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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092314
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】偏光変調素子及び立体画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/13 20060101AFI20240701BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20240701BHJP
   H04N 13/315 20180101ALI20240701BHJP
   G02B 30/24 20200101ALN20240701BHJP
【FI】
G02F1/13 505
G02F1/1333
H04N13/315
G02B30/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208149
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】518078142
【氏名又は名称】上海天馬微電子有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100183955
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 悟郎
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100180334
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 洋美
(74)【代理人】
【識別番号】100177149
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 浩義
(74)【代理人】
【識別番号】100174067
【弁理士】
【氏名又は名称】湯浅 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136342
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 成美
(72)【発明者】
【氏名】慶長 幸恵
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 哲史
(72)【発明者】
【氏名】住吉 研
【テーマコード(参考)】
2H088
2H189
2H199
5C061
【Fターム(参考)】
2H088EA07
2H088EA10
2H088EA47
2H088GA02
2H088HA03
2H088HA28
2H088JA05
2H088KA02
2H088KA06
2H088KA11
2H088KA26
2H088MA09
2H189AA29
2H189AA30
2H189AA32
2H189HA16
2H189JA05
2H189KA01
2H189KA02
2H189KA07
2H189KA17
2H189LA05
2H189LA18
2H189NA13
2H199BA23
2H199BA28
2H199BB06
2H199BB09
2H199BB45
2H199BB52
5C061AA06
5C061AA11
5C061AB14
5C061AB16
(57)【要約】
【課題】低電圧で、所望する偏光方向を有する偏光成分を高い強度で出射できる、偏光変調素子及び立体画像表示装置を提供する。
【解決手段】偏光変調素子10は、ねじれ方向が同じ、N個(Nは3以上の整数)のねじれネマティック液晶セル110~140を備える。ねじれネマティック液晶セル110~140のそれぞれのねじれ角の和が90°である。少なくとも1つの、隣接するねじれネマティック液晶セル120,130において、光出射側基板の配向軸方向224と光入射側基板の配向軸方向232が直交している。その他の、隣接するねじれネマティック液晶セル110,120、130,140において、光出射側基板の配向軸方向214、234と光入射側基板の配向軸方向222、242は一致している。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじれ方向が同じ、N個(Nは3以上の整数)のねじれネマティック液晶セルを備え、
前記ねじれネマティック液晶セルのそれぞれは、液晶を挟持する、光入射側基板と光出射側基板とを有し、
前記ねじれネマティック液晶セルのそれぞれのねじれ角の和が90°であり、
前記ねじれネマティック液晶セルは、一方の前記ねじれネマティック液晶セルの前記光入射側基板と他方の前記ねじれネマティック液晶セルの前記光出射側基板とを対向させて、順次積層され、
少なくとも1つの、隣接する前記ねじれネマティック液晶セルにおいて、一方の前記ねじれネマティック液晶セルの前記光出射側基板の配向軸方向と、他方の前記ねじれネマティック液晶セルの前記光入射側基板の配向軸方向が直交し、
前記少なくとも1つの、隣接する前記ねじれネマティック液晶セルを除く、隣接する前記ねじれネマティック液晶セルにおいて、一方の前記ねじれネマティック液晶セルの前記光出射側基板の配向軸方向と、他方の前記ねじれネマティック液晶セルの前記光入射側基板の配向軸方向は一致している、
偏光変調素子。
【請求項2】
Nは偶数であり、
N/2番目の前記ねじれネマティック液晶セルと、(N/2)+1番目の前記ねじれネマティック液晶セルにおいて、一方の前記ねじれネマティック液晶セルの前記光出射側基板の配向軸方向と、他方の前記ねじれネマティック液晶セルの前記光入射側基板の配向軸方向が直交している、
請求項1に記載の偏光変調素子。
【請求項3】
2つの、隣接する前記ねじれネマティック液晶セルにおいて、一方の前記ねじれネマティック液晶セルの前記光出射側基板の配向軸方向と、他方の前記ねじれネマティック液晶セルの前記光入射側基板の配向軸方向が直交している、
請求項1に記載の偏光変調素子。
【請求項4】
Nが4であり、
1番目の前記ねじれネマティック液晶セルと2番目の前記ねじれネマティック液晶セルと、3番目の前記ねじれネマティック液晶セルと4番目の前記ねじれネマティック液晶セルとにおいて、一方の前記ねじれネマティック液晶セルの前記光出射側基板の配向軸方向と、他方の前記ねじれネマティック液晶セルの前記光入射側基板の配向軸方向が直交している、
請求項3に記載の偏光変調素子。
【請求項5】
Nが6であり、
1番目の前記ねじれネマティック液晶セルと2番目の前記ねじれネマティック液晶セルと、4番目の前記ねじれネマティック液晶セルと5番目の前記ねじれネマティック液晶セルとにおいて、一方の前記ねじれネマティック液晶セルの前記光出射側基板の配向軸方向と、他方の前記ねじれネマティック液晶セルの前記光入射側基板の配向軸方向が直交している、
請求項3に記載の偏光変調素子。
【請求項6】
Nが8であり、
2番目の前記ねじれネマティック液晶セルと3番目の前記ねじれネマティック液晶セルと、6番目の前記ねじれネマティック液晶セルと7番目の前記ねじれネマティック液晶セルとにおいて、一方の前記ねじれネマティック液晶セルの前記光出射側基板の配向軸方向と、他方の前記ねじれネマティック液晶セルの前記光入射側基板の配向軸方向が直交している、
請求項3に記載の偏光変調素子。
【請求項7】
前記ねじれネマティック液晶セルのそれぞれのねじれ角が、等しい、
請求項1に記載の偏光変調素子。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の偏光変調素子と、
第1画像と第2画像とを順次に表示し、前記第1画像の表示光と前記第2画像の表示光とを、偏光方向が所定の第1方向である、前記偏光変調素子に入射する偏光光として出射する表示ユニットと、
前記偏光変調素子から出射された出射光が入射し、前記偏光変調素子から出射された前記出射光に対する焦点距離が、前記出射光の偏光方向によって異なる偏光二焦点レンズと、を備え、
前記第1画像と前記第2画像は、表示対象を、観察者から見て奥行き方向の異なる位置に位置する第1表示面と第2表示面のそれぞれに、前記観察者の側から投影した二次元画像であり、
前記偏光変調素子は、前記偏光光が前記第1画像の表示光である場合に、前記偏光光の偏光方向を前記所定の第1方向に維持して出射し、前記偏光光が前記第2画像の表示光である場合に、前記偏光光の偏光方向を前記所定の第1方向に直交する第2方向に変えて出射して、前記出射光の偏光方向を前記所定の第1方向と前記第2方向とに切り替えて出射し、
前記偏光二焦点レンズは、前記第1画像と前記第2画像のそれぞれを、前記第1表示面と前記第2表示面のそれぞれに、虚像として結像させる、
立体画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、偏光変調素子及び立体画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ねじれネマティック液晶を利用した偏光変調素子を備える、表示装置、光スイッチ等が知られている。例えば、特許文献1は、2つの二次元画像を交互に表示する表示装置と、表示装置からの出射光を偏光光として出射する偏光板と、偏光板から出射された出射光の偏光方向を切り替える偏光切替装置(偏光変調素子)と、偏光型二焦点レンズとを備える三次元表示装置を開示している。また、特許文献2は、複数の液晶セルからなる液晶偏光回転子(偏光変調素子)を備える液晶光スイッチを開示している。
【0003】
特許文献2の液晶偏光回転子を構成する複数の液晶セルでは、セル厚とツイスト角との比がほぼ等しく、ねじれ方向が等しく、液晶セル間で光出射側基板に接する液晶層の液晶ダイレクタ方位角と光入射側基板に接する液晶層の液晶ダイレクタ方位角がほぼ等しい。これらにより、液晶セルのそれぞれのセル厚を薄くして、液晶セル(すなわち液晶光スイッチ)の応答時間の短縮を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-129983号公報
【特許文献2】特開2003-75800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
TN(Twisted Nematic)セルでは、液晶層と基板(配向膜)との界面付近の液晶分子は、印加される電圧に応答しがたいので、液晶分子による複屈折が界面付近に残留する。光入射側基板に接する液晶層の液晶ダイレクタ方位角と光出射側基板に接する液晶層の液晶ダイレクタ方位角が互いに直交している90°TNセルでは、界面付近の液晶ダイレクタ方位角を入射する直線偏光の偏光方向に対して、0°と90°にできる。この場合、90°TNセルに入射した直線偏光光は、光入射側基板と光出射側基板の界面付近に残留する複屈折の影響を受けず、偏光状態を維持されて、直線偏光として出射される。
【0006】
特許文献2では、90°TNセルを複数のTN液晶セルに分割することにより、応答時間の短縮を実現している。90°TNセルを複数のTNセルに分割すると、界面付近の液晶ダイレクタ方位角が直線偏光の偏光方向に対して、0°又は90°でない基板(光入射側基板と光出射側基板)が存在する。したがって、電圧が印加された状態で直線偏光光が入射された場合、特許文献2の液晶光スイッチからの出射光は、複屈折の残留によって楕円偏光となり、所望する偏光方向を有する偏光成分の強度が低下する。また、界面付近の液晶分子を応答させるために、TNセルに高電圧を印加すると、消費電力が増加し、また、TNセルが短絡する虞もある。
【0007】
本開示は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、低電圧で、所望する偏光方向を有する偏光成分を高い強度で出射できる、偏光変調素子及び立体画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、第1の観点に係る偏光変調素子は、
ねじれ方向が同じ、N個(Nは3以上の整数)のねじれネマティック液晶セルを備え、
前記ねじれネマティック液晶セルのそれぞれは、液晶を挟持する、光入射側基板と光出射側基板とを有し、
前記ねじれネマティック液晶セルのそれぞれのねじれ角の和が90°であり、
前記ねじれネマティック液晶セルは、一方の前記ねじれネマティック液晶セルの前記光入射側基板と他方の前記ねじれネマティック液晶セルの前記光出射側基板とを対向させて、順次積層され、
少なくとも1つの、隣接する前記ねじれネマティック液晶セルにおいて、一方の前記ねじれネマティック液晶セルの前記光出射側基板の配向軸方向と、他方の前記ねじれネマティック液晶セルの前記光入射側基板の配向軸方向が直交し、
前記少なくとも1つの、隣接する前記ねじれネマティック液晶セルを除く、隣接する前記ねじれネマティック液晶セルにおいて、一方の前記ねじれネマティック液晶セルの前記光出射側基板の配向軸方向と、他方の前記ねじれネマティック液晶セルの前記光入射側基板の配向軸方向は一致している。
【0009】
第2の観点に係る立体画像表示装置は、
上記の偏光変調素子と、
第1画像と第2画像とを順次に表示し、前記第1画像の表示光と前記第2画像の表示光とを、偏光方向が所定の第1方向である、前記偏光変調素子に入射する偏光光として出射する表示ユニットと、
前記偏光変調素子から出射された出射光が入射し、前記偏光変調素子から出射された前記出射光に対する焦点距離が、前記出射光の偏光方向によって異なる偏光二焦点レンズと、を備え、
前記第1画像と前記第2画像は、表示対象を、観察者から見て奥行き方向の異なる位置に位置する第1表示面と第2表示面のそれぞれに、前記観察者の側から投影した二次元画像であり、
前記偏光変調素子は、前記偏光光が前記第1画像の表示光である場合に、前記偏光光の偏光方向を前記所定の第1方向に維持して出射し、前記偏光光が前記第2画像の表示光である場合に、前記偏光光の偏光方向を前記所定の第1方向に直交する第2方向に変えて出射して、前記出射光の偏光方向を前記所定の第1方向と前記第2方向とに切り替えて出射し、
前記偏光二焦点レンズは、前記第1画像と前記第2画像のそれぞれを、前記第1表示面と前記第2表示面のそれぞれに、虚像として結像させる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、少なくとも1つの、隣接するねじれネマティック液晶セルにおいて、一方のねじれネマティック液晶セルの光出射側基板の配向軸方向と、他方のねじれネマティック液晶セルの光入射側基板の配向軸方向が直交しているので、ねじれネマティック液晶セルにおける液晶層と基板との界面付近に残留する複屈折が相殺されて、所望する偏光方向における光強度が高い偏光光を、低電圧で出射できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態1に係る偏光変調素子の断面を示す模式図である。
図2】実施形態1に係るTNセルの断面を示す模式図である。
図3】実施形態1に係る配向軸方向を示す模式図である。
図4】実施形態1に係る、1番目のTNセルのネマティック液晶の配向と配向軸方向とを示す図である。
図5】実施形態1に係る、2番目のTNセルのネマティック液晶の配向と配向軸方向とを示す図である。
図6】実施形態1に係る、3番目のTNセルのネマティック液晶の配向と配向軸方向とを示す図である。
図7】実施形態1に係る、4番目のTNセルのネマティック液晶の配向と配向軸方向とを示す図である。
図8】実施形態1に係る、初期状態における偏光変調素子のネマティック液晶の配向状態を示す模式図である。
図9】実施形態1に係る、ON状態における偏光変調素子のネマティック液晶の配向状態を示す模式図である。
図10】実施形態1に係る、ON状態において、2番目のTNセルから出射された出射光の偏光状態を示す図である。
図11】実施形態1に係る、ON状態において、3番目のTNセルから出射された出射光の偏光状態を示す図である。
図12】実施形態1に係る、ON状態において出射される出射光の偏光状態を示す図である。
図13】実施形態1に係る、TNセルのそれぞれに印加される電圧と偏光コントラストとの関係を示す図である。
図14】比較例1に係る、ON状態における偏光変調素子のネマティック液晶の配向状態を示す模式図である。
図15】比較例1に係る、ON状態において出射される出射光の偏光状態を示す図である。
図16】実施形態2に係る偏光変調素子の断面を示す模式図である。
図17】実施形態2に係る、1番目のTNセルのネマティック液晶の配向と配向軸方向とを示す図である。
図18】実施形態2に係る、2番目のTNセルのネマティック液晶の配向と配向軸方向とを示す図である。
図19】実施形態2に係る、3番目のTNセルのネマティック液晶の配向と配向軸方向とを示す図である。
図20】実施形態2に係る、TNセルのそれぞれに印加される電圧と、偏光コントラストとの関係を示す図である。
図21】実施形態2に係る偏光コントラストと最適電圧を示す図である。
図22】実施形態2に係る複屈折板を示す模式図である。
図23】実施形態2に係る複屈折板を示す模式図である。
図24】実施形態2に係る複屈折板を示す模式図である。
図25】実施形態2に係る配向モデルを示す模式図である。
図26】実施形態2に係る、TNセルに印加される電圧と、ON状態におけるTNセルに残留する複屈折との関係を示す図である。
図27】実施形態3に係る、2番目のTNセルのネマティック液晶の配向と配向軸方向とを示す図である。
図28】実施形態3に係る、3番目のTNセルのネマティック液晶の配向と配向軸方向とを示す図である。
図29】実施形態3に係る、4番目のTNセルのネマティック液晶の配向と配向軸方向とを示す図である。
図30】実施形態3に係る、TNセルのそれぞれに印加される電圧と、偏光コントラストとの関係を示す図である。
図31】実施形態3に係る偏光コントラストと最適電圧を示す図である。
図32】実施形態4に係るTNセルの配向軸方向を示す図である。
図33】実施形態4に係る、TNセルのそれぞれに印加される電圧と、偏光コントラストとの関係を示す図である。
図34】実施形態5に係るTNセルの配向軸方向を示す図である。
図35】実施形態5に係る、TNセルのそれぞれに印加される電圧と、偏光コントラストとの関係を示す図である。
図36】実施形態5に係る偏光コントラストと最適電圧を示す図である。
図37】実施形態6に係る立体画像表示装置を示す模式図である。
図38】実施形態6に係る液晶表示パネルを示す平面図である。
図39】実施形態6に係る偏光二焦点レンズを示す断面図である。
図40】実施形態6に係る制御部を示すブロック図である。
図41】実施形態6に係る制御部のハードウェアの構成を示す図である。
図42】変形例1に係るTNセルの配向軸方向を示す図である。
図43】変形例2に係るTNセルの配向軸方向を示す図である。
図44】変形例に係る、1番目のTNセルの配光軸方向と入射光の偏光方向とを示す模式図である。
図45】変形例に係る、実施形態1の偏光変調素子の初期配向状態における偏光コントラストを示す図である。
図46】変形例に係る、実施形態3の偏光変調素子の初期配向状態における偏光コントラストを示す図である。
図47】変形例に係る、実施形態5の偏光変調素子の初期配向状態における偏光コントラストを示す図である。
図48】変形例に係る、比較例1の偏光変調素子の初期配向状態における偏光コントラストを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態に係る偏光変調素子と立体画像表示装置について、図面を参照して説明する。
【0013】
<実施形態1>
図1図15を参照して、本実施形態に係る偏光変調素子10を説明する。偏光変調素子10は、図1に示すように、ねじれ方向が同じ、4つ(N=4)のねじれネマティック液晶セル110~140を備える。偏光変調素子10は、図示しない接着層を介して、ねじれネマティック液晶セル110~140を順次積層することにより形成されている。電圧を印加されていない状態(初期配向状態)では、偏光変調素子10は、ねじれネマティック液晶セル110に入射する直線偏光光(入射光)L1の偏光方向を90°回転させて、出射光L2として出射する。また、電圧を印加された状態(ON状態)では、偏光変調素子10は、直線偏光光L1の偏光方向を維持して、出射光L2として出射しようとする。
【0014】
本明細書では、理解を容易にするため、図1における偏光変調素子10の右方向(紙面の右方向)を+X方向、上方向(紙面の上方向)を+Z方向、+X方向と+Z方向に垂直な方向(紙面の奥方向)を+Y方向として説明する。また、偏光変調素子10に入射する直線偏光光L1の偏光方向をX方向とする。ねじれネマティック液晶セルをTN(Twisted Nematic)セルとも記載し、直線偏光光L1が入射する側からm(mは1以上の整数)番目のTNセルとも記載する。さらに、ねじれネマティック液晶セル(TNセル)を総称して、ねじれネマティック液晶セル100又はTNセル100とも記載する。
【0015】
まず、TNセル100を説明する。TNセル100は、図2に示すように、光入射側基板102と光出射側基板104とネマティック液晶106とを備える。TNセル100は、図1に示すように、一方のTNセル100の光入射側基板102と他方のTNセル100の光出射側基板104とを対向させて、順次積層される。
【0016】
光入射側基板102は、図1に示すように、直線偏光光L1が入射する側に位置する基板である。光入射側基板102は、図2に示すように、光出射側基板104に対向する。光入射側基板102と光出射側基板104はネマティック液晶106を挟持する。光入射側基板102は、例えば、ガラス基板である。光入射側基板102は、光出射側基板104に対向する主面102aに透光性電極102bと配向膜102cとを有する。
【0017】
光入射側基板102の透光性電極102bは、主面102aの全面に渡って、ITO(Indium Tin Oxide)から形成されている。光入射側基板102の配向膜102cは、ネマティック液晶106を所定の方向に配向させる。光入射側基板102の配向膜102cは、例えば、ポリイミド配向膜である。ネマティック液晶106の配向については後述する。
【0018】
光出射側基板104は、図1に示すように、出射光L2が出射する側に位置する基板である。光入射側基板102と光出射側基板104は、図2に示すように、シール材108により貼り合わされている。光出射側基板104は、例えば、ガラス基板である。光出射側基板104は、光入射側基板102に対向する主面104aに、透光性電極104bと配向膜104cとを有する。
【0019】
光出射側基板104の透光性電極104bは、主面104aの全面に渡って、ITOから形成されている。光出射側基板104の配向膜104cは、ネマティック液晶106を所定の方向に配向させる。光出射側基板104の配向膜104cは、例えば、ポリイミド配向膜である。
【0020】
ネマティック液晶106は、光入射側基板102と光出射側基板104に挟持される。本実施形態では、ネマティック液晶106の屈折率異方性Δnは、波長380nmで0.1948、波長535nmで0.1403である。また、ネマティック液晶106の誘電率異方性Δεは、20℃で4.8である。なお、本実施形態のTNセル100のセル厚(ネマティック液晶106の厚さ)は5.47μmである。ネマティック液晶106の屈折率異方性Δnとセル厚は、初期配向状態において、所定の波長を有する直線偏光光L1の偏光方向が90°回転し、出射光L2として偏光変調素子10から出射する値に設定される。
【0021】
ここで、ネマティック液晶106(すなわち、液晶分子106M)の配向を説明する。ネマティック液晶106は、一般的なTNセルのネマティック液晶と同様に、電圧を印加されていない状態(初期配向状態)において、光入射側基板102の配向膜102cと光出射側基板104の配向膜104cによって、ねじれ配向(ツイスト配向)されている。本明細書では、図3に示すように、ネマティック液晶106と配向膜102c又は配向膜104cとの界面における液晶分子106Mの初期配向方向を、光入射側基板102又は光出射側基板104の配向軸方向200とする。なお、TNセル110~140のそれぞれの配向軸方向を総称して、配向軸方向200とも記載する。
【0022】
TNセル110~140の初期配向状態では、図4図7に示すように、ネマティック液晶106は+Z側から平面視した場合に時計回りにねじれて配向している。また、TNセル110~140のねじれ角(すなわち、ネマティック液晶106のねじれ角)αは22.5°であり、TNセル110~140のそれぞれのねじれ角αの和は90°となっている。一方、TNセル110~140の配向軸方向200は、異なっている。
【0023】
具体的には、直線偏光光L1が入射する1番目のTNセル110では、図4に示すように、光入射側基板102の配向軸方向212は、+X方向である。TNセル110の光出射側基板104の配向軸方向214は、+X方向に対して時計回りに22.5°傾いている。
【0024】
2番目のTNセル120では、図5に示すように、光入射側基板102の配向軸方向222は、+X方向に対して時計回りに22.5°傾き、TNセル110の光出射側基板104の配向軸方向214に一致している。TNセル120の光出射側基板104の配向軸方向224は、+X方向に対して時計回りに45°傾いている。
【0025】
3番目のTNセル130では、図6に示すように、光入射側基板102の配向軸方向232は、+X方向に対して時計回りに135°傾き、TNセル120の光出射側基板104の配向軸方向224に直交している。TNセル130の光出射側基板104の配向軸方向234は、+X方向に対して時計回りに157.5°傾いている。
【0026】
4番目のTNセル140では、図7に示すように、光入射側基板102の配向軸方向242は、+X方向に対して時計回りに157.5°傾き、TNセル130の光出射側基板104の配向軸方向234に一致している。TNセル140の光出射側基板104の配向軸方向224は、+X方向に対して時計回りに180°回転している。
【0027】
本実施形態では、後述するように、隣接する、2番目(N/2番目)のTNセル120と3番目((N/2)+1番目)のTNセル130において、TNセル120の光出射側基板104の配向軸方向224とTNセル130の光入射側基板102の配向軸方向232が直交しているので、ON状態において、界面付近に残留するネマティック液晶106の複屈折が相殺される。これにより、偏光変調素子10は、ON状態において、所望する偏光方向を有する偏光成分を高い強度で出射できる。
【0028】
次に、偏光変調素子10の作用について説明する。図8は、電圧を印加されていない状態(初期配向状態)における、ネマティック液晶106の配向状態を示す模式図である。図9は、TNセル110~140のそれぞれに所定の電圧(例えば20V)を印加した状態(ON状態)における、ネマティック液晶106の配向状態を示す模式図である。図10は、ON状態において、2番目のTNセル120から出射された出射光L12の偏光状態を示す図であり、図11は、ON状態において、3番目のTNセル130から出射された出射光L13の偏光状態を示す図である。さらに、図12は、ON状態における偏光変調素子10から出射される出射光L2の偏光状態を示す図である。なお、図8図9では、光入射側基板102、光出射側基板104等を省略している。また、図10図12では、偏光変調素子10に入射する、X方向に偏光方向を有する直線偏光光L1の電場強度(光強度)を1として、出射される光の電場ベクトルの先端の軌跡を表している。直線偏光光L1の波長は380nmである。
【0029】
初期配向状態では、図8に示すように、TNセル110~140のそれぞれのネマティック液晶106は、ねじれ配向している。TNセル110~140のネマティック液晶106は同じ方向にねじれ、ねじれ角αの和が90°である。ネマティック液晶106の屈折率異方性Δnとセル厚とを前述のように設定することにより、直線偏光光L1が偏光変調素子10に入射すると、偏光変調素子10は、所定の波長において直線偏光光L1の偏光方向を90°回転させて、Y方向の偏光方向を有する出射光L2を出射する。
【0030】
ON状態(光入射側基板102の透光性電極102bと光出射側基板104の透光性電極104bとの間に所定の電圧を印加した状態)では、図9に示すように、TNセル110~140のそれぞれのネマティック液晶106は、ネマティック液晶106と光入射側基板102又は光出射側基板104の界面付近の液晶分子106Mを除いて、光入射側基板102又は光出射側基板104に対して垂直に配向する。この場合、2番目のTNセル120から出射される出射光L12は、図10に示すように、TNセル110とTNセル120に残留するネマティック液晶106の複屈折により、円偏光に近い楕円偏光となる。
【0031】
本実施形態では、TNセル120の光出射側基板104の配向軸方向224とTNセル130の光入射側基板102の配向軸方向232が直交しているので、TNセル110とTNセル120に残留するネマティック液晶106の複屈折が、TNセル130に残留するネマティック液晶106の複屈折により、相殺される。したがって、図11に示すように、3番目のTNセル130から出射される出射光L13は、X方向に偏光方向を有する直線偏光に近い、楕円偏光となる。さらに、図12に示すように、偏光変調素子10(TNセル140)から、X方向に偏光方向を有する直線偏光に近い楕円偏光として、出射光L2が出射される。
【0032】
ここで、偏光コントラストpCRを定義する。偏光コントラストpCRは、出射光L2を、所望する偏光成分の偏光方向に平行な透過軸を有する検光子に透過させた場合における透過光強度I2と、出射光L2を、所望する偏光成分の偏光方向に垂直な透過軸を有する検光子に透過させた場合における透過光強度I1との比を指し、pCR=I2/I1により表される。偏光コントラストpCRが高いほど、所望する偏光方向を有する偏光成分の強度が高いことを示す。
【0033】
偏光変調素子10は、ON状態において、直線偏光光L1の偏光方向を維持して、出射光L2を出射しようとするので、ON状態における所望する偏光成分の偏光方向は、X方向である。本実施形態では、図12に示すようにX方向に偏光方向を有する直線偏光に近い楕円偏光が、偏光変調素子10から出射光L2として出射されるので、ON状態における偏光変調素子10の偏光コントラストpCRは高い。例えば、図13に示すように、TNセル110~140のそれぞれに20Vを印加した状態における、偏光変調素子10の偏光コントラストpCRは40である。また、偏光コントラストpCRを20とするためには、TNセル110~140のそれぞれに17Vを印加すればよい。
【0034】
一方、TNセル130の配向軸方向232がTNセル120の配向軸方向224に一致している偏光変調素子50A(比較例1、図14)では、ON状態(20V)において、直線偏光光L1が偏光変調素子50Aに入射すると、図15に示す出射光L2Aが出射する。出射光L2Aは、偏光変調素子10の出射光L2よりも円偏光に近く、偏光変調素子10の出射光L2よりもY方向側に傾いている。これにより、比較例1の偏光変調素子50Aでは、偏光コントラストpCRが低く(偏光コントラストpCR=0.5)、所望する偏光方向を有する偏光成分を十分に得ることができない。また、図13に示すように、比較例1の偏光変調素子50Aは、偏光変調素子10と同程度の偏光コントラストpCRを得るために、非常に高い電圧を必要とする。
【0035】
なお、比較例1の偏光変調素子50Aでは、3番目のTNセル130の配向軸方向232が、図14に示すように、+X方向に対して時計回りに45°傾いてTNセル120の配向軸方向224に一致している。また、比較例1の偏光変調素子50Aでは、4番目のTNセル140の配向軸方向242は3番目のTNセル130の配向軸方向234に一致し、4番目のTNセル140の配向軸方向244は-Y方向である。比較例1の偏光変調素子50Aのその他の構成は、偏光変調素子10と同様である。
【0036】
以上のように、偏光変調素子10は、隣接する、2番目のTNセル120と3番目のTNセル130において、TNセル120の光出射側基板104の配向軸方向224とTNセル130の光入射側基板102の配向軸方向232が直交しているので、低電圧で、所望する偏光方向を有する偏光成分を高い強度で出射できる。
【0037】
<実施形態2>
実施形態1では、偏光変調素子10は4つのTNセル100を備える。偏光変調素子10は、N個(Nは3以上の整数)のTNセル100を備えればよい。本実施形態では、3つのTNセル100を備える偏光変調素子10を説明する。
【0038】
本実施形態の偏光変調素子10は、図16に示すように、ねじれ方向が同じ、3つのTNセル110~130を備える。TNセル110~130は、順次に積層されている。本実施形態のTNセル110~130の構成は、セル厚(5.42μm)と配向軸方向200を除き、実施形態1のTNセル100と同様である。
【0039】
初期配向状態では、図17図19に示すように、本実施形態のTNセル110~130のネマティック液晶106は、+Z側から平面視した場合に時計回りにねじれて配向している。また、TNセル110~130のねじれ角(ネマティック液晶106のねじれ角)αは30°であり、TNセル110~130のそれぞれのねじれ角αの和は90°となっている。本実施形態のTNセル110~130の配向軸方向200は、実施形態1のTNセル100と同様に、異なっている。
【0040】
1番目のTNセル110の光入射側基板102の配向軸方向212は、図17に示すように、+X方向である。また、TNセル110の光出射側基板104の配向軸方向214は、+X方向に対して時計回りに30°傾いている。
【0041】
図18に示すように、2番目のTNセル120の光入射側基板102の配向軸方向222は、+X方向に対して時計回りに120°傾き、TNセル110の光出射側基板104の配向軸方向214に直交している。TNセル120の光出射側基板104の配向軸方向224は+X方向に対して時計回りに150°傾いている。
【0042】
図19に示すように、3番目のTNセル130の光入射側基板102の配向軸方向222は、+X方向に対して時計回りに150°傾き、TNセル120の光出射側基板104の配向軸方向224に一致している。TNセル130の光出射側基板104の配向軸方向234は+X方向に対して時計回りに180°回転している。
【0043】
図20は、ON状態における、TNセル110~130のそれぞれに印加される電圧と、本実施形態の偏光変調素子10の偏光コントラストpCRと比較例2の偏光変調素子の偏光コントラストpCRとの関係を示す。比較例2の偏光変調素子は、本実施形態の偏光変調素子10と同様に、3つのTNセル110~130を備える。比較例2の偏光変調素子では、TNセル120の配向軸方向222がTNセル110の配向軸方向214に一致している。具体的には、2番目のTNセルの配向軸方向222が、+X方向に対して時計回りに30°傾いてTNセル110の配向軸方向214に一致している。また、比較例2の偏光変調素子では、3番目のTN130セルの配向軸方向232はTNセル120の配向軸方向224に一致し、3番目のTNセル130の配向軸方向234は-Y方向である。比較例2の偏光変調素子のその他の構成は、本実施形態の偏光変調素子10と同様である。
【0044】
本実施形態の偏光変調素子10では、図20に示すように、低電圧で、高い偏光コントラストpCRを得ることができる。すなわち、本実施形態の偏光変調素子10は、低電圧で、所望する偏光方向を有する偏光成分を高い強度で出射できる。例えば、偏光コントラストpCRを20とするためには、TNセル110~130のそれぞれに31Vを印加すればよい。
【0045】
さらに、本実施形態の偏光変調素子10では、TNセル110~130に印加する電圧を最適化することにより、より低電圧で、高い偏光コントラストpCRを得ることができる。例えば、図21に示すように、偏光コントラストpCRを20とするためには、TNセル110とTNセル120に14.4Vを印加し、TNセル130に6.1Vを印加すればよい。以下に、最適電圧の求め方を説明する。
【0046】
まず、TNセル110~130のそれぞれを、2つの複屈折板としてモデル化する。具体的には、電圧を印加されたTNセル110を、図22に示すように、光入射側基板102の配向軸方向212に光軸310Aを有する複屈折板110Aと、光出射側基板104の配向軸方向214に光軸310Bを有する複屈折板110Bとする。また、電圧を印加されたTNセル120を、図23に示すように、光入射側基板102の配向軸方向222に光軸320Aを有する複屈折板120Aと、光出射側基板104の配向軸方向224に光軸320Bを有する複屈折板120Bとする。さらに、電圧を印加されたTNセル130を、図24に示すように、光入射側基板102の配向軸方向232に光軸330Aを有する複屈折板130Aと、光出射側基板104の配向軸方向234に光軸330Bを有する複屈折板130Bとする。
【0047】
ここで、電圧V1がTNセル110に印加され、電圧V2がTNセル120とTNセル130に印加され、複屈折板110A、110Bの厚さをd1と、複屈折板120A~130Bの厚さをd2と、複屈折板110A~130Bの屈折率異方性をΔnとする。また、+Z側から平面視した場合に、複屈折板110Aの光軸310Aと複屈折板110Bの光軸310Bとの交差角と、複屈折板120Aの光軸320Aと複屈折板120Bの光軸320Bとの交差角と、複屈折板130Aの光軸330Aと複屈折板130Bの光軸330Bとの交差角とを、φ(φ=30°)とする。さらに、複屈折板110Bの光軸310Bと複屈折板120Aの光軸320Aとの交差角をθ(θ=90°)とする。なお、複屈折板120Bの光軸320Bと複屈折板130Aの光軸330Aは、一致している。また、交差角φはTNセル100のねじれ角α(α=30°)に相当する。交差角θは、TNセル120の光入射側基板102の配向軸方向222とTNセル110の光出射側基板104の配向軸方向214との角度差90°に相当する。
【0048】
複屈折板のジョーンズ行列は下記の式(1)のように表され、+Z側から平面視した場合に、X方向に偏光方向を有する入射光L1に対して光軸が角度φ傾いた複屈折板のジョーンズ行列は、下記の式(2)のように表されるので、複屈折板110A~130Bのそれぞれのジョーンズ行列は、下記の式(3)~式(8)により表される。
【0049】
【数1】
【数2】
【0050】
【数3】
【数4】
【数5】
【数6】
【数7】
【数8】
【0051】
また、複屈折板110A~130B全体(すなわち、偏光変調素子10全体に相当)のジョーンズ行列は、下記の式(9)により表される。ここで、Γ1とΓ2は、下記の式(10)と式(11)により表される。ここで、λは、入射光L1の波長である。
【0052】
【数9】
【数10】
【数11】
【0053】
次に、偏光コントラストpCRを、ジョーンズ行列を用いて表す。複屈折板110A~130B全体のジョーンズ行列を下記の式(12)により表すと、出射光L2を、所望する偏光成分の偏光方向(X方向)に垂直な透過軸を有する検光子に透過させた場合における、透過光は下記の式(13)により表され、透過光強度I1は下記の式(14)により表される。ここで符号*は複素共役を表す。
【0054】
【数12】
【数13】
【数14】
【0055】
また、出射光L2を、所望する偏光成分の偏光方向(X方向)に平行な透過軸を有する検光子に透過させた場合における、透過光は下記の式(15)により表され、透過光強度I2は下記の式(16)により表される。
【0056】
【数15】
【数16】
【0057】
上記の式(9)~式(11)、式(14)、式(16)から、偏光コントラストpCRは下記の式(17)と式(18)により表される。
【0058】
【数17】
【数18】
【0059】
一方、TNセル100に印加される電圧Vと、ON状態におけるTNセル100に残留する複屈折Δndとの関係は、以下のように求められる。
【0060】
まず、図25に示すように、基板の主面からの厚さhが大きくなるに伴って、基板の主面に対する液晶ダイレクタの角度δが大きくなる配向モデルを設定する。液晶の常光屈折率をnoと、異常光屈折率をneと、位置(x,y,z)における液晶の配向軸方向の屈折率をneff(x,y,z)と、厚さhの内を厚さ方向の複数の領域に分割した分割数をMと、分割されたi番目の領域の屈折率異方性(位相差)をΔniと、位置(x,y,z)における屈折率異方性(位相差)をΔn(x,y,z)と、TNセル100のセル厚をdとすると、複屈折Δndは下記の式(19)~式(21)により、表される。
【0061】
【数19】
【数20】
【数21】
【0062】
また、印加される電圧Vと基板の主面に対する液晶ダイレクタの角度δとの関係は、例えば、液晶シミュレータ(Shintech社製 LCD master)により求められる。求められた、印加される電圧Vと基板の主面に対する液晶ダイレクタの角度δとの関係と、上記の式(19)~(21)とから、例えば、図26に示す、TNセル100に印加される電圧Vと、ON状態におけるTNセル100に残留する複屈折Δndとの関係が得られる。
【0063】
印加される電圧VとON状態におけるTNセル100に残留する複屈折Δndとの関係と、上記の式(17)と式(18)とから、設定した偏光コントラストpCRを満たし、TNセル110に印加される電圧V1とTNセル120とTNセル130に印加される電圧V2との和が最小となる組み合わせを求めることにより、TNセル110~130に印加する最適電圧を得ることができる。
【0064】
以上のように、本実施形態の偏光変調素子10は、隣接する、1番目のTNセル110と2番目のTNセル120において、TNセル110の光出射側基板104の配向軸方向214とTNセル120の光入射側基板102の配向軸方向222が直交しているので、低電圧で、所望する偏光方向を有する偏光成分を高い強度で出射できる。さらに、TNセル110~130に印加する電圧V1、V2を最適化することによって、より低電圧で、高い偏光コントラストpCRを得ることができる。すなわち、TNセル110~130に印加する電圧V1、V2を最適化することによって、本実施形態の偏光変調素子10は、より低電圧で、所望する偏光方向を有する偏光成分を高い強度で出射できる。
【0065】
<実施形態3>
実施形態1では、1つの、隣接するTNセル100(2番目のTNセル120と3番目のTNセル130)において、光出射側基板104の配向軸方向200と光入射側基板102の配向軸方向200が直交している。偏光変調素子10では、少なくとも1つの、隣接するTNセル100において、光出射側基板104の配向軸方向200と光入射側基板102の配向軸方向200が直交していればよい。
【0066】
本実施形態の偏光変調素子10は、実施形態1の偏光変調素子10と同様に、積層されたTNセル110~140を備える。本実施形態の偏光変調素子10では、2つの、隣接するTNセル100(1番目のTNセル110と2番目のTNセル120と、3番目のTNセル130と4番目のTNセル140)において、光出射側基板104の配向軸方向200と光入射側基板102の配向軸方向200が直交している。本実施形態のTNセル110~140の構成は、配向軸方向200を除き、実施形態1のTNセル110~140と同様である。
【0067】
本実施形態のTNセル110では、実施形態1のTNセル110と同様に、光入射側基板102の配向軸方向212は+X方向である。また、光出射側基板104の配向軸方向214は、+X方向に対して時計回りに22.5°傾いている。
【0068】
本実施形態のTNセル120では、図27に示すように、光入射側基板102の配向軸方向222は、+X方向に対して時計回りに112.5°傾き、TNセル110の光出射側基板104の配向軸方向214に直交している。光出射側基板104の配向軸方向224は+X方向に対して時計回りに135°傾いている。
【0069】
本実施形態のTNセル130では、図28に示すように、光入射側基板102の配向軸方向232は、+X方向に対して時計回りに135°傾き、TNセル120の光出射側基板104の配向軸方向224に一致している。光出射側基板104の配向軸方向234は+X方向に対して時計回りに157.5°傾いている。
【0070】
本実施形態のTNセル140では、図29に示すように、光入射側基板102の配向軸方向242は、+X方向に対して時計回りに247.5°回転し、TNセル130の光出射側基板104の配向軸方向234に直交している。光出射側基板104の配向軸方向244は+X方向に対して時計回りに270°回転している。
【0071】
図30は、ON状態における、TNセル110~140のそれぞれに印加される電圧と、本実施形態の偏光変調素子10の偏光コントラストpCRと比較例1の偏光変調素子の偏光コントラストpCRとの関係を示す。図30に示すように、実施形態の偏光変調素子10では、低電圧で、高い偏光コントラストpCRを得ることができる。すなわち、本実施形態の偏光変調素子10は、低電圧で、所望する偏光方向を有する偏光成分を高い強度で出射できる。例えば、偏光コントラストpCRを20とするためには、TNセル110~140のそれぞれに36Vを印加すればよい。
【0072】
さらに、本実施形態の偏光変調素子10では、実施形態2の偏光変調素子10と同様に、TNセル110~140に印加する電圧を最適化することにより、より低電圧で、高い偏光コントラストpCRを得ることができる。例えば、図31に示すように、偏光コントラストpCRを20とするためには、TNセル110に5.4Vを印加し、TNセル120とTNセル130に11.8Vを印加し、TNセル140に5.9Vを印加すればよい。また、TNセル110~140に印加する電圧を最適化した場合、実施形態1の偏光変調素子10よりも低い電圧で、高い偏光コントラストpCRを得ることができる。なお、本実施形態の最適電圧は、実施形態2の最適電圧と同様の方法により求められる。
【0073】
以上のように、本実施形態の偏光変調素子10では、2つの、隣接するTNセル100おいて、光出射側基板104の配向軸方向200と光入射側基板102の配向軸方向200が直交しており、低電圧で、所望する偏光方向を有する偏光成分を高い強度で出射できる。さらに、TNセル100に印加する電圧を最適化することによって、本実施形態の偏光変調素子10は、より低電圧で、所望する偏光方向を有する偏光成分を高い強度で出射できる。
【0074】
<実施形態4>
実施形態1と実施形態3では、偏光変調素子10は4つのTNセル100を備えている。偏光変調素子10は、6つ(N=6)のTNセル100を備えてもよい。
【0075】
本実施形態の偏光変調素子10は、ねじれ方向が同じ、6つのTNセル100を備える。本実施形態のTNセル100は、一方のTNセル100の光入射側基板102と他方のTNセル100の光出射側基板104とを対向させて、順次に積層されている。本実施形態のTNセル100の構成は、セル厚(3.65μm)と配向軸方向200を除き、実施形態1のTNセル100と同様である。
【0076】
初期配向状態では、本実施形態のTNセル100のネマティック液晶106は、+Z側から平面視した場合に時計回りにねじれて配向している。また、TNセル100のねじれ角(ネマティック液晶106のねじれ角)αは15°であり、TNセル100のそれぞれのねじれ角αの和は90°である。
【0077】
図32は、本実施形態のTNセル100の配向軸方向200を示す。図32に示すように、本実施形態では、3番目(N/2番目)のTNセル100と4番目((N/2)+1番目)のTNセル100において、光出射側基板104の配向軸方向200と光入射側基板102の配向軸方向200が直交している。その他の、隣接するTNセル100では、光出射側基板104の配向軸方向200と光入射側基板102の配向軸方向200は、一致している。
【0078】
図33は、TNセル100のそれぞれに印加される電圧と、本実施形態の偏光変調素子10の偏光コントラストpCRと比較例3の偏光変調素子の偏光コントラストpCRとの関係を示す。図33に示すように、実施形態の偏光変調素子10では、低電圧で、高い偏光コントラストpCRを得ることができる。例えば、偏光コントラストpCRを20とするためには、TNセル100のそれぞれに18Vを印加すればよい。
【0079】
なお、比較例3の偏光変調素子は、本実施形態の偏光変調素子10と同様に、ねじれ方向が同じ(ねじれ角α:15°)、6つのTNセル100を備える。比較例3の偏光変調素子では、いずれの、隣接するTNセル100においても、光出射側基板104の配向軸方向200と光入射側基板102の配向軸方向200が一致している。比較例3の偏光変調素子のその他の構成は、本実施形態の偏光変調素子10と同様である。
【0080】
以上のように、本実施形態においても、低電圧で、高い偏光コントラストpCRを得ることができる。したがって、本実施形態の偏光変調素子10は、低電圧で、所望する偏光方向を有する偏光成分を高い強度で出射できる。
【0081】
<実施形態5>
実施形態4では、1つのTNセル100(3番目のTNセル100と4番目のTNセル100)において、光出射側基板104の配向軸方向200と光入射側基板102の配向軸方向200が直交している。6つ(N=6)のTNセル100を備える偏光変調素子10も、2つの、隣接するTNセル100において、光出射側基板104の配向軸方向200と光入射側基板102の配向軸方向200が直交してもよい。
【0082】
本実施形態のTNセル100の構成は、セル厚(4.0μm)と配向軸方向200を除き、実施形態4のTNセル100と同様である。図34に示すように、本実施形態では、1番目のTNセル100と2番目のTNセル100と、4番目のTNセル100と5番目のTNセル100において、光出射側基板104の配向軸方向200と光入射側基板102の配向軸方向200が直交している。その他の、隣接するTNセル100では、光出射側基板104の配向軸方向200と光入射側基板102の配向軸方向200は、一致している。
【0083】
図35は、TNセル100のそれぞれに印加される電圧と、本実施形態の偏光変調素子10の偏光コントラストpCRと比較例4の偏光変調素子の偏光コントラストpCRとの関係を示す。図35に示すように、実施形態の偏光変調素子10では、低電圧で、高い偏光コントラストpCRを得ることができる。例えば、偏光コントラストpCRを20とするためには、TNセル100のそれぞれに13Vを印加すればよい。なお、比較例4の偏光変調素子は、TNセル100のセル厚(4.0μm)を除き、比較例3の偏光変調素子と同様である。
【0084】
さらに、本実施形態の偏光変調素子10では、実施形態2と実施形態3の偏光変調素子10と同様に、TNセル100に印加する電圧を最適化することにより、より低電圧で、高い偏光コントラストpCRを得ることができる。例えば、図36に示すように、偏光コントラストpCRを20とするためには、1番目のTNセル100に5.4Vを印加し、2番目から4番目のTNセル100に17.3Vを印加し、5番目と6番目のTNセル100に11.3Vを印加すればよい。この場合、1つのTNセル100に対して印加する電圧の平均値は13.3Vである。したがって、TNセル100に印加する電圧を最適化した場合、実施形態4の偏光変調素子10に比べて、より低い電圧で、高い偏光コントラストpCRを得ることができる。なお、本実施形態の最適電圧は、実施形態2の最適電圧と同様の方法により求められる。
【0085】
以上のように、本実施形態においても、低電圧で、高い偏光コントラストpCRを得ることができる。したがって、本実施形態の偏光変調素子10は、低電圧で、所望する偏光方向を有する偏光成分を高い強度で出射できる。
【0086】
<実施形態6>
本実施形態では、実施形態1~実施形態5の偏光変調素子10を用いた立体画像表示装置510を説明する。偏光変調素子10は、例えば、DFD(Depth Fused 3D)方式で立体画像を表示する立体画像表示装置510に用いられる。立体画像表示装置510において、偏光変調素子10は偏光切り替え素子として機能する。
【0087】
立体画像表示装置510は、例えば、接眼レンズと組み合わされて、ヘッドマウントディスプレイとして用いられる。なお、本実施形態においては、モノクロ液晶パネルを用いた立体画像表示装置510を例に説明する。
【0088】
立体画像表示装置510は、図37に示すように、表示ユニット520と、偏光変調素子10と、偏光二焦点レンズ560と、制御部580とを備える。表示ユニット520は、第1画像と第2画像とを時分割で順次に表示する。また、表示ユニット520は、第1画像と第2画像を表す表示光L51を、偏光方向が所定の第1方向である偏光光として出射する。偏光変調素子10は、表示ユニット520から出射された表示光L51の偏光方向を、所定の第1方向と所定の第2方向とに切り替える。偏光二焦点レンズ560は、第1画像と第2画像のそれぞれを、第1表示面512と第2表示面514のそれぞれに、虚像として結像させる。制御部580は、表示ユニット520に第1画像を表す第1画像信号と第2画像を表す第2画像信号とを供給する。また、制御部580は、偏光変調素子10の偏光方向の切り替えを制御する。
【0089】
本実施形態では、所定の第1方向はX方向であり、所定の第2方向はY方向である。また、表示光L51は、実施形態1~実施形態5における偏光変調素子10に入射する直線偏光光L1に相当する。さらに、第1画像を表す第1画像信号と第2画像を表す第2画像信号を総称して、画像信号とも記載する。
【0090】
立体画像表示装置510の表示ユニット520は、液晶表示パネル522と光源部532とを備える。液晶表示パネル522は、制御部580から供給される第1画像を表す第1画像信号と第2画像を表す第2画像信号に基づいて、光源部532から発せられた光を変調して、第1画像と第2画像とを時分割で順次に表示する。液晶表示パネル522は、画像(例えば、第1画像と第2画像)を表す表示光L51を偏光方向が所定の第1方向である偏光光として出射する。液晶表示パネル522から出射された表示光L51は、偏光変調素子10に入射する。
【0091】
第1画像と第2画像は、表示対象を、観察者から見て奥行き方向(-Z方向)の異なる位置に位置する第1表示面512と第2表示面514のそれぞれに、観察者の側から投影した二次元画像である。第1表示面512と第2表示面514については、後述する。
【0092】
液晶表示パネル522は、例えば、TFT(Thin Film Transistor)によりアクティブマトリクス駆動される透過型TN液晶パネルである。液晶表示パネル522は、図38に示すように、マトリクス状に配列された画素Pとゲートドライバ523Gとデータドライバ523Dとを有する。ゲートドライバ523Gは、画素Pを行ごとに順次選択して、-Y方向に線順次走査を行う。データドライバ523Dは、選択された画素Pのそれぞれに画像信号に応じた電圧を供給して、画素Pのそれぞれに画像信号を書き込む。なお、図38では、マトリクスに配列された画素Pのうちの一部のみを図示している。また、液晶表示パネル522は偏光板、液晶等(図示せず)を備えている。
【0093】
光源部532は、液晶表示パネル522に光を照射する光源である。図37に示すように、光源部532は、液晶表示パネル522の背面側(-Z側)に配置される。光源部532は、例えば、直下型バックライトである。光源部532は、白色LED(Light emitting diode)素子、反射シート、拡散シート等を備えている(いずれも図示せず)。
【0094】
立体画像表示装置510の偏光変調素子10は、制御部580から供給され画像信号に同期する切り替え信号に基づいて、表示ユニット520から出射される表示光L51の偏光方向を、所定の第1方向(X方向)と所定の第2方向(Y方向)とに切り替える。具体的には、第1画像が表示ユニット520の液晶表示パネル522に表示されている場合、偏光変調素子10は、入射した表示光L51の偏光方向をX方向に維持して出射する。一方、第2画像が表示ユニット520の液晶表示パネル522に表示されている場合、入射した表示光L51の偏光方向をY方向に切り替えて出射する。
【0095】
偏光変調素子10は、OFFレベルの切り替え信号が供給されると、表示光L51の偏光方向を90°回転させ、偏光方向がY方向の表示光L52を出射する(初期配向状態)。一方、偏光変調素子10は、ONレベルの切り替え信号が偏光変調素子10に供給されると、表示光L51の偏光方向をX方向に維持して表示光L52を出射する(ON状態)。表示光L52は、実施形態1~実施形態5における偏光変調素子10から出射される出射光L2に相当する。
【0096】
偏光変調素子10から出射した表示光L52は、偏光二焦点レンズ560に入射する。切り替え信号については、後述する。
【0097】
立体画像表示装置510の偏光二焦点レンズ560は、偏光変調素子10から出射された表示光L52に対する焦点距離が表示光L52の偏光方向(X方向とY方向)によって異なるレンズである。偏光二焦点レンズ560は、第1画像と第2画像のそれぞれを、第1表示面512と第2表示面514のそれぞれに、観察者から見て虚像として結像させる。第1表示面512と第2表示面514は、観察者から見て奥行き方向(-Z方向)の異なる位置に位置する仮想の表示面である。本実施形態では、図37に示すように、第1表示面512と第2表示面514は、観察者から見て表示ユニット520よりも遠くに位置する。また、第2表示面514が、第1表示面512よりも観察者側(+Z側)に位置している。
【0098】
観察者は、時分割で順次に表示される、第1表示面512の第1画像の虚像と第2表示面514の第2画像の虚像とを見て、表示対象が第1表示面512と第2表示面514との間に位置すると認識する。観察者が認識する表示対象の位置は、第1画像と第2画像の明るさ(例えば、輝度)の比を調整することにより、変えることができる。例えば、第1画像と第2画像の明るさの比が1:1である場合、観察者は、表示対象が第1表示面512と第2表示面514の中間に位置すると認識する。
【0099】
偏光二焦点レンズ560は、例えば、液晶レンズである。偏光二焦点レンズ(液晶レンズ)560は、図39に示すように、第1透光性基板561と、第2透光性基板562と、液晶564とを備える。
【0100】
第1透光性基板561と第2透光性基板562は、例えば、ガラス基板である。第1透光性基板561は、樹脂製のフレネルレンズ566を、第2透光性基板562に対向する主面561aに有する。第1透光性基板561と第2透光性基板562は、シール材567により貼り合わされ、液晶564を挟持する。液晶564は、例えば、正の屈折率異方性(Δn=ne-no>0、ne:異常光屈折率、no:常光屈折率)を有するネマティック液晶である。液晶564は、図示しない配向膜によりX方向に配向されている。
【0101】
X方向に偏光方向を有する第1画像の表示光L52が、偏光二焦点レンズ560に入射すると、正の屈折率異方性を有する液晶(ネマティック液晶)564がX方向に配向されているので、偏光二焦点レンズ560の表示光L52に対する焦点距離は短く、第1画像は第1表示面512に結像される。一方、Y方向に偏光方向を有する第2画像の表示光L52が、偏光二焦点レンズ560に入射すると、偏光二焦点レンズ560の表示光L52に対する焦点距離は長く、第2画像は第2表示面514に結像される。
【0102】
立体画像表示装置510の制御部580は、図示しない外部装置から入力される入力信号に基づいて、表示ユニット520の液晶表示パネル522と、偏光変調素子10とを制御する。制御部580は、図40に示すように、表示駆動部582と、偏光変調素子駆動部584とを有する。
【0103】
制御部580の表示駆動部582は、入力信号から、第1画像を表示するための第1画像信号と第2画像を表示するための第2画像信号とを生成する。また、表示駆動部582は、画像信号を液晶表示パネル522に供給する。さらに、表示駆動部582は、偏光変調素子駆動部584に、画像信号の供給開始に同期する同期信号を供給する。
【0104】
制御部580の偏光変調素子駆動部584は、表示駆動部582から供給された同期信号に基づいて、切り替え信号を生成する。また、偏光変調素子駆動部584は、生成した切り替え信号を偏光変調素子10に供給する。本実施形態では、偏光変調素子駆動部584は、第1画像が液晶表示パネル522に表示される場合に、切り替え信号をONレベルにして偏光変調素子10に供給する。
【0105】
図41は、制御部580のハードウェアの構成を示す。制御部580は、CPU(Central Processing Unit)592と、ROM(Read Only Memory)594と、RAM(Random Access Memory)596と、入出力インタフェース598とを備える。CPU592とROM594とRAM596と入出力インタフェース598は、バス599によって接続される。CPU592は、各種の処理を実行する。ROM594は、プログラムとデータとを記憶している。RAM596は、データを記憶する。入出力インタフェース598は、CPU592と、液晶表示パネル522と偏光変調素子10と外部装置との信号を入出力する。制御部580の機能は、CPU592が、ROM594に記憶されたプログラムを実行することによって、実現される。
【0106】
偏光変調素子10は、実施形態1~実施形態5で述べたように、低電圧で、所望する偏光方向(X方向)を有する偏光成分を高い強度で出射できる。したがって、偏光変調素子10を備える立体画像表示装置510では、第1画像の虚像と第2表示面514の第2画像の虚像が混ざることにより、立体画像が正しく表示されない現象を、低電圧で抑制できる。
【0107】
<変形例>
以上、実施形態を説明したが、本開示は、要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0108】
例えば、透光性電極102b、104bは、ITOに限られず、他の材料から形成されてもよい。
【0109】
実施形態では、偏光変調素子10を形成しているTNセル100のねじれ角αは等しい。偏光変調素子10を形成しているTNセル100のねじれ角αは、互いに異なってもよい。
【0110】
偏光変調素子10は、N個(Nは3以上の整数)のTNセル100を備えればよく、少なくとも1つの、隣接するTNセル100において、一方のTNセル100の光出射側基板104の配向軸方向200と、他方のTNセル100の光入射側基板102の配向軸方向200が直交していればよい。例えば、下記の変形例1と変形例2のように、偏光変調素子10は、8個(N=8)のTNセル100を備えてもよい。
【0111】
(変形例1)
本変形例の偏光変調素子10は、ねじれ方向が同じ、8つ(N=8)のTNセル100を備える。TNセル100は、一方のTNセル100の光入射側基板102と他方のTNセル100の光出射側基板104とを対向させて、順次に積層されている。本変形のTNセル100の構成は、セル厚(2.74μm)と配向軸方向200を除き、実施形態1のTNセル100と同様である。初期配向状態では、本変形例のTNセル100のネマティック液晶106は、+Z側から平面視した場合に時計回りにねじれて配向している。また、TNセル100のねじれ角αは11.25°であり、TNセル100のそれぞれのねじれ角αの和は90°である。図42は、本変形例のTNセル100の配向軸方向200を示す。図42に示すように、本変形例では、4番目(N/2番目)のTNセル100と5番目((N/2)+1番目)のTNセル100において、光出射側基板104の配向軸方向200と光入射側基板102の配向軸方向200が直交している。その他の、隣接するTNセル100では、光出射側基板104の配向軸方向200と光入射側基板102の配向軸方向200は、一致している。本変形例においても、実施形態1~実施形態5と同様に、低電圧で、高い偏光コントラストpCRを得ることができ、所望する偏光方向を有する偏光成分を高い強度で出射できる。さらに、TNセル100の数が多いので、TNセル100のセル厚を薄くできる。TNセル100のセル厚を薄くすることにより、TNセル100の応答時間をより短くできる。
【0112】
(変形例2)
8つ(N=8)のTNセル100を備える偏光変調素子10も、2つの、隣接するTNセル100において、光出射側基板104の配向軸方向200と光入射側基板102の配向軸方向200が直交してもよい。本変形例のTNセル100の構成は、セル厚(2.74μm)と配向軸方向200を除き、変形例1のTNセル100と同様である。図43に示すように、本変形例では、2番目のTNセル100と3番目のTNセル100と、6番目のTNセル100と7番目のTNセル100において、光出射側基板104の配向軸方向200と光入射側基板102の配向軸方向200が直交している。その他の、隣接するTNセル100では、光出射側基板104の配向軸方向200と光入射側基板102の配向軸方向200は、一致している。本変形例においても、実施形態1~実施形態5と同様に、低電圧で、高い偏光コントラストpCRを得ることができ、所望する偏光方向を有する偏光成分を高い強度で出射できる。さらに、TNセル100の数が多いので、TNセル100のセル厚を薄くできる。TNセル100のセル厚を薄くすることにより、TNセル100の応答時間をより短くできる。
【0113】
偏光変調素子10が偶数のTNセル100を備え、N/2番目のTNセル100と(N/2)+1番目のTNセル100において、光出射側基板104の配向軸方向200と光入射側基板102の配向軸方向200が直交している場合(実施形態1、実施形態4、変形例1)、実施形態3、実施形態5、変形例2等では、入射する直線偏光光L1の偏光方向250が、1番目のTNセル100の光入射側基板102の配向軸方向200からずれても、初期配向状態における偏光コントラストpCRは、ほとんど変化しない。したがって、上述の偏光変調素子10は、直線偏光光L1の偏光方向250と1番目のTNセル100の光入射側基板102の配向軸方向200がずれていても、低電圧で、所望する偏光方向を有する偏光成分を高い強度で出射できる。
【0114】
例えば、図44に示すように、1番目のTNセル100の配向軸方向200と直線偏光光L1の偏光方向250がなす角を角度βとした場合、実施形態1の偏光変調素子10の初期配向状態における偏光コントラストpCRは、図45に示すように、角度βによって、ほとんど変化しない。また、実施形態3の偏光変調素子10の初期配向状態における偏光コントラストpCRは、図46に示すように、角度βによって、ほとんど変化しない。さらに、実施形態5の偏光変調素子10の初期配向状態における偏光コントラストpCRも、図47に示すように、角度βによって、ほとんど変化しない。一方、比較例1の偏光変調素子50Aの初期配向状態における偏光コントラストpCRは、図48に示すように、角度βに依存して大きく変化する。
【0115】
以上、好ましい実施形態について説明したが、本開示は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、本開示には、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲が含まれる。
【符号の説明】
【0116】
10,50A 偏光変調素子、80 制御部、100,110,120,130,140 TNセル(ねじれネマティック液晶セル)、102 光入射側基板、102a 主面、102b 透光性電極、102c 配向膜、104 光出射側基板、104a 主面、104b 透光性電極、104c 配向膜、104 光出射側基板、106 ネマティック液晶、106M 液晶分子、108 シール材、110A,110B,120A,120B,130A,130B 複屈折板、200,212,214,222,224,232,234、242,244 配向軸方向、250 偏光方向、310A,310B,320A,320B,330A,330B 光軸、510 立体画像表示装置、512 第1表示面、514 第2表示面、520 表示ユニット、522 液晶表示パネル、523D データドライバ、523G ゲートドライバ、532 光源部、560 偏光二焦点レンズ、561 第1透光性基板、561a 主面、562 第2透光性基板、564 液晶、566 フレネルレンズ、567 シール材、580 制御部、582 表示駆動部、584 偏光変調素子駆動部、592 CPU、594 ROM、596 RAM、598 入出力インタフェース、599 バス、d,d1,d2,h 厚さ、pCR 偏光コントラスト、Δn 複屈折異方性(位相差)、no 常光屈折率、ne 異常光屈折率、Δε 誘電率異方性、Δnd 複屈折、α ねじれ角、β,δ 角度、λ 波長、θ,φ 交差角、I1,I2 透過光強度、L1 直線偏光光(入射光)、L12,L13,L2,L2A 出射光、L51,L52 表示光、N,m 個数、M 分割数、P 画素、V,V1,V2 電圧
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10
図11
図12
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