IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友重機械工業株式会社の特許一覧

特開2024-92298プレス管理システム、プレス管理方法及びプレス管理プログラム
<図1>
  • 特開-プレス管理システム、プレス管理方法及びプレス管理プログラム 図1
  • 特開-プレス管理システム、プレス管理方法及びプレス管理プログラム 図2
  • 特開-プレス管理システム、プレス管理方法及びプレス管理プログラム 図3
  • 特開-プレス管理システム、プレス管理方法及びプレス管理プログラム 図4
  • 特開-プレス管理システム、プレス管理方法及びプレス管理プログラム 図5
  • 特開-プレス管理システム、プレス管理方法及びプレス管理プログラム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092298
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】プレス管理システム、プレス管理方法及びプレス管理プログラム
(51)【国際特許分類】
   B21J 9/20 20060101AFI20240701BHJP
   B30B 15/00 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
B21J9/20
B30B15/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208131
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】生沼 大暉
(72)【発明者】
【氏名】古賀 方土
【テーマコード(参考)】
4E087
4E088
【Fターム(参考)】
4E087AA10
4E087CA11
4E087CB01
4E087EA15
4E087EB07
4E087EC01
4E087GA20
4E087GB04
4E088JJ02
4E088JJ04
4E088JJ10
(57)【要約】
【課題】プレス加工後の製品品質を好適に推定する。
【解決手段】プレス管理システム1は、プレス装置2の運転状態に関する計測データ66aを取得するセンサ類37と、記憶部66と、制御部67と、を備えている。制御部67は、プレス装置2による製品の検査結果を、計測データ66aと対応付けて記憶部66に記憶させ、計測データ66aと検査結果を対応付けた学習データを機械学習させて学習モデル66bを作成し、センサ類37が取得した計測データ66aと学習モデル66bとに基づいて、検査結果を推定する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス装置の運転状態に関する運転情報を取得する情報取得部と、
前記プレス装置による製品の検査結果を、前記運転情報と対応付けて記憶部に記憶させる記憶制御部と、
前記運転情報と前記検査結果を対応付けた学習データを機械学習させて学習モデルを作成するモデル作成部と、
前記情報取得部が取得した前記運転情報と前記学習モデルとに基づいて、前記検査結果を推定する推定部と、
を備えるプレス管理システム。
【請求項2】
前記プレス装置は、複数の加工工程に臨む複数の被成形物に対して同時にプレス加工を行う、
請求項1に記載のプレス管理システム。
【請求項3】
検査対象の被成形物に対してマーキングを施すマーキング部を備える、
請求項1に記載のプレス管理システム。
【請求項4】
前記マーキング部は、前記検査対象の被成形物と同時にプレス加工された他の被成形物にマーキングを施す、
請求項3に記載のプレス管理システム。
【請求項5】
前記マーキング部は、前記プレス装置でのプレス加工後の前記被成形物に対してマーキングを施す、
請求項3に記載のプレス管理システム。
【請求項6】
前記モデル作成部は、前記運転情報及び前記検査結果のうち所定範囲の最新のものを前記学習データとして、前記学習モデルを作成する、
請求項1に記載のプレス管理システム。
【請求項7】
前記モデル作成部は、前記検査結果が追加されると、当該追加された検査結果を含んだ前記学習データを機械学習させて、前記学習モデルを更新する、
請求項6に記載のプレス管理システム。
【請求項8】
プレス管理システムの制御部が、
プレス装置の運転状態に関する運転情報を取得する情報取得工程と、
前記プレス装置による製品の検査結果を、前記運転情報と対応付けて記憶部に記憶させる記憶制御工程と、
前記運転情報と前記検査結果を対応付けた学習データを機械学習させて学習モデルを作成するモデル作成工程と、
前記情報取得工程で取得した前記運転情報と前記学習モデルとに基づいて、前記検査結果を推定する推定工程と、
を実行するプレス管理方法。
【請求項9】
コンピュータを、
プレス装置の運転状態に関する運転情報と、前記プレス装置による製品の検査結果とを対応付けて記憶部に記憶させる記憶制御部、
前記運転情報と前記検査結果を対応付けた学習データを機械学習させて学習モデルを作成するモデル作成部、
前記運転情報と前記学習モデルとに基づいて、前記検査結果を推定する推定部、
として機能させるプレス管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス管理システム、プレス管理方法及びプレス管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のプレス装置では、複数種類の加工条件それぞれの条件特徴量と、荷重特徴量との相関を、金型パターンごとに機械学習して学習モデルを生成している。そして、この学習モデルに基づいて、荷重特徴量に対する各加工条件の重要度を金型パターンごとに解析して、製品の良否に関わる加工条件を推定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-53691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、プレス加工後の製品品質の情報を得ることができない。
プレス加工後の製品品質は、一般に、高精度な全数検査が現実的でないため、抜き取り検査によって基準を満たすか否かの確認が行われる。したがって、製造工程に何らかの異変が発生して品質に影響を及ぼした場合、発見が遅れることがあり、その間の製品は追加作業で修正するか破棄することになってしまう。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、プレス加工後の製品品質を好適に推定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、プレス管理システムであって、
プレス装置の運転状態に関する運転情報を取得する情報取得部と、
前記プレス装置による製品の検査結果を、前記運転情報と対応付けて記憶部に記憶させる記憶制御部と、
前記運転情報と前記検査結果を対応付けた学習データを機械学習させて学習モデルを作成するモデル作成部と、
前記情報取得部が取得した前記運転情報と前記学習モデルとに基づいて、前記検査結果を推定する推定部と、
を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、プレス加工後の製品品質を好適に推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係るプレス管理システムの要部を示す図である。
図2】実施形態に係るプレス管理システムの概略の制御構成を示すブロック図である。
図3】実施形態に係るプレス装置の運転時に計測される計測データの一例を示す図である。
図4】実施形態に係るプレス管理システムでの作業工程の流れを示すフローチャートである。
図5】実施形態に係る品質推定処理の流れを示すフローチャートである。
図6】実施形態に係る計測データと品質検査結果の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
[プレス管理システムの構成]
図1は、本実施形態に係るプレス管理システム1の要部を示す図である。
この図に示すように、本実施形態に係るプレス管理システム1は、プレス装置2、コンベア41、42、ヒータ51、マーカ52、制御装置6(図2参照)を備える。
【0011】
プレス装置2は、熱間鍛造を行う鍛造プレス装置であり、偏心軸24と、クラッチブレーキ25と、コネクティングロッド26と、スライド27と、上金型28及び下金型29とを備えている。
【0012】
偏心軸24は、エキセン軸やクランク軸等で構成されている。
クラッチブレーキ25は、モータにより回転駆動されるフライホイール(図示省略)と偏心軸24との連結及び連結解除の切り替えと、偏心軸24の制動とを行う。クラッチブレーキ25によりフライホイールと偏心軸24が連結されると、偏心軸24が中心軸回りに回転する。偏心軸24の回転運動は、コネクティングロッド26を介してスライド27の並進運動に変換され、スライド27が上下方向に進退する。
【0013】
スライド27の下面には上金型28が固定されており、上金型28の下方には下金型29が固定されている。スライド27が上下に進退することで、上金型28と下金型29とが接離し、これらの間でワーク(被成形物)Wが鍛造成形される。
上金型28と下金型29とは、図1における紙面左右方向に複数組が並んで一体的に設けられており、並び順に従って型形状が成形品の最終形状に近づくように形成されている。本実施形態の上金型28と下金型29では、特に限定はされないが、3回(粗プレス、本プレス、仕上げプレス)の加工工程が順次行われる。
以下では、上金型28と下金型29の間で同時にプレスされる3つのワークWのうち、粗プレスされるものを「Wpre」、本プレスされるものを「Wm」、仕上げプレスされるものを「Wpost」、と符号を区別して各々を識別する場合がある。
【0014】
図2は、プレス管理システム1の概略の制御構成を示すブロック図である。
この図に示すように、プレス装置2は、上記構成のほか、駆動部30、金型ヒータ32、搬送装置33、潤滑剤噴射装置34、ノックアウト装置35、複数のセンサ類37を備えている。
【0015】
駆動部30は、スライド27を進退させるための構成であり、上述のモータやクラッチブレーキ25を含む。
金型ヒータ32は、上金型28と下金型29を所定の温度まで加熱する。
搬送装置33は、上金型28と下金型29の間や、プレス装置2とコンベア41、42との間でワークWを搬送する。具体的に、搬送装置33は、上金型28と下金型29が離間したときに、最上流側の上金型28及び下金型29にコンベア41から新たなワークWを供給したり、上金型28と下金型29の間でワークWを順次搬送したり、最下流側の上金型28及び下金型29でプレスが完了したワークWをコンベア42へ取り出したりする。
【0016】
潤滑剤噴射装置34は、金型表面に金型潤滑剤を吹き付けるものである。潤滑剤噴射装置34は、プレス方向と直交する方向に進退可能に構成され、上金型28と下金型29とが離間したときにこれらの間に進入して潤滑剤を吹き付ける。金型潤滑剤は、金型とワークの潤滑状態を良くし、例えば金型へのワークWのはりつきを抑えて成形を容易にする。
ノックアウト装置35は、金型からワークWを離型させる装置であり、上金型28から離型させるスライドノックアウト(SKO)装置と、下金型29から離型させるベッドノックアウト(BKO)装置との、少なくとも一方を含む。ノックアウト装置35は、金型を貫通して進退可能なピンを例えば油圧シリンダで進退させて、金型からワークWを押し出す。
【0017】
複数のセンサ類37は、プレス装置2の運転状態に関する情報(運転情報)を取得する。本実施形態のセンサ類37は、例えば、以下に示す複数のセンサのうち少なくとも1つを含む。ただし、センサ類37は、プレス装置2の製品品質に影響するパラメータを取得するものであれば、以下のものに限定されない。
・荷重センサ:プレスに関与する部材(金型やスライド)に掛かる荷重を検出する。
・型温度センサ:上金型28及び/又は下金型29の温度を検出する。
・材料温度センサ:プレス装置2に供給されるワークWの温度を検出する。
・角度センサ:偏心軸24の回転角度(プレス角度)を検出する(スライド27の位置及び速度の検出に相当)。
・ノックアウト位置センサ:ノックアウト装置35におけるノックアウトピンの位置を検出する。
・潤滑剤流量センサ:潤滑剤噴射装置34における金型潤滑剤の流量を検出する。
・シャットハイトセンサ:シャットハイト(ベッド上面からスライド27の下死点位置までの高さ)を検出する。
【0018】
コンベア41は、ワークWを、その投入位置からプレス装置2まで搬送する。
コンベア42は、プレス装置2でプレスされたワークWを、プレス装置2から検査員Sによる検査位置まで、又は所定の保管位置まで搬送する。
【0019】
ヒータ51は、コンベア41上に配置され、ワークWを所定の温度まで加熱する。
マーカ52は、プレス装置2でのプレス加工が完了したワークWに対し、レーザ又はインクジェットによりマーキングを施す。本実施形態では、後述するように、全数のワークWに対してではなく、検査対象のワークWと、当該ワークWと同時にプレス加工された他のワークWとに対してのみ、マーキングが施される。
【0020】
制御装置6は、プレス管理システム1の動作を制御するものであり、操作部62、表示部63、記憶部66、制御部67を備える。
【0021】
操作部62は、ユーザ操作を受け付けるマウス等のポインティングデバイスやキーボードを備えており、これらが受けた操作内容に対応する入力信号が制御部67に出力される。
表示部63は、例えば液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイその他のディスプレイであり、制御部67から入力される表示信号に基づいて各種情報を表示する。なお、表示部63は、操作部62の一部を兼ねるタッチパネルであってもよいし、音声表示(出力)が可能なスピーカを含んでもよい。
【0022】
記憶部66は、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等を備えて構成されるメモリであり、各種のプログラム及びデータを記憶するとともに、制御部67の作業領域としても機能する。
本実施形態の記憶部66には、計測データ66aと学習モデル66bが記憶される。
【0023】
計測データ66aは、プレス装置2の運転時にセンサ類37により計測される、プレス装置2の運転状態に関する運転情報である。ただし、計測データ66aは、プレス装置2の運転情報以外の情報を含んでもよい。
図3に計測データ66aの一例を示す。この図に示すように、計測データ66aは、荷重(Load)や型温度(Temperature)等のセンサ類37による計測値のほか、時刻やロットNo、金型内でのワークWの配列(Combination)、マーキング内容(Mark)等を含む。マーキング内容は、マーカ52によるプレス後のワークWへのマーキングの文字内容であり、本実施形態では「日付+通し番号+連番」からなる番号となっている。ただし、マーキングされない場合には「0」が記録される。また、計測データ66aにおける各行のデータは、仕上げプレス点のワークWpostに対応する。
【0024】
図2に示すように、学習モデル66bは、センサ類37による計測データ66aに基づいて、ワークWの製品品質を推定するものである。学習モデル66bは、後述の品質推定処理(図5参照)により、例えば、製品品質の情報が付与された計測データを学習データとした機械学習により構築されて記憶部66に格納される。
さらに、記憶部66には、後述の品質推定処理(図5参照)を実行するための品質推定プログラム66cが予め記憶されている。
【0025】
制御部67は、例えばCPU(Central Processing Unit)等を備えて構成され、制御装置6各部の動作を制御する。具体的に、制御部67は、操作部62の操作内容に基づいて、表示部63に各種情報を表示させたり、記憶部66に予め記憶されているプログラムを展開し、展開されたプログラムと協働して各種処理を実行したりする。
【0026】
[プレス管理システムの作業工程]
続いて、プレス管理システム1における一連の作業工程について説明する。
図4は、プレス管理システム1での作業工程の流れを示すフローチャートである。
【0027】
プレス管理システム1では、以下の一連の作業工程が複数のワークWに対して連続的に実行される。
具体的には、図4に示すように、プレス管理システム1では、コンベア41の上流側にワークWが投入されると(ステップS1)、制御装置6の制御部67が、当該ワークWをヒータ51で所定の温度まで加熱する(ステップS2)。
【0028】
次に、制御部67は、加熱されたワークWに対してプレス装置2で熱間鍛造を行う(ステップS3)。
ここでは、加熱されたワークWがコンベア41でプレス装置2に搬送され、プレス装置2で3回(3段階)のプレス加工が行われる。このとき、複数のセンサ類37による計測データ66aの取得と、当該計測データ66aに基づく後述の品質推定処理による製品品質の推定とが行われる。プレス装置2でのプレス加工が完了したワークWはコンベア42に搬送される。
なお、このプレス工程(又はマーキング工程)後に、その後処理工程(例えば、バリ取り、熱処理、第2プレス等)を設けてもよい。
【0029】
次に、制御部67は、プレス装置2でのプレス加工後のワークWのうち、定期的(または不定期的)に選択された一部のものに対し、マーカ52により所定の情報をマーキングする(ステップS4)。
本実施形態では、プレス装置2から排出されるワークWに対し、自動でマーキングがなされる。具体的には、後述のステップS5で抜き取り検査される検査対象ワークWt、及び当該検査対象ワークWtと同時にプレス加工されるワークWが全て識別できるように、これらに連番でマーキングが施される。本実施形態では、3つのワークWが同時にプレスされるため、1回の抜き取り検査につき、二点鎖線で示す検査対象ワークWtの前後2つを含めた計5つのワークWにマーキングが施される(図3参照)。
なお、全数のワークWに対してマーキングを施してもよい。
【0030】
次に、定期的(または不定期的)に選択された一部のワークWに対し、検査員Sが抜き取りで品質検査を行う(ステップS5)。
本実施形態では、検査員Sは、プレス加工されたワークWのなかから、ステップS4においてマーキングされた検査対象ワークWtを抜き取り、製品品質としてその結晶粒径を測定する。具体的に、検査員Sは、まずワークWからサンプル片を切り出し、その表面処理をする。そして、検査員Sは、ワーク断面の顕微鏡観察による結晶粒径の測定を行い、複数の結晶粒についてその平均粒径を算出する。算出した平均粒径は、後述するように、学習モデル66bの作成に用いられる。
なお、検査対象ワークWtは、例えばプレス装置2からワークWを排出する搬送ライン(コンベア42)に抜き取り検査ワーク用ラインを設けるなどして、その他のワークWから振り分けてもよい。また、抜き取り検査(品質検査)の内容は、結晶粒径の測定に限定されず、例えば、寸法測定や直角度測定、硬度測定、密度測定、外観検査、成分分析等を含む。
【0031】
[品質推定処理]
続いて、上述したプレス管理システム1の作業工程のうち、ステップS3のプレス工程における製品品質を推定する品質推定処理について説明する。
図5は、品質推定処理の流れを示すフローチャートであり、図6は、計測データ66aと品質検査結果の一例を示すグラフである。なお、図6では、「〇」のプロットがセンサ又は検査による実測値を示し、検査結果における「●」のプロットが学習モデルによる推定値を示す。
【0032】
品質推定処理は、プレス時の計測データ66aと品質検査の結果とに基づいて学習モデル66bを作成し、この学習モデル66bによりワークWの製品品質を推定する処理である。この品質推定処理は、例えばプレス装置2の運転開始に伴って、制御部67が記憶部66から品質推定プログラム66cを読み出して展開することで、上述したプレス管理システム1の作業工程と連動して実行される。
【0033】
図5に示すように、品質推定処理では、まずユーザ(例えば検査員S)が、上述したプレス管理システム1の作業工程における品質検査(ステップS5)の結果を、制御装置6に入力する(ステップT1)。
具体的に、ここでは、検査対象ワークWtの識別番号(例えばマーキング内容)と対応付けて、当該検査対象ワークWtの検査結果(本実施形態では平均粒径)が入力される。これにより、図6(a)に示すように、センサ類37によるプレス時の計測データ66aと、入力された検査結果とが対応付けられる。対応付けられた計測データ66aと検査結果は、記憶部66に記憶される。ここで、図6における「センサA」、「センサB」とは、センサ類37に含まれるセンサによる測定値であって、結晶粒径に影響するプレス時の荷重(応力)や金型温度等のプレス条件である。
【0034】
次に、制御部67は、学習モデル66bを作成するための学習データを設定する(ステップT2)。
ここでは、計測データ66aに検査結果を付与した学習データを設定する。このとき、図6(b)、(c)に示すように、学習データには所定のデータ範囲Rの最新のものだけが含まれるように、学習モデル66bの作成(更新)タイミングに応じて学習データを更新する。これにより、現在(リアルタイム)のプレス状態に近い計測データ66aに基づく学習モデル66bを作成でき、ひいては、プレス状態の経時変化に対応した学習モデル66bを構築できる。本実施形態のデータ範囲Rは、時間範囲として設定される。
なお、データ範囲Rは、狭すぎると学習モデル66bの予測精度が落ちる反面、広すぎると現在のプレス状態から乖離したデータが含まれてしまうおそれがあるため、オペレータが適宜設定するのが好ましい。ただし、データ範囲Rの設定手法は特に限定されず、例えば計測データ66aやその他のパラメータに応じて設定されることとしてもよい。また、データ範囲Rは最新の計測データ66aを含まなくてもよい。例えば過去の計測データ66aのうち現在と同じ時期のものを含める等としてもよい。
【0035】
次に、制御部67は、ステップT2で設定した学習データのクレンジングを行い(ステップT3)、必要な特徴量化を行う(ステップT4)。
そして、制御部67は、ステップT3、T4の前処理を経た学習データを例えばAI(Artificial Intelligence;人口知能)に機械学習させて、学習モデル66bを作成する(ステップT5)。作成された学習モデル66bは記憶部66に記憶され、古いものが記憶されていた場合には新たなものに更新される。
【0036】
次に、制御部67は、プレス工程の実行時において、作成した学習モデル66bを用い、製品品質の推定を行う(ステップT6)。
具体的に、制御部67は、リアルタイムの計測データ66aを学習モデル66bに入力し、これに対応する結晶の平均粒径を取得する。
なお、学習モデル66bで推定した値が検査結果から大きく乖離している場合には、ステップT2での学習データの設定(更新)を見合わせて別途原因調査を行ってもよい。
【0037】
[本実施形態の技術的効果]
以上のように、本実施形態によれば、プレス装置2の運転状態に関する計測データ66a(運転情報)と、プレス装置2による製品の検査結果とが対応付けられ、この計測データ66aと検査結果を対応付けた学習データを機械学習させて学習モデル66bが作成される。そして、センサ類37が取得した計測データ66aと学習モデル66bとに基づいて、製品品質(検査結果)が推定される。
これにより、検査結果が低頻度の抜き取り検査によるものであっても、プレス加工後の製品品質を好適に推定することができる。
【0038】
また、本実施形態によれば、プレス装置2が、複数の加工工程に臨む複数のワークWに対して同時にプレス加工を行う。つまり、同時にプレス加工される複数のワークWが、互いの製品品質に影響を及ぼし合う。
このように、ワークWとその製品品質とが一対一で対応しない場合であっても、機械学習による学習モデル66bを利用することで、好適に製品品質を推定することができる。
【0039】
また、本実施形態によれば、検査対象ワークWtにマーキングを施すマーカ52が、検査対象ワークWtと同時にプレス加工される他のワークWにもマーキングを施す。
これにより、一のワークWの製品品質に影響を及ぼす他の全てのワークWを識別することができる。
【0040】
また、本実施形態によれば、計測データ66a及び検査結果のうち所定のデータ範囲Rの最新のものを学習データとして、学習モデル66bが作成される。
これにより、現在(リアルタイム)のプレス状態に近い計測データ66aに基づく学習モデル66bを作成できる。したがって、より正確に製品品質を推定することができる。
【0041】
また、本実施形態によれば、検査結果が追加されると、当該追加された検査結果を含んだ学習データを機械学習させて、学習モデル66bが更新される。
これにより、検査結果が追加されるたびに、学習モデル66bを最新のものに更新することができる。したがって、プレス状態の経時変化に対応した学習モデル66bを好適に作成できる。
【0042】
[その他]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限られない。
例えば、上記実施形態では、鍛造プレス装置を例に挙げて説明したが、本発明に係るプレス装置は鍛造プレス装置に限定されない。
【0043】
また、上記実施形態では、制御装置6の記憶部66に各種のデータ等が記憶されることとした。しかし、これに限定されず、例えば、制御装置6又はプレス装置2と通信可能なサーバ等の記憶装置に各種のプログラム及びデータが記憶されることとしてもよい。
その他、上記実施形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 プレス管理システム
2 プレス装置
6 制御装置
28 上金型
29 下金型
37 センサ類(情報取得部)
52 マーカ(マーキング部)
66 記憶部
66a 計測データ(運転情報)
66b 学習モデル
66c 品質推定プログラム(プレス管理プログラム)
67 制御部(記憶制御部、モデル作成部、推定部)
R データ範囲
W ワーク
Wt 検査対象ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6