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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092296
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】クレーン操作支援装置及びクレーン
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/22 20060101AFI20240701BHJP
   B66C 23/00 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
B66C13/22 Z
B66C23/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208129
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】山本 泰広
(72)【発明者】
【氏名】呉 春男
(72)【発明者】
【氏名】中森 啓太
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 貴俊
【テーマコード(参考)】
3F204
3F205
【Fターム(参考)】
3F204AA04
3F204BA02
3F204DD01
3F204DD02
3F204DE10
3F205AA06
3F205CA01
3F205DA01
(57)【要約】
【課題】作業スピードの低下を抑えつつ直感的なクレーン操作を実現する。
【解決手段】クレーン1は、ブーム13の先端から垂下されるフック14の昇降、ブーム13の旋回及び起伏のそれぞれの動作を独立的に操作する通常モードと、単一の操作により、ブーム13の旋回と、フック14の昇降および起伏の少なくとも一方との動作を複合させて、フック14の移動を操作する微調整モードと、に運転操作モードを切り替え可能に構成されている。これにより、作業スピードの低下を抑えつつ直感的なクレーン操作を実現することができる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブームを有するクレーンの運転操作を支援するクレーン操作支援装置であって、
前記ブームの先端から垂下されるフックの昇降、前記ブームの旋回及び起伏のそれぞれの動作を独立的に操作する第1操作モードと、
単一の操作により、前記ブームの旋回と、フックの昇降および起伏の少なくとも一方との動作を複合させて、前記フックの移動を操作する第2操作モードと、
に運転操作モードを切り替え可能に構成されている、
クレーン操作支援装置。
【請求項2】
前記第2操作モードは、前記第1操作モードに比べて動作を制限する運転操作モードである、
請求項1に記載のクレーン操作支援装置。
【請求項3】
前記第2操作モードでは、前記フックを吊り下げるロープの巻取り及び繰出しを行うウインチの最大回転速度と前記ブームの最大旋回角速度とのいずれか少なくとも1つが制限される、
請求項2に記載のクレーン操作支援装置。
【請求項4】
前記第1操作モードにおいて操作入力を受け付ける第1操作部と、
前記第2操作モードにおいて操作入力を受け付け、前記第1操作部とは異なる第2操作部と、を備える、
請求項1に記載のクレーン操作支援装置。
【請求項5】
前記第2操作モードは、単一の操作により、前記フックの昇降、前記ブームの旋回及び起伏を複合した動作を操作するモードである、
請求項1に記載のクレーン操作支援装置。
【請求項6】
前記第2操作モードでは、前記単一の操作による動作に加えて、前記単一の操作を行う操作部とは異なる昇降操作部の操作に応じた昇降動作を追加可能である、
請求項1記載のクレーン操作支援装置。
【請求項7】
前記第1操作モードと前記第2操作モードとに運転操作モードを切り替える切替操作を受け付ける切替操作部を備える、
請求項1に記載のクレーン操作支援装置。
【請求項8】
前記フックに対して玉掛けまたは玉外し作業を行うことを検出する検出手段と、
運転操作モードを選択するモード選択手段と、
を備え、
前記モード選択手段は、
常態で前記第1操作モードを選択し、
前記検出手段が前記フックに対して玉掛けまたは玉外し作業を行うことを検出した場合に、前記第1操作モードから前記第2操作モードへの切り替えをオペレータに促すか、当該切り替えを行う、
請求項1に記載のクレーン操作支援装置。
【請求項9】
前記検出手段は、前記フックの直下周辺にいる作業者を検出し、
前記検出手段が前記フックの直下周辺にいる作業者を検出した場合に、前記第1操作モードから前記第2操作モードへの切り替えをオペレータに促すか、当該切り替えを行う、
請求項8に記載のクレーン操作支援装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のクレーン操作支援装置を搭載した、
クレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン操作支援装置及びクレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、クレーンの主たる運転操作は、ブーム起伏角度、ブーム旋回角度、吊荷ワイヤー長さ等の可動部パラメータを直接制御することで行われる。
これに対し、特許文献1に記載の技術では、操作手段によって入力された吊荷(フック)の移動方向に基づいて、吊荷が当該移動方向に直線的に移動するように、上記可動部パラメータを制御している。これにより、直感的なクレーン操作の実現を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-169080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、駆動速度が互いに異なる複数の可動部パラメータを複合させる制御を行っているため、作業スピードの低下が懸念される。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、作業スピードの低下を抑えつつ直感的なクレーン操作を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ブームを有するクレーンの運転操作を支援するクレーン操作支援装置であって、
前記ブームの先端から垂下されるフックの昇降、前記ブームの旋回及び起伏のそれぞれの動作を独立的に操作する第1操作モードと、
単一の操作により、前記ブームの旋回と、フックの昇降および起伏の少なくとも一方との動作を複合させて、前記フックの移動を操作する第2操作モードと、
に運転操作モードを切り替え可能に構成されている。
【0006】
また、本発明は、クレーンであって、
上記クレーン操作支援装置を搭載している。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、作業スピードの低下を抑えつつ直感的なクレーン操作を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係るクレーンを示す側面図である。
図2】実施形態に係るクレーンの概略の機能構成を示すブロック図である。
図3】キャビン内の運転操作部及び表示操作部の配置例を示す図である。
図4】実施形態に係る操作支援処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の各実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
[クレーンの構成]
図1は、本実施形態に係るクレーン1を示す側面図である。
この図に示すように、クレーン1は、いわゆる移動式のクローラクレーンである。具体的に、クレーン1は、自走可能なクローラ式の下部走行体11と、下部走行体11上に旋回可能に搭載された上部旋回体12とを含む。
なお、以下では、クレーン1の搭乗者(オペレータ)から見た前後左右上下の各方向をクレーン1の当該方向として説明する。つまり、クレーン1の旋回軸からカウンタウエイト125が配置される位置へ向く方向を後ろ、その反対側を前(ブーム13が配置される向き)として説明する。
【0011】
上部旋回体12の前側部分には、ブーム13が起伏可能に取り付けられている。上部旋回体12の右側前部には、オペレータが着座してクレーン1の操縦を行うキャビン121が配置されている。
【0012】
ブーム13の起伏動作は、起伏ウインチ123によるワイヤーロープ(起伏ロープ)131の巻き取り又は繰り出しによって行われる。
ブーム13の先端(上端)からは、巻上ロープ132を介してフック14が吊り下げられている。巻上ロープ132は、フック14に接続された先端側とは反対側が、上部旋回体12上の昇降ウインチ124に巻回されている。フック14の昇降動作は、昇降ウインチ124による巻上ロープ132の巻き取り又は繰り出しによって行われる。
【0013】
クレーン1は、上記の構成により、フック14に吊荷Hを掛け、ワイヤーロープ132を巻き取って吊荷Hを吊り上げた後、上部旋回体12を旋回し、必要あればブーム13の起伏角度を変えることで、吊荷Hを輸送先の上方まで移動させることができる。その後、クレーン1は、ワイヤーロープ132を繰り出すことで、吊荷Hを輸送先に降下できる。
【0014】
図2は、クレーン1の概略の機能構成を示すブロック図であり、図3は、キャビン121内の後述の運転操作部30及び表示操作部40の配置例を示す図であって、キャビン121内に着座して前方を視認したオペレータ視点の図である。
図2に示すように、クレーン1は、上記構成のほか、駆動部20、運転操作部30、表示操作部40、通信部50、動作・姿勢状態センサ55、カメラ60、記憶部70、制御部80を備える。このうち、運転操作部30、表示操作部40は、例えばキャビン121内に配置されてもよい。また、クレーン1はクレーン操作支援装置10を備える。クレーン操作支援装置10は、運転操作部30、カメラ60、制御部80を含む。
【0015】
駆動部20は、クレーン1の各部を動作させる駆動回路であり、旋回駆動回路21、起伏駆動回路22、昇降駆動回路23を含む。
旋回駆動回路21は、上部旋回体12の旋回装置122を駆動する。旋回装置122は、例えば、油圧ポンプから供給される圧油で回転する油圧モータから動力を受けて上部旋回体12を旋回させる。旋回駆動回路21は、制御部80から出力される旋回の要求信号に基づいて、油圧ポンプと油圧モータの間に配置された制御弁を駆動することで、油圧モータを動作させて旋回装置122を駆動又は制動する。
起伏駆動回路22は、起伏ウインチ123を駆動する。起伏ウインチ123は、油圧ポンプから供給される圧油で回転する油圧モータから動力を受けてドラムを回転させ、ドラムにワイヤーロープ(起伏ロープ)131を巻き付けるか、ドラムからワイヤーロープ131を繰り出すことで、ブーム13を起伏させる。起伏駆動回路22は、制御部80から出力される起伏の要求信号に基づいて、油圧ポンプと油圧モータの間に配置された制御弁を駆動することで、油圧モータを動作させて起伏ウインチ123を駆動する。
昇降駆動回路23は、昇降ウインチ124を駆動する。昇降ウインチ124は、油圧ポンプから供給される圧油で回転する油圧モータから動力を受けてドラムを回転させ、ドラムに巻上ロープ132を巻き付けるか、ドラムから巻上ロープ132を繰り出すことで、フック14を昇降させる。昇降駆動回路23は、制御部80から出力される昇降の要求信号に基づいて、油圧ポンプと油圧モータの間に配置された制御弁を駆動することで、油圧モータを動作させて昇降ウインチ124を駆動する。
【0016】
図3に示すように、運転操作部30は、オペレータによるクレーン1の運転操作を受け付ける操作手段である。
運転操作部30は、旋回運転を行うための旋回レバー31と、起伏運転を行うための起伏レバー32と、昇降運転を行うための昇降レバー33とを含む。旋回レバー31、起伏レバー32及び昇降レバー33は、本発明に係る第1操作部の一例であり、後述する通常モードにおいて操作入力を受け付ける操作手段である。運転操作部30は、これら各レバーの操作内容に応じた操作信号を制御部80に出力する。制御部80は、入力された操作信号に基づいてその操作種別を判別し、旋回操作であればその操作に応じた旋回指令を旋回駆動回路21へ出力し、起伏操作であればその操作に応じた起伏指令を起伏駆動回路22へ出力し、昇降操作であればその操作に応じた昇降指令を昇降駆動回路23へ出力する。
【0017】
また、運転操作部30は、フック14の位置を微調整する微調整レバー34と、運転操作モードを切り替えるモード切替ボタン35とを含む。
微調整レバー34は、本発明に係る第2操作部の一例であり、後述する微調整モードにおいてフック14の位置を水平面内で微調整する操作手段である。微調整レバー34は、クレーン1の前後左右の4方向と、その4方向に対して斜めの任意の方向の操作入力が可能となっている。また、微調整レバー34は、略上下に沿って起立した中央位置をニュートラルポジションとするジョイスティックであり、傾倒方向(操作方向)とフック14の移動方向とが対応している。
微調整モードにおいて微調整レバー34が操作されると、運転操作部30は、微調整レバー34の操作方向に応じた操作信号を制御部80に出力する。制御部80は、入力された操作信号に基づいて微調整レバー34の操作方向を判別し、その操作方向に応じて、旋回駆動回路21、起伏駆動回路22及び昇降駆動回路23のいずれか少なくとも1つを動作させる。より詳しくは、制御部80は、微調整レバー34の操作方向に対応してフック14の水平面上での位置(投影位置)が移動するように、ブーム13の旋回及び起伏、並びにフック14の昇降のいずれか少なくとも1つを実行する。例えば、微調整レバー34が前方に傾倒された場合、制御部80は、起伏駆動回路22を動作させてフック14を倒伏させ、水平面上でのフック14の位置を前方に直線的に移動させる。また、微調整レバー34が右方に傾倒された場合、制御部80は、旋回駆動回路21及び起伏駆動回路22を動作させてフック14を右旋回させつつ倒伏させ、水平面上でのフック14の位置を右方に直線的に移動させる。
【0018】
なお、微調整レバー34(すなわち微調整モードでの操作)は、ブーム13の旋回と、フック14の昇降及び起伏の少なくとも一方との動作を複合させて、鉛直方向(重力方向)と交差する面内における直交2軸のいずれかに沿ったフック14の移動を操作するものであればよい。換言すれば、微調整モードは、微調整レバー34による単一の操作により、ブーム13の旋回と、フック14の昇降及び起伏の少なくとも一方とを複合した動作を操作するモードであればよい。つまり、微調整レバー34によるフック14の移動は、水平面内で動くものでなく昇降を含んでもよい。また、直交2軸(本実施形態ではクレーン1の前後方向と左右方向)の向きは特に限定されない。
【0019】
モード切替ボタン35は、運転操作モードを通常モード(第1操作モード)と微調整モード(第2操作モード)とに切り替える切替操作部である。モード切替ボタン35が押下されていないOFF状態(常態)では、運転操作モードが通常モードとなっており、旋回レバー31、起伏レバー32及び昇降レバー33が機能し、微調整レバー34が機能しない。OFF状態のモード切替ボタン35が押下されてON状態になると、運転操作モードが通常モードから微調整モードに切り替わり、微調整レバー34が機能し、旋回レバー31、起伏レバー32及び昇降レバー33が機能しなくなる。ON状態のモード切替ボタン35が押下されると、OFF状態に復帰する。
【0020】
微調整モードは、通常モードよりもフック14の微小移動に適した運転操作モードであり、フック14の移動速度及び移動量の少なくとも一方が通常モードのときよりも微小になる。つまり、微調整モードは、通常モードに比べて動作が制限される運転操作モードである。
具体的に、微調整モードでは、例えば、フック14の移動速度に通常モードよりも低い最大値(上限値)が設定されている。この最大値は、制御可能な数値範囲のうちの最小値であってもいいし、オペレータが設定できてもよい。このようなフック14の移動速度の制限は、例えば、該当する駆動回路の油圧モータに供給する油量に流量制限を設定することで実現できる。より詳しくは、例えば、昇降ウインチ124の最大回転速度(すなわち巻上ロープ132の最大巻取り又は繰出し速度)と、ブーム13の最大旋回角速度とのうち、いずれか少なくとも1つを制限することで実現できる。特にそれぞれの動作はそれぞれ通常その操作量に対して、フックの動く速度は異なる。例えば、旋回に比べ、起伏の速度は遅い。この場合は、例えば最大旋回角速度落とすことで第2操作モードにおける操作性がよくなる。
また、微調整モードでは、微調整レバー34の1回の操作入力(傾倒)に対して、フック14の移動量の上限が設定されていてもよい(フック14は移動量上限まで動いたら止まる)。
また、微調整モードでは、微調整レバー34の入力量(傾倒角度)に依らずフック14の移動速度が一定であってもよいし、微調整レバー34を倒し続けていると徐々にフック14の移動速度が速くなったりしてもよい。
【0021】
表示操作部40は、画像や音声等の出力により各種情報を表示する表示部41と、オペレータが操作して情報等を入力可能な操作パネル42とを含む。表示部41は、制御部80から入力される表示信号に基づいて各種情報を表示する。操作パネル42は、オペレータの操作内容に応じた操作信号を制御部80に出力する。なお、表示部41は、操作パネル42の少なくとも一部を兼ねるタッチパネルであってもよい。
【0022】
図2に示すように、通信部50は、例えば図示しない情報端末等との間で、直接(又は通信ネットワーク等を介して間接的)に各種情報を送受信可能な通信デバイスである。
カメラ60は、キャビン121の上部に前方向きに取り付けられ、クレーン1前方の所定範囲を撮影する。撮影によって得られた画像情報は、記憶部70に記録される。
【0023】
動作・姿勢状態センサ55は、クレーン1の動作状態や姿勢状態を検出するセンサであり、検出結果を制御部80に出力する。動作・姿勢状態センサ55は、例えば、ブーム角度センサと、三軸慣性センサ(IMU:Inertial Measurement Unit)と、旋回角度センサと、加速度センサとを含む。ブーム角度センサは、ブーム13の起伏角度を検出する。IMUは、ブーム13に取り付けられ、所定の三軸に関するブーム13の加速度及び角加速度を検出する。旋回角度センサは、上部旋回体12の所定の角度方向を基準とする旋回角度を検出する。加速度センサは、上部旋回体12の加速度を検出する。
また、動作・姿勢状態センサ55は、加速度センサにより鉛直方向を検出できる。尚、動作・姿勢状態センサ55は、上記構成に限らず他のセンサを用いてもよい。例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)を設けてその位置情報を基にブーム13の起伏角度等を計算してもよい。
【0024】
記憶部70は、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等により構成されるメモリであり、各種のプログラム及びデータを記憶するとともに、制御部80の作業領域としても機能する。本実施形態の記憶部70は、後述の操作支援処理(図4参照)を実行するための操作支援プログラム71を予め記憶している。
制御部80は、例えばCPU(Central Processing Unit)等により構成され、クレーン1各部の動作を統合制御する。制御部80は、ECU(Electronic Control Unit)の機能を含み、上部旋回体12に配置される。具体的に、制御部80は、オペレータの操作入力等に基づいて駆動部20を動作させたり、記憶部70に予め記憶されているプログラムを展開し、展開されたプログラムと協働して各種処理を実行したりする。
【0025】
[操作支援処理]
続いて、オペレータの運転操作を支援する操作支援処理について説明する。図4は、操作支援処理の流れを示すフローチャートである。
操作支援処理は、クレーン作業におけるオペレータの操作を支援する処理であり、本実施形態では、玉掛け作業時においてフック14の移動を直感的に操作できるようにする。玉掛け作業は、玉掛け作業者が直接あるいはワイヤーロープなどで吊荷Hをフック14に掛ける(又はこれを外す)作業である。操作支援処理は、例えばオペレータの実行操作により制御部80が操作支援プログラム71を読み出して展開することで実行される。
【0026】
図4に示すように、操作支援処理が実行されると、まず制御部80は、オペレータの操作に基づいてクレーン1を運転し、クレーン作業を行う(ステップS1)。
このとき、モード切替ボタン35はOFF状態であり、運転操作モードは通常モードである。通常モードでは、オペレータは旋回レバー31、起伏レバー32及び昇降レバー33を操作することにより、ブーム13の旋回及び起伏、並びにフック14の昇降のそれぞれの動作を独立的に操作するクレーン1の運転を行う。「独立的に操作する」とは、レバー(ジョイスティック)で任意の方向に動かして、左右方向の角度に応じて旋回し、前後方向の角度に応じて独立的に起伏・倒伏するものを含む。この場合、それぞれのレバーの角度で旋回、起伏しているだけなので、例えば、前後方向に対して90度の左右方向に倒した場合には、単に旋回だけが行われて、起伏が行われない。このような操作は、単一の操作で、旋回および起伏の2つの動作を複合させてフックの移動をさせているものではなく、2つの操作部によって旋回、起伏のそれぞれを独立的に動作させてフックを移動させるものである。
【0027】
次に、制御部80は、モード切替ボタン35がON状態であるか否か、つまりオペレータの操作によりモード切替ボタン35が押下されたか否かを判定する(ステップS2)。そして、モード切替ボタン35がOFF状態のままであると判定した場合(ステップS2;No)、制御部80は、当該ステップS2の処理を繰り返す。
【0028】
一方、ステップS2において、モード切替ボタン35がON状態であると判定した場合(ステップS2;Yes)、制御部80は、運転操作モードを通常モードから微調整モードに切り替える(ステップS3)。
この微調整モードへのモード切替により、微調整レバー34が使用可能(機能する状態)になり、旋回レバー31、起伏レバー32及び昇降レバー33が使用不可(機能しない状態)になる。
【0029】
次に、制御部80は、オペレータによる微調整レバー34の操作入力に基づいて、フック14位置の微調整を行う(ステップS4)。
本実施形態では、玉掛け作業時のフック14位置の微調整が微調整レバー34により行われる。このとき、微調整レバー34の操作により、クレーン1の前後方向、左右方向又はその斜め方向に沿って直線的にフック14が移動するため、オペレータは直感的にフック14を操作することができる。また、微調整レバー34の傾倒方向に対応した方向にフック14が移動する(例えば微調整レバー34を前方に倒すとフック14も前方に移動する)ため、オペレータはより直感的にフック14を操作することができる。
さらにこのとき、フック14の移動速度及び移動量の少なくとも一方が通常モードのときよりも微小になるため、オペレータは好適にフック14位置の微調整を行うことができる。
【0030】
次に、制御部80は、モード切替ボタン35がOFF状態であるか否か、つまりオペレータの操作によりモード切替ボタン35の押下が解除されたか否かを判定する(ステップS5)。そして、モード切替ボタン35がON状態のままであると判定した場合(ステップS5;No)、制御部80は、当該ステップS5の処理を繰り返す。
【0031】
一方、ステップS5において、モード切替ボタン35がOFF状態であると判定した場合(ステップS5;Yes)、制御部80は、運転操作モードを微調整モードから通常モードに復帰させる(ステップS6)。
これにより、旋回レバー31、起伏レバー32及び昇降レバー33が使用可能になり、微調整レバー34が使用不可になる。
【0032】
次に、制御部80は、操作支援処理を終了させるか否かを判定し(ステップS7)、終了させないと判定した場合には(ステップS7;No)、上述のステップS1へ処理を移行し、クレーン作業を続行する。
そして、例えば所定位置への吊荷Hの移動完了等により、操作支援処理を終了させると判定した場合には(ステップS7;Yes)、制御部80は、操作支援処理を終了させる。
【0033】
[本実施形態の技術的効果]
以上のように、本実施形態によれば、フック14の昇降、ブーム13の旋回及び起伏の少なくとも1つを操作する通常モード(第1操作モード)と、単一の操作によりブーム13の旋回とフック14の昇降および起伏の少なくとも一方との動作を複合させてフック14の移動を操作する微調整モード(第2操作モード)と、に運転操作モードを切り替え可能に構成されている。
これにより、例えば玉掛け以外の作業時においては通常モードで運転しつつ、玉掛け作業時等の必要に応じて微調整モードに変更し、フック14位置を直交2軸に沿って直感的に操作することができる。
したがって、微調整モードにおいては、駆動速度が異なる複数の可動部のパラメータ制御を複合させるため作業スピードが低下し得るところ、このような運転が常時行われていた従来と異なり、作業スピードの低下を抑えつつ直感的なクレーン操作を実現することができる。
【0034】
また、本実施形態によれば、微調整モードは通常モードに比べて動作を制限する運転操作モードである。
これにより、例えばフック14の移動速度及び移動量の少なくとも一方を微小にして、フック14の位置を好適に微調整することができる。
【0035】
また、本実施形態によれば、微調整モードにおいて操作入力を受け付ける微調整レバー34と、通常モードにおいて操作入力を受け付ける操作部(旋回レバー31、起伏レバー32及び昇降レバー33)とが異なる。
これにより、2つの運転操作モードを混同したりして操作を誤ることなく、これらを明確に区別してクレーン1を操作することができる。
【0036】
また、本実施形態によれば、微調整レバー34が前後方向及び左右方向に対する斜め方向に入力可能に構成されている。
これにより、通常モードと異なり、フック14の斜め方向の位置調整をより直感的に容易に行うことができる。
【0037】
また、本実施形態によれば、通常モードと微調整モードとに運転操作モードを切り替える切替操作を受け付けるモード切替ボタン35を備える。
したがって、モード切替ボタン35を操作するだけで、微調整モードへの移行や通常モードへの復帰を簡便に行うことができる。
【0038】
[その他]
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は上記の実施形態に限られない。
例えば、上記実施形態では、微調整モードにおいては、通常モードで使用する旋回レバー31、起伏レバー32及び昇降レバー33が全て使用不可になることとした。しかし、微調整モードでは、このうち昇降レバー33が使用可能であってもよい。すなわち、微調整モードでは、直交2軸(前後左右)に沿ったフック14の移動とは独立して、さらに、その移動に影響しない(つまり、当該直交2軸を含む面に垂直な方向に沿った)フック14の移動を操作可能であってもよい。この場合、吊荷Hの吊り上げ、吊り下げ作業をそのまま行うことができる。
【0039】
また、上記実施形態では、微調整レバー34がジョイスティックであることとしたが、微調整モードで使用する操作部(方向入力手段)の具体構成はジョイスティック状のものに限定されず、例えば十字ボタン状のものやタッチパネル等であってもよい。また、微調整レバー34は、クレーン1の前後左右の4方向と、その斜め45°方向の4方向との、8方向の操作入力が可能なものでもよい。
さらに、微調整モードで使用する操作部は、例えばクレーン1との間で近距離無線通信が可能な、クレーン1から独立した携帯型のコントローラとして構成し、玉掛け作業者が操作できるようにしてもよい。ただしこの場合、運転操作モードを切り替える切替操作部はクレーン1に配置されたままであるのが好ましい。また、操作部を含むクレーム操作支援装置の少なくとも一部は、キャビン121外に設けられてもよい(遠隔操作含む)。
さらに、微調整モードで使用する操作部は、通常モードで使用するものと異なっていなくともよい。上記実施形態の場合であれば、微調整モードにおいても旋回レバー31、起伏レバー32及び昇降レバー33によってフック14の位置を操作することとしてもよい。つまり、微調整モードでは、微調整レバー34の操作による動作に加えて、旋回レバー31、起伏レバー32及び昇降レバー33の少なくとも1つの操作に応じた動作を追加可能であってもよい。ただしこの場合、微調整モードに切り替えたときに、少なくともブーム13の旋回及び起伏の操作は、その移動速度及び移動量の少なくとも一方が通常モードのときよりも小さくなる。具体的には、負荷が同じ場合において、操作入力量に対して移動速度が低くなる。
【0040】
また、上記実施形態では、オペレータによるモード切替ボタン35の操作により通常モードと微調整モードとに運転操作モードが切り替えられることとした。しかし、フック14位置の微調整が必要な状況が検出された場合に、通常モードから微調整モードに切り替えられることとしてもよい。
具体的には、フック14位置の微調整が不要な常態では、制御部80が通常モードを選択しており、当該通常モードのときにカメラ60により玉掛け作業者がクレーン1の周辺(例えば所定範囲内)に検出された場合に、制御部80が通常モードから微調整モードに切り替えることとしてもよい。このとき、制御部80は、カメラ60がフック14の直下周辺にいる玉掛け作業者を検出(つまり、フック14に対して玉掛けまたは玉外し作業を行うことを検出)した場合に、例えば表示部41に「微調整モードに切り替えますか?」等の表示を行うなどして、通常モードから微調整モードへの切り替えをオペレータに促す(切り替えるか否かを選択させる)こととしてもよい。そして、オペレータにより運転操作モードの切替操作が入力された場合に、この切り替えを行うこととしてもよい。これにより、玉掛け玉外しのタイミングで運転操作モードを切替えやすくなるため、切り替えの手間が少なくなり、操作がより容易になる。
なお、通常モードから微調整モードへの切替条件はカメラ(画像処理)による玉掛け作業者の検出に限定されず、例えば玉掛け作業者とフック14との相対距離が所定範囲内まで近づいた場合に通常モードから微調整モードに切り替える(又はそれを促す)こととしてもよい。玉掛け作業者は例えばビーコン等によって検知すればよい。また、単に荷下ろし位置(目標位置)が決まっていて、その周辺にフック14が移動した場合に切り替えることとしてもよい。また、微調整モードから通常モードへの復帰は、例えば、玉掛け作業者とフック14との相対距離が所定範囲外まで離れた場合でもよいし、オペレータによる切替操作が入力された場合でもよい。
【0041】
また、上記実施形態では、フック14位置の操作は、ブーム13の旋回及び起伏、並びにフック14の昇降により行うこととしたが、これにブーム13の伸縮を含めてもよい。つまり、微調整モードにおいて、微調整レバー34が操作された場合に、ブーム13の旋回、起伏及び伸縮、並びにフック14の昇降のいずれか少なくとも1つを実行することとしてもよい。
また、微調整モードの利用は、フック14位置の微調整を要する状況であれば、玉掛け作業時に限定されない。
【0042】
また、本発明に係るクレーンは、先端からフックが垂下された旋回可能なブームを有するものを広く含み、例えば、ホイールクレーン、トラッククレーン、ジブクレーン、タワークレーンなど、どのようなクレーンであってもよい。さらに、本発明に係るクレーンは、バケットにフックが垂下されたショベルを含む。
その他、実施の形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 クレーン
10 クレーン操作支援装置
11 下部走行体
12 上部旋回体
13 ブーム
14 フック
21 旋回駆動回路
22 起伏駆動回路
23 昇降駆動回路
30 運転操作部
31 旋回レバー(第1操作部)
32 起伏レバー(第1操作部)
33 昇降レバー(第1操作部、昇降操作部)
34 微調整レバー(第2操作部)
35 モード切替ボタン(切替操作部)
41 表示部
60 カメラ(検出手段)
80 制御部
121 キャビン
122 旋回装置
123 起伏ウインチ
124 昇降ウインチ
131 ワイヤーロープ
132 巻上ロープ
H 吊荷
図1
図2
図3
図4