(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092313
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】エンジン
(51)【国際特許分類】
F01M 11/00 20060101AFI20240701BHJP
F01M 11/04 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
F01M11/00 Q
F01M11/04 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208148
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小暮 拓
【テーマコード(参考)】
3G015
【Fターム(参考)】
3G015BB04
3G015BC03
3G015BK01
3G015BK04
3G015CA07
3G015DA10
(57)【要約】
【課題】オイルパンからのオイルの排出時、オイルの残留量を少なくすることが可能であり、かつ、オイルの排出軌跡の広がりを小さく抑えることが可能なエンジン、を提供する。
【解決手段】エンジンは、孔24が設けられる底部22を有し、底部22上にオイルを貯留するための空間26を形成するオイルパン21と、筒状の円筒部34と、円筒部34の外周面から径方向に立設する鍔部32とを有するとともに、鍔部32が底部22に固定されることで円筒部34の内部と孔24とが連通するプラグシート31と、円筒部34に螺合され、孔24を閉塞するプラグとを備える。円筒部34には、円筒部34の径方向に貫通する切り欠き部51が設けられる。プラグシート31は、鍔部32の外周縁から立ち上がり、円筒部34の径方向において切り欠き部51がなす切り欠き面と対向する壁部37をさらに有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
孔が設けられる底部を有し、前記底部上にオイルを貯留するための空間を形成するオイルパンと、
筒状の円筒部と、前記円筒部の外周面から径方向に立設する鍔部とを有するとともに、前記鍔部が前記底部に固定されることで前記円筒部の内部と前記孔とが連通するプラグシートと、
前記円筒部に螺合され、前記孔を閉塞するプラグとを備え、
前記円筒部には、前記円筒部の径方向に貫通する切り欠き部が設けられ、
前記プラグシートは、前記鍔部の外周縁から立ち上がり、前記円筒部の径方向において前記切り欠き部がなす切り欠き面と対向する壁部をさらに有する、エンジン。
【請求項2】
前記円筒部には、前記円筒部の周方向に互いに間隔を開けて複数の前記切り欠き部が設けられ、
前記プラグシートは、前記円筒部の径方向において複数の前記切り欠き部がなす切り欠き面とそれぞれ対向する複数の前記壁部を備える、請求項1に記載のエンジン。
【請求項3】
前記円筒部の径方向に見た場合に、前記切り欠き部がなす切り欠き面の全体が前記壁部に投影される、請求項1または2に記載のエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特開2015-194115号公報(特許文献1)には、ドレイン孔が設けられた傾斜壁と、ドレイン孔の周縁から起立し、切り欠き部が形成されたドレインボスと、切り欠き部の下端部にあって、ドレイン孔に近づくほと上方に迫り上がる案内部とを備えるタンクの構造が開示されている。
【0003】
また、特開2022-112794号公報(特許文献2)、特開2004-285989号公報(特許文献3)、特開2006-9765号公報(特許文献4)および特開2000-2107号公報(特許文献5)にも、オイルパンの各種ドレイン構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-194115号公報
【特許文献2】特開2022-112794号公報
【特許文献3】特開2004-285989号公報
【特許文献4】特開2006-9765号公報
【特許文献5】特開2000-2107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の特許文献に開示されるように、オイル交換時にオイルを排出するためのドレイン構造が設けられたオイルパンを備えるエンジンが知られている。このようなエンジンにおいては、オイルパンからのオイルの排出時にオイルパンに多量のオイルが残存すると、オイル交換後のオイルの清浄度が損なわれる。また、オイルパンからオイルが大きく広がりながら排出されると、作業者または周囲の環境がオイルによって汚損される可能性がある。
【0006】
そこでこの発明の目的は、上記の課題を解決することであり、オイルパンからのオイルの排出時、オイルの残留量を少なくすることが可能であり、かつ、オイルの排出軌跡の広がりを小さく抑えることが可能なエンジンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に従ったエンジンは、孔が設けられる底部を有し、底部上にオイルを貯留するための空間を形成するオイルパンと、筒状の円筒部と、円筒部の外周面から径方向に立設する鍔部とを有するとともに、鍔部が底部に固定されることで円筒部の内部と孔とが連通するプラグシートと、円筒部に螺合され、孔を閉塞するプラグとを備える。円筒部には、円筒部の径方向に貫通する切り欠き部が設けられる。プラグシートは、鍔部の外周縁から立ち上がり、円筒部の径方向において切り欠き部がなす切り欠き面と対向する壁部をさらに有する。
【0008】
このように構成されたエンジンによれば、オイルパンからのオイルの排出時、底部上に残るオイルが切り欠き部を通じて孔に向かうため、オイルの残存量を少なくすることができる。また、切り欠き部がなす切り欠き面と対向する壁部によって、円筒部の周方向において切り欠き部が設けられる角度範囲と、切り欠き部が設けられない角度範囲との間で、オイルパン内の空間から孔に向かうオイルの流量に差が生じることを抑制できる。これにより、孔からのオイルの排出軌跡を小さく抑えることができる。
【0009】
また好ましくは、円筒部には、円筒部の周方向に互いに間隔を開けて複数の切り欠き部が設けられる。エンジンは、円筒部の径方向において複数の切り欠き部がなす切り欠き面とそれぞれ対向する複数の壁部を備える。
【0010】
このように構成されたエンジンによれば、孔からのオイルの排出軌跡を小さく抑えつつ、底部上に残るオイルをより短時間でオイルパンから排出することができる。
【0011】
また好ましくは、円筒部の径方向に見た場合に、切り欠き部がなす切り欠き面の全体が壁部に投影される。
【0012】
このように構成されたエンジンによれば、円筒部の周方向において切り欠き部が設けられる角度範囲と、切り欠き部が設けられない角度範囲との間で、オイルパン内の空間から孔に向かうオイルの流量に差が生じることをより効果的に抑制できる。
【発明の効果】
【0013】
以上に説明したように、この発明に従えば、オイルパンからのオイルの排出時、オイルの残留量を少なくすることが可能であり、かつ、オイルの排出軌跡の広がりを小さく抑えることが可能なエンジンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】この発明の実施の形態におけるエンジンを示す側面図である。
【
図2】
図1中のエンジンのオイルパンを示す断面図である。
【
図3】
図2中の2点鎖線IIIで囲まれた範囲のプラグシートおよび底部を示す断面図である。
【
図4】
図3中のプラグシートおよび底部を示す斜視図である。
【
図5】
図4中の矢印Vに示される方向に見たプラグシートを示す側面図である。
【
図6】比較例におけるプラグシートを示す斜視図である。
【
図7】比較例におけるプラグシートを用いた場合に、オイルパン内の空間から孔に向かうオイル流れを模式的に示す上面図である。
【
図8】比較例におけるプラグシートを用いた場合に、オイルの排出軌跡を計算したシミュレーション結果を示す図である。
【
図9】本実施の形態におけるプラグシートを用いた場合に、オイルパン内の空間から孔に向かうオイル流れを模式的に示す上面図である。
【
図10】本実施の形態におけるプラグシートを用いた場合に、オイルの排出軌跡を計算したシミュレーション結果を示す図である。
【
図11】
図4中のプラグシートの変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0016】
図1は、この発明の実施の形態におけるエンジンを示す側面図である。
図2は、
図1中のエンジンのオイルパンを示す断面図である。
【0017】
図1および
図2を参照して、エンジン100は、車両に搭載されている。エンジン100は、シリンダブロック12と、オイルパン21とを有する。
【0018】
シリンダブロック12は、エンジン100のシリンダを構成している。オイルパン21は、エンジン100の下部に配置されている。オイルパン21は、シリンダブロック12の下端部に締結されている。オイルパン21は、エンジン100で用いられるオイルを貯留している。
【0019】
オイルパン21は、底部22と、側部23とを有する。底部22は、オイルパン21の底部分を構成している。底部22は、水平方向に平行に配置されている。側部23は、底部22の周縁部から立ち上がっている。オイルパン21は、底部22上にオイルを貯留するための空間26を形成している。空間26は、底部22上であって、側部23に周囲を囲まれた位置に区画形成されている。空間26に貯留されたオイルは、底部22から上方に離れた位置に空気との境界をなす液面を形成している。
【0020】
オイルパン21には、オイルパン21に貯留されるオイルの交換時に、空間26からオイルを排出するためのドレイン構造が設けられている。以下、オイルパン21のドレイン構造について説明する。
【0021】
底部22には、孔24が設けられている。孔24は、底部22を貫通している。空間26は、孔24を通じてオイルパン21の外側の空間(以下、「外部空間」ともいう)と連通している。孔24は、中心軸101を中心とする円形の開口面をなしている。中心軸101は、上下方向に延びている。
【0022】
エンジン100は、プラグシート31と、プラグ41とをさらに有する。プラグ41は、孔24を閉塞するための蓋部材であり、オイルパン21に対して着脱可能に設けられている。プラグシート31は、オイルパン21に対してプラグ41を止め付けるための部材である。
【0023】
プラグシート31は、空間26に配置されている。プラグシート31は、底部22に接続されている。プラグシート31には、後出のプラグ41の軸部43を螺合することが可能な雌ねじが設けられている。なお、プラグシート31の形状については、後で詳細に説明する。
【0024】
プラグ41は、頭部42と、軸部43とを有する。軸部43は、一方向に延びる軸形状を有し、その外周面には、雄ねじが設けられている。頭部42は、軸部43の一方端部に接続されている。一例として、頭部42は、スパナ等を用いてプラグ41を回転させることが可能なように、六角形の外形を有する。
【0025】
プラグ41の軸部43が、外部空間から孔24に挿入され、プラグ41の頭部42が中心軸101の軸方向において底部22と当接するまでプラグシート31に螺合される。これにより、孔24がプラグ41によって閉塞され、空間26にオイルを貯留可能な状態が得られる。一方、プラグ41がオイルパン21から取り外されると、孔24が開放され、空間26に貯留されるオイルを孔24を通じて排出可能な状態が得られる。
【0026】
図3は、
図2中の2点鎖線IIIで囲まれた範囲のプラグシートおよび底部を示す断面図である。
図4は、
図3中のプラグシートおよび底部を示す斜視図である。
図3および
図4中では、プラグ41がオイルパン21から取り外された状態が示されている。
【0027】
図3および
図4を参照して、プラグシート31は、金属製である。プラグシート31は、金属製のシート体に対して、絞りまたは折り曲げ等の各種の塑性加工を施すことによって成形されている。
【0028】
プラグシート31は、筒状の円筒部34と、鍔部32とを有する。鍔部32は、円筒部34の外周面から径方向に立設している。鍔部32は、円筒部34から径方向外側に向けて鍔状に延出している。鍔部32が底部22に固定されることによって、円筒部34の内部と、孔24とが連通している。
【0029】
より具体的には、鍔部32は、溶接により底部22に固定されている。鍔部32は、中心軸101の軸方向が厚み方向に対応するシート形状を有する。鍔部32は、全体として、中心軸101を中心に円形に周回するリング形状を有する。鍔部32は、底部22における孔24の開口縁に沿って延在している。
【0030】
円筒部34は、全体として、中心軸101を中心とする円筒形状を有する。円筒部34の軸方向は、中心軸101の軸方向に対応しており、円筒部34の径方向は、中心軸101の径方向に対応している。
【0031】
円筒部34は、鍔部32の内周縁から立ち上がっている。円筒部34は、鍔部32の内周縁から中心軸101の軸方向において孔24より遠ざかる方向に円筒状に延出している。鍔部32は、円筒部34の下端部に接続されている。鍔部32は、円筒部34の下端部から中心軸101の径方向外側に向けて鍔状に広がっている。円筒部34の内周面には、前述のプラグ41の軸部43が螺合される雌ねじが設けられている。
【0032】
円筒部34の内部は、孔24と連通している。円筒部34の内径は、孔24の直径以下である。中心軸101の軸方向における円筒部34の長さは、プラグ41の軸部43のその軸方向における長さよりも小さい。中心軸101の軸方向における円筒部34の長さは、中心軸101の径方向における鍔部32の長さ(幅)よりも小さくてもよいし、中心軸101の径方向における鍔部32の長さ(幅)以上であってもよい。
【0033】
図5は、
図4中の矢印Vに示される方向に見たプラグシートを示す側面図である。
図3から
図5を参照して、円筒部34には、切り欠き部51が設けられている。切り欠き部51は、中心軸101(円筒部34)の径方向において円筒部34を貫通している。切り欠き部51は、円筒部34の円筒面に切り欠き面200をなしている。切り欠き面200は、中心軸101の周方向に延在している。
【0034】
切り欠き部51は、中心軸101の周方向の一部の角度範囲に設けられている。切り欠き部51は、たとえば、中心軸101の周方向において、45°以下の角度範囲に設けられてもよいし、30°以下の角度範囲に設けられてもよい。切り欠き部51は、中心軸101の軸方向において、円筒部34の上端部34pから所定の長さ範囲に渡って設けられている。切り欠き部51の下端部は、中心軸101の軸方向において、鍔部32の上面と揃っている。このような構成に限られず、切り欠き部51の下端部は、鍔部32の上面から上方に離れた位置にあってもよい。
【0035】
オイルパン21からのオイルの排出時、オイルは、空間26におけるオイルの液面が円筒部34の上端部34pに達するまで、円筒部34を通じて孔24から排出される。本実施の形態では、円筒部34に切り欠き部51が設けられているため、オイルの液面が円筒部34の上端部34pに達した後も、オイルは、切り欠き部51を通じて孔24から排出される。したがって、オイルパン21に残留するオイルの量を少なくすることができる。
【0036】
プラグシート31は、壁部37をさらに有する。壁部37は、鍔部32の外周縁から立ち上がっている。壁部37は、鍔部32の外周縁から中心軸101の軸方向において孔24より遠ざかる方向に延出している。壁部37は、中心軸101の周方向の一部の角度範囲に設けられている。壁部37は、中心軸101(円筒部34)の径方向において、切り欠き部51がなす切り欠き面200と対向している。
【0037】
中心軸101の軸方向における壁部37の上端部37pおよび鍔部32の間の長さは、中心軸101の軸方向における円筒部34の上端部34pおよび鍔部32の間の長さよりも大きい。すなわち、壁部37の上端部37pは、円筒部34の上端部34pよりも上方に配置されている。これに限られず、壁部37の上端部37pは、中心軸101の軸方向において、円筒部34の上端部34pと揃う位置に配置されてもよいし、円筒部34の上端部34pよりも下方に配置されてもよい。中心軸101の径方向において、切り欠き面200および壁部37の間の最短距離は、壁部37が設けられていない角度範囲における鍔部32の長さ(幅)よりも小さくてもよいし、壁部37が設けられていない角度範囲における鍔部32の長さ(幅)以上であってもよい。
【0038】
図5に示されるように、中心軸101(円筒部34)の径方向に見た場合に、切り欠き部51がなす切り欠き面200の全体が壁部37に投影される。壁部37は、上端部37pが上辺に対応し、鍔部32に対して接続される壁部37の下端部が、上辺よりも長い下辺に対応する台形形状を有する。
【0039】
図4および
図5中には、中心軸101を含み、切り欠き面200および壁部37と交差する仮想平面120が示されている。
図3は、仮想平面120により切断された底部22およびプラグシート31の断面図に対応している。
図5に示されるように、切り欠き面200は、仮想平面120を挟んだ両側で対称となる形状を有し、壁部37は、仮想平面120を挟んだ両側で対称となる形状を有する。壁部37は、仮想平面120と直交する平面内で延在している。
【0040】
図3に示されるように、鍔部32に対して壁部37がなす角度αは、90°よりも小さい(α<90°)。これに限られず、角度αは、90°以上であってもよいし(α≧90°)であってもよいし、特に90°であってもよい(α=90°)。
【0041】
なお、本発明において、切り欠き部がなす切り欠き面、および、壁部の形状は、特に限定されるものではない。また、円筒部の径方向に見た場合に、切り欠き部がなす切り欠き面の一部が壁部に投影されるように壁部が設けられてもよい。
【0042】
図6は、比較例におけるプラグシートを示す斜視図である。
図7は、比較例におけるプラグシートを用いた場合に、オイルパン内の空間から孔に向かうオイル流れを模式的に示す上面図である。
図8は、比較例におけるプラグシートを用いた場合に、オイルの排出軌跡を計算したシミュレーション結果を示す図である。
【0043】
図7および
図8中には、空間26におけるオイルの液面が円筒部34の上端部34pに達するよりも前のオイル流れおよびオイルの排出軌跡が示されている。また、
図6および
図7と、
図8との相互の関係の理解を容易にするために、
図6から
図8中には、X軸、Y軸およびZ軸が示されている。X軸は、
図4および
図5中の仮想平面120と平行な水平方向に延びている。Y軸は、X軸と直交する水平方向に延びている。Z軸は、上下方向に延びている。
【0044】
図6から
図8を参照して、本比較例におけるプラグシート131は、鍔部32と、切り欠き部51が設けられた円筒部34とから構成されており、壁部37が設けられていない。
【0045】
このような構成のプラグシート131を用いた場合、切り欠き部51が設けられた角度範囲では、切り欠き部51がなす切り欠き面200を通じて空間26から孔24に向かうオイル流れが加わる。このため、
図7に示されるように、切り欠き部51が設けられた角度範囲では、切り欠き部51が設けられていない角度範囲と比較して、孔24に向かうオイル流量が大きくなる。その結果、
図8に示されるように、孔24から落下するオイルは、X軸方向において切り欠き部51から遠ざかる方向にシフトする軌跡を描く。また、Y軸方向におけるオイルの排出軌跡の幅Laは、孔24からのオイルの落下距離が大きくなるほど増大する。
【0046】
図9は、本実施の形態におけるプラグシートを用いた場合に、オイルパン内の空間から孔に向かうオイル流れを模式的に示す上面図である。
図10は、本実施の形態におけるプラグシートを用いた場合に、オイルの排出軌跡を計算したシミュレーション結果を示す図である。
図9および
図10は、それぞれ、
図7および
図8に対応している。
【0047】
図9および
図10を参照して、本実施の形態におけるプラグシート31には、中心軸101(円筒部34)の径方向において切り欠き部51がなす切り欠き面200と対向する壁部37が設けられているため、切り欠き面200を通じて孔24に向かうオイル流れが抑制される。これにより、空間26から孔24に向かうオイル流れの流量を、中心軸101の周方向においてより均等にすることができる。この結果、
図10に示されるように、孔24からのオイルの排出軌跡を、上下に真っ直ぐにすることができ、また、Y軸方向におけるオイルの排出軌跡の幅Lbを、上下方向の位置に関わらず一定にすることができる。
【0048】
また、本実施の形態では、鍔部32に対して壁部37がなす角度αが90°よりも小さい範囲に設定されている。このような構成により、壁部37の上端部37pの側では、中心軸101の径方向における切り欠き面200および壁部37の間の距離を小さくすることで、切り欠き面200を通じて孔24に向かうオイル流れをより積極的に抑制することができる。また、壁部37の下端部の側では、壁部37の折り曲げ位置における鍔部32の幅を十分に確保することで、壁部37の折り曲げ成形時に、金型によって鍔部32をより確実に保持することができる。
【0049】
なお、上記の鍔部32に対して壁部37がなす角度αのほかに、中心軸101の径方向に見て、壁部37に投影される切り欠き面200の面積の割合(上下方向における壁部37の長さ、および、水平方向における壁部37の幅など)、中心軸101の径方向における壁部37および切り欠き面200の距離、または、壁部37の形状(平面形状、および、湾曲形状など)等を通じて、切り欠き部51が設けられた角度範囲におけるオイル流れを調整することが可能である。
【0050】
図11は、
図4中のプラグシートの変形例を示す斜視図である。
図11を参照して、本変形例では、円筒部34に複数の切り欠き部51(51A,51B)が設けられている。複数の切り欠き部51(51A,51B)は、中心軸101の周方向において互いに間隔を開けて設けられている。複数の切り欠き部51(51A,51B)は、中心軸101の周方向において等間隔に設けられている。切り欠き部51Aおよび切り欠き部51Bは、同一形状である。
【0051】
プラグシート31は、複数の壁部37(37A,37B)を有する。複数の壁部37(37A,37B)は、中心軸101の周方向において互いに間隔を開けて設けられている。複数の壁部37(37A,37B)は、中心軸101の周方向において等間隔に設けられている。壁部37Aおよび壁部37Bは、中心軸101の径方向において、それぞれ、切り欠き部51Aおよび切り欠き部51Bがなす切り欠き面200と対向している。切り欠き部51Aがなす切り欠き面200と、切り欠き部51Bがなす切り欠き面200とは、同一形状である。
【0052】
本変形例に示されるように、プラグシート31に切り欠き部51および壁部37のセットが複数設けられてもよい。この場合、オイルパン21の底部22上に残るオイルをより短時間で排出することができる。
【0053】
なお、本発明は、車両に搭載されるエンジンに限られず、たとえば、発電機に搭載されるエンジンであってもよい。
【0054】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0055】
12 シリンダブロック、21 オイルパン、22 底部、23 側部、24 孔、26 空間、31,131 プラグシート、32 鍔部、34 円筒部、34p,37p 上端部、37,37A,37B 壁部、41 プラグ、42 頭部、43 軸部、51,51A,51B 切り欠き部、100 エンジン、101 中心軸、120 仮想平面、200 切り欠き面。