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特開2024-92260車両の制御装置、それを備えた車両、および車両制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092260
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】車両の制御装置、それを備えた車両、および車両制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 20/15 20160101AFI20240701BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20240701BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20240701BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20240701BHJP
   B60W 10/02 20060101ALI20240701BHJP
   B60W 20/40 20160101ALI20240701BHJP
   B60W 20/20 20160101ALI20240701BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
B60W20/15
B60K6/48 ZHV
B60W10/06 900
B60W10/08 900
B60W10/02 900
B60W20/40
B60W20/20
B60L15/20 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208059
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大林 恒介
(72)【発明者】
【氏名】中山 恭太郎
【テーマコード(参考)】
3D202
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA08
3D202BB01
3D202BB11
3D202BB53
3D202BB66
3D202CC02
3D202CC17
3D202CC35
3D202CC37
3D202CC72
3D202CC85
3D202DD05
3D202DD07
3D202DD18
3D202DD20
3D202DD24
3D202DD26
3D202DD32
3D202DD33
3D202DD39
3D202DD41
3D202FF06
3D202FF13
5H125AA01
5H125AB03
5H125AC08
5H125AC12
5H125BA00
5H125BE05
5H125CA02
5H125CA09
5H125EE41
5H125EE51
5H125EE58
(57)【要約】
【課題】駆動輪を駆動させるためのトルクの変更が乗員に違和感を与えることを抑制しつつ、トルクの変更にかかる時間を短くする。
【解決手段】一態様に係る車両の制御装置は、駆動輪を駆動させるためのトルクを発生させる少なくとも1つの走行駆動源を含む車両の制御装置であって、制御装置は、走行駆動源から駆動輪へと伝達される伝達トルクを、第1要求トルクから第2要求トルクへ変更するためのトルク変更要求を取得した場合に、伝達トルクを第1要求トルクから第2要求トルクに変化させるトルク変更制御を実行するように構成される処理回路を備え、処理回路は、トルク変更要求を取得した場合に、車両の車体に生じるショックに対する許容度を示すショック許容度を決定し、決定したショック許容度に応じて、伝達トルクが第1要求トルクから第2要求トルクに変化するのにかかる時間であるトルク変更時間が変化するように、トルク変更制御を実行するように構成される。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動輪を駆動させるためのトルクを発生させる少なくとも1つの走行駆動源を含む車両の制御装置であって、
前記制御装置は、前記走行駆動源から前記駆動輪へと伝達される伝達トルクを、第1要求トルクから第2要求トルクへ変更するためのトルク変更要求を取得した場合に、前記伝達トルクを前記第1要求トルクから前記第2要求トルクに変化させるトルク変更制御を実行するように構成される処理回路を備え、
前記処理回路は、前記トルク変更要求を取得した場合に、
前記車両の車体に生じるショックに対する許容度を示すショック許容度を決定し、
決定した前記ショック許容度に応じて、前記伝達トルクが前記第1要求トルクから前記第2要求トルクに変化するのにかかる時間であるトルク変更時間が変化するように、前記トルク変更制御を実行するように構成される、車両の制御装置。
【請求項2】
前記トルク変更制御は、前記伝達トルクを前記第1要求トルクから前記第2要求トルクに徐々に変化させるテーリング制御を含み、
前記処理回路は、決定した前記ショック許容度が大きいほど、前記トルク変更時間が短くなるように、前記テーリング制御を実行するように構成される、請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記伝達トルクは、前記走行駆動源の出力トルクであり、
前記処理回路は、前記走行駆動源を制御することにより、前記トルク変更制御を実行するように構成される、請求項1または2に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの走行駆動源は、電動モータおよび内燃エンジンを含み、
前記電動モータの出力トルクとして要求される前記第1要求トルクおよび前記内燃エンジンの出力トルクとして要求される前記第1要求トルクは、それぞれ、前記電動モータおよび前記内燃エンジンの全体に要求されるトルクである合計要求トルクを、第1分配率で分配した値であり、
前記電動モータの出力トルクとして要求される前記第2要求トルクおよび前記内燃エンジンの出力トルクとして要求される前記第2要求トルクは、前記合計要求トルクを、前記第1分配率とは異なる第2分配率で分配した値であり、
前記トルク変更制御は、前記合計要求トルクの分配率を、前記第1分配率から前記第2分配率に変化させる制御である、請求項1または2に記載の車両の制御装置。
【請求項5】
前記トルク変更要求は、前記電動モータが発生させる動力で前記駆動輪を駆動する第1走行モードから、少なくとも前記内燃エンジンが発生させる動力で前記駆動輪を駆動する第2走行モードへ切り替えるためのモード切替要求であり、
前記第1分配率は、前記第1走行モードに対応した値であり、前記第2分配率は、第2走行モードに対応した値である、請求項4に記載の車両の制御装置。
【請求項6】
前記車両は、前記走行駆動源から出力される回転動力を変速して前記駆動輪に伝達する変速機を備え、
前記処理回路は、前記変速機の変速比を示す変速比情報を取得し、前記変速比情報に基づいて、前記ショック許容度を決定するように構成され、
前記変速機の変速比が設定変速比より大きい状態で前記処理回路により決定されるショック許容度は、前記変速機の変速比が設定変速比以下である状態で前記処理回路により決定されるショック許容度よりも小さい、請求項1または2に記載の車両の制御装置。
【請求項7】
前記車両は、直立状態から車幅方向一方側に車体をバンクさせて旋回可能に構成されており、
前記処理回路は、前記車体のバンク角を示すバンク角情報を取得し、取得した前記バンク角情報が示すバンク角の増加に伴って低減するように前記ショック許容度を決定するように構成される、請求項1または2に記載の車両の制御装置。
【請求項8】
前記車両は、直立状態から車幅方向一方側に車体をバンクさせて旋回可能に構成されており、
前記車両は、前記走行駆動源から出力される回転動力を変速して前記駆動輪に伝達する変速機を備え、
前記処理回路は、
前記車体のバンク角を示すバンク角情報および前記変速機の変速比を示す変速比情報を取得し、
前記バンク角情報および前記変速比情報に基づいて、前記ショック許容度を決定するように構成される、請求項1または2に記載の車両の制御装置。
【請求項9】
前記車両は、運転者のシフト操作に応じた変速比で前記走行駆動源から出力される回転動力を変速して前記駆動輪に伝達する変速機を備え、
前記処理回路は、前記トルク変更制御の実行中に、運転者のシフト操作があったことを示すシフト操作情報を取得した場合、前記シフト操作情報を取得しなかった場合の前記トルク変更時間と比べて、前記トルク変更時間が短くなるように、前記トルク変更制御を実行するように構成される、請求項1または2に記載の車両の制御装置。
【請求項10】
前記処理回路は、前記走行駆動源の出力の最大値が設定された通常制御と、前記通常制御時における前記最大値よりも大きい前記走行駆動源の出力の最大値が設定されたブースト制御とを選択的に実行するように構成され、
前記ブースト制御時に前記処理回路により決定されるショック許容度は、前記通常制御時に前記処理回路により決定されるショック許容度よりも大きい、請求項1または2に記載の車両の制御装置。
【請求項11】
前記処理回路は、
決定した前記ショック許容度が所定値以下である場合に、前記トルク変更制御として、前記伝達トルクを前記第1要求トルクから前記第2要求トルクに徐々に変化させるテーリング制御を実行し、
決定した前記ショック許容度が所定値より大きい場合に、前記トルク変更制御として、前記伝達トルクを前記第1要求トルクから前記第2要求トルクにステップ状に変化させるステップ入力制御を実行するように構成される、請求項1または2に記載の車両の制御装置。
【請求項12】
前記少なくとも1つの走行駆動源は、電動モータおよび内燃エンジンを含み、
前記車両は、前記電動モータの駆動力を前記駆動輪に伝達するための伝達軸と、前記内燃エンジンの駆動力を前記伝達軸に伝達するか否かを切り替えるクラッチと、を含み、
前記処理回路は、
前記電動モータが発生させる動力で前記駆動輪を駆動する第1走行モードから、少なくとも前記内燃エンジンが発生させる動力で前記駆動輪を駆動する第2走行モードに移行する場合に、前記エンジンの回転に伴う前記伝達軸の回転数を、前記電動モータの回転に伴う前記伝達軸の回転数に合わせるよう前記内燃エンジンを制御する回転数同調制御を実行し、
前記回転数同調制御の実行中に、前記内燃エンジンと前記伝達軸との間の動力伝達の度合いに対応する前記クラッチの係合度が増加するよう前記クラッチを制御するように構成される、請求項1または2に記載の車両の制御装置。
【請求項13】
車体と、
駆動輪と、
前記駆動輪を駆動させるためのトルクを発生させる少なくとも1つの走行駆動源と、
前記車体に固定された、請求項1または2に記載の車両の制御装置と、を備える、車両。
【請求項14】
駆動輪を駆動させるためのトルクを発生させる少なくとも1つの走行駆動源を含む車両を制御するための車両制御方法であって、
処理回路において、
前記走行駆動源から前記駆動輪へと伝達される伝達トルクが第1要求トルクである状態で前記車両が走行しているときに、前記伝達トルクを前記第1要求トルクから第2要求トルクへ変更することを含む前記車両の状態を変更するための状態変更要求を取得すること、
前記車両の車体に生じるショックに対する許容度を示すショック許容度を決定すること、
決定した前記ショック許容度に応じて、前記状態変更要求を取得した時点から前記伝達トルクを前記第2要求トルクに到達させるまでの時間が変化するように、前記車両の状態を変更すること、を含む、車両制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、駆動輪を駆動させるためのトルクを発生させる走行駆動源を含む車両の制御装置、それを備えた車両、および車両制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、走行駆動源としてエンジンおよび電動モータを備えたハイブリッド車両が開示されている。このハイブリッド車両では、電動モータが発生させる動力で駆動輪を駆動するEVモードから、電動モータおよびエンジンが発生させる動力で駆動輪を駆動するHEVモードへの切り替え時に、電動モータが出力するべきモータ目標トルクを、合計要求トルクの100%からほぼ0%に変更し、エンジンが出力すべきエンジン目標トルクを、合計要求トルクの0%からほぼ100%に変更する制御が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-95015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
駆動輪を駆動させるためのトルクの変更にかかる時間は、短いことが望ましい。しかし、駆動輪を駆動させるためのトルクを急激に変化させると、車体にショックが生じる可能性があり、このようなショックは乗員に違和感を与えることにつながり得る。
【0005】
そこで、本開示は、駆動輪を駆動させるためのトルクの変更が乗員に違和感を与えることを抑制しつつ、トルクの変更にかかる時間を短くすることができる車両の制御装置、それを備えた車両、および車両制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る車両の制御装置は、駆動輪を駆動させるためのトルクを発生させる少なくとも1つの走行駆動源を含む車両の制御装置であって、前記制御装置は、前記走行駆動源から前記駆動輪へと伝達される伝達トルクを、第1要求トルクから第2要求トルクへ変更するためのトルク変更要求を取得した場合に、前記伝達トルクを前記第1要求トルクから前記第2要求トルクに変化させるトルク変更制御を実行するように構成される処理回路を備え、前記処理回路は、前記トルク変更要求を取得した場合に、前記車両の車体に生じるショックに対する許容度を示すショック許容度を決定し、決定した前記ショック許容度に応じて、前記伝達トルクが前記第1要求トルクから前記第2要求トルクに変化するのにかかる時間であるトルク変更時間が変化するように、前記トルク変更制御を実行するように構成される。
【0007】
本開示の一態様に係る車両は、車体と、駆動輪と、前記駆動輪を駆動させるためのトルクを発生させる少なくとも1つの走行駆動源と、前記車体に固定された前記制御装置と、を備える。
【0008】
本開示の一態様に係る車両制御方法は、駆動輪を駆動させるためのトルクを発生させる少なくとも1つの走行駆動源を含む車両を制御するための車両制御方法であって、処理回路において、前記走行駆動源から前記駆動輪へと伝達される伝達トルクが第1要求トルクである状態で前記車両が走行しているときに、前記伝達トルクを前記第1要求トルクから第2要求トルクへ変更することを含む前記車両の状態を変更するための状態変更要求を取得すること、前記車両の車体に生じるショックに対する許容度を示すショック許容度を決定すること、決定した前記ショック許容度に応じて、前記状態変更要求を取得した時点から前記伝達トルクを前記第2要求トルクに到達させるまでの時間が変化するように、前記車両の状態を変更すること、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、駆動輪を駆動させるためのトルクの変更が乗員に違和感を与えることを抑制しつつ、トルクの変更にかかる時間を短くすることができる車両の制御装置、それを備えた車両、および車両制御方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施の形態に係る車両の概略図である。
図2】制御装置およびその入出力を示すブロック図である。
図3】EVモードからHEVモードへの切替制御の処理の流れを示すフローチャートである。
図4図3に示す切替制御における各値の時間変化を示すグラフである。
図5】エンジン回転数制御部における第2スロットル目標開度を設定する機能を示すブロック図である。
図6】第1ショック許容度マップを示す図である。
図7】スロットル開度決定部における最終的なスロットル目標開度を決定する機能を示すブロック図である。
図8】クラッチ制御部におけるクラッチ圧力指令値を決定する機能を示すブロック図である。
図9】第2ショック許容度マップを示す図である。
図10】クラッチ圧力マップを示す図である。
図11】トルク変更制御の処理の流れを示すフローチャートである。
図12】第3ショック許容度マップを示す図である。
図13】トルク変化率マップを示す図である。
図14】切替制御における各値の図4とは別の時間変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して実施の形態を説明する。
【0012】
<車両の構成>
図1は、一実施の形態に係る車両1の概略図である。本実施の形態において、車両1は、駆動輪8である後輪と従動輪である前輪(図示せず)とを備えた自動二輪車である。自動二輪車は、直立状態から車幅方向一方側に車体をバンクさせて旋回走行可能な車両の好適例である。なお、車両1は、三輪車でも四輪車であってもよい。
【0013】
本実施形態で説明される車両1は、ハイブリッド車両である。車両1は、駆動輪8を駆動させるためのトルクを発生させる2つの走行駆動源として、電動モータ3およびエンジン2を備える。また、車両1は、電動モータ3の駆動力を駆動輪8に伝達するための伝達軸(後述する変速機4の入力軸4a)と、エンジン2の駆動力を伝達軸に伝達するか否かを切り替えるクラッチ5と、を備えている。
【0014】
より詳しくは、図1に示すように、車両1は、エンジン2、電動モータ3、変速機4、クラッチ5、クラッチアクチュエータ6、出力伝達部材7、駆動輪8、スタータモータ10、センサ類11、および制御装置20を備えている。
【0015】
エンジン2は、内燃機関である。電動モータ3は、エンジン2とともに、または、エンジン2に代わって、駆動輪8を駆動するための走行駆動源である。
【0016】
変速機4は、エンジン2から出力された回転動力を変速する。変速機4は、例えば、入力軸4a、出力軸4bおよび、変速比の異なる複数組の変速ギヤ対を有するドッグクラッチ式変速機である。複数の変速段の中から選択された1つの変速段に対応する変速ギヤ対が、入力軸4aから出力軸4bへ動力を伝達する。変速段の選択は、シフト操作子に対する運転者のシフト操作によって行われ得る。
【0017】
本実施形態では、変速機4は、シフト操作子に対する運転者のシフト操作に機械的に連動して複数組の変速ギヤ対の中から1組の変速ギヤを選択するように構成されている。例えばシフト操作子は、運転者の足で操作されるシフトペダルである。現在の変速段は、後述の変速比センサにより検出される。本実施の形態において、上記伝達軸は、変速機4の入力軸4aとして構成される。例えば、変速機4は、ドッグクラッチ式変速機でなくてもよく、例えば無段変速機であってもよい。
【0018】
クラッチ5は、エンジン2と変速機4とを結合したり、切断したりする。クラッチ5は、例えば摩擦クラッチである。クラッチアクチュエータ6は、クラッチ5を結合状態と切断状態との間で切り替え動作させるようにクラッチ5を駆動する。本実施形態では、クラッチアクチュエータ6は、油圧アクチュエータである。クラッチアクチュエータ6は、電気アクチュエータなどの別の種類のアクチュエータであってもよい。
【0019】
クラッチ5の切断状態は、エンジン2と伝達軸である入力軸4aとの間で動力が伝達されない状態である。クラッチ5の結合状態は、エンジン2と伝達軸である入力軸4aとの間で動力が完全に伝達される状態である。クラッチ5が切断状態から結合状態に遷移する場合、クラッチ5は、半クラッチ状態を経由する。クラッチ5の半クラッチ状態は、エンジン2と伝達軸である入力軸4aとの間で動力が部分的に伝達される状態である。
【0020】
言い換えれば、クラッチアクチュエータ6は、クラッチ5の係合度、すなわち、エンジン2と変速機4との間の動力伝達の度合いを変化させるアクチュエータである。クラッチ5の係合度は、クラッチ5に発生する摩擦力の上昇とともに上昇する値である。クラッチ5の切断状態は、クラッチ5の係合度が0%である状態である。クラッチ5の結合状態は、クラッチ5の係合度が100%である状態である。クラッチ5の半クラッチ状態は、クラッチ5の係合度が0%より大きく100%未満である状態である。
【0021】
さらに別の表現で説明すれば、クラッチ5が、互いに当接したり離間したりすることが可能な駆動側部材と被駆動側部材を含み、駆動側部材と被駆動側部材との間の摩擦力で回転動力を駆動側部材から被駆動側部材に伝達する構成である場合、クラッチ5の結合状態は、駆動側部材と被駆動側部材との間で滑りを発生させることなく、回転動力を伝達する状態である。また、クラッチ5の半クラッチ状態は、駆動側部材と被駆動側部材との間で滑りを発生させながら、回転動力を伝達する状態である。例えば駆動側部材および被駆動側部材は、それぞれ、クラッチプレートおよびフリクションプレートである。
【0022】
出力伝達部材7は、変速機4の出力軸4bから出力される回転動力を駆動輪8に伝達する部材である。出力伝達部材7は、例えば、ドライブチェーン、ドライブベルト、ドライブシャフト等である。
【0023】
スタータモータ10は、エンジン2の始動時にエンジン2のクランク軸に回転動力を付与してエンジン2を駆動する。スタータモータ10は、エンジン2のクランク軸の一端部に取り付けられている。本実施形態では、スタータモータ10は、例えばインテグレーテッド・スタータ・ジェネレータ(ISG)である。すなわち、スタータモータ10は、エンジン2の始動時にエンジン2を駆動でき、かつ、エンジン2によって駆動されて発電できる。ただし、スタータモータ10は、ISGでなくてもよく、エンジン2の始動時にエンジン2を駆動する機能を備えるモータであればよい。
【0024】
制御装置20は、センサ類11が検出する情報に基づいて、エンジン2、電動モータ3、クラッチアクチュエータ6およびスタータモータ10を制御する。制御装置20は、1つの制御ユニットであってもよいし、複数の制御ユニットに分散されたものであってもよい。制御装置20は、ハードウェア面においては、プロセッサ、揮発性メモリ、不揮発性メモリおよびI/Oインターフェース等を有する。制御装置20の機能面の詳細は、後述する。
【0025】
センサ類11は、運転者の操作を検出するセンサ類と、運転者操作を除いた車両の状態を検出するセンサ類とを含む。センサ類11は、例えば、アクセル操作量センサ、ブレーキ操作量センサ、シフト操作センサ、変速比センサ、前輪回転数センサ、後輪回転数センサ、車体ピッチ角センサ、サスペンションストロークセンサ、燃料残量センサ、クラッチ状態センサ、エンジン回転数センサ、モータ回転数センサ、ブレーキ状態センサ(ブレーキ圧センサ)、ジャイロセンサ、GPSセンサ、カメラ、操舵角センサ、方向指示器に対する運転者の操作を検出するセンサ、SOCを検出するバッテリ管理ユニットなどの一部または全部を含む。
【0026】
車両1は、エンジン2、電動モータ3およびクラッチ5の少なくとも1つの状態を互いに異ならせた複数の走行モードを有する。車両1の走行モードは、制御装置20により切り替えられる。具体的には、当該走行モードは、第1走行モード、第2走行モード、および過渡モードを含む。
【0027】
第1走行モードは、エンジン2の駆動を要しない走行モードである。言い換えれば、第1走行モードは、クラッチ5を切断状態にして走行する走行モードである。例えば、第1走行モードは、電動モータ3が発生させる動力で駆動輪8を駆動するEVモードである。EVモードでは、電動モータ3の駆動時にエンジン2が抵抗にならないようにクラッチ5が切断状態になる。EVモードでは、加速走行時に電動モータ3が駆動状態になる一方で、減速走行時に電動モータ3が回生状態になる。基本的に、EVモード中、エンジン2は停止している。ただし、EVモード中、エンジン2は、暖機などを行うために低負荷で運転していてもよい。エンジン2が運転していても、クラッチ5が切断状態であればエンジン2が発生させる動力が駆動輪8に伝達されないためである。
【0028】
第2走行モードは、少なくともエンジン2が発生させる動力で駆動輪8を駆動するモードである。言い換えれば、第2走行モードは、クラッチ5を結合状態にして走行する走行モードである。例えば、第2走行モードは、電動モータ3およびエンジン2の双方が発生させる動力で駆動輪8を駆動するHEVモードである。また、例えば、HEVモードでは、電動モータ3を駆動させずにエンジン2を駆動し、エンジン2のみの回転動力で駆動輪8を駆動してもよい。HEVモードでは、エンジン2の回転動力が変速機4を介して駆動輪8に伝達されるようにクラッチ5が結合状態になる。HEVモードでは、加速走行時に電動モータ3が駆動状態になり、エンジン2による伝達軸の回転駆動を支援する。また、HEVモードでは、減速走行時に電動モータ3が回生状態になる。
【0029】
過渡モードは、EVモードからHEVモードに移行する途中に介在する切替制御モードである。本実施形態では、過渡モードは、回転数同調制御状態、およびトルク変更制御状態といった複数の異なる制御状態を含む。エンジン2が停止した状態でEVモードからHEVモードに移行する場合、過渡モードは、エンジン2を始動させる制御を行う状態であるエンジン始動状態も含む。制御装置20による走行モードの切り替えについて、詳細は後述する。
【0030】
<制御系統>
図2は、制御装置20およびその入出力を示すブロック図である。図2に示すように、制御装置20は、要求トルク算出部21、モード切替部22、モータトルク制御部23、エンジントルク制御部24、エンジン回転数制御部25、スロットル開度決定部26、およびクラッチ制御部27を含む。制御装置20の各部21~27は、不揮発性メモリに保存されたプログラムに基づいてプロセッサが揮発性メモリを用いて演算処理することで実現される機能ブロックとして構成される。プロセッサは、処理回路の一例である。
【0031】
要求トルク算出部21は、センサ類11から受信した情報や当該受信した情報に基づき生成した情報から、要求トルクを算出する。例えば要求トルク算出部21は、車体姿勢、変速比、SOC(State Of Charge)、車速、アクセル開度、エンジン回転数およびモータ回転数などから、要求トルクを算出する。
【0032】
車体姿勢は、例えば、ロール角(すなわちバンク角)、ピッチ角、スリップ率、操舵角、方向指示器情報、車両位置情報、前方カメラ情報の少なくとも何れか1つが含まれる。ロール角およびピッチ角は、例えば、車載されたジャイロセンサの検出値によって算出されるが、ロール角センサおよびピッチ角センサの検出値から算出されてもよい。ピッチ角は、サスペンションストロークセンサにより検出されるフロントサスペンションおよびリヤサスペンションのストローク量から算出されてもよい。
【0033】
変速機4の変速比は、変速比センサにより検出される。例えば変速比センサは、変速機4の現在の変速段を検出するギヤ位置センサである。
【0034】
スリップ率は、例えば、(駆動輪回転数-従動輪回転数)/従動輪回転数の式で算出されるが、駆動輪回転数の増加率などであってもよい。操舵角は、例えば、操舵角センサの検出値から算出される。方向指示器情報は、ユーザが方向指示器を操作した信号に基づいて左旋回または右旋回の指示器動作情報として取得される。車両位置情報は、GPSセンサの検出値および地図情報に基づき、車両1が地図上の何処を走行しているかを示す情報である。前方カメラ情報は、車両1の前方を撮影する車載カメラから得られる画像情報である。
【0035】
SOCは、電動モータ3に供給するための電力を蓄えるバッテリの充電状態を示す。例えば、SOCは、バッテリに設けられ、バッテリ制御を行うバッテリ管理ユニット(Battery Management Unit)により検出される。
【0036】
車速は、例えば、従動輪(例えば、前輪)の回転数センサの検出値から算出されるが、GPS情報等から算出されてもよい。モータ回転数は、例えば、電動モータ3の回転軸に設けられたモータ回転数センサの検出値によって算出されるが、電動モータ3の制御信号から算出されてもよい。アクセル開度は、ユーザのアクセル操作量を意味し、アクセル操作量センサの出力から取得可能である。エンジン回転数は、エンジン回転数センサにより検出される。エンジン回転数は、エンジン2のクランク軸のクランク角を検出するクランク角センサの出力から算出可能である。
【0037】
要求トルク算出部21は、前述の各種情報に基づいて、要求トルク、具体的には、走行駆動源(エンジン2および電動モータ3)全体が出力すべきトルクを合計要求トルクとして算出する。
【0038】
モード切替部22は、合計要求トルクなどに基づいて現在の走行状態を把握した上で、上記複数の走行モードの中から最適な走行モードを決定する。走行モードの決定は、合計要求トルクの他、車体姿勢、SOC(State Of Charge)、車速、アクセル開度、エンジン回転数、モータ回転数またはその他の別のパラメータなどに基づいて行われてもよい。
【0039】
モード切替部22は、現状の走行モードと、決定した最適な走行モードとが異なる場合に、現状の走行モードを、最適な走行モードに切り替えるモード切替要求を取得する。なお、本実施形態では、モード切替要求は、制御装置20のプロセッサ自体が、前述の各種パラメータに基づき所定のモード切替条件が満たされたか否かを判定し、モード切替条件が満たされたと判定した場合に生成される。ただし、モード切替要求は、制御装置20のプロセッサが、外部から受信した情報でもよい。つまり、モード切替要求の取得とは、モード切替要求を生成すること、または、モード切替要求を受信することを意味する。本明細書において、モード切替要求か否かに関わらず、情報の取得は、情報を生成すること、または、情報を受信することを意味する。モード切替要求は、「車両の状態を変更するための状態変更要求」の一例である。
【0040】
例えば、モード切替部22は、EVモードからHEVモードに切り替えることを決定した場合、すなわち、EVモードからHEVモードに切り替えるモード切替要求を取得した場合、現状の制御状態を、EVモードのための制御状態から、エンジン始動状態、回転数同調制御状態、およびトルク変更制御状態の順に遷移させ、最終的にHEVモードのための制御状態へ遷移させる。また、モード切替部22は、現状の制御状態を示す切替状態情報を生成(出力)する。
【0041】
また、モード切替部22は、現状の制御状態を、EVモードのための制御状態から、エンジン始動状態に遷移した場合に、エンジン始動指令値をスタータモータ10に送り、エンジン2を始動させる。
【0042】
モード切替部22は、要求トルク決定部22aを含む。要求トルク決定部22aは、電動モータ3およびエンジン2の各々に要求されるトルクである要求トルクを決定する。電動モータ3およびエンジン2の各々の要求トルクは、現状の制御状態に応じて定まる。具体的には、要求トルク決定部22aが、合計要求トルクを現状の制御状態に応じた分配率で分配することで、電動モータ3およびエンジン2の各々の要求トルクを決定する。
【0043】
以下の説明において、合計要求トルクの分配率を、合計要求トルクに対する電動モータ3に要求されるトルクの割合と定義する。例えば、本実施形態において、EVモードでは、クラッチ5が切断状態にあるため、合計要求トルクの100%を電動モータ3が負担する。すなわち、EVモードに対応した分配率は、100%である。また、HEVモードでは、定常時において、電動モータ3はエンジン2が発生させるトルクの不足を補うようにトルクを発生させるだけであり、基本的に合計要求トルクの100%をエンジン2が負担する。すなわち、HEVモードに対応した分配率は、0%である。
【0044】
このように、EVモードとHEVモードとで、分配率が異なるため、電動モータ3およびエンジン2の各々に要求されるトルクが異なる。以下の説明において、EVモードに対応した分配率を、「第1分配率」と称し、HEVモードに対応した分配率を、「第2分配率」と称することとする。
【0045】
また、電動モータ3およびエンジン2の各々に対して、EVモードにおいて要求されるトルク、言い換えれば合計要求トルクを第1分配率で分配した値を、「第1要求トルク」と称し、HEVモードにおいて要求されるトルク、言い換えれば合計要求トルクを第2分配率で分配した値を、「第2要求トルク」と称することとする。第1要求トルクは、後述のトルク変更要求を取得する直前に走行駆動源に要求されていたトルクである。また、第2要求トルクは、後述のトルク変更要求によって走行駆動源に要求されたトルクである。
【0046】
なお、HEVモードにおける合計要求トルクに対する電動モータ3に要求されるトルクの割合、すなわち、第2分配率は、0%に限らない。例えば第2分配率は、50%より小さい所定の値であり得る。第2分配率は、走行駆動源であるエンジン2および電動モータ3全体が出力すべきトルクにおいて、電動モータ3が負担するトルクよりもエンジン2が負担するトルクが大きいことを示す割合であり得る。
【0047】
また、第2分配率は、負の値をとり得る(図14も参照)。例えば、本実施形態において、HEVモードは、通常走行状態と発電走行状態のいずれかの制御状態である。通常走行状態と発電走行状態とは、第2分配率が互いに異なる。通常走行状態の第2分配率は、上述した0%である。つまり、通常走行状態では、基本的に、走行に必要な駆動力の全てをエンジン2が負担する状態である。一方、発電走行状態の第2分配率は、例えば-10%などの負の値である。この場合、合計要求トルクに対するエンジン2に要求されるトルクの割合は、例えば110%などの100%以上の値となる。つまり、発電走行状態では、電動モータ3に負のトルクを要求し、エンジン2には、走行に必要なトルクに加え、電動モータ3による負のトルクを相殺するトルクも要求する。これにより、発電走行状態では、電動モータ3で発電しながら車両1を走行させる。
【0048】
例えばHEVモードにおいて、モード切替部22は、通常走行状態と発電走行状態のいずれの制御状態を選択する。モード切替部22は、例えばSOCが所定の値以上であるか否かを判定し、SOCが所定の値以上である場合に通常走行状態を選択し、SOCが所定の値未満である場合に発電走行状態を選択する。
【0049】
モード切替部22がEVモードからHEVモードに切り替えるモード切替要求を取得した場合、電動モータ3およびエンジン2の各々の出力トルクとして要求されるトルクを第1要求トルクから第2要求トルクへ変更する必要がある。このため、モード切替要求は、走行駆動源の出力トルクを第1要求トルクから第2要求トルクへ変更するためのトルク変更要求とも称し得る。また、走行駆動源の出力トルクは、「走行駆動源から駆動輪へと伝達される伝達トルク」の一例であり、モード切替要求は、走行駆動源から記駆動輪へと伝達される伝達トルクを、第1要求トルクから第2要求トルクへ変更するためのトルク変更要求の一例である。
【0050】
本実施形態では、モード切替部22は、EVモードからHEVモードに切り替えるモード切替要求を取得した場合、電動モータ3およびエンジン2の各々が出力するトルクを変更するトルク変更制御が実行される。
【0051】
以下の説明において、電動モータ3が出力するべきトルクを、モータ目標トルクと称する。また、エンジン2が出力するべきトルクを、エンジン目標トルクと称する。モード切替部22は、モータ目標トルクをモータトルク制御部23に出力し、エンジン目標トルクをエンジントルク制御部24に出力する。なお、モータ目標トルクは、後述のテーリング制御中の電動モータ3が出力するべきトルクを含み、エンジン目標トルクは、後述のテーリング制御中のエンジン2が出力するべきトルクを含む。モータ目標トルクおよびエンジン目標トルクを総称して、目標トルクと称する。
【0052】
モータトルク制御部23は、モード切替部22から出力されたモータ目標トルクに応じて、電動モータ3(のインバータ)にインバータ指令値を送信し、電動モータ3の出力トルクがモータ目標トルクになるように電動モータ3を駆動する。
【0053】
エンジントルク制御部24は、モード切替部22から出力されたエンジン目標トルクおよびエンジン回転数に基づいてスロットル開度の目標値(以下、「第1スロットル目標開度」と称する)を決定する。
【0054】
エンジン回転数制御部25は、エンジン回転数およびモータ回転数に基づいてエンジン回転数がモータ回転数に同調するようなスロットル開度の目標値(以下、「第2スロットル目標開度」と称する)を決定する。
【0055】
スロットル開度決定部26は、エンジン2に出力する最終的なスロットル開度指令値を決定し、スロットル装置2aに出力する。さらに、制御装置20は、スロットル開度の実測値に応じた燃料噴射信号をエンジン2の燃料噴射装置2bに出力するとともに、エンジン点火信号をエンジン2の点火装置2cに出力する。
【0056】
クラッチ制御部27は、クラッチ5の係合度を変化させるためのクラッチ圧力指令値をクラッチアクチュエータ6に出力する。
【0057】
<EVモードからHEVモードへの切替>
以下、走行モードを、EVモードからHEVモードに切り替える場合の処理の流れを説明する。図3は、本実施の形態におけるEVモードからHEVモードへの切替制御の処理の流れを示すフローチャートである。また、図4は、図3に示す切替制御における各値の時間変化を示すグラフである。なお、以下の説明では、エンジン2が停止状態にあるときのEVモードからHEVモードに切り替える場合の切替制御の処理を説明することとする。
【0058】
図4には、エンジン2および電動モータ3の各目標トルクを示すグラフ、エンジン2および電動モータ3の各回転数を示すグラフ、クラッチアクチュエータ6を動作させるための圧力であるクラッチ圧力を示すグラフ、および、スロットル開度を示すグラフが、上から順に示されている。なお、図4のグラフにおいて、各目標トルクおよび各回転数は、各目標トルクおよび各回転数の伝達軸(変速機4の入力軸4a)における換算値である。
【0059】
また、図4のグラフにおいて、本実施形態のクラッチ圧力は、制御油圧である。クラッチ圧力は、クラッチ5の係合度、言い換えればエンジン2と変速機4との間の動力の伝達度合いに対応するパラメータである。クラッチ圧力が予め設定された最小圧(以下、「開放相当圧力」と称する)のとき、クラッチ5の係合度が0%であり、クラッチ5の切断状態である。そして、クラッチ圧力が当該開放相当圧力から上昇するにしたがって係合度も上昇する。クラッチ圧力が予め設定された最大圧(以下、「締結相当圧力」と称する)であるとき、または、当該締結相当圧力以上であるとき、クラッチ5の係合度が100%であり、クラッチ5は結合状態である。
【0060】
前述の通り、EVモードにおいて、クラッチ5は切断状態となっており、電動モータ3が発生させる動力で駆動輪8を駆動している。車両1のEVモードによる走行中において、モード切替部22が、合計要求トルクなどに基づいて現在の走行状態を把握した上で、HEVモードが最適な走行モードであると判定すると、EVモードからHEVモードへの切替を決定する(ステップS1)。言い換えれば、モード切替部22が、各種パラメータに基づき、EVモードからHEVモードへの切替に関する所定のモード切替条件が満たされたか否かを判定し、モード切替条件が満たされたと判定した場合に、EVモードからHEVモードへの切替を決定する。なお、EVモードからHEVモードへの切替の決定が、運転者の手動操作によって行われてもよい。
【0061】
(エンジン始動)
EVモードからHEVモードへの切替を決定すると、モード切替部22は、現状の制御状態を、EVモードのための制御状態からエンジン始動状態に遷移させる。そして、モード切替部22は、エンジン2が停止状態から自力回転する自力回転状態へ移行するようエンジン2を始動させる(ステップS2)。
【0062】
具体的には、モード切替部22が、スタータモータ10にエンジン始動指令値を出力し、スタータモータ10によりエンジン2を始動させる。また、モード切替部22は、エンジン始動状態を示す切替状態情報をスロットル開度決定部26に送る。スロットル開度決定部26は、エンジン始動状態を示す切替状態情報に基づき、予め設定されたエンジン始動用開度を示すスロットル開度指令値を、スロットル装置2aに出力する(後述の図7も参照)。
【0063】
モード切替部22が、エンジン2が自力回転状態になったか否かを判定する(ステップS3)。具体的には、モード切替部22は、エンジン回転数が始動基準値以上となり且つ始動基準値以上となってから所定時間経過したか否かを判定する。モード切替部22は、エンジン回転数が始動基準値以上となってから所定時間経過した場合(図4も参照)、エンジン2が自力回転状態になったと判定する。なお、モード切替部22は、エンジン回転数が始動基準値以上となったときに、エンジン2が自力回転状態になったと判定してもよい。
【0064】
モード切替部22が、エンジン2が自力回転状態になっていない間は(ステップS3:No)、エンジン回転数が始動基準値以上となるまでエンジン回転数の監視を継続する。モード切替部22が、エンジン2が自力回転状態になったと判定した場合(ステップS3:Yes)、モード切替部22は、現状の制御状態を、エンジン始動状態から回転数同調制御状態に遷移させる。これにより、回転数同調制御状態およびクラッチ制御が開始する(ステップS4)。
【0065】
回転数同調制御は、エンジン2の回転に伴う入力軸(即ち伝達軸)4aの回転数を、電動モータ3の回転に伴う入力軸4aの回転数に合わせる制御である。また、クラッチ制御は、クラッチ5の状態を切断状態から結合状態に切り替える制御である。以下、回転数同調制御およびクラッチ制御の各々について、より詳しく説明する。
【0066】
(回転数同調制御)
まず回転数同調制御について、図5乃至7を参照して説明する。図5は、エンジン回転数制御部25における第2スロットル目標開度を設定する機能を示すブロック図である。回転数同調制御では、制御装置20は、エンジン2の回転に伴う入力軸(即ち伝達軸)4aの回転数を、電動モータ3の回転に伴う入力軸4aの回転数に合わせるようエンジン2を制御する。具体的には、エンジン回転数制御部25が、エンジン回転数およびモータ回転数に基づいてエンジン回転数がモータ回転数に同調するような第2スロットル目標開度を決定する。そして、スロットル開度決定部26が、エンジン2に出力する最終的なスロットル開度指令値として、第2スロットル目標開度を決定し、スロットル装置2aに出力する。
【0067】
エンジン回転数制御部25は、フィードフォワード制御部(以下、FF制御部)31、フィードバック制御部(以下、FB制御部)32、加算部33を含む。
【0068】
FF制御部31は、微分演算部31a、ショック許容度設定部31b、切替部31c、減算部31d、乗算部31eを含む。
【0069】
微分演算部31aは、アクセル開度を微分演算し、アクセル開度微分値を出力する。ショック許容度設定部31bは、予め設定された第1ショック許容度マップを参照して、アクセル開度と、微分演算部31aにより出力されたアクセル開度微分値とから、調整用ゲインである第1ショック許容度を設定する。
【0070】
切替部31cは、モード切替部22から取得した切替状態情報に基づき、ショック許容度設定部31bにより設定された調整用ゲインを乗算部31eに出力するか否かを切り替える。切替部31cは、モード切替部22から取得した切替状態情報が回転数同調制御状態を示す場合、乗算部31eに出力するゲインを、調整用ゲインとし、モード切替部22から取得した切替状態情報が回転数同調制御状態以外の状態を示す場合、乗算部31eに出力するゲインを、「1」とする。
【0071】
減算部31dは、初期目標回転数と初期エンジン回転数との差分を算出する。初期目標回転数は、回転数同調制御の開始時におけるエンジン2の目標回転数である。例えば、回転数同調制御におけるエンジン2の目標回転数が電動モータ3の回転数である場合、初期目標回転数は、回転数同調制御の開始時における電動モータ3の回転数である。初期エンジン回転数は、回転数同調制御の開始時におけるエンジン2の回転数である。
【0072】
乗算部31eは、切替部31cにより決定されたゲインと、予め設定されたFFゲインと、減算部31dにより算出された初期目標回転数と初期エンジン回転数との差分とを乗算して、FF制御値を出力する。
【0073】
FB制御部32は、減算部32aおよびPID制御部32bを含む。減算部32aは、エンジン2の目標回転数とエンジン回転数との差分を算出する。PID制御部32bは、減算部32aにより算出された差分に対して、予め設定された比例ゲイン、積分ゲインおよび微分ゲインを用いて、PID制御によってFB制御値を決定する。
【0074】
加算部33は、FF制御部31の出力値(FF制御値)とFB制御部32の出力値(FB制御値)とを加算して、第2スロットル目標開度を設定する。
【0075】
エンジン回転数制御部25による回転数同調制御と従来の回転数同調制御との違いについて説明する。上記特許文献1のように従来の回転数同調制御でも、エンジン回転数をモータ回転数に合わせるためにフィードバック制御を行っているが、本実施形態における回転数同調制御では、フィードバック制御に、フィードフォワード制御を組み合わせている。すなわち、減算部31dは、初期目標回転数と初期エンジン回転数との差分に応じたFF制御値を、FB制御部32の出力値に加算することで、回転数同調制御実行時の第2スロットル目標開度を上昇させ(図4参照)、早急な同調が可能となっている。
【0076】
ただし、スロットル開度を開きすぎると、エンジン回転数が急激に上昇する。エンジン回転数が急激に上昇することに起因して車体にショックが生じることが考えられる。また、このようなショックは、運転者のフィーリングに違和感を与えることが考えられる。そこで、本実施形態では、ショック許容度設定部31bが、現在の状況(例えば走行状態や運転操作状態など)が、乗員にとってショックをどの程度許容できる状況かを判定し、その結果に応じた調整用ゲインを出力する。
【0077】
本実施形態では、現在の状況(例えば走行状態または運転操作状態)を判定するためのパラメータ、より詳しくは、乗員にとってショックをどの程度許容できる状況かを判定するためのパラメータとして、アクセル開度とアクセル開度微分値とを用いている。
【0078】
図6は、第1ショック許容度マップを示す図である。横軸がアクセル開度であり、縦軸はアクセル開度微分値である。第1ショック許容度マップは、アクセル開度とアクセル開度微分値との組合せと、第1ショック許容度との対応関係を示す。第1ショック許容度は、ショック許容度設定部31bが設定する調整用ゲインに対応する。第1ショック許容度は、スロットル開度を急激に変化させることによって車両1の車体に生じるショックに対する許容度を示すパラメータである。第1ショック許容度は、加速状態または加速操作状態に基づいて、可変設定される値である。
【0079】
アクセル開度が大きいことは、運転者により加速操作されている状態を示す。また、アクセル開度が大きいことは、車体が加速している状態を示す。このような状態は、乗員(運転者含む)にとって多少のショックを許容できる状態であると考えられる。このため、第1ショック許容度マップにおいて、第1ショック許容度は、アクセル開度の増加に伴って増加するように設定されている。
【0080】
また、アクセル開度微分値が大きいことは、運転者により加速操作が現在進行形で行われている状態を示す。また、アクセル開度微分値が大きいことは、車体が加速し始めた状態を示す。このような状態も、乗員(運転者含む)にとって多少のショックを許容できる状態であると考えられる。このため、第1ショック許容度マップにおいて、第1ショック許容度は、アクセル開度微分値の増加に伴って増加するように設定されている。
【0081】
この第1ショック許容度マップでは、アクセル開度とアクセル微分値(またはアクセル微分値に所定値を乗算した値)の合計値が所定の第1基準値未満である第1領域M1にある場合、第1ショック許容度が、予め設定された第1設定値となる。当該合計値が第1基準値以上で、且つ、当該合計値が第1基準値より大きい所定の第2基準値未満である第2領域M2にある場合、第1ショック許容度が、第1設定値より大きい予め設定された第2設定値となる。当該合計値が、第2基準値より大きい所定の第3基準値以下である第3領域M3にある場合、第1ショック許容度が、第2設定値より大きい予め設定された第3設定値となる。
【0082】
すなわち、第1ショック許容度マップにおける左下側の第1領域M1は、第1ショック許容度が比較的小さく、第1ショック許容度マップにおける右上側部分の第3領域M3は、第1ショック許容度が比較的大きい。
【0083】
なお、図6に示した第1ショック許容度マップは、アクセル開度とアクセル開度微分値との組合せが、3つの設定値のいずれかに対応することを示すものであったが、この第1ショック許容度マップは一例にすぎない。例えば、第1ショック許容度マップは、アクセル開度とアクセル開度微分値との組合せが、2つ、または、4つ以上の設定値のいずれかに対応することを示すものであってもよい。
【0084】
図7は、スロットル開度決定部26における最終的なスロットル目標開度を決定する機能を示すブロック図である。
【0085】
スロットル開度決定部26は、モード切替部22から取得した切替状態情報に基づき、始動用開度、第1スロットル開度および第2スロットル開度の中から、エンジン2に出力する最終的なスロットル開度を決定し、スロットル装置2aに出力する。第1スロットル開度は、エンジントルク制御部24により出力されたスロットル目標開度である。第2スロットル開度は、エンジン回転数制御部25により出力されたスロットル目標開度である。
【0086】
例えば、切替状態情報がエンジン始動状態を示す場合、スロットル開度決定部26は、最終的なスロットル目標開度を始動用開度に決定し、出力する。また、例えば、切替状態情報がトルク変更制御状態を示す場合、スロットル開度決定部26は、最終的なスロットル目標開度を第1スロットル開度に決定し、出力する。
【0087】
また、例えば、切替状態情報が回転数同調制御状態を示す場合、スロットル開度決定部26は、最終的なスロットル目標開度を、第1ショック許容度に応じた第2スロットル開度に決定し、出力する。従って、制御装置20は、回転数同調制御中、第1ショック許容度が大きいほど、エンジン2のスロットル開度を増加させる。このように本実施形態では、制御装置20は、車両1の走行状態または運転操作状態に基づいて、回転同調制御におけるエンジン出力の初期目標値、具体的には、回転同調制御開始時におけるスロットル目標開度を異ならせる。
【0088】
(クラッチ制御)
まず回転数同調制御について、図8乃至10を参照して説明する。図8は、クラッチ制御部27におけるクラッチ圧力指令値を決定する機能を示すブロック図である。
【0089】
クラッチ制御部27は、微分演算部27a、ショック許容度設定部27b、積算部27c、クラッチ圧設定部27d、およびクラッチ圧決定部27eを含む。
【0090】
微分演算部27aは、アクセル開度を微分演算し、アクセル開度微分値を出力する。ショック許容度設定部27bは、予め設定された第2ショック許容度マップを参照して、アクセル開度と、微分演算部27aにより出力されたアクセル開度微分値とから、クラッチ圧力用パラメータである第2ショック許容度を設定する。
【0091】
積算部27cは、ショック許容度設定部27bにより出力されたクラッチ圧力用パラメータを積算する。
【0092】
クラッチ圧設定部27dは、予め設定されたクラッチ圧力マップを参照して、積算部27cにより出力されたショック許容度の積算値から、クラッチ圧力指令値を決定する。
【0093】
クラッチ圧決定部27eは、モード切替部22から取得した切替状態情報に基づき、開放相当圧力、締結相当圧力、および、クラッチ圧設定部27dにより設定されたクラッチ圧力の中から、クラッチアクチュエータ6に出力する最終的なクラッチ圧力指令値を決定し、クラッチアクチュエータ6に出力する。
【0094】
例えば、切替状態情報がEVモードまたはエンジン始動状態を示す場合、クラッチ圧決定部27eは、クラッチアクチュエータ6に出力する最終的なクラッチ圧力指令値を開放相当圧力に決定し、出力する。また、例えば、切替状態情報がトルク変更制御状態またはHEVモードを示す場合、クラッチ圧決定部27eは、クラッチアクチュエータ6に出力する最終的なクラッチ圧力指令値を締結相当圧力に決定し、出力する。また、例えば、切替状態情報が回転数同調制御状態を示す場合、クラッチ圧決定部27eは、クラッチアクチュエータ6に出力する最終的なクラッチ圧力指令値を、クラッチ圧設定部27dにより設定されたクラッチ圧力に決定し、出力する。
【0095】
クラッチ圧決定部27eによるクラッチ制御について、より詳しく説明する。本実施形態におけるクラッチ制御は、回転数同調制御と同時に開始する。そして、クラッチ制御部27が、回転数同調制御の実行中に、半クラッチ状態となるようクラッチ5を制御する。より詳しくは、クラッチ制御部27は、回転数同調制御の実行中に、クラッチ5の係合度が増加するようにクラッチ5(より詳しくはクラッチアクチュエータ6)を制御する。クラッチ制御部27は、回転数同調制御の実行中、時間の経過とともに、徐々にクラッチ5の係合度が増加させてもよいし、段階的にクラッチ5の係合度が増加させてもよい。回転数同調制御の実行中に半クラッチ状態とすることにより、クラッチ5の摩擦力が、エンジン回転数を上昇させるようにエンジン2に伝達され、その結果、クラッチ5の切断状態でエンジン回転数を上昇させる場合に比べて、早急な同調が可能となる。
【0096】
ただし、クラッチ5の係合度を上昇させることに起因して車体にショックが生じることが考えられる。また、このようなショックは、運転者のフィーリングに違和感を与えることが考えられる。そこで、本実施形態では、ショック許容度設定部27bが、現在の状況(例えば走行状態や運転操作状態など)が、乗員にとってショックをどの程度許容できる状況かを判定し、その結果に応じて、クラッチ圧設定部27dが、クラッチ5の係合度を上昇させる速度を調整する。
【0097】
本実施形態では、現在の状況(例えば走行状態または運転操作状態)を判定するためのパラメータ、より詳しくは、乗員にとってショックをどの程度許容できる状況かを判定するためのパラメータとして、アクセル開度とアクセル開度微分値とを用いている。
【0098】
図9は、第2ショック許容度マップを示す図である。横軸がアクセル開度であり、縦軸はアクセル開度微分値である。第2ショック許容度マップは、アクセル開度とアクセル開度微分値との組合せと、第2ショック許容度との対応関係を示す。第2ショック許容度は、クラッチ圧設定部27dにより用いられるパラメータであるため、クラッチ圧力用パラメータとも称し得る。第2ショック許容度は、クラッチ5の状態を変えることによって車両1の車体に生じるショックに対する許容度を示すパラメータである。第2ショック許容度は、加速状態または加速操作状態に基づいて、可変設定される値である。
【0099】
アクセル開度が大きいことは、運転者により加速操作されている状態を示す。また、アクセル開度が大きいことは、車体は加速している状態を示す。このような状態は、乗員(運転者含む)にとって多少のショックを許容できる状態であると考えられる。このため、第2ショック許容度マップにおいて、第2ショック許容度は、アクセル開度の増加に伴って増加するように設定されている。
【0100】
また、アクセル開度微分値が大きいことは、運転者により加速操作が現在進行形で行われている状態を示す。また、アクセル開度微分値が大きいことは、車体が加速し始めた状態を示す。このような状態も、乗員(運転者含む)にとって多少のショックを許容できる状態であると考えられる。このため、第2ショック許容度マップにおいて、第2ショック許容度は、アクセル開度微分値の増加に伴って増加するように設定されている。
【0101】
この第2ショック許容度マップでは、アクセル開度とアクセル微分値(またはアクセル微分値に所定値を乗算した値)の合計値が所定の第1基準値未満である第1領域N1にある場合、第2ショック許容度が、予め設定された第1パラメータ値となる。当該合計値が第1基準値以上で、且つ、当該合計値が第1基準値より大きい所定の第2基準値未満である第2領域N2にある場合、第2ショック許容度が、第1パラメータ値より大きい予め設定された第2パラメータ値となる。当該合計値が、第2基準値より大きい所定の第3基準値以下である第3領域N3にある場合、第2ショック許容度が、第2パラメータ値より大きい予め設定された第3パラメータ値となる。
【0102】
すなわち、第2ショック許容度マップにおける左下側の第1領域N1に対応する第1ショック許容度が比較的小さく、第2ショック許容度マップにおける右上側部分の第3領域N3に対応する第2ショック許容度が比較的大きい。本例では、第1領域N1に対応する第1ショック許容度(第1パラメータ値)は、1%であり、第2領域N2に対応する第1ショック許容度(第2パラメータ値)は、5%であり、第3領域N3に対応する第1ショック許容度(第3パラメータ値)は、10%である。
【0103】
なお、図9に示した第2ショック許容度マップは、アクセル開度とアクセル開度微分値との組合せが、3つのパラメータ値のいずれかに対応することを示すものであったが、この第2ショック許容度マップは一例にすぎない。例えば、第2ショック許容度マップは、アクセル開度とアクセル開度微分値との組合せが、2つ、または、4つ以上のパラメータ値のいずれかに対応することを示すものであってもよい。
【0104】
図10は、クラッチ圧力マップを示す図である。横軸が、積算部27cにより出力されたクラッチ圧力用パラメータの積算値、すなわち、第2ショック許容度の積算値である。縦軸は、クラッチ圧力(指令値)である。
【0105】
クラッチ圧力マップは、第2ショック許容度の積算値と、クラッチ圧力との対応関係を示す。第2ショック許容度の積算値が0%であるとき、クラッチ圧力が予め設定された最小圧、つまり前述の開放相当圧力であり、クラッチ5の切断状態である。第2ショック許容度の積算値が100%であるとき、クラッチ圧力が予め設定された最大圧、つまり締結相当圧力であり、クラッチ5の結合状態である。
【0106】
ショック許容度設定部27bから第2ショック許容度(クラッチ圧力用パラメータ)が出力されるたびに、第2ショック許容度の積算値は、0%から100%に向かって上昇する。また、図10に示すように、クラッチ圧力マップでは、第2ショック許容度の積算値が増加するにしたがってクラッチ圧力が増加する。このため、ショック許容度設定部27bから出力される第2ショック許容度(クラッチ圧力用パラメータ)が大きいほど、第2ショック許容度の積算値が早く上昇し、その結果、クラッチ圧力(言い換えればクラッチ5の係合度)が早く上昇する。
【0107】
このように、制御装置20は、車両1の走行状態または運転操作状態に基づいて、クラッチ5が切断状態から結合状態となるまでの時間を異ならせる。本実施形態のクラッチ制御では、第2ショック許容度が大きい場合には、クラッチ5の係合度を早く上昇させ、第2ショック許容度が小さい場合には、クラッチ5の係合度を緩やかに上昇させる。言い換えれば、制御装置20は、第2ショック許容度が大きいほど、クラッチ5を半クラッチ状態にする時点からクラッチを結合状態にする時点までの時間である半クラッチ時間を短くする。
【0108】
図4の例では、クラッチ5を半クラッチ状態にする時点からクラッチを結合状態にする時点までの時間である半クラッチ時間は、クラッチ制御を開始してから終了するまでの時間に対応するが、半クラッチ時間はこれに限定されない。例えば、クラッチ圧力が開放相当圧力の近傍にある間、クラッチ5の係合度が上昇しない場合には、半クラッチ時間の起点は、クラッチ制御の開始時点から少し遅れた時点であってもよい。
【0109】
なお、クラッチ制御中の各部の演算は、所定時間間隔ごとに実行される。また、第2ショック許容度マップから得られる第2ショック許容度(本例では、第1パラメータ値、第2パラメータ値、第3パラメータ値)は、全て正の値である。このため、クラッチ制御部27が演算するたびに、積算部27cにより積算される第2ショック許容度の積算値は、上昇する。従って、制御装置20は、回転数同調制御の実行中に、時間の経過とともに、クラッチ5の係合度が増加するようクラッチ5(より詳しくは、クラッチアクチュエータ6)を制御する。ただし、第2ショック許容度マップから得られる第2ショック許容度の最小値が0であってもよい。例えば、第1パラメータ値が0でもよい。
【0110】
図3に戻って、クラッチ制御中、モード切替部22は、クラッチ5の係合度が上昇することによりモータ回転数が低下することを抑制するように、モータ目標トルクを補正する(ステップS5)。クラッチ制御中、モード切替部22は、クラッチ5の係合度に応じて電動モータ3に生じるロストルク分を、電動モータ3の要求トルクに上乗せすることにより、モータ目標トルクを補正する。
【0111】
モード切替部22は、エンジン2の回転に伴う伝達軸回転数が、電動モータ3の回転に伴う伝達軸回転数に同調したか否かを判定する(ステップS6)。具体的には、モード切替部22は、エンジン回転数の伝達軸換算値とモータ回転数の伝達軸換算値との差が所定の同調基準値以内になったか否かを判定する。
【0112】
なお、本実施形態において、回転数同調制御とクラッチ制御とが同時に進行し、また、クラッチ制御によって、クラッチ圧力が締結相当圧力となったときは、エンジン2の回転に伴う伝達軸回転数が、電動モータ3の回転に伴う伝達軸回転数に同調したことを意味する。このため、モード切替部22は、クラッチ圧力が締結相当圧力となったか否かを判定することにより、エンジン2の回転に伴う伝達軸回転数が、電動モータ3の回転に伴う伝達軸回転数に同調したか否かを判定してもよい。
【0113】
エンジン2の回転に伴う伝達軸回転数が、電動モータ3の回転に伴う伝達軸回転数に同調したと判定されない場合(ステップS6:No)、回転数同調制御とクラッチ制御とを継続する。エンジン2の回転に伴う伝達軸回転数が、電動モータ3の回転に伴う伝達軸回転数に同調したと判定した場合(ステップS6:Yes)、モード切替部22は、現状の制御状態を、回転数同調制御状態からトルク変更制御状態に遷移させる(ステップS7)。
【0114】
(トルク変更制御)
トルク変更制御では、走行駆動源の目標トルクを、EVモードに対応する第1要求トルクから、HEVモードに対応する第2要求トルクへ変更する。具体的には、トルク変更制御では、エンジン目標トルクを、EVモードに対応する第1要求トルクP1から、HEVモードに対応する第2要求トルクP2へ変更し、モータ目標トルクを、EVモードに対応する第1要求トルクQ1から、HEVモードに対応する第2要求トルクQ2へ変更する。
【0115】
EVモードからHEVモードへの切替をできるだけ早く完了するためには、トルク変更制御にかかる時間も短くなることが望ましい。しかしながら、トルク変更制御の時間を短くするために走行駆動源の出力を急激に変化させると、これに起因して車体にショックが生じることが考えられる。また、このようなショックは、運転者のフィーリングに違和感を与えることが考えられる。そこで、本実施形態では、乗員にとってショックをどの程度許容できる状況かを示すパラメータとして第3ショック許容度を取得し、第3ショック許容度に応じてトルク変更制御にかかる時間(後述のトルク変更時間)を変化させている。
【0116】
トルク変更制御について、図11乃至13を参照して説明する。図11は、トルク変更制御処理の流れを示すフローチャートである。トルク変更制御処理では、まずモード切替部22が、第3ショック許容度を取得する(ステップT1)。
【0117】
図12は、第3ショック許容度マップを示す図である。横軸が、変速機4の変速比であり、縦軸がバンク角である。例えば、変速機4の変速比を示す変速比情報は、変速比センサにより検出される。また、例えば車体のバンク角を示すバンク角情報は、ジャイロセンサにより検出される。第3ショック許容度マップは、変速比とバンク角との組合せと、第3ショック許容度との対応関係を示す。第3ショック許容度は、目標トルクを急激に変化させることによって車両1の車体に生じるショックに対する許容度を示すパラメータである。本実施形態では、第3ショック許容度は、変速比とバンク角によって可変設定される値として生成される。
【0118】
変速機4の変速比が大きい状態でトルクの変更に起因して車体に生じ得るショックは、変速比が小さい状態で生じ得るショックと比べて大きくなる可能性が高い。例えば、変速機が有段変速機である場合、変速段が例えば1速や2速の低速段および3速や4速である中速段である状態でトルクの変更に起因して車体に生じ得るショックは、変速段が例えば5速や6速などの高速段である状態で生じ得るショックと比べて大きくなる可能性が高い。変速機4の変速比が大きいほど、変速機4の入力軸4aから出力軸4bへ伝達されるトルクが大きくなる傾向にあるためである。このため、変速機4の変速比が大きいほど、車体に生じるショックが低減されることが望ましい。
【0119】
従って、本実施形態では、第3ショック許容度マップにおいて、第3ショック許容度は、変速比の増加に伴って低減するように設定されている。言い換えれば、変速機4の変速比が、例えばある設定変速比より大きい状態で決定される第3ショック許容度は、変速機4の変速比が当該設定変速比以下である状態で決定される第3ショック許容度よりも小さくなる。例えば、4速に対応する変速比より大きい中速段および低速段の状態で決定される第3ショック許容度は、4速に対応する変速比以下である高速段の状態で決定される第3ショック許容度よりも小さくなる。
【0120】
バンク角が0でないことは、車両1が車体を傾けて走行している、例えばカーブした道を走行している状態であることを示し得る。また、バンク角が小さいことは、車両1が比較的緩やかなカーブを走行していることを示し得る。また、バンク角が大きいことは、車両1が急なカーブを走行していることを示し得る。このようなことから、バンク角が大きいほど、車体に生じるショックが低減されることが望ましい。言い換えれば、バンク角が小さい場合、乗員(運転者含む)にとって多少のショックを許容できる状態であると考えられる。このため、第3ショック許容度マップにおいて、第3ショック許容度は、バンク角の増加に伴って低減するように設定されている。
【0121】
この第3ショック許容度マップでは、変速比とバンク角との組合せに対応付けられた3つの第1領域K1、第2領域K2、第3領域K3を示す。第1領域K1、第2領域K2、第3領域K3の各領域には、第3ショック許容度が予め設定されている。この第3ショック許容度マップの左下側の第1領域K1は、第3ショック許容度が比較的大きく、第3ショック許容度マップの右上側部分の第3領域K3は、第3ショック許容度が比較的小さい。例えば第3ショック許容度マップを用いることで、例えば車体が傾いていない状態では、高速段(例えば5速や6速)のときに取得される第3ショック許容度は、中速段(例えば3速や4速)や低速段(例えば1速や2速)のときに取得される第3ショック許容度より大きくなる傾向にある。
【0122】
なお、図12に示した第3ショック許容度マップは、変速比とバンク角との組合せが、3つの設定値のいずれかに対応することを示すものであったが、この第3ショック許容度マップは一例にすぎない。例えば、第3ショック許容度マップは、変速比とバンク角との組合せが、2つ、または、4つ以上の値のいずれかに対応することを示すものであってもよい。
【0123】
図11に戻って、モード切替部22は、取得した第3ショック許容度が所定値より大きいか否かを判定する(ステップT2)。モード切替部22は、取得した第3ショック許容度が所定値Bより大きいと判定した場合(ステップT2:Yes)、ステップ入力制御が実行される(ステップT3)。
【0124】
ステップ入力制御は、電動モータ3およびエンジン2の各々が出力するトルクを、現在の目標トルク(例えば第1要求トルク)から第2要求トルクにステップ状に変化させる制御である。つまり、ステップ入力制御は、トルク変更制御にかかる時間、つまり、目標トルクを第1要求トルクから第2要求トルクに変化させるトルク変更時間を最短にする制御である。
【0125】
モード切替部22は、取得した第3ショック許容度が所定値B以下であると判定した場合(ステップT2:No)、モード切替部22は、第3ショック許容度に応じてトルク変化率を決定する(ステップT4)。モード切替部22、モータトルク制御部23、およびエンジントルク制御部24により、決定したトルク変化率に基づくテーリング制御が実行される(ステップT5)。
【0126】
テーリング制御は、電動モータ3およびエンジン2の各々が出力するトルクを、第1要求トルクから第2要求トルクに所定のトルク変更時間をかけて徐々に変化させる制御である。言い換えれば、テーリング制御は、合計要求トルクの分配率を、第1分配率から第2分配率にトルク変更時間をかけて徐々に変化させる制御である。なお、図4の一番上のグラフでは、テーリング制御によりモータ目標トルクおよびエンジン目標トルクを変化させる例が示されている。
【0127】
図13は、トルク変化率マップを示す図である。トルク変化率は、単位時間当たりの目標トルクの変化量である。例えばトルク変化率は、図4の一番上のグラフにおけるエンジン2または電動モータ3の目標トルクの傾きの絶対値に相当する。つまり、電動モータ3およびエンジン2の各々が出力するトルクを、第1要求トルクから第2要求トルクに変化させるのにかかるトルク変更時間は、第1要求トルクと第2要求トルクとの差、および、トルク変化率に応じた時間となる。図13では、値B以下の範囲において、第3ショック許容度が大きいほどトルク変化率が大きくなる。こうして、モード切替部22は、ステップT1で決定した第3ショック許容度が大きいほど、トルク変更時間が短くなるように、テーリング制御を実行する。
【0128】
図11に戻って、テーリング制御の実行中、モード切替部22は、運転者によるシフト操作があったか否かを判定する(ステップT6)。例えば、運転者のシフト操作があったことを示すシフト操作情報は、シフト操作センサから受信する。代わりに、シフト操作情報は、変速比センサであるギヤ位置センサにより検出される変速段に変更があったか否かを判定することにより取得してもよい。
【0129】
テーリング制御の実行中に、モード切替部22は、運転者によるシフト操作があったと判定した場合(ステップT6:Yes)、第3ショック許容度を増加させて(ステップT7)、ステップT2に戻る。ステップT7で第3ショック許容度を増加させる増加量は、予め定められた固定値でもよいし、変更前後の変速段に応じた変動値でもよい。
【0130】
このようにシフト操作があったときに第3ショック許容度を増加させるのは、運転者がシフト操作を行うときの状況が、通常、乗員が車体に生じるショックを許容できる状況にあると考えられるためである。ステップT6において、モード切替部22が、運転者によるシフト操作があったと判定した場合には、第3ショック許容度を増加させる代わりに、ステップT3のステップ入力制御に移行してもよい。すなわち、テーリング制御を実行中にシフト操作があった場合には、テーリング制御を止めて、現在の目標トルクから第2要求トルクにステップ状に変化させてもよい。つまり、トルク変更制御の実行中にシフト操作情報を取得した場合のトルク変更時間が、シフト操作情報を取得しなかった場合のトルク変更時間と比べて短くなるように、トルク変更制御は実行される。
【0131】
テーリング制御の実行中に運転者のシフト操作がないと判定された場合(ステップT6:No)、モード切替部22は、テーリング制御によって目標トルクが第2要求トルクに到達したか否かを判定する(ステップT8)。目標トルクが第2要求トルクに到達していないと判定した場合(ステップT8:No)、ステップT6に戻り、テーリング制御を継続する。目標トルクが第2要求トルクに到達したと判定した場合(ステップT8:Yes)、過渡モードは終了し、HEVモードへの移行が完了する。
【0132】
なお、図4の例では、トルク変更制御を行っている間、各目標トルクが線形に変化する態様を例示しているが、目標トルクが非線形に変化してもよい。つまり、テーリング制御の実行中、トルク変化率が一定でなくてもよく、変化してもよい。
【0133】
以上に説明したように、本実施形態によれば、車体に生じるショックに対する許容度を示す第3ショック許容度を決定し、第3ショック許容度に応じてトルク変更時間を変化させる。
【0134】
例えば、トルク変更制御として、ステップ入力制御とテーリング制御のどちらを選択するかが、第3ショック許容度が所定値Bより大きいか否かに応じて決定される。また、例えば、第3ショック許容度が大きいほど、トルク変更時間が短くなるように、テーリング制御が実行される。
【0135】
このように、乗員がトルクの変更に起因して車体に生じるショックを許容できないような状況では、トルク変更時間を長くして、車体に生じるショックを抑制できる。また、乗員がトルクの変更に起因して車体に生じるショックを許容できるような状況では、トルク変更時間を短くすることができる。
【0136】
従って、駆動輪8を駆動させるためのトルクの変更が乗員に違和感を与えることを抑制しつつ、トルクの変更にかかる時間を短くすることができる。
【0137】
例えば、エンジン2の出力の低い領域はエンジン2にとって燃費の悪い領域である。このため、テーリング制御にかかる時間を短くすることで、燃費の悪い領域でのエンジン2の使用時間をできるだけ短くすることができる。また、例えば、テーリング制御にかかる時間を短くすることで、テーリング制御を短くすることで、テーリング制御の間に電動モータ3に使用する電力を節約できる。
【0138】
また、本実施形態によれば、変速機4の変速比が設定変速比より大きい状態で処理回路により決定される第3ショック許容度は、変速機の変速比が設定変速比以下である状態で処理回路により決定される第3ショック許容度よりも小さいため、変速比が比較的低い場合に車体に生じ得るショックが抑制されるようにトルク変更時間を調整できる。
【0139】
また、本実施形態によれば、第3ショック許容度をバンク角の増加に伴って低減する値とする。このため、車体のバンク状態に適したトルク変更時間に調整できる。
【0140】
また、本実施形態によれば、第3ショック許容度が、バンク角情報および変速比情報に基づいて決定されるため、車体のバンク状態と変速機の変速比の双方に適したトルク変更時間に調整できる。
【0141】
また、本実施形態によれば、テーリング制御の実行中に、運転者のシフト操作があったことを示す情報を取得したときに、第3ショック許容度を増加させるため、乗員が車体に生じるショックを許容できる状況にあると想定されるシフト操作時に、トルク変更時間を短くすることができる。
【0142】
また、本実施形態によれば、決定した第3ショック許容度が所定値以下である場合に、テーリング制御を実行し、決定した第3ショック許容度が所定値より大きい場合に、テーリング制御を実行せずに、走行駆動源が出力するトルクを、第1要求トルクから第2要求トルクにステップ状に変化させるステップ入力制御を実行する。このため、乗員が車体に生じるショックを許容できる状況で、トルクの変更にかかる時間をより短くすることができる。
【0143】
また、本実施形態によれば、回転数同調制御の実行中に、クラッチ5の係合度が増加され、クラッチ5が半クラッチ状態となる。このため、エンジン2の回転数を上昇させるように伝達軸の回転がエンジン2に伝達される。これにより、スロットル開度などエンジン2のみを制御してエンジン2の回転数を上昇する場合に比べて、回転数同調制御にかかる時間を短くすることができる。その結果、第1走行モードから第2走行モードに移行するのに要する時間を短縮できる。
【0144】
また、本実施形態によれば、回転数同調制御の実行中に、クラッチ制御を実行する。すなわち、モータ回転数に近づくようエンジン回転数が上昇中にあるときに、クラッチ5の係合も行う。このため、エンジン2が停止状態にあるときにクラッチ5の係合を行う場合(例えば押し掛け始動する場合)に比べて、クラッチ5の係合によって生じるショックを低減できる。
【0145】
また、本実施形態によれば、第2ショック許容度が大きいほど、クラッチを半クラッチ状態にする時点からクラッチ5を結合状態にする時点までの時間である半クラッチ時間を短くする。このため、第2ショック許容度が大きいほど、半クラッチ時間を短くするため、乗員がショックを許容できる状況にあるか否かに応じて、半クラッチ時間を適切に変更できる。
【0146】
また、本実施形態によれば、第2ショック許容度は、アクセル開度の増加に伴って増加し得る。乗員がアクセルを増加させる操作をする場合、クラッチの動作によってショックが生じることは乗員にとって想定内であり、乗員はそのショックを許容できると考えられる。本実施形態によれば、第2ショック許容度をアクセル開度の増加に伴って増加する値とすることで、半クラッチ時間を適切に変更できる。
【0147】
また、本実施形態によれば、第1ショック許容度が大きいほど、エンジン2のスロットル開度を増加させる。これにより、回転数同調制御の時間を低減でき、その結果、クラッチ5をより早く結合状態にすることが可能となる。
【0148】
また、本実施形態によれば、回転数同調制御の実行中に、時間の経過とともに、クラッチ5の係合度が増加するようクラッチ5を制御するため、クラッチ5の状態を急変化させる場合と比べて、クラッチ5の状態を変えることに起因して車体に生じるショックを低減する。
【0149】
<その他の実施形態>
本開示は前述した実施形態に限定されるものではなく、その構成を変更、追加、又は削除することができる。
【0150】
例えば上記実施形態で説明された車両は、2つの走行駆動源を備えるハイブリッド車両であったが、車両はこれに限定されない。例えば、車両は、走行駆動源を1つだけ備えてもよいし、3つ以上の走行駆動源を備えてもよい。車両は、例えば走行駆動源として内燃機関のみを備えるものでもよい。
【0151】
車両は、例えば走行駆動源として内燃機関のみを備えるものであってもよい。また、車両は、例えば走行駆動源として電動モータのみを備えるものであってもよい。第1要求トルクおよび第2要求トルクは、合計要求トルクを分配率で分配した値でなくてもよい。第1要求トルクは、トルク変更要求を取得する前に走行駆動源に要求されていたトルクであってもよく、第2要求トルクは、トルク変更要求によって走行駆動源に要求されたトルクであってもよい。
【0152】
変速機は、シフト操作子に対する運転者のシフト操作に機械的に連動してギヤチェンジするように構成されていたが、変速機は、シフト操作子に対する運転者のシフト操作に電気的に連動してギヤチェンジするように構成されていてもよい。この場合、例えばシフト操作子は、車両1のハンドルのグリップなどに設けられたシフトスイッチでもよく、制御装置は、シフトスイッチが検出したシフト操作に基づき、複数組の変速ギヤ対の中から1組の変速ギヤを選択するギヤシフタを制御してもよい。ギヤシフタは、例えば、案内溝を有するシフトドラムと、一端部が案内溝に嵌合し、他端部がドッグギヤに接続され、シフトドラムが回転することによって変速機の入力軸に沿って移動するシフトフォークと、制御装置に制御されてシフトドラムを回転駆動するシフトアクチュエータとを含む。
【0153】
また、上記実施形態では、走行駆動源に要求される要求トルクを第1要求トルクから第2要求トルクへ変更するためのトルク変更要求の一例として、EVモードからHEVモードに切り替えるためのモード切替要求が説明されたが、トルク変更要求はこれに限られない。トルク変更要求は、HEVモードからEVモードに切り替えるためのモード切替要求でもよい。例えばトルク変更要求は、HEVモードにおける通常走行状態と発電走行状態との間を切り替えるためのモード切替要求でもよい。
【0154】
例えば変速機が、シフト操作子に対する運転者のシフト操作に電気的に連動してギヤチェンジするように構成されている場合、制御装置は、ギヤチェンジを行う制御の際に、ギヤチェンジに起因して車体に生じるショックを低減するために、走行駆動源であるエンジンに要求されるトルクを変更し得る。このような制御は、ハイブリッド車両であるか、走行駆動源として内燃機関のみを備えるエンジン車両であるかに関係なく行われ得る。このようなギヤチェンジの際の制御におけるエンジンに要求される要求トルクを変更する指令も、トルク変更要求に含まれてもよい。
【0155】
また、内燃エンジンと変速機との間にクラッチを備える車両では、運転者によってシフト操作があったときに、クラッチを結合状態から一旦切断状態や半クラッチ状態にしてから、変速段の変更、つまりギヤチェンジを行い、その後、クラッチを結合状態に戻す制御が行われ得る。このような制御の際に、走行駆動源であるエンジンに要求されるトルクが変更され得る。このような制御は、ハイブリッド車両であるか、走行駆動源として内燃機関のみを備えるエンジン車両であるかに関係なく行われ得る。このようなギヤチェンジの際の制御におけるエンジンに要求される要求トルクを変更する指令も、トルク変更要求に含まれてもよい。
【0156】
トルク変更制御の処理方法についても、上記実施形態で説明されたものに限定されない。例えば、上記実施形態では、ステップT2で第3ショック許容度が所定値Bより大きいか否かによって、トルク変更制御として、ステップ入力制御を実行するか、テーリング制御を実行するかが決定されたが、トルク変更制御は、ステップ入力制御を実行せずに、テーリング制御のみを実行してもよい。この場合、図11のトルク変更制御において、ステップT2,T3はなくてもよく、ステップT1の後にステップT4に移行する。
【0157】
また、例えば、上記実施形態では、ステップT4で第3ショック許容度に応じてトルク変化率を決定したが、トルク変化率は、第3ショック許容度に依存しない予め定められた値であってもよい。この場合、図11のトルク変更制御において、ステップT4はなくてもよく、ステップT2で第3ショック許容度が所定値B以下であると判定された後に、ステップT5に移行する。
【0158】
また、例えば上記実施形態では、第3ショック許容度として、変速比の増加に伴って低減し、バンク角の増加に伴って低減するパラメータとして説明されたが、第3ショック許容度はこれに限定されない。
【0159】
第3ショック許容度は、変速比またはバンク角の増加に伴って増加するパラメータであってもよい。第3ショック許容度は、変速比またはバンク角の増加に伴って増加することに加えてまたは代わりに、別のパラメータと連動してもよい。第3ショック許容度は、第1ショック許容度および第2ショック許容度のように、アクセル開度およびアクセル開度微分値の組み合わせに基づき変化してもよいし、アクセル開度またはアクセル開度微分値に基づいて変化してもよい。第3ショック許容度は、加速状態などの走行状態または運転操作状態に基づいて、可変設定される値でもよい。走行状態または運転操作状態を示すパラメータは、例えば、アクセル開度、バンク角、車速、変速段、または車両の走行位置などであり得る。
【0160】
例えば走行駆動源を制御する制御状態に応じて、第3ショック許容度が設定されてもよい。例えば制御装置が、走行駆動源の出力の最大値が設定された通常制御と、通常制御時における最大値よりも大きい走行駆動源の出力の最大値が設定されたブースト制御とを選択的に実行するように構成されている場合、ブースト制御時に決定される第3ショック許容度は、通常制御時に決定される第3ショック許容度よりも大きくなるように決定されてもよい。この構成によれば、乗員が車体に生じるショックを許容できる状況にあると想定されるブースト制御時に、トルク変更時間を短くすることができる。
【0161】
また、例えば、上記実施形態では、第1ショック許容度および第2ショック許容度として、アクセル開度の増加に伴って増加し、アクセル開度微分値の増加に伴って増加するパラメータとして説明されたが、第1ショック許容度および第2ショック許容度はこれに限定されない。
【0162】
第1ショック許容度および第2ショック許容度の各ショック許容度は、アクセル開度およびアクセル開度微分値の少なくとも一方の増加に伴って増加するパラメータであってもよい。第1ショック許容度および第2ショック許容度の各ショック許容度は、アクセル開度およびアクセル開度微分値の少なくとも一方の増加に伴って増加することに加えてまたは代わりに、別のパラメータと連動してもよい。第1ショック許容度および第2ショック許容度の各ショック許容度は、加速状態以外の走行状態または運転操作状態に基づいて、可変設定される値でもよい。すなわち、第1ショック許容度および第2ショック許容度の各ショック許容度は、アクセル開度やアクセル開度微分値以外の走行状態または運転操作状態を示すパラメータに連動する値でもよい。走行状態または運転操作状態を示すパラメータは、例えば、アクセル開度、バンク角、車速、変速段、または車両の走行位置などであり得る。
【0163】
例えば、ハイブリッド車両が加速操作状態にあることを、アクセル開度とは別のパラメータ、例えば車速の変化で検出してもよく、第1ショック許容度および第2ショック許容度の各ショック許容度を、車速変化が大きいほど増加する値としてもよい。
【0164】
例えば、ハイブリッド車両が車体を傾けた状態で走行しているとき(例えばカーブした道を走行しているとき)、車体に生じるショックが低減されることが望ましい。このため、第1ショック許容度および第2ショック許容度の各ショック許容度を、バンク角の増加に伴って低減する値としてもよい。
【0165】
例えば、ハイブリッド車両の車速が大きいほど、車体に生じるショックが低減されることが望ましい。このため、第1ショック許容度および第2ショック許容度の各ショック許容度を、車速の増加に伴って低減する値としてもよい。
【0166】
例えば、第1ショック許容度および第2ショック許容度の各ショック許容度を、変速段に連動した値としてもよい。例えばハイブリッド車両の変速段が低速段および中速段(例えば1速から4速)では高速段(例えば5速や6速)と比べてショックが大きいため、低速段および中速段ではショックを抑えることが望ましい。このため、低速段および中速段のショック許容度を、高速段のショック許容度に比べて低減する値としてもよい。また、連続シフトアップまたは連続シフトダウン中のショック許容度を、連続シフトアップまたは連続シフトダウン中でないときのショック許容度に比べて増加する値としてもよい。
【0167】
第1ショック許容度、第2ショック許容度、および第3ショック許容度の各ショック許容度を、ハイブリッド車両の走行位置や走行路面の状態に応じて変化する値としてもよい。例えば、高速道路の走行中では、ハイブリッド車両の車体に生じるショックは抑えることが望ましい。このため、高速道路の走行中のショック許容度は、通常の道路走行中より低減してもよい。また、例えば、砂利道の走行中では、ハイブリッド車両の車体は、砂利の影響で振動した状態にあることから、スロットル開度の上昇やクラッチの係合によって車体にショックが生じても乗員は許容できると考えられる。このため、砂利道の走行中のショック許容度は、通常の道路走行中より増加してもよい。ハイブリッド車両の走行位置は、例えば車体に搭載したGPS装置などによって検出可能である。
【0168】
例えば車体に搭載した振動センサで、走行中の車体の振動度を検出し、第1ショック許容度、第2ショック許容度、および第3ショック許容度の各ショック許容度を、検出した振動度が大きいほど大きくなる値としてもよい。振動度は、例えば、車体の上下方向または左右方向の加速度から算出してもよいし、あるいは、フロントサスペンションおよびリヤサスペンションのストローク量から算出されてもよい。すなわち、振動センサは、加速度センサでもよいし、ストロークセンサでもよい。
【0169】
上記実施形態では、回転数同調制御を開始すると同時にクラッチ制御を開始させたが、回転数同調制御の開始タイミングとクラッチ制御の開始タイミングは異なってもよい。例えばエンジンの始動が完了した後、言い換えればエンジンが自力回転状態となった後に、まず回転数同調制御を開始し、回転数同調制御の実行途中に、クラッチ制御が開始してもよい。
【0170】
図3に示したEVモードからHEVモードへの切替制御の処理では、エンジン2が停止状態にあるときのEVモードからHEVモードに切り替える場合の切替制御の処理が説明されたが、EVモードからHEVモードへの切替は、エンジンが暖機のために低負荷で運転している状態で開始してもよい。この場合、図3におけるステップS2およびS3は省略され得る。
【0171】
また、上記実施形態において、回転数同調制御の実行中にクラッチの係合度が増加するようクラッチを制御しなくてもよい。また、上記実施形態では、第2ショック許容度に応じて半クラッチ時間を変更する制御と、第3ショック許容度に応じてトルク変更時間を変更する制御の双方を実行する態様が説明されたが、制御装置は、これらのうちの一方のみを実行するものであってもよい。この場合にも、状態変更要求を取得した時点から走行駆動源が出力するトルクを第2要求トルクに到達させるまでの時間を短くできる。
【0172】
例えば、車両の制御装置は、走行駆動源と、前記走行駆動源の駆動力を駆動輪に伝達するための伝達軸と、前記走行駆動源の駆動力を前記伝達軸に伝達するか否かを切り替えるクラッチと、を含む車両の制御装置であって、前記制御装置は、処理回路を備え、前記処理回路は、前記車両の車体に生じるショックに対する許容度を示すショック許容度を取得し、取得した前記ショック許容度が大きいほど、前記クラッチの係合度の増加を開始する時点から前記クラッチを結合状態にする時点までの時間である半クラッチ時間を短くするように構成される、車両の制御装置であってもよい。
【0173】
図14は、切替制御における各値の図4とは別の時間変化を示すグラフである。図14には、エンジン2および電動モータ3の各目標トルクを示すグラフ、エンジン2および電動モータ3の各回転数を示すグラフが、上から順に示されている。具体的には、図14は、ハイブリッド車両をEVモードで発進および走行させ、その後、走行モードを、EVモードからHEVモードに切り替える場合の各目標トルクおよび各回転数の時間変化が示されている。なお、図14では、HEVモードへの移行が完了した後、通常走行状態から発電走行状態に切り替わっている。また、図14のグラフにおいて、各目標トルクおよび各回転数は、各目標トルクおよび各回転数の伝達軸(変速機4の入力軸4a)における換算値である。
【0174】
図14に示す例では、回転数同調制御の実行中にクラッチの係合度を増加させる制御を実行していない。このため、図14において、クラッチ圧の時間的変化は省略している。例えば回転数同調制御が完了した後にクラッチの係合度を増加させる制御がなされ得る。また、第2ショック許容度に応じて半クラッチ時間を変更する制御も実行されていない。
【0175】
図14の一番上のグラフでは、過渡モード中、図4と同様に、テーリング制御によりモータ目標トルクおよびエンジン目標トルクを変化させる例が示されているが、上述したように、第3ショック許容度が所定値Bより大きいと判定された場合には、図14に矢印で示したように、エンジンの出力トルクはステップ状に変更するよう制御される。モータの出力トルクについても同様である。
【0176】
上記実施形態では、トルク変更制御が、走行駆動源の出力トルクを第1要求トルクから第2要求トルクに変化させる制御として説明されたが、トルク変更制御はこれに限定されない。トルク変更制御は、走行駆動源から駆動輪へと伝達される伝達トルクを、第1要求トルクから第2要求トルクへ変化させる制御であればよく、トルク変更要求も、走行駆動源から駆動輪へと伝達される伝達トルクを、第1要求トルクから第2要求トルクへ変更するための要求であればよい。例えば、走行駆動源の出力トルクが、クラッチおよび伝達軸をこの順に伝達されて駆動輪へ伝達される車両において、「走行駆動源から駆動輪へと伝達される伝達トルク」は、走行駆動源の出力トルクでなくてもよく、例えば半クラッチ状態のクラッチから伝達軸に伝達されるトルクであってもよい。すなわち、トルク変更制御は、走行駆動源を制御対象とする制御に限られず、クラッチを制御する、つまりクラッチを動作させるクラッチアクチュエータを制御することにより実行されてもよい。
【0177】
また、「走行駆動源から駆動輪へと伝達される伝達トルク」は、走行駆動源の出力トルクと、クラッチから伝達軸に伝達されるトルクの合計でもよいし、それらのいずれか一方でもよい。例えばハイブリッド車両において、「走行駆動源から駆動輪へと伝達される伝達トルク」は、伝達軸に伝達される合計のトルクでもよい。例えば伝達軸に伝達される合計のトルクは、走行駆動源である電動モータの出力トルクであって伝達軸に伝達されるトルクと、内燃エンジンと伝達軸との間に介在したクラッチから伝達軸に伝達されるトルクとの合計のトルクでもよい。
【0178】
ある伝達トルクを第1要求トルクから第2要求トルクへ変化させるトルク変更制御と、ある伝達トルクを第1要求トルクから第2要求トルクへ変化させるトルク変更制御とで、ショック許容度の算出方法、または、処理に用いる閾値を変えてもよい。例えば内燃エンジンの出力トルクまたはクラッチから伝達軸に伝達されるトルクを第1要求トルクから第2要求トルクへ変化させるトルク変更制御と、電動モータの出力トルクを第1要求トルクから第2要求トルクへ変化させるトルク変更制御とで、図11のステップT2の判定に使用する所定値Bが互いに異なってもよいし、ステップT4で決定されるトルク変化率が互いに異なってもよい。
【0179】
本明細書で開示する要素の機能は、開示された機能を実行するよう構成またはプログラムされた汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、従来の回路、または、それらの任意の組み合わせ、を含む回路または処理回路を使用して実行できる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路または回路と見なされる。本開示において、回路、ユニット、または手段は、列挙された機能を実行するハードウェアであるか、または、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されているハードウェアであってもよいし、あるいは、列挙された機能を実行するようにプログラムまたは構成されているその他の既知のハードウェアであってもよい。ハードウェアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、回路、手段、またはユニットはハードウェアとソフトウェアの組み合わせであり、ソフトウェアはハードウェアまたはプロセッサの構成に使用される。
【0180】
[開示項目]
以下の項目のそれぞれは、好ましい実施形態の開示である。
【0181】
[項目1]
駆動輪を駆動させるためのトルクを発生させる少なくとも1つの走行駆動源を含む車両の制御装置であって、
前記制御装置は、前記走行駆動源から前記駆動輪へと伝達される伝達トルクを、第1要求トルクから第2要求トルクへ変更するためのトルク変更要求を取得した場合に、前記伝達トルクを前記第1要求トルクから前記第2要求トルクに変化させるトルク変更制御を実行するように構成される処理回路を備え、
前記処理回路は、前記トルク変更要求を取得した場合に、
前記車両の車体に生じるショックに対する許容度を示すショック許容度を決定し、
決定した前記ショック許容度に応じて、前記伝達トルクが前記第1要求トルクから前記第2要求トルクに変化するのにかかる時間であるトルク変更時間が変化するように、前記トルク変更制御を実行するように構成される、車両の制御装置。
【0182】
前記構成によれば、車体に生じるショックに対する許容度を示すショック許容度を決定し、ショック許容度に応じてトルク変更時間を変化させる。このため、例えば乗員がトルクの変更に起因して車体に生じるショックを許容できないような状況では、トルク変更時間を長くして、車体に生じるショックを抑制できる。また、例えば乗員がトルクの変更に起因して車体に生じるショックを許容できるような状況では、トルク変更時間を短くすることができる。
【0183】
従って、駆動輪を駆動させるためのトルクの変更が乗員に違和感を与えることを抑制しつつ、トルクの変更にかかる時間を短くすることができる。
【0184】
[項目2]
前記トルク変更制御は、前記伝達トルクを前記第1要求トルクから前記第2要求トルクに徐々に変化させるテーリング制御を含み、
前記処理回路は、決定した前記ショック許容度が大きいほど、前記トルク変更時間が短くなるように、前記テーリング制御を実行するように構成される、項目1に記載の車両の制御装置。
【0185】
前記構成によれば、比較的ショック許容度が大きい場合にはテーリング制御にかかる時間を短縮できる。
【0186】
[項目3]
前記伝達トルクは、前記走行駆動源の出力トルクであり、
前記処理回路は、前記走行駆動源を制御することにより、前記トルク変更制御を実行するように構成される、項目1または2に記載の車両の制御装置。
【0187】
前記構成によれば、走行駆動源の出力トルクを変更する制御において、乗員に違和感を与えることを抑制しつつ、トルクの変更にかかる時間を短くすることができる。
【0188】
[項目4]
前記少なくとも1つの走行駆動源は、電動モータおよび内燃エンジンを含み、
前記電動モータの出力トルクとして要求される前記第1要求トルクおよび前記内燃エンジンの出力トルクとして要求される前記第1要求トルクは、それぞれ、前記電動モータおよび前記内燃エンジンの全体に要求されるトルクである合計要求トルクを、第1分配率で分配した値であり、
前記電動モータの出力トルクとして要求される前記第2要求トルクおよび前記内燃エンジンの出力トルクとして要求される前記第2要求トルクは、前記合計要求トルクを、前記第1分配率とは異なる第2分配率で分配した値であり、
前記トルク変更制御は、前記合計要求トルクの分配率を、前記第1分配率から前記第2分配率に変化させる制御である、項目1乃至3のいずれかに記載の車両の制御装置。
【0189】
前記構成によれば、電動モータおよび内燃エンジンに要求するトルクの分配率を変更する制御が行われるときに、駆動輪を駆動させるためのトルクの変更が乗員に違和感を与えることを抑制しつつ、トルクの変更にかかる時間を短くすることができる。
【0190】
[項目5]
前記トルク変更要求は、前記電動モータが発生させる動力で前記駆動輪を駆動する第1走行モードから、少なくとも前記内燃エンジンが発生させる動力で前記駆動輪を駆動する第2走行モードへ切り替えるためのモード切替要求であり、
前記第1分配率は、前記第1走行モードに対応した値であり、前記第2分配率は、第2走行モードに対応した値である、項目4に記載の車両の制御装置。
【0191】
この構成によれば、走行モードを切り替える制御が行われるときに、駆動輪を駆動させるためのトルクの変更が乗員に違和感を与えることを抑制しつつ、トルクの変更にかかる時間を短くすることができる。
【0192】
[項目6]
前記車両は、前記走行駆動源から出力される回転動力を変速して前記駆動輪に伝達する変速機を備え、
前記処理回路は、前記変速機の変速比を示す変速比情報を取得し、前記変速比情報に基づいて、前記ショック許容度を決定するように構成され、
前記変速機の変速比が設定変速比より大きい状態で前記処理回路により決定されるショック許容度は、前記変速機の変速比が設定変速比以下である状態で前記処理回路により決定されるショック許容度よりも小さい、項目1乃至5のいずれかに記載の車両の制御装置。
【0193】
変速機の変速比が大きい状態でトルクの変更に起因して車体に生じ得るショックは、変速比が小さい状態で生じ得るショックと比べて大きくなる可能性が高い。前記構成によれば、変速機の変速比が設定変速比より大きい状態で処理回路により決定されるショック許容度は、変速機の変速比が設定変速比以下である状態で処理回路により決定されるショック許容度よりも小さいため、変速比が比較的大きい場合に車体に生じ得るショックが抑制されるようにトルク変更時間を調整できる。なお、変速機は無段変速機でもよい。
【0194】
[項目7]
前記車両は、直立状態から車幅方向一方側に車体をバンクさせて旋回可能に構成されており、
前記処理回路は、前記車体のバンク角を示すバンク角情報を取得し、取得した前記バンク角情報が示すバンク角の増加に伴って低減するように前記ショック許容度を決定するように構成される、項目1乃至6のいずれかに記載の車両の制御装置。
【0195】
車体をバンクさせている状態では、車体に生じ得るショックは小さい方が望ましい。上記のように、ショック許容度をバンク角の増加に伴って低減する値とすることで、車体のバンク状態に適したトルク変更時間に調整できる。
【0196】
[項目8]
前記車両は、直立状態から車幅方向一方側に車体をバンクさせて旋回可能に構成されており、
前記車両は、前記走行駆動源から出力される回転動力を変速して前記駆動輪に伝達する変速機を備え、
前記処理回路は、
前記車体のバンク角を示すバンク角情報および前記変速機の変速比を示す変速比情報を取得し、
前記バンク角情報および前記変速比情報に基づいて、前記ショック許容度を決定するように構成される、項目1乃至7のいずれかに記載の車両の制御装置。
【0197】
この構成によれば、車体のバンク状態と変速機の変速比の双方に適したトルク変更時間に調整できる。
【0198】
[項目9]
前記車両は、運転者のシフト操作に応じた変速比で前記走行駆動源から出力される回転動力を変速して前記駆動輪に伝達する変速機を備え、
前記処理回路は、前記トルク変更制御の実行中に、運転者のシフト操作があったことを示すシフト操作情報を取得した場合、前記シフト操作情報を取得しなかった場合の前記トルク変更時間と比べて、前記トルク変更時間が短くなるように、前記トルク変更制御を実行するように構成される、項目1乃至8のいずれかに記載の車両の制御装置。
【0199】
この構成によれば、乗員が車体に生じるショックを許容できる状況にあると想定されるシフト操作時に、トルク変更時間を短くすることができる。
【0200】
[項目10]
前記処理回路は、前記走行駆動源の出力の最大値が設定された通常制御と、前記通常制御時における前記最大値よりも大きい前記走行駆動源の出力の最大値が設定されたブースト制御とを選択的に実行するように構成され、
前記ブースト制御時に前記処理回路により決定されるショック許容度は、前記通常制御時に前記処理回路により決定されるショック許容度よりも大きい、項目1乃至9のいずれかに記載の車両の制御装置。
【0201】
この構成によれば、乗員が車体に生じるショックを許容できる状況にあると想定されるブースト制御時に、トルク変更時間を短くすることができる。
【0202】
[項目11]
前記処理回路は、
決定した前記ショック許容度が所定値以下である場合に、前記トルク変更制御として、前記伝達トルクを前記第1要求トルクから前記第2要求トルクに徐々に変化させるテーリング制御を実行し、
決定した前記ショック許容度が所定値より大きい場合に、前記トルク変更制御として、前記伝達トルクを前記第1要求トルクから前記第2要求トルクにステップ状に変化させるステップ入力制御を実行するように構成される、項目1乃至10のいずれかに記載の車両の制御装置。
【0203】
この構成によれば、ショック許容度が所定値より大きい場合には伝達トルクを第1要求トルクから第2要求トルクにステップ状に変化させるため、トルクの変更にかかる時間をより短くすることができる。
【0204】
[項目12]
前記少なくとも1つの走行駆動源は、電動モータおよび内燃エンジンを含み、
前記車両は、前記電動モータの駆動力を前記駆動輪に伝達するための伝達軸と、前記内燃エンジンの駆動力を前記伝達軸に伝達するか否かを切り替えるクラッチと、を含み、
前記処理回路は、
前記電動モータが発生させる動力で前記駆動輪を駆動する第1走行モードから、少なくとも前記内燃エンジンが発生させる動力で前記駆動輪を駆動する第2走行モードに移行する場合に、前記エンジンの回転に伴う前記伝達軸の回転数を、前記電動モータの回転に伴う前記伝達軸の回転数に合わせるよう前記内燃エンジンを制御する回転数同調制御を実行し、
前記回転数同調制御の実行中に、前記内燃エンジンと前記伝達軸との間の動力伝達の度合いに対応する前記クラッチの係合度が増加するよう前記クラッチを制御するように構成される、項目1乃至11のいずれかに記載の車両の制御装置。
【0205】
この構成によれば、回転数同調制御の実行中に、クラッチの係合度が増加することで、エンジンの回転数を上昇させるように伝達軸の回転がエンジンに伝達される。これにより、スロットル開度などエンジンのみを制御してエンジンの回転数を上昇する場合に比べて、回転数同調制御にかかる時間を短くすることができる。その結果、第1走行モードから第2走行モードに移行するのに要する時間を短縮できる。
【0206】
[項目13]
車体と、
駆動輪と、
前記駆動輪を駆動させるためのトルクを発生させる少なくとも1つの走行駆動源と、
前記車体に固定された、項目1乃至12のいずれかに記載の車両の制御装置と、を備える、車両。
【0207】
[項目14]
駆動輪を駆動させるためのトルクを発生させる少なくとも1つの走行駆動源を含む車両を制御するための車両制御方法であって、
処理回路において、
前記走行駆動源から前記駆動輪へと伝達される伝達トルクが第1要求トルクである状態で前記車両が走行しているときに、前記伝達トルクを前記第1要求トルクから第2要求トルクへ変更することを含む前記車両の状態を変更するための状態変更要求を取得すること、
前記車両の車体に生じるショックに対する許容度を示すショック許容度を決定すること、
決定した前記ショック許容度に応じて、前記状態変更要求を取得した時点から前記伝達トルクを前記第2要求トルクに到達させるまでの時間が変化するように、前記車両の状態を変更すること、を含む、車両制御方法。
【0208】
例えば状態変更要求は、電動モータが発生させる動力で前記駆動輪を駆動する第1走行モードから、少なくとも前記内燃エンジンが発生させる動力で前記駆動輪を駆動する第2走行モードに切り替えるためのモード切替要求であり得る。
【0209】
例えば、処理回路において、モード切替要求を取得した場合に、取得した前記ショック許容度が大きいほど、前記クラッチの係合度の増加を開始する時点から前記クラッチを結合状態にする時点までの時間である半クラッチ時間を短くすることにより、モード切替要求を取得した時点から伝達トルクを第2要求トルクに到達させるまでの時間を短くしてもよい。例えば処理回路において、モード切替要求を取得した場合に、取得した前記ショック許容度が大きいほど、伝達トルクが第1要求トルクから第2要求トルクに変化するのにかかる時間であるトルク変更時間を短くすることにより、モード切替要求を取得した時点から伝達トルクを第2要求トルクに到達させるまでの時間を短くしてもよい。半クラッチ時間とトルク変更時間の一方のみを短くしてもよいし、双方を短くしてもよい。
【符号の説明】
【0210】
1 :車両
2 :エンジン
3 :電動モータ
4 :変速機
5 :クラッチ
6 :クラッチアクチュエータ
8 :駆動輪
20 :制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14