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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000923
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/00 20060101AFI20231226BHJP
   B60T 1/06 20060101ALI20231226BHJP
   F16H 63/48 20060101ALI20231226BHJP
   F16H 59/08 20060101ALI20231226BHJP
   F16H 59/54 20060101ALI20231226BHJP
   F16H 61/12 20100101ALI20231226BHJP
   F16H 63/34 20060101ALI20231226BHJP
   B60K 17/12 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
B60T8/00 Z
B60T1/06 G
F16H63/48
F16H59/08
F16H59/54
F16H61/12
F16H63/34
B60K17/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099913
(22)【出願日】2022-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】青山 のぞみ
(72)【発明者】
【氏名】永野 知哉
(72)【発明者】
【氏名】天野 英樹
(72)【発明者】
【氏名】松野 裕樹
【テーマコード(参考)】
3D042
3D246
3J067
3J552
【Fターム(参考)】
3D042AA10
3D042AB01
3D246BA08
3D246DA02
3J067AA21
3J067AB23
3J067CA31
3J067DB32
3J067FA56
3J067FA63
3J067FA84
3J067FB76
3J067GA01
3J552NA01
3J552NB05
3J552PB08
3J552QC08
3J552RA21
3J552RA27
3J552RB02
3J552TB13
3J552VA63W
(57)【要約】
【課題】車両毎の個体差に拘らずPレンジへ切り替える際のラチェッティングが適切に抑制されるようにする。
【解決手段】Pレンジに切り替えるパーキング制御を実行する際にラチェッティング状態か否かを判断し、ラチェッティング状態と判断した場合(S3の判断がYES)は、S5でパーキング制御を中止して、パーキングポールをパーキングギヤとの噛合いが解除される非パーキング位置へ移動させる。これにより、パーキングポールおよびパーキングギヤの寸法誤差や、車速センサ等の精度誤差などの、車両毎の個体差に拘らず、電気式パーキング装置のラチェッティングを適切に抑制することができる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪に連動して回転させられるパーキングギヤに電気制御でパーキングポールを噛み合わせて前記車輪を回転不能にロックする電気式パーキング装置と、前記電気式パーキング装置により前記車輪が回転不能にロックされる駐車用のPレンジを含んで車両の駆動状態が異なる複数のレンジを選択可能なレンジ選択装置と、を備えている車両に関し、
前記Pレンジが選択された場合に、前記電気式パーキング装置の前記パーキングポールを前記パーキングギヤと噛み合うパーキング位置へ移動させるパーキング制御を実行するパーキング制御部を有する車両の制御装置において、
前記パーキング制御部は、前記パーキング制御を実行する際に、前記パーキングポールが前記パーキングギヤと噛み合わずに弾かれるラチェッティング状態か否かを判断し、該ラチェッティング状態と判断した場合は前記パーキング制御を中止して前記パーキングポールを前記パーキングギヤとの噛合いが解除される非パーキング位置へ移動させる
ことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
前記パーキング制御部は、前記ラチェッティング状態と判断して前記パーキング制御を中止した後に、予め定められた再実行条件を満たした場合には、前記パーキング制御を再実行する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記再実行条件は、前記ラチェッティング状態と判断した時の車速を基準車速として、該基準車速からの車速の低下量が予め定められた再実行判定低下量以上になることである
ことを特徴とする請求項2に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記再実行条件は、前記ラチェッティング状態と判断した後の経過時間が予め定められた再実行判定時間以上になることである
ことを特徴とする請求項2に記載の車両の制御装置。
【請求項5】
前記車両は、該車両の制動力を電気的に制御することができる電気式制動装置を備えており、
前記制御装置は、前記パーキング制御部が前記ラチェッティング状態と判断して前記パーキング制御を中止した場合に前記電気式制動装置により前記制動力を発生させる制動制御部を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項6】
前記制動制御部は、前記パーキング制御部により前記ラチェッティング状態と判断された時の車速を基準車速として、該基準車速からの車速の低下量が予め定められた制動継続判定低下量以上になるまでは、前記電気式制動装置による前記制動力の発生状態を継続する
ことを特徴とする請求項5に記載の車両の制御装置。
【請求項7】
前記制動制御部は、前記パーキング制御部により前記ラチェッティング状態と判断された後の経過時間が予め定められた制動継続判定時間以上になるまでは、前記電気式制動装置による前記制動力の発生状態を継続する
ことを特徴とする請求項5に記載の車両の制御装置。
【請求項8】
前記制動制御部は、前記パーキング制御部が予め定められた再実行条件を満たして前記パーキング制御を再実行する場合には、前記電気式制動装置による前記制動力の発生状態を継続する
ことを特徴とする請求項5に記載の車両の制御装置。
【請求項9】
前記パーキング制御部は、前記再実行条件を満たした場合に前記パーキング制御を再実行して前記ラチェッティング状態か否かを判断し、該ラチェッティング状態と判断されなくなるまで、前記再実行条件を満たした場合に前記パーキング制御を再実行することを繰り返す一方、
前記制動制御部は、前記パーキング制御部により前記ラチェッティング状態と判断されなくなったら前記電気式制動装置による前記制動力を解除する
ことを特徴とする請求項8に記載の車両の制御装置。
【請求項10】
前記車両は、該車両の制動力を電気的に制御することができる電気式制動装置を備えており、
前記制御装置は、前記パーキング制御部が前記再実行条件を満たして前記パーキング制御を再実行した場合に再び前記ラチェッティング状態と判断して前記パーキング制御を中止した時に、前記電気式制動装置により前記制動力を発生させる制動制御部を有する
ことを特徴とする請求項2に記載の車両の制御装置。
【請求項11】
前記パーキング制御部は、前記再実行条件を満たした場合に前記パーキング制御を再実行して前記ラチェッティング状態か否かを判断し、該ラチェッティング状態と判断されなくなるまで、前記再実行条件を満たした場合に前記パーキング制御を再実行することを繰り返す一方、
前記制動制御部は、前記パーキング制御部により前記ラチェッティング状態と判断されなくなるまで、前記電気式制動装置による前記制動力の発生状態を継続する
ことを特徴とする請求項10に記載の車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両の制御装置に係り、特に、電気式パーキング装置を備えている車両の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
(a) 車輪に連動して回転させられるパーキングギヤに電気制御でパーキングポールを噛み合わせて前記車輪を回転不能にロックする電気式パーキング装置と、前記電気式パーキング装置により前記車輪が回転不能にロックされる駐車用のPレンジを含んで車両の駆動状態が異なる複数のレンジを選択可能なレンジ選択装置と、を備えている車両に関し、(b) 前記Pレンジが選択された場合に、前記電気式パーキング装置の前記パーキングポールを前記パーキングギヤと噛み合うパーキング位置へ移動させるパーキング制御を実行するパーキング制御部を有する車両の制御装置、が知られている。特許文献1に記載された装置はその一例である。特許文献1では、予め定められた所定車速以下であることを条件としてPレンジへの切替が許容され、所定車速よりも高い場合はPレンジへの切替が禁止されるようになっており、Pレンジへの切替によって車両が急停止したりラチェッティングが発生したりすることが抑制される。ラチェッティングとは、パーキングポールがパーキングギヤと噛み合わずに弾かれることを繰り返す現象である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-280637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、パーキングポールおよびパーキングギヤの寸法誤差や車速センサの精度誤差など車両毎の個体差により、前記所定車速以下でPレンジへの切替を行なってもラチェッティングが発生することがあった。ラチェッティングが継続すると、パーキングポールやパーキングギヤの耐久性が損なわれる恐れがある。車両毎の個体差に拘らずラチェッティングが発生しないようにPレンジへの切替車速を設定すると、Pレンジへの切替が必要以上に制限される可能性がある。
【0005】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、車両毎の個体差に拘らずPレンジへ切り替える際のラチェッティングが適切に抑制されるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、第1発明は、(a) 車輪に連動して回転させられるパーキングギヤに電気制御でパーキングポールを噛み合わせて前記車輪を回転不能にロックする電気式パーキング装置と、前記電気式パーキング装置により前記車輪が回転不能にロックされる駐車用のPレンジを含んで車両の駆動状態が異なる複数のレンジを選択可能なレンジ選択装置と、を備えている車両に関し、(b) 前記Pレンジが選択された場合に、前記電気式パーキング装置の前記パーキングポールを前記パーキングギヤと噛み合うパーキング位置へ移動させるパーキング制御を実行するパーキング制御部を有する車両の制御装置において、(c) 前記パーキング制御部は、前記パーキング制御を実行する際に、前記パーキングポールが前記パーキングギヤと噛み合わずに弾かれるラチェッティング状態か否かを判断し、そのラチェッティング状態と判断した場合は前記パーキング制御を中止して前記パーキングポールを前記パーキングギヤとの噛合いが解除される非パーキング位置へ移動させることを特徴とする。
【0007】
第2発明は、第1発明の車両の制御装置において、前記パーキング制御部は、前記ラチェッティング状態と判断して前記パーキング制御を中止した後に、予め定められた再実行条件を満たした場合には、前記パーキング制御を再実行することを特徴とする。
【0008】
第3発明は、第2発明の車両の制御装置において、前記再実行条件は、前記ラチェッティング状態と判断した時の車速を基準車速として、その基準車速からの車速の低下量が予め定められた再実行判定低下量以上になることであることを特徴とする。
【0009】
第4発明は、第2発明の車両の制御装置において、前記再実行条件は、前記ラチェッティング状態と判断した後の経過時間が予め定められた再実行判定時間以上になることであることを特徴とする。
【0010】
第5発明は、第1発明の車両の制御装置において、(a) 前記車両は、その車両の制動力を電気的に制御することができる電気式制動装置を備えており、(b) 前記制御装置は、前記パーキング制御部が前記ラチェッティング状態と判断して前記パーキング制御を中止した場合に前記電気式制動装置により前記制動力を発生させる制動制御部を有することを特徴とする。
【0011】
第6発明は、第5発明の車両の制御装置において、前記制動制御部は、前記パーキング制御部により前記ラチェッティング状態と判断された時の車速を基準車速として、その基準車速からの車速の低下量が予め定められた制動継続判定低下量以上になるまでは、前記電気式制動装置による前記制動力の発生状態を継続することを特徴とする。
【0012】
第7発明は、第5発明の車両の制御装置において、前記制動制御部は、前記パーキング制御部により前記ラチェッティング状態と判断された後の経過時間が予め定められた制動継続判定時間以上になるまでは、前記電気式制動装置による前記制動力の発生状態を継続することを特徴とする。
【0013】
第8発明は、第5発明の車両の制御装置において、前記制動制御部は、前記パーキング制御部が予め定められた再実行条件を満たして前記パーキング制御を再実行する場合には、前記電気式制動装置による前記制動力の発生状態を継続することを特徴とする。
【0014】
第9発明は、第8発明の車両の制御装置において、(a) 前記パーキング制御部は、前記再実行条件を満たした場合に前記パーキング制御を再実行して前記ラチェッティング状態か否かを判断し、そのラチェッティング状態と判断されなくなるまで、前記再実行条件を満たした場合に前記パーキング制御を再実行することを繰り返す一方、(b) 前記制動制御部は、前記パーキング制御部により前記ラチェッティング状態と判断されなくなったら前記電気式制動装置による前記制動力を解除することを特徴とする。
【0015】
第10発明は、第2発明の車両の制御装置において、(a) 前記車両は、その車両の制動力を電気的に制御することができる電気式制動装置を備えており、(b) 前記制御装置は、前記パーキング制御部が前記再実行条件を満たして前記パーキング制御を再実行した場合に再び前記ラチェッティング状態と判断して前記パーキング制御を中止した時に、前記電気式制動装置により前記制動力を発生させる制動制御部を有することを特徴とする。
なお、この第10発明は、再実行条件を満たした後のパーキング制御で再びラチェッティング状態と判断された場合に制動力を発生させることを要件とするもので、最初のパーキング制御でラチェッティング状態と判断された場合に制動力を発生させるか否かは適宜定めることができる。
【0016】
第11発明は、第10発明の車両の制御装置において、(a) 前記パーキング制御部は、前記再実行条件を満たした場合に前記パーキング制御を再実行して前記ラチェッティング状態か否かを判断し、そのラチェッティング状態と判断されなくなるまで、前記再実行条件を満たした場合に前記パーキング制御を再実行することを繰り返す一方、(b) 前記制動制御部は、前記パーキング制御部により前記ラチェッティング状態と判断されなくなるまで、前記電気式制動装置による前記制動力の発生状態を継続することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
このような車両の制御装置によれば、パーキング制御を実行する際にラチェッティング状態か否かを判断し、ラチェッティング状態と判断した場合はパーキング制御を中止してパーキングポールを非パーキング位置へ移動させるため、車両毎の個体差に拘らずラチェッティングを適切に抑制することができる。
【0018】
第2発明~第4発明では、パーキング制御を中止した後に予め定められた再実行条件を満たした場合には、パーキング制御を再実行するため、ラチェッティングを抑制しつつパーキング制御の再実行により速やかにPレンジに切り替えることができる。特に第3発明では車速の低下量、すなわちパーキングギヤの回転速度の低下量、に基づいてパーキング制御を再実行するため、パーキングギヤの回転速度の低下分だけパーキングポールが噛合い易くなり、ラチェッティングの発生回数が少なくなるとともにパーキング制御の実行回数が少なくなって電力消費を節減できる。
【0019】
第5発明~第9発明では、ラチェッティング状態と判断してパーキング制御を中止した場合に、電気式制動装置により制動力を発生させるため、パーキング制御の中止に拘らず所定の制動力が得られるようになり、運転者に違和感を生じさせることが抑制される。また、電気式制動装置により制動力が発生させられることにより車速が低下し、それに伴ってパーキングギヤの回転速度が低下するため、再度のパーキング制御の実行によりパーキングポールがパーキングギヤに噛み合うPレンジに速やかに切り替えられるようになる。第9発明では、パーキング制御部によりラチェッティング状態と判断されなくなったら電気式制動装置による制動力が解除されるため、制動力の付与が必要最小限に制御される。
【0020】
第10発明、第11発明では、パーキング制御部が再実行条件を満たしてパーキング制御を再実行した場合に再びラチェッティング状態と判断してパーキング制御を中止した時に、電気式制動装置により制動力を発生させるため、その制動力で車速が低下し、それに伴ってパーキングギヤの回転速度が低下するため、再度のパーキング制御の実行によりパーキングポールがパーキングギヤに噛み合うPレンジに速やかに切り替えられるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施例である制御装置を有する車両の概略構成を説明するブロック線図で、制御系統の要部を併せて示した図である。
図2図1の車両が備えている電気式パーキング装置の一例を説明する概略斜視図である。
図3図1の車両の電子制御装置が機能的に備えているパーキング制御部によって実行される信号処理を説明するフローチャートである。
図4図3のS7で車速Vの低下量(V0-V)が再実行判定低下量ΔVs 以上になり、S8以下が実行された場合の各部の作動状態の変化を説明するタイムチャートの一例である。
図5図3のS7で再実行判定タイマT0が0になり、S8以下が実行された場合の各部の作動状態の変化を説明するタイムチャートの一例である。
図6】本発明の他の実施例を説明する図で、パーキング制御部により図3の代わりに実行される信号処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
電気式パーキング装置は、例えばシフトレバー等のレンジ選択装置によって選択されたレンジを電動式等のシフトアクチュエータにより電気的に成立させる所謂シフトバイワイヤ(SBW)方式のパーキング装置である。レンジとしては、少なくともパーキングギヤの回転を機械的に阻止する駐車用のP(パーキング)レンジを有し、そのPレンジが選択された場合に電気式パーキング装置のパーキングポールがパーキングギヤに噛み合わされるパーキング状態とされる。このPレンジでは、動力伝達が遮断されることが望ましい。車両としては、燃料の燃焼によって動力を発生するエンジン駆動車両や、電動機によって駆動する電気自動車、或いは複数の動力源を備えているハイブリッド車両など、種々の車両に適用され得る。
【0023】
パーキングギヤは、車輪の回転に伴って機械的に回転させられる回転軸(出力軸など)に設けられ、そのパーキングギヤにパーキングポールが噛み合わされることにより、その回転軸の回転、更には車輪の回転が機械的に阻止される。パーキングポールは、例えば電動機等のアクチュエータによってパーキング位置と非パーキング位置との間を往復移動させられる。パーキングポールとアクチュエータとの間には、パーキングポールがパーキングギヤと干渉した際の相対移動が許容されるように、必要に応じてばね部材等の付勢装置が介在させられる。パーキングポールがパーキングギヤと噛み合わずに弾かれるラチェッティングは、車両走行時にパーキングギヤの回転により、例えば付勢装置の付勢力に抗してパーキングポールがパーキングギヤの複数の歯で繰り返し弾かれることによって発生する。ラチェッティング状態か否かは、例えばパーキングポールの位置から判断できるが、車輪の回転速度やパーキングギヤの回転速度などから判断することも可能である。
【0024】
ラチェッティング状態と判断してパーキング制御を中止した後に、パーキング制御を再実行する際の再実行条件は、例えばラチェッティング状態と判断した後の車速の低下量に基づいて定められるが、ラチェッティング状態と判断した後の経過時間や、ラチェッティング状態と判断した後の走行距離、に基づいて定めることもできるなど、種々の態様が可能である。ラチェッティング状態と判断してパーキング制御を中止した場合に制動力を発生させる電気式制動装置としては、例えばホイールブレーキの油圧を電気的に制御できる電気式ホイールブレーキ装置が用いられるが、走行用動力源として発電機としても機能する電動機を備えている場合には、その電動機を発電機として機能するように回生制御して制動力を発生させることもできる。すなわち、走行用動力源として設けられた電動機を電気式制動装置として用いることもできる。但し、電気式制動装置による制動力の付与を省略することも可能である。
【実施例0025】
以下、本発明の実施例を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において、図は説明のために適宜簡略化或いは変形されており、各部の形状や寸法比、角度等は必ずしも正確に描かれていない。
【0026】
図1は、本発明が適用された制御装置として機能する電子制御装置10を備えている車両8の概略構成を説明するブロック線図で、制御系統の要部を併せて示した図である。車両8は、走行用動力源として電動機MGを備えている電気自動車である。電動機MGは、発電機としても機能する所謂モータジェネレータであり、トランスアクスル等の動力伝達機構20を介して車輪22に機械的に連結されているとともに、インバータ24を介してバッテリ26に電気的に接続されている。車両8は、電気制御で車輪22を回転不能にロックできる電気式パーキング装置30、および電気制御で制動力を発生させる電気式ホイールブレーキ装置32を備えている。
【0027】
図2は、前記電気式パーキング装置30の一例を説明する概略斜視図である。この電気式パーキング装置30は、シフトレバー等のレンジ選択装置62(図1参照)によって選択されたレンジに応じて電動機等のSBWアクチュエータ40を作動させ、シフトシャフト42を介してディテントプレート44を回動させることにより、車両8の駆動状態が異なる複数のレンジに電気的に切り替えるSBW方式のパーキング装置である。レンジ選択装置62は運転席の近傍に配設されており、例えば駐車用のP(パーキング)レンジ、後進走行用のR(リバース)レンジ、動力伝達を遮断するN(ニュートラル)レンジ、前進走行用のD(ドライブ)レンジを選択することが可能で、それ等の選択レンジSraを表す信号が電子制御装置10に供給される。Pレンジでは、Nレンジと同様に動力伝達が遮断される。
【0028】
ディテントプレート44は、SBWアクチュエータ40によってシフトシャフト42の軸心まわりに回動させられ、PレンジとするP位置、RレンジとするR位置、NレンジとするN位置、DレンジとするD位置、の4つの回動位置に位置決めされる。ディテントプレート44にはパーキングロッド46が連結されており、ディテントプレート44の回動に伴ってパーキングロッド46が略直線的に往復移動させられ、そのパーキングロッド46の位置に応じて電気式パーキング装置30の作動状態が切り替えられる。パーキングロッド46の先端部にはパーキングヘッド48が連結されており、SBWアクチュエータ40によってパーキングヘッド48が図2に示す非パーキング位置から斜め左上方向のパーキング位置まで移動(前進)させられると、パーキングポール50が上方へ回動させられ、噛合い歯50tがパーキングギヤ52と噛み合わされるパーキング状態になる。パーキングヘッド48はテーパ形状(円すい形状)を成しており、そのテーパによってパーキングポール50が上方へ押し上げられる。電気式パーキング装置30に関しては、SBWアクチュエータ40の作動を簡略化して、上記P位置に対応するパーキング位置と、P位置以外の作動位置を非パーキング位置という。なお、1または複数のローラを備えたパーキングヘッドを有するものや、電磁石によってパーキングポールを移動させるものなど、電気的にパーキング状態と非パーキング状態とに切り替えることができる種々の電気式パーキング装置30を採用できる。
【0029】
パーキングギヤ52は、動力伝達機構20の出力軸など車輪22の回転に伴って機械的に回転させられる回転軸54に相対回転不能に取り付けられている。パーキングポール50は、回転軸54と平行なポール軸56の軸心まわりに回動可能に変速機ケース等に配設されているとともに、図示しないリターンスプリングによって噛合い解除方向(図2における反時計まわり方向)へ付勢されており、パーキングヘッド48はリターンスプリングの付勢力に抗してパーキングポール50を噛合い方向(図2における時計まわり方向)へ回動させる。すなわち、パーキングポール50は、パーキングギヤ52に対して接近離間可能に配設されており、図2に示されているようにパーキングギヤ52との噛合いが解除される非パーキング位置と、噛合い歯50tがパーキングギヤ52と噛み合うパーキング位置とへ移動させられる。そして、パーキング位置で噛合い歯50tがパーキングギヤ52と噛み合わされることにより、そのパーキングギヤ52の回転、更には回転軸54および車輪22の回転が機械的に阻止されるパーキング状態となる。
【0030】
パーキングヘッド48は、パーキングロッド46の軸方向に相対移動可能に配設されているとともに、付勢装置であるばね部材(実施例では圧縮コイルスプリング)58により、通常はパーキングロッド46に対して図2の左上方向の先端側に保持され、SBWアクチュエータ40が非パーキング位置からパーキング位置へ作動させられると、パーキングヘッド48を介してパーキングポール50がパーキング位置まで回動させられる。しかし、パーキングポール50の噛合い歯50tがパーキングギヤ52と干渉した場合には、ばね部材58の付勢力に抗してパーキングヘッド48がパーキングロッド46に対して図2の右下方向へ相対変位することが許容される。この場合、路面の傾斜などでパーキングギヤ52が回転すると、ばね部材58の付勢力に従ってパーキングポール50がパーキングギヤ52に噛み合わされてパーキング状態になる。また、車両走行中にPレンジが選択された場合には、パーキングギヤ52の回転によりばね部材58の付勢力に抗してパーキングポール50がパーキングギヤ52の複数の歯で繰り返し弾かれるラチェッティングが発生する可能性がある。すなわち、SBWアクチュエータ40およびパーキングロッド46はパーキング位置まで作動させられるが、パーキングヘッド48およびパーキングポール50はパーキング位置まで到達することができない状態になり、車両8の走行可能な状態が維持される。
【0031】
前記電気式ホイールブレーキ装置32は、図示しないブレーキ油圧を発生させるブレーキマスタシリンダおよびシリンダアクチュエータなどを備えており、車輪22を含む車両8の総ての車輪に配設されたホイールブレーキの制動力すなわちブレーキ油圧を電気的に制御することができる。電気式ホイールブレーキ装置32は、例えばブレーキペダルの踏込操作等による運転者の減速要求量Bra等に応じてブレーキ油圧を発生させる一方、車輪ロックを防止するABS機能作動時、横滑り抑制制御時、自動車速制御時、自動運転制御時、自動ブレーキ機能作動時などには、各制御で求められた車輪制動トルクTBw が得られるようにブレーキ油圧を電気的に増減制御する。
【0032】
電子制御装置10は、CPU、ROM、RAMおよび入出力インターフェースなどを有する所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、車両8の各種の制御を実行する。電子制御装置10には、前記レンジ選択装置62によって選択された選択レンジSraを表す信号が供給される他、車両情報検出装置60から車両8の制御に必要な各種の車両情報が供給される。この車両情報は、例えば前記減速要求量Braや、アクセルペダルの踏込み操作等による運転者の加速要求量を表すアクセル開度θacc 、電動機MGの回転速度であるMG回転速度Nm 、車速Vに対応する動力伝達機構20の出力軸の回転速度Nout 、車輪22を含む総ての車輪の回転速度である車輪速ωfrなどであり、車両情報検出装置60は種々の回転角度センサや荷重センサ、車速センサなどである。
【0033】
電子制御装置10にはまた、ラチェッティング検出装置64から、前記電気式パーキング装置30がラチェッティング状態か否かを判断できるラチェッティング情報Prtが供給される。ラチェッティング検出装置64は、例えばパーキングポール50がパーキング位置まで回動した場合にON、OFFが切り替わる近接スイッチやリミットスイッチ、或いはパーキングポール50の回動角度を検出する角度センサなどで、車両走行中にSBWアクチュエータ40がパーキング位置まで作動させられたにも拘らずパーキングポール50がパーキング位置まで回動しない場合はラチェッティング状態と判断できる。パーキングポール50の回動角度が所定角度で増減を繰り返している場合にラチェッティング状態と判断しても良い。パーキングポール50の位置を検出する代わりに、パーキングギヤ52の回転に対応する車輪速ωfrやMG回転速度Nm が低下乃至は回転停止したか否かによってラチェッティング状態か否かを判断することもできる。
【0034】
電子制御装置10は、機能的にMG制御部12、制動制御部14、およびパーキング制御部16を備えている。
【0035】
MG制御部12は、例えば駆動要求量マップにアクセル開度θacc および車速Vを適用することで、運転者による車両8に対する駆動要求量を算出する。駆動要求量マップは、予め実験的に或いは設計的に求められて記憶された、すなわち予め定められた、前記駆動要求量を求める為の関係である。駆動要求量は、例えば車輪22における要求駆動トルクTrdem[Nm]や要求駆動力Frdem[N]、要求駆動パワーPrdem[W]などである。MG制御部12は、伝達損失、補機負荷、動力伝達機構20の減速比等を考慮して、要求駆動量を実現できる目標MGトルクTmtgtを求める。そして、その目標MGトルクTmtgtが出力されるように、インバータ24を介して電動機MGを制御する。
【0036】
制動制御部14は、例えば運転者によるアクセル操作(例えばアクセル開度θacc 、アクセル開度θacc の減少速度)、車速V、降坂路の勾配、運転者によるブレーキ操作等による減速要求量Bra、などに基づいて要求制動トルクTBdem を設定する。制動制御部14は、車両8の減速走行中には、要求制動トルクTBdem が得られるように車両8の制動トルクTBを発生させる。要求制動トルクTBdem は、基本的には、電気式ホイールブレーキ装置32による車輪制動トルクTBw に対する要求制動トルクであり、車輪制動トルクTBw によって実現されるが、例えばエネルギー効率の向上の観点から回生制動トルクTBr を併用したり優先したりしても良い。回生制動トルクTBr は、電動機MGの回生による制動によって得られる制動トルクTBであり、MG制御部12による電動機MGの回生制御によって発生させられる。電動機MGの回生トルクは、車輪22における回生制動トルクTBr が動力伝達機構20の減速比等に基づいて換算された電動機MGの回生時のMGトルクTm である。
【0037】
パーキング制御部16は、レンジ選択装置62によって選択された選択レンジSraに応じて電気式パーキング装置30の作動状態を切り替えるもので、具体的には、図3のフローチャートのステップS1~S10(以下、ステップを省略して単にS1~S10と言う。他のフローチャートも同じ。)に従って信号処理を実行する。このフローチャートで菱形で示した判断ステップのYESは肯定を意味し、NOは否定を意味する。図4および図5は、Pレンジが選択された場合に図3のフローチャートに従って電気式パーキング装置30をパーキング状態に切り替えるパーキング制御が実行された場合の各部の作動状態の変化を説明するタイムチャートの一例である。
【0038】
図3のS1では、レンジ選択装置62によってPレンジが選択されたか否かを判断し、Pレンジ以外の非Pレンジが選択されている場合はそのまま終了するが、Pレンジが選択された場合はS2以下を実行する。S2では、Pレンジを成立させるように電気式パーキング装置30のSBWアクチュエータ40をパーキング位置へ駆動する。これにより、基本的にはパーキングロッド46と共にパーキングヘッド48がパーキング位置へ移動させられ、パーキングポール50がパーキングギヤ52と噛み合わされて、回転軸54および車輪22が回転不能にロックされるパーキング状態になる。しかし、車両走行中にPレンジに切り替えようとすると、パーキングギヤ52の回転によりパーキングポール50がパーキングギヤ52の複数の歯で繰り返し弾かれるラチェッティングが発生する可能性があり、このラチェッティングが継続するとパーキングポール50やパーキングギヤ52の耐久性が損なわれる恐れがある。このため、次のS3では、ラチェッティング検出装置64から供給されるラチェッティング情報Prtに基づいてラチェッティング状態か否かを判断し、ラチェッティング状態と判断できる場合はS4以下を実行し、ラチェッティング状態と判断できない場合は、パーキングポール50がパーキングギヤ52に噛み合わされた適正なパーキング状態であるためそのまま終了する。
【0039】
ラチェッティング状態の場合に実行するS4では、その時(ラチェッティング状態と判断された時)の車速Vを基準車速V0として記憶するとともに、再実行判定タイマT0を予め定められた再実行判定時間に設定する。再実行判定タイマT0は、S3でラチェッティング状態と判断された後の経過時間に応じて残時間が減少し、設定時間(=再実行判定時間)になるとT0=0になる。S5では、ラチェッティング状態が継続することを防止するために、SBWアクチュエータ40を一旦非パーキング位置へ戻し、電気式パーキング装置30のパーキングポール50がパーキングギヤ52から離間する非パーキング状態に切り替える。また、S6では、車両8に所定の制動力が付与されるようにする制動要求を制動制御部14に出力する。制動制御部14は、この制動要求に従って、例えば電気式ホイールブレーキ装置32を介して所定の制動力を発生させる。電動機MGの回生制御で所定の制動力を発生させることも可能で、その両方で制動力を発生させても良い。電気式ホイールブレーキ装置32および電動機MGは、電気式制動装置に相当する。
【0040】
図4および図5において、時間t1はPレンジが選択された時間で、時間t2は、S2の実行によりSBWアクチュエータ40がパーキング位置(P位置)へ駆動された時間である。また、時間t3は、ラチェッティング状態と判断されて、S5の実行によりSBWアクチュエータ40が非パーキング位置(非P位置)へ戻されるとともに、S6の実行により制動力を付与する制御が開始された時間である。制動力は予め定められた変化率で所定の設定値まで増大させられる。この時の制動力の大きさは一定値でも良いが、車速V等に応じて可変設定されるようにしても良い。
【0041】
図3に戻って、S7では、基準車速V0から現在車速Vを引き算した車速低下量ΔV(=V0-V)が予め定められた再実行判定低下量ΔVs 以上になったか否かを判断し、ΔVs ≦ΔVになったらS8でPレンジへの切替、すなわち電気式パーキング装置30をパーキング状態に切り替えるパーキング制御を再実行する。S7ではまた、再実行判定タイマT0が0になったか否か、すなわちS3でラチェッティング状態と判断された後の経過時間が再実行判定タイマT0の設定時間(=再実行判定時間)になったか否かを判断し、T0=0になったらS8でPレンジへの切替を再実行する。ΔVs ≦ΔV、およびT0=0は、Pレンジへの切替を再実行する再実行条件であり、何れか一方の条件を満たせばS8でPレンジへの切替を再実行する。再実行判定低下量ΔVs や再実行判定タイマT0の設定時間(=再実行判定時間)は、予め一定値が定められても良いが、車速V等に応じて可変設定されるようにしても良い。なお、ΔVs ≦ΔVおよびT0=0の何れか一方を再実行条件として定めるだけでも良い。
【0042】
次のS9では、S3と同様にラチェッティング情報Prtに基づいてラチェッティング状態か否かを判断し、ラチェッティング状態と判断できる場合は前記S4以下を繰り返し実行する。一方、ラチェッティング状態と判断できない場合は、パーキングポール50がパーキングギヤ52に噛み合わされた適正なパーキング状態であるため、S10で制動力を解除する制動解除要求を制動制御部14に出力して一連の制御を終了する。制動制御部14は、制動解除要求に従って、電気式ホイールブレーキ装置32および/または電動機MGの回生制御による制動力を予め定められた変化率で徐々に低下させる。すなわち、制動制御部14は、ラチェッティング状態と判断されてS5で電気式パーキング装置30が非パーキング状態に切り替えられ、S6で最初の制動要求に従って所定の制動力を発生させた後は、再実行条件を満たしてS8でPレンジへの切替を再実行する場合も制動力の発生状態を継続し、S9でラチェッティング状態と判断されなくなってS10で制動解除要求が為された場合に制動力を解除する。見方を替えれば、S3でラチェッティング状態と判断された時の車速Vを基準車速V0として、基準車速V0からの車速Vの低下量ΔVが予め定められた再実行判定低下量ΔVs 以上になるまでは制動力の発生状態を継続するのであり、再実行判定低下量ΔVs を、制動力の発生状態を継続する制動継続判定低下量と見做すことができる。また、S3でラチェッティング状態と判断された後の経過時間が再実行判定タイマT0の設定時間(=再実行判定時間)に達するまでは制動力の発生状態を継続するのであり、再実行判定タイマT0を、制動力の発生状態を継続する制動継続判定時間と見做すことができる。
【0043】
図4は、基準車速V0から現在車速Vを引き算した車速低下量ΔV(=V0-V)が再実行判定低下量ΔVs 以上になり、時間t4でS7の判断がYESになってS8以下が実行され、Pレンジへの切替すなわち電気式パーキング装置30をパーキング状態とするパーキング制御が再実行された場合である。図4では、S9で再びラチェッティング状態と判断され、S4以下が繰り返し実行された場合で、再びΔVs ≦ΔVになって時間t5でパーキング制御が再実行された際に電気式パーキング装置30がパーキング状態になり、S9の判断がNOになってS10が実行され、時間t6で制動力が所定の変化率で解除される。
【0044】
図5は、再実行判定タイマT0が0になり、時間t4でS7の判断がYESになってS8以下が実行され、Pレンジへの切替すなわち電気式パーキング装置30をパーキング状態とするパーキング制御が再実行された場合である。図5では、S9で再びラチェッティング状態と判断され、S4以下が繰り返し実行された場合で、再びT0=0になって時間t5でパーキング制御が再実行された際に電気式パーキング装置30がパーキング状態になり、S9の判断がNOになってS10が実行され、時間t6で制動力が所定の変化率で解除される。
【0045】
上記図4は、時間t4、t5における2回のパーキング制御の再実行が何れもΔVs ≦ΔVを満たした場合であり、図5は、時間t4、t5における2回のパーキング制御の再実行が何れもT0=0を満たした場合であるが、例えば図5の時間t5における2回目のパーキング制御の再実行が、ΔVs ≦ΔVを満たすことによって実行されても良い。すなわち、再実行条件であるΔVs ≦ΔVおよびT0=0の何れか一方を満たした場合にS7の判断がYESになり、S8が実行される。
【0046】
このような本実施例の車両8の電子制御装置10によれば、パーキング制御を実行する際にラチェッティング状態か否かを判断し、ラチェッティング状態と判断した場合(S3の判断がYES)は、S5でパーキング制御を中止してパーキングポール50を非パーキング位置へ移動させるため、パーキングポール50およびパーキングギヤ52の寸法誤差や、車速センサ等の車両情報検出装置60の精度誤差などの、車両8毎の個体差に拘らず、電気式パーキング装置30のラチェッティングを適切に抑制することができる。
【0047】
また、パーキング制御を中止した後に予め定められた再実行条件を満たした場合、すなわちS7の判断がYESになった場合には、S8でパーキング制御を再実行するため、ラチェッティングを抑制しつつパーキング制御の再実行により速やかにPレンジに切り替えることができる。特に、車速Vの低下量ΔV、すなわちパーキングギヤ52の回転速度の低下量、に基づいてパーキング制御が再実行される場合には、パーキングギヤ52の回転速度の低下分だけパーキングポール50が噛合い易くなるため、ラチェッティングの発生回数が少なくなるとともにパーキング制御の実行回数が少なくなって電力消費を節減できる。
【0048】
また、ラチェッティング状態と判断してパーキング制御を中止した場合に、電気式制動装置である電気式ホイールブレーキ装置32や電動機MGの回生制御を利用して車両8に制動力を発生させるため、パーキング制御の中止に拘らず所定の制動力が得られるようになり、運転者に違和感を生じさせることが抑制される。また、電気式制動装置により制動力が発生させられることにより車速Vが低下し、それに伴ってパーキングギヤ52の回転速度が低下するため、再度のパーキング制御の実行によりパーキングポール50がパーキングギヤ52に噛み合うPレンジに速やかに切り替えられるようになる。また、ラチェッティング状態と判断されなくなってS9の判断がNOになると、S10で電気式制動装置による制動力が解除されるため、制動力の付与が必要最小限に制御される。
【0049】
なお、上記実施例では最初のPレンジへの切替制御でラチェッティング状態と判断されると、S5でパーキング制御を中止するとともにS6を実行して直ちに電気式制動装置により制動力を発生させるが、図6のフローチャートに示されるようにS6を省略し、S8でPレンジへの切替制御を再実行しても再びラチェッティング状態と判断されてS9の判断がYESになった場合に、S13で電気式制動装置により制動力を発生させるようにしても良い。すなわち、車速Vが十分に低下せずにラチェッティングを繰り返す場合に制動力を発生させるだけでも良く、制動力の付与を必要最小限に抑制できる。図6において、S11~S17は前記図3におけるS4~S10と実質的に同じであり、詳しい説明を省略する。
【0050】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これ等はあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0051】
8:車両 10:電子制御装置(制御装置) 14:制動制御部 16:パーキング制御部 22:車輪 30:電気式パーキング装置 32:電気式ホイールブレーキ装置(電気式制動装置) 50:パーキングポール 52:パーキングギヤ 62:レンジ選択装置 64:ラチェッティング検出装置 MG:電動機(電気式制動装置) V0:基準車速 ΔVs :再実行判定低下量(再実行条件、制動継続判定低下量) T0:再実行判定タイマ(再実行条件、再実行判定時間、制動継続判定時間)
図1
図2
図3
図4
図5
図6