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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092290
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】巻上機
(51)【国際特許分類】
   B66D 1/46 20060101AFI20240701BHJP
【FI】
B66D1/46 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208120
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000129367
【氏名又は名称】株式会社キトー
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】IAT弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小林 龍生
(57)【要約】
【課題】 荷の上げ下げにおける作業を効率良く行う。
【解決手段】 本発明の巻上機は、モータと、モータを駆動するモータ制御部と、駆動するモータの負荷を算出する負荷算出部と、を有し、負荷算出部は、所定の回転速度で駆動するモータの負荷を算出し、モータ制御部は、モータの定格負荷に対する、負荷算出部にて算出されたモータの負荷の比率が第1値以下となるとき、モータの回転速度を、所定の回転速度を超過した第1速度に加速し、比率が第1値を超過し且つ当該第1値よりも高い第2値以下となるとき、モータの回転速度を、所定の回転速度を超過し且つ第1速度未満となる第2速度に加速し、比率が第2値を超過するとき、モータの回転速度を、所定の回転速度を超過し且つ第2速度未満となる第3速度に加速するものである。
【選択図】 図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータを駆動するモータ制御部と、
駆動する前記モータの負荷を算出する負荷算出部と、
を有し、
前記負荷算出部は、所定の回転速度で駆動する前記モータの負荷を算出し、
前記モータ制御部は、
前記モータの定格負荷に対する、前記負荷算出部にて算出された前記モータの負荷の比率が第1値以下となるとき、前記モータの回転速度を、前記所定の回転速度を超過した第1速度に加速し、
前記比率が前記第1値を超過し且つ当該第1値よりも高い第2値以下となるとき、前記モータの回転速度を、前記所定の回転速度を超過し且つ前記第1速度未満となる第2速度に加速し、
前記比率が前記第2値を超過するとき、前記モータの回転速度を、前記所定の回転速度を超過し且つ前記第2速度未満となる第3速度に加速する
ことを特徴とする巻上機。
【請求項2】
第1スイッチ及び第2スイッチを含む2段押しスイッチを有し、
前記モータ制御部は、前記第1スイッチがオンとなるとき、前記モータを前記所定の回転速度で駆動し、
前記負荷算出部は、少なくとも前記第1スイッチがオンとなるとき、前記第2スイッチのオンオフに関わらず、前記所定の回転速度で駆動する前記モータの負荷の算出を行い、
前記モータ制御部は、前記第1スイッチ及び前記第2スイッチがオンとなるとき、前記負荷算出部における前記モータの負荷の算出が行われるまで、前記モータの回転速度の加速を待機して、前記モータを前記所定の回転速度で駆動することを特徴とする請求項1に記載の巻上機。
【請求項3】
前記モータ制御部は、前記第2スイッチがオンからオフとなり前記第1スイッチのみがオンとなり、前記モータを前記所定の回転速度に減速している途中で、前記第2スイッチが再度オンとなるときには、前記モータの回転速度を前記第2スイッチが再度オンとなったときの回転速度に保持し、
前記負荷算出部は、前記モータの回転速度が、前記第2スイッチが再度オンとなるときの回転速度に保持された状態で、前記モータの負荷を再度算出し、
前記モータ制御部は、前記モータにおける回転速度を、前記負荷算出部により再度算出された負荷に応じた回転速度に加速することを特徴とする請求項2に記載の巻上機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷物の上げ下げを行うロープホイストやチェーンブロックなどの巻上機に関する。
【背景技術】
【0002】
ロープホイストやチェーンブロックなどの巻上機は、フックに荷を掛けた状態で操作スイッチ等の操作を行なって重量のある荷物の上げ下げを行うものである。このような巻上機の中には、荷物の上げ下げ時に駆動するモータの負荷を検出し、検出されたモータの負荷が軽負荷であるか否かの判定を行い、当該判定の結果に基づいて、モータの回転速度を、軽負荷時の回転速度または重負荷時の回転速度に加速するものがある(特許文献1参照)。
【0003】
巻上機では、例えば荷の上げ作業を行うとき、荷を掛けたフックを吊り下げるロープやチェーンなどが弛んでいる状態から巻き上げることが多い。ロープやチェーンの巻き上げ時に、ロープやチェーンが弛んだ状態から張った状態に変化するとき、モータの負荷が急激に増大(変化)する。したがって、モータの負荷を正確に検出するためには、モータの負荷の検出は、モータの負荷が安定している状態、すなわち、ロープやチェーンが張った状態かつ一定速度で荷を上げているときに実行する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6312951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の2段押しスイッチを有する巻上機では、当該2段押しスイッチの押圧操作によって、低速運転と高速運転とを切替えることができる。また、この他に、高速運転で負荷検出(負荷判定)を行い、重負荷と判定した場合に例えば5m/min、軽負荷と判定した場合には例えば8m/minにまで加速することで、作業効率を高めるようにした巻上機も存在する。このような巻上機では、モータの負荷が重負荷であると判定された場合のモータの回転速度は、モータの負荷が定格負荷となることを想定した回転速度に設定されている。その一方で、巻上機を用いて実際に荷を上げ下げする作業では、モータの負荷が定格負荷となることは多くない。したがって、モータの負荷が重負荷であると判定された場合には、モータの負荷が定格負荷より小さい場合であってもモータの回転速度が十分に速くなく、荷物の上げ下げにいまだ時間がかかり、作業効率が十分に高められているとはいえなかった。このような巻上機で作業効率を十分に高めるために重負荷でのモータの回転速度を上げようとすると、より高出力のモータを採用しなければならず、コストアップにつながるといった問題があった。
【0006】
また、このような2段押しスイッチを有する巻上機では、当該2段押しスイッチが2段目まで押圧操作された場合に、低速運転(例えば0.8m/min)から第一高速運転(例えば5m/min)まで加速し、その後、速度が安定した状態で負荷検出(負荷判定)を行い、この負荷判定で軽負荷と判定した場合に第二高速運転(例えば8m/min)までさらに加速するようになっている。そのため、低速運転(例えば0.8m/min)から第一高速運転(例えば5m/min)までの増速幅が大きく、モータ負荷が安定するまでに時間を要することになり、応答性が悪く作業効率向上の妨げとなるといった問題もあった。
【0007】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、コストアップをすることなく、荷の上げ下げにおける作業を効率良く行えるようにした巻上機を提供することを目的にしている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点の巻上機は、モータと、モータを駆動するモータ制御部と、駆動するモータの負荷を算出する負荷算出部と、を有し、負荷算出部は、所定の回転速度で駆動するモータの負荷を算出し、モータ制御部は、モータの定格負荷に対する、負荷算出部にて算出されたモータの負荷の比率が第1値以下となるとき、モータの回転速度を、所定の回転速度を超過した第1速度に加速し、比率が第1値を超過し且つ当該第1値よりも高い第2値以下となるとき、モータの回転速度を、所定の回転速度を超過し且つ第1速度未満となる第2速度に加速し、比率が第2値を超過するとき、モータの回転速度を、所定の回転速度を超過し且つ第2速度未満となる第3速度に加速するものである。
【0009】
また、上述の発明において、第1スイッチ及び第2スイッチを含む2段押しスイッチを有し、モータ制御部は、第1スイッチがオンとなるとき、モータを所定の回転速度で駆動し、負荷算出部は、少なくとも第1スイッチがオンとなるとき、第2スイッチのオンオフに関わらず、所定の回転速度で駆動するモータの負荷の算出を行い、モータ制御部は、第1スイッチ及び第2スイッチがオンとなるとき、負荷算出部におけるモータの負荷の算出が行われるまで、モータの回転速度の加速を待機して、モータを所定の回転速度で駆動する、ことが好ましい。
【0010】
また、上述の発明において、モータ制御部は、第2スイッチがオンからオフとなり第1スイッチのみがオンとなり、モータを所定の回転速度に減速している途中で、第2スイッチが再度オンとなるときには、モータの回転速度を第2スイッチが再度オンとなったときの回転速度に保持し、負荷算出部は、モータの回転速度が、第2スイッチが再度オンとなるときの回転速度に保持された状態で、モータの負荷を再度算出し、モータ制御部は、モータにおける回転速度を、負荷算出部により再度算出された負荷に応じた回転速度に加速する、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、荷の上げ下げにおける作業を効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の一実施の形態に係る巻上機の全体構成の一例を示す斜視図である。
図2図2は、図1に示す巻上機の制御的な構成の一例を示す図である。
図3図3は、制御装置の構成の一例を示す図である。
図4図4は、荷を上げるときの巻上機における処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図5図5は、駆動モータが第1の高速駆動状態で駆動しているときの、駆動モータの負荷を算出した後に、高速巻上げ指令が解除されたときの巻上機における処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の巻上機の一実施形態について図面を用いて説明する。図1は、巻上機10の全体構成を示す斜視図である。図2は、巻上機10の制御的な構成を示す図である。図1に示すように、巻上機10は、巻上機本体部20と、上フック30と、下フック40と、操作部50と、巻き上げ済みのロードチェーンC1を蓄え保持するチェーンバケット60とを主要な構成要素としている。
【0014】
巻上機本体部20は、上フック30を介して、天井等の所定の部位に吊り下げることが可能となっている。図2に示すように、巻上機本体部20は、駆動モータ22と、減速機構23と、ブレーキ機構24と、ロードチェーンC1を巻き上げるロードシーブ25と、上限リミットスイッチ26と、下限リミットスイッチ27と、インバータ28と、制御装置70と、を内部に備えている。
【0015】
なお、図1及び図2では、ロードチェーンC1と、当該ロードチェーンC1を巻き上げるロードシーブ25とを備えた巻上機10としているが、ロードチェーンC1とロードシーブ25とに代えて、図示しないロープと巻き取りドラムからなる巻上機とすることも可能である。この場合、巻き取り済みのロープは巻き取りドラムで保持するのでチェーンバケット60は不要となる。
【0016】
駆動モータ22は、ロードシーブ25を駆動する駆動力を与えるモータである。本実施の形態では、駆動モータ22の回転位置(詳細には、駆動モータ22の回転軸における回転位置)は、ベクトル演算によって検出される。なお、駆動モータの回転位置をベクトル演算によらずエンコーダを用いて直接的に検出してやってもよい。以下では、ロードシーブ25によりロードチェーンC1が巻き上げられるときの駆動モータ22の駆動を正回転駆動とし、ロードシーブ25によりロードチェーンC1が巻き下げられるときの駆動モータ22の駆動を逆回転駆動と称する場合がある。
【0017】
また、減速機構23は、駆動モータ22の回転速度を減速して、ロードシーブ25に伝達する部分である。また、ブレーキ機構24は、駆動モータ22の駆動時には、電磁力によりブレーキ力を解放可能な部分であるものの、駆動モータ22が駆動していない状態でも、荷Pを保持するように、ブレーキ力を生じさせる部分である。
【0018】
ロードシーブ25は、ロードチェーンC1の巻き上げまたは巻き下げを行う部分であり、その外周に沿って、ロードチェーンC1の金属環が入り込むチェーンポケットが複数設けられている。
【0019】
上限リミットスイッチ26は、ロードチェーンC1が巻き上げられたときの限界となる位置(機械的・構造的に設定された上限位置)を検出するためのスイッチである。また、下限リミットスイッチ27は、ロードチェーンC1が巻き下げられたときの限界となる位置(機械的・構造的に設定された下限位置)を検出するためのスイッチである。
【0020】
インバータ28は、詳細については図示を省略するが、電源装置80(図3参照)から供給される一定電圧、一定周波数の交流電圧をコンバータ回路で直流電圧に変換し、インバータ回路において、例えば所望の周波数及び所望の電圧に変更した交流電圧を駆動モータ22に供給する。
【0021】
操作部50は、巻上機本体部20の制御装置70に、有線又は無線により電気的に接続される。図1においては、操作部50が、ケーブル90を用いて巻上機本体部20の制御装置70に接続されている場合を示している。操作部50は、上昇ボタン51と、下降ボタン52と、非常停止ボタン53とを有する。上昇ボタン51及び下降ボタン52は、例えば押し込みボタンである。図示は省略するが、上昇ボタン51は、第1スイッチ54a及び第2スイッチ54bを含む2段押しスイッチ54を内部に有する。
【0022】
第1スイッチ54aは、上昇ボタン51の押し込み量が第1の押し込み量となるときにオンとなるスイッチである。また、第2スイッチ54bは、上昇ボタン51の押し込み量が、第1の押し込み量とは異なる第2の押し込み量となるときにオンとなるスイッチである。なお、第2の押し込み量は、第1の押し込む量よりも大きく設定されている。したがって、上昇ボタン51が押し込まれ、その押し込み量が第1の押し込み量となるとき、第1スイッチ54aがまずオンとなる。そして、上昇ボタン51がさらに押し込まれ、その押し込み量が第2の押し込み量となるとき、第1スイッチ54aだけでなく、第2スイッチ54bもオンとなる。また、上昇ボタン51の押し込み量が第2の押し込み量から第1の押し込み量に変化したときには、第2スイッチ54bがオフとなり、第1スイッチ54aのみがオンとなる。
【0023】
例えば、第1スイッチ54aがオンとなると、駆動モータ22が正回転駆動して、所定の回転速度まで加速する。また、第1スイッチ54aがオンの状態で第2スイッチ54bがオンとなると、後述する高速巻き上げ指令が出力されて、上記所定の回転速度よりも速い回転速度まで加速する。なお、高速巻き上げ指令が出力された後の駆動モータ22の回転速度については後述する。
【0024】
また、第1スイッチ54a及び第2スイッチ54bの各々がオンとなる状態から、第1スイッチ54aのみがオンとなる状態に変化すると、高速巻き上げ指令の出力が停止されて、駆動モータ22の回転速度は、上記所定の回転速度まで減速する。さらに、第1スイッチ54aがオフの状態になると、駆動モータ22の正回転駆動が停止され、同時にブレーキ機構24が作動する。つまり、駆動モータ22によるロードチェーンC1の巻き上げが停止される。
【0025】
下降ボタン52は、ロードチェーンC1を巻き下げる動作を行う際に操作される。下降ボタン52は、上昇ボタン51と同様にして、第1スイッチ55a及び第2スイッチ55bを有する2段押しスイッチ55を内部に有する。第1スイッチ55a、下降ボタン52の押し込み量が第1の押し込み量となるときにオンとなるスイッチである。また、第2スイッチ55bは、下降ボタン52の押し込み量が第1スイッチ55aがオンとなる押し込み量よりも大きい、第2の押し込み量となるときにオンとなるスイッチである。
【0026】
第1スイッチ55aは、下降ボタン52の押し込み量が第1の押し込み量となるときにオンとなるスイッチである。また、第2スイッチ55bは、下降ボタン52の押し込み量が、第1の押し込み量とは異なる第2の押し込み量となるときにオンとなるスイッチである。なお、第2の押し込み量は、第1の押し込む量よりも大きく設定されている。したがって、下降ボタン52が押し込まれ、その押し込み量が第1の押し込み量となるとき、第1スイッチ55aがまずオンとなる。そして、下降ボタン52がさらに押し込まれ、その押し込み量が第2の押し込み量となるとき、第1スイッチ55aだけでなく、第2スイッチ55bもオンとなる。また、下降ボタン52の押し込み量が第2の押し込み量から第1の押し込み量に変化したときには、第2スイッチ55bがオフとなり、第1スイッチ55aのみがオンとなる。
【0027】
例えば、第1スイッチ55aがオンとなると、駆動モータ22が逆回転駆動して、所定の回転速度まで加速する。また、第1スイッチ55aがオンの状態で第2スイッチ55bがオンとなると、後述する高速巻き下げ指令が出力されて、上記所定の回転速度よりも速い回転速度まで加速する。なお、高速巻き下げ指令が出力された後の駆動モータ22の回転速度については後述する。
【0028】
また、第1スイッチ55a及び第2スイッチ55bの各々がオンとなる状態から、第1スイッチ55aのみがオンとなる状態に変化すると、高速巻き下げ指令の出力が停止されて、駆動モータ22の回転速度は、上記所定の回転速度まで減速する。さらに、第1スイッチ55aがオフの状態になると、駆動モータ22の逆回転駆動が停止され、同時にブレーキ機構24が作動する。つまり、駆動モータ22によるロードチェーンC1の巻き下げが停止される。
【0029】
非常停止ボタン53は、巻上機10の異常や、巻上機10の動作を直ちに停止させる必要がある場合に操作される。非常停止ボタン53が操作されると、駆動モータ22への電力の供給が停止され、同時に、ブレーキ機構24が作動して、駆動モータ22によるロードチェーンC1の巻き上げ又は巻き下げが停止される。
【0030】
制御装置70は、インバータ28に対して、駆動モータ22に供給する駆動周波数および電圧に関する指定を与える部分である。制御装置70は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、メモリ(RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、内部ストレージ、外部記憶装置等)、入出力インターフェース等を備えるコンピュータが挙げられる。
【0031】
図3に示すように、制御装置70は、操作入力部71と、速度指令部72と、負荷判定部73と、モータ制御部74と、を有している。操作入力部71は、操作部50に設けたいずれかボタンの操作に基づく運転指令を受け付け、当該運転指令に基づく信号を速度指令部72及び負荷判定部73に出力する。例えば操作部50の上昇ボタン51の押し込みにより第1スイッチ54aがオンとなるときには、操作入力部71は、速度指令部72に巻上げ指令を出力する。また、操作部50の上昇ボタン51の押し込みにより第1スイッチ54aだけでなく、第2スイッチ54bがオンになるとき、操作入力部71は、速度指令部72及び負荷判定部73に高速巻上げ指令を出力する。
【0032】
速度指令部72は、操作入力部71からの指令、又は負荷判定部73における判定結果に基づいた駆動モータ22の回転速度の指令をモータ制御部74に出力する。
【0033】
負荷判定部73は、駆動モータ22の負荷状態を判定する。負荷判定部73は、後述するベクトル演算部76にて求めた、駆動モータ22の定格負荷に対する、算出された駆動モータ22の負荷率(以下、負荷率と称する場合がある)が例えば25%以下となる場合には、駆動モータ22の負荷状態が軽負荷状態であると判定する。また、負荷判定部73は、ベクトル演算部76にて求めた駆動モータ22の負荷率が、例えば25%を超過し、且つ、65%以下となる場合には、駆動モータ22の負荷状態が中負荷状態であると判定する。さらに、負荷判定部73は、ベクトル演算部76にて求めた駆動モータ22の負荷率の割合が65%を超過するとき、駆動モータ22の負荷状態が重負荷状態であると判定する。なお、上述した軽負荷状態、中負荷状態及び重負荷状態のいずれかであるかを判定する際に用いる閾値は一例を示したに過ぎず、適宜設定されるものである。
【0034】
モータ制御部74は、速度指令部72から入力される駆動モータ22の回転速度の指令に基づいて、駆動モータ22を制御する。モータ制御部74は、周波数指令部75及びベクトル演算部76を有する。周波数指令部75は、速度指令部72から出力された駆動モータ22の回転速度の指令を受けて、当該回転速度に基づいた周波数の指令をインバータ28に出力する。ベクトル演算部76は、インバータ28から供給される駆動モータ22の電流値を用いて、駆動モータ22にかかる負荷及び負荷率を算出する。なお、ベクトル演算部76は、請求項に記載の負荷算出部に相当する。
【0035】
次に、荷を上げるときの巻上機10における処理の流れについて、図4のフローチャートを用いて説明する。ここで、図4のフローチャートに基づく説明の前に、当該フローチャートに関連する用語について、以下に説明する。上述したように、上昇ボタン51の第2スイッチ54bがオンとなった後の駆動モータ22の回転速度は、上昇ボタン51の第1スイッチ54aがオンとなるときの駆動モータ22の回転速度よりも速い。以下では、上昇ボタン51の第1スイッチ54aがオンとなるときの駆動モータ22の駆動状態を低速駆動状態、上昇ボタン51の第2スイッチ54bがオンとなるときの駆動モータ22の駆動状態を高速駆動状態とする。
【0036】
また、上述したように、上昇ボタン51の第2スイッチ54bがオンとなるとき、駆動モータ22は、駆動モータ22の負荷率に応じた回転速度となる。したがって、上述した負荷率が25%以下となるときの駆動モータ22の駆動状態を第1の高速駆動状態、負荷率が25%を超過し、且つ65%以下となるときの駆動モータ22の駆動状態を第2の高速駆動状態、負荷率が65%を超過するときの駆動モータ22の駆動状態を第3の高速駆動状態と称する。
【0037】
図4のフローチャートのステップS101において、作業者が操作部50の上昇ボタン51を第1の押し込み量まで押し込むと、第1スイッチ54aがオンとなる。これを受けて、操作入力部71は、巻上げ指令を速度指令部72に出力する。
【0038】
ステップS102において、速度指令部72は、駆動モータ22の回転速度を所定の回転速度(既定の低速)として駆動する指令をモータ制御部74に出力する。モータ制御部74は、速度指令部72からの指令に基づいた駆動周波数をインバータ28に出力する。これにより、駆動モータ22が正回転駆動して、設定された駆動周波数に基づく回転速度(規定の低速に対応)となるまで加速されて、駆動モータ22の駆動状態が低速駆動状態となる(ステップS103)。駆動モータ22の駆動状態が低速駆動状態となると、ロードチェーンC1は、例えば、巻上速度0.8m/minで巻き上げられる。
【0039】
作業者が操作部50の上昇ボタン51を第1の押し込み量から、さらに押し込み、第2の押し込み量まで押し込むと、第1スイッチ54aだけでなく、第2スイッチ54bもオンとなる。このとき、操作入力部71は、高速巻上げ指令を速度指令部72及び負荷判定部73に出力する(ステップS104;Yes)。一方、作業者が操作部50の上昇ボタン51を第1の押し込み量のままで保持している場合は、操作入力部71は、高速巻上げ指令を速度指令部72及び負荷判定部73に出力しない(ステップS104はNo)。この場合には、駆動モータ22の駆動状態が低速駆動状態で保持される。
【0040】
操作入力部71が速度指令部72及び負荷判定部73に対して高速巻上げ指令を出力したとき、以下の処理が行われる。例えば、ベクトル演算部76は、駆動モータ22が駆動されると、駆動モータ22に供給される電流値を用いて、駆動モータ22にかかる負荷率を一定の時間間隔で算出している。図示は省略するが、例えば、駆動モータ22が駆動を開始したとき、駆動モータ22に作用するトルク(電流値)は安定していない。例えば、制御装置70は周波数指令部75とベクトル演算部76により、駆動モータ22の駆動軸の回転速度を演算により検出している。そして、ベクトル演算部76は、求めた駆動モータ22の回転速度が低速駆動状態における駆動モータ22の回転速度となった後で得られる所定期間の電流値に対して平滑化処理を行い、平滑化処理を行った電流値を用いて、駆動モータ22の負荷及び負荷率を算出する(ステップS105)。
【0041】
ステップS106において、負荷判定部73は、ベクトル演算部76にて求めた(ステップS105で算出された)駆動モータ22の負荷率に基づいて、駆動モータ22の負荷状態を判定する。
【0042】
負荷判定部73が駆動モータ22の負荷率が25%以下と判定すると(ステップS106:Yes)、ステップS107に進む。一方、負荷判定部73が駆動モータ22の負荷率が25%を超過すると判定すると(ステップS106:No)、後述するステップS121に進む。ここで、駆動モータ22の負荷率25%が請求項に記載の第1値に相当する。
【0043】
負荷判定部73が駆動モータ22の負荷率が25%以下と判定すると、ステップS107に進み、モータ制御部74は、負荷算出無効処理を実行する。これを受けて、ベクトル演算部76は、所定期間に得られる電流値に対する平滑化処理を停止する。
【0044】
負荷判定部73が駆動モータ22の負荷率が25%以下と判定すると、速度指令部72は、駆動モータ22の負荷状態が軽負荷状態であるときの回転速度で駆動する指令(軽負荷指令)をモータ制御部74の周波数指令部75に出力する。これを受けて、モータ制御部74の周波数指令部75は、速度指令部72からの指令(軽負荷指令)に基づいた駆動周波数をインバータに出力する。その結果、駆動モータ22の回転速度が加速され(ステップS108)、駆動モータ22の駆動状態が第1の高速駆動状態となる(ステップS109)。なお、第1の高速駆動状態で駆動される駆動モータ22の回転速度が、請求項に記載の第1速度に相当する。駆動モータ22の駆動状態が第1の高速駆動状態になると、ロードチェーンC1は、例えば、巻上速度12.0m/minで巻き上げられる。
【0045】
駆動モータ22の駆動状態が第1の高速駆動状態となると、ベクトル演算部76は、所定期間に得られる電流値に対して平滑化処理を行って、駆動モータ22の負荷及び負荷率を算出する(ステップS110)。負荷判定部73は、ベクトル演算部76にて求めた負荷率を用いて、駆動モータ22の負荷状態を判定する。
【0046】
負荷判定部73において負荷率が25%を超過すると判定されたとき(ステップS111:Yes)、駆動モータ22の負荷状態は軽負荷状態ではなくなっている。この場合、ステップS112に進む。一方、求めた割合が25%以下となるとき(ステップS111:No)は、駆動モータ22の駆動状態が第1の高速駆動状態で保持される。したがって、ロードチェーンC1は、例えば、巻上速度12.0m/minで巻き上げられる。この場合、ステップS111の判定処理が繰り返し実行される。
【0047】
負荷判定部73において負荷率が25%を超過すると判定されたとき(ステップS111:Yes)、ステップS112に進み、モータ制御部74は、負荷算出無効処理を実行する。これを受けて、ベクトル演算部76は、所定期間に得られる電流値に対する平滑化処理を停止する。そして、速度指令部72は、モータ制御部74に対して、駆動モータ22の負荷状態が中負荷状態であるときの回転速度で駆動する指令をモータ制御部74の周波数指令部75に出力する。これを受けて、周波数指令部75は、速度指令部72からの指令に基づいた駆動周波数をインバータ28に出力する。これにより、駆動モータ22の回転速度が減速され(ステップS113)、駆動モータ22の駆動状態が第2の高速駆動状態となる(ステップS124)。
【0048】
負荷判定部73において負荷率が25%を超過し、且つ、65%以下と判定されると(ステップS106:No及びステップS121:Yes)、ステップS122に進む。ステップS122において、ベクトル演算部76は、負荷算出無効処理を実行する。これにより、ベクトル演算部76は、所定期間に得られる電流値に対する平滑化処理を停止する。なお、駆動モータ22の負荷率65%が請求項に記載の第2値に相当する。
【0049】
ステップS122の後に、速度指令部72は、駆動モータ22の負荷状態が中負荷状態であるときの回転速度で駆動する指令をモータ制御部74に出力する。これを受けて、モータ制御部74の周波数指令部75は、速度指令部72からの指令に基づいた駆動周波数をインバータ28に出力する。これにより、駆動モータ22の回転速度が加速され(ステップS123)、駆動モータ22の駆動状態が第2の高速駆動状態となる(ステップS124)。なお、第2の高速駆動状態で駆動される駆動モータ22の回転速度は、請求項に記載の第2速度に相当する。駆動モータ22の駆動状態が第2の高速駆動状態になるとき、ロードチェーンC1は、例えば、巻上速度8.0m/minで巻き上げられる。
【0050】
駆動モータ22が第2の高速駆動状態で駆動されるときも、ベクトル演算部76は、所定期間に得られる電流値に対して平滑化処理を行って、駆動モータ22の負荷及び負荷率を算出する(ステップS125)。負荷判定部73は、ベクトル演算部76にて求めた駆動モータ22の負荷率を用いて、駆動モータ22の負荷状態を判定する。
【0051】
負荷判定部73において負荷率が65%を超過すると判定されたとき(ステップS126:Yes)、駆動モータ22の負荷状態は中負荷状態ではなくなっている。この場合、ステップS127に進む。一方、負荷率が65%以下となるとき(ステップS126:No)は、駆動モータ22の駆動状態が第2の高速駆動状態で保持される。したがって、ロードチェーンC1は、例えば、巻上速度8.0m/minで巻き上げられる。この場合、ステップS126の判定処理が繰り返し実行される。
【0052】
負荷率が65%を超過すると判定されたとき(ステップS126:Yes)、ステップS127に進み、モータ制御部74は、負荷算出無効処理を実行する。これを受けて、ベクトル演算部76は、所定期間に得られる電流値に対する平滑化処理を停止する。そして、速度指令部72は、モータ制御部74に対して、駆動モータ22の負荷状態が重負荷状態であるときの回転速度で駆動する指令をモータ制御部74の周波数指令部75に出力する。これを受けて、周波数指令部75は、速度指令部72からの指令に基づいた駆動周波数をインバータに出力する。したがって、駆動モータ22の回転速度が減速され(ステップS128)、駆動モータ22の駆動状態が第3の高速駆動状態となる(ステップS133)。
【0053】
負荷判定部73において、上述したステップS106にて求めた負荷率が65%を超過すると判定されたとき(ステップS106:No及びステップS121:No)、ステップS131に進み、ベクトル演算部76は、負荷算出無効処理を実行する。これを受けて、ベクトル演算部76は、所定期間に得られる電流値に対する平滑化処理を停止する。
【0054】
ステップS131の後に、ステップS132において、速度指令部72は、駆動モータ22の負荷状態が重負荷状態であるときの回転速度で駆動する指令をモータ制御部74に出力する。これを受けて、モータ制御部74の周波数指令部75は、速度指令部72からの指令に基づいた駆動周波数をインバータ28に出力する。その結果、駆動モータ22の回転速度が加速され(ステップS132)、駆動モータ22の駆動状態が第3の高速駆動状態となる(ステップS133)。なお、第3の高速駆動状態で駆動される駆動モータ22の回転速度が、請求項に記載の第3速度に相当する。駆動モータ22の駆動状態が第3の高速駆動状態となると、ロードチェーンC1は、例えば、巻上速度5.0m/minで巻き上げられる。
【0055】
なお、駆動モータ22が第1から第3の高速駆動状態のいずれかで駆動されているときに、操作部50の上昇ボタン51の押し込みを解除すると、操作入力部71は、速度指令部72に停止の指令を出力する。これを受けて、速度指令部72は、駆動モータ22の回転速度を0で駆動する、すなわち、駆動モータ22を停止させる指令を周波数指令部75に出力する。これを受けて、モータ制御部74の周波数指令部75は、速度指令部72からの指令に基づいた駆動周波数をインバータ28に出力する。その結果、駆動モータ22への電力の供給が停止され、駆動モータ22の駆動が停止される。このとき、ブレーキ機構24では、電磁力によるブレーキ力を解放できなくなるので、当該ブレーキ力の作用によって、駆動モータ22の駆動軸の回転が停止され、荷Pは駆動モータ22が停止したときの位置で停止される。
【0056】
このように、操作部50の上昇ボタン51を第2の押し込み量まで押し込んで、第1スイッチ54aおよび第2スイッチ54bがオンとなると、駆動モータ22が低速駆動状態で駆動した後、駆動モータ22の負荷状態が求められ、駆動モータ22の負荷状態に合わせた回転速度で駆動モータ22が駆動する。その結果、駆動モータ22の負荷状態に合わせた巻上速度での荷の上げ下げが可能となり、荷の上げ下げにおける作業を効率良く行うことができる。また、荷の上げ下げの駆動モータ22の負荷状態に基づいて駆動モータ22の回転速度を切り替えられることで、より高出力の駆動モータを採用しなくとも、効率良い荷の上げ下げ作業を行うことができる。その結果、巻上機自体のコストアップを防止することができる。
【0057】
また、上昇ボタン51が第2の押し込み量まで押し込まれた場合、駆動モータ22が低速駆動状態で負荷状態を求めることで、直ちにまたは短時間で、モータの負荷が安定している状態で負荷状態を求めることができ、従来と比べて応答性を高めることができる。
【0058】
なお、図4に示すフローチャートにおいては、荷を上げるときの巻上機10の処理の流れを説明しているが、荷Pを下げるときの巻上機10の処理も同様にして、下降ボタン52の押し込みによる第1スイッチ55aのオンにより、駆動モータ22が逆回転駆動して、駆動モータ22が低速駆動状態で駆動する。そして、下降ボタン52のさらなる押し込みによる第2スイッチ55bのオンにより、駆動モータ22の負荷状態が求められ、求めた駆動モータ22の負荷状態に応じた高速駆動状態で駆動モータ22が駆動する。すなわち、図4に示すフローチャートにおいて、ステップS101、S104の「巻上げ」という文言を「巻下げ」と読み替えたフローとすることで、図4に基づいて荷Pを巻下げる処理を実行することができる。
【0059】
なお、図4に示すフローチャートにおいては、速度指令部72及び負荷判定部73が高速巻上げ指令を受け付けた後に、ベクトル演算部76が駆動モータ22の負荷及び負荷率を求めるようにしている。しかしながら、ベクトル演算部76が駆動モータ22の負荷及び負荷率を求める処理は、速度指令部72及び負荷判定部73が巻上げ指令を受け付けたときに行うようにしてもよい。
【0060】
また、上昇ボタン51を、第1の押し込み量で停止させずに、第2の押し込み量まで押し込む場合がある。この場合、第1スイッチ54a及び第2スイッチ54bが各々オンとなることで、操作入力部71は、巻上げ指令と高速巻上げ指令との両方の指令を速度指令部72及び負荷判定部73に出力するが、速度指令部72は、駆動モータ22の回転速度が所定の回転速度になるまで高速巻上げ指令を保留する。そして、駆動モータ22の回転速度が所定の回転速度になることを受けて、速度指令部72は、高速巻き上げ指令を有効として、ベクトル演算部76において駆動モータ22の負荷及び負荷率を算出し、負荷判定部73による判定結果を受け付ける。
【0061】
また、駆動モータ22の駆動状態を変更したい場合、作業者は、上昇ボタン51の押し込み量を第2の押し込み量から第1の押し込み量に戻した後、再度第2の押し込み量に変化させることがある。上昇ボタン51の押し込み量を第2の押し込み量から第1の押し込み量に戻すと、駆動モータ22の回転速度は、所定の回転速度まで減速する。例えば、駆動モータ22の回転速度が所定の回転速度まで減速する過程で、上昇ボタン51の押し込み量を第1の押し込み量から第2の押し込み量に戻す動作が行われたとき、速度指令部72及び負荷判定部73は、駆動モータ22の回転速度を、第2スイッチ54bを再度オンとしたときの回転速度で保持し、その時点における駆動モータ22の負荷を算出して、算出した負荷に応じて、駆動モータ22を駆動させるようにしてもよい。
【0062】
以下、駆動モータ22の負荷の算出を行った後に、第2スイッチ54bがオフされる場合について説明する。なお、図5のフローチャートにおいて、図4のフローチャートと同一の処理については、同一のステップ番号を付している。以下、駆動モータ22の駆動状態が第1の高速駆動状態となるときを一例として説明する。
【0063】
図5に示すように、ステップS109の第1の高速駆動状態となり、ステップS110で駆動モータ22の負荷の算出が行われた後、またはステップS124の第2の高速駆動状態となりステップS125で駆動モータ22の負荷の算出が行われた後、あるいはステップS133での第3の高速駆動状態となった後、作業者が操作部50の上昇ボタン51の押し込み量を低減させると、第2スイッチ54bがオンからオフになる。これを受けて、操作入力部71は、速度指令部72及び負荷判定部73に対して、高速巻上げ指令の出力を解除する。操作入力部71が速度指令部72及び負荷判定部73に対して高速巻上げ指令の出力を解除すると(ステップS140:Yes)、ステップS151に進む。
【0064】
一方、速度指令部72に対して高速巻上げ指令の出力を解除しない場合、例えば第1の高速駆動状態であれば(ステップS141:Yes)、ステップS111以降の処理が実行される。また、例えば第2の高速駆動状態であれば(ステップS141:No及びステップS142:Yes)、ステップS126以降の処理が実行される。さらに、例えば第3の高速駆動状態であれば(ステップS141:No及びステップS142:No)、ステップS133以降の処理が実行される。
【0065】
また、操作入力部71が速度指令部72及び負荷判定部73に対して高速巻上げ指令の出力を解除すると、ステップS151において、モータ制御部74は、負荷算出無効処理を実行する。これを受けて、ベクトル演算部76は、所定期間に得られる電流値に対する平滑化処理を停止する。そして、速度指令部72は、モータ制御部74に対して、駆動モータ22が低速駆動状態であるときの回転速度で駆動する指令をモータ制御部74の周波数指令部75に出力する。これを受けて、周波数指令部75は、速度指令部72からの指令に基づいた駆動周波数をインバータ28に出力する。したがって、駆動モータ22の回転速度が減速される(ステップS152)。
【0066】
駆動モータ22の回転速度が減速される過程で、作業者が操作部50の上昇ボタン51を再度押し込むと、第2スイッチ54bが再びオンになる。これを受けて、操作入力部71は、速度指令部72及び負荷判定部73に、高速巻上げ指令を出力する。速度指令部72は、高速巻上げ指令を受けて(ステップS153:Yes)、駆動モータ22が低速駆動状態であるか否かを判定する(ステップS154)。駆動モータ22の駆動状態が低速駆動状態である(ステップS154:Yes)場合には、ステップS103に戻る。なお、速度指令部72が高速巻上げ指令を受けていないとき(ステップS153:No)もステップS103に戻る。
【0067】
一方、駆動モータ22の回転速度が減速されている過程など、駆動モータ22の駆動状態が低速駆動状態となっていないとき(ステップS154:No)、速度指令部72は、駆動モータ22の回転速度を、第2スイッチ54bが再びオンになったときの回転速度で駆動する指令をモータ制御部74に出力する。これを受けて、モータ制御部74の周波数指令部75は、指令が入力された際の駆動周波数を固定し、インバータ28に出力する。これにより、駆動モータ22が、第2スイッチ54bがオンになったときの一定時間後に上記の駆動周波数での回転速度で安定して駆動する(ステップS155)。そして、ステップS156において、ベクトル演算部76は、所定期間に得られる電流値に対して平滑化処理を行って、駆動モータ22の負荷及び負荷率を算出する。そして、ステップS106に戻り、負荷判定部73が負荷判定を実行する。
【0068】
すなわち、第2スイッチ54bがオンからオフになるとき、駆動モータ22の駆動状態が低速駆動状態となるように、駆動モータ22の回転速度が減速する。そして、駆動モータ22の回転速度が減速して、駆動モータ22の駆動状態が低速駆動状態となった後、第2スイッチ54bが再度オンとなると、高速巻上げ指令が出力されて、再度負荷検出が行われて、駆動モータ22が、検出された負荷に基づいた駆動状態となる。これによれば、例えば、荷Pの上げ下げに係る駆動モータ22の回転速度を、駆動モータ22の負荷に合わせた回転速度となるように再設定することができる。これにより、例えば、従来の駆動モータを用いた場合に、重負荷でのモータの回転速度を上げることが可能となる。その結果、より高出力な駆動モータを用いる必要がなくなり、巻上機10のコストアップを抑えることを防止することができる。
【0069】
また、駆動モータ22の回転速度が減速して、駆動モータ22の駆動状態が低速駆動状態となる前に、第2スイッチ54bが再度オンとなると、駆動モータ22は、第2スイッチ54bが再度オンとなったときの回転速度を維持して、駆動モータ22の負荷の算出や算出した負荷の判定を行い、判定された負荷に基づいた回転速度で駆動モータ22が回転する。これによれば、第2スイッチ54bを再度オンとした場合には、駆動モータ22の駆動状態が低速駆動状態となるまで、駆動モータ22の負荷の算出や算出した負荷の判定を待機しなくとも、これら処理が実行されて、負荷に合わせた駆動モータ22の駆動状態に移行する。その結果、荷Pの上げ下げを従来よりも短時間で行うことができる。
【0070】
なお、図5においては、駆動モータ22の負荷の算出を行った後のタイミングで、第2スイッチがオフされる場合の処理の流れについて説明しているが、第2スイッチ54bがオフされるタイミングは、駆動モータ22の負荷の算出を行った後のタイミングに限定されるものではない。
【0071】
<効果について>
上述した巻上機10においては、駆動モータ22と、駆動モータ22を駆動するモータ制御部74と、駆動する駆動モータ22の負荷を算出するベクトル演算部76と、を有し、ベクトル演算部76は、所定の回転速度で駆動する駆動モータ22の負荷を算出し、モータ制御部74は、駆動モータ22の定格負荷に対する、ベクトル演算部76にて算出された駆動モータ22の負荷の比率が第1値以下となるとき、駆動モータ22の回転速度を、所定の回転速度を超過した第1速度に加速し、比率が第1値を超過し且つ当該第1値よりも高い第2値以下となるとき、駆動モータ22の回転速度を、所定の回転速度を超過し且つ第1速度未満となる第2速度に加速し、比率が第2値を超過するとき、駆動モータ22の回転速度を、所定の回転速度から当該所定の回転速度を超過し且つ第2速度未満となる第3速度に加速するものである。
【0072】
これによれば、駆動モータ22が低速駆動状態で駆動した後、駆動モータ22の負荷状態が求められ、駆動モータ22の負荷状態に合わせた回転速度で駆動モータ22が駆動する。これにより、駆動モータ22の負荷状態に合わせた巻上速度での荷の上げ下げが可能となるので、例えば、従来の駆動モータを用いた場合であっても重負荷での駆動モータ22の回転速度を上げることが可能となる。その結果、より高出力な駆動モータを用いる必要がなくなり、巻上機10のコストアップを抑えることを防止することができる。
【0073】
また、第1スイッチ54a及び第2スイッチ54bを含む2段押しスイッチ54を有し、モータ制御部74は、第1スイッチ54aがオンとなるとき、駆動モータ22を所定の回転速度で駆動し、ベクトル演算部76は、少なくとも第1スイッチ54aがオンとなるとき、第2スイッチ54bのオンオフに関わらず、所定の回転速度で駆動する駆動モータ22の負荷の算出を行い、モータ制御部74は、第1スイッチ54a及び第2スイッチ54bがオンとなるとき、ベクトル演算部76における駆動モータ22の負荷の算出が行われるまで、駆動モータ22の回転速度の切り替えを待機して、駆動モータ22を所定の回転速度で駆動するものである。
【0074】
これによれば、駆動モータ22が所定の回転速度で駆動したことを受けて、駆動モータ22の負荷検出が行われる。したがって、第2スイッチ54bがオンされて、駆動モータ22が加速される期間に駆動モータ22の負荷を算出して、算出した駆動モータ22の負荷に応じた回転速度に切り替えるときに比べて、駆動モータ22の負荷に基づいた回転速度に切り替わるまでの経過時間を短縮することできる。
【0075】
また、モータ制御部74は、第2スイッチ54bがオンからオフとなり第1スイッチ54aのみがオンとなり、駆動モータ22を所定の回転速度に減速している途中で、第2スイッチ54bが再度オンとなるときには、駆動モータ22の回転速度を第2スイッチ54bが再度オンとなったときの回転速度に保持し、ベクトル演算部76は、駆動モータ22の回転速度が、第2スイッチ54bが再度オンとなるときの回転速度に保持された状態で、駆動モータ22の負荷を再度算出し、モータ制御部74は、駆動モータ22における回転速度を、ベクトル演算部76により再度算出された負荷に応じた回転速度に加速するものである。
【0076】
第2スイッチ54bがオンからオフになるときには、駆動モータ22の回転速度が、第1スイッチ54aがオンされたときの駆動モータ22の回転速度である所定の回転速度まで減速される。駆動モータ22の回転速度が減速される過程で第2スイッチ54bが再度オンとなるときには、所定の回転速度まで減速されずに、第2スイッチ54bが再度オンされたときの回転速度で保持されて、駆動モータ22の負荷が算出される。したがって、駆動モータ22の回転速度が所定の回転速度まで減速された後、第2スイッチ54bが再度オンされたときに求めた回転速度まで加速されるまでの期間が短縮される。その結果、荷Pの上げ下げに伴う作業効率を良くすることが可能となる。
【符号の説明】
【0077】
10…巻上機
22…駆動モータ
50…操作部
54…2段押しスイッチ
54a…第1スイッチ
54b…第2スイッチ
74…モータ制御部
76…ベクトル演算部

図1
図2
図3
図4
図5