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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092281
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】情報読取システム及び特定の読取装置
(51)【国際特許分類】
   G08C 17/00 20060101AFI20240701BHJP
   H04B 1/59 20060101ALI20240701BHJP
   G06K 7/10 20060101ALI20240701BHJP
   G06K 19/07 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
G08C17/00 Z
H04B1/59
G06K7/10 264
G06K7/10 288
G06K19/07 170
G06K19/07 230
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208103
(22)【出願日】2022-12-26
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、総務省、研究開発委託、産業技術力強化法第17条第1項の規定の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂部 遥輝
【テーマコード(参考)】
2F073
【Fターム(参考)】
2F073AA02
2F073AA12
2F073AA40
2F073AB01
2F073AB04
2F073BB01
2F073BC02
2F073CC03
2F073CC05
2F073CC12
2F073CD11
2F073DD02
2F073DE02
2F073DE07
2F073DE13
2F073EE01
2F073FF01
2F073FG01
2F073FG02
2F073GG01
2F073GG07
2F073GG08
(57)【要約】
【課題】 読取装置内のカウンタを簡易に同期するための技術を提供する。
【解決手段】 第1読取装置と第2読取装置のそれぞれは、装置カウンタと、装置カウンタをリセットするリセット部と、を備え、複数個のタグのそれぞれは、電波の受信と応答波の送信とを実行可能なアンテナと、情報を応答波に付与する付与部と、を備え、複数個のタグは、センサから出力される計測値を応答波に情報として付与可能に構成されている複数個のセンサタグと、特定タグと、を含み、特定タグは、第1読取装置が読み取り可能な第1範囲と第2読取装置が読み取り可能な第2範囲とが重複する第1重複範囲内に設置されており、特定タグは、応答波を繰り返し送信している間に特定の応答波を散発的に送信可能に構成されており、第1読取装置のリセット部と第2読取装置のリセット部の双方は、特定タグから特定の応答波を受信する場合に、装置カウンタをリセットする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1読取装置と、第2読取装置と、複数個のタグと、を備える情報読取システムであって、
前記第1読取装置と前記第2読取装置のそれぞれは、
装置カウンタと、
前記複数個のタグのそれぞれから情報を読み取るための電波を繰り返し送信し、前記複数個のタグのそれぞれから当該電波に対する応答波を受信可能なアンテナと、
前記装置カウンタをリセットするリセット部と、
を備え、
前記複数個のタグのそれぞれは、
前記電波の受信と前記応答波の送信とを実行可能なアンテナと、
前記情報を前記応答波に付与する付与部と、
を備え、
前記複数個のタグは、センサから出力される計測値を前記応答波に前記情報として付与可能に構成されている複数個のセンサタグと、特定タグと、を含み、
前記特定タグは、前記第1読取装置が読み取り可能な第1範囲と前記第2読取装置が読み取り可能な第2範囲とが重複する第1重複範囲内に設置されており、
前記特定タグは、前記応答波を繰り返し送信している間に特定の応答波を散発的に送信可能に構成されており、
前記第1読取装置の前記リセット部と前記第2読取装置の前記リセット部の双方は、前記特定タグから前記特定の応答波を受信する場合に、前記装置カウンタをリセットする、
情報読取システム。
【請求項2】
前記第1読取装置の前記アンテナ及び前記第2読取装置の前記アンテナの双方は、前記第1重複範囲内のタグを検索するための検索電波を送信し、
前記第1読取装置及び前記第2読取装置のいずれかは、さらに、
前記第1重複範囲内に2個以上のタグが検索される場合に、前記2個以上のタグの中から、前記検索電波に対する前記応答波の受信強度及び前記検索電波に対する前記応答波の受信頻度のうちのいずれかが最も高いタグを前記特定タグとして選択する選択部を備える、請求項1に記載の情報読取システム。
【請求項3】
前記選択部は、前記2個以上のタグのうちの第1タグが前記特定タグとして選択された後に、前記第1タグで異常が発生する場合に、前記第1タグに代えて、前記2個以上のタグのうちの第2タグを前記特定タグとして選択する、請求項2に記載の情報読取システム。
【請求項4】
前記情報読取システムは、さらに、前記第1読取装置と同様の構成を有する第3読取装置を備え、
前記第2読取装置は、2個の前記装置カウンタを備え、
前記複数個のタグは、2個の前記特定タグを含み、
前記2個の特定タグのうちの一方の特定タグは、前記第1重複範囲内に設置されており、
前記2個の特定タグのうちの他方の特定タグは、前記第2読取装置が読み取り可能な前記第2範囲と前記第3読取装置が読み取り可能な第3範囲とが重複する第2重複範囲内に設置されており、
前記第1読取装置の前記リセット部は、前記一方の特定タグから前記特定の応答波を受信する場合に、前記第1読取装置の前記装置カウンタをリセットし、
前記第2読取装置の前記リセット部は、前記一方の特定タグから前記特定の応答波を受信する場合に、前記2個の装置カウンタのうちの一方の装置カウンタをリセットし、前記2個の装置カウンタのうちの他方の装置カウンタをリセットせず、
前記第2読取装置の前記リセット部は、前記他方の特定タグから前記特定の応答波を受信する場合に、前記他方の装置カウンタをリセットし、前記一方の装置カウンタをリセットせず、
前記第3読取装置の前記リセット部は、前記他方の特定タグから前記特定の応答波を受信する場合に、前記第3読取装置の前記装置カウンタをリセットする、請求項1に記載の情報読取システム。
【請求項5】
前記特定タグは、前記応答波の送信回数をカウントするタグカウンタを備え、
前記特定タグは、前記タグカウンタから出力されるカウンタ値を前記応答波に前記情報として付与可能に構成されており、
前記特定の応答波は、前記カウンタ値として所定の回数を示す値を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の情報読取システム。
【請求項6】
前記特定タグは、センサタグである、請求項1から4のいずれか一項に記載の情報読取システム。
【請求項7】
前記情報読取システムは、さらに、分析装置を備え、
前記第1読取装置及び前記第2読取装置の双方は、さらに、
前記装置カウンタから出力されるカウンタ値を前記複数個のタグから受信した前記応答波に含まれる前記計測値に付与して、前記分析装置に送信する送信部を備え、
前記分析装置は、前記第1読取装置及び前記第2読取装置のいずれかから受信した前記計測値に付与されている前記カウンタ値に基づいて、前記複数個のセンサタグによって計測される複数個の前記計測値を分析する、請求項1から4のいずれか一項に記載の情報読取システム。
【請求項8】
特定の読取装置であって、
装置カウンタと、
複数個のタグから情報を読み取るための電波を繰り返し送信し、前記複数個のタグのそれぞれから当該電波に対する応答波を受信可能なアンテナと、
前記装置カウンタをリセットするリセット部と、
を備え、
前記複数個のタグは、センサから出力される計測値を前記応答波に前記情報として付与可能に構成されている複数個のセンサタグと、特定タグと、を含み、
前記特定タグは、前記特定の読取装置が読み取り可能な範囲と、前記特定の読取装置とは異なる他の読取装置が読み取り可能な範囲とが重複する重複範囲内に設置されており、
前記特定タグは、前記応答波を繰り返し送信している間に特定の応答波を散発的に送信可能に構成されており、
前記リセット部は、前記特定タグから前記特定の応答波を受信する場合に、前記装置カウンタをリセットする、
特定の読取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、複数個のセンサタグのそれぞれから計測値を読み取る技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
複数個のセンサタグが広範囲に配置される状況には、1個の読取装置では、全てのセンサタグから計測値を読み取れない場合がある。このような状況に対処するために、2個以上の読取装置を利用することが想定される。しかし、2個以上の読取装置を利用する場合には、2個以上の読取装置のそれぞれに内蔵されているカウンタを互いに同期する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-040533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
2個以上の読取装置のそれぞれに内蔵されているカウンタを互いに同期する方法として、例えば、特許文献1に示すような基準信号送信装置を2個以上の読取装置に接続することが想定される。2個以上の読取装置のそれぞれは、基準信号送信装置から各読取装置に送信されるパルス信号を利用して、カウンタをリセットする。しかし、この方法では、2個以上の読取装置のそれぞれに基準信号送信装置と接続するための機構を備える必要がある。本明細書では、当該機構を備えることなく、読取装置内のカウンタを簡易に同期するための技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で開示する情報読取システムは、第1読取装置と、第2読取装置と、複数個のタグと、を備える情報読取システムであって、前記第1読取装置と前記第2読取装置のそれぞれは、装置カウンタと、前記複数個のタグのそれぞれから情報を読み取るための電波を繰り返し送信し、前記複数個のタグのそれぞれから当該電波に対する応答波を受信可能なアンテナと、前記装置カウンタをリセットするリセット部と、を備え、前記複数個のタグのそれぞれは、前記電波の受信と前記応答波の送信とを実行可能なアンテナと、前記情報を前記応答波に付与する付与部と、を備え、前記複数個のタグは、センサから出力される計測値を前記応答波に前記情報として付与可能に構成されている複数個のセンサタグと、特定タグと、を含み、前記特定タグは、前記第1読取装置が読み取り可能な第1範囲と前記第2読取装置が読み取り可能な第2範囲とが重複する第1重複範囲内に設置されており、前記特定タグは、前記応答波を繰り返し送信している間に特定の応答波を散発的に送信可能に構成されており、前記第1読取装置の前記リセット部と前記第2読取装置の前記リセット部の双方は、前記特定タグから前記特定の応答波を受信する場合に、前記装置カウンタをリセットする。
【0006】
上記の構成によれば、第1重複範囲に設置されている特定タグから送信される特定の応答波を基準として、第1読取装置の装置カウンタと第2読取装置の装置カウンタとを同期することができる。第1読取装置及び第2読取装置に特別な機構を備えることなく、読取装置内のカウンタを簡易に同期することができる。
【0007】
前記第1読取装置の前記アンテナ及び前記第2読取装置の前記アンテナの双方は、前記第1重複範囲内のタグを検索するための検索電波を送信し、前記第1読取装置及び前記第2読取装置のいずれかは、さらに、前記第1重複範囲内に2個以上のタグが検索される場合に、前記2個以上のタグの中から、前記検索電波に対する前記応答波の受信強度及び前記検索電波に対する前記応答波の受信頻度のうちのいずれかが最も高いタグを前記特定タグとして選択する選択部を備えてもよい。
【0008】
上記の構成によれば、受信強度又は受信頻度を利用して、2個以上のタグの中から最適なタグを特定タグとして選択することができる。
【0009】
前記選択部は、前記2個以上のタグのうちの第1タグが前記特定タグとして選択された後に、前記第1タグで異常が発生する場合に、前記第1タグに代えて、前記2個以上のタグのうちの第2タグを前記特定タグとして選択してもよい。
【0010】
上記の構成によれば、特定タグとして選択された第1タグに異常が発生しても、第2タグを新たに特定タグとして選択する。第1タグに異常が発生したとしても読取装置内のカウンタの同期を継続することができる。
【0011】
前記情報読取システムは、さらに、前記第1読取装置と同様の構成を有する第3読取装置を備え、前記第2読取装置は、2個の前記装置カウンタを備え、前記複数個のタグは、2個の前記特定タグを含み、前記2個の特定タグのうちの一方の特定タグは、前記第1重複範囲内に設置されており、前記2個の特定タグのうちの他方の特定タグは、前記第2読取装置が読み取り可能な前記第2範囲と前記第3読取装置が読み取り可能な第3範囲とが重複する第2重複範囲内に設置されており、前記第1読取装置の前記リセット部は、前記一方の特定タグから前記特定の応答波を受信する場合に、前記第1読取装置の前記装置カウンタをリセットし、前記第2読取装置の前記リセット部は、前記一方の特定タグから前記特定の応答波を受信する場合に、前記2個の装置カウンタのうちの一方の装置カウンタをリセットし、前記2個の装置カウンタのうちの他方の装置カウンタをリセットせず、前記第2読取装置の前記リセット部は、前記他方の特定タグから前記特定の応答波を受信する場合に、前記他方の装置カウンタをリセットし、前記一方の装置カウンタをリセットせず、前記第3読取装置の前記リセット部は、前記他方の特定タグから前記特定の応答波を受信する場合に、前記第3読取装置の前記装置カウンタをリセットしてもよい。
【0012】
上記の構成によれば、2個の読取装置に加えて、第3読取装置が追加される。これにより、2個の読取装置よりも広範囲に亘ってセンサタグを配置することができる。また、第2読取装置は、2個の装置カウンタを備える。そして、第1重複範囲内に設置されている一方の特定タグから送信される特定の応答波を基準として、第1読取装置の装置カウンタと第2読取装置の一方の装置カウンタを同期することができる。また、第2重複範囲内に設置されている他方の特定タグから送信される特定の応答波を基準として、第2読取装置の他方の装置カウンタと第3読取装置の装置カウンタを同期することができる。
【0013】
前記特定タグは、前記応答波の送信回数をカウントするタグカウンタを備え、前記特定タグは、前記タグカウンタから出力されるカウンタ値を前記応答波に前記情報として付与可能に構成されており、前記特定の応答波は、前記カウンタ値として所定の回数を示す値を含んでもよい。
【0014】
上記の構成によれば、所定の回数が付与された応答波が散発的に送信され、所定の回数が付与された応答波を特定の応答波として利用することができる。
【0015】
前記特定タグは、センサタグであってもよい。
【0016】
例えば、特定タグがセンサの計測値を付与しないタグである比較例が想定される。この比較例では、特定タグとしてセンサタグ以外のタグを別途に用意する必要がある。これに対して、上記の構成によれば、特定タグをセンサタグと兼用させて、センサタグ以外のタグを別途に用意しなくてもよい。
【0017】
前記情報読取システムは、さらに、分析装置を備え、前記第1読取装置及び前記第2読取装置の双方は、さらに、前記装置カウンタから出力されるカウンタ値を前記複数個のタグから受信した前記応答波に含まれる前記計測値に付与して、前記分析装置に送信する送信部を備え、前記分析装置は、前記第1読取装置及び前記第2読取装置のいずれかから受信した前記計測値に付与されている前記カウンタ値に基づいて、前記複数個のセンサタグによって計測される複数個の前記計測値を分析してもよい。
【0018】
上記の構成によれば、第1読取装置から取得した計測値に付与されているカウンタ値と、第2読取装置から取得した計測値に付与されているカウンタ値が、互いに同期されている。分析装置は、同期済みのカウンタ値を利用して、第1読取装置及び第2読取装置から取得した全ての計測値を同期し、全ての計測値を正確に分析することができる。
【0019】
上記の情報読取システムを実現するための制御方法、上記の情報読取システムを実現するためのコンピュータプログラム、及び、当該コンピュータプログラムを記憶するコンピュータ可読記憶媒体も新規で有用である。また、上記の第1読取装置、第2読取装置、及び、第3読取装置自身も新規で有用である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1及び第2実施例に係る情報読取システムの概念図である。
図2】情報読取システムのブロック図である。
図3】読取装置の処理を示すフローチャート図である。
図4】具体的なケースを示すシーケンス図である。
図5】第3実施例に係る情報読取システムの概念図である。
図6】情報読取装置のブロック図である。
図7】読取装置の処理を示すフローチャート図である。
図8】具体的なケースを示すシーケンス図である。
図9図8の続きを示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施例)
(情報読取システム2の構成;図1図2
情報読取システム2は、複数個のセンサタグ10と、読取装置100と、読取装置200と、端末装置500と、を備える。読取装置100及び200は、Radio Frequency Identifier(RFID)タグに記憶されている情報を読み取る装置である。複数個のセンサタグ10は、対象4の表面に設置される。対象4は、例えば、橋、ビル、道路等の構造物である。なお、図1では、2個のセンサタグに符号が付されており、残りのセンサタグへの符号の付与は省略されている。また、変形例では、対象4は、上記の構造物に限らず、例えば、車両(例えば、車体、車軸)、工場内の設備、航空機(例えばヘリコプターのブレード)であってもよい。
【0022】
複数個のセンサタグ10のそれぞれは、対象4の振動を計測するためのセンサ40(図2参照)を備えるRFIDタグである。各センサタグ10は、読取装置(例えば100)から送信される様々な電波に対する応答波を送信可能に構成されている。例えば、応答波には、センサ40から出力される計測値、即ち、振動値が付与される。これにより、読取装置は、センサタグ10が設置された箇所における振動値を取得する。なお、変形例では、センサ40によって計測される物理量は、振動値に限らず、例えば、加速度、温度、湿度、二酸化炭素濃度等であってもよい。
【0023】
図1の破線で示す読取範囲102は、読取装置100が読み取り可能な範囲を示す。別言すれば、読取装置100は、読取範囲102内に存在するセンサタグ10から応答波を受信可能であり、読取範囲102外に存在するセンサタグ10から応答波を受信できない。また、図1の破線で示す読取範囲202は、読取装置200が読み取り可能な範囲を示す。図1に示すように、読取範囲102と読取範囲202は重複している。なお、以下では、読取範囲102と読取範囲202が重複する範囲である重複範囲102aに存在するセンサタグ10を重複タグ10aと記載する。図1に示すケースでは、重複範囲102aには、1個の重複タグ10aが存在する。なお、重複タグ10aの個数は、1個に限らず、2個以上であってもよい。
【0024】
読取装置100及び200は、据え置き型の装置である。読取装置100及び200は、有線又は無線で端末装置500に接続されている。読取装置100及び200は、センサタグ10から取得した振動値を端末装置500に送信する。
【0025】
(センサタグ10の構成;図2
センサタグ10は、アンテナ12と、復調部14と、変調部16と、付与部30と、センサ40と、を備える。アンテナ12は、読取装置(例えば100)からの電波を受信し、応答波を送信する。復調部14、読取装置からの電波を付与部30が解釈可能な信号に復調し、当該信号を付与部30に供給する回路である。変調部16は、付与部30からの信号を電波に変調して、当該電波をアンテナ12に供給する回路である。付与部30は、復調部14からの信号を処理する回路である。付与部30には、センサ40が接続されている。復調部14、変調部16、付与部30及びセンサ40は、アンテナ12によって受信された電波を電力源として駆動する。
【0026】
付与部30は、タグカウンタ32を備える。以下では、タグカウンタ32から出力される値を、タグカウンタ値と記載する。タグカウンタ値は、0~255のいずれかの整数を示す。タグカウンタ32は、タグカウンタ値を応答波の送信毎にインクリメントする。タグカウンタ値が最大の「255」である状況において、応答波が送信されると、タグカウンタ値は、最初の「0」に戻る。なお、タグカウンタ値の最大値「255」及び最小値「0」は、一例に過ぎない。
【0027】
付与部30は、復調部14から取得した信号に様々な情報を付与して変調部16に供給する。これにより、様々な情報が付与された応答波がアンテナ12から読取装置に送信される。ここで、付与部30によって付与される情報は、例えば、センサタグ10を識別するID、タグカウンタ値、センサ40の出力値である振動値である。
【0028】
(読取装置100及び200の構成;図2
読取装置100及び200は、同じ構成を有する。読取装置100及び200のそれぞれは、アンテナ112と、処理部130と、外部インターフェース114と、備える。なお、以下では、インターフェースを「I/F」と記載する。以下では、読取装置100について説明する。
【0029】
アンテナ112は、様々な電波の送信と、当該電波に対する応答波の受信と、を実行する。例えば、アンテナ112は、センサタグ10から情報を読み取るための電波である読取電波をセンサタグ10に送信し、センサタグ10から読取電波に対する応答波を受信する。処理部130は、様々な情報を処理する回路である。処理部130は、例えば、CPUとメモリとを備え、CPUは、メモリに記憶されているプログラムに従って様々な処理を実行する。外部I/F114は、外部の装置との通信を実行するためのI/Fであり、端末装置500に接続されている。
【0030】
処理部130は、複数個の復調部134と、複数個のカウンタ付与部136と、リセット部140と、装置カウンタ142と、を備える。なお、図示は省略するが、処理部130は、電波を生成してアンテナ112に供給する変調部も備える。各部は、例えば、処理部130のメモリ内のプログラムによって実現されてもよいし、論理回路等のハードウェアによって実現されてもよい。
【0031】
装置カウンタ142は、時間をカウントするタイマである。リセット部140は、装置カウンタ142に接続されている。リセット部140は、装置カウンタ142のカウントをリセットして0秒に戻す。
【0032】
復調部134の個数は、読取装置100が読み取り可能なセンサタグ10の個数に対応する。1個の復調部134には、1個のカウンタ付与部136が接続されている。復調部134は、センサタグ10から受信した応答波をカウンタ付与部136が解釈可能な信号に復調し、当該信号をカウンタ付与部136に供給する。
【0033】
複数個のカウンタ付与部136のそれぞれは、装置カウンタ142に接続されている。カウンタ付与部136は、復調部134から取得した信号に装置カウンタ142から出力される値を付与する。以下では、装置カウンタ142から出力される値を、装置カウンタ値と記載する。
【0034】
また、複数個のカウンタ付与部136のそれぞれは、外部I/F114に接続されている。カウンタ付与部136によって処理された信号は、外部I/F114に供給されて、外部の端末装置500に送信される。
【0035】
また、リセット部140は、複数個の復調部134のうち、重複タグ10aからの電波を復調する特定の復調部134aに接続されている。
【0036】
(端末装置500の構成;図2
端末装置500は、ラップトップPC、ノートPC、スマートフォン、サーバ等である。端末装置500には、読取装置100及び200が読み取ったセンサタグ10の情報を分析するための分析プログラム510がインストールされている。分析プログラム510は、例えば、読取装置100及び200のベンダによって提供される。なお、変形例では、分析プログラム510は、当該ベンダとは異なる事業者によって提供されてもよい。
【0037】
分析プログラム510は、読取装置100及び200の装置カウンタ値を利用して、複数個のセンサタグ10によって計測された振動値を時系列の順に並べる。これにより、対象4内で発生している振動を正確に把握することができる。対象4内で発生している振動を分析することにより、例えば、対象4の脆弱な個所(例えば破損個所)を特定することができる。また、複数個のセンサタグ10によって計測された振動値を時系列の順に並べるためには、読取装置100の装置カウンタ値と読取装置200の装置カウンタ値が同期されている必要がある。
【0038】
(読取装置100及び200の処理;図3
図3を参照して、処理部130によって実行される処理について説明する。図3の処理は、図3の処理を開始するための開始指示が読取装置100又は200に入力されることをトリガとして開始される。当該開始指示は、読取装置100又は200の操作部を操作することにより入力されてもよいし、端末装置500から開始指示を示す信号を受信することにより入力されてもよい。
【0039】
S10では、処理部130は、読取装置100と読取装置200の重複範囲102a内に1個以上の重複タグ10aが存在するのか否かを判断する。具体的には、処理部130は、アンテナ112を介して、読取範囲内のセンサタグ10を検索するための検索電波を外部に送信する。各センサタグ10は、検索電波に対して、自身のIDを付与した応答波を送信する。なお、検索電波に対する応答波には、センサ40の計測値は付与されない。重複範囲102a内に重複タグ10aが存在する場合には、読取装置100及び200の一方が受信する複数個の応答波の中に、読取装置100及び200の他方が受信する応答波に付与されたIDと同一のIDが付与された応答波が存在する。処理部130は、読取装置100及び読取装置200の間で同一IDの付与された応答波が受信される場合に、重複範囲102a内に1個以上の重複タグ10aが存在すると判断する。
【0040】
S10の判断には、読取装置100が受信する複数個の応答波と読取装置200が受信する複数個の応答波の比較が必要である。当該比較は、例えば、読取装置100によって実行される。この場合には、読取装置200で受信した複数個の応答波が読取装置100に供給される。そして、読取装置100による比較結果を示す情報が、読取装置100から読取装置200に供給される。また、変形例では、当該比較は、例えば、端末装置500によって実行されてもよい。この場合には、読取装置100で受信した複数個の応答波と読取装置200で受信した複数個の応答波との双方が、端末装置500に送信される。そして、端末装置500による比較結果を示す情報が、端末装置500から読取装置100及び200の双方に送信される。
【0041】
処理部130は、重複範囲102a内に重複タグ10aが一つも存在しないと判断する場合(S10でNO)に、S10の判断に戻る。この場合、ユーザは、重複範囲102a内にセンサタグ10を配置するように、センサタグ10の位置を調整する。
【0042】
また、処理部130は、重複範囲102a内に1個以上の重複タグ10aが存在すると判断する場合(S10でYES)に、S12に進む。S12では、処理部130は、1個以上の重複タグ10aの中から、応答波の電波強度が最も高い1個の重複タグ10aを選択する。そして、処理部130は、選択された1個の重複タグ10aに対して、復調部134aを設定する。ここで、電波強度は、例えば、RSSIである。なお、S10において1個の重複タグ10aのみが検索される場合には、S12の処理は、スキップされ、当該1個の重複タグ10aに対して、復調部134aが自動的に設定される。S12の処理によれば、電波強度を利用して、2個以上の重複タグ10aの中から、信頼性の高い最適な1個の重複タグ10aを選択することができる。
【0043】
S12に続くS20では、処理部130は、アンテナ112を介して、開始コマンドが付与された電波を外部に送信する。開始コマンドは、センサタグ10の状態を、非測定状態から測定状態に変更するコマンドである。非測定状態では、付与部30は、センサ40の計測値を応答波に付与しない。一方、測定状態では、付与部30は、センサ40の計測値を応答波に付与する。センサタグ10は、読取装置から開始コマンドが付与された電波を受信すると、センサタグ10の状態を非測定状態から測定状態に変更する。
【0044】
さらに、処理部130は、開始コマンドが付与された電波を送信すると、アンテナ112を介して、読取電波を繰り返し送信することを開始する。読取電波は、センサタグ10の計測値を読み取るための電波である。即ち、S20の処理により、読取装置によるセンサ40の計測値の読み取りが開始される。
【0045】
S22では、処理部130は、装置カウンタ142によるカウントを開始する。S30では、処理部130は、S20で送信が開始された読取電波に対する応答波を受信することを監視する。処理部130は、1回の読取電波の送信に対して、読取装置が読み取り可能な読取範囲(例えば102)内に存在する複数個のセンサタグ10から同時的に複数個の応答波を受信することができる。読取装置は、1個のセンサタグ10に対して1個の復調部134を設定する。
【0046】
処理部130は、読取電波に対する応答波を受信しない場合(S30でNO)に、S32~S42の処理をスキップして、S50に進む。一方、処理部130は、読取電波に対する応答波を受信する場合(S30でYES)に、S32に進む。ここで、読取電波に対する応答波には、当該応答波の送信元のセンサタグ10を識別するIDと、当該送信元のセンサタグ10のセンサ40の計測値と、当該送信元のセンサタグ10のタグカウンタ値と、が付与されている。
【0047】
S32では、処理部130は、複数個の復調部134を利用して、S22で受信した複数個の応答波を復調し、各応答波から、IDと計測値とタグカウンタ値とを含む信号を取得する。
【0048】
S34では、処理部130は、複数個のカウンタ付与部136を利用して、各応答波から取得したID及び計測値に、現在の装置カウンタ値を付与して、端末装置500に送信する複数個のデータを生成する。
【0049】
S36では、処理部130は、外部I/F114を介して、S34で生成された複数個のデータを端末装置500に送信する。
【0050】
続くS40では、処理部130は、重複タグ10aから受信された応答波に付与されているタグカウンタ値、即ち、重複タグ10aに対応する復調部134aから取得されるタグカウンタ値が「0」を示すのか否かを判断する。処理部130は、当該タグカウンタ値が「0」を示さないと判断する場合(S40でNO)、S42をスキップして、S50に進む。一方、処理部130は、当該タグカウンタ値が「0」を示すと判断する場合(S40でYES)、S42に進む。
【0051】
S42では、処理部130は、リセット部140を利用して、装置カウンタ142をリセットする。処理部130は、S42が終了すると、S50に進む。
【0052】
S50では、処理部130は、図3の処理を終了するための終了指示が読取装置に入力されるのか否かを判断する。当該終了指示は、読取装置100及び200の操作部を操作することにより入力されてもよいし、端末装置500から終了指示を示す信号を受信することにより入力されてもよい。
【0053】
処理部130は、終了指示が読取装置に入力されたと判断する場合(S50でYES)に、終了コマンドが付与された電波を外部に送信しつつ、図3の処理を終了する。終了コマンドは、センサタグ10の状態を、測定状態から非測定状態に変更するコマンドである。センサタグ10は、読取装置から終了コマンドが付与された電波を受信すると、センサタグ10の状態を、測定状態から非測定状態に変更する。
【0054】
また、処理部130は、終了指示が読取装置に入力されていないと判断する場合(S50でNO)に、S30の監視に戻る。即ち、処理部130は、終了指示が読取装置に入力されるまで、読取電波の送信を繰り返す。
【0055】
なお、S12において2個以上の重複タグ10aの中から第1タグが選択された後に、第1タグで異常が発生する場合が想定される。この場合には、処理部130は、第1タグに代えて、2個以上の重複タグ10aの中から第2タグを選択する。そして、処理部130は、第2タグからの応答波に付与されているタグカウンタ値を利用して、装置カウンタをリセットするのか否かの判断を実行する(S40)。このような構成によれば、第1タグに異常が発生したとしても読取装置内のカウンタの同期を継続することができる。なお、変形例では、第1タグに代えて第2タグを選択する上記の処理が実行されなくてもよい。
【0056】
(具体的なケース;図4
本ケースでは、重複範囲102aから、1個の重複タグ10aが検索される(図3のS10でYES)。当該1個の重複タグ10aは、ID「tg1」によって識別される。これにより、読取装置100及び200の双方において、図3のS20以降の処理が実行される。
【0057】
T10Aでは、読取装置100は、読取電波を重複タグ10aに送信し、T10Bでは、読取装置200は、読取電波を重複タグ10aに送信する(S20)。なお、読取装置100の読取電波は、読取範囲102内の全てのセンサタグ10にも到達し、読取装置200の読取電波は、読取範囲202内の全てのセンサタグ10にも到達する。図4では、対象4の表面に設置されている全てのセンサタグ10のうち、重複タグ10aを図示し、残りのセンサタグ10の図示を省略している。
【0058】
重複タグ10aは、T10A及びT10Bにおいて、各読取装置100及び200から読取電波を受信すると、T12において、センサ40から計測値V1を取得する。T14では、重複タグ10aは、タグカウンタ32から現在のタグカウンタ値「0」を取得する。そして、重複タグ10aは、T16A及びT16Bにおいて、ID「tg1」と計測値V1とタグカウンタ値「0」が付与された応答波を各読取装置100及び200に送信する。なお、応答波が送信されると、タグカウンタ値は「0」から「1」にインクリメントされる。
【0059】
読取装置100は、T16Aにおいて、重複タグ10aから応答波を受信すると、T20Aにおいて、当該応答波を復調して、当該応答波からID「tg1」と計測値V1とタグカウンタ値「0」を含む信号を取得する(S32)。そして、読取装置100は、ID「tg1」と計測値V1に現在の装置カウンタ値C1を付与する(S34)。これにより、ID「tg1」と計測値V1と装置カウンタ値C1とを含むデータが生成される。
【0060】
T22Aでは、読取装置100は、T20Aで生成されたデータを端末装置500に送信する。なお、本ケースでは、読取装置100は、重複タグ10aだけでなく、読取範囲102内の残りの全てのセンサタグ10からも応答波を受信する。このため、T22Aでは、読取装置100は、さらに、残りのセンサタグ10で計測された計測値を含むデータも端末装置500に送信する。残りのセンサタグ10に対応するデータは、ID「tg1」とは異なるIDを含むとともに、同じ装置カウンタ値C1を含む。
【0061】
また、読取装置100は、T16Aにおいて重複タグ10aから受信された応答波に付与されているタグカウンタ値が「0」を示すと判断する(S40でYES)。これにより、読取装置100は、T24Aにおいて、読取装置100の装置カウンタ142をリセットする(S42)。
【0062】
また、読取装置200も、読取装置100のT16A~T24Aと同様に、T16B~T24Bの処理を実行する。ここで、T20Bでは、読取装置200は、ID「tg1」と計測値V1に、読取装置200の現在の装置カウンタ値C2を付与する。装置カウンタ値C2は、装置カウンタ値C1と異なる値である。これは、現時点にて、読取装置100の装置カウンタ142と読取装置200の装置カウンタ142が同期されていないからである。
【0063】
また、T24Bでは、読取装置200は、読取装置200の装置カウンタ142をリセットする(S42)。読取装置100及び200は、T16A及びT16Bにおいて、同じタイミングで重複タグ10aから応答波を受信するので、T24A及びT24Bも、同じタイミングで実行される。即ち、読取装置100及び200は、装置カウンタ142を同じタイミングでリセットする。この結果、読取装置100の装置カウンタ142と読取装置200の装置カウンタ142が同期される。
【0064】
また、端末装置500は、T22Aにおいて、読取装置100から装置カウンタ値C1を含むデータを受信し、T22Bにおいて、読取装置200から装置カウンタ値C2を含むデータを受信する。上記したように、装置カウンタ値C2は、装置カウンタ値C1と異なる。このため、T30では、端末装置500は、読取装置100の装置カウンタ142と読取装置200の装置カウンタ142が未だ同期されていないと判断し、T22A及びT22Bで受信したデータ群を分析しない。即ち、T14で取得された計測値V1は分析に利用されない。
【0065】
本ケースでは、読取装置100及び200は、さらに、読取電波の送信を繰り返し実行する。T40A~T52A及びT40B~T52Bは、計測値V2が取得される点、タグカウンタ値が「1」を示す点、及び、読取装置100の装置カウンタ値と読取装置200の装置カウンタ値が同じC3を示す点を除いて、T10A~T22A及びT10B~T22Bと同様である。このため、T60では、端末装置500は、読取装置100の装置カウンタ142と読取装置200の装置カウンタ142が同期されていると判断する。端末装置500は、同期済みのカウンタ値C3を利用して、読取装置100及び読取装置200から取得した全ての計測値、即ち、対象4の表面に設置されている全てのセンサタグ10に対応する全ての計測値を同期する。これにより、全ての計測値を正確に分析することができる。
【0066】
(本実施例の効果)
本実施例の構成によれば、読取装置100の読取範囲102と読取装置200の読取範囲とが重複する重複範囲102aに設置されている重複タグ10aから送信される応答波を基準として、読取装置100の装置カウンタ142と読取装置200の装置カウンタ142とを同期することができる。読取装置100及び読取装置200に特別な機構を備えることなく、読取装置内のカウンタを簡易に同期することができる。
【0067】
また、本実施例によれば、重複タグ10aからタグカウンタ値「0」が付与された応答波が散発的に送信される。具体的には、最小値「0」~最大値「255」の間で、最小値「0」を示す場合にのみ、タグカウンタ値「0」が付与された応答波が送信される。装置カウンタ142をリセットするための散発的な応答波をタグカウンタ32の出力値を利用して実現することができる。
【0068】
また、例えば、重複タグ10aがセンサ40を備えないシンプルなタグである比較例が想定される。この比較例では、重複タグ10aとしてセンサタグ10以外のタグを別途に用意する必要がある。これに対して、本実施例の構成によれば、重複タグ10aをセンサタグ10と兼用させて、センサタグ10以外のタグを別途に用意しなくてもよい。なお、変形例では、上記の比較例を採用してもよい。
【0069】
(対応関係)
情報読取システム2が、「情報読取システム」の一例である。複数個のセンサタグ10、アンテナ12、付与部30、タグカウンタ32、センサ40が、それぞれ、「複数個のタグ」、「アンテナ」、「付与部」、「タグカウンタ」、「センサ」の一例である。読取装置100、読取装置200が、それぞれ、「第1読取装置」、「第2読取装置」の一例である。アンテナ112、装置カウンタ142、リセット部140が、それぞれ、「アンテナ」、「装置カウンタ」、「リセット部」の一例である。重複タグ10a、読取範囲102、読取範囲202が、それぞれ、「特定タグ」、「第1範囲」、「第2範囲」の一例である。重複範囲102aが、「第1重複範囲」の一例である。タグカウンタ値「0」を含む応答波、タグカウンタ値「0」が、それぞれ、「特定の応答波」、「所定の回数」の一例である。端末装置500が、「分析装置」の一例である。図3のS12の処理を実行する処理部130、S36の処理を実行する処理部130が、それぞれ、「選択部」、「送信部」の一例である。
【0070】
(第2実施例)
(読取装置100及び200の処理;図3
本実施例は、読取装置100及び200の処理の一部が異なる点を除いて、第1実施例と同様である。本実施例では、図3のS10において検索信号が複数回に亘って送信される。そして、S12において、処理部130は、1個以上の重複タグ10aの中から、応答波の受信頻度が最も高い1個の重複タグ10aを選択する。受信頻度を利用して、2個以上の重複タグ10aの中から、信頼性の高い最適な1個の重複タグ10aを選択することができる。
【0071】
(第3実施例)
(情報読取システム2の構成;図5
本実施例の情報読取システム2は、読取装置100及び200に加えて、読取装置300を備える。図5に示すように、読取装置300は、読取装置100及び200の間に配置される。読取装置300は、端末装置500に接続されている。
【0072】
図5の破線で示す読取範囲302は、読取装置300が読取可能な範囲を示す。図5に示すように、読取装置100の読取範囲102と読取装置300の読取範囲302は、重複している。また、読取装置200の読取範囲202と読取装置300の読取範囲302も、重複している。以下では、読取範囲102と読取範囲302が重複する範囲である第1重複範囲302bに存在するセンサタグ10と、読取範囲202と読取範囲302が重複する範囲である第2重複範囲302cに存在するセンサタグ10と、をそれぞれ、第1重複タグ10b、第2重複タグ10cと記載する。
【0073】
(読取装置300の構成;図6
読取装置300は、第1実施例の読取装置100と異なり、2個の装置カウンタ142a及び142bを備える。具体的には、処理部130は、第1装置カウンタ142bと、第2装置カウンタ142cと、第1リセット部140bと、第2リセット部140cと、を備える。第1リセット部140bは、第1装置カウンタ142bに接続されている。第1リセット部140bは、第1装置カウンタ142bのカウントをリセットする。第2リセット部140cは、第2装置カウンタ142cに接続されている。第2リセット部140cは、第2装置カウンタ142cのカウントをリセットする。なお、以下では、第1装置カウンタ142bから出力される値、第2装置カウンタ142cから出力される値を、それぞれ、第1装置カウンタ値、第2装置カウンタ値と記載する。
【0074】
また、第1リセット部140bは、複数個の復調部134のうち、第1重複タグ10bからの電波を復調する特定の復調部134bに接続されている。また、第2リセット部140cは、複数個の復調部134のうち、第2重複タグ10cからの電波を復調する特定の復調部134cに接続されている。
【0075】
本実施例の読取装置100及び200は、第1実施例の読取装置100及び200と同一の構成を有する。なお、変形例では、本実施例の読取装置100及び200の少なくとも一方は、読取装置300と同一の構成を有していてもよい。
【0076】
(読取装置の処理;図3
図7を参照して、読取装置300の処理部130によって実行される処理について説明する。図7の処理のトリガは、図3の処理のトリガと同じである。
【0077】
S110では、処理部130は、読取装置100及び300の間の第1重複範囲302b内に第1重複タグ10bが存在するのか否かを判断する。具体的な処理方法は、図3のS10と同様である。処理部130は、第1重複タグ10bが存在すると判断する場合(S110でYES)に、S112に進む。一方、処理部130は、第1重複タグ10bが存在しないと判断する場合(S110でNO)に、S110の判断に戻る。
【0078】
S112では、処理部130は、読取装置300及び200の間の第2重複範囲302c内に第2重複タグ10cが存在するのか否かを判断する。具体的な処理方法は、図3のS10と同様である。処理部130は、第2重複タグ10cが存在すると判断する場合(S112でYES)に、S120に進む。一方、処理部130は、第2重複タグ10cが存在しないと判断する場合(S112でNO)に、S112の判断に戻る。
【0079】
S120~S132は、図3のS20~S32と同様である。S134は、第1装置カウンタ値と第2装置カウンタ値との双方が付与される点を除いて、図3のS34と同様である。S136は、図3のS36と同様である。S140では、処理部130は、第1重複タグ10bから受信された応答波に付与されているタグカウンタ値が「0」を示すのか否かを判断する。処理部130は、当該タグカウンタ値が「0」を示すと判断する場合(S140でYES)に、S142に進む。
【0080】
S142では、処理部130は、第1リセット部140bを利用して、第1装置カウンタ142bをリセットする。
【0081】
また、処理部130は、第1重複タグ10bから受信された応答波に付与されているタグカウンタ値が「0」を示さないと判断する場合(S140でNO)に、S142をスキップして、S144に進む。S144は、第2重複タグ10cから受信された応答波に付与されているタグカウンタ値が利用される点を除いて、S140と同様である。処理部130は、当該タグカウンタ値が「0」を示すと判断する場合(S144でYES)に、S146に進む。
【0082】
S146では、処理部130は、第2リセット部140cを利用して、第2装置カウンタ142cをリセットする。
【0083】
また、処理部130は、S142が終了する場合、S146が終了する場合、S144においてタグカウンタ値が「0」を示さないと判断される場合(S144でNO)に、S150に進む。S150は、図3のS50と同様である。
【0084】
(具体的なケース;図8図9
本実施例では、重複タグ10b及び10aからの応答波を利用して、読取装置内の装置カウンタをリセットする。ここで、第1重複タグ10bは、ID「tg2」によって識別され、第2重複タグ10cは、ID「tg3」によって識別される。
【0085】
本実施例の読取装置300では、2個の装置カウンタ142b及び142cの双方がリセットされる。図8のケースでは、読取装置100の装置カウンタ142と、読取装置300の第1装置カウンタ142bと、が既にリセットされている。即ち、図8の初めでは、読取装置100の装置カウンタ142と第1装置カウンタ142bが同期済みである一方、読取装置200の装置カウンタ142と第2装置カウンタ142cは、未だ同期されていない。
【0086】
T110A~T11Dでは、各読取装置100~300が読取電波を外部に送信する。T112B、T114B、T116A、T116Bは、第1重複タグ10bにおいて取得された計測値V3が利用される点と、第1重複タグ10bのID「tg2」が応答波に付与される点と、を除いて、図4のT42、T44、T46A、T46Bと同様である。また、T112C、T114C、T116C、T116Dは、第2重複タグ10cにおいて計測値V4が取得される点と、第2重複タグ10cのID「tg3」が応答波に付与される点と、を除いて、図4のT42、T44、T46A、T46Bと同様である。
【0087】
T120Aは、読取装置100の装置カウンタ値C4が付与される点を除いて、図3のT50Aと同様である。T122Aでは、読取装置100は、ID「tg2」と計測値V3と装置カウンタ値C4を含むデータを端末装置500に送信する。なお、本ケースでも、読取装置100は、T122Aにおいて、重複範囲102a内の残りのセンサタグ10で計測された計測値を含むデータを端末装置500に送信する。残りのセンサタグ10に対応するデータは、同じ装置カウンタ値C4を含む。
【0088】
T120Dは、読取装置200の装置カウンタ値C6が付与される点を除いて、図3のT50Bと同様である。T122Dでは、読取装置200は、ID「tg3」と計測値V4と装置カウンタ値C6を含むデータを端末装置500に送信する。なお、本ケースでも、読取装置200は、T122Dにおいて、読取範囲202内の残りのセンサタグ10で計測された計測値を含むデータを端末装置500に送信する。残りのセンサタグ10に対応するデータは、同じ装置カウンタ値C6を含む。
【0089】
T120Bでは、読取装置300は、第1重複タグ10bからの応答波と第2重複タグ10cからの応答波とを復調する。読取装置300は、第1重複タグ10bの応答波からID「tg2」と計測値V3とタグカウンタ値「1」を含む信号を取得する(S132)。また、読取装置300は、第2重複タグ10cの応答波からID「tg3」と計測値V4とタグカウンタ値「0」を含む信号を取得する(S132)。読取装置300は、第1重複タグ10bについて、ID「tg2」と計測値V3と現在の第1装置カウンタ値C4と現在の第2装置カウンタ値C5とを含むデータを生成する。さらに、読取装置300は、第2重複タグ10cについて、ID「tg3」と計測値V4と現在の第1装置カウンタ値C4と現在の第2装置カウンタ値C5を含むデータを生成する。ここで、第1装置カウンタ値C4は、T120Aにおいて読取装置100が付与した装置カウンタ値C4と同じである。一方、第2装置カウンタ値C5は、T120Dにおいて読取装置200が付与した装置カウンタ値C6と異なる。
【0090】
T122Bでは、読取装置300は、T120Bで生成されたデータを端末装置500に送信する。なお、本ケースでは、読取装置300は、T122Bにおいて、読取範囲302に含まれる全てのセンサタグ10のうち、2個の重複タグ10b及び10c以外の残りのセンサタグ10で計測された計測値を含むデータも端末装置500に送信する。残りのセンサタグ10に対応するデータも、同じ組み合わせ、即ち、第1装置カウンタ値C4及び第2装置カウンタ値C5を含む。
【0091】
また、読取装置300は、T116Cにおいて第2重複タグ10cから受信された応答波に付与されているタグカウンタ値が「0」を示すと判断する(S144でYES)。T124Bでは、読取装置300は、第2装置カウンタ142cをリセットする(S146)。また、T124Dは、図4のT24Bと同様である。この結果、読取装置300の第2装置カウンタ142cと読取装置200の装置カウンタ142が同期される。
【0092】
また、端末装置500は、T122Aにおいて、読取装置100から装置カウンタ値C4を含むデータを受信し、T122Dにおいて、読取装置200から装置カウンタ値C6を含むデータを受信する。さらに、端末装置500は、T122Bにおいて、読取装置300から2個の装置カウンタ値C4及びC5を含むデータを受信する。上記したように、読取装置200の装置カウンタ値C6は、読取装置300からの第2装置カウンタ値C5と異なる。また、読取装置300からのデータ内の2個の装置カウンタ値の差分は、C4-C5である。読取装置100の装置カウンタ値C4と読取装置200の装置カウンタ値C6の差分は、C4-C6である。即ち、差分C4-C5は、差分C4-C6と異なる。このため、T130では、端末装置500は、読取装置100と読取装置300の間では装置カウンタが同期されているものの、読取装置200と読取装置300の間では装置カウンタが未だ同期されていないと判断する。この結果、端末装置500は、T122A~T122Dのデータ群を分析しない。
【0093】
図9は、図8の続きである。T210A~T210Dは、図8のT110A~T110Dと同様である。T212B、T214B、T216A、T216Bは、第1重複タグ10bにおいて取得された計測値V5とタグカウンタ値「2」が利用される点を除いて、T112A、T114A、T116A、T116Bと同様である。また、T212C、T214C、T216C、T216Dは、第2重複タグ10cにおいて取得された計測値V6とタグカウンタ値「1」が利用される点を除いて、T112C、T114C、T116C、T116Dと同様である。
【0094】
T220A、T222Aは、計測値V5と装置カウンタ値C7が利用される点を除いて、T120A、T122Aと同様である。T220Dは、計測値V6と装置カウンタ値C8が利用される点を除いて、T120D、T122Dと同様である。T220B、T222Bは、計測値V5、V6、第1装置カウンタ値C7、及び、第2装置カウンタ値C8が利用される点を除いて、T220B、T222Bと同様である。
【0095】
図9のケースでは、読取装置100の装置カウンタ値C7は、読取装置300の第1装置カウンタ値C7と同じであり、読取装置200の装置カウンタ値C8は、読取装置300の第2装置カウンタ値C8と同じである。また、読取装置300からのデータ内の2個の装置カウンタ値の差分は、C7-C8である。読取装置100の装置カウンタ値C7と読取装置200の装置カウンタ値C8の差分は、C7-C8である。即ち、差分C7-C8は、差分C7-C8と同じである。このため、T230では、端末装置500は、読取装置100と読取装置300の間と、読取装置200と読取装置300の間と、の双方において装置カウンタが同期されていると判断する。端末装置500は、同期済みの装置カウンタ値C7、C8、及び、差分C7-C8を利用して、読取装置100、200、及び300から取得した全ての計測値、即ち、対象4の表面に設置されている全てのセンサタグ10に対応する全ての計測値を同期する。これにより、全ての計測値を正確に分析することができる。
【0096】
(対応関係)
読取装置100、読取装置200が、それぞれ、「第1読取装置」、「第3読取装置」の一例である。読取装置300が、「第2読取装置」の一例である。第1装置カウンタ142b、第2装置カウンタ142cが、それぞれ、「一方の装置カウンタ」、「他方の装置カウンタ」の一例である。読取範囲102、読取範囲302が、それぞれ、「第1範囲」、「第2範囲」の一例である。読取範囲202が「第3範囲」の一例である。第1重複範囲302b、第2重複範囲302cが、それぞれ、「第1重複範囲」、「第2重複範囲」の一例である。第1重複タグ10b、第2重複タグ10cが、それぞれ、「一方の特定タグ」、「他方の特定タグ」の一例である。
【0097】
以上、本明細書で開示する技術の具体例を説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、以下の変形例を採用してもよい。
【0098】
(変形例1) 装置カウンタ142をリセットするための信号は、タグカウンタ値「0」を含む応答波に限らず、例えば、情報が付与されていないパルス信号であってもよい。このようなパルス信号でも、特定の信号を散発的に送信可能である。ただ、情報が付与された通常の応答波とは別にパルス信号を送信する特別なプログラムが必要である。これに対して、タグカウンタ値「0」を含む応答波を利用する実施例では、特別なプログラムが不要である。本変形例におけるパルス信号が、「特定の応答波」の一例である。
【0099】
(変形例2) 図3のS12の処理は実行されなくてもよい。本変形例では、「選択部」を省略可能である。
【0100】
(変形例3) 「所定の回数」は、「0」に限らず、他の値、例えば、「10」等の最小値から最大値の間の任意の値であってもよい。また、タグカウンタ32は、送信回数をカウントするカウンタに限らず、例えば、時間をカウントするタイマであってもよい。
【0101】
(変形例4) 情報読取システム2は、端末装置500を備えなくてもよい。本変形例では、「分析装置」を省略可能である。
【0102】
本明細書に開示の技術は、第1及び第2実施例のような2個の読取装置、又は、第3実施例のような3個の読取装置に限らず、例えば、4個以上の読取装置を含む情報読取システムにも採用可能である。
【0103】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0104】
2 :情報読取システム
4 :対象
10 :センサタグ
10a :重複タグ
10b :第1重複タグ
10c :第2重複タグ
12 :アンテナ
14 :復調部
16 :変調部
30 :付与部
32 :タグカウンタ
40 :センサ
100 :読取装置
102 :読取範囲
102a :重複範囲
112 :アンテナ
114 :外部I/F
130 :処理部
134 :復調部
134a :復調部
134b :復調部
134c :復調部
136 :カウンタ付与部
140 :リセット部
140b :第1リセット部
140c :第2リセット部
142 :装置カウンタ
142a :装置カウンタ
142b :第1装置カウンタ
142c :第2装置カウンタ
200 :読取装置
202 :読取範囲
300 :読取装置
302 :読取範囲
302b :第1重複範囲
302c :第2重複範囲
500 :端末装置
510 :分析プログラム
C1~C8 :装置カウンタ値
V1~V6 :計測値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9