数箇所で重なることで、重なる箇所が広範囲に配置されるので、重なる箇所が1個所だけの場合に比べて、多軸干渉を発生し難くなる。各検出領域DAにおいて、第2行電極22と第2溝36が複数箇所で重なることで、重なる箇所が広範囲に配置されるので、重なる箇所が1個所だけの場合に比べて、多軸干渉を発生し難くなる。
【0021】
第2実施形態の
図9のコンデンサCoL1,CoL2,CoL3,CoL4が、第1実施形態で説明した
図4のコンデンサCoLに相当する。すなわち、コンデンサCoL1,CoL2,CoL3,CoL4の静電容量を、CL1,CL2,CL3,CL4と表記すると、[2]式及び[3]式のCLに、CL=CL1+CL2+CL3+CL4を代入することができる。従って、[2]式及び[3]式のCL
BLも、CL
BL=CL1
BL+CL2
BL+CL3
BL+CL4
BLで与えられる。
同様に、第2実施形態の
図9のコンデンサCoR1,CoR2,CoR3,CoR4が、第1実施形態で説明した
図4のコンデンサCoRに相当する。すなわち、コンデンサCoR1,CoR2,CoR3,CoR4の静電容量を、CR1,CR2,CR3,CR4と表記すると、[2]式及び[3]式のCRに、CR=CR1+CR2+CR3+CR4を代入することができる。従って、[2]式及び[3]式のCR
BLも、CR
BL=CR1
BL+CR2
BL+CR3
BL+CR4
BLで与えられる。
第2実施形態の
図9のコンデンサCoU1,CoU2が、第1実施形態で説明した
図4のコンデンサCoUに相当する。すなわち、コンデンサCoU1,CoU2の静電容量を、CU1,CU2と表記すると、[1]式及び[3]式のCUに、CU=CU1+CU2を代入することができる。従って、[1]式及び[3]式のCU
BLも、CU
BL=CU1
BL+CU2
BLで与えられる。
第2実施形態の
図9のコンデンサCoD1,CoD2が、第1実施形態で説明した
図4のコンデンサCoDに相当する。すなわち、コンデンサCoD1,CoD2の静電容量を、CD1,CD2と表記すると、[1]式及び[3]式のCDに、CD=CD1+CD2を代入することができる。従って、[1]式及び[3]式のCD
BLも、CD
BL=CD1
BL+CD2
BLで与えられる。
すなわち、第1方向、第2方向のせん断応力F1、F2及び、応力検出用シート8の面に対して垂直な方向の圧縮応力Fvは、CL1~CL4,CL1
BL~CL4
BL,CR1~CR4,CR1
BL~CR4
BL,CU1~CU2,CU1
BL~CU2
BL,CD1~CD2,CD1
BL~CD2
BLを用いて計算することができる。
図9では、3行3列目の検出領域DA(3,3)を例に挙げて説明したが、M行N列の各検出領域DA(M,N)についても、検出領域DA(3,3)の場合と同様に第1方向、第2方向のせん断応力F1、F2及び、応力検出用シート8の面に対して垂直な方向の圧縮応力Fvを計算することができる。
【0022】
(9)検出用シートの断面構成
図10には、第2実施形態に係る応力センサー1の応力検出用シート8の基本的な断面構成の概要が示されている。絶縁弾性体層4の上には、第1電極層2が配置され、絶縁弾性体層4の下には、第2電極層3が配置されている。絶縁弾性体層4の上面に接着剤41によって第1電極層2が接着され、絶縁弾性体層4の下面に接着剤42によって第2電極層3が接着されている。接着剤41及び接着剤42は、例えば、シリコーン系接着剤である。シリコーン系接着剤としては、例えばシリコーンゴム接着剤がある。接着剤41及び接着剤42の厚さは、例えば、10~100μmである。
絶縁弾性体層4には、弾性変形可能な材料として、例えばフォーム材が用いられている。フォーム材の材料としては、例えば、シリコーンゴム、ウレタン、ポリエチレンがある。圧縮変形が大きい材料としては、例えば、樹脂中にガスを細かく分散させ、発泡状または多孔質形状に成形されたものがある。発泡体の材質としては、例えば、シリコーン、ウレタン、ポリエチレン、ポリスチレンがある。絶縁弾性体層4の厚みは、例えば、2μm~5mmの範囲から適宜選択される。保護層71及び絶縁層73は、絶縁性フィルムによって構成されている。保護層71には、圧力を分散させることのできる弾性変形可能な材料を用いることが好ましい。保護層71及び絶縁層73に用いられる絶縁性フィルムとしては、例えばシリコーンフィルムがある。絶縁性フィルムの厚さは、例えば、10~100μmである。
【0023】
応力検出用シート8においては上から順に、保護層71、導電層72、絶縁層73、第1電極層2が設けられている。導電層72及び第1電極層2は、例えば導電性接着剤(導電ペースト)によって構成されている。ここでは、導電層72を保護層71に設けているが、導電層72と第1電極層2は、
図5に示されているように絶縁層73の両面に形成してもよい。導電層72と第1電極層2を絶縁層73の両面に形成することで、応力検出用シート8を薄くすることができる。導電層72は、外部の電界の影響を緩和するために、共通電位GNDに接続されている。導電層72及び第1電極層2を構成する導電ペーストとしては、例えば銀ペーストがある。銀ペーストの厚さは、例えば0.1μm~1mmの範囲から適宜選択される。導電層72と絶縁層73の間には接着剤75が配置されている。接着剤75の厚さは、例えば10~100μmである。導電層72には、他の導電ペーストからなる導電層76が設けられてもよい。また、この導電層76は省かれてもよい。導電層76は、カーボンインキで印刷することで、エレメント位置を示す意匠(例えば、マス目の表示)と、共通電位GNDになる層とを兼ねることができる。また、カーボンインキを用いることで、耐久性を向上させることができる。導電層76は、シリコーン層71bと接着剤71cとの間または、絶縁性フィルム71aと接着剤71cの間に形成されてもよい。
保護層71は、絶縁性フィルム71aと表面のシリコーン層71bを接着剤71cで接着した層である。絶縁性フィルム71aは、例えば、シリコーンフィルムである。絶縁性フィルム71aの厚さは、例えば10~100μmである。表面のシリコーン層71bは、シリコーンからなる層であって、層の厚さは例えば100μm~1mmである。保護層71の表面のシリコーン層71bは、圧力を分散させることができる。シリコーン層71bは、表面に配置され、M×N個の検出領域DAと重なり、弾性を有する弾性層である。シリコーン層71bは、押圧力を分散させて多軸干渉を抑制することができる。
【0024】
応力検出用シート8においては下から順に、保護層81、導電層82、絶縁層83、第2電極層3が設けられている。保護層81及び絶縁層83は、例えば絶縁性フィルムによって構成されている。保護層81には、例えば、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂またはゴムからなる滑り止め性能を有する滑り止めシートを用いることが好ましい。保護層81には、例えばシリコーンフィルムを用いることができる。保護層81の厚さは、例えば10μm~1mmである。裏面の保護層81に設けられているシリコーンフィルムは、応力検出用シート8が滑らなくして、せん断応力を測定しやすくする。
絶縁層83は、例えば樹脂フィルムで構成されている。樹脂フィルムとしては、例えばPETフィルムがある。また、導電層82及び第2電極層3は、例えば導電性接着剤(導電ペースト)によって構成されている。導電層82と保護層81の間には接着剤84が配置されている。接着剤84は、例えば、シリコーン系接着剤である。シリコーン系接着剤としては、例えばシリコーンゴム接着剤がある。接着剤84の厚さは、例えば、10~100μmである。導電層82は、外部の電界の影響を緩和するために、共通電位GNDに接続されている。
図9に示されている応力検出用シート8には、導電層82の下及び第2電極層3の上に、シールド層85,86が設けられている。シールド層85,86は、例えば絶縁インキで形成される。シールド層85,86は、例えば銀ペーストで形成される導電層82及び第2電極層3の信頼性の向上を目的として設けられる層である。シールド層85,86により、導電層82及び第2電極層3のマイグレーションの防止、硫化防止または断線防止ができる。これらシールド層85,86は省くこともできる。
【0025】
第1行電極21及び第2行電極22並びに第1行配線23及び第2行配線24は、同一面内に配置されている同一部材からなる。第2実施形態では、第1行電極21及び第2行電極22並びに第1行配線23及び第2行配線24が、例えば銀ペーストの印刷によって同時に同一の部材で形成される。また、第1列電極31及び第2列電極32並びに第1列配線33及び第2列配線34は、同一面内に配置されている同一部材からなる。第2実施形態では、第1列電極31及び第2列電極32並びに第1列配線33及び第2列配線34が、例えば銀ペーストの印刷によって同時に同一の部材で形成される。このように同一部材で同時に形成することにより、製造が容易になる。また、このように同一平面に形成されている同一部材とすることにより、応力検出用シート8の厚さを薄くすることができる。
【0026】
<第3実施形態>
(10)検出用シートの全体構成
図11には、第3実施形態の応力センサー1の応力検出用シート8についての構成の概要が示されている。
図11の応力検出用シート8は、2行2列に分けて検出するための4個の検出領域DAを有している。例えば、検出領域DA(2,2)では、2行2列目において、押圧力(圧縮応力)、第1方向のせん断応力、第2方向のせん断応力を検出できる。
第3実施形態の応力検出用シート8と第2実施形態の応力検出用シート8とは、第1行電極21、第2行電極22、第1列電極31及び第2列電極32の面内の配置パターンが異なる。第3実施形態の応力検出用シート8では、第1行電極21及び第2行電極22が延びる方向と、第1列電極31及び第2列電極32の延びる方向は、第1方向及び第2方向ではなく、ここでは第1方向及び第2方向に対してそれぞれ45度傾いている。
また、第3実施形態の1対の第1行電極21及び第2行電極22は、それぞれ、2本ずつ設けられており、1対の第1行電極21及び第2行電極22が1本ずつ設けられていた第2実施形態とは異なっている。第3実施形態の1対の第1列電極31及び第2列電極32は、それぞれ、4本ずつ設けられており、1対の第1列電極31及び第2列電極32が1本ずつ設けられていた第2実施形態とは異なっている。
【0027】
(11)特徴
(11-1)
本発明の応力センサー1は、第1電極層2及び第2電極層3と、絶縁弾性体層4と、検出回路5とを備えている。M本ずつの第1電極層2の第1行配線23と第2行配線24及びN本ずつの第1列配線33と第2列配線34を設けることで、M行N列の第1方向及び第2方向のせん断応力並びに圧縮応力を検出できるように配線できている。例えば、
図2及び
図11に示された2行2列の応力センサー1の応力検出用シート8では、2本ずつの第1電極層2の第1行配線23と第2行配線24及び2本ずつの第1列配線33及び第2列配線34が設けられている。また、
図6に示された3行3列の応力センサー1の応力検出用シート8では、3本ずつの第1電極層2の第1行配線23と第2行配線24及び3本ずつの第1列配線33及び第2列配線34が設けられている。
それに対し、
図16に示された2行2列のX方向のせん断応力とY方向のせん断応力を検出可能な従来の応力センサーの検出用シート900では、第1帯状電極910に接続するための2本の配線と、第2帯状電極920に接続するための2本の配線と、セグメント電極930に接続するための9本の配線が必要になる。
このように
図16に示された従来の応力センサーの検出用シート900と比較して分かるように、本発明の応力センサー1は、第1電極層2及び第2電極層3と検出回路5とを接続するための配線数を大幅に削減することができる。
応力センサー1では、第1電極層2及び第2電極層3のように、同一面に形成された第1行電極21と第2行電極22及び第1列電極31と第2列電極32を、一行ごと、一列ごとに、第1行配線23と第2行配線24及び第1列配線33と第2列配線34にそれぞれ繋ぐことができる。そのため、検出分解能を維持したまま応力検出用シート8を大型化しても、応力センサー1の第1行配線23と第2行配線24及び第1列配線33と第2列配線34の本数を減らすことができる。
また、第1列電極31及び第2列電極32が同一面にあり、また第1列配線33及び第2列配線34が同一面にあるため、応力センサー1の構成にとって従来のようなフレキシブル配線基板940が不要なものになる。
(11-2)
例えば、
図7を用いて説明した第2実施形態の第1電極層2においては、第1行電極21及び第2行電極22並びに第1行配線23及び第2行配線24は、同一面内に配置されている同一部材からなる。また、
図8を用いて説明した第2実施形態の第2電極層3においては、第1列電極31及び第2列電極32並びに第1列配線33及び第2列配線34は、同一面内に配置されている同一部材からなるように構成されている。例えば、第1行電極21及び第2行電極22並びに第1行配線23及び第2行配線24は、一度の印刷工程で、銀ペーストにより同時に形成される。同様に、第1列電極31及び第2列電極32並びに第1列配線33及び第2列配線34は、例えば、一度の印刷工程で、銀ペーストにより同時に形成される。
このように構成された、第1行電極21及び第2行電極22、第1行配線23及び第2行配線24、第1列電極31及び第2列電極32並びに第1列配線33及び第2列配線34を含む応力検出用シート8は、例えば、
図12に示されている従来の検出用シート900に比べて薄くすることができる。
また、従来は、
図12に示されているように、第1帯状電極910とセグメント電極930の距離と、第2帯状電極920とセグメント電極930の距離が異なるため、X方向のせん断応力とY方向のせん断応力の検出感度に差が生じていた。それに対し、例えば同一面内に配置された第1行電極21及び第2行電極22と、同一面内に配置された第1列電極31及び第2列電極32を用いて第1方向のせん断応力も第2方向のせん断応力も検出されるので、1方向のせん断応力と2方向のせん断応力の検出感度の差をなくすことができる。
【0028】
(11-3)
図4、
図7または
図11を用いて説明した各第1行電極21は、第1溝35と重なる複数の応力検出部に比べて互いに隣接する応力検出部21aの間の連絡部21bが細くなっている。その結果、応力センサー1は、連絡部21bが細くない場合に比べて多軸干渉を抑制することができる。
(11-4)
図6または
図11に示されている各第1行電極21は、各検出領域DAにおいて、複数箇所で第1溝35と重なるように構成されている。その結果、応力センサー1は、第1行電極21と第1溝35の重なる箇所が1個所だけの場合に比べて、重なる箇所が広範囲に配置されるので、多軸干渉が発生し難くなっている。
(11-5)
図6または
図11に示されている各第2行電極22は、各検出領域DAにおいて、複数箇所で第2溝36と重なるように構成されている。その結果、応力センサー1は、第2行電極22と第2溝36の重なる箇所が1個所だけの場合に比べて、重なる箇所が広範囲に配置されるので、多軸干渉が発生し難くなっている。
(11-6)
第2実施形態の応力センサー1は、
図10に示されているように、応力検出用シート8の表面に、M×N個(第2実施形態では3×3個)の検出領域DAと重なり、弾性を有する弾性層であるシリコーン層71bを備えている。その結果、応力センサー1は、弾性層であるシリコーン層71bで応力が分散されて多軸干渉が発生し難くなっている。
(11-7)
第2実施形態の応力センサー1は、
図10に示されているように、裏面に、M×N個(第2実施形態では3×3個)の検出領域DAと重なるシリコーンフィルムで構成された保護層81を備えている。その結果、応力センサー1は、裏面のシリコーンフィルムにより検出領域DAを含む応力検出用シート8が滑らなくなり、せん断応力を測定しやすくなっている。
【0029】
(12)変形例
(12-1)変形例A
上記各実施形態では、第1電極層2が第1行電極21及び第2行電極22並びに第1行配線23及び第2行配線24を含む1つの導電層(例えば、1層の銀ペーストからなる層)で構成されている。しかし、第1電極層2の第1行電極21及び第2行電極22並びに第1行配線23及び第2行配線24は複数の導電層を用いて形成されていてもよい。例えば、第1行電極21及び第2行電極22と第1行配線23及び第2行配線24とを異なる導電層に形成してもよい。
また、上記各実施形態では、第2電極層3が第1列電極31及び第2列電極32並びに第1列配線33及び第2列配線34を含む1つの導電層(例えば、1層の銀ペーストからなる層)で構成されている。しかし、第2電極層3の第1列電極31及び第2列電極32並びに第1列配線33及び第2列配線34は複数の導電層を用いて形成されていてもよい。例えば、第1列電極31及び第2列電極32と第1列配線33及び第2列配線34とを異なる導電層に形成してもよい。
(12-2)変形例B
上記各実施形態では、導電ペースト(導電性接着剤)を用いて、第1電極層2及び第2電極層3の導電層を形成する場合について説明した。しかし、これらの導電層は、他の方法で形成されてもよい。例えば、金属薄膜を蒸着することによってまたは金属薄膜をエッチングすることによって導電層を形成してもよい。
(12-3)変形例C
上記各実施形態では、応力検出用シート8と検出回路5とが接続されている場合について説明した。しかし、応力検出用シート8は、検出回路5から分離可能に構成することもできる。例えば、応力検出用シート8を消耗品として取り替えられるように構成することもできる。
また、第1行配線23、第2行配線24、第1列配線33及び第2列配線34の配線数、第1行電極21、第2行電極22、第1列電極31及び第2列電極32の電極数または配置の異なる複数タイプの応力検出用シート8に対して、検出回路5が対応可能に構成することもできる。例えば、検出回路5がメモリー(図示せず)を含み、メモリーに応力検出用シート8のタイプ毎の配線数、定数及び検出のためのプログラムを記憶させて、異なるプログラムに従って応力検出動作を行えるように、検出回路5を構成することもできる。このように複数タイプの応力検出用シート8に対応できるように検出回路5を構成することで、例えば、検出対象の形状及び状況に合った適切な応力検出用シート8に取り替えて応力を検出することできるようになる。
【符号の説明】
【0030】
1 応力センサー
2 第1電極層
3 第2電極層
4 絶縁弾性体層
5 検出回路
8 検出用シート
21 第1行電極
21a 応力検出部
22 第2行電極
23 第1行配線
24 第2行配線
31 第1列電極
32 第2列電極
33 第1列配線
34 第2列配線
35 第1溝
36 第2溝
71b シリコーン層
81 保護層
DA 検出領域