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特開2024-92265口栓、口栓付きパウチの製造方法、及び口栓付きパウチ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092265
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】口栓、口栓付きパウチの製造方法、及び口栓付きパウチ
(51)【国際特許分類】
   B65D 33/38 20060101AFI20240701BHJP
   B65B 51/10 20060101ALI20240701BHJP
   B31B 50/84 20170101ALI20240701BHJP
【FI】
B65D33/38 ZAB
B65B51/10 300
B31B50/84
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208068
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 倫寿
(72)【発明者】
【氏名】原田 拓治
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 拓実
【テーマコード(参考)】
3E064
3E075
3E094
【Fターム(参考)】
3E064AB26
3E064BA17
3E064BA24
3E064BB03
3E064BC04
3E064BC08
3E064BC18
3E064FA04
3E064HN05
3E064HN65
3E064HS04
3E075AA09
3E075BA47
3E075DD11
3E075DE03
3E075GA05
3E094AA12
3E094BA01
3E094CA02
3E094DA06
3E094FA21
3E094HA08
(57)【要約】
【課題】樹脂溜まりの発生を抑制しつつパウチのフィルムが破断するのを抑制する。
【解決手段】パウチに用いられる樹脂製の口栓10は、第一方向D1に延びる流路11と、第一方向D1に延びて流路11の一部を形成する注出部12と、第一方向D1に延びて流路11の他の一部を形成する溶着部13と、を備え、溶着部13は、基部17と、基部17から凹む溝18と、基部17から突出するリブ19と、を有する。そして、この口栓10の溶着部13を非シール部42において第一胴フィルム4Aと第二胴フィルム4Bとの間に配置し、第一胴フィルム4A及び第二胴フィルム4Bを介して加熱したシールバー50を溶着部13に押し付けることで、第一胴フィルム4A及び第二胴フィルム4Bを溶着部13に溶着する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パウチに用いられる樹脂製の口栓であって、
第一方向に延びる流路と、
前記第一方向に延びて前記流路の一部を形成する注出部と、
前記第一方向に延びて前記流路の他の一部を形成する溶着部と、を備え、
前記溶着部は、基部と、前記基部から凹む溝と、前記基部から突出するリブと、を有する、
口栓。
【請求項2】
前記溶着部は、前記溶着部の最も前記注出部側の領域に前記基部を有する、
請求項1に記載の口栓。
【請求項3】
前記溶着部は、前記第一方向に配列された複数の前記溝を有し、
最も前記注出部側に位置する前記溝を上溝とした場合、前記溶着部は、前記上溝よりも前記注出部側の領域に前記基部を有する、
請求項1に記載の口栓。
【請求項4】
前記溶着部は、前記第一方向に配列された複数の前記溝を有し、
最も前記注出部側に位置する前記溝を上溝とした場合、前記溶着部は、前記上溝よりも前記注出部とは反対側の領域にのみ前記リブを有する、
請求項1に記載の口栓。
【請求項5】
前記溶着部は、前記第一方向に配列された複数の前記溝を有し、
前記溶着部は、前記第一方向に隣り合う前記溝の間の領域に前記リブを有する、
請求項1に記載の口栓。
【請求項6】
前記溶着部は、前記第一方向に複数の前記溝を有し、
最も前記注出部とは反対側に位置する前記溝を下溝とした場合、前記溶着部は、前記下溝よりも前記注出部とは反対側の領域に前記リブを有する、
請求項1に記載の口栓。
【請求項7】
前記口栓は、高密度ポリエチレンを含む、
請求項1に記載の口栓。
【請求項8】
一対の樹脂製のフィルムが互いに溶着されているシール部と前記一対のフィルムが互いに溶着されていない非シール部とを有するパウチ中間体と、請求項1~7の何れか一項に記載の口栓と、を用意する用意工程と、
前記口栓の前記溶着部を前記非シール部において前記一対のフィルムの間に配置し、前記一対のフィルムを介して加熱体を前記溶着部に押し付けることで、前記一対のフィルムを前記溶着部に溶着するシール工程と、を備える、
口栓付きパウチの製造方法。
【請求項9】
前記シール工程では、前記一対のフィルムを介して前記加熱体を前記溶着部に押し付ける前に、前記加熱体を前記溶着部に押し付けて前記溶着部を予熱する、
請求項8に記載の口栓付きパウチの製造方法。
【請求項10】
一対の樹脂製のフィルムを有するパウチ本体と、
前記一対のフィルムの間に配置された状態で前記一対のフィルムに溶着された樹脂製の口栓と、を備え、
前記口栓は、
第一方向に延びる流路と、
前記第一方向に延びて前記流路の一部を形成する注出部と、
前記第一方向に延びて前記流路の他の一部を形成し、基部と、前記基部から凹む溝と、前記一対のフィルムに溶着するために溶融されて再硬化した再硬化部と、を有する溶着部と、を備え、
前記再硬化部の一部は、前記溝に入り込んでいる、
口栓付きパウチ。
【請求項11】
前記溶着部は、前記溶着部の最も前記注出部側の領域に前記基部を有し、
最も前記注出部側の前記基部を上基部とした場合、一対のフィルムは、前記上基部に溶着されている、
請求項10に記載の口栓付きパウチ。
【請求項12】
前記溶着部は、前記第一方向に配列された複数の前記溝を有し、
最も前記注出部側に位置する前記溝を上溝とした場合、
前記一対のフィルムの先端は、前記上溝よりも前記注出部側に位置しており、
前記一対のフィルムは、前記上溝よりも前記注出部側の領域において前記溶着部に溶着されている、
請求項10に記載の口栓付きパウチ。
【請求項13】
前記再硬化部は、前記注出部側及び前記注出部とは反対側から前記溝に入り込んでおり、
前記溝に入り込んでいる前記再硬化部の前記第一方向における長さは、前記溝の前記第一方向における長さの30%以上80%以下である、
請求項10に記載の口栓付きパウチ。
【請求項14】
前記再硬化部は、前記注出部側及び前記注出部とは反対側から前記溝に入り込んでおり、
最も前記注出部側に位置する前記溝を上溝とした場合、前記注出部側から前記上溝に入り込んでいる前記再硬化部の量は、前記注出部とは反対側から前記上溝に入り込んでいる前記再硬化部の量よりも少ない、
請求項10に記載の口栓付きパウチ。
【請求項15】
最も前記注出部側に位置する前記溝を上溝とした場合、前記注出部とは反対側から前記上溝に入り込んでいる前記再硬化部の前記第一方向における長さは、前記上溝の前記第一方向における長さの5%以上50%以下である、
請求項10に記載の口栓付きパウチ。
【請求項16】
前記一対のフィルムのそれぞれは、前記溶着部と溶着されるシーラント層を有し、
前記シーラント層は、低密度ポリエチレン又は直鎖状低密度ポリエチレンを含み、
前記口栓は、高密度ポリエチレンを含む、
請求項10に記載の口栓付きパウチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パウチに用いられる樹脂製の口栓、当該口栓を備えた口栓付きパウチの製造方法、及び当該口栓を備えた口栓付きパウチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体等の内容物を収容する容器として、一対の樹脂製のフィルムに樹脂製の口栓が溶着された口栓付きパウチが用いられている。口栓付きパウチを製造する際は、フィルムを介してシールバー(加熱体)を溶着部に押し付けることで、フィルムを溶着部に溶着する。このとき、フィルム及び溶着部が溶融されて再硬化した再硬化部が、溶着部の表面から突出した樹脂溜まりとなることがある。特許文献1には、口栓(スパウト)の溶着部(取付部)に溝(肉抜き部)を形成し、溶着時に再硬化部を溝に収めることで、外部から視認可能な位置に再硬化部がはみ出すことを抑制する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6896353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、溶着部にフィルムを溶着する際は、まず、シールバーを直接溶着部に押し付けることで溶着部を予熱(プレヒート)し、その後、フィルムを介してシールバーを溶着部に押し付けることで溶着部にフィルムを溶着(ヒートシール)する。しかしながら、フィルムを介してシールバーを溶着部に押し付ける際に、溶着部が過加熱されたり溶着部の蓄熱量が過大になったりすると、溶着部にフィルムを溶着することはできるものの、溶着部からフィルムへの伝熱が過大となってフィルムが破断しやすくなる。
【0005】
特許文献1に記載された口栓は、フィルムと溶着される溶着部の表面が平坦面となっているため、シールバーを溶着部に押し付けると、溝を除く溶着部の全面にシールバーが押し付けられる。このため、溶着部を溶融させるためには、シールバーの加熱温度を高くするとともに、溶着部にシールバーを押し付ける時間を長くする必要がある。その結果、溶着部の蓄熱量が過大となってフィルムが破断しやすくなるという問題がある。特に、近年は、リサイクル性を向上するために包装資材のモノマテリアル化(単一素材化)が取り組まれているが、ポリエチレンでモノマテリアル化したフィルムをパウチのフィルムとして用いると、このような問題が更に発生しやすくなる。
【0006】
そこで、本発明は、樹脂溜まりの発生を抑制しつつパウチのフィルムが破断するのを抑制することができる口栓、口栓付きパウチの製造方法、及び口栓付きパウチを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1] 本発明に係る口栓は、パウチに用いられる樹脂製の口栓であって、第一方向に延びる流路と、第一方向に延びて流路の一部を形成する注出部と、第一方向に延びて流路の他の一部を形成する溶着部と、を備え、溶着部は、基部と、基部から凹む溝と、基部から突出するリブと、を有する。
【0008】
この口栓では、溶着部にフィルムを溶着するためにフィルムを介して加熱体を溶着部に押し付けると、溶着部及びフィルムが溶融し、溶融樹脂が基部の表面に沿って流れて行く。しかしながら、この口栓では、溶着部が基部から凹む溝を有するため、溶融樹脂の一部を溝に入り込ませることができる。このため、溶着部の表面から突出する樹脂溜まりが発生するのを抑制することができる。これにより、外観の悪化を抑制することができるとともに、フィルムが樹脂溜まりと加熱体とに挟まれることにより破断するのを抑制することができる。しかも、この口栓では、溶着部が基部から突出するリブを有するため、加熱体を溶着部に押し付けると、加熱体は基部よりも先にリブに押し付けられ、基部よりも先にリブが溶融される。このため、リブを有しない場合に比べて、加熱体の加熱温度を低くするとともに、加熱体を溶着部に押し付ける時間を短くすることができる。これにより、溶着部の蓄熱量を低減させることができるため、溶着部及びフィルムが過度に溶融されるのを抑制することができる。その結果、溶融樹脂の溝への入り込みと相まって、溶着部の表面から突出する樹脂溜まりが発生するのを抑制することができるとともに、フィルムが破断するのを抑制することができる。
【0009】
[2] [1]に記載の口栓において、溶着部は、溶着部の最も注出部側の領域に基部を有してもよい。この口栓では、溶着部が溶着部の最も注出部側の領域に基部を有することで、フィルムの注出部側の先端又は先端近傍までフィルムを溶着部に溶着することができる。このため、溶着部が当該領域に基部を有しない場合に比べて、フィルムの注出部側の先端が遊ぶ(自由になる)ことによる外観の悪化を抑制することができるとともに、注出部側からフィルムが剥離するきっかけとなるのを抑制することができる。
【0010】
[3] [1]又は[2]に記載の口栓において、溶着部は、第一方向に配列された複数の溝を有し、最も注出部側に位置する溝を上溝とした場合、溶着部は、上溝よりも注出部側の領域に基部を有してもよい。この口栓では、溶着部が上溝よりも注出部側の領域に基部を有することで、フィルムの注出部側の先端又は先端近傍までフィルムを溶着部に溶着することができる。このため、溶着部が当該領域に基部を有しない場合に比べて、フィルムの注出部側の先端が遊ぶ(自由になる)ことによる外観の悪化を抑制することができるとともに、注出部側からフィルムが剥離するきっかけとなるのを抑制することができる。
【0011】
[4] [1]~[3]の何れか一つに記載の口栓において、溶着部は、第一方向に配列された複数の溝を有し、最も注出部側に位置する溝を上溝とした場合、溶着部は、上溝よりも注出部とは反対側の領域にのみリブを有してもよい。上溝よりも注出部側の領域にリブが形成されていると、溶着条件や口栓の向きによっては、当該リブの溶融樹脂が上溝に入り込まずに注出部側に流れて行き、当該領域に当該リブ由来の樹脂溜まりが形成される可能性がある。また、上溝よりも注出部側の領域にリブが形成されていると、上溝に入り込んだ溶融樹脂からフィルムへの伝熱により、フィルムの注出部側の先端部の溶融が促進され、フィルムの注出部側の先端部が上溝に入り込む可能性がある。しかしながら、この口栓では、上溝よりも注出部側の領域にリブが形成されていないため、溶着部の溶融樹脂が上溝を超えて注出部側に流れて行くのを抑制することができるため、当該領域に当該リブ由来の樹脂溜まりが形成されるのを抑制することができる。また、上溝に入り込んだ溶融樹脂からフィルムへの伝熱を抑制することができるため、フィルムの注出部側の先端部が上溝に入り込むことを抑制することができる。
【0012】
[5] [1]~[4]の何れか一つに記載の口栓において、溶着部は、第一方向に配列された複数の溝を有し、溶着部は、第一方向に隣り合う溝の間の領域にリブを有してもよい。この口栓では、溶着部が第一方向に隣り合う溝の間の領域にリブを有することで、溶着部に対するフィルムの溶着強度を高めることができる。
【0013】
[6] [1]~[5]の何れか一つに記載の口栓において、溶着部は、第一方向に複数の溝を有し、最も注出部とは反対側に位置する溝を下溝とした場合、溶着部は、下溝よりも注出部とは反対側の領域にリブを有してもよい。この口栓では、溶着部が下溝よりも注出部とは反対側の領域にリブを有することで、当該領域にリブを有しない場合に比べて、当該領域におけるフィルムの溶着強度を高めることができる。これにより、注出部とは反対側からフィルムが剥離するのを抑制することができる。
【0014】
[7] [1]~[6]の何れか一つに記載の口栓において、口栓は、高密度ポリエチレンを含んでもよい。この口栓では、口栓が高密度ポリエチレンを含むことで、リサイクルをしやすい。
【0015】
[8] 本発明に係る口栓付きパウチの製造方法は、一対の樹脂製のフィルムが互いに溶着されているシール部と一対のフィルムが互いに溶着されていない非シール部とを有するパウチ中間体と、[1]~[7]の何れか一つに記載の口栓と、を用意する用意工程と、口栓の溶着部を非シール部において一対のフィルムの間に配置し、一対のフィルムを介して加熱体を溶着部に押し付けることで、一対のフィルムを溶着部に溶着するシール工程と、を備える。
【0016】
この口栓付きパウチの製造方法では、上述した何れかの口栓の溶着部を非シール部において一対のフィルムの間に配置し、一対のフィルムを介して加熱体を溶着部に押し付けることで、一対のフィルムを溶着部に溶着するため、樹脂溜まりの発生を抑制しつつパウチのフィルムが破断するのを抑制することができる。
【0017】
[9] [8]に記載の口栓付きパウチの製造方法において、シール工程では、加熱体を溶着部に押し付けた後、一対のフィルムを介して加熱体を溶着部に押し付ける前に、加熱体を溶着部に押し付けて溶着部を予熱してもよい。この口栓付きパウチの製造方法では、一対のフィルムを介して加熱体を溶着部に押し付ける前に加熱体を溶着部に押し付けて溶着体を予熱することで、一対のフィルムを介して溶着部に押し付ける加熱体の加熱温度を低くするとともに、一対のフィルムを介して加熱体を溶着部に押し付ける時間を短くすることができる。これにより、加熱体からフィルムへの伝熱量を低下させることができるため、フィルムが破断するのを抑制することができる。
【0018】
[10] 本発明に係る口栓付きパウチは、一対の樹脂製のフィルムを有するパウチ本体と、一対のフィルムの間に配置された状態で一対のフィルムに溶着された樹脂製の口栓と、を備え、口栓は、第一方向に延びる流路と、第一方向に延びて流路の一部を形成する注出部と、第一方向に延びて流路の他の一部を形成し、基部と、基部から凹む溝と、一対のフィルムに溶着するために溶融されて再硬化した再硬化部と、を有する溶着部と、を備え、再硬化部の一部は、溝に入り込んでいる。
【0019】
この口栓付きパウチでは、再硬化部の一部が溝に入り込んでいるため、口栓付きパウチの製造時に溶着部の溶融樹脂が溝に入り込むことで樹脂溜まりの発生が抑制されたものとすることができる。これにより、一対のフィルムが樹脂溜まりと接触して局部的に薄くなるのを抑制されたものとすることができるため、フィルムの破断が抑制されたものとすることができる。
【0020】
[11] [10]に記載の口栓付きパウチにおいて、溶着部は、溶着部の最も注出部側の領域に基部を有し、最も注出部側の基部を上基部とした場合、一対のフィルムは、上基部に溶着されていてもよい。この口栓付きパウチでは、一対のフィルムが上基部に溶着されていることで、一対のフィルムの注出部側の先端又は先端近傍まで一対のフィルムを溶着部に溶着することができる。このため、一対のフィルムが上基部に溶着されていない場合に比べて、一対のフィルムの注出部側の先端が遊ぶ(自由になる)ことによる外観の悪化を抑制することができるとともに、注出部側から一対のフィルムが剥離するきっかけとなるのを抑制することができる。
【0021】
[12] [10]又は[11]に記載の口栓付きパウチにおいて、溶着部は、第一方向に配列された複数の溝を有し、最も注出部側に位置する溝を上溝とした場合、一対のフィルムの先端は、上溝よりも注出部側に位置しており、一対のフィルムは、上溝よりも注出部側の領域において溶着部に溶着されていてもよい。この口栓付きパウチでは、一対のフィルムの先端が上溝よりも注出部側に位置して、一対のフィルムが上溝よりも注出部側の領域において溶着部に溶着されていることで、一対のフィルムの注出部側の先端又は先端近傍まで一対のフィルムを溶着部に溶着することができる。このため、一対のフィルムが当該領域において溶着部に溶着されていない場合に比べて、一対のフィルムの注出部側の先端が遊ぶ(自由になる)ことによる外観の悪化を抑制することができるとともに、注出部側から一対のフィルムが剥離するきっかけとなるのを抑制することができる。
【0022】
[13] [10]~[12]の何れか一つに記載の口栓付きパウチにおいて、再硬化部は、注出部側及び注出部とは反対側から溝に入り込んでおり、溝に入り込んでいる再硬化部の第一方向における長さは、溝の第一方向における長さの30%以上80%以下であってもよい。この口栓付きパウチでは、溝に入り込んでいる再硬化部の第一方向における長さが、溝の第一方向における長さの30%以上80%以下であることで、一対のフィルムが溶着部に適切に溶着されているものとすることができるとともに、一対のフィルムの溶融樹脂が適度に溝に入り込んでいるものとすることができる。これにより、樹脂溜まりの発生が抑制されてフィルムの破断が抑制されたものとすることができる。
【0023】
[14] [10]~[13]の何れか一つに記載の口栓付きパウチにおいて、再硬化部は、注出部側及び注出部とは反対側から溝に入り込んでおり、最も注出部側に位置する溝を上溝とした場合、注出部側から上溝に入り込んでいる再硬化部の量は、注出部とは反対側から上溝に入り込んでいる再硬化部の量よりも少なくてもよい。この口栓付きパウチでは、注出部側から上溝に入り込んでいる再硬化部の量が、注出部とは反対側から上溝に入り込んでいる再硬化部の量よりも少ないことで、上溝の注出部側では、上溝の注出部とは反対側よりも溶着部が溶融されなかったものとすることができる。これにより、上溝の注出部側において樹脂溜まりの発生が抑制されたものとすることができるため、フィルムの破断が抑制されたものとすることができる。また、上溝に入り込んだ溶融樹脂から一対のフィルムへの伝熱が抑制されて、一対のフィルムの注出部側の先端部が上溝に入り込むことが抑制されたものとすることができる。
【0024】
[15] [10]~[14]の何れか一つに記載の口栓付きパウチにおいて、最も注出部側に位置する溝を上溝とした場合、注出部とは反対側から上溝に入り込んでいる再硬化部の第一方向における長さは、上溝の第一方向における長さの5%以上50%以下であってもよい。この口栓付きパウチでは、注出部とは反対側から上溝に入り込んでいる再硬化部の第一方向における長さが、上溝の第一方向における長さの5%以上50%以下であることで、上溝の注出部側において一対のフィルムが溶着部に適切に溶着されているものとすることができるとともに、上溝の注出部側での溶着部の過度な溶融による樹脂溜まりの発生が抑制されたものとすることができる。また、上溝に入り込んだ溶融樹脂から一対のフィルムへの伝熱が抑制されて、一対のフィルムの注出部側の先端部が上溝に入り込むことが抑制されたものとすることができる。
【0025】
[16] [10]~[15]の何れか一つに記載の口栓付きパウチにおいて、一対のフィルムのそれぞれは、溶着部と溶着されるシーラント層を有し、シーラント層は、低密度ポリエチレン又は直鎖状低密度ポリエチレンを含み、口栓は、高密度ポリエチレンを含んでもよい。この口栓付きパウチでは、シーラント層が低密度ポリエチレン又は直鎖状低密度ポリエチレンを含み、口栓が高密度ポリエチレンを含むことで、包装容器全体としてポリエチレンを主材料とすることができる。このため、リサイクルしやすい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、樹脂溜まりの発生を抑制しつつパウチのフィルムが破断するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施形態に係る口栓付きパウチを示す正面図である。
図2図1に示すII-II線における模式断面図である。
図3】実施形態に係る口栓を示す斜視図である。
図4】実施形態に係る口栓を示す正面図である。
図5】実施形態に係る口栓を示す側面図である。
図6】実施形態に係る口栓を示す底面図である。
図7図4に示すVII-VII線における断面図である。
図8】実施形態に係る口栓の一部を示す断面図である。
図9】用意工程で用意するパウチ中間体を示す正面図である。
図10】シールバーを溶着部に押し付けて溶着部を予熱している状態を示す断面図である。
図11】溶着部を予熱した状態を示す模式断面図である。
図12】溝付近を拡大した断面図である。
図13】胴フィルムを介してシールバーを溶着部に押し付けて溶着部に胴フィルムを溶着している状態を示す断面図である。
図14】口栓付きパウチの一部を拡大した断面図である。
図15】溝付近を拡大した断面図である。
図16】参考例1の口栓の溶着部に胴フィルムを溶着している状態を示す断面図である。
図17】参考例2の口栓の溶着部に胴フィルムを溶着している状態を示す断面図である。
図18】実施例1、実施例2、及び比較例1の評価結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0029】
(口栓付きパウチ)
図1は、実施形態に係る口栓付きパウチを示す正面図である。図1に示す口栓付きパウチ1は、詰め替え用ボトル等の容器(不図示)に対する内容物の詰め替えや、飲料用包装、化粧品用包装等に用いられる。図2は、図1に示すII-II線における断面図である。図1及び図2に示すように、実施形態に係る口栓付きパウチ1は、パウチ本体2と、樹脂製の口栓3と、を備える。パウチ本体2は、互いに対向された樹脂製の一対のフィルムである第一胴フィルム4A及び第二胴フィルム4Bと、第一胴フィルム4Aと第二胴フィルム4Bとの間に折り込まれた樹脂製の折込フィルム5と、を備える。なお、パウチ本体2は、折込フィルム5を備えないものであってもよく、更に他のフィルムを備えるものであってもよい。
【0030】
そして、口栓付きパウチ1の内部に内容物を収容するための収容領域6を形成するように、第一胴フィルム4Aと第二胴フィルム4Bとが、その外縁部において互いにヒートシール(溶着)されているとともに、第一胴フィルム4A及び第二胴フィルム4Bと折込フィルム5とが、その外縁部において互いにヒートシールされている。また、第一胴フィルム4Aと第二胴フィルム4Bとの間に口栓3が配置されて、第一胴フィルム4Aの外縁部及び第二胴フィルム4Bの外縁部と口栓3とが、互いにヒートシールされている。なお、第一胴フィルム4Aと第二胴フィルム4Bとは、互いに同じ形状、構造等を有して口栓3とヒートシールされているため、以下では、特に分けて説明する場合を除き、第一胴フィルム4A及び第二胴フィルム4Bを胴フィルム4として纏めて説明する。
【0031】
胴フィルム4は、基材層7と、シーラント層8と、が積層された積層シートにより形成されている。
【0032】
基材層7は、胴フィルム4に所定の剛性を与えるとともに、気体及び液体の通過を阻止するバリア性を有する。基材層7の素材は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、又はポリプロピレン)、又はポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)とすることができる。超低密度ポリエチレンの密度は、0.900g/cm未満である。低密度ポリエチレンの密度は、0.900g/cm以上0.925g/cm未満である。直鎖状低密度ポリエチレンの密度は、0.900g/cm以上0.925g/cm未満である。中密度ポリエチレンの密度は、0.925g/cm以上0.945g/cm未満である。高密度ポリエチレンの密度は、0.945g/cm以上、又は0.945g/cm以上0.980g/cm以下である。
【0033】
シーラント層8は、熱により溶融して他の部材に溶着可能な層である。つまり、シーラント層8は、ヒートシール可能な層である。シーラント層8の素材は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、ポリプロピレン、又はアイオノマーポリエチレン)、エチレン-アクリル共重合体、エチレングリコール-メタクリル酸共重合体、又はエチレン-酢酸ビニル共重合体とすることができる。
【0034】
胴フィルム4を構成する積層シートは、基材層7及びシーラント層8以外の層を備えていてもよい。例えば、胴フィルム4を構成する積層シートは、基材層7とシーラント層8との間に配置されるバリア層(ガスバリア層)を備えていてもよい。バリア層は、酸素や水蒸気を遮断する。バリア層は、単層構造でも積層構造でもよい。単層構造の場合、ガスバリア性接着剤を用いることができる。積層構造の場合、基材層とガスバリア層とを有してよく、各層に隣り合ってシーラント層もしくは接着層を有してもよい。バリア層は、コート層であってもよいし、蒸着膜であってもよい。蒸着膜は、AlOやSiOなどの無機化合物を基材上に直接または間接に蒸着させた膜である。
【0035】
口栓付きパウチ1の収容領域6に収容される内容物は、特に限定されるものではないが、液体であることが好ましい。内容物としては、例えば、液体洗剤、洗浄剤、薬品、化粧品、シャンプー、リンス等の日用品、液体調味料、スープ、ヨーグルト、清涼飲料、食用油等の食品、及び潤滑油、工業用油等の工業製品が挙げられる。なお、口栓付きパウチ1は、収容領域6に内容物が収容された内容物入り口栓付きパウチであってもよい。
【0036】
口栓3は、胴フィルム4に溶着された樹脂製の部材である。口栓3の素材は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリマー組成物から構成されていてもよく、中でもポリオレフィン(例えば、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン)から構成されていることが好ましく、さらには成形のしやすさの観点から高密度ポリエチレンから構成されていることが好ましい。口栓3を構成する樹脂の密度は、特に限定されるものではないが、例えば、0.850g/cm以上0.980g/cm以下、0.930g/cm以上0.980g/cm以下、又は0.945g/cm以上0.980g/cm以下であってもよい。また、口栓3のメルトフローレート(MFR)は、特に限定されるものではないが、例えば、1.0g/10min以上30g/10min以下、又は1.0g/10min以上10g/10min以下であってもよい。
【0037】
口栓3は、パウチ本体2に収容された内容物を流通させるための流路31と、パウチ本体2の外側に配置されて流路31の一部を形成する注出部32と、胴フィルム4に溶着されて流路31の他の一部を形成する溶着部33と、注出部32と溶着部33との間に位置するフランジ部34と、を有する。なお、口栓3の詳細については、後述する。
【0038】
(口栓)
次に、実施形態に係る口栓について説明する。図3は、実施形態に係る口栓を示す斜視図である。図4は、実施形態に係る口栓を示す正面図である。図5は、実施形態に係る口栓を示す側面図である。図6は、実施形態に係る口栓を示す底面図である。図7は、図4に示すVII-VII線における断面図である。図3図7に示すように、実施形態に係る口栓10は、図1及び図2に示す口栓付きパウチ1の口栓3となる口栓である。つまり、図3図7に示す口栓10は、胴フィルム4にヒートシールすることで、図1及び図2に示す口栓付きパウチ1の口栓3となる。このため、口栓10の素材、口栓10を構成する樹脂の密度、及び口栓3のメルトフローレート等は、口栓付きパウチ1の口栓3と同様とすることができる。なお、口栓は、スパウト等とも呼ばれる。
【0039】
口栓10は、流路11と、注出部12と、溶着部13と、フランジ部14と、を備える。
【0040】
流路11は、口栓付きパウチ1の収容領域6に収容された内容物を流通するために、第一方向D1に延びて口栓10を貫通している。つまり、流路11は、注出部12、溶着部13、及びフランジ部14の内周面により区画される穴であって、口栓10を第一方向D1に貫通する貫通穴である。
【0041】
注出部12は、口栓付きパウチ1のパウチ本体2の外側に配置されて、口栓付きパウチ1の収容領域6に収容された内容物を注出するための部位である。注出部12は、第一方向D1に延びて、流路11の一部を形成する。注出部12は、円筒状に形成されている。注出部12の内周面には、流路11が形成されており、注出部12の外周面には、キャップ(不図示)を着脱可能に取り付けるためのねじ部12aが形成されている。キャップは、流路11を開閉可能に閉じる部材である。
【0042】
溶着部13は、胴フィルム4に溶着される部位である。つまり、溶着部13は、第一胴フィルム4Aと第二胴フィルム4Bとの間に配置されて、第一胴フィルム4A及び第二胴フィルム4Bに溶着される部位である。溶着部13は、第一方向D1に延びて、流路11の他の一部を形成する。溶着部13の注出部12とは反対側の先端を、溶着部下端13aという。
【0043】
フランジ部14は、注出部12と溶着部13との間に位置するフランジ状の部位である。フランジ部14は、口栓付きパウチ1のパウチ本体2の外側に配置されて、第一方向D1と直交する方向に延びている。フランジ部14は、例えば、胴フィルム4に対する溶着部13の位置決めに利用される。なお、本実施形態では、フランジ部14は、1つのみ設けられているが、第一方向D1に複数設けられていてもよい。
【0044】
溶着部13は、第一胴フィルム4Aに溶着される第一側壁部16Aと、第二胴フィルム4Bに溶着される第二側壁部16Bと、を有する。溶着部13は、第一方向D1と直交する断面が略菱形形状となっている。つまり、溶着部13は、第一方向D1と直交する第二方向D2よりも、第一方向D1及び第二方向D2と直交する第三方向D3の方が長くなっている。そして、第一側壁部16Aと第二側壁部16Bとは、第二方向D2に対向するように位置して、第三方向D3における両端において互いに鋭角となるように接続されている。なお、第一側壁部16Aと第二側壁部16Bとは、互いに同じ形状、構造等を有しているため、以下では、特に分けて説明する場合を除き、第一側壁部16A及び第二側壁部16Bを側壁部16として纏めて説明する。
【0045】
図8は、実施形態に係る口栓の一部を示す断面図である。図3図8に示すように、溶着部13の側壁部16は、基部17と、複数の溝18と、複数のリブ19と、を有する。
【0046】
基部17は、側壁部16の本体を成す部位である。基部17は、平坦な表面を有している。基部17の表面は、側壁部16と略同一となっている。つまり、基部17は、第一方向D1と直交する断面が略菱形形状となっており、第二方向D2よりも第三方向D3の方が長くなっている。そして、第一側壁部16Aの基部17と第二側壁部16Bの基部17とは、第二方向D2に対向するように位置して、第三方向D3における両端において互いに鋭角となるように接続されている。
【0047】
複数の溝18は、基部から凹む部位である。複数の溝18は、第一方向D1に配列されている。複数の溝18のそれぞれは、基部17の表面において第一方向D1と垂直な方向に延びている。複数の溝18のそれぞれは、基部17の第三方向D3における一方側の先端の近傍から他方側の先端の近傍まで延びており、基部17の第三方向D3における両端部には形成されていない。第一方向D1に配列される溝18の数は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、第一側壁部16A及び第二側壁部16Bのそれぞれに、3つの溝18が第一方向D1に配列(形成)されており、各列の溝18が第三方向D3に4つに分割されている。なお、本実施形態では、複数の溝18のそれぞれは、複数に分割されているが、複数に分割されていなくてもよい。また、複数の溝18のそれぞれは、第二方向D2から見て第三方向D3に延びる直線状に形成されているが、第二方向D2から見て波形状、折線形状、ネジのように一方向に傾斜する直線状等に形成されていてもよい。
【0048】
複数の溝18のうち、最も注出部12側に位置する溝18を、上溝18aという。複数の溝18のうち、最も注出部12とは反対側に位置する溝を、下溝18bという。
【0049】
上溝18aは、フランジ部14から離間しており、上溝18aとフランジ部14との間に基部17が形成されている。つまり、溶着部13は、溶着部13の最も注出部12側の領域にも、基部17を有する。上溝18aよりも注出部12側の基部17を、上基部17aという。上基部17aは、最も注出部12側に位置する基部17である。
【0050】
下溝18bは、溶着部下端13aから離間しており、下溝18bと溶着部下端13aとの間に基部17が形成されている。つまり、溶着部13は、溶着部13の最も注出部12とは反対側の領域にも、基部17を有する。下溝18bよりも注出部12とは反対側の基部17を、下基部17bという。下基部17bは、最も注出部12とは反対側に位置する基部17である。
【0051】
複数のリブ19は、基部17から突出する部位である。複数のリブ19は、第一方向D1に配列されている。複数のリブ19のそれぞれは、基部17の表面において第一方向D1と垂直な方向に延びている。複数のリブ19のそれぞれは、基部17の第三方向D3における一方側の先端の近傍から他方側の先端の近傍まで延びており、基部17の第三方向D3における両端部には形成されていない。複数のリブ19の数は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、第一側壁部16A及び第二側壁部16Bのそれぞれに、3本のリブ19が形成されている。なお、本実施形態では、複数のリブ19のそれぞれは、第二方向D2から見て第三方向D3に延びる直線状に形成されているが、第二方向D2から見て波形状、折線形状、ネジのように一方向に傾斜する直線状等に形成されていてもよい。
【0052】
リブ19は、溶着部下端13aから下溝18bまで間、及び複数の溝18の間に形成されており、上溝18aよりも注出部12側に形成されていない。つまり、溶着部13は、上溝18aよりも注出部12とは反対側の領域にのみ、リブ19を有する。また、溶着部13は、第一方向D1に隣り合う溝18の間の領域に、リブ19を有する。また、溶着部13は、下溝18bよりも注出部12とは反対側の領域に、リブ19を有する。なお、複数の溝18が第一方向D1に3つ以上配列されている場合、リブ19は、第一方向D1において隣り合う一部の二つの溝18の間に形成されていてもよいが、本実施形態では、リブ19は、第一方向D1において隣り合う全ての二つの溝18の間に形成されている。
【0053】
(口栓付きパウチの製造方法)
次に、実施形態に係る口栓付きパウチの製造方法について説明する。口栓付きパウチの製造方法は、上述した口栓付きパウチ1を製造する方法である。実施形態に係る口栓付きパウチの製造方法では、用意工程及び溶着工程をこの順に行う。溶着工程では、予熱工程、ヒートシール工程、及び冷却工程をこの順で行う。
【0054】
図9は、用意工程で用意するパウチ中間体を示す正面図である。図9に示すように、用意工程では、パウチ中間体40と、上述した口栓10と、を用意する。パウチ中間体40は、図1及び図2に示す口栓付きパウチ1のパウチ本体2となるものである。パウチ中間体40は、互いに対向された樹脂製の第一胴フィルム4A及び第二胴フィルム4Bと、第一胴フィルム4Aと第二胴フィルム4Bとの間に折り込まれた樹脂製の折込フィルム5と、を備える。そして、第一胴フィルム4A及び第二胴フィルム4Bと折込フィルム5とが、その外縁部において互いにヒートシールされており、第一胴フィルム4Aと第二胴フィルム4Bとが、その両側辺部において互いにヒートシールされている。一方、第一胴フィルム4Aと第二胴フィルム4Bとは、その上辺部において互いにヒートシールされていない。第一胴フィルム4Aと第二胴フィルム4Bとが互いにヒートシールされている第一胴フィルム4A及び第二胴フィルム4Bの両側辺部を、互いにヒートシールされているシール部41といい、第一胴フィルム4Aと第二胴フィルム4Bとが互いにヒートシールされていない第一胴フィルム4A及び第二胴フィルム4Bの上辺部を、互いにヒートシールされていない非シール部42という。非シール部42は、その途中に部分的にヒートシールされている領域(ポイントシール部)があってもよい。ポイントシール部は、例えば、口栓10が配置される位置の両側に形成される。
【0055】
図10は、シールバーを溶着部に押し付けて溶着部を予熱している状態を示す断面図である。図11は、溶着部を予熱した状態を示す模式断面図である。図12は、溝付近を拡大した断面図である。図10に示すように、溶着工程では、まず、予熱工程を行う。予熱工程では、加熱したシールバー50(加熱体)を直接口栓10の溶着部13に押し付けて溶着部13を予熱する。このとき、溶着部13では、複数のリブ19が基部17から突出しているため、シールバー50は、複数のリブ19に接触し、基部17から離間した状態となる。このため、加熱したシールバー50を溶着部13に押し付けると、基部17よりも先に複数のリブ19が溶融し、複数のリブ19の溶融樹脂が基部17の表面に沿って流れて行く。なお、シールバー50による加熱条件によっては、複数のリブ19の溶融に遅れて基部17も溶融し、基部17の溶融樹脂も基部17の表面に沿って流れて行く。そして、図11及び図12に示すように、これらの溶融樹脂の一部が溝18に入り込み、溶融樹脂が再硬化して再硬化部45が形成される。再硬化部45は、溶着部13が溶融されて再硬化したものである。再硬化部45は、その殆どが複数のリブ19に由来するものであるが、基部17に由来するものも一部に含まれ得る。
【0056】
予熱工程では、全ての溝18において、溝18が再硬化部45で塞がれないように、シールバー50の加熱温度、及びシールバー50を溶着部13に押し付ける時間等を調整する。上溝18a以外の溝18では、溝18の第一方向D1における両側にリブ19が形成されているため、再硬化部45は、注出部12側及び注出部12とは反対側から溝18に入り込んだ状態となる。また、上溝18aの注出部12とは反対側にリブ19が形成されているため、再硬化部45は、注出部12側から上溝18aに入り込んだ状態となる。一方、上溝18aの注出部12側にリブ19が形成されていないため、注出部32側から上溝18aに入り込んでいる再硬化部45の量が、注出部32とは反対側から上溝18aに入り込んでいる再硬化部45の量よりも少なくなっている。また、注出部32側から上溝18aに入り込んでいる再硬化部45の第一方向D1における長さが、注出部32とは反対側から上溝18aに入り込んでいる再硬化部45の第一方向D1における長さよりも短くなっている。これらの場合、再硬化部45は、注出部32側から上溝18aに入り込んでいなくてもよい。
【0057】
図13は、胴フィルムを介してシールバーを溶着部に押し付けて溶着部に胴フィルムを溶着している状態を示す断面図である。図13に示すように、溶着工程では、次に、ヒートシール工程を行う。ヒートシール工程では、口栓10の溶着部13を非シール部42において第一胴フィルム4Aと第二胴フィルム4Bとの間に配置する。そして、第一胴フィルム4A及び第二胴フィルム4Bを介して加熱したシールバー50を溶着部13に押し付ける。すると、第一胴フィルム4A及び第二胴フィルム4Bのシーラント層8が溶融するとともに、口栓10の再硬化部45が溶融して、第一胴フィルム4A及び第二胴フィルム4Bのシーラント層8が口栓10の再硬化部45に溶着される。これにより、第一胴フィルム4A及び第二胴フィルム4Bが溶着部13に溶着される。ヒートシール工程は複数回行うことができる。本実施形態では、ヒートシール工程を二回行う。なお、予熱工程は、必ずしも必須の工程ではないが、溶着部の溶融を適切に行わせる観点から予熱工程を行うことが好ましい。予熱工程を行わない場合は、予熱工程での溶着部の溶融がヒートシール工程で生じる。
【0058】
溶着工程では、次に、冷却工程を行う。冷却工程では、溶着工程でのシールバー50の押し付けにより加熱された第一胴フィルム4A、第二胴フィルム4B、及び溶着部13を冷却する。これにより、溶融した口栓10の再硬化部45が完全に硬化するとともに、溶融した第一胴フィルム4A及び第二胴フィルム4Bのシーラント層8が完全に硬化して、第一胴フィルム4A及び第二胴フィルム4Bが溶着部13に完全に溶着される。この冷却は、例えば、内部を流通する冷媒により冷却された冷却用シールバー(不図示)を、第一胴フィルム4A及び第二胴フィルム4Bを介して溶着部13に押し付けることにより行う。
【0059】
これにより、上述した口栓付きパウチ1が製造される。つまり、口栓10の流路11、注出部12、溶着部13、及びフランジ部14が、口栓付きパウチ1の口栓3の流路31、注出部32、溶着部33、及びフランジ部34となる。
【0060】
(口栓付きパウチの口栓)
図14は、口栓付きパウチの一部を拡大した断面図である。図15は、溝付近を拡大した断面図である。図14及び図15に示すように、口栓3の溶着部33は、基部37と、基部37から凹む複数の溝38と、胴フィルム4に溶着するために溶融されて再硬化した再硬化部35と、を有する。基部37は、口栓10の基部17に対応する部位である。溝38は、口栓10の溝18に対応する部位である。再硬化部35は、再硬化部15に対応する部位である。このため、再硬化部35の一部は、溝38に入り込んでいる。
【0061】
複数の溝38のうち、最も注出部32側に位置する溝38を、上溝38aという。複数の溝38のうち、最も注出部32とは反対側に位置する溝を、下溝38bという。
【0062】
上溝38aは、フランジ部34から離間しており、上溝38aとフランジ部34との間に基部37が形成されている。つまり、溶着部33は、溶着部33の最も注出部32側の領域にも、基部37を有する。上溝38aよりも注出部32側の基部37を、上基部37aという。上基部37aは、最も注出部32側に位置するの基部37である。
【0063】
下溝38bは、溶着部33の注出部32とは反対側の先端である溶着部下端33aから離間しており、下溝38bと溶着部下端13aとの間に基部37が形成されている。つまり、溶着部33は、溶着部33の最も注出部32とは反対側の領域にも、基部37を有する。下溝38bよりも注出部32とは反対側の基部37を、下基部37bという。下基部37bは、最も注出部32とは反対側に位置するの基部37である。
【0064】
胴フィルム4は、上基部37aに溶着されている。つまり、胴フィルム4の先端は、上溝38aよりも注出部32側に位置しており、胴フィルム4は、上溝38aよりも注出部32側の領域において溶着部33に溶着されている。胴フィルム4は、下溝38bよりも注出部32とは反対側(溶着部下端13a側)の領域において溶着部33に溶着されている。胴フィルム4は、第一方向D1において隣り合う溝38の間の領域において溶着部33に溶着されている。
【0065】
溝38に入り込んでいる再硬化部35の第一方向D1における長さ(L1+L2)は、特に限定されるものではない。溝38に入り込んでいる再硬化部35の第一方向D1における長さ(L1+L2)は、注出部32側から溝38に入り込んでいる再硬化部35の第一方向D1における長さL1と、注出部32の反対側から溝38に入り込んでいる再硬化部35の第一方向D1における長さL2と、を足し合わせた長さである。例えば、胴フィルム4が溶着部33に適切に溶着されているものとすることができる観点から、溝38に入り込んでいる再硬化部35の第一方向D1における長さ(L1+L2)は、溝38の第一方向D1における長さLの30%以上、40%以上、又は50%以上とすることができる。溝38の第一方向D1における長さLは、溝38の第一方向D1における全長である。一方、胴フィルム4の溶融樹脂が適度に溝38に入り込んでいるものとすることができる観点から、溝38に入り込んでいる再硬化部35の第一方向D1における長さ(L1+L2)は、溝38の第一方向D1における長さLの80%以下、75%以下、又は70%以下とすることができる。これらの観点から、溝38に入り込んでいる再硬化部35の第一方向D1における長さ(L1+L2)は、溝38の第一方向D1における長さLの30%以上80%以下、40%以上75%以下、又は50%以上70%以下とすることができる。
【0066】
注出部32側から上溝38aに入り込んでいる再硬化部35の量は、注出部32とは反対側から上溝38aに入り込んでいる再硬化部35の量よりも少ない。また、注出部32側から上溝38aに入り込んでいる再硬化部35の第一方向D1における長さL1は、注出部32とは反対側から上溝38aに入り込んでいる再硬化部35の第一方向D1における長さL2よりも短い。
【0067】
注出部32側から上溝38aに入り込んでいる再硬化部35の第一方向D1における長さL1は、特に限定されるものではない。例えば、上溝38aの注出部32側において胴フィルム4が溶着部33に適切に溶着されているものとすることができる観点から、注出部32側から上溝38aに入り込んでいる再硬化部35の第一方向D1における長さL1は、上溝38aの第一方向D1における長さLの5%以上、10%以上、又は15%以上とすることができる。一方、上溝の注出部側での溶着部の過度な溶融による樹脂溜まりの発生が抑制されたものとすることができる観点から、注出部32側から上溝38aに入り込んでいる再硬化部35の第一方向D1における長さL1は、上溝38aの第一方向D1における長さLの50%以下、40%以下、又は35%以下とすることができる。これらの観点から、注出部32側から上溝38aに入り込んでいる再硬化部35の第一方向D1における長さL1は、上溝38aの第一方向D1における長さLの5%以上50%以下、10%以上40%以下、又は15%以上35%以下とすることができる。
【0068】
図16は、参考例1の口栓の溶着部に胴フィルムを溶着している状態を示す断面図である。図16に示すように、参考例1の口栓110の溶着部113は、基部117と、基部117から凹む複数の溝118と、を有するが、基部117から突出するリブを有しない。このため、溶着部113に胴フィルム4を溶着するために、加熱したシールバー50を溶着部113に押し付けると、溶着部113が過度に溶融されて、溶着部113が溶融されて再硬化した再硬化部135が溝118を塞ぎやすくなる。これにより、胴フィルム4が過度に溶融されるため、最も注出部12側に位置する溝118である上溝118aよりも注出部12側において、胴フィルム4のシーラント層8及び口栓110の溶着部113の溶融樹脂が再硬化してなる樹脂溜まり111が発生しやすくなる。このため、口栓付きパウチの外観不良となる可能性がある。しかも、その後に胴フィルム4を介して加熱したシールバー50を溶着部113に押し付けた際に、胴フィルム4がシールバー50と樹脂溜まり111とに挟まれて破断する可能性もある。このように胴フィルム4が破断するのは、樹脂溜まり111に力が集中するほか、加熱により樹脂溜まり111に保存された熱がシーラント層8に伝わりやすいためであると推測される。このような現象は、溶着部113が基部117から凹む溝を有しない場合も同様である。
【0069】
これに対し、本実施形態に係る口栓10では、溶着部13に胴フィルム4を溶着するために胴フィルム4を介して加熱したシールバー50を溶着部13に押し付けると、溶着部13及び胴フィルム4が溶融し、溶融樹脂が基部17の表面に沿って流れて行く。しかしながら、この口栓10では、溶着部13が基部17から凹む溝18を有するため、溶融樹脂の一部を溝18に入り込ませることができる。このため、溶着部13の表面から突出する樹脂溜まりが発生するのを抑制することができる。これにより、外観の悪化を抑制することができるとともに、胴フィルム4が樹脂溜まりとシールバー50体とに挟まれることにより破断するのを抑制することができる。このように胴フィルム4が破断するのを抑制することができるのは、樹脂溜まり111に力が集中するのを抑制できるほか、加熱により樹脂溜まり111に保存された熱がシーラント層8に伝わるのを抑制できるためであると推測される。しかも、この口栓10では、溶着部13が基部17から突出するリブ19を有するため、加熱したシールバー50を溶着部13に押し付けると、シールバー50は基部17よりも先にリブ19に押し付けられ、基部17よりも先にリブ19が溶融される。このため、リブ19を有しない場合に比べて、シールバー50の加熱温度を低くするとともに、シールバー50を溶着部13に押し付ける時間を短くすることができる。これにより、溶着部13の蓄熱量を低減させることができるため、溶着部13及び胴フィルム4が過度に溶融されるのを抑制することができる。その結果、溶融樹脂の溝18への入り込みと相まって、溶着部13の表面から突出する樹脂溜まりが発生するのを抑制することができるとともに、胴フィルム4が破断するのを抑制することができる。
【0070】
また、この口栓10では、溝18及びリブ19が第一方向D1と垂直な方向に延びていることで、胴フィルム4を溶着部13に適切に溶着させることができる。
【0071】
図17は、参考例2の口栓の溶着部に胴フィルムを溶着している状態を示す断面図である。図17に示すように、参考例2の口栓220の溶着部213は、基部217と、基部217から凹む複数の溝218と、基部217から突出する複数のリブ(不図示)と、を有する。最も注出部12側の溝218を、上溝218aという。しかしながら、溶着部213は、溶着部213の最も注出部12側の領域に基部を有しておらず、当該領域に上溝218a有している。つまり、溶着部213の最も注出部12側の領域が上溝218aとなっており、上溝218aがフランジ部14に隣接されている。このため、胴フィルム4は、上溝218aよりも注出部12とは反対側の領域でのみ溶着部213に溶着されている。これにより、胴フィルム4の注出部12側の先端が遊ぶ(自由になる)ことにより外観が悪化するとともに、注出部12側から胴フィルム4が剥離しやすくなる。
【0072】
これに対し、この口栓10では、溶着部13が溶着部13の最も注出部12側の領域に基部17を有することで、胴フィルム4の注出部12側の先端又は先端近傍まで胴フィルム4を溶着部13に溶着することができる。このため、溶着部13が当該領域に基部17を有しない場合に比べて、胴フィルム4の注出部12側の先端が遊ぶ(自由になる)ことによる外観の悪化を抑制することができるとともに、注出部12側から胴フィルム4が剥離するきっかけとなるのを抑制することができる。
【0073】
また、この口栓10では、溶着部13が上溝18aよりも注出部12側の領域に基部17を有することで、胴フィルム4の注出部12側の先端又は先端近傍まで胴フィルム4を溶着部13に溶着することができる。このため、溶着部13が当該領域に基部17を有しない場合に比べて、胴フィルム4の注出部12側の先端が遊ぶ(自由になる)ことによる外観の悪化を抑制することができるとともに、注出部12側から胴フィルム4が剥離するきっかけとなるのを抑制することができる。
【0074】
ここで、上溝18aよりも注出部12側の領域にリブが形成されていると、溶着条件や口栓10の向きによっては、当該リブの溶融樹脂が上溝18aに入り込まずに注出部12側に流れて行き、当該領域に当該リブ由来の樹脂溜まりが形成される可能性がある。また、上溝18aよりも注出部12側の領域にリブが形成されていると、上溝に入り込んだ溶融樹脂から胴フィルム4への伝熱により、胴フィルム4の注出部12側の先端部の溶融が促進され、胴フィルム4の注出部12側の先端部が上溝18aに入り込む可能性がある。しかしながら、この口栓10では、上溝18aよりも注出部12側の領域にリブが形成されていないため、溶着部13の溶融樹脂が上溝18aを超えて注出部12側に流れて行くのを抑制することができるため、当該領域に当該リブ由来の樹脂溜まりが形成されるのを抑制することができる。また、上溝18aに入り込んだ溶融樹脂から胴フィルム4への伝熱を抑制することができるため、胴フィルム4の注出部12側の先端部が上溝18aに入り込むことを抑制することができる。
【0075】
また、この口栓10では、溶着部13が第一方向D1に隣り合う溝18の間の領域にリブ19を有することで、溶着部13における胴フィルム4の溶着強度を高めることができる。
【0076】
また、この口栓10では、溶着部13が下溝18bよりも注出部12とは反対側の領域にリブ19を有することで、当該領域にリブを有しない場合に比べて、当該領域に対する胴フィルム4の溶着強度を高めることができる。これにより、注出部12とは反対側から胴フィルム4が剥離するのを抑制することができる。
【0077】
また、この口栓10では、口栓10が高密度ポリエチレンを含むことで、リサイクルをしやすい。リサイクルのしやすさの観点からは、口栓10は高密度ポリエチレンのみからなることが好ましいが、添加剤などを含んでもよい。
【0078】
本実施形態に係る口栓付きパウチの製造方法では、上述した何れかの口栓10の溶着部13を非シール部42において第一胴フィルム4Aと第二胴フィルム4Bとの間に配置し、第一胴フィルム4A及び第二胴フィルム4Bを介して加熱したシールバー50を溶着部13に押し付けることで、第一胴フィルム4A及び第二胴フィルム4Bを溶着部13に溶着するため、樹脂溜まりの発生を抑制しつつ胴フィルム4が破断するのを抑制することができる。
【0079】
また、この口栓付きパウチの製造方法では、ヒートシール工程を行う前に、加熱したシールバー50を溶着部13に押し付けて溶着部13を予熱することで、胴フィルム4を介して溶着部13に押し付けるシールバー50の加熱温度を低くするとともに、胴フィルム4を介してシールバー50を溶着部13に押し付ける時間を短くすることができる。これにより、シールバー50から胴フィルム4への伝熱量を低下させることができるため、胴フィルム4が破断するのを抑制することができる。
【0080】
また、この口栓付きパウチの製造方法では、ヒートシール工程を行った後に胴フィルム4及び溶着部13を冷却することで、早期に胴フィルム4を溶着部13に溶着することができる。
【0081】
本実施形態に係る口栓付きパウチ1では、再硬化部35の一部が溝38に入り込んでいるため、口栓付きパウチの製造時に口栓10の溶着部13の溶融樹脂が溝に入り込むことで樹脂溜まりの発生が抑制されたものとすることができる。これにより、胴フィルム4が樹脂溜まりと接触して局部的に薄くなるのを抑制されたものとすることができるため、胴フィルム4の破断が抑制されたものとすることができる。
【0082】
また、この口栓付きパウチ1では、胴フィルム4が上基部37aに溶着されていることで、胴フィルム4の注出部32側の先端又は先端近傍まで胴フィルム4を溶着部33に溶着することができる。このため、胴フィルム4が上基部37aに溶着されていない場合に比べて、胴フィルム4の注出部32側の先端が遊ぶ(自由になる)ことによる外観の悪化を抑制することができるとともに、注出部32側から胴フィルム4が剥離するきっかけとなるのを抑制することができる。
【0083】
また、この口栓付きパウチ1では、胴フィルム4の先端が上溝38aよりも注出部32側に位置して、胴フィルム4が上溝38aよりも注出部32側の領域において溶着部33に溶着されていることで、胴フィルム4の注出部32側の先端又は先端近傍まで胴フィルム4を溶着部33に溶着することができる。このため、胴フィルム4が当該領域において溶着部33に溶着されていない場合に比べて、胴フィルム4の注出部32側の先端が遊ぶ(自由になる)ことによる外観の悪化を抑制することができるとともに、注出部32側から胴フィルム4が剥離するきっかけとなるのを抑制することができる。
【0084】
また、この口栓付きパウチ1では、胴フィルム4が下溝38bよりも注出部32とは反対側の領域において溶着部33に溶着されていることで、注出部32とは反対側から胴フィルム4が剥離するのを抑制することができる。
【0085】
また、この口栓付きパウチ1では、溝38に入り込んでいる再硬化部35の第一方向D1における長さ(L1+L2)が、溝38の第一方向D1における長さLの30%以上80%以下、40%以上75%以下、又は50%以上70%以下であることで、胴フィルム4が溶着部33に適切に溶着されているものとすることができるとともに、胴フィルム4の溶融樹脂が適度に溝38に入り込んでいるものとすることができる。これにより、樹脂溜まりの発生が抑制されて胴フィルム4の破断が抑制されたものとすることができる。
【0086】
また、この口栓付きパウチ1では、注出部32側から上溝38aに入り込んでいる再硬化部35の量が、注出部32とは反対側から上溝38aに入り込んでいる再硬化部35の量よりも少ないことで、上溝38aの注出部32側では、上溝38aの注出部32とは反対側よりも溶着部33が溶融されなかったものとすることができる。これにより、上溝38aの注出部32側において樹脂溜まりの発生が抑制されたものとすることができるため、胴フィルム4の破断が抑制されたものとすることができる。また、上溝38aに入り込んだ溶融樹脂から胴フィルム4への伝熱が抑制されて、胴フィルム4の注出部32側の先端部が上溝38aに入り込むことが抑制されたものとすることができる。
【0087】
また、この口栓付きパウチ1では、注出部32側から上溝38aに入り込んでいる再硬化部35の第一方向D1における長さL1が、注出部32とは反対側から上溝38aに入り込んでいる再硬化部35の第一方向D1における長さL2よりも短いことで、上溝38aの注出部32側では、上溝38aの注出部32とは反対側よりも溶着部33が溶融されなかったものとすることができる。これにより、上溝38aの注出部32側において樹脂溜まりの発生が抑制されたものとすることができるため、胴フィルム4の破断が抑制されたものとすることができる。また、上溝38aに入り込んだ溶融樹脂から胴フィルム4への伝熱が抑制されて、胴フィルム4の注出部32側の先端部が上溝38aに入り込むことが抑制されたものとすることができる。
【0088】
また、この口栓付きパウチ1では、注出部32とは反対側から上溝38aに入り込んでいる再硬化部35の第一方向D1における長さL1が、上溝38aの第一方向における長さLの5%以上50%以下、10%以上40%以下、又は15%以上35%以下であることで、上溝38aの注出部32側において胴フィルム4が溶着部33に適切に溶着されているものとすることができるとともに、上溝38aの注出部32側での溶着部33の過度な溶融による樹脂溜まりの発生が抑制されたものとすることができる。また、上溝38aに入り込んだ溶融樹脂から胴フィルム4への伝熱が抑制されて、胴フィルム4の注出部32側の先端部が上溝38aに入り込むことが抑制されたものとすることができる。
【0089】
また、この口栓付きパウチ1では、シーラント層8が低密度ポリエチレン又は直鎖状低密度ポリエチレンを含み、口栓3が高密度ポリエチレンを含むことで、包装容器全体としてポリエチレンを主材料とすることができる。このため、リサイクルしやすい。
【0090】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用してもよい。
【0091】
例えば、上記実施形態では、溶着部が複数の溝及び複数のリブを有するものとして説明したが、溝及びリブは一つのみ溶着部に設けられていてもよい。
【実施例0092】
次に、本発明の実施例について説明する。但し、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0093】
(実施例1)
厚みが30μmの高密度ポリエチレン(HS31、タマポリ株式会社製、密度:0.948g/cm)を最外層(基材層)とし、厚みが32μmの基材がポリエチレンでありSiOを蒸着膜として有する多層構造であるガスバリア積層体を中間層(バリア層)とし、厚みが150μmの低密度ポリエチレン(TTM100、タマポリ株式会社製、密度:0.916g/cm)を最内層(シーラント層)とした積層フィルムを作製した。
【0094】
高密度ポリエチレン(HJ451、日本ポリエチレン株式会社製、密度:0.955g/cm、MFR:2.3g/10min)を射出成型して、図3図8に示す形状の口栓を作製した。この口栓では、溶着部の第一側壁部及び第二側壁部のそれぞれの基部に3本の溝及び3本のリブを形成した。3本の溝のうち、最も溶着部側に位置する溝を上溝といい、最も注出部とは反対側に位置する溝を下溝といい、上溝と下溝との間に位置する溝を中央溝という。3本のリブは、上溝と中央溝との間、中央溝と下溝との間、及び下溝よりも注出部とは反対側に形成し、上溝よりも注出部とは反対側には形成しなかった。
【0095】
トタニ技研工業株式会社製の溶着機を用いたヒートシールにより、口栓に一対の積層フィルムを溶着した。この溶着では、温度:160℃、時間:0.9sec、圧力:0.35MPaの条件で口栓をプレヒートし、その後、口栓を一対の積層フィルムの間に配置して、温度:160℃、時間:0.9sec、圧力:0.20MPaの条件で一次シールを行い、温度:160℃、時間:0.9sec、圧力:0.30MPaの条件で二次シールを行った。
【0096】
口栓に一対の積層フィルムを溶着した後、口栓をカミソリ刃で切断し、切断面を光学顕微鏡(株式会社ハイロックス製、KH8700)により観察して、下溝、中央溝、及び上溝のそれぞれについて、溝幅、注出部側から溝に入り込んだ再硬化部の長さ、注出部とは反対側から溝に入り込んだ再硬化部の長さ、及び溝の開口幅を計測した。また、この計測値から、下溝、中央溝、及び上溝のそれぞれの溝開口率及び溝閉塞率を算出した。注出部側及び注出部とは反対側から溝に入り込んだ再硬化部により、溝が部分的に閉ざされていることから、溝開口率は、溝幅に対する溝の開口幅の割合を百分率で表した値とし、溝閉塞率は、溝幅に対する、再硬化部により閉ざされてる溝の幅の割合を百分率で表した値である。図15を参照すると、(L3/L)×100が溝開口率となり、((L1+L2)/L)×100が溝閉塞率となる。そして、一対の積層フィルムの破断の一つの指標として、溶着部に形成される樹脂溜まりの有無を観察した。結果を図18に示す。
【0097】
(実施例2)
厚みが35μmの高密度ポリエチレン(HS31、タマポリ株式会社製、密度:0.948g/cm)を最外層(基材層)とし、厚みが32μmの高密度ポリエチレン(GAP、Charter NEX製、密度:0.950g/cm)を中間層とし、厚みが120μmの低密度ポリエチレン(TTM100、タマポリ株式会社製、密度:0.916g/cm)を最内層(シーラント層)とした積層フィルムを作製した。
【0098】
一対の積層シートは実施例1と同じものを用い、実施例1と同条件で、口栓に一対の積層フィルムを溶着した。そして、実施例1と同様に、下溝、中央溝、及び上溝のそれぞれについて、溝幅、注出部側から溝に入り込んだ再硬化部の長さ、注出部とは反対側から溝に入り込んだ再硬化部の長さ、及び溝の開口幅を計測した。また、この計測値から、下溝、中央溝、及び上溝のそれぞれの溝開口率及び溝閉塞率を算出した。また、溶着部に形成される樹脂溜まりの有無を観察した。結果を図18に示す。
【0099】
(比較例1)
比較例1の口栓として、市販の口栓を用意した。比較例1の口栓では、溶着部の第一側壁部及び第二側壁部のそれぞれに3本のリブが形成されていたが、溝は形成されていなかった。
【0100】
一対の積層シートは実施例1と同じものを用い、実施例1と同条件で、口栓に一対の積層フィルムを溶着した。そして、実施例1と同様に、下溝、中央溝、及び上溝のそれぞれについて、溝幅、注出部側から溝に入り込んだ再硬化部の長さ、注出部とは反対側から溝に入り込んだ再硬化部の長さ、及び溝の開口幅を計測した。また、この計測値から、下溝、中央溝、及び上溝のそれぞれの溝開口率及び溝閉塞率を算出した。また、溶着部に形成される樹脂溜まりの有無を観察した。結果を図18に示す。
【0101】
図18に示すように、リブを有するが溝を有しない口栓を用いた比較例1は、樹脂溜まりが観察されたが、リブ及び溝を有する口栓を用いた実施例1及び2は、何れも樹脂溜まりが観察されなかった。この結果から、溶着部が溝及びリブを有することで、樹脂溜まりの発生を抑制できるため、一対の積層フィルムが破断するのを抑制することができると推察される。
【符号の説明】
【0102】
1…口栓付きパウチ、2…パウチ本体、3…口栓、4…胴フィルム、4A…第一胴フィルム、4B…第二胴フィルム、5…折込フィルム、6…収容領域、7…基材層、8…シーラント層、10…口栓、11…流路、12…注出部、12a…ねじ部、13…溶着部、13a…溶着部下端、14…フランジ部、15…再硬化部、16…側壁部、16A…第一側壁部、16B…第二側壁部、17…基部、17a…上基部、17b…下基部、18…溝、18a…上溝、18b…下溝、19…リブ、31…流路、32…注出部、33…溶着部、34…フランジ部、35…再硬化部、37…基部、37a…上基部、37b…下基部、38…溝、38a…上溝、38b…下溝、40…パウチ中間体、41…シール部、42…非シール部、45…再硬化部、50…シールバー、110…口栓、111…樹脂溜まり、113…溶着部、117…基部、118…溝、118a…上溝、135…再硬化部、213…溶着部、217…基部、220…口栓、D1…第一方向、D2…第二方向、D3…第三方向。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17
図18