(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092238
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】基板処理システムの給排気構造および給排気方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240701BHJP
【FI】
H01L21/304 648L
H01L21/304 648G
H01L21/304 643A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208023
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】根本 脩平
【テーマコード(参考)】
5F157
【Fターム(参考)】
5F157AB02
5F157AB16
5F157AB33
5F157AB45
5F157AB49
5F157AB51
5F157AB64
5F157AB90
5F157BB23
5F157BB24
5F157BB42
5F157BH18
5F157CD29
5F157CE29
5F157CF02
5F157CF04
5F157CF14
5F157CF16
5F157CF22
5F157CF30
5F157CF34
5F157CF42
5F157CF44
5F157CF50
5F157CF52
5F157CF60
5F157CF70
5F157CF74
5F157DA11
(57)【要約】
【課題】新規気体を処理チャンバに導入することでカップ内にダウンフローを形成するとともにカップ内の雰囲気を回収雰囲気として装置外部に排出して回収しながら基板処理を行う基板処理技術において、新規気体の導入量および回収雰囲気の回収量を削減する。
【解決手段】この発明では、カップ内の雰囲気の一部または全部から処理液の気液成分を取り除くことで再生気体が生成される。再生気体は、新規気体が導入されているダウンフロー形成部に対し、導入される。このように再生気体を利用することで、新規気体のみを用いてダウンフローを形成している従来技術に比べ、ダウンフロー形成部への新規気体の導入量が削減される。また、カップ内の雰囲気をそのまま回収せず、その一部または全部を再利用している。その結果、共通排気配管を介して外部に排気して回収される回収雰囲気の回収量も削減される。
【選択図】
図9B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバ内で基板の外周を取り囲むカップと、気体を前記チャンバの天井壁を介して前記チャンバ内に送風することで前記カップ内に向けてダウンフローを形成するダウンフロー形成部と、前記基板に処理液を供給することで前記基板に対して基板処理を施す処理機構と、前記カップ内に存在する前記ダウンフローを構成する気体および前記処理液の気液成分を含む雰囲気を前記チャンバから排気する排気機構と、を有する基板処理装置が少なくとも1台以上設けられた、基板処理システムにおける給排気構造であって、
前記排気機構に接続され、前記カップから排出される前記雰囲気を外部に案内して回収するための共通排気配管と、
前記共通排気配管から前記雰囲気の一部または全部を取り出すことで外部に回収される回収雰囲気の回収量を削減するとともに取り出した雰囲気から前記処理液の気液成分を取り除いて再生した再生気体を前記基板処理装置に向けて供給する気体循環機構と、
前記基板処理装置毎に設けられ、前記気体循環機構から供給される前記再生気体の前記ダウンフロー形成部への導入量を調整しながら前記再生気体を前記ダウンフロー形成部に導入する再生気体導入機構と、
前記基板処理装置毎に設けられ、前記気体と同一成分を有する新規気体の前記ダウンフロー形成部への導入量を調整しながら前記新規気体を前記ダウンフロー形成部に導入する新規気体導入機構と、
前記気体循環機構、前記再生気体導入機構および前記新規気体導入機構を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記気体循環機構による前記回収雰囲気の削減と、前記再生気体導入機構による前記再生気体の導入および前記新規気体導入機構による前記新規気体の導入量の削減を並行して行う第1削減モードを実行可能に構成されることを特徴とする基板処理システムにおける給排気構造。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理システムにおける給排気構造であって、
前記気体循環機構は、前記共通排気配管からの前記雰囲気の取出と取出規制とを選択的に切り替え可能に構成され、
前記制御部は、前記雰囲気の全部を前記回収雰囲気として前記共通排気配管により外部に排出するとともに前記ダウンフローに対応する量の前記新規気体を導入するように前記新規気体導入機構を制御する通常モードと、前記第1削減モードとを選択的に実行可能に構成される、基板処理システムにおける給排気構造。
【請求項3】
請求項2に記載の基板処理システムにおける給排気構造であって、
前記気体循環機構は、前記共通排気配管から分岐して前記再生気体導入機構に接続された循環配管と、前記循環配管から分岐して前記共通排気配管に接続されたリーク配管を有し、
前記制御部は、前記再生気体の一部を前記リーク配管に沿って前記共通排気配管に送り込んで回収するとともに残りの前記再生気体を前記循環配管により前記再生気体導入機構に導入する第2削減モードと、前記通常モードと、前記第1削減モードとを選択的に実行可能に構成される、基板処理システムにおける給排気構造。
【請求項4】
請求項3に記載の基板処理システムにおける給排気構造であって、
前記再生気体に含まれる前記処理液の濃度を計測する濃度計を備え、
前記制御部は、前記第1削減モードを実行中に前記濃度計の計測値が所定の濃度監視値以上となったとき、前記第2削減モードに切り替えて実行する基板処理システムにおける給排気構造。
【請求項5】
請求項4に記載の基板処理システムにおける給排気構造であって、
前記制御部は、前記第2削減モードを実行中に前記濃度計の計測値が前記濃度監視値よりも高い循環限界値以上となったとき、前記通常モードに切り替えて実行する、基板処理システムにおける給排気構造。
【請求項6】
請求項3に記載の基板処理システムにおける給排気構造であって、
前記再生気体に含まれる前記処理液の濃度を計測する濃度計を備え、
前記制御部は、前記第1削減モードを実行中に前記濃度計の計測値が所定の濃度監視値以上となったとき、前記通常モードに切り替えて実行する、基板処理システムにおける給排気構造。
【請求項7】
請求項5または6に記載の基板処理システムにおける給排気構造であって、
前記気体循環機構は前記雰囲気から前記処理液の気液成分を取り除くケミカルフィルタを有し
前記制御部は、前記通常モードへの切替とともに前記ケミカルフィルタの交換を促すメッセージを報知する、基板処理システムにおける給排気構造。
【請求項8】
チャンバ内で基板の外周を取り囲むカップと、気体を前記チャンバの天井壁を介して前記チャンバ内に送風することで前記カップ内に向けてダウンフローを形成するダウンフロー形成部と、前記基板に処理液を供給することで前記基板に対して基板処理を施す処理機構と、前記カップ内に存在する前記ダウンフローを構成する気体および前記処理液の気液成分を含む雰囲気を前記チャンバから排気する排気機構と、を有する基板処理装置が少なくとも1台以上設けられた、基板処理システムにおける給排気方法であって、
前記カップ内に存在する前記ダウンフローを構成する気体および前記処理液の気液成分を含む雰囲気を外部に案内して回収するための共通排気配管に、前記雰囲気を送り出す第1工程と、
前記共通排気配管から前記雰囲気の一部または全部を取り出し、取り出した雰囲気から前記処理液に気液成分を取り除いて再生した再生気体を前記基板処理装置に向けて供給する第2工程と、
前記気体と同一成分を有する新規気体と前記再生気体とで前記ダウンフローを形成して前記カップ内に供給する第3工程と、を備え、
前記第3工程は、前記共通排気配管から前記雰囲気の一部または全部を取り出しにより共通排気配管を介して外部に排気して回収される回収雰囲気の回収量を削減するとともに、前記再生気体の導入により前記新規気体の前記ダウンフロー形成部への導入量を削減する工程を含む、ことを特徴とする基板処理システムにおける給排気方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板に処理液を供給して当該基板を処理する基板処理装置を装備する基板処理システムにおける給排気技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハなどの基板を回転させつつ当該基板に処理液を供給して薬液処理や洗浄処理などの基板処理を施す基板処理装置が知られている。例えば特許文献1に記載の装置では、処理チャンバ内においてスプラッシュガード(本発明の「カップ」の一例に相当)に取り囲まれた状態で回転する基板に処理液が供給される。この装置では、処理チャンバの上壁にファンフィルターユニット(FFU)が配設されている。このファンフィルターユニットは、本発明の「ダウンフロー形成部」の一例に相当するものであり、フィルタファンとフィルタとを有している。ファンフィルターユニットは、基板処理装置が設置されたクリーンルーム内の空気や基板処理装置が設置された工場に設けられた空気供給装置から供給される空気を新規気体としてフィルタファンでフィルタに向けて送風する。フィルタファンからの空気はフィルタにより清浄され、ダウンフローとなってスプラッシュガード内に供給される。スプラッシュガード内では、処理液の液滴を含む雰囲気が形成される。この雰囲気は、排気配管を介して工場に既設の排気装置によって処理チャンバから排気され、排気装置に回収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記雰囲気が処理チャンバから漏れるのを防止する目的で、大量の排気によって処理チャンバ内の内圧を負圧に維持する必要があった。このように処理チャンバから排気装置に回収される大量の雰囲気(以下「回収雰囲気」という)が環境に大きな負荷を与えており、SDGs(持続可能な開発目標)を推進する観点から回収雰囲気の排気量の削減が求められている。また同様の主旨から、処理チャンバに対して新たに供給される空気(以下「新規空気」という)の使用量の削減も求められている。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、新規気体を処理チャンバに導入することでカップ内にダウンフローを形成するとともにカップ内の雰囲気を回収雰囲気として装置外部に排出して回収しながら基板処理を行う基板処理技術において、新規気体の導入量および回収雰囲気の回収量を削減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、チャンバ内で基板の外周を取り囲むカップと、気体をチャンバの天井壁を介してチャンバ内に送風することでカップ内に向けてダウンフローを形成するダウンフロー形成部と、基板に処理液を供給することで基板に対して基板処理を施す処理機構と、カップ内に存在するダウンフローを構成する気体および処理液の気液成分を含む雰囲気をチャンバから排気する排気機構と、を有する基板処理装置が少なくとも1台以上設けられた、基板処理システムにおける給排気構造であって、排気機構に接続され、カップから排出される雰囲気を外部に案内して回収するための共通排気配管と、共通排気配管から雰囲気の一部または全部を取り出すことで外部に回収される回収雰囲気の回収量を削減するとともに取り出した雰囲気から処理液の気液成分を取り除いて再生した再生気体を基板処理装置に向けて供給する気体循環機構と、基板処理装置毎に設けられ、気体循環機構から供給される再生気体のダウンフロー形成部への導入量を調整しながら再生気体をダウンフロー形成部に導入する再生気体導入機構と、基板処理装置毎に設けられ、気体と同一成分を有する新規気体のダウンフロー形成部への導入量を調整しながら新規気体をダウンフロー形成部に導入する新規気体導入機構と、気体循環機構、再生気体導入機構および新規気体導入機構を制御する制御部と、を備え、制御部は、気体循環機構による回収雰囲気の削減と、再生気体導入機構による再生気体の導入および新規気体導入機構による新規気体の導入量の削減を並行して行う第1削減モードを実行可能に構成されることを特徴としている。
【0007】
また、本発明の第2の態様は、チャンバ内で基板の外周を取り囲むカップと、気体をチャンバの天井壁を介してチャンバ内に送風することでカップ内に向けてダウンフローを形成するダウンフロー形成部と、基板に処理液を供給することで基板に対して基板処理を施す処理機構と、カップ内に存在するダウンフローを構成する気体および処理液の気液成分を含む雰囲気をチャンバから排気する排気機構と、を有する基板処理装置が少なくとも1台以上設けられた、基板処理システムにおける給排気方法であって、カップ内に存在するダウンフローを構成する気体および処理液の気液成分を含む雰囲気を外部に案内して回収するための共通排気配管に、雰囲気を送り出す第1工程と、共通排気配管から雰囲気の一部または全部を取り出し、取り出した雰囲気から処理液に気液成分を取り除いて再生した再生気体を基板処理装置に向けて供給する第2工程と、気体と同一成分を有する新規気体と再生気体とでダウンフローを形成してカップ内に供給する第3工程と、を備え、第3工程は、共通排気配管から雰囲気の一部または全部を取り出しにより共通排気配管を介して外部に排気して回収される回収雰囲気の回収量を削減するとともに、再生気体の導入により新規気体のダウンフロー形成部への導入量を削減する工程を含む、ことを特徴としている。
【0008】
このように構成された発明では、カップ内の雰囲気(=ダウンフローを構成する気体+処理液の気液成分)の一部または全部から処理液の気液成分が取り除かれ、これによって再生気体が生成される。再生気体は、新規気体が導入されているダウンフロー形成部に対し、導入される。そして、ダウンフロー形成部は、再生気体と新規気体とでダウンフローを形成する。したがって、新規気体のみを用いてダウンフローを形成している従来技術に比べ、ダウンフロー形成部への新規気体の導入量が削減される。また、カップ内の雰囲気をそのまま回収せず、その一部または全部が再利用される。その結果、共通排気配管を介して外部に排気して回収される回収雰囲気の回収量が削減される。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、処理チャンバへの新規気体の導入量および回収雰囲気の基板処理装置からの回収量を削減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る給排気構造の第1実施形態を装備する基板処理システムの概略構成を示す平面図である。
【
図2】処理ブロックの構成を模式的に示す図である。
【
図3】処理ブロックに装備される基板処理装置の概要構成を示す図である。
【
図4】
図3に示す基板処理装置の構成を模式的に示す平面図である。
【
図5】スピンチャックに保持された基板と回転カップ部との寸法関係を示す図である。
【
図6】
図3および
図4に示す基板処理装置により基板処理動作の一例として実行されるベベル処理を示すフローチャートである。
【
図7】本発明に係る給排気構造の一構成要素である排気機構の構成を示す図である。
【
図8】本発明に係る給排気構造の一構成要素である気体循環機構の構成を示す図である。
【
図9A】酸処理時における通常モードの実行状況を模式的に示す図である。
【
図9B】酸処理時における第1削減モードの実行状況を模式的に示す図である。
【
図9C】酸処理時における第2削減モードの実行状況を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<基板処理システム>
図1は本発明に係る給排気構造の第1実施形態を装備する基板処理システムの概略構成を示す平面図である。これは基板処理システム100の外観を示すものではなく、基板処理システム100の外壁パネルやその他の一部構成を除外することでその内部構造をわかりやすく示した模式図である。この基板処理システム100は、例えばクリーンルーム内に設置され、一方主面のみに回路パターン等(以下「パターン」と称する)が形成された基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式の装置である。そして、基板処理システム100に装備される処理ユニットにおいて、処理液による基板処理が実行される。本明細書では、基板の両主面のうちパターンが形成されているパターン形成面(一方主面)を「表面」と称し、その反対側のパターンが形成されていない他方主面を「裏面」と称する。また、下方に向けられた面を「下面」と称し、上方に向けられた面を「上面」と称する。また、本明細書において「パターン形成面」とは、基板において、任意の領域に凹凸パターン形成されている面を意味する。
【0012】
ここで、本実施形態における「基板」としては、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(FieldEmissionDisplay)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などの各種基板を適用可能である。以下では主として半導体ウエハの処理に用いられる基板処理装置を例に採って図面を参照して説明するが、上に例示した各種の基板の処理にも同様に適用可能である。
【0013】
図1に示すように、基板処理システム100は、基板Wに対して処理を施す基板処理エリア110を有している。この基板処理エリア110に対し、インデクサ部120が隣接して設けられている。インデクサ部120は、基板Wを収容するための容器C(複数の基板Wを密閉した状態で収容するFOUP(FrontOpeningUnifiedPod)、SMIF(StandardMechanicalInterface)ポッド、OC(OpenCassette)など)を複数個保持することができる容器保持部121を有している。また、インデクサ部120は、容器保持部121に保持された容器Cにアクセスして、未処理の基板Wを容器Cから取り出したり、処理済みの基板Wを容器Cに収納したりするためのインデクサロボット122を備えている。各容器Cには、複数枚の基板Wがほぼ水平な姿勢で収容されている。
【0014】
インデクサロボット122は、装置筐体に固定されたベース部122aと、ベース部122aに対し鉛直軸まわりに回動可能に設けられた多関節アーム122bと、多関節アーム122bの先端に取り付けられたハンド122cとを備える。ハンド122cはその上面に基板Wを載置して保持することができる構造となっている。このような多関節アームおよび基板保持用のハンドを有するインデクサロボットは公知であるので詳しい説明を省略する。
【0015】
基板処理エリア110では、載置台112がインデクサロボット122からの基板Wを載置可能に設けられている。また、平面視において、基板処理エリア110のほぼ中央に基板搬送ロボット111が配置される。さらに、この基板搬送ロボット111を取り囲むように、複数の処理ブロック1Bが配置される。具体的には、基板搬送ロボット111が配置された空間に面して4つの処理ブロック1Bが配置される。
【0016】
各処理ブロック1Bは、複数(本実施形態では、6個)の処理ユニットを有している。これら複数の処理ユニットは、本発明の「基板処理装置」の一例に相当しており、基板Wに対して基板処理を施す処理空間へのダウンフロー供給、当該空間からの排気および排気の一部をダウンフローに循環利用するという特徴的な構成を有している。そこで当該構成を説明する前に、処理ユニット、つまり基板処理装置1の概要構成および動作について説明する。その後で、特徴的な構成について詳述する。
【0017】
<基板処理装置の基本構成および動作>
図2は処理ブロックの構成を模式的に示す図である。各処理ブロック1Bでは、複数(本実施形態では、6個)の基板処理装置1が積層配置されている。これらの基板処理装置1は同一構成を有している。そこで、最上位に位置する基板処理装置1(同図中の符号1aで示すユニット)の概要構成および概要動作について説明し、それ以外の基板処理装置1の構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0018】
図3は処理ブロックに装備される基板処理装置の概要構成を示す図である。また、
図4は
図3に示す基板処理装置の構成を模式的に示す平面図である。以下、装置各部の配置関係や動作などを明確にするために、Z方向を鉛直方向とし、XY平面を水平面とする座標系を適宜付している。また、
図3および以下に参照する各図では、理解容易のため、各部の寸法や数が誇張または簡略化して図示される場合がある。
【0019】
基板処理装置(処理ユニット)1で用いられるチャンバ11は略直方体形状の内部空間12を有している。この内部空間12において、チャンバ11の底壁の上方にベース部材17が固定配置されている。つまり、チャンバ11の内部空間12の底部において、いわゆる高床構造が形成されている。そして、ベース部材17の上面に、基板Wに対して基板処理を施す基板処理部SPが設置されている。この基板処理部SPを構成する各部は装置全体を制御する制御ユニット10と電気的に接続され、制御ユニット10からの指示に応じて動作する。
【0020】
チャンバ11の上方にダウンフロー形成部13が設けられている。ダウンフロー形成部13は、フィルタファン13aとフィルタ(例えばHEPA(HighEfficiencyParticulateAir)フィルタ)13bを備えている。フィルタファン13aは、清浄な空気をチャンバ11内に送り出す機能を有している。フィルタ13bは、チャンバ11の天井壁に設けられた開口を上方から覆うように取り付けられている。このため、制御ユニット10からの指示に応じて作動したフィルタファン13aから送り込まれた空気がより高いレベルに清浄化され、上記開口から下方に向けて供給される。これによって、チャンバ11内の内部空間12に清浄空気のダウンフローが形成される。なお、ダウンフロー形成部13から供給された清浄空気を均一に分散するために、多数の吹出し孔を穿設したパンチングプレート14が上記天井壁の直下に設けられている。
【0021】
チャンバ11の側壁には、搬送用開口が設けられており、内部空間12とチャンバ11の外部とが連通される。このため、基板搬送ロボット111のハンド(図示省略)が搬送用開口を介して基板処理部SPにアクセス可能となっている。つまり、搬送用開口を設けたことで、内部空間12に対する基板Wの搬入出が可能となっている。また、この搬送用開口を開閉するためのシャッター15が当該側壁取り付けられている。
【0022】
シャッター15にはシャッター開閉機構(図示省略)が接続されており、制御ユニット10からの開閉指令に応じてシャッター15を開閉させる。より具体的には、基板処理装置1では、未処理の基板Wをチャンバ11に搬入する際にシャッター開閉機構はシャッター15を開き、基板搬送ロボット111のハンドによって未処理の基板Wがフェースアップ姿勢で基板処理部SPに搬入される。つまり、基板Wは上面Wfを上方に向けた状態で基板処理部SPのスピンチャック21上に載置される。そして、当該基板搬入後に基板搬送ロボット111のハンドがチャンバ11から退避すると、シャッター開閉機構はシャッター15を閉じる。そして、チャンバ11の処理空間内で基板Wの周縁部Wsに対するベベル処理が基板処理部SPにより本発明の「基板処理」の一例として実行される。また、ベベル処理の終了後においては、シャッター開閉機構がシャッター15を再び開き、基板搬送ロボット111のハンドが処理済の基板Wを基板処理部SPから搬出する。このように、本実施形態では、チャンバ11の内部空間12が常温環境に保たれる。なお、本明細書において「常温」とは、5℃~35℃の温度範囲にあることを意味する。
【0023】
また、チャンバ11の外側面には、基板処理部SPに対して加熱した不活性ガス(本実施形態では、窒素ガス)を供給するための加熱ガス供給部47が取り付けられている。このように、チャンバ11の外壁側には、シャッター15および加熱ガス供給部47が配置される。これに対し、チャンバ11の内側、つまり内部空間12には、高床構造のベース部材17の上面に基板処理部SPが設置される。
【0024】
基板処理部SPは、保持回転機構2、飛散防止機構3、上面保護加熱機構4、処理機構5、雰囲気分離機構6、昇降機構7、センタリング機構8および基板観察機構9を備えている。これらの機構は、ベース部材17上に設けられている。つまり、チャンバ11よりも高い剛性を有するベース部材17を基準とし、保持回転機構2、飛散防止機構3、上面保護加熱機構4、処理機構5、雰囲気分離機構6、昇降機構7、センタリング機構8および基板観察機構9が相互に予め決められた位置関係で配置される。
【0025】
保持回転機構2は、基板Wの表面を上方に向けた状態で基板Wを略水平姿勢に保持する基板保持部2Aと、基板Wを保持した基板保持部2Aおよび飛散防止機構3の一部を同期して回転させる回転機構2Bと、を備えている。このため、制御ユニット10からの回転指令に応じて回転機構2Bが作動すると、基板Wおよび飛散防止機構3の回転カップ部31は、鉛直方向Zと平行に延びる回転軸AXまわりに回転される。
【0026】
基板保持部2Aは、基板Wより小さい円板状の部材であるスピンチャック21を備えている。スピンチャック21は、その上面が略水平となり、その中心軸が回転軸AXに一致するように設けられている。スピンチャック21の下面には、円筒状の回転軸部22が連結される。回転軸部22は、その軸線を回転軸AXと一致させた状態で、鉛直方向Zに延設される。また、回転軸部22には、回転機構2Bが接続される。
【0027】
回転機構2Bは、基板保持部2Aおよび飛散防止機構3の回転カップ部31を回転させるための回転駆動力を発生するモータ23と、当該回転駆動力を伝達するための動力伝達部24とを有している。モータ23は、回転駆動力の発生に伴い回転する回転シャフト231を有している。回転シャフト231を鉛直下方に延設させた姿勢でベース部材17に設けられている。
図3に示すように、ベース部材17から下方に突出した回転シャフト231の先端部には、第1プーリ241が取り付けられている。また、基板保持部2Aの下方端部には、第2プーリ242が取り付けられている。そして、第1プーリ241および第2プーリ242の間に無端ベルト243が架け渡される。このように、本実施形態では、第1プーリ241、第2プーリ242および無端ベルト243により、動力伝達部24が構成される。
【0028】
スピンチャック21の中央部には、貫通孔211が設けられており、回転軸部22の内部空間と連通している。内部空間には、バルブ(図示省略)が介装された配管25を介してポンプ26が接続される。当該ポンプ26およびバルブは、制御ユニット10に電気的に接続されており、制御ユニット10からの指令に応じて動作する。これによって、負圧と正圧とが選択的にスピンチャック21に付与される。例えば基板Wがスピンチャック21の上面に略水平姿勢で置かれた状態でポンプ26が負圧をスピンチャック21に付与すると、スピンチャック21は基板Wを下方から吸着保持する。一方、ポンプ26が正圧をスピンチャック21に付与すると、基板Wはスピンチャック21の上面から取り外し可能となる。また、ポンプ26の吸引を停止すると、スピンチャック21の上面上で基板Wは水平移動可能となる。
【0029】
スピンチャック21には、回転軸部22の中央部に設けられた配管28を介して窒素ガス供給部29が接続される。窒素ガス供給部29は、基板処理システム100が設置される工場のユティリティーなどから供給される常温の窒素ガスを制御ユニット10からのガス供給指令に応じた流量およびタイミングでスピンチャック21に送給し、基板Wの下面Wb側で窒素ガスを中央部から径方向外側に流通させる。なお、本実施形態では、窒素ガスを用いているが、その他の不活性ガスを用いてもよい。この点については、後で説明する中央ノズルから吐出される加熱ガスについても同様である。また、「流量」とは、窒素ガスなどの流体が単位時間当たりに移動する量を意味している。
【0030】
回転機構2Bは、基板Wと一体的にスピンチャック21を回転させるのみならず、当該回転に同期して回転カップ部31を回転させるために、動力伝達部27(
図3)を有している。動力伝達部27は、非磁性材料または樹脂で構成される円環部材27aと、円環部材に内蔵されるスピンチャック側磁石(図示省略)と、回転カップ部31の一構成である下カップ32に内蔵されるカップ側磁石(図示省略)とを有している。円環部材27aは、回転軸部22とともに回転軸AXまわりに回転可能となっている。円環部材27aの外周縁部では、複数のスピンチャック側磁石が回転軸AXを中心として放射状で、しかも等角度間隔で配置される。本実施形態では、互いに隣り合う2つのスピンチャック側磁石の一方では、外側および内側がそれぞれN極およびS極となるように配置され、他方では、外側および内側がそれぞれS極およびN極となるように配置される。
【0031】
これらのスピンチャック側磁石と同様に、複数のカップ側磁石が回転軸AXを中心として放射状で、しかも等角度間隔で配置される。これらのカップ側カップ側磁石は下カップ32に内蔵される。下カップ32は次に説明する飛散防止機構3の構成部品であり、円環形状を有している。つまり、下カップ32は、円環部材27aの外周面と対向可能な内周面を有している。この内周面の内径は円環部材27aの外径よりも大きい。そして、当該内周面を円環部材27aの外周面から所定間隔(=(上記内径-上記外径)/2)だけ離間対向させながら下カップ32が回転軸部22および円環部材27aと同心状に配置される。この下カップ32の外周縁上面には、係合ピンや連結用マグネットなどの連結部材(図示省略)が設けられており、これらにより上カップ33が下カップ32と連結され、この連結体が回転カップ部31として機能する。
【0032】
このように構成された動力伝達部27では、モータ23により回転軸部22とともに円環部材27aが回転すると、スピンチャック側磁石とカップ側磁石との間での磁力作用によって、下カップ32がエアギャップ(円環部材27aと下カップ32との隙間)を維持しつつ円環部材27aと同じ方向に回転する。これにより、回転カップ部31が回転軸AXまわりに回転する。つまり、回転カップ部31は基板Wと同一方向でしかも同期して回転する。
【0033】
飛散防止機構3は、スピンチャック21に保持された基板Wの外周を囲みながら回転軸AXまわりに回転可能な回転カップ部31と、回転カップ部31を囲むように固定的に設けられる固定カップ部34と、を有している。回転カップ部31は、下カップ32に上カップ33が連結されることで、回転する基板Wの外周を囲みながら回転軸AXまわりに回転可能に設けられている。
【0034】
図5はスピンチャックに保持された基板と回転カップ部との寸法関係を示す図である。上カップ33は、
図3および
図5に示すように、下円環部位331と、上円環部位332と、これらを連結する傾斜部位333とを有している。下円環部位331の外径D331は下カップ32の外径D32と同一であり、下円環部位331は下カップ32の周縁部321の鉛直上方に位置している。
【0035】
このように構成された上カップ33は、昇降機構7により鉛直方向において昇降可能となっている。上カップ33が昇降機構7により上方に移動されると、鉛直方向において上カップ33と下カップ32との間に基板Wの搬入出用の搬送空間が形成される。一方、昇降機構7により上カップ33が下方に移動されると、下カップ32に対して上カップ33が水平方向に位置決めされるとともに、上カップ33および下カップ32は互いに結合される。これによって、
図4の部分拡大図に示すように、水平方向に延びる隙間GPcを形成した状態で、上カップ33および下カップ32が鉛直方向に一体化される。そして、回転カップ部31は隙間GPcを形成したまま回転軸AXまわりに回転自在となっている。
【0036】
回転カップ部31では、
図5に示すように、上円環部位332の外径D332は下円環部位331の外径D331よりも若干小さい。また、下円環部位331および上円環部位332の内周面の径d331、d332を比較すると、下円環部位331の方が上円環部位332よりも大きく、鉛直上方からの平面視で、上円環部位332の内周面が下円環部位331の内周面の内側に位置する。そして、上円環部位332の内周面と下円環部位331の内周面とが上カップ33の全周にわたって傾斜部位333により連結される。このため、傾斜部位333の内周面、つまり基板Wを取り囲む面は、傾斜面334となっている。すなわち、
図8に示すように、傾斜部位333は、回転する基板Wの外周を囲んでベベル処理を行う処理空間を形成するとともに、基板Wから飛散する液滴を捕集可能となっている。上カップ33および下カップ32で囲まれた空間が処理空間SPcとして機能する。
【0037】
しかも、処理空間SPcを臨む傾斜部位333は、下円環部位331から基板Wの周縁部の上方に向かって傾斜している。このため、傾斜部位333に捕集された液滴は傾斜面334に沿って上カップ33の下端部、つまり下円環部位331に流動し、さらに隙間GPcを介して回転カップ部31の外側に排出可能となっている。
【0038】
固定カップ部34は回転カップ部31を取り囲むように設けられ、排出空間SPeを形成する。固定カップ部34は、液受け部位341と、液受け部位341の内側に設けられた排気部位342とを有している。液受け部位341は、隙間GPcの反基板側開口を臨むように開口したカップ構造を有している。つまり、液受け部位341の内部空間が排出空間SPeとして機能しており、隙間GPcを介して処理空間SPcと連通される。したがって、回転カップ部31により捕集された液滴は気体成分とともに隙間GPcを介して排出空間SPeに案内される。そして、液滴は液受け部位341の底部に集められ、固定カップ部34から排液される。
【0039】
一方、気体成分は排気部位342に集められる。この排気部位342は区画壁343を介して液受け部位341と区画される。また、区画壁343の上方に気体案内部344が配置される。気体案内部344は、区画壁343の直上位置から排出空間SPeと排気部位342の内部にそれぞれ延設されることで、区画壁343を上方から覆ってラビリンス構造を有する気体成分の流通経路を形成している。したがって、液受け部位341に流入した流体のうち気体成分が上記流通経路を経由して排気部位342に集められる。そして、当該気体成分は排気配管170を介してチャンバ11から排出される。
【0040】
上面保護加熱機構4は、スピンチャック21に保持される基板Wの上面Wfの上方に配置された遮断板41を有している。この遮断板41は水平な姿勢で保持された円板部42を有している。円板部42はヒータ駆動部422により駆動制御されるヒータ421を内蔵している。この円板部42は基板Wよりも若干短い直径を有している。そして、円板部42の下面が基板Wの上面Wfのうち周縁部Wsを除く表面領域を上方から覆うように、円板部42は支持部材43により支持される。なお、
図4に示すように、円板部42の周縁部には、切欠部が設けられているが、これは処理機構5に含まれる処理液吐出ノズルとの干渉を防止するために設けられている。切欠部44は、径方向外側に向かって開口している。
【0041】
支持部材43の下端部は円板部42の中央部に取り付けられている。支持部材43と円板部42とを上下に貫通するように、円筒状の貫通孔が形成される。また、当該貫通孔に対し、中央ノズル45が上下に挿通している。この中央ノズル45には、
図3に示すように、加熱ガス供給部47と接続される。加熱ガス供給部47は、基板処理システム100が設置される工場の用力などから供給される常温の窒素ガスを加熱し、制御ユニット10からの加熱ガス供給指令に応じた流量およびタイミングで基板処理部SPに供給する。
【0042】
こうして加熱された窒素ガス(以下「加熱ガス」という)が中央ノズル45に向けて圧送され、中央ノズル45から吐出される。円板部42がスピンチャック21に保持された基板Wに近接した処理位置に位置決めされた状態で加熱ガスが供給されることによって、加熱ガスは基板Wの上面Wfとヒータ内蔵の円板部42とに挟まれた空間の中央部から周縁部に向って流れる。これによって、基板Wの周囲の雰囲気が基板Wの上面Wfに入り込むのを抑制する。
【0043】
図3に示すように、支持部材43の上端部は梁部材49に固定される。この梁部材49は、ベース部材17の上面に取り付けられた昇降機構7と接続されており、制御ユニット10からの指令に応じて昇降機構7により昇降される。例えば
図3では梁部材49が下方に位置決めされることで、支持部材43を介して梁部材49に連結された円板部42が処理位置に位置している。一方、制御ユニット10からの上昇指令を受けて昇降機構7が梁部材49を上昇させると、梁部材49、支持部材43および円板部42が一体的に上昇するとともに、上カップ33も連動して下カップ32から分離して上昇する。これによって、スピンチャック21と、上カップ33および円板部42との間が広がり、スピンチャック21に対する基板Wの搬出入を行うことが可能となる。
【0044】
処理機構5は、基板Wの上面側に配置される処理液吐出ノズル51F(
図4)と、基板Wの下面側に配置される処理液吐出ノズル51B(
図3)と、処理液吐出ノズル51F、51Bに処理液を供給する処理液供給部52とを有している。本実施形態では、3本の上面ノズル51Fが設けられるとともに、それらに対して処理液供給部52が接続される。また、処理液供給部52は複数種類の処理液を供給可能に構成されており、3本の上面ノズル51Fから3種類の処理液がそれぞれ独立して吐出可能となっている。
【0045】
各処理液吐出ノズル51Fでは、先端下面に処理液を吐出する吐出口(図示省略)が設けられている。そして、
図4中の拡大図に示すように、各吐出口を基板Wの上面Wfの周縁部に向けた姿勢で複数(本実施形態では3個)の処理液吐出ノズル51Fの下方部が円板部42の切欠部44(
図4参照)に配置されるとともに、処理液吐出ノズル51Fの上方部がノズルホルダ53に対して径方向D1に移動自在に取り付けられている。このノズルホルダ53はノズル移動部54に接続される。
【0046】
ノズル移動部54は、ノズルヘッド56(=処理液吐出ノズル51F+ノズルホルダ53)を保持したまま、後で説明する昇降部713のリフター713aの上端部に取り付けられている。このため、制御ユニット10からの昇降指令に応じてリフター713aが鉛直方向に伸縮すると、それに応じてノズル移動部54およびノズルヘッド56が鉛直方向Zに移動する。
【0047】
また、ノズル移動部54は直動アクチュエータを有しており、ノズルヘッド56を移動する。その結果、ノズルヘッド56に装着されている処理液吐出ノズル51Fが径方向D1に位置決めされる。処理液吐出ノズル51Fがベベル処理位置に正確に位置決めされる。
【0048】
ベベル処理位置に位置決めた処理液吐出ノズル51Fの吐出口511は基板Wの上面Wfの周縁部に向いている。そして、制御ユニット10からの供給指令に応じて処理液供給部52が供給指令に対応する処理液を当該処理液用の処理液吐出ノズル51Fに供給すると、処理液吐出ノズル51Fから処理液が基板Wの端面から予め設定された位置に供給される。
【0049】
また、ノズル移動部54の構成部品の一部に対し、雰囲気分離機構6の下密閉カップ部材61が着脱自在に固定される。つまり、ベベル処理を実行する際には、処理液吐出ノズル51Fおよびノズルホルダ53は、ノズル移動部54を介して下密閉カップ部材61と一体化されており、昇降機構7によって下密閉カップ部材61とともに鉛直方向Zに昇降される。
【0050】
本実施形態では、基板Wの下面Wbの周縁部に向けて処理液を吐出するために、処理液吐出ノズル51Bがスピンチャック21に保持された基板Wの下方に設けられている。処理液吐出ノズル51Bは、基板Wの下面Wbの周縁部に向けて開口した吐出口(図示省略)を有しており、処理液供給部52から供給される処理液を吐出可能となっている。
【0051】
これら処理液吐出ノズル51F、51Bから吐出される処理液により、基板Wの周縁部に対するベベル処理が実行される。また、基板Wの下面側では、配管28を介して供給された窒素ガスが処理空間SPcに流れる。その結果、処理空間SPcから液滴が基板Wに逆流するのを効果的に抑制する。
【0052】
雰囲気分離機構6は、下密閉カップ部材61と、上密閉カップ部材62とを有している。下密閉カップ部材61および上密閉カップ部材62はともに上下に開口した筒形状を有している。そして、それらの内径は回転カップ部31の外径よりも大きく、雰囲気分離機構6は、スピンチャック21、スピンチャック21に保持された基板W、回転カップ部31および上面保護加熱機構4を上方からすっぽりと囲むように配置される、より詳しくは、
図3に示すように、上密閉カップ部材62は、その上方開口が天井壁の開口を下方から覆うように、チャンバ11の天井壁に取り付けられている。
【0053】
また、上密閉カップ部材62の下端部には、円環状の整流部材14aが上密閉カップ部材62の内周面に沿って取り付けられている。また、下密閉カップ部材61が、その外周面を鉛直方向Zにおいて上密閉カップ部材62の内周面と重複させながら鉛直方向Zに移動可能に設けられている。
【0054】
下密閉カップ部材61の下端部は、外側に折り込まれた円環形状を有するフランジ部612を有している。このフランジ部612は、鉛直上方からの平面視で、固定カップ部34の上端部(液受け部位341の上端部)と重なり合っている。したがって、上記下限位置では、
図4中の部分拡大図に示すように、下密閉カップ部材61のフランジ部612がオーリング64を介して固定カップ部34で係止される。これにより、鉛直方向Zにおいて下密閉カップ部材61と固定カップ部34が繋がり、上密閉カップ部材62、下密閉カップ部材61および固定カップ部34により密閉空間が形成される。この密閉空間内において、基板Wに対するベベル処理が実行可能となっている。つまり、下密閉カップ部材61が下限位置に位置決めされることで、密閉空間が当該密閉空間の外側空間から分離される(雰囲気分離)。したがって、外側雰囲気の影響を受けることなく、ベベル処理を安定して行うことができる。また、ベベル処理を行うために処理液を用いるが、処理液が密閉空間から外側空間に漏れるのを確実に防止することができる。
【0055】
下密閉カップ部材61は鉛直上方に移動可能に構成される。また、鉛直方向Zにおける下密閉カップ部材61の中間部には、上記したように、ノズル移動部54を介してノズルヘッド56(=処理液吐出ノズル51F+ノズルホルダ53)が固定される。また、これ以外にも、
図3および
図4に示すように、梁部材49を介して上面保護加熱機構4が下密閉カップ部材61の中間部に固定される。つまり、
図4に示すように、下密閉カップ部材61は、周方向において互いに異なる3箇所で梁部材49の一方端部、梁部材49の他方端部およびノズル移動部54とそれぞれ接続される。そして、昇降機構7が梁部材49の一方端部、梁部材49の他方端部およびノズル移動部54を昇降させることで、それに伴って下密閉カップ部材61も昇降する。
【0056】
この下密閉カップ部材61の内周面では、
図3および
図4に示すように、内側に向けて突起部613が上カップ33と係合可能な係合部位として複数本(4本)突設される。各突起部613は上カップ33の上円環部位332の下方空間まで延設される。また、各突起部613は、下密閉カップ部材61が下限位置に位置決めされた状態で上カップ33の上円環部位332から下方に離れるように取り付けられている。そして、下密閉カップ部材61の上昇によって各突起部613が下方から上円環部位332に係合可能となっている。この係合後においても、下密閉カップ部材61がさらに上昇することで上カップ33を下カップ32から離脱させることが可能となっている。
【0057】
本実施形態では、昇降機構7により下密閉カップ部材61が上面保護加熱機構4およびノズルヘッド56とともに上昇し始めた後で、上カップ33も一緒に上昇する。これによって、上カップ33、上面保護加熱機構4およびノズルヘッド56がスピンチャック21から上方に離れる。下密閉カップ部材61の退避位置への移動によって、種々の処理を実行するための空間が形成される。当該空間は、例えば基板搬送ロボット111のハンドがスピンチャック21にアクセスするための搬送空間である。そして、当該搬送空間を介してスピンチャック21への基板Wのローディングおよびスピンチャック21からの基板Wのアンローディングが実行可能となっている。また、センタリング機構8によるセンタリング処理や基板観察機構9による観察処理を行う際にも、当該空間が利用される。
【0058】
このように構成された下密閉カップ部材61および上密閉カップ部材62には、それぞれ内側整流部材14aおよび外側整流部材14bが取り付けられている。内側整流部材14aは、
図3および
図4に示すように、比較的小径の貫通孔14a1が多数均一に分散して設けられたパンチングプレート14で構成されており、下密閉カップ部材61の上方開口を塞ぐように下密閉カップ部材61の内周面に取り付けられている。このため、ダウンフロー形成部13から供給された清浄空気が内側整流部材14aにより整流され、密閉空間12aに供給される。この内側整流部材14aは、下密閉カップ部材61に取り付けられている。一方、外側整流部材14bは、円環形状のプレート(本発明の「環状プレート」の一例)に貫通孔14a1よりも大きな内径を有する貫通孔661が設けられたパンチングプレート14で構成されており、下密閉カップ部材61の外周面と上密閉カップ部材62の内周面との間に位置しながら上密閉カップ部材62に取り付けられている。このため、下密閉カップ部材61と上密閉カップ部材62との間を通過する清浄空気が外側整流部材14bで整流された後で、下密閉カップ部材61の外側面に沿って下方に流通する。これによって、飛散防止機構3および雰囲気分離機構6の周囲がエア―カーテンに取り囲まれる。
【0059】
下密閉カップ部材61の上端部は、外側に折り広げられた円環形状を有するフランジ部611を有している。このフランジ部611は、鉛直上方からの平面視で、フランジ部621と重なり合っている。このため、下密閉カップ部材61が下降すると、
図5中の部分拡大図に示すように、下密閉カップ部材61のフランジ部611が外側整流部材14bの一部で係止される。これにより、下密閉カップ部材61は上記下限位置に位置決めされる。
【0060】
昇降機構7は2つの昇降駆動部71、72を有している。昇降駆動部71では、第1昇降モータ(図示省略)がベース部材17に取り付けられている。第1昇降モータは、制御ユニット10からの駆動指令に応じて作動して回転力を発生する。この第1昇降モータに対し、2つの昇降部712、713が連結される。昇降部712、713は、第1昇降モータから上記回転力を同時に受ける。そして、昇降部712は、第1昇降モータの回転量に応じて梁部材49の一方端部を支持する支持部材491を鉛直方向Zに昇降させる。また、昇降部713は、第1昇降モータの回転量に応じてノズルヘッド56を支持するノズル移動部54を鉛直方向Zに昇降させる。
【0061】
昇降駆動部72では、第2昇降モータ(図示省略)がベース部材17に取り付けられている。第2昇降モータに対し、昇降部722が連結される。第2昇降モータは、制御ユニット10からの駆動指令に応じて作動して回転力を発生し、昇降部722に与える。昇降部722は、第2昇降モータの回転量に応じて梁部材49の他方端部を支持する支持部材492を鉛直方向Zに昇降させる。
【0062】
昇降駆動部71、72は、下密閉カップ部材61の側面に対し、その周方向において互いに異なる3箇所にそれぞれ固定される支持部材491、492、54を同期して鉛直方向Zに移動させる。したがって、上面保護加熱機構4、ノズルヘッド56および下密閉カップ部材61の昇降を安定して行うことができる。また、下密閉カップ部材61の昇降に伴って上カップ33も安定して昇降させることができる。
【0063】
制御ユニット10は、
図3に示すように、演算処理部10A、記憶部10B、読取部10C、画像処理部10D、駆動制御部10E、通信部10Fおよび給排気制御部10Gを有している。記憶部10Bは、ハードディスクドライブなどで構成されており、上記基板処理装置1によりベベル処理を実行するためのプログラムを記憶している。当該プログラムは、例えばコンピュータ読み取り可能な記録媒体RM(例えば、光ディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク等)に記憶されており、読取部10Cにより記録媒体RMから読み出され、記憶部10Bに保存される。また、当該プログラムの提供は、記録媒体RMに限定されるものではなく、例えば当該プログラムが電気通信回線を介して提供されるように構成してもよい。画像処理部10Dは、基板観察機構9により撮像された画像に種々の処理を施す。駆動制御部10Eは、基板処理装置1の各駆動部を制御する。通信部10Fは、基板処理システム100の各部を統合して制御する制御部などと通信を行う。給排気制御部10Gは、後で説明するオートダンパおよび気体循環機構を制御する。
【0064】
また、制御ユニット10には、各種情報を表示する表示部10H(例えばディスプレイなど)や操作者からの入力を受け付ける入力部10J(例えば、キーボードおよびマウスなど)が接続される。
【0065】
演算処理部10Aは、CPU(=CentralProcessingUnit)やRAM(=RandomAccessMemory)等を有するコンピュータにより構成されており、記憶部10Bに記憶されるプログラムにしたがって基板処理装置1の各部を以下のように制御し、例えば
図6に示すベベル処理を実行する。
【0066】
図6は
図3および
図4に示す基板処理装置により基板処理動作の一例として実行されるベベル処理を示すフローチャートである。基板処理装置1により基板Wにベベル処理を施す際には、演算処理部10Aは、センタリング駆動部83によりシングル移動部81およびマルチ当接部82をスピンチャック21から離れた退避位置に移動させるとともに、観察ヘッド駆動部94により観察ヘッド93をスピンチャック21から離れた待機位置に移動させる。
【0067】
そして、演算処理部10Aは、基板処理装置1の各部をベベル処理に適した状態からシャッター15を開いた状態に移行させる。具体的には、下密閉カップ部材61が下限位置に位置決めされることで雰囲気分離が行われる。そして、演算処理部10Aはシャッター15を開く。このシャッターオープンに続いて、演算処理部10Aは、梁部材49、支持部材43、円板部42、上カップ33および下密閉カップ部材61を一体的に上昇させる。これによって、基板搬送ロボット111のハンドがスピンチャック21にアクセスするための搬送空間が形成される。すると、演算処理部10Aは、通信部10Fを介して基板搬送ロボット111に基板Wのローディングリスエストを行い、未処理の基板Wが基板処理装置1に搬入されてスピンチャック21の上面に載置されるのを待つ。そして、スピンチャック21上に基板Wが載置される(ステップS1)。なお、この時点では、ポンプ26は停止しており、スピンチャック21の上面上で基板Wは水平移動可能となっている。
【0068】
基板Wのローディングが完了すると、基板搬送ロボット111が基板処理装置1から退避する。それに続いて、演算処理部10Aは、梁部材49、支持部材43、円板部42、上カップ33および下密閉カップ部材61を一体的に退避位置に位置させたまま、シャッター15を閉じる。こうして、センタリング処理の準備が完了すると、演算処理部10Aはシングル移動部81およびマルチ当接部82をスピンチャック21上の基板Wに近接するように、センタリング駆動部83を制御する。これによりスピンチャック21に対する基板Wの偏心が解消され、基板Wの中心がスピンチャック21の中心と一致する(ステップS2)。こうしてセンタリング処理が完了すると、演算処理部10Aは、シングル移動部81およびマルチ当接部82が基板Wから離間するようにセンタリング駆動部83を制御するとともに、ポンプ26を作動させて負圧をスピンチャック21に付与する。これにより、スピンチャック21は基板Wを下方から吸着保持する。
【0069】
次に、演算処理部10Aは、昇降駆動部71、72に下降指令を与える。これに応じて、昇降駆動部71、72が下密閉カップ部材61、ノズルヘッド56、梁部材49、支持部材43および円板部42を一体的に下降させる。この下降途中で、下密閉カップ部材61の突起部613により下方から支持される上カップ33が下カップ32に連結される。これによって、回転カップ部31(=上カップ33と下カップ32の連結体)が形成される。
【0070】
回転カップ部31の形成後に、下密閉カップ部材61、ノズルヘッド56、梁部材49、支持部材43および円板部42が一体的にさらに下降し、下密閉カップ部材61のフランジ部611、612がそれぞれ外側整流部材14bおよび固定カップ部34で係止される。これにより、下密閉カップ部材61が下限位置(
図3の位置)に位置決めされる(ステップS3)。これによって、鉛直方向Zにおいて下密閉カップ部材61と固定カップ部34が繋がり、上密閉カップ部材62、下密閉カップ部材61および固定カップ部34により密閉空間12aが形成され、密閉空間12aが外側雰囲気から分離される(雰囲気分離状態)。
【0071】
この雰囲気分離状態で、円板部42の下面が基板Wの上面Wfのうち周縁部Wsを除く表面領域を上方から覆っている。また、処理液吐出ノズル51Fが、円板部42の切欠部44内で吐出口511を基板Wの上面Wfの周縁部に向けた姿勢で位置決めされる。こうして基板Wへの処理液の供給準備が完了すると、演算処理部10Aは、モータ23に回転指令を与え、基板Wを保持するスピンチャック21および回転カップ部31の回転を開始する(ステップS4)。また、演算処理部10Aはヒータ駆動部422を駆動制御してヒータ421を所望温度まで昇温させる。
【0072】
次に、演算処理部10Aは、加熱ガス供給部47に加熱ガス供給指令を与える。これにより、ヒータ471により加熱された窒素ガス、つまり加熱ガスが加熱ガス供給部47から中央ノズル45に向けて圧送される(ステップS5)。この加熱ガスは、配管46を通過する間、リボンヒータ(図示省略)により加熱される。これにより、加熱ガスは、配管46を介したガス供給中における温度低下を防止しながら、中央ノズル45から基板Wと円板部42とで挟まれた処理空間SPcに向けて吐出される。これにより、基板Wの上面Wfが全面的に加熱される。また、基板Wの加熱はヒータ421によっても行われる。このため、時間の経過によって基板Wの周縁部Wsの温度が上昇し、ベベル処理に適した温度に達する。また、周縁部Ws以外の温度も、ほぼ等しい温度にまで上昇する。すなわち、本実施形態では、基板Wの上面Wfの面内温度は、ほぼ均一である。したがって、基板Wが反るのを効果的に抑制することができる。
【0073】
これに続いて、演算処理部10Aは、処理液供給部52を制御して処理液吐出ノズル51Fおよび処理液吐出ノズル51Bに処理液を供給する。つまり、処理液吐出ノズル51Fから基板Wの上面周縁部に当たるように処理液の液流が吐出されるとともに、処理液吐出ノズル51Bから基板Wの下面周縁部に当たるように処理液の液流が吐出される。これによって、基板Wの周縁部Wsに対するベベル処理が実行される(ステップS6)。そして、演算処理部10Aは、基板Wのベベル処理に要する処理時間の経過などを検出すると、処理液供給部52に供給停止指令を与え、処理液の吐出を停止する。
【0074】
それに続いて、演算処理部10Aは、加熱ガス供給部47に供給停止指令を与え、加熱ガス供給部47から中央ノズル45に向けて窒素ガスの供給を停止する(ステップS7)。また、演算処理部10Aは、モータ23に回転停止指令を与え、スピンチャック21および回転カップ部31の回転を停止させる(ステップS8)。
【0075】
次のステップS9で、演算処理部10Aは基板Wの周縁部Wsを観察してベベル処理の結果を検査する。より具体的には、演算処理部10Aは、観察ヘッド駆動部94を制御して観察ヘッド93を基板Wに近接させる。そして、演算処理部10Aは、光源部91を点灯させることで観察ヘッド93を介して基板Wの周縁部Wsを照明する。また、周縁部Wsおよび隣接領域で反射された反射光を撮像部92が受光して周縁部Wsおよび隣接領域を撮像する。つまり、基板Wが回転軸AXまわりに回転している間に撮像部92が取得した複数の周縁部Wsの像から基板Wの回転方向に沿った周縁部Wsの周縁部画像を取得する。すると、演算処理部10Aは、観察ヘッド駆動部94を制御して観察ヘッド93を基板Wから退避させる。これと並行して、演算処理部10Aは、撮像された周縁部Wsおよび隣接領域の画像、つまり周縁部画像に基づき、演算処理部10Aは、ベベル処理が良好に行われたか否かを検査する。なお、本実施形態では、その検査の一例として、周縁部画像から基板Wの端面から基板Wの中央部に向かって処理液により処理された処理幅を検査している(処理後検査)。
【0076】
検査後、演算処理部10Aは、シャッター15を開く。また、演算処理部10Aは、通信部10Fを介して基板搬送ロボット111に基板Wのアンローディングリスエストを行い、処理済の基板Wが基板処理装置1から搬出される(ステップS10)。なお、これら一連の工程は繰り返して実行される。
【0077】
<基板処理システムにおける給排気構造>
ところで、処理ブロック1Bでは、
図2に示すように、6台の基板処理装置1が積層配置されている。従来、基板処理装置1に対してダウンフロー用の空気を供給するために、基板処理システム100が設置される工場に既設の空気供給装置に対し、各基板処理装置1が接続されている。また、回転カップ部31内の雰囲気を基板処理装置1の外部に排出するために、各基板処理装置1の排気部位342が同工場に既設の排気装置と接続されている。そして、空気供給装置からの空気(本発明の「新規気体」の一例に相当)の供給を受けて回転カップ部31内にダウンフローを形成するとともに回転カップ部31内の雰囲気(=ダウンフローを構成する空気+処理液の気液成分)をそのまま装置外部に排出しながら、基板処理装置1は基板処理を行う。このように装置外部に排出されて排気装置に回収される雰囲気を本明細書では「回収雰囲気」と称する。したがって、既設のように、基板処理の品質を低下させることなく、空気供給装置からの新規気体の導入量および排気装置への回収雰囲気の回収量を軽減させることが難しく、空気供給装置や排気装置に大きな負荷を与えていた。
【0078】
そこで、本実施形態では、基板処理システム100に対して以下に説明する給排気構造を付加することで、新規気体の導入量および回収雰囲気の回収量の削減を図っている。以下、
図2、
図7および
図8を参照しつつ本実施形態の特徴的な構成について説明した後で、
図9A~
図9Cを参照しつつ本実施形態における給排気動作について説明する。
【0079】
処理ブロック1Bでは、
図2に示すように、共通排気配管1B2が設けられている。共通排気配管1B2は、各基板処理装置1から排出される回転カップ部31内の雰囲気を排気装置に案内して回収する機能を担っている。本実施形態では、ベベル処理(ステップS6)を行う処理液として、複数種類の処理液が用いられる。より具体的には、酸溶液、アルカリ溶液や有機溶液などが用いられる。そこで、共通排気配管1B2は、共通酸排気配管1B2a、共通アルカリ排気配管1B2bおよび共通有機排気配管1B2cで構成されている。また、回転カップ部31内の雰囲気を、その種類(酸雰囲気、アルカリ雰囲気および有機雰囲気)に対応した共通排気配管1B2に排出するために、基板処理装置1毎に、排気機構171が設けられている。
【0080】
図7は本発明に係る給排気構造の一構成要素である排気機構の構成を示す図である。排気機構171は、排気配管170と、排気配管170を流通してきた雰囲気をその種類に対応した共通排気配管1B2に案内して排気する個別排気部172を有する。個別排気部172は、配管173と、開閉ダンパD1a~D1cとを有している。配管173のチャンバ側(
図7の右側)の端部は排気配管170に接続されている。一方、配管173の反チャンバ側(
図7の左側)の端部は3つに分岐し、それぞれが酸用個別排気配管173a、アルカリ用個別排気配管173bおよび有機用個別排気配管173cとして機能する。これら酸用個別排気配管173a、アルカリ用個別排気配管173bおよび有機用個別排気配管173cは、それぞれ共通酸排気配管1B2a、共通アルカリ排気配管1B2bおよび共通有機排気配管1B2cに接続されている。また、個別排気配管173a~173cに対し、開閉ダンパD1a~D1cがそれぞれ介挿されている。開閉ダンパD1a~D1cは給排気制御部10Gからの開閉指令に応じて開閉する。例えば回転カップ部31内が酸雰囲気であるとき、給排気制御部10Gが開閉ダンパD1a~D1cをそれぞれ「開」、「閉」および「閉」に切り替えると、当該酸雰囲気が本発明の「回収雰囲気」として排気配管170および個別排気配管173aを介して共通酸排気配管1B2aに排出される。また、回転カップ部31内がアルカリ雰囲気であるとき、給排気制御部10Gが開閉ダンパD1a~D1cをそれぞれ「閉」、「開」および「閉」に切り替えると、当該アルカリ雰囲気が本発明の「回収雰囲気」として排気配管170および個別排気配管173bを介して共通アルカリ排気配管1B2bに排出される。さらに、回転カップ部31内が有機雰囲気であるとき、給排気制御部10Gが開閉ダンパD1a~D1cをそれぞれ「閉」、「閉」および「開」に切り替えると、当該有機雰囲気が本発明の「回収雰囲気」として排気配管170および個別排気配管173cを介して共通有機排気配管1B2cに排出される。このように、回転カップ部31内の雰囲気は、その種類に対応した回収経路で、基板処理装置1から分別回収される。こうして基板処理装置1から排出された回収雰囲気は共通排気配管1B2により排気装置に向けて案内される。
【0081】
本実施形態では、
図2に示すように、基板処理装置1aの排気機構171が排気装置から最も近接した位置Paで共通排気配管1B2と接続されている。そして、共通排気配管1B2のうち位置Paと排気装置との間に、気体循環機構160が介挿されている。この気体循環機構160は、共通排気配管1B2を流れる雰囲気をそのまま排気装置に回収して排気する排気回収機能と、共通排気配管1B2を流れる雰囲気を正常な空気(本発明の「再生気体」の一例に相当)に再生処理した後でフィルタファン13aのインレットに供給する、いわゆる循環利用機能とを兼ね備えている。以下、気体循環機構160の構成、気体循環機構160の排気回収機能および循環利用機能の順に説明する。
【0082】
図8は本発明に係る給排気構造の一構成要素である気体循環機構の構成を示す図である。気体循環機構160は、3つの循環配管161a~161cを有している。循環配管161aの一方端部は、位置Paよりも排気装置側(同図の上側)の位置Pbで共通酸排気配管1B2aに介挿された三方弁V1aに接続されている。この三方弁V1aは、共通酸排気配管1B2aにより酸雰囲気が排気装置に流れるのを制御する第1ポートおよび第2ポート以外に、酸雰囲気を気体循環機構160に流すための第3ポートを有している。この第3ポートに循環配管161aが接続されている。このため、処理ブロック1B全体を制御するブロック制御部1B3(
図2)からの指令にしたがって三方弁V1aの第1ポート、第2ポートおよび第3ポートがそれぞれ「開」、「開」および「閉」に切り替えられると、酸雰囲気の全部が排気装置に流れる。一方、第1ポート、第2ポートおよび第3ポートがそれぞれ「開」、「閉」および「開」に切り替えられると、酸雰囲気の全部が循環配管161aに流れ込む。このように気体循環機構160は、三方弁V1a~V1cを有することで、共通排気配管1B2からの雰囲気の取出と取出規制とを選択的に切り替え可能となっている。
【0083】
また、共通酸排気配管1B2aと同様に、共通アルカリ排気配管1B2bにも三方弁V1bが介挿されるとともに、三方弁V1bの第3ポートに循環配管161bが接続されている。このため、ブロック制御部1B3からの指令にしたがって三方弁V1bの第1ポート、第2ポートおよび第3ポートがそれぞれ「開」、「開」および「閉」に切り替えられると、アルカリ雰囲気の全部が排気装置に流れる。一方、第1ポート、第2ポートおよび第3ポートがそれぞれ「開」、「閉」および「開」に切り替えられると、アルカリ雰囲気の全部が循環配管161bに流れ込む。
【0084】
さらに、共通酸排気配管1B2aと同様に、共通有機排気配管1B2cにも三方弁V1cが介挿されるとともに、三方弁V1cの第3ポートに循環配管161cが接続されている。このため、ブロック制御部1B3からの指令にしたがって三方弁V1cの第1ポート、第2ポートおよび第3ポートがそれぞれ「開」、「開」および「閉」に切り替えられると、有機雰囲気の全部が排気装置に流れる。一方、第1ポート、第2ポートおよび第3ポートがそれぞれ「開」、「閉」および「開」に切り替えられると、有機雰囲気の全部が循環配管161cに流れ込む。
【0085】
これらの循環配管162a~162cには、ケミカルフィルタユニット163が介挿されている。このケミカルフィルタユニット163では、インレット側(
図8の左手側)からアウトレット側(
図8の右手側)に3種類のケミカルフィルタ163a~163cがこの順序で配置されている。ケミカルフィルタ163a~163cは、それぞれ酸気液成分、アルカリ気液成分および有機気液成分を除去する機能を有している。このため、共通酸排気配管1B2aから取り出された酸雰囲気に含まれる酸気液成分がケミカルフィルタ163aで除去される。また、仮に酸雰囲気にアルカリ気液成分や有機気液成分が含まれていたとしても、それぞれケミカルフィルタ163b、163cで除去される。こうして処理液の気液成分が取り除かれた空気(以下「再生空気」という)が本発明の「再生気体」の一例として循環配管162aにより各基板処理装置1の再生気体導入機構(
図2の符号180)に向けて送られる。
【0086】
この点については、循環配管162b、162cについて同様である。つまり、共通アルカリ排気配管1B2bから取り出されたアルカリ雰囲気に含まれる気液成分がケミカルフィルタユニット163により除去されることで再生空気が生成され、本発明の「再生気体」の一例として循環配管162bにより再生気体導入機構180に向けて送られる。さらに、共通有機排気配管1B2cから取り出された有機雰囲気に含まれる気液成分がケミカルフィルタユニット163により除去されることで再生空気が生成され、本発明の「再生気体」の一例として循環配管162cにより再生気体導入機構180に向けて送られる。
【0087】
これら循環配管162a~162cの再生気体導入機構側(
図8の右手側)の端部は結合され、結合配管164を構成する。この結合配管164が処理ブロック1Bにおいて延設されることで、気体循環機構160は処理ブロック1Bを構成する6台の基板処理装置1に対して再生空気を供給可能となっている。つまり、気体循環機構160は、基板処理装置1毎に、基板処理装置1との間で空気を循環させている。
【0088】
このように雰囲気から再生空気を生成して循環利用していると、循環利用の累積時間の増大に伴ってケミカルフィルタ163a~163cの除去性能が低下していく。つまり、上記除去能力の低下に伴って再生空気に含まれる酸気液成分などの濃度が上昇すると、再生空気を後で説明するようにダウンフローに使用することは避けるべきである。
【0089】
そこで、本実施形態では、
図8に示すように、循環配管162aにおいて、酸濃度計165aがケミカルフィルタユニット163のアウトレット近傍で介挿されている。また、酸濃度計165aのアウトレット近傍で、循環配管162aから分岐したリーク配管166aが位置Pbよりも排気装置側(同図の上側)の位置Pcで共通酸排気配管1B2aに接続されている。このリーク配管166aには、濃度計165aから共通酸排気配管1B2aに向けて、開閉弁V2aおよび逆止弁Caがこの順序で介挿されている。逆止弁Caはリーク配管166aを経由した共通酸排気配管1B2aから循環配管162aへの回収雰囲気(=酸気液成分+空気)の逆流を防止する機能を担っている。また、開閉弁V2aは通常閉成している、いわゆるノーマリオフ状態であるが、例えば再生空気に含まれる酸気液成分の濃度が上昇すると、次のように気体循環機構160は動作する。すなわち、ブロック制御部1B3からの開指令に応じて開閉弁V2aが開成する。これによって、濃度監視値以上の酸気液成分を含んだ再生空気の一部がリーク配管166aを介して共通酸排気配管1B2aに送られ、排気装置に回収される。一方、残りの再生空気が結合配管164に送り込まれる。すなわち、再生空気の全部ではなく、一部のみが循環利用に供せられる。
【0090】
循環配管162bに対しても、循環配管162aと同様の構成(=アルカリ濃度計165b+リーク配管166b+開閉弁V2b+逆止弁Cb)が設けられている。また、循環配管162cに対しても、循環配管162aと同様の構成(=有機濃度計165c+リーク配管166c+開閉弁V2c+逆止弁Cc)が設けられている。したがって、再生空気に含まれるアルカリ気液成分の濃度が濃度監視値以上になると、アルカリ気液成分を含んだ再生空気の一部がリーク配管166bを介して共通アルカリ排気配管1B2bに送られ、排気装置に回収される。残りの再生空気が結合配管164に送り込まれる。また、再生空気に含まれる有機気液成分の濃度が濃度監視値以上になると、有機気液成分を含んだ再生空気の一部がリーク配管166cを介して共通有機排気配管1B2cに送られ、排気装置に回収される。残りの再生空気が結合配管164に送り込まれ、再生気体導入機構180に向けて案内される。
【0091】
図2に戻って、再生空気の供給について説明する。本実施形態では、再生空気を基板処理装置1に供給するために、基板処理装置1毎に、再生気体導入機構180が結合配管164に並列接続されている。再生気体導入機構180は、結合配管164から分岐してフィルタファン13aのインレットに接続された導入配管181を有している。この導入配管181には、開閉ダンパD2および圧力計182が設けられている。つまり、導入配管181に介挿された開閉ダンパD2を給排気制御部10G(
図3)により制御することで、フィルタファン13aへの再生空気の供給および供給停止が切り替えられる。また、圧力計182が導入配管181内の再生空気の圧力を計測する。この計測値は導入配管181を流れる再生空気に関する情報を含んでおり、給排気制御部10Gに与える。すると、給排気制御部10Gは計測値に基づき再生空気の流量を求め、次に説明する新規気体導入機構150を制御する。
【0092】
新規気体導入機構150は、再生気体導入機構180と同様に、基板処理装置1毎に設けられている。つまり、処理ブロック1B内に延設された共通供給配管1B1に対して6台の新規気体導入機構150が並列に接続されている。この共通供給配管1B1は、空気供給装置から送風される空気を新規気体導入機構150に供給する。新規気体導入機構150は、共通供給配管1B1から分岐してフィルタファン13aのインレットに接続された導入配管151を有している。この導入配管151には、オートダンパD0が介挿されている。オートダンパD0の開度は給排気制御部10G(
図3)により制御される。より具体的には、圧力計182で計測された圧力値に応じて給排気制御部10Gが0%から100%の範囲でオートダンパD0の開度を調整する。この調整によって、空気供給装置からフィルタファン13aへの空気の導入量、つまり新規気体の導入量を広範囲にわたって調整可能となっている。
【0093】
上記したように、本実施形態では、気体循環機構160、再生気体導入機構180および新規気体導入機構150が設けられている。そして、気体循環機構160がブロック制御部1B3により制御されるとともに、再生気体導入機構180および新規気体導入機構150が給排気制御部10Gにより制御される。本実施形態では、ブロック制御部1B3および給排気制御部10Gが連携して処理ブロック1Bでの給排気動作を制御することで、次に説明する3つのモードを実行可能となっているが、これと異なる態様で制御してもよい。例えばブロック制御部1B3のみで制御するように構成してもよい。また、基板処理システム100全体を制御する制御部(図示省略)により制御するように構成してもよい。
【0094】
上記3つのモードとは、酸気液成分を有する処理液を用いる酸処理時、アルカリ気液成分を有する処理液を用いるアルカリ処理時および有機気液成分を有する処理液を用いる有機処理時の各々において、再生空気の全部を利用して新規供給空気の導入量の削減を図る第1削減モードと、再生空気の一部を利用して新規供給空気の導入量の削減を図る第2削減モードと、再生空気を利用せず新規供給気体のみでダウンフローを形成する通常モードとが実行可能となっている。
【0095】
図9Aは酸処理時における通常モードの実行状況を模式的に示す図である。
図9Bは酸処理時における第1削減モードの実行状況を模式的に示す図である。
図9Cは酸処理時における第2削減モードの実行状況を模式的に示す図である。これらの図面では、新規空気、回収雰囲気および再生空気が流れる流路を太線で描いている。また、これらの図面における、括弧書きはオートダンパD0および開閉ダンパD1a、D1b、D1c、D2の開閉状況を示している。また、三方弁V1a~V1cのポートを示す記号において三角形の部分が黒いものは、弁が開いている状態を示し、三角形の部分が白いものは、弁が閉じている状態を示している。さらに、開閉弁V2a~V2cの弁を示す記号において三角形の部分が黒いものは、弁が開いている状態を示し、三角形の部分が白いものは、弁が閉じている状態を示している。
【0096】
まず通常モードについて、
図9Aを参照しつつ説明する。この通常モードは、実質的に従来より実行している給排気方法を実行するモードである。この通常モードでは、処理液供給部52から酸処理液によりベベル処理が行われる回転カップ部31内に新規空気のみで形成したダウンフローが与えられる。つまり、給排気制御部10Gからの開指令に応じてオートダンパD0が開く一方で、開閉ダンパD2が閉じている。これによって、所望のダウンフローを形成するのに必要な流量の新規空気のみがフィルタファン13aに与えられる。ここでは、理解を容易にするため、所望のダウンフローを形成するのに必要な流量を100とし、オートダンパD0および開閉ダンパ―D2を通過する空気の流量の値を
図9Aの括弧に追加記載している(この点については、後で第1削減モードおよび第2削減モードにおいても同様である)。より詳しくは、通常モードでは、100の新規空気がフィルタファン13aに与えられるように、オートダンパD0の開度が調整される。一方、開閉ダンパ―D2が閉成されているため、フィルタファン13aに与えられる再生空気はゼロである。
【0097】
こうして形成されたダウンフローの下で酸処理液によるベベル処理が行われると、酸雰囲気が回転カップ部31内に形成される。この酸雰囲気は排気配管170を介して個別排気部172に送り込まれる。通常モードでは、同図に示すように、開閉ダンパD1a~D1cがそれぞれ「開」、「閉」および「閉」に切り替えられ、酸雰囲気の全部が配管173、173aを介して共通酸排気配管1B2aに排出される。また、この通常モードでは、ブロック制御部1B3からの切替指令に応じて三方弁V1a~V1cがすべて雰囲気を排気装置に流通させるように切り替えられている。これにより、気体循環機構160による共通酸排気配管1B2aからの酸雰囲気の取出および再生空気の生成は行われず、再生空気のフィルタファン13aへの供給もゼロである。なお、通常モードでは、開閉弁V2a~V2cは常時閉成されている。
【0098】
この通常モードから第1削減モードに切り替える際には、ブロック制御部1B3は、三方弁V1aに切替指令を与える。また、給排気制御部10Gは再生空気を利用する基板処理装置1の開閉ダンパD2に開指令を与える。すると、
図9Bに示すように、三方弁V1aでは第1ポートと第3ポートとが繋がり、共通酸排気配管1B2aから酸雰囲気の全部が循環配管161aに流れ込み、ケミカルフィルタユニット163を通過する。ここで、主としてケミカルフィルタ163aにより酸気液成分が酸雰囲気から除去され、ケミカルフィルタユニット163を通過した酸雰囲気は再生空気に再生される。この再生空気の全部が、濃度計165cを通過した後で、結合配管164により各基板処理装置1の再生気体導入機構180に送られる。同図に示すように、例えば最上位に位置する基板処理装置1aの開閉ダンパD2が開成しているとき、結合配管164により送られてきた再生空気は導入配管181によりフィルタファン13aに供給される。このときの再生空気の流量Xは、100よりも小さな値となる。したがって、再生空気のみでダウンフローを維持することは難しい。
【0099】
そこで、本実施形態では、圧力計182による計測値を受け取った給排気制御部10Gが計測値に基づき再生空気の流量を求め、(100-X)に相当する新規空気がフィルタファン13aに送り込まれる程度にまでオートダンパD0の開度を絞る。
【0100】
このように第1削減モードでは、酸雰囲気の全部を再生空気に再生しながら循環利用してダウンフローを形成しているため、所定量のダウンフローを安定して回転カップ部31に供給しながらダウンフロー形成部13への新規空気の導入量を大幅に削減することができる。また、共通酸排気配管1B2aから酸雰囲気の全部を取り出すことで外部に排気して回収される回収雰囲気の回収量を削減することができる。つまり、気体循環機構160による排気装置への回収量の削減と、再生気体導入機構180からの再生気体の導入およびオートダンパD0による新規空気の導入量の削減とが並行して行われ、SDGsの推進に大きく寄与する。
【0101】
ところで、第1削減モードの稼働に伴ってケミカルフィルタ163aの酸除去性能が低下してくる。この酸除去性能の低下は、再生空気に含まれる酸気液成分の濃度上昇を招く。そこで、本実施形態では、給排気制御部10Gが濃度計165aにより計測された酸気液成分の濃度に関する情報を取得して監視している。したがって、当該情報に基づいて再生空気における酸気液成分の濃度が所定の濃度監視値以上となったタイミングで、第1削減モードから通常モードに戻し、通常モードを実行しながらケミカルフィルタ163aの交換を行ってもよい。
【0102】
しかしながら、本実施形態では、酸リーク経路(=リーク配管166a+開閉弁V2a+逆止弁Ca)を設けているため、上記タイミングで給排気制御部10Gが第1削減モードから第2削減モードに切り替えるように構成してもよい。これによって、ケミカルフィルタ163aの交換時期を延ばすことができ、基板処理装置1の稼働率を高めるとともに、ランニングコストを抑えることが可能となる。以下、
図9Cを参照しつつ第2削減モードについて説明する。
【0103】
この第1削減モードから第2削減モードに切り替える際には、給排気制御部10Gは開閉弁V2aに開指令を与える。すると、
図9Cに示すように、開閉弁V2aが「開」に切り替えられ、酸リーク経路が形成される。このため、再生空気の一部がリーク配管166aにより共通酸排気配管1B2aに流れ込み、排気装置に排出されて回収される。一方、上記のように酸リーク経路に沿って排出された分だけフィルタファン13aに送り込まれる再生空気の流量は減少する。例えば再生空気が流量Y(<X)となると、給排気制御部10Gは圧力計182の計測値の変化に基づきフィルタファン13aに供給される再生空気の流量減少を確認する。すると、給排気制御部10Gは、その流量減少量に応じてオートダンパD0の開度を増大させることで、(100-Y)に相当する新規空気をフィルタファン13aに送り込むように制御する。このように、再生空気のリークによる再生空気の流量減少分だけ新規空気の流量を増大させることで、所定量のダウンフローを安定して回転カップ部31に供給しながら新規空気の導入量を削減することができる。しかも、再生空気の供給量を減少させることで、ダウンフローに含まれる酸気液成分の濃度を所定の濃度監視値未満に抑えることができ、ケミカルフィルタ163aの交換時期を先に延ばす、つまりケミカルフィルタ163aを長時間使用することができる。また、基板処理装置1の稼働率を高めることができる。
【0104】
図9Aないし
図9Cを用いて酸処理時における通常モード、第1削減モードおよび第2削減モードについて説明したが、アルカリ処理時および有機処理時においても、ブロック制御部1B3が気体循環機構160を制御するとともに、給排気制御部10Gが再生気体導入機構180および新規気体導入機構150制御することで通常モード、第1削減モードおよび第2削減モードを実行可能となっており、上記と同様の作用効果が得られる。つまり、アルカリ処理時における通常モードでは、開閉ダンパD1aの代わりに開閉ダンパD1bが開成される。また、有機処理時における通常モードでは、開閉ダンパD1aの代わりに開閉ダンパD1cが開成される。なお、その他については、酸処理時と同一である。
【0105】
また、アルカリ処理時および有機処理時における第1削減モードでは、酸処理時と同様に、ブロック制御部1B3が気体循環機構160の三方弁V1a~V1cおよび開閉弁V2a~V2cを制御するとともに、給排気制御部10GがオートダンパD0および開閉ダンパD2を制御する(
図9B参照)。これによって、アルカリ雰囲気や有機雰囲気の全部を再生空気に再生しながら循環利用してダウンフローを形成することができる。その結果、所定量のダウンフローを安定して回転カップ部31に供給しながら新規空気の導入量を大幅に削減することができる。
【0106】
さらに、アルカリ処理時における第2削減モードでは、開閉弁V2aの代わりに開閉弁V2bが開成される。有機処理時における第2削減モードでは、開閉弁V2aの代わりに開閉弁V2cが開成される。なお、その他については、酸処理時と同一である。これによって、酸処理時における第2削減モードと同様に、再生空気の供給量を減少させるとともに、ケミカルフィルタ163b、163cを長時間使用することができる。
【0107】
上記したように、上記実施形態では、回転カップ部31を構成する上カップ33および下カップ32が本発明の「カップ」の一例に相当している。空気が本発明の「気体」の一例に相当している。また、ブロック制御部1B3および給排気制御部10Gが協働することで本発明の「制御部」として機能している。
【0108】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記実施形態では、再生空気における酸気液成分、アルカリ気液成分や有機気液成分の濃度が所定の濃度監視値以上となったタイミングで、第1削減モードから第2削減モードに切り替え、第2削減モードを実行している。第2削減モードの継続中においても、再生空気における酸気液成分、アルカリ気液成分や有機気液成分の濃度は上昇していく。そこで、濃度計165a~165cの計測値が濃度監視値よりも高い循環限界値に到達したことを給排気制御部10Gが検知したとき、給排気制御部10Gからの指令に応じて表示部10Hにフィルタ交換を促すメッセージを表示するように構成してもよい。また、上記したフィルタ交換メッセージを表示する前に、濃度計165a~165cの計測値が濃度監視値に到達して第2削減モードに切り替わった時点で、給排気制御部10Gからの指令に応じて表示部10Hにフィルタ交換の準備を促すメッセージを表示するように構成してもよい。
【0109】
また、上記実際形態では、第1削減モードおよび第2削減モードにおいて共通排気配管1B2から雰囲気の全部を取り出しているが、当該雰囲気の一部を取り出すように構成してもよい。
【0110】
また、上記実施形態では、酸雰囲気、アルカリ雰囲気および有機雰囲気の3種類が発生する基板処理装置1に本発明を適用しているが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、1種類、2種類あるいは4種類以上の雰囲気が発生する基板処理装置にも適用可能である。
【0111】
また、上記実施形態では、共通供給配管1B1により空気供給装置から送られてくる新規空気をフィルタファン13aに供給しているが、新規空気の供給態様はこれに限定されるものではない。例えば、特許文献1に記載の装置と同様に、基板処理システム100が設置されたクリーンルーム内の空気を新規空気として用いることができる。つまり、クリーンルーム内の空気を取り込み、オートダンパD0を介してフィルタファン13aに供給するように構成してもよい。
【0112】
また、上記実施形態では、基板処理システム100の一部、より具体的には6台の基板処理装置1を有する処理ブロック1Bに対して本発明を適用しているが、基板処理装置1の台数は任意である。また、基板処理システム100全体に対し、本発明を適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0113】
この発明は、基板に処理液を供給して当該基板を処理する基板処理装置を装備する基板処理システムにおける給排気技術全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0114】
1,1a…基板処理装置
1B…処理ブロック
1B1…共通供給配管
1B2…共通排気配管
1B2a…共通酸排気配管
1B2b…共通アルカリ排気配管
1B2c…共通有機排気配管
1B3…ブロック制御部
5…処理機構
10G…給排気制御部
11…チャンバ
13…ダウンフロー形成部
31…回転カップ部
32…下カップ
33…上カップ
100…基板処理システム
150…新規気体導入機構
160…気体循環機構
162a~162c…循環配管
163…ケミカルフィルタユニット
165a~165c…濃度計
166a~166c…リーク配管
170…排気配管
171…排気機構
172…個別排気部
180…再生気体導入機構