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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092257
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】非接触給電設備
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/10 20160101AFI20240701BHJP
   B60M 7/00 20060101ALI20240701BHJP
   B60L 5/00 20060101ALI20240701BHJP
   B60L 53/122 20190101ALI20240701BHJP
【FI】
H02J50/10
B60M7/00 X
B60L5/00 B
B60L53/122
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208056
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】西村 圭司
【テーマコード(参考)】
5H105
5H125
【Fターム(参考)】
5H105BA02
5H105BB07
5H105CC02
5H105DD10
5H105EE15
5H125AA11
5H125AC04
5H125FF15
(57)【要約】
【課題】直列に接続されている複数のスレーブユニットのいずれかが故障した場合であっても、当該故障したスレーブユニット及びそれより下流のスレーブユニットに接続された電源装置の全てが同期されない状態となることを回避できる非接触給電設備を提供する。
【解決手段】複数のスレーブユニット8の少なくとも一部である対象ユニットは、入力部80に入力された同期信号を処理部81に伝達し、処理部81から出力された同期信号を出力部82に伝達する第1モードと、処理部81をバイパスして入力部80に入力された同期信号を出力部82に伝達する第2モードと、を切り替える切替装置800を備え、切替装置800は、処理部81の動作中に第1モードとし、処理部81の停止中に第2モードとする切替動作を行う。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受電装置を備えた移動体の移動経路に沿って並ぶように配置された複数の給電線と、
複数の前記給電線のそれぞれに接続され、前記給電線に交流電流を供給する電源装置と、
複数の前記電源装置の前記交流電流の位相を同期させる同期システムと、を備え、
前記受電装置に非接触で電力を供給する非接触給電設備であって、
前記同期システムは、
同期信号を生成して出力するマスタユニットと、
前記マスタユニットに対して下流側において、前記マスタユニットと直接的に接続され、又は、他のスレーブユニットを介して前記マスタユニットと間接的に接続され、前記マスタユニットからの前記同期信号を受け取る複数のスレーブユニットと、を備え、
複数の前記電源装置のそれぞれは、前記マスタユニット又は複数の前記スレーブユニットのいずれかである接続先ユニットに接続されて前記接続先ユニットから前記同期信号を受け取るように構成され、
複数の前記スレーブユニットのそれぞれを基準として、それぞれの前記スレーブユニットに対して上流側に直接的に接続された前記マスタユニット又は前記スレーブユニットを上流ユニットとし、それぞれの前記スレーブユニットに対して下流側に直接的に接続された他の前記スレーブユニットを下流ユニットとして、
複数の前記スレーブユニットのそれぞれは、前記上流ユニットからの前記同期信号が入力される入力部と、前記入力部に入力された前記同期信号に対する処理を行う処理部と、前記下流ユニットへの前記同期信号を出力する出力部と、を備え、
複数の前記スレーブユニットの少なくとも一部である対象ユニットは、前記入力部に入力された前記同期信号を前記処理部に伝達し、前記処理部から出力された前記同期信号を前記出力部に伝達する第1モードと、前記処理部をバイパスして前記入力部に入力された前記同期信号を前記出力部に伝達する第2モードと、を切り替える切替装置を備え、
前記切替装置は、前記処理部の動作中に前記第1モードとし、前記処理部の停止中に前記第2モードとする切替動作を行う、非接触給電設備。
【請求項2】
前記切替装置は、前記入力部を、前記処理部と前記出力部とのいずれかに選択的に接続する切替スイッチを備え、
前記切替スイッチは、前記処理部が正常動作中であるか否かを示す動作信号が入力される信号入力部を備え、前記信号入力部に入力された前記動作信号に基づいて、前記処理部が正常動作中である場合には前記入力部と前記処理部とを接続することで前記第1モードとし、前記処理部が停止中である場合には前記入力部と前記出力部とを接続することで前記第2モードとする、請求項1に記載の非接触給電設備。
【請求項3】
前記切替スイッチは、更に、前記処理部が正常動作中である場合には前記処理部と前記出力部とを接続し、前記処理部が停止中である場合には前記処理部と前記出力部とを切断する、請求項2に記載の非接触給電設備。
【請求項4】
全ての前記スレーブユニットが前記対象ユニットである、請求項1~3のいずれか一項に記載の非接触給電設備。
【請求項5】
前記処理部は、前記同期信号の伝達経路の長さに応じて生じる遅延を補正する処理である遅延補正処理、及び信号強度を増幅させる処理の少なくともいずれか一方を行い、当該処理を行った処理後の前記同期信号を、前記電源装置と前記出力部とに伝達する、請求項1~3のいずれか一項に記載の非接触給電設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受電装置を備えた移動体の移動経路に沿って並ぶように配置された複数の給電線と、複数の給電線のそれぞれに接続され、給電線に交流電流を供給する電源装置と、を備え、受電装置に非接触で電力を供給する非接触給電設備に関する。
【背景技術】
【0002】
このような非接触給電設備の一例が、下記の特許文献1に開示されている。以下、背景技術の説明では、特許文献1における符号を括弧内に引用する。
【0003】
特許文献1の非接触給電設備では、マスタユニット(51(A))が複数のスレーブユニット(51)に同期信号を発信する。そして、複数のスレーブユニット(51)のそれぞれに接続された電源装置(M)が、当該スレーブユニット(51)により受信した同期信号に基づいて、対応する給電線(47)に交流電流を供給する。こうして、複数の給電線(47)のそれぞれに供給される交流電流の位相の同期を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-67747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような非接触給電設備において、複数のスレーブユニットが直列に接続されている場合、途中のスレーブユニットのいずれかが故障すると、故障したスレーブユニットの下流側にあるスレーブユニットに同期信号が伝達されなくなる。その結果、当該故障したスレーブユニット並びに当該故障したスレーブユニットの下流側にあるスレーブユニットのそれぞれに接続されている電源装置のすべてが同期されない状態となり、給電能力が低下する。
【0006】
そこで、直列に接続されている複数のスレーブユニットのいずれかが故障した場合であっても、当該故障したスレーブユニット及びそれより下流のスレーブユニットに接続された電源装置の全てが同期されない状態となることを回避できる非接触給電設備の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記に鑑みた、非接触給電設備の特徴構成は、
受電装置を備えた移動体の移動経路に沿って並ぶように配置された複数の給電線と、
複数の前記給電線のそれぞれに接続され、前記給電線に交流電流を供給する電源装置と、
複数の前記電源装置の前記交流電流の位相を同期させる同期システムと、を備え、
前記受電装置に非接触で電力を供給する非接触給電設備であって、
前記同期システムは、
同期信号を生成して出力するマスタユニットと、
前記マスタユニットに対して下流側において、前記マスタユニットと直接的に接続され、又は、他のスレーブユニットを介して前記マスタユニットと間接的に接続され、前記マスタユニットからの前記同期信号を受け取る複数のスレーブユニットと、を備え、
複数の前記電源装置のそれぞれは、前記マスタユニット又は複数の前記スレーブユニットのいずれかである接続先ユニットに接続されて前記接続先ユニットから前記同期信号を受け取るように構成され、
複数の前記スレーブユニットのそれぞれを基準として、それぞれの前記スレーブユニットに対して上流側に直接的に接続された前記マスタユニット又は前記スレーブユニットを上流ユニットとし、それぞれの前記スレーブユニットに対して下流側に直接的に接続された他の前記スレーブユニットを下流ユニットとして、
複数の前記スレーブユニットのそれぞれは、前記上流ユニットからの前記同期信号が入力される入力部と、前記入力部に入力された前記同期信号に対する処理を行う処理部と、前記下流ユニットへの前記同期信号を出力する出力部と、を備え、
複数の前記スレーブユニットの少なくとも一部である対象ユニットは、前記入力部に入力された前記同期信号を前記処理部に伝達し、前記処理部から出力された前記同期信号を前記出力部に伝達する第1モードと、前記処理部をバイパスして前記入力部に入力された前記同期信号を前記出力部に伝達する第2モードと、を切り替える切替装置を備え、
前記切替装置は、前記処理部の動作中に前記第1モードとし、前記処理部の停止中に前記第2モードとする切替動作を行う点にある。
【0008】
この特徴構成によれば、直列に接続されている複数のスレーブユニットのいずれかが故障した場合であっても、当該故障したスレーブユニットをバイパスして同期信号を下流側のスレーブユニットに伝達することができる。
従って、いずれかのスレーブユニットが故障した場合であっても、当該故障したスレーブユニットに接続された電源装置以外の電源装置については、同期信号により同期させた状態を維持することができる。
すなわち、いずれかのスレーブユニットが故障した場合に、当該故障したスレーブユニット及びそれより下流のスレーブユニットに接続された電源装置の全てが同期されない状態となることを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態に係る非接触給電設備を備えた物品搬送設備の平面図
図2】物品搬送設備が備える物品搬送車の正面図
図3】実施の形態に係る非接触給電設備の構成を示す模式図
図4】同期システムの構成の一例を示す図
図5】処理部から出力された同期信号を出力部に伝達する第1モードの状態にあるときのスレーブユニットを示す模式図
図6】処理部をバイパスして入力部に入力された同期信号を出力部に伝達する第2モードの状態にあるときのスレーブユニットを示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.実施形態
以下では、実施の形態に係る非接触給電設備100について、図面を参照して説明する。本実施形態では、非接触給電設備100は、物品搬送設備200に設けられている。
【0011】
図1及び図2に示すように、物品搬送設備200は、走行レール2と、移動体3とを備えている。走行レール2は、移動体3の移動経路1に沿って配置されている。本実施形態では、一対の走行レール2が、鉛直方向である上下方向Zに沿う上下方向視で、移動経路1に直交する方向である経路幅方向Hに互いに一定の間隔を空けた状態で、天井から吊り下げ支持されている(図2参照)。本実施形態では、移動体3は、走行レール2に案内されて移動経路1に沿って走行する物品搬送車である。物品搬送車としての移動体3の搬送対象である物品は、例えば、半導体基板を収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)や、ディスプレイの材料となるガラス基板等である。
【0012】
図1に示すように、本実施形態では、移動経路1は、環状に形成された1つの主経路1aと、それぞれが複数の物品処理部Pを経由する環状に形成された複数の副経路1bと、主経路1aと複数の副経路1bとを接続する複数の接続経路1cと、を備えている。
【0013】
図2に示すように、移動体3は、移動経路1に沿って配設された給電線11から非接触で駆動用電力を受電する受電装置4を備えている。本実施形態では、移動体3は、一対の走行レール2に案内されて移動経路1に沿って走行する走行部9と、走行レール2の下方に位置して走行部9に吊り下げ支持された搬送車本体10と、を更に備えている。
【0014】
走行部9は、駆動モータ14と、一対の走行輪15と、を備えている。駆動モータ14は、一対の走行輪15の駆動力源である。一対の走行輪15は、駆動モータ14により回転駆動される。走行輪15は、走行レール2の上面にて形成される走行面を転動する。本実施形態では、走行部9は、一対の案内輪16を更に備えている。一対の案内輪16は、上下方向Zに沿う軸心周りに回転自在に支持されている。一対の案内輪16は、一対の走行レール2における経路幅方向Hに対向する一対の内側面に当接するように配置されている。
【0015】
搬送車本体10は、走行部9に対して昇降自在に支持されて物品を吊り下げ支持する物品支持部と、当該物品支持部を昇降させるアクチュエータと、を備えている(図示を省略)。
【0016】
上記の駆動モータ14、種々のアクチュエータ等への電力は、給電線11から非接触で受電装置4に供給される。上述したように、移動体3の駆動用電力を受電装置4に供給する給電線11は、移動経路1に沿って配設されている。本実施形態では、給電線11は、受電装置4に対して経路幅方向Hの両側に配置されている。
【0017】
本実施形態では、受電装置4は、ピックアップコイル40を備えている。ピックアップコイル40には、交流電流が供給された給電線11の周囲に生じた磁界により、交流の電力が誘起される。この交流の電力は、整流回路、平滑コンデンサ等を備えた受電回路により直流に変換され、上記の駆動モータ14、種々のアクチュエータ等に供給される。
【0018】
非接触給電設備100は、受電装置4に非接触で電力を供給するように構成されている。図3に示すように、非接触給電設備100は、受電装置4を備えた移動体3の移動経路1に沿って並ぶように配置された複数の給電線11と、当該複数の給電線11のそれぞれに接続され、給電線11に交流電流を供給する電源装置5とを備えている。このように、非接触給電設備100では、給電線11と電源装置5との組が複数組設けられている。これは、本実施形態のように、1つの大きな環状の主経路1aと、当該主経路1aよりも小さな環状の複数の副経路1bとを備えた比較的大きな規模の物品搬送設備200(図1参照)では、給電線11における送電の効率が低下することや、故障時に設備の全体が停止すること等を抑制するためである。
【0019】
図示は省略するが、複数の電源装置5のそれぞれは、当該電源装置5に接続された給電線11に交流電流を供給する電源回路と、当該電源回路を制御する電源制御部と、を備えている。電源回路は、例えばインバータ回路を備えたスイッチング電源回路を中核として構成されている。電源制御部は、指令値に基づいて、インバータ回路を構成するスイッチング素子をスイッチングするスイッチング制御信号のデューティーを制御する。例えば、電源制御部は、パルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)により電源回路に交流電流を出力させる。ここで、指令値は、例えば、電流値(実効値でも波高値(ピーク・トゥ・ピーク値)でも良い)や、PWM制御におけるデューティーである。
【0020】
図4に示すように、非接触給電設備100は、複数の電源装置5の交流電流の位相を同期させる同期システム6を更に備えている。同期システム6は、規定の周期の同期信号を発信するマスタユニット7と、当該マスタユニット7に対して下流側に接続されてマスタユニット7からの同期信号を受信する、少なくとも1つのスレーブユニット8と、を備えている。このように、マスタユニット7は、同期信号を生成して出力する。
【0021】
スレーブユニット8は、直接的にマスタユニット7に接続され、又は、他のスレーブユニット8を介して間接的にマスタユニット7に接続されている。更に、スレーブユニット8は、少なくとも1つの電源装置5に接続されている。スレーブユニット8に接続された電源装置5は、スレーブユニット8からの同期信号を受信し、当該同期信号に応じて給電線11に交流電流を供給する。尚、図4に示す例では、マスタユニット7に対して電源装置5が接続されていないが、マスタユニット7に対して電源装置5が接続されていても良い。
【0022】
複数の電源装置5のそれぞれは、マスタユニット7又は複数のスレーブユニット8のいずれかである接続先ユニットに接続されて接続先ユニットから同期信号を受け取るように構成されている。
【0023】
同期システム6においては、必ずしも全てのスレーブユニット8が直列に接続されていなくとも良い。例えば、図4に示すように、スレーブユニット8が、マスタユニット7において複数枝分かれしても良いし、さらには、所定のスレーブユニット8において複数枝分かれしても良い。
【0024】
図5及び図6に示すように、以下の説明では、複数のスレーブユニット8のそれぞれを基準として、それぞれのスレーブユニット8に対して上流側に直接的に接続されたマスタユニット7又はスレーブユニット8を上流ユニットSUとし、それぞれのスレーブユニット8に対して下流側に直接的に接続された他のスレーブユニット8を下流ユニットSDとする。
【0025】
複数のスレーブユニット8のそれぞれは、上流ユニットSUからの同期信号が入力される入力部80と、入力部80に入力された同期信号に対する処理を行う処理部81と、下流ユニットSDへの同期信号を出力する出力部82と、を備える。入力部80及び出力部82はいずれも第1経路R1を介して処理部81に接続されている。
【0026】
複数のスレーブユニット8の少なくとも一部である対象ユニットは、入力部80に入力された同期信号を処理部81に伝達し、処理部81から出力された同期信号を出力部82に伝達する第1モードと、処理部81をバイパスして入力部80に入力された同期信号を出力部82に伝達する第2モードと、を切り替える切替装置800を備える。尚、本実施形態においては、全てのスレーブユニット8が切替装置800を備えており、即ち、全てが対象ユニットであるとする。
【0027】
切替装置800は、処理部81の動作中(具体的には、正常動作中)に第1モードとし、処理部81の停止中に第2モードとする切替動作を行う。切替装置800は、入力部80を処理部81と出力部82とのいずれかに選択的に接続する入力部側切替スイッチ810aと、出力部82を処理部81と入力部80とのいずれかに選択的に接続する出力部側切替スイッチ810bとを備える。本実施形態では、入力部側切替スイッチ810a及び出力部側切替スイッチ810bが「切替スイッチ」に相当する。
【0028】
入力部側切替スイッチ810aは、処理部81が正常動作中であるか否かを示す動作信号が入力される信号入力部811aと、可動接点812aと、第1経路用固定接点813aと、第2経路用固定接点814aとを備える。また、出力部側切替スイッチ810bも、処理部81が正常動作中であるか否かを示す動作信号が入力される信号入力部811bと、可動接点812bと、第1経路用固定接点813bと、第2経路用固定接点814bとを備える。
【0029】
入力部側切替スイッチ810aは、信号入力部811aに入力された動作信号に基づいて、処理部81が正常動作中である場合には、可動接点812aを第1経路用固定接点813aと接続して、入力部80と処理部81とを接続することで第1モードとする。そして、入力部側切替スイッチ810aは、処理部81が停止中であり動作信号が入力されない場合には、可動接点812aを第2経路用固定接点814aと接続して、処理部81と入力部80とを切断して、入力部80と出力部82とを接続することで第2モードとする。この入力部側切替スイッチ810aとしては、各種のリレーが好適に用いられる。入力部側切替スイッチ810aは、例えば、信号入力部811aに動作信号としての電圧が入力されている状態では、可動接点812aと第1経路用固定接点813aとを接続し、当該動作信号としての電圧が入力されなくなった場合に、可動接点812aと第2経路用固定接点814aとを接続する側に自動的に切り替わるように構成されていると好適である。
【0030】
出力部側切替スイッチ810bは、信号入力部811bに入力された動作信号に基づいて、処理部81が正常動作中である場合には、可動接点812bを第1経路用固定接点813bと接続して、出力部82と処理部81とを接続することで第1モードとする。そして、出力部側切替スイッチ810bは、処理部81が停止中であり動作信号が入力されない場合には、可動接点812bを第2経路用固定接点814bと接続して、処理部81と出力部82とを切断して、入力部80と出力部82とを接続することで第2モードとする。この出力部側切替スイッチ810bとしては、各種のリレーが好適に用いられる。出力部側切替スイッチ810bは、例えば、信号入力部811bに動作信号としての電圧が入力されている状態では、可動接点812bと第1経路用固定接点813bとを接続し、当該動作信号としての電圧が入力されなくなった場合に、可動接点812bと第2経路用固定接点814bとを接続する側に自動的に切り替わるように構成されていると好適である。
【0031】
マスタユニット7から発信される規定周期の同期信号は、マスタユニット7に直接接続されているスレーブユニット8に送信される。そして、同期信号を受信したスレーブユニット8は、当該スレーブユニット8の下流側に直接接続されているスレーブユニット8に同期信号を送信する。即ち、直列に接続されている複数のスレーブユニット8において、上流側のスレーブユニット8から下流側のスレーブユニット8への同期信号の送信と受信が、順次繰り返されてゆく。
【0032】
図5に示すように、スレーブユニット8の処理部81が正常動作中である場合、入力部側切替スイッチ810a及び出力部側切替スイッチ810bのそれぞれの信号入力部811a及び信号入力部811bに対して、処理部81が動作信号(例えば5Vの電圧信号)を発信している。
【0033】
切替装置800は、動作信号が信号入力部811a及び信号入力部811bに入力されている状態、即ち、第1モードにおいて、入力部側切替スイッチ810aの可動接点812aを第1経路用固定接点813aと接続することにより入力部80と処理部81とを接続し、さらに出力部側切替スイッチ810bの可動接点812bを第1経路用固定接点813bと接続することにより出力部82と処理部81とを接続して、第1経路R1を形成する。
【0034】
第1モードにおいては、上流ユニットSUからの同期信号が、入力部80から第1経路R1を介して処理部81に伝達される。同期信号を受信した処理部81は、同期信号の伝達経路の長さに応じて生じる遅延を補正する処理である遅延補正処理、及び信号強度を増幅する処理を行い、当該処理を行った処理後の同期信号を、電源装置5に伝達すると共に第1経路R1を介して出力部82に伝達する。そして、同期信号を受信した出力部82は、下流ユニットSDへ同期信号を出力する。
【0035】
一方、図6に示すように、スレーブユニット8の処理部81が故障して停止中である場合、処理部81からの動作信号の発信が停止されるため(0Vの電圧信号)、入力部側切替スイッチ810a及び出力部側切替スイッチ810bのそれぞれの信号入力部811a及び信号入力部811bに対して動作信号が入力されない。尚、処理部81の停止中には、処理部81そのものが故障等により異常停止している場合、スレーブユニット8における信号線やその他の部品の故障によって処理部81からの動作信号が出力されない場合、スレーブユニット8への電源供給ラインの異常や人為的な操作等によりスレーブユニット8への電源供給が停止された場合などが含まれる。
【0036】
切替装置800は、動作信号が信号入力部811a及び信号入力部811bに入力されていない状態、即ち、第2モードにおいて、入力部側切替スイッチ810aの可動接点812aを第2経路用固定接点814aと接続することにより処理部81と入力部80とを切断し、さらに出力部側切替スイッチ810bの可動接点812bを第2経路用固定接点814bと接続することにより処理部81と出力部82とを切断することにより、入力部80と出力部82とを直接接続して、第2経路R2を形成する。
【0037】
第2モードにおいては、上流ユニットSUからの同期信号が、入力部80から第2経路R2を介して出力部82に直接伝達される。このため、直列に接続されている複数のスレーブユニット8のいずれかが故障した場合であっても、当該故障したスレーブユニット8の処理部81をバイパスして同期信号を下流ユニットSDに伝達することができる。
【0038】
従って、いずれかのスレーブユニット8が故障した場合であっても、当該故障したスレーブユニット8に接続された電源装置5以外の電源装置5については、同期信号により同期させた状態を維持することができる。すなわち、いずれかのスレーブユニット8が故障した場合に、当該故障したスレーブユニット8及びそれより下流のスレーブユニット8に接続された電源装置5の全てが同期されない状態となることを回避することができる。
【0039】
2.その他の実施形態
(1)上記の実施形態では、処理部は、同期信号の伝達経路の長さに応じて生じる遅延を補正する処理である遅延補正処理、及び信号強度を増幅させる処理を行う構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、処理部が、同期信号の伝達経路の長さに応じて生じる遅延を補正する処理である遅延補正処理、及び信号強度を増幅させる処理のうちのいずれか一方を行い、当該処理を行った処理後の同期信号を、電源装置と出力部とに伝達する構成としても良い。
【0040】
(2)上記の実施形態では、全てのスレーブユニットを対象ユニットとする構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、最下流に設けられるスレーブユニットについては、切替装置を備えていない非対象ユニットとする構成としても良い。
【0041】
(3)上記の実施形態では、切替スイッチとしてリレー回路スイッチを使用する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、他にも例えば、IGBTやFETなどの半導体スイッチを使用する構成や、IC基板を処理部とは別に設け、処理部を監視して切り替える構成としても良い。
【0042】
(4)上記の実施形態では、処理部の動作中に動作信号が入力され、動作信号が入力されている状態では第1モードとし、動作信号が入力されない状態では第2モードとする構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、処理部の状態を監視する監視処理部を備え、監視処理部が第1モードと第2モードとを切り替える(スイッチを切り替える)構成としても良い。
【0043】
(5)上記の実施形態では、動作信号について、正常動作中は5Vの電圧信号、停止中は0Vの電圧信号とするオンオフ信号の構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、他にも例えば、正常動作中は5Vの電圧信号、停止中は-5Vの電圧信号を送信する構成としても良い。また、正常動作中か停止中かを示す情報が伝達される構成でもよく、その場合、切り替え装置はソフトウェアで動作する切替ユニット(ICチップ)を使用する。
【0044】
(6)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。したがって、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0045】
3.上記実施形態の概要
以下、上記において説明した非接触給電設備の概要について説明する。
【0046】
非接触給電設備は、受電装置を備えた移動体の移動経路に沿って並ぶように配置された複数の給電線と、
複数の前記給電線のそれぞれに接続され、前記給電線に交流電流を供給する電源装置と、
複数の前記電源装置の前記交流電流の位相を同期させる同期システムと、を備え、
前記受電装置に非接触で電力を供給する非接触給電設備であって、
前記同期システムは、
同期信号を生成して出力するマスタユニットと、
前記マスタユニットに対して下流側において、前記マスタユニットと直接的に接続され、又は、他のスレーブユニットを介して前記マスタユニットと間接的に接続され、前記マスタユニットからの前記同期信号を受け取る複数のスレーブユニットと、を備え、
複数の前記電源装置のそれぞれは、前記マスタユニット又は複数の前記スレーブユニットのいずれかである接続先ユニットに接続されて前記接続先ユニットから前記同期信号を受け取るように構成され、
複数の前記スレーブユニットのそれぞれを基準として、それぞれの前記スレーブユニットに対して上流側に直接的に接続された前記マスタユニット又は前記スレーブユニットを上流ユニットとし、それぞれの前記スレーブユニットに対して下流側に直接的に接続された他の前記スレーブユニットを下流ユニットとして、
複数の前記スレーブユニットのそれぞれは、前記上流ユニットからの前記同期信号が入力される入力部と、前記入力部に入力された前記同期信号に対する処理を行う処理部と、前記下流ユニットへの前記同期信号を出力する出力部と、を備え、
複数の前記スレーブユニットの少なくとも一部である対象ユニットは、前記入力部に入力された前記同期信号を前記処理部に伝達し、前記処理部から出力された前記同期信号を前記出力部に伝達する第1モードと、前記処理部をバイパスして前記入力部に入力された前記同期信号を前記出力部に伝達する第2モードと、を切り替える切替装置を備え、
前記切替装置は、前記処理部の動作中に前記第1モードとし、前記処理部の停止中に前記第2モードとする切替動作を行う。
【0047】
本構成によれば、直列に接続されている複数のスレーブユニットのいずれかが故障した場合であっても、当該故障したスレーブユニットをバイパスして同期信号を下流側のスレーブユニットに伝達することができる。
従って、いずれかのスレーブユニットが故障した場合であっても、当該故障したスレーブユニットに接続された電源装置以外の電源装置については、同期信号により同期させた状態を維持することができる。
すなわち、いずれかのスレーブユニットが故障した場合に、当該故障したスレーブユニット及びそれより下流のスレーブユニットに接続された電源装置の全てが同期されない状態となることを回避できる。
【0048】
ここで、前記切替装置は、前記入力部を、前記処理部と前記出力部とのいずれかに選択的に接続する切替スイッチを備え、
前記切替スイッチは、前記処理部が正常動作中であるか否かを示す動作信号が入力される信号入力部を備え、前記信号入力部に入力された前記動作信号に基づいて、前記処理部が正常動作中である場合には前記入力部と前記処理部とを接続することで前記第1モードとし、前記処理部が停止中である場合には前記入力部と前記出力部とを接続することで前記第2モードとすると好適である。
【0049】
本構成によれば、処理部が停止した場合に、迅速に入力部と出力部とを接続して第2モードに切り替えることができる。
【0050】
また、前記切替スイッチは、更に、前記処理部が正常動作中である場合には前記処理部と前記出力部とを接続し、前記処理部が停止中である場合には前記処理部と前記出力部とを切断すると好適である。
【0051】
本構成によれば、処理部が停止した場合に、処理部と出力部との間を切断することができる。従って、処理部が故障により地絡した場合であっても、入力部からの同期信号が出力部に伝達されるようにできる。
【0052】
また、全ての前記スレーブユニットが前記対象ユニットであると好適である。
【0053】
本構成によれば、全てのスレーブユニットの構成を共通とすることができる。従って、切替装置を備えるスレーブユニットと切替装置を備えないスレーブユニットとを使い分ける必要がなく、製品種類数を少なく抑えることができると共に、配線作業におけるミスの発生も低減することができる。
【0054】
また、前記処理部は、前記同期信号の伝達経路の長さに応じて生じる遅延を補正する処理である遅延補正処理、及び信号強度を増幅させる処理の少なくともいずれか一方を行い、当該処理を行った処理後の前記同期信号を、前記電源装置と前記出力部とに伝達すると好適である。
【0055】
本構成によれば、処理部が遅延補正処理を行う場合には、同期信号の伝達経路の長さに応じて生じる遅延を補正した同期信号を電源装置に伝達できる。また、処理部が信号強度を増幅させる処理を行う場合には、同期信号の伝達経路が長い場合であっても信号強度を適切に維持することができる。そのため、マスタユニットから最下流のスレーブユニットまでの同期信号の伝達経路が長い場合であっても、全ての電源装置を適切に同期させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本開示に係る技術は、受電装置を備えた移動体の移動経路に沿って並ぶように配置された複数の給電線と、複数の給電線のそれぞれに接続され、給電線に交流電流を供給する電源装置と、を備え、受電装置に非接触で電力を供給する非接触給電設備に利用することができる。
【符号の説明】
【0057】
100 :非接触給電設備
200 :物品搬送設備
1 :移動経路
1a :主経路
1b :副経路
1c :接続経路
2 :走行レール
3 :移動体
4 :受電装置
40 :ピックアップコイル
5 :電源装置
6 :同期システム
7 :マスタユニット
8 :スレーブユニット
80 :入力部
81 :処理部
82 :出力部
800 :切替装置
810a :入力部側切替スイッチ(切替スイッチ)
811a :信号入力部
812a :可動接点
813a :第1経路用固定接点
814a :第2経路用固定接点
810b :出力部側切替スイッチ(切替スイッチ)
811b :信号入力部
812b :可動接点
813b :第1経路用固定接点
814b :第2経路用固定接点
9 :走行部
10 :搬送車本体
11 :給電線
14 :駆動モータ
15 :一対の走行輪
16 :一対の案内輪
H :経路幅方向
Z :上下方向
SU :上流ユニット
SD :下流ユニット
R1 :第1経路
R2 :第2経路
P :物品処理部

図1
図2
図3
図4
図5
図6