(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092315
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】紫外線吸収剤、組成物、成形体および紫外線吸収シート
(51)【国際特許分類】
C09K 3/00 20060101AFI20240701BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240701BHJP
C08K 5/3492 20060101ALI20240701BHJP
C08K 3/08 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
C09K3/00 104B
C08L101/00
C08K5/3492
C08K3/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208150
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(72)【発明者】
【氏名】辰巳 僚一
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA011
4J002BB031
4J002BB121
4J002BC031
4J002BD031
4J002BD101
4J002BG061
4J002BK001
4J002BN151
4J002CB001
4J002CE001
4J002CF001
4J002CG001
4J002CH071
4J002CL001
4J002CM041
4J002DA096
4J002DA116
4J002EH077
4J002EU186
4J002FD056
4J002FD140
4J002FD157
4J002GP00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】本発明は、400nm未満の紫外線領域、400~420nm程度の可視光短波長領域の光を、従来よりも少量で吸収する紫外線吸収性に加え、耐光性、樹脂との相溶性が良好な紫外線吸収剤の提供を目的とする。
【解決手段】下記一般式(1)または一般式(2)で示すトリアジン環を有する、紫外線吸収剤。なお、前記紫外線吸収剤、ならびにNa、Mg、Al、K、Ca、およびFeから選ばれる1種以上の金属原子を含む金属成分を含み、前記金属原子の含有量が0.1ppm以上50000ppm以下であることが好ましい。
【化1】
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)または一般式(2)で示すトリアジン環を有する、紫外線吸収剤。
【化1】
(R
1、R
3は、それぞれ独立に直列に並ぶ六員環および五員環から選択される環を3以上有し、かつ前記環のうち2以上は芳香環あるいは芳香族ヘテロ環を有し、かつトリアジン環に直接結合する環がベンゼン環である基であり、
これらの基は水素原子、水酸基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数6~20のアリール基で置換されても良い。ただし、これら置換基のうち、トリアジン環に直接結合する原子に隣接する原子の置換基は水酸基を除く。
R
2、R
4は下記一般式(3)または一般式(4)で示す基である。)
【化2】
(R
5~R
8、R
9~R
14はそれぞれ独立して
水素原子、水酸基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ニトリル基、ニトロ基、-R
15、-OR
15、-SR
15、-NR
15R
16、-SO
2R
15、-SO
2NR
15R
16、-SO
3R
15、-COR
15、-COOR
15、-CONR
15R
16、-OCOR
15、-OCOOR
15、-OCONR
15R
16、-NR
15COR
16、-NR
15COOR
16であり、
R
15、R
16はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数6~20のアリール基、であり、水酸基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子またはアルキル基の置換基を有してもよく、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルケニル基の炭素原子と炭素原子の間が一つまたは複数の-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CONH-、または-NHCO-で連結されていても良い。
ただし、一般式(3)、一般式(4)中の*は、一般式(1)、一般式(2)のトリアジン環との結合部位を表す。)
【請求項2】
請求項1に記載の紫外線吸収剤、ならびにNa、Mg、Al、K、Ca、およびFeから選ばれる1種以上の金属原子を含む金属成分を含み、前記金属原子の含有量が0.1ppm以上50000ppm以下である、紫外線吸収剤。
【請求項3】
請求項1に記載の紫外線吸収剤、および樹脂を含む、組成物。
【請求項4】
前記樹脂が熱可塑性樹脂である、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の紫外線吸収剤、光重合性化合物および光重合開始剤を含む、組成物。
【請求項6】
請求項3または4に記載の組成物を含む、成形体。
【請求項7】
。
基材、および請求項3~5いずれか1項に記載の組成物から形成されてなる紫外線吸収層を備える、紫外線吸収シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線吸収剤およびそれを用いた組成物等に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光のうち可視域より短波長域(100~400nm)の紫外線は、近年では波長400nm未満の紫外線のみならず、400~420nm程度の可視光短波長領域の光も有機物や人体にダメージを与えることが指摘されている。成形体や塗膜は、樹脂に紫外線吸収剤を配合して紫外線吸収性を付与しているが、特定の用途では、可視光短波長域の光まで吸収できる紫外線吸収剤が求められている。
【0003】
前記特定の用途として、例えば、医薬品薬剤や化粧品等の包装材料は、内容物の視認性を損なわずに光による劣化を抑制する必要がある。内容物の中でも特にビタミンなどの特定の成分は、400~420nm程度の可視光短波長領域の光で劣化するため、紫外線のみならず紫外線より長波領域の光を吸収できる紫外線吸収剤が求められている。
【0004】
また、ディスプレイ表示装置では、偏光板保護フィルム等の光学フィルムに紫外線吸収剤を添加して、これら光学フィルムの変色を防止することが一般的である。また、反射防止フィルムは、含有する近赤外線吸収剤の紫外線による劣化を防ぐため、紫外線吸収剤が添加されている。また、有機ELディスプレイの発光素子には、蛍光材料や燐光材料等の各種有機物が使用されており、これらの紫外線による劣化を防ぐため、ディスプレイの表面フィルムや基材、粘着剤、偏光板表面の塗膜などに紫外線吸収剤が添加されている。
【0005】
その他、光学レンズ、太陽電池、ウィンドウフィルムなどの様々な用途でも、材料中の有機物を保護する目的で、紫外線および400~420nm程度の可視光短波長領域の光を吸収する紫外線吸収剤が求められている。また、近年は前記用途の成形体や塗膜において、高い紫外線遮蔽性、耐熱性および耐光性のさらなる向上が求められており、加熱や長期経時での紫外線の暴露による着色・劣化が生じにくく、優れた可視透明性や紫外線遮蔽性を保持するものが望まれている。
【0006】
例えば、特許文献1や特許文献2には、400~420nm程度の可視光短波長領域を吸収するベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤が開示されている。
【0007】
特許文献3には従来よりも少量で、紫外線及び400~420nm程度の可視光短波長領域を吸収できる紫外線吸収剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2018-177696号公報
【特許文献2】特表2016-514756号公報
【特許文献3】特許7147827号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1の紫外線吸収剤は、アクリルモノマーとの重合性は良かったが、他の樹脂との相溶性が悪く透明性が低下する問題があった。特許文献2の紫外線吸収剤は、着色するため、視認性が必要な透明容器等には使用できなかった。また、特許文献1および2の紫外線吸収剤は、単位質量当たりの吸光度が低く、所望の可視光短波長領域を充分吸収するためには多量に使用する必要があった。
特許文献3の紫外線吸収剤は、紫外線及び400~420nm程度の可視光短波長領域を十分に吸収できるが、400nm未満の紫外線領域の単位質量当たりの吸光度が低く、単一の紫外線吸収剤で400nm未満の紫外線領域から400~420nm程度の可視光短波長領域まで十分に吸収するためには多量に配合する必要があった。
【0010】
本発明は、400nm未満の紫外線領域、400~420nm程度の可視光短波長領域の光を、従来よりも少量で吸収できる紫外線吸収性に加え、耐光性、樹脂との相溶性が良好な紫外線吸収剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、下記一般式(1)または一般式(2)で示すトリアジン環を有する、紫外線吸収剤である。
【化1】
【0012】
R
1、R
3は、それぞれ独立に直列に並ぶ六員環および五員環から選択される環を3以上有し、かつ前記環のうち2以上は芳香環あるいは芳香族ヘテロ環を有し、かつトリアジン環に直接結合する環がベンゼン環である基であり、
これらの基は水素原子、水酸基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数6~20のアリール基で置換されても良い。ただし、これら置換基のうち、トリアジン環に直接結合する原子に隣接する原子の置換基は水酸基を除く。
R
2、R
4は下記一般式(3)または一般式(4)で示す基である。
【化2】
【0013】
R5~R8、R9~R14はそれぞれ独立して
水素原子、水酸基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ニトリル基、ニトロ基、-R15、-OR15、-SR15、-NR15R16、-SO2R15、-SO2NR15R16、-SO3R15、-COR15、-COOR15、-CONR15R16、-OCOR15、-OCOOR15、-OCONR15R16、-NR15COR16、-NR15COOR16であり、
R15、R16はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数6~20のアリール基、であり、水酸基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子またはアルキル基の置換基を有してもよく、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルケニル基の炭素原子と炭素原子の間が一つまたは複数の-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CONH-、または-NHCO-で連結されていても良い。
ただし、一般式(3)、一般式(4)中の*は、一般式(1)、一般式(2)のトリアジン環との結合部位を表す。)
【発明の効果】
【0014】
上記の本発明によれば、本発明は、400nm未満の紫外線領域、400~420nm程度の可視光短波長領域の光を、従来よりも少量で吸収する紫外線吸収性に加え、樹脂との相溶性が良好な紫外線吸収剤を提供できる。また、本発明は、組成物、成形体、紫外線吸収シートを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の紫外線吸収剤は、下記一般式(1)または一般式(2)で示すトリアジン環を有する、紫外線吸収剤である。
【化3】
【0016】
一般式(1)および一般式(2)中、R
1、R
3は、それぞれ独立に直列に並ぶ六員環および五員環から選択される環を3以上有し、かつ前記環のうち2以上は芳香環あるいは芳香族ヘテロ環を有し、かつトリアジン環に直接結合する環がベンゼン環である基であり、
これらの基は水素原子、水酸基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数6~20のアリール基で置換されても良い。ただし、これら置換基のうち、トリアジン環に直接結合する原子に隣接する原子の置換基は水酸基を除く。
R
2、R
4は下記一般式(3)または一般式(4)で示す基である。
【化4】
【0017】
一般式(3)および一般式(4)中、R5~R8、R9~R14はそれぞれ独立して、水素原子、水酸基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ニトリル基、ニトロ基、-R15、-OR15、-SR15、-NR15R16、-SO2R15、-SO2NR15R16、-SO3R15、-COR15、-COOR15、-CONR15R16、-OCOR15、-OCOOR15、-OCONR15R16、-NR15COR16、-NR15COOR16であり、
R15、R16はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数6~20のアリール基、であり、水酸基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子またはアルキル基の置換基を有してもよく、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルケニル基の炭素原子と炭素原子の間が一つまたは複数の-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CONH-、または-NHCO-で連結されていても良い。
ただし、一般式(3)、一般式(4)中の*は、一般式(1)、一般式(2)のトリアジン環との結合部位を表す。
【0018】
本発明の紫外線吸収剤は、トリアジン環に結合する直列に並ぶ六員環および五員環から選択される環を3以上有し、かつ前記環のうち2以上は芳香環あるいは芳香族ヘテロ環を有し、かつトリアジン環に直接結合する環がベンゼン環である基の作用により、従来よりも少量の使用で400nm未満の紫外線領域に加え400~420nm程度の可視光短波長領域の光を吸収できる。本発明の紫外線吸収剤は、少量で400nm未満の紫外線領域の波長吸収が可能であるため、被膜や成形体の透明性を低下させず、成形体の内容物の視認性を損なわない。なお、直列に並ぶ六員環および五員環とは、トリアジンに直接結合するベンゼン環のパラ位から単結合を介してベンゼン環を連結する形態(例えば、テルフェニル基)、または多環芳香族環を意味する。さらに、前記一般式(3)または(4)で示す基を少なくとも1つ含むことで耐光性がより向上する。多環芳香族環は、多環全体が芳香族性を示す必要はなく、ベンゼン環を有すればよい(例えば、フルオレニル基は、ベンゼン環を2個有する。)
【0019】
前記一般式(1)、(2)中のR1、R3を示す基は、例えば、以下の構造が挙げられる。ただし、構造中の*は、一般式(1)、一般式(2)のトリアジン環との結合部位を表す。なお、これらの基に限定されないことはいうまでもない。
【0020】
【0021】
前記一般式(1)、(2)中のR1、R3を示す基は、400nm未満の紫外線領域に加え400~420nm程度の可視光短波長領域の光を吸収する。中でも(A-8)、(A-9)、(A-10)、(A-17)は最も長波まで吸収することができるため、より長波長の光まで吸収する観点で好ましい。一方、ヘテロ環を含む環状構造はヘテロ原子の効果により最大吸収波長が最も短波であるが、無色に近いという観点で好ましい。また、(A-1)、(A-2)、(A-14)、(A-15)、(A-16)は両者のバランスを取ることができる観点で好ましい。
【0022】
前記一般式(3)、(4)で示す基は、例えば、以下の構造が挙げられる。ただし、構造中の*は、一般式(1)、一般式(2)のトリアジン環との結合部位を表す。なお、これらの基に限定されないことはいうまでもない。
【0023】
【0024】
前記一般式(3)、(4)の示す基のうち溶解性が向上する観点では炭素数4以上の長鎖アルキルを持つ基が好ましく、分岐鎖がより好ましい。一方、反応由来の不純物を抑制し、高純度な析出を可能にする観点では炭素数4未満のアルキル基もしくはアルキル基を持たない構造が好ましい。
【0025】
本発明の紫外線吸収剤は、Na、Mg、Al、K、Ca、およびFeから選ばれる1種以上の金属原子を含む金属成分を適当量含むことが好ましい。これにより耐光性、耐熱性、紫外線吸収性がより向上する。高い紫外線吸収性が得られるため、少量で波長吸収が可能になり成形体や塗膜の透明性を損なわない。
【0026】
上記効果が得られるメカニズムを以下のように推測する。すなわち、本発明の紫外線吸収剤は、分子構造に非共有電子対を持つトリアジン環部位を含むため、紫外線吸収剤と金属原子との間で錯体を形成し、金属イオンを色素骨格内に取り込みやすい。その結果、紫外線収剤の結晶性が向上して、加熱や光照射による劣化が生じにくくなり、耐熱性や耐光性が向上したと推測する。一方、紫外線吸収色素が金属イオンを取り込みすぎると、紫外線吸収剤成分が低下することから、紫外線吸収性が低下すると考えられるが、紫外線吸収剤に対し、金属原子の合計量を0.1~50000ppmとしたことにより、紫外線吸収剤骨格内への金属イオンの取り込み量を適度にできるため、優れた紫外線吸収性を維持できる。
【0027】
前記一般式(1)または一般式(2)で示すトリアジン環を有する紫外線吸収剤の合成は、トリアジン構造を有する化合物にとって公知の方法で合成できる。一般式(2)の合成法は、例えば、2-クロロ-4,6-ジアリール-1,3,5-トリアジンにフェノール誘導体またはナフトール誘導体を、三塩化アルミニウム触媒を用いて付加反応させる方法が挙げられる。なお、前記合成法は代表的な製造法であり、限定されない。
【0028】
金属成分の量をコントロールするための合成後の精製の方法としては、例えば、合成反応液に水を含む貧溶媒を加えて分液し、金属成分を取り除く方法、濾過後のケーキにアルコールや水もしくはその混合液をふりかけ洗浄する方法、アルコールや水もしくはその混合液にリスラリー分散し洗浄する方法、酸溶液をふりかけリスラリー洗浄する方法などが挙げられる。
【0029】
本発明の組成物は、上記紫外線吸収剤および樹脂含む第1の態様、ならびに上記紫外線吸収剤、光重合性化合物および光重合開始剤を含む第2の態様が好ましい。
【0030】
本発明の紫外線吸収剤は、組成物中に溶解または粒子の形態で含まれる。前記粒子は、平均一次粒子径5nm~100μm程度が好ましく、10nm~10μm程度がより好ましく、20nm~500nm程度がさらに好ましい。紫外線吸収剤は、適度な平均一次粒子径の粒子を有することで透明性の低下を抑制できる。なお、平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡を使用して1,000~10,000倍の拡大画像中の一次粒子20個程度について、一次粒子の長径を算術平均して求めることができる。
【0031】
本発明の組成物は、樹脂を含有できる。樹脂は、熱可塑性樹脂、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂が挙げられる。なお、熱可塑性樹脂は、組成物製造時や加工時の加熱で樹脂単独で硬化しない樹脂である。光硬化性樹脂は、光で硬化可能な官能基を有する樹脂である。熱硬化性樹脂は、樹脂単独で硬化する樹脂、または硬化剤と反応して硬化する樹脂である。
【0032】
まず、第一の態様として、本発明の紫外線吸収剤、および熱可塑性樹脂を含む組成物を説明する。
【0033】
<熱可塑性樹脂>
熱可塑性樹脂は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のポリアクリル、ポリエステル、シクロオレフィン樹脂、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、及びポリエーテルイミドが挙げられる。これらの中でも、良好な成形性及び成形品の機械強度を得られることから、ポリオレフィン、シクロオレフィン樹脂、ポリエステル、ポリアクリル、ポリカーボネートを使用することが好ましい。熱可塑性樹脂の数平均分子量は3万を超えることが好ましい。また、熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、70~330℃が好ましく、130~300℃がより好ましい。
【0034】
<ポリオレフィン>
ポリオレフィン樹脂は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン-1、およびポリ-4-メチルペンテン、ならびにこれらの共重合体が挙げられる。
ポリエチレンは、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンが挙げられる。
ポリプロピレンは、例えば、結晶性または非晶性ポリプロピレンが挙げられる。
これらを用いた共重合体は、例えば、エチレン-プロピレンのランダム、ブロックあるいはグラフト共重合体、α-オレフィンとエチレンあるいはプロピレンの共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体およびエチレン-アクリル酸共重合体等が挙げられる。
これらの中でも結晶性または非晶性ポリプロピレン、エチレン-プロピレンのランダム、ブロックあるいはグラフト共重合体が好ましく、プロピレン-エチレンブロック共重合体がより好ましい。また安価で、比重が小さいために成形品を軽量化できる観点からはポリプロピレン系樹脂が好ましい。
【0035】
ポリオレフィンの数平均分子量は、30,000~500,000程度である。
【0036】
ポリオレフィンのメルトフローレイト(MFR)は1~100(g/10分)が好ましい。なお、MFRはJISK-7210に準拠して求めた数値である。
【0037】
<ポリカーボネート>
ポリカーボネートは、非晶性樹脂であり、芳香族ジヒドロキシ化合物に、ホスゲン或いは炭酸ジエステル等のカーボネート前駆体を反応させて合成する。ホスゲンを用いる合成反応の場合は、例えば、界面法が好ましい。また、炭酸ジエステルを用いる合成反応の場合、溶融状で反応させるエステル交換法が好ましい。
【0038】
ポリカーボネートの粘度平均分子量は、15,000~30,000が好ましく、16,000~27,000がより好ましい。なお、本明細書における粘度平均分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算される値である。
【0039】
ポリカーボネートの市販品は、例えば、ユーピロンH-4000(三菱エンジニアリングプラスチック社製、粘度平均分子量16,000)ユーピロンS-3000(三菱エンジニアリングプラスチック社製、粘度平均分子量23,000)、ユーピロンE-2000(三菱エンジニアリングプラスチック社製、粘度平均分子量27,000)等が挙げられる。
【0040】
<ポリアクリル>
ポリアクリルは、メタクリル酸メチルおよび/またはメタクリル酸エチル等のモノマーおよび必要に応じて使用する他のモノマーを公知の方法で重合した化合物である。ポリアクリルは、例えば、エチレン-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体およびエチレン-アクリル酸共重合体等が挙げられる。前記モノマーの他に、例えば、ブタジエン、α-メチルスチレン、無水マレイン酸等のモノマーを加えて重合することもでき、モノマー量と分子量によって耐熱性、流動性、衝撃性を調整することができる。
【0041】
<ポリエステル>
ポリエステルは、分子の主鎖にエステル結合を有する樹脂であり、ジカルボン酸(その誘導体を含む)と、ジオール(2価アルコールまたは2価フェノール)とから合成した重縮合物;、ジカルボン酸(その誘導体を含む)と、環状エーテル化合物とから合成した重縮合物;、環状エーテル化合物の開環重合物等が挙げられる。ポリエステルは、ジカルボン酸とジオールでの重合体によるホモポリマー、複数の原料を使用するコポリマー、これらを混合するポリマーブレンド体が挙げられる。なお、ジカルボン酸の誘導体とは、酸無水物、エステル化物である。ジカルボン酸は、脂肪族および芳香族の2種類のジカルボン酸があるところ、耐熱性が向上する芳香族がより好ましい。
【0042】
ポリエステルは、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。
【0043】
<ポリアミド>
ポリアミドは、結晶性樹脂であり、例えば、カルボン酸成分と、アミノ基を2個以上有する化合物(Am)とを脱水縮合反応させて合成できる。
【0044】
カルボン酸成分は、例えば、アジピン酸、セバシン酸、イソフタル酸、テレフタル酸等が挙げられる。なお、カルボン酸成分は、3以上のカルボキシル基を有する化合物を使用できる。アミノ基を2個以上有する化合物(Am)は、例えば、公知のものを使用することができ、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン等の脂肪族ポリアミン;イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジアミン等の脂環式ポリアミンを含む脂肪族ポリアミン;フェニレンジアミン、キシリレンジアミン等の芳香族ポリアミン;1,3-ジアミノ-2-プロパノール、1,4-ジアミノ-2-ブタノール、1-アミノ-3-(アミノメチル)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン-1-オール、4-(2-アミノエチル)-4,7,10-トリアザデカン-2-オール、3-(2-ヒドロキシプロピル)-o-キシレン-α,α’-ジアミン等のジアミノアルコールが挙げられる。
ポリアミドの市販品は、例えば、6ナイロン(東レ社製)、66ナイロン(東レ社製)、610ナイロン等が挙げられる。
【0045】
<ポリエーテルイミド>
ポリエーテルイミドは、ガラス転移温度が180℃超の非晶性樹脂であり、透明性良好で高強度、高耐熱性、高弾性率および広範な耐薬品性を有している。そのため自動車、遠隔通信、航空宇宙、電気/電子、輸送およびヘルスケアなどの多様な用途で広範に使用されている。
ポリエーテルイミドの市販品は、ULTEM(サウジ基礎産業公社製)が挙げられる。
【0046】
<シクロオレフィン>
シクロオレフィン樹脂は、主鎖および又は側鎖に脂環構造を有する非晶性樹脂である。脂環構造の種類は、例えば、例えば、ノルボルネン重合体、単環の環状オレフィン重合体、環状共役ジエン重合体、およびビニル脂環式炭化水素重合体、ならびにこれらの水素化物等が挙げられる。これらの中でも成形性と透明性に優れることから、ノルボルネン重合体が好ましい。ノルボルネン単量体は、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(慣用名:ノルボルネン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ-3,7-ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、7,8-ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ-3-エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン(慣用名:テトラシクロドデセン)等が挙げられる。シクロオレフィン樹脂の市販品は、例えば、トパス(ポリプラスチックス社製)、アペル(三井化学社製)が挙げられる。
【0047】
<ポリビニルアセタール>
ポリビニルアセタールは、ポリビニルアルコールをアルデヒドでアセタール化して得られるポリビニルアセタールが好ましい。ポリビニルアセタールは、ポリビニルブチラール樹脂より好ましい。ポリビニルブチラール樹脂は、例えば、ポリビニルアルコールとブチルアルデヒドを酸性条件化で反応させて合成できる。ポリビニルアセタール樹脂の市販品は、例えば、エスレックB(積水化学社製)、エスレックK(積水化学社製)が挙げられる。
【0048】
熱可塑性樹脂は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0049】
紫外線吸収剤の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.01~10質量部が好ましく、0.05~1質量部がより好ましい。
【0050】
本発明の組成物の第一の態様である前記紫外線吸収剤と熱可塑性樹脂を含む組成物は、例えば、紫外線吸収剤を高濃度で配合したマスターバッチとして製造することが好ましい。マスターバッチを作製し、次いで、希釈樹脂(熱可塑性樹脂)と溶融混錬して成形体を作製すると、マスターバッチを経ず作成した成形体と比較して、紫外線吸収剤を成形体中に均一に分散し易く、紫外線吸収剤の凝集を抑制できるこれにより、成形体の透明性が向上する。前記マスターバッチは、成形用組成物用途に使用する場合、特に有用である。
マスターバッチは、例えば、紫外線吸収剤と熱可塑性樹脂を溶融混練し、ペレタイザーを使用してペレット状に製造できる。なお、紫外線吸収剤の凝集を防ぐため、予め、紫外線吸収剤とワックスを溶融混練した分散体を作製した後、熱可塑性樹脂と共に、溶融混錬してマスターバッチを作製することが好ましい。ここで、分散体の作製は、ブレンドミキサーや3本ロールミルを用いることが好ましい。
【0051】
組成物をマスターバッチとして作製する場合、紫外線吸収剤の配合量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.1~30質量部が好ましく、0.5~3質量部がより好ましい。マスターバッチ(X)と希釈用樹脂(Y)との質量比は、X/Y=1/5~1/100が好ましい。この範囲にすると成形品は、良好な光特性が得やすい。
【0052】
上記マスターバッチは、固体が好ましいが、液状マスターバッチとして作製することもできる。液状マスターバッチは、常温(25℃)で液状の液状樹脂を使用する。
【0053】
液状マスターバッチは、紫外線吸収剤を液状樹脂に溶解もしくは分散させて作製する。成形体は、液状マスターバッチおよび固体の希釈樹脂(熱可塑性樹脂)を溶融混錬して成形体を作製できる。液状マスターバッチは状態が液体であるため樹脂ペレットや樹脂粉により希釈する際に微量でも均一に混合されやすい。
【0054】
液状樹脂は、25℃の粘度が8,000mPa・s以下の樹脂である。なお、前記粘度は、10~5,000mPa・sが好ましく、100~3,000mPa・sがより好ましい。上記範囲内であると、紫外線吸収剤を液状マスターバッチ中に容易に分散できる。本明細書における粘度はJIS K7117-1:1999に従ってB型粘度計を用いて25℃で測定した値である。
【0055】
液状樹脂の含有量は、液状マスターバッチ100質量%中、50質量%以上が好ましく、60~95質量%がより好ましく、70~90質量%がさらに好ましい。この範囲内であることにより、例えば、溶融混錬の際、溶融粘度を抑制できるため、紫外線吸収剤を分散し易くなる。この液状マスターバッチを使用すると、透明性が高い成形体が得られる。
【0056】
また、液状樹脂の数平均分子量(Mn)は、100~3000が好ましく、200~2000がより好ましく、500~1500がさらに好ましく、1000~1500が特に好ましい。Mn200以上により成形体の成形性と透明性を両立し易い。また、Mnが2000以下により、分散性と帯電防止性が向上する。
【0057】
液状樹脂は、例えば、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油等のエポキシ系樹脂、脂肪族ポリエステル、ポリアルキレングリコール樹脂、ポリエーテルエステル樹脂、またはアセチルクエン酸トリブチル等が挙げられるが、主剤樹脂がポリエチレンテレフタレート(PET)やポリカーボネートなどの高い成型温度が必要な場合にも、耐熱性が高く、帯電防止性も優れる点で、脂肪族ポリエステル、ポリアルキレングリコール樹脂、ポリエーテルエステル樹脂、またはアセチルクエン酸トリブチルが好ましい。
【0058】
[脂肪族ポリエステル]
脂肪族多価カルボン酸と多価アルコールとの反応によって得られる樹脂であり、脂肪族カルボン酸および多価アルコールは、それぞれ単独または2種類以上併用して使用できる。脂肪族ポリエステルの凝固点は、-5℃以下が好ましく、-50℃~-10℃がより好ましい。脂肪族ポリエステルの市販品は、例えば、アデカサイザーPN‐170(ADEKA社製、25℃での粘度800mPa・s、凝固点-15℃、アジピン酸ポリエステル)、アデカサイザーP-200(ADEKA社製、25℃での粘度2,600mPa・s、凝固点-20℃、アジピン酸ポリエステル)、アデカサイザーPN-250(ADEKA社製、25℃での粘度4,500mPa・s、凝固点-20℃、アジピン酸ポリエステル)等が挙げられる。
【0059】
[ポリエーテル樹脂]
ポリエーテル樹脂は、アルキレンオキシ基の繰り返し単位を有する樹脂である。アルキレンオキシ基の炭素数は1~6が好ましい。ポリエーテル樹脂は、25℃における粘度が10,000mPa・s以下が好ましい。この粘度であれば、液状マスターバッチ用途の使用に適している。なお、アルキレンオキシ基の炭素数は、2~4が好ましい。これにより相溶性が向上する一方、吸水性を抑制できる。
【0060】
ポリエーテル樹脂は、例えば、いずれも繰り返し単位中の炭素数が2であるポリエチレングリコールや、いずれも繰り返し単位中の炭素数が3であるポリトリメチレングリコールおよびポリプロピレングリコールや、いずれも繰り返し単位中の炭素数が4であるポリテトラメチレングリコールおよびポリブチレングリコール等が挙げられる。
【0061】
[ポリエーテルエステル樹脂]
ポリエーテルエステル樹脂は、脂肪族多価カルボン酸樹脂とアルキレングリコール樹脂とのエステル化合物である。
【0062】
ポリエーテルエステル樹脂の市販品は、例えば、アデカサイザーRS‐107(ADEKA社製、25℃での粘度20mPa・s、凝固点-47℃、アジピン酸エーテルエステル系樹脂)、アデカサイザーRS-700(ADEKA社製、25℃での粘度30mPa・s、凝固点-53℃、ポリエーテルエステル系樹脂)等が挙げられる。
【0063】
液状樹脂の凝固点は、-5℃以下が好ましく、-50℃~-10℃がより好ましい。
【0064】
本明細書の組成物の第一の態様は、可塑剤分散液を作製し、次いで、希釈樹脂(熱可塑性樹脂)とともに溶融混錬して成形体を作製することもできる。
【0065】
紫外線吸収剤の含有量は、可塑剤分散液中、0.1~30質量%が好ましい。
【0066】
可塑剤分散液は、紫外線吸収剤を可塑剤に溶解もしくは分散して作製する。
【0067】
可塑剤は、例えば、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、ポリエステル、リン酸エステル、クエン酸エステル、エポキシ化植物油、セバシン酸エステルなどが挙げられる。これらの中でもトリエチレングリコール-ジ-2-エチルヘキサノエート、トリエチレングリコール-ジ-n-ヘプタノエートが好ましく、トリエチレングリコール-ジ-2-エチルヘキサノエートがより好ましい。
【0068】
可塑剤は、単独または2種類以上併用して使用できる。
【0069】
可塑剤の含有量は、可塑剤分散液中、60~99.9質量%が好ましい。
【0070】
(樹脂型分散剤)
上記液状マスターバッチや、可塑剤分散液は樹脂型分散剤を含んでも良い。これにより、液状マスターバッチや可塑剤分散液中で、紫外線吸収剤がより均一に分散されるため、成形体はさらに高い透明性が得られる。また、樹脂型分散剤を含むことで、液状マスターバッチや可塑剤分散液の保存安定性が向上する。
【0071】
樹脂型分散剤は、紫外線吸収剤や色材に吸着する性質を有する吸着部位と、紫外線吸収剤や色材以外の成分と相溶性のある緩和部位とを有する樹脂である。樹脂型分散剤としては、塩基性分散剤、酸性分散剤、中性分散剤又は両性分散剤が挙げられる。樹脂型分散剤の主骨格としては、例えば、ポリウレタン骨格、ポリオレフィン骨格、ポリ(メタ)アクリル骨格、ポリエステル骨格、ポリアミド骨格、ポリカーボネート骨格、ポリエーテル骨格、ポリシロキサン骨格、ポリビニル骨格、ポリイミド骨格又はポリウレア骨格等が挙げられ、さらにこれらの骨格の複合樹脂でも良い。また、また、樹脂型分散剤の構造に制限は無く、ランダム構造、ブロック構造、鎖状構造、櫛型構造又は星型構造等が挙げられる。
【0072】
また、樹脂型分散剤は、4級アンモニウム塩基部位を含有していても良い。
【0073】
上記分散剤のうち少量の添加量で分散体の粘度が低くなるという理由から、塩基性官能基を有する樹脂型分散剤が好ましく、窒素原子含有グラフト共重合体や、側鎖にアミノ基、4級アンモニウム塩基、含窒素複素環などを含む官能基を有する、窒素原子含有アクリル系ブロック共重合体およびウレタン系樹脂型分散剤などが好ましい。
【0074】
樹脂型分散剤は、単独または2種類以上併用して使用できる。
【0075】
樹脂型分散剤の含有量は、紫外線吸収剤100質量部に対して5~200質量%程度が好ましく、10~100質量%程度がより好ましい。
【0076】
市販の樹脂型分散剤は、ビックケミー・ジャパン社製のDisperbyk-101、103、107、108、110、111、116、130、140、154、161、162、163、164、165、166、170、171、174、180、181、182、183、184、185、190、2000、2001、2020、2025、2050、2070、2095、2150、2155またはAnti-Terra-U、203、204、またはBYK-P104、P104S、220S、6919、またはLactimon、Lactimon-WSまたはBykumen等、日本ルーブリゾール社製のSOLSPERSE-3000、9000、13000、13240、13650、13940、16000、17000、18000、20000、21000、24000、26000、27000、28000、31845、32000、32500、32550、33500、32600、34750、35100、36600、38500、41000、41090、53095、55000、76500等、BASF社製のEFKA-46、47、48、452、4008、4009、4010、4015、4020、4047、4050、4055、4060、4080、4400、4401、4402、4403、4406、4408、4300、4310、4320、4330、4340、450、451、453、4540、4550、4560、4800、5010、5065、5066、5070、7500、7554、1101、120、150、1501、1502、1503、等、味の素ファインテクノ社製のアジスパーPA111、PB711、PB821、PB822、PB824等が挙げられる。
【0077】
なお、樹脂型分散剤が有機溶剤に溶解した状態の場合は、液状樹脂を添加し、減圧して加熱し、溶媒を留去して使用することが好ましい。その場合、これを含有する液状マスターバッチも有機溶剤を含まないため、工程面でも使用しやすい。
【0078】
<液状マスターバッチの製造方法>
液状マスターバッチは、紫外線吸収剤と液状樹脂を混合することで作製できる。なお、前記作製には、樹脂型分散剤を用いることが好ましい。前記混合は、例えば、ニーダー、2本ロールミル、3本ロールミル、ボールミル、横型サンドミル、縦型サンドミル、アニュラー型ビーズミル、またはアトライター等の装置を使用できる。
【0079】
<可塑剤分散液の製造方法>
可塑剤分散液は、紫外線吸収剤と可塑剤を混合することで作製できる。なお、前記作製には、樹脂型分散剤を用いることが好ましい。前記混合は、前記「液状マスターバッチの製造方法」で説明した装置を使用できる。
【0080】
本明細書の組成物の第一の態様は、は、例えば、塗料、粘着剤用途に使用できる。この場合、組成物は、紫外線吸収剤、熱硬化性樹脂を含むことが好ましく、さらに硬化剤を含むことが好ましい。換言すると本明細書の粘着剤は、紫外線吸収剤、粘着性樹脂、および必要に応じて硬化剤を含有することが好ましい。
【0081】
前記粘着性樹脂は、ガラス転移温度が-50~-20℃程度の樹脂である。粘着性樹脂の種類は、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル、ウレタン樹脂等が挙げられる。また、粘着性樹脂は、硬化剤と反応可能な官能基を有することが好ましい。前記官能基は、例えば、カルボキシル基、水酸基等が挙げられる。
【0082】
前記硬化剤は、例えば、イソシアネート硬化剤、エポキシ硬化剤、アジリジン硬化剤、金属キレート硬化剤等が挙げられる。
【0083】
本明細書の塗料は、紫外線吸収剤、粘着性樹脂、および必要に応じて硬化剤を含むことが好ましい。
塗料用の樹脂は、ガラス転移温度が、30℃以上の樹脂が好ましい。前記樹脂は、例えば、ポリアクリル、ニトロセルロース、ポリエステル等の熱可塑性樹脂が挙げられる。硬化剤は、上記硬化剤に加え、アミン系硬化剤等から適宜選択して使用できる。
【0084】
なお、塗料は、樹脂型分散剤としてカルボキシル基を有する樹脂型分散剤を含んでも良い。カルボキシル基を有する樹脂型分散剤の形状としては、直鎖状の樹脂型分散剤、櫛型の樹脂型分散剤がある。
【0085】
<櫛型の樹脂型分散剤>
カルボキシル基を有する櫛型の樹脂型分散剤は、例えば、下記(S1)又は(S2)が挙げられる。
[樹脂型分散剤(S1)]
樹脂型分散剤(S1)は、WO2008/007776号公報、特開2008-029901号公報、特開2009-155406号公報等の公知の方法で製造することができる。
例えば、水酸基を有する重合体の水酸基と、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基との反応生成物である樹脂型分散剤であるか、水酸基を有する化合物の水酸基と、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基との反応生成物の存在下に、エチレン性不飽和単量体を重合した重合体である樹脂型分散剤。
【0086】
[樹脂型分散剤(S2)]
樹脂型分散剤(S2)は、WO2008/007776号公報、特開2009-155406号公報、特開2010-185934号公報、特開2011-157416号公報等の公知の方法で合成できる。
【0087】
樹脂型分散剤(S2)は、例えば、水酸基を有する化合物の水酸基と、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基との反応生成物の存在下に、水酸基、t-ブチル基あるいはオキセタン骨格、ブロックイソシアネートなどの熱架橋基を有するエチレン性不飽和単量体とそれ以外を重合した側鎖を持つ樹脂型分散剤とさらにその側鎖の水酸基にイソシアネート基を有するエチレン性不飽和単量体を反応させて合成できる。
【0088】
<直鎖状の樹脂型分散剤>
直鎖状の樹脂型分散剤は、例えば、特開2009-251481号公報、特開2007-23195号公報、特開1996-143651号公報等公知の方法で合成できる。直鎖の分散剤の製造方法の一例として、カルボキシル基を有する分散剤は、片末端に1つの水酸基を有するビニル系重合体を原料として、トリカルボン酸無水物を水酸基に付加すること合成できる。
【0089】
[その他樹脂型分散剤]
その他樹脂型分散剤は、例えば、ポリウレタン、ポリアクリレート等のポリカルボン酸エステル、不飽和ポリアミド、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸(部分)アミン塩、ポリカルボン酸アンモニウム塩、ポリカルボン酸アルキルアミン塩、ポリシロキサン、長鎖ポリアミノアマイドリン酸塩、水酸基含有ポリカルボン酸エステルや、これらの変性物、ポリ(低級アルキレンイミン)と遊離のカルボキシル基を有するポリエステルとの反応により形成されたアミドやその塩等の油性分散剤、(メタ)アクリル酸-スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコ-ル、ポリビニルピロリドン等の水溶性樹脂や水溶性高分子化合物、ポリエステル系、変性ポリアクリレート系、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド付加化合物、リン酸エステル系等が挙げられる。
塩基性官能基を有する高分子分散剤としては、窒素原子含有グラフト共重合体や、側鎖に3級アミノ基、4級アンモニウム塩基、含窒素複素環などを含む官能基を有する、窒素原子含有アクリル系ブロック共重合体及びウレタン系高分子分散剤などが挙げられる。
【0090】
本明細書の組成物の第二の態様は、本発明の紫外線吸収剤、光重合性化合物および光重合開始剤を含む光硬化性組成物である。前記組成物は、例えば、ハードコート層、トップコート層、各種積層体の中間層などの塗膜層用途に使用できる。この場合、組成物は、紫外線吸収剤、光重合性化合物および光重合開始剤を含むことが好ましい。また、前記組成物中の紫外線吸収剤は光硬化性部位を含むことがより好ましい。また前記組成物は、樹脂を含有できる。
【0091】
光重合性化合物は、重合性不飽和基を有するモノマーおよびオリゴマーである。重合性不飽和基は、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アリル基である。
光重合性化合物は、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンPO変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、エステルアクリレート、メチロール化メラミンの(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレート等の各種アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、スチレン、酢酸ビニル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ビニルホルムアミド、アクリロニトリル等が挙げられる。
【0092】
光重合開始剤は、例えば、アセトフェノン系化合物、ベンゾイン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、トリアジン系化合物、オキシムエステル系化合物、ホスフィン系化合物、キノン系化合物、ボレート系化合物、カルバゾール系化合物、イミダゾール系化合物、チタノセン系化合物等が挙げられる。これらの中でも高感度の面でオキシムエステル系化合物が好ましい。
【0093】
本発明の成形体は、第一の態様である紫外線吸収剤および樹脂を含む組成物を溶融混錬して成形して作製することが好ましい。前記組成物がマスターバッチである場合、マスターバッチと希釈樹脂を溶融混錬して成形体を作製する。なお、本発明で成型体は型に樹脂を投入し物品を得るものである。また、成形体は、プラスチックフィルムなど型を使用せずに得た物品と前記成型体を含む。なお、希釈樹脂は、既に説明した熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。
【0094】
溶融混練は、例えば単軸混練押出機、二軸混練押出機、タンデム式二軸混練押出機等を用が好ましい。溶融混錬温度は、熱可塑性樹脂の種類により異なるが、通常150~320℃程度である。
【0095】
成形方法は、例えば、押出成形、射出成形、ブロー成形などが挙げられる。押出成形は、例えばコンプレッション成形、パイプ押出成形、ラミネート成形、Tダイ成形、インフレーション成形、溶融紡糸等が挙げられる。
【0096】
成形温度は、希釈樹脂の軟化点によるところ、通常160~320℃である。
【0097】
本発明の成形体は、例えば、医薬品包装材、食品包装材、ディスプレイ、ガラス中間膜、光学レンズ、太陽電池、ウィンドウフィルム、眼鏡レンズ用途に使用することができる。
【0098】
医薬品包装材や食品包装材は、熱可塑性樹脂に、例えば、ポリエステル、シクロオレフィン樹脂等を使用することが好ましい。これら成形体は、柔軟性および視認性が向上し、内容物の劣化を抑制できる。
【0099】
ディスプレイ、ガラス中間膜、光学レンズ、太陽電池用途に使用できる成形体は、熱可塑性樹脂から構成されている成形体であれば何でも良いが、所望の波長に対して透明な性質を有する樹脂が好ましい。このような成形体を構成する樹脂としては、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート系樹脂、脂環構造を有するオレフィンポリマー系樹脂(脂環式オレフィンポリマー系樹脂)、セルロースエステル系樹脂などが挙げられる。
【0100】
本発明の紫外線吸収シートは、基材、前記組成物から形成されてなる紫外線吸収層を備えることが好ましい。
【0101】
本発明の紫外線吸収シートは、前記紫外線吸収剤、樹脂および必要に応じて有機溶剤等を含む組成物(例えば、塗料)を基材上に塗工して乾燥して形成した紫外線吸収層を形成できる。紫外線吸収層の厚みは、2~200μm程度である。
前記紫外線吸収層は、紫外線吸収性以外に例えば、ハードコート層、トップコート層、各種積層体の中間層などの塗膜層、粘着剤層等の機能層として使用することが好ましい。
【0102】
前記ハードコート層、トップコート層、各種積層体の中間層などの塗膜層は、例えばディスプレイ用材料、センサー用材料、光学制御材料、各種産業用被覆材、自動車用部品、家電製品、住宅等の建材、トイレタリー用品などの用途で、基材などに塗工して紫外線を遮蔽する膜を形成し、有機材料などの劣化を抑制することができる。
【0103】
基材の厚みは、0.1~5000μm程度である。
基材は、例えば、前記熱可塑性樹脂、アセチルセルロース樹脂、ガラス、シリコンが挙げられる。
【0104】
本明細書で粘着シートは、前記粘着剤を、例えば、剥離シート上に塗工し、乾燥することで粘着剤層を形成し、粘着剤層上に基材を貼り合わせて作製できる。
【0105】
本明細書の粘着シートは、例えばディスプレイ(例えば、テレビ、パソコン、スマホ等)や自動車用部品、センサー用部材、家電製品、住宅等の建材、ガラス中間膜用途などの用途で、各基材に貼り合わせる使用することが好ましい。粘着シートは、本発明の紫外線吸収剤を含むことで、バックライトや太陽光に含まれる紫外線や可視光の短波長領域の光を吸収し、目や人体への悪影響を抑制することやディスプレイの表示素子の劣化を抑制することができる。なお、シート、フィルムおよびテープは同義語である。
【0106】
本発明の組成物の第一の態様および第二の態様で、共通する材料を以下説明する。
【0107】
本発明の紫外線吸収剤は、その他紫外線吸収剤(C)を併用できる。その他紫外線吸収剤(C)は、一般的に波長360nm以下の光を吸収する化合物であり本発明の本発明の紫外線吸収剤以外のトリアジン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、およびベンゾフェノン系化合物等が挙げられる。本発明の紫外線吸収剤とその他紫外線吸収剤(C)が互いの化合物を保護するため、耐光性および耐熱性がより向上する。
【0108】
<その他紫外線吸収剤(C)>
ベンゾトリアゾール系化合物は、例えば、2-(5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、オクチル-3[3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェニル]プロピオネートと2-エチルヘキシル-3-[3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェニル]プロピオネートの混合物、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3-tブチル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、5%の2-メトキシ-1-メチルエチルアセテートと95%のベンゼンプロパン酸,3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ,C7-9側鎖および直鎖アルキルエステルの化合物、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3-t-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-エチルヘキシル-3-[3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェニル]プロピオネート、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-ドデシル-4-メチル-フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-3-t-ブチルフェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-(1,1-3,3-テトラメチルブチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-3-メチルフェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-ドデシル-4-メチル-フェノール、2,2’-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール]等が挙げられる。
【0109】
市販品は、BASFジャパン社製「TINUVIN P」、「TINUVIN PS」、「TINUVIN 109」、「TINUVIN 234」、「TINUVIN 326」、「TINUVIN 328」、「TINUVIN 329」、「TINUVIN 360」、「TINUVIN 384-2」、「TINUVIN 900」、「TINUVIN 928」、「TINUVIN 99-2」、「TINUVIN 1130」、ADEKA社製「アデカスタブLA-29」、大塚化学社製「RUVA-93」等が挙げられる。
【0110】
本発明の本発明の紫外線吸収剤以外のトリアジン系化合物は、例えば、2-[4,6-ジ(2,4-キシリル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-5-オクチルオキシフェノール、2‐[4,6‐ビス(2,4‐ジメチルフェニル)‐1,3,5‐トリアジン‐2‐イル]‐5‐[3‐(ドデシルオキシ)‐2‐ヒドロキシプロポキシ]フェノール、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンと(2-エチルヘキシル-グリシド酸エステルの反応生成物、2,4-ビス「2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル」-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3-5-トリアジン、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-(2’-エチル)ヘキシル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-(2’-エチル)ヘキシル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヘキシロキシフェノール(III-5)ビスエチルヘキシロキシフェノール メトキシフェニルトリアジン等が挙げられる。
【0111】
市販品は、ケミプロ化成社製「KEMISORB 102」、BASFジャパン社製「TINUVIN 400」、「TINUVIN 405」、「TINUVIN 460」、「TINUVIN 477-DW」、「TINUVIN 479」、「TINUVIN 1577」、ADEKA社製「アデカスタブLA-46」、「アデカスタブLA-F70」、サンケミカル社製「CYASORB UV-1164」等が挙げられる。
【0112】
ベンゾフェノン系化合物は、例えば、2,4-ジ-ヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルフォン酸ナトリウム、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、2,2-ジ-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、ヘキシル 2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)ベンゾエート、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、1,4-ビス(4-ベンゾイル-3-ヒドロキシフェノキシ)ブタン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルフォニックアシッド、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0113】
市販品は、BASFジャパン社製「Uvinul 3050」、「Uvinul 3049」、ケミプロ化成社製「KEMISORB 10」、「KEMISORB 11」、「KEMISORB 11S」、「KEMISORB 12」、「KEMISORB 111」、シプロ化成社製「SEESORB 101」、「SEESORB 107」、ADEKA社製「アデカスタブ1413」等が挙げられる。
【0114】
本発明の紫外線吸収剤(その他紫外線吸収剤(C)を除く)の含有量は、組成物の不揮発分中、0.005~20質量%が好ましく、0.01~10質量%がより好ましい。これにより目的の分光カット率に応じて紫外線吸収剤の含有量を設計できる。
その他紫外線吸収剤(C)の含有量は、組成物の不揮発分中、0.005~10質量%が好ましく、0.01~5質量%がより好ましい。目的の分光カット率によって紫外線吸収剤の含有量を設計できる。
【0115】
その他紫外線吸収剤(C)を含む全紫外線吸収剤の含有量は、組成物の不揮発分中、0.01~30質量%が好ましく、0.02~15質量%がより好ましい。目的の分光カット率によって紫外線吸収剤の含有量を調整できる。
【0116】
本発明の組成物は、波長450~650nmの可視波長域に対して、波長域の80%以上を遮光する色材(D)(以下、色材(D)という)を含有できる。色材(D)は、2種類以上の有彩色着色剤を含むことが好ましい。本発明の紫外線吸収剤は、波長420nm以下に強い吸収を持つため、色材(D)の中でも450~650nmの特定の波長領域に吸収を持つ有彩色着色剤と組み合わせることで、700nm以下をカットして近赤外線領域の光を利用できる。そのため本発明の組成物は、例えば、目的に応じ適宜分光を調整するバンドパス材料として使用できる。また、本発明の紫外線吸収剤が前記色材(D)を紫外線から保護するため、組成物全体の耐光性および耐熱性が向上する。
【0117】
色材(D)は、例えば、青色色素、黄色色素、紫色色素、赤色色素等が挙げられる。
有機色素は、有機顔料を用いても良く、例えば、ジケトピロロピロール系顔料、アゾ、ジスアゾ、又はポリアゾ等のアゾ系顔料、アミノアントラキノン、ジアミノジアントラキノン、アントラピリミジン、フラバントロン、アントアントロン、インダントロン、ピラントロン、又はビオラントロン等のアントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、チオインジゴ系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、スレン系顔料または金属錯体系顔料等が挙げられる。
また、有機色素として、染料を用いても良く、例えば、アントラキノン系染料、モノアゾ系染料、ジスアゾ系染料、オキサジン系染料、アミノケトン系染料、キサンテン系染料、キノリン系染料、トリフェニルメタン系染料などが挙げられる。染料を用いる際には。アニオン性染料、カチオン性染料の極性基を用いて樹脂中に取り込み有機溶剤への溶解性を付与する方法が有効となる。
【0118】
(青色色素)
青色顔料は、例えばC.I.ピグメントブルー1、1:2、9、14、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17、19、25、27、28、29、33、35、36、56、56:1、60、61、61:1、62、63、66、67、68、71、72、73、74、75、76、78、79等が挙げられる。なお、「C.I.」は、カラーインデックス(C.I.;The Society of Dyers and Colourists 発行)を意味する。
【0119】
青色染料は、例えばC.I.アシッドブルー1、2、3、4、5、6、7、8、9、11、13、14、15、17、19、21、22、23、24、25、26、27、29、34、35、37、40、41、41:1、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、62、62:1、63、64、65、68、69、70、73、75、78、79、80、81、83、8485、86、88、89、90、90:1、91、92、93、95、96、99、100、103、104、108、109、110、111、112、113、114、116、117、118、119、120、123、124、127、127:1、128、129、135、137、138、143、145、147、150、155、159、169、174、175、176、183、198、203、204、205、206、208、213、227、230、231、232、233、235、239、245、247、253、257、258、260、261、262、264、266、269、271、272、273、274、277、278、280等が挙げられる。
【0120】
また、C.I.ダイレクトブルー1、2、3、4、6、7、8、8:1、9、10、12、14、15、16、19、20、21、21:1、22、23、25、27、29、31、35、36、37、40、42、45、48、49、50、53、54、55、58、60、61、64、65、67、79、96、97、98:1、101、106、107、108、109、111、116、122、123、124、128、129130、130:1、132、136、138、140、145、146、149、152、153、154、156、158、158:1、164、165、166、167、168、169、170、174、177、181、184、185、188、190、192、193、206、207、209、213、215、225、226、229、230、231、242、243、244、253、254、260、263等が挙げられる。
(黄色色素)
黄色顔料は、例えばC.I.ピグメントイエロー1、1:1、2、3、4、5、6、9、10、12、13、14、16、17、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、41、42、43、48、53、55、61、62、62:1、63、65、73、74、75,81、83、87、93、94、95、97、100、101、104、105、108、109、110、111、116、117、119、120、126、127、127:1、128、129、133、134、136、138、139、142、147、148、150、151、153、154、155、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、172、173、174、175、176、180、181、182、183、184、185、188、189、190、191、191:1、192、193、194、195、196、197、198、199、200、202、203、204、205、206、207、208等が挙げられる。
【0121】
黄色染料は、例えばC.I.アシッドイエロー2,3、4、5、6、7、8、9、9:1、10、11、11:1、12、13、14、15、16、17、17:1、18、20、21、22、23、25、26、27、29、30、31、33、34、36、38、39、40、40:1、41、42、42:1、43、44、46、48、51、53、55、56、60、63、65、66、67、68、69、72、76、82、83、84、86、87、90、94、105、115、117、122、127、131、132、136、141、142、143、144、145、146、149、153、159、166、168、169,172、174、175、178、180、183、187、188、189、190、191、192、199等が挙げられる。
【0122】
また、C.I.ダイレクトイエロー1、2、4、5、12、13、15、20、24、25、26、32、33、34、35、41、42、44、44:1、45、46、48、49、50、51、61、66、67、69、70、71、72、73、74、81、84、86、90、91、92、95、107、110、117、118、119、120、121、126、127、129、132、133、134等が挙げられる。
(紫色色素)
紫色顔料は、例えばC.I.ピグメントバイオレット1、1:1、2、2:2、3、3:1、3:3、5、5:1、14、15、16、19、23、25、27、29、31、32、37、39、42、44、47、49、50等が挙げられる。
【0123】
紫色染料は、例えばC.I.アシッドバイオレット1、2、3、4、5、5:1、6、7、7:1、9、11、12、13、14、15、16、17、19、20、21、23、24、25、27、29、30、31、33、34、36、38、39、41、42、43、47、49、51、63、67、72、76、96、97、102、103、109等が挙げられる。
【0124】
また、C.I.ダイレクトバイオレット1、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、16、17、18、21、22、25、26、27、28、29、30、31、32、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、45、51、52、54、57、58、61、62、63、64、71、72、77、78、79、80、81、82、83、85、86、87、88、93、97等が挙げられる。
(赤色色素)
赤色顔料は、例えば、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、12、14、15、16、17、21、22、23、31、32、37、38、41、47、48、48:1、48:2、48:3、48:4、49、49:1、49:2、50:1、52:1、52:2、53、53:1、53:2、53:3、57、57:1、57:2、58:4、60、63、63:1、63:2、64、64:1、68、69、81、81:1、81:2、81:3、81:4、83、88、90:1、1 01、101:1、104、108、108:1、109、112、113、114、122、123、144、146、147、149、151、166、168、169、170、172、173、174、175、176、177、178、179、181、184、185、187、188、190、193、194、200、202、206、207、208、209、210、214、216、220、221、224、230、231、232、233、235、236、237、238、239、242、243、245、247、249、250、251、253、254、255、256、257、258、259、260、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276等が挙げられる。
赤色顔料と同様にはたらくオレンジ色顔料は、例えばC.I.ピグメント オレンジ36、38、43、51、55、59、61等のオレンジ色顔料等が挙げられる。
赤色染料は、例えばC.I.アシッドレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、23、24、25、25:1、26、26:1、26:2、27、29、30、31、32、33、34、35、36、37、39、40、41、42、43、44、45、47、50、52、53、54、55、56、57、59、60、62、64、65、66、67、68、70、71、73、74、76、76:1、80、81、82、83、85、86、87、88、89、91、92、93、97、99、102、104、106、107、108、110、111、113、114、115、116、120、123、125、127、128、131、132、133、134、135、137、138、141、142、143、144、148、150、151、152、154、155、157、158、160、161、163、164、167、170、171、172、173、175、176、177、181、229、231、237、239、240、241、242、249、252、253、255、257、260、263、264、266、267、274、276、280、286、289、299、306、309、311、323、333、324、325、326、334、335、336、337、340、343、344、347、348、350、351、353、354、356、388等が挙げられる。
【0125】
また、C.I.ダイレクトレッド1、2、2:1、4、5、6、7、8、10、10:1、13、14、15、16、17、18、21、22、23、24、26、26:1、28、29、31、33、33:1、34、35、36、37、39、42、43、43:1、44、46、49、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、67、67:1、68、72、72:1、73、74、75、77、78、79、81、81:1、85、86、88、89、90、97、100、101、101:1、107、108、110、114、116、117、120、121、122、122:1、124、125、127、127:1、127:2、128、129、130、132、134、135、136、137、138、140、141、148、149、150、152、153、154、155、156、169、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、185、186、189、204、211、213、214、217、222、224、225、226、227、228、232、236、237、238等が挙げられる。
【0126】
色材(D)の中で染料は、良好な分光特性を有し、発色性に優れるものの、耐光性、耐熱性に問題がある。そのため、これらの問題を改善するために、塩基性染料は、有機酸や過塩素酸を用い塩を形成する造塩化合物として用いることが好ましい。有機酸は、有機スルホン酸、有機カルボン酸が好ましい。中でもトビアス酸等のナフタレンスルホン酸、過塩素酸が耐性の面で好ましい。
塩の形成は、アニオン基を有する樹脂と造塩化して用いることが好ましく、ベタイン構造を有する樹脂と有機酸とともに造塩する造塩化合物として用いることも好ましい。
また、酸性染料、直接染料を含むアニオン性染料は、カチオン性基を有する化合物やカチオン性基を有する樹脂をカウンターイオンとして用いた造塩化合物として用いることが耐熱性、耐光性、耐溶剤性の面で好ましい。また、造塩化合物の合成には、カチオン基を有する樹脂を用いることが好ましく、側鎖にカチオン基を有する樹脂と有機酸とともに造塩して用いることもより好ましい。
また、アニオン性染料はスルホンアミド化してスルホン酸アミド化合物として用いることでも、耐性の面で好ましく使用できる。
【0127】
色材(D)は、塗工用途で、青色顔料はPigment.Blue.15:3もしくはPigment.Blue.15:6、黄色色素はPigment.Yellow.139、紫色色素はPigment.Violet.23を用いることが好ましい。また成形用途で、青色顔料はPigment.Blue.15:3もしくはPigment.Blue.15:6、黄色色素はPigment.Yellow.147、赤色色素はSolvent.Red.52が好ましい。
【0128】
色材(D)の含有量は、組成物の不揮発分中、0.005~50質量%が好ましく、0.005~20質量%がより好ましく、0.5~15質量%がさらに好ましい。目的の分光カット率によって紫外線吸収剤の含有量を設計することができる。
【0129】
本発明の組成物は、必要に応じて色素誘導体を添加することができる。
【0130】
色素誘導体は、有機色素残基に酸性基、塩基性基、中性基などを有する化合物である。色素誘導体は、例えば、スルホ基、カルボキシ基、リン酸基などの酸性置換基を有する化合物及びこれらのアミン塩や、スルホンアミド基や末端に3級アミノ基などの塩基性置換基を有する化合物、フェニル基やフタルイミドアルキル基などの中性置換基を有する化合物が挙げられる。
有機色素は、例えばジケトピロロピロール系顔料、アントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、チアジンインジゴ系顔料、トリアジン系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、ベンゾイソインドール等のインドール系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、ナフトール系顔料、スレン系顔料、金属錯体系顔料、アゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系顔料、等が挙げられる。
【0131】
色素誘導体は、それぞれ単独または2種以上を併用して使用できる。
【0132】
本発明の組成物は、波長600~1500nmの波長領域に極大吸収を有する近赤外線吸収剤(E)を含有できる。これにより、目的に応じ適宜分光を調整でき、本発明の紫外線吸収剤が近赤外線吸収剤(E)の劣化を保護するため、耐久性が向上する。近赤外線吸収剤(E)は、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、スクアリリウム化合物、シアニン化合物、およびジケトピロロピロール化合物から選ばれる1種以上の化合物が挙げられる。なお、前記極大吸収は、波長700~1,500nmがより好ましい。
【0133】
シアニン化合物は、国際公開第2006/006573号、国際公開第2010/073857号、特開2013-241598号公報、特開2016-113501号公報、特開2016-113504号公報等;フタロシアニン化合物は、特開平4-23868号公報、特開平06-192584号公報、特開2000-63691号公報、国際公開第2014/208514号等;ナフタロシアニン化合物は、特開平11-152414号公報、特開2000-86919号公報、特開2009-29955号公報、国際公開第2018/186490号等;インジゴ化合物は、特開2013-230412号公報等;インモニウム化合物は、特開2005-336150号公報、特開2007-197492号公報、特開2008-88426号公報等;アントラキノン化合物は、特開昭62-903号公報、特開平1-172458号公報等;ピロロピロール化合物は、特開2009-263614号公報、特開2010-90313号公報、特開2011-068731号公報;スクアリリウム化合物は、特開2011-132361号公報、特開2016-142891号公報、国際公開第2017/135359号、国際公開第2018/225837号、特開2019-001987号公報、国際公開第2020/054718号等;クロコニウム化合物は、国際公開第2019/021767号等に記載の化合物が挙げられる。
【0134】
(スクアリリウム化合物)
スクアリリウム化合物は、下記一般式(5-1)で表される化合物が好ましい。
一般式(5-1)
【化7】
【0135】
(一般式(5-1)中、R1~R4はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、-OR10、-COR11、-COOR12、-OCOR13、-NR14R15、-NHCOR16、-CONR17R18、-NHCONR19R20、-NHCOOR21、-SR22、-SO2R23、-SO2OR24、-NHSO2R25、-SO2NR26R27、-B(OR28)2、および-NHBR29R30を表す。R10~R30は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、およびアラルキル基を表す。なお、-COOR12のR12が水素の場合(すなわち、カルボキシル基)は、水素原子が解離してもよく(すなわち、カルボネート基)、塩の状態であってもよい。また、-SO2OR24のR24が水素原子の場合(すなわち、スルホ基)は、水素原子が解離してもよく(すなわち、スルホネート基)、塩の状態であってもよい。また、R1とR2、R3とR4はお互いに結合して環を形成しても良い。)
【0136】
「置換基」としては、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、
-OR100、-COR101、-COOR102、-OCOR103、-NR104R105、-NHCOR106、-CONR107R108、-NHCONR109R110、-NHCOOR111、-SR112、-SO2R113、-SO2OR114、-NHSO2R115または-SO2NR116R117が挙げられる。
R100~R117は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、またはアラルキル基を表す。なお、-COOR102のR102が水素の場合(すなわち、カルボキシル基)は、水素原子が解離してもよく(すなわち、カルボネート基)、塩の状態であってもよい。また、-SO2OR114のR114が水素原子の場合(すなわち、スルホ基)は、水素原子が解離してもよく(すなわち、スルホネート基)、塩の状態であってもよい。
【0137】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
アルキル基の炭素数は、1~20が好ましく、1~12がさらに好ましく、1~8が特に好ましい。アルキル基は直鎖、分岐、環状のいずれでも良い。
アルケニル基の炭素数は、2~20が好ましく、2~12がさらに好ましく、2~8が特に好ましい。アルケニル基は直鎖、分岐、環状のいずれでも良い。
アルキニル基の炭素数は、2~20が好ましく、2~12がさらに好ましく、2~8が特に好ましい。アルキニル基は直鎖、分岐、環状のいずれでも良い。
アリール基の炭素数は、6~25が好ましく、6~15がさらに好ましく、6~10が特に好ましい。
アラルキル基のアルキル部分は、上記アルキル基と同様である。アラルキル基のアリール部分は、上記アリール基と同様である。アラルキル基の炭素数は、7~40が好ましく、7~30がさらに好ましく、7~25が特に好ましい。
ヘテロアリール基は、単環または縮合環が好ましく、単環または縮合数が2~8の縮合環がさらに好ましく、単環または縮合数が2~4の縮合環が特に好ましい。ヘテロアリール基の環を構成するヘテロ原子の数は1~3が好ましい。ヘテロアリール基の環を構成するヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子、または硫黄原子が好ましい。ヘテロアリール基は、5員環または6員環が好ましい。ヘテロアリール基の環を構成する炭素原子の数は3~30が好ましく、3~18がさらに好ましく、3~12が特に好ましい。
アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、およびアラルキル基は置換基を有していても良く、無置換であっても良い。置換基としては上述した「置換基」が挙げられる。
【0138】
スクアリリウム化合物は、耐光性、耐熱性の観点から、下記一般式(5-2)で表される化合物がより好ましい。
一般式(5-2)
【化8】
【0139】
(一般式(5-2)中、R5~R8はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、-OR50、-COR51、-COOR52、-OCOR53、-NR54R55、-NHCOR56、-CONR57R58、-NHCONR59R60、-NHCOOR61、-SR62、-SO2R63、-SO2OR64、-NHSO2R65または-SO2NR66R67、-B(OR68)2、および-NHBR69R70を表す。R50~R70は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、およびアラルキル基を表す。なお、-COOR52のR52が水素の場合(すなわち、カルボキシル基)は、水素原子が解離してもよく(すなわち、カルボネート基)、塩の状態であってもよい。また、-SO2OR64のR64が水素原子の場合(すなわち、スルホ基)は、水素原子が解離してもよく(すなわち、スルホネート基)、塩の状態であってもよい。また、R5とR6、R7とR8はお互いに結合して環を形成しても良い。)
【0140】
「置換基」は、上述の「置換基」と同様の意義である。
【0141】
以下、スクアリリウム化合物の具体例を示す。なお、本発明はこれらに限定されない。
【0142】
【0143】
【0144】
(ピロロピロール化合物)
ピロロピロール化合物は、下記一般式(6)で表される化合物が好ましい。
【0145】
【0146】
(一般式(6)中、R1x及びR1yは、各々独立に、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表し、R2及びR3は、各々独立に、水素原子又は置換基を表し、R2及びR3は、互いに結合して環を形成してもよく、R4は、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、-BR4xR4y又は金属原子を表し、R4は、R1x、R1y及びR3からなる群から選ばれる少なくとも1つと共有結合又は配位結合してもよく、R4xR4yは各々独立に、置換基を表す。一般式(6)は、特開2009-263614号公報、特開2011-68731号公報、国際公開第2015/166873号に記載されている。
【0147】
R1x及びR1yは、各々独立に、アリール基又はヘテロアリール基が好ましく、アリール基がより好ましい。また、R1x及びR1yが表すアルキル基、アリール基が及びヘテロアリール基は、置換基を有してもよく、無置換であってもよい。置換基としては、アルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、-OCOR11、-SOR12、-SO2R13等が挙げられる。R11~R13は、各々独立に、炭化水素基又はヘテロアリール基を表す。また、置換基としては、特開2009-263614号公報の段落0020~0022に記載の置換基が挙げられる。なかでも、置換基としては、アルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、-OCOR11、-SOR12、-SO2R13が好ましい。R1x及びR1yで表される基としては、分岐アルキル基を有するアルコキシ基、又は-OCOR11で表される基を置換基として有するアリール基が好ましい。分岐アルキル基の炭素数は、3~30が好ましく、3~20がより好ましい。
【0148】
R2及びR3の少なくとも一方は電子吸引性基が好ましく、R2は電子吸引性基を表し、R3はヘテロアリール基を表すことがより好ましい。ヘテロアリール基は、5員環又は6員環が好ましい。また、ヘテロアリール基は、単環又は縮合環が好ましく、単環又は縮合数が2~8の縮合環が好ましく、単環又は縮合数が2~4の縮合環がより好ましい。ヘテロアリール基を構成するヘテロ原子の数は、1~3が好ましく、1~2がより好ましい。ヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が挙げられる。ヘテロアリール基は、窒素原子を1個以上有することが好ましい。一般式(6)における2個のR2同士は同一であってもよく、異なっていてもよい。また、一般式(6)における2個のR3同士は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0149】
R4は、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、又は-BR4xR4yで表される基が好ましく、水素原子、アルキル基、アリール基、又は-BR4xR4yで表される基であることがより好ましく、-BR4xR4yで表される基であることが特に好ましい。R4xR4yが表す置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、又はヘテロアリール基が好ましく、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基がより好ましく、アリール基が特に好ましい。これらの基は、更に置換基を有してもよい。一般式(6)における2個のR4同士は同一または異なっていてもよい。
【0150】
以下、ピロロピロール化合物の具体例を示す。以下の構造式中、Meはメチル基、Phはフェニル基を表す。また、ピロロピロール化合物としては、特開2009-263614号公報の段落0016~0058、特開2011-68731号公報の段落0037~0052、特開2014-130343号公報の段落0014~0027、国際公開第2015/166873号の段落0010~0033に記載の化合物が挙げられる。なお、本発明はこれらに限定されない。
【0151】
【0152】
(ナフタロシアニン化合物)
ナフタロシアニン化合物は、下記一般式(7)で表される化合物が好ましい。
【0153】
【0154】
(一般式(7)中、R
1~R
24は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ニトロ基、ニトリル基、カルボキシル基、スルホン基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシル基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルチオ基、置換基を有してもよいアリールチオ基、置換基を有してもよいアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、置換基を有してもよいスルファモイル基を表す。
Zは、一般式(8)で示す単量体単位を含む重合体部位、または一般式(9)で表すリン化合物部位であり、*は、Alとの結合手である。)
一般式(8)
【化14】
【0155】
(一般式(8)中、Xは、-CONH-R25-、-COO-R26-、-CONH-R27-O-、-COO-R28-O-、R25~R28は、炭素原子と炭素原子の間が、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CONH-、または-NHCO-で連結されていても良いアルキレン基もしくはアリーレン基を表す。R31は水素または、メチル基を表す。)
【0156】
【0157】
(一般式(9)中、R29およびR30は、それぞれ独立に、水酸基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシル基または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表し、R29とR30は、互いに結合して環を形成しても良い。)
【0158】
以下、ナフタロシアニン化合物の具体例を示す。なお、本発明はこれらに限定されない。
【化16】
【0159】
近赤外線吸収剤(E)の含有量は、組成物の不揮発分中、0.005~50質量%が好ましく、0.01~40質量%がより好ましい。
【0160】
第一の態様および第二の態様では、任意成分として、酸化防止剤、光安定剤、分散剤、ワックス等を含有できる。また、第一の態様で説明した材料は、第二の態様でも使用できる。また、第二の態様で説明した材料は、第一の態様でも使用できる。
【0161】
<用途および効果>
本発明の紫外線吸収剤を以下の用途に用いることで、波長400nm未満の紫外線、および400~420nm程度の可視光短波長領域の光から、有機物や人体に与えるダメージを低減することが可能である。
【0162】
ディスプレイ用途では、例えば、テレビ、パソコン、スマホ等に使用できる光学フィルム等で使用できる。本発明の成形体もしくは塗膜を使用した積層体は、ディスプレイのバックライトに含まれる紫外線や可視光の短波長領域の光を吸収することで、目への悪影響を抑制することができ、また、太陽光に含まれる紫外線や可視光の短波長領域の光を吸収することで、ディスプレイの表示素子の劣化を抑制できる。
【0163】
ガラス中間膜用途では、例えば自動車や建築物等の合わせガラス等で使用できる。上記の組成物を含む成形体を使用した合わせガラスは、太陽光に含まれる紫外線や可視光の短波長領域の光を吸収することで、目や人体への悪影響を抑制することができる。
【0164】
レンズ用途では、例えば眼鏡や光学センサー等に使用できるレンズ等で使用できる。上記の組成物を含む成形体を使用したレンズは、例えば眼鏡用途では太陽光に含まれる紫外線や可視光の短波長領域の光を吸収することで、目や人体への悪影響を抑制することができ、光学センサー用途ではノイズに成り得る不要な波長の光をカットすることで、センサーの感度を高めることができる。
【0165】
医薬品薬剤や化粧品等の包装材料では、内容物であるビタミンなどの特定の成分は、400~420nm程度の可視光短波長領域の光においても劣化するため、従来の紫外線吸収剤に比べ劣化をより低減することができる。
【0166】
化粧品用途では、日焼け止めやファンデーション等に使用できる。紫外線だけでなく400~420nm程度の可視光短波長領域の光においても肌への影響を与えるため、より肌や人体への悪影響を抑制することができる。
【0167】
また、紫外線および400~420nm程度の可視光短波長領域の光は樹脂を劣化するため、樹脂を使用する用途全般において劣化を低減し、寿命を延長することができる。結果として、廃棄物削減に貢献することができる。
【実施例0168】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。ただし、本発明は実施例に限定されない。また、「質量部」は「部」、「質量%」は「%」と記載する。
【0169】
<中間体1の製造方法>
300mL三角フラスコに、ニトロベンゼンを120部、2-(7-ブロモ-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-4,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジンを8部、塩化アルミニウムを6.4部仕込み、撹拌して懸濁させた。次に、氷水で冷却しながら、レゾルシノールを4.6部、少しずつ添加した。その後、徐々に室温に戻しながら終夜撹拌し、反応液を得た。一方、500mLビーカーに水を38.1部、35%塩酸を10.0部、メタノールを45.0部仕込み、反応液を少しずつ滴下した。30分攪拌後、ろ別し、得られたウェットケーキをメタノール100部中に戻して室温で30分リスラリーを行い、濾別した後、水45gをふりかけ洗浄した。得られたウェットケーキを80℃で終夜乾燥し、中間体1を得た。
【0170】
(化合物の同定方法)
本発明に用いた中間体および紫外線吸収剤の同定には、NMRを用いた。
<測定条件>
装置:BRUKER AVANCE400
共振周波数:400MHz(1H-NMR)
溶媒:ジメチルスルホキシド-d8
1H-NMRの内部標準物質として、テトラメチルシランを用い、ケミカルシフト値はδ値(ppm)、カップリング定数はHertzで示した。またsはsinglet、dはdoublet、ddはdоubledoubletの略とする。得られたNMRスペクトルの内容は以下のとおりである。
δ=11.10(s,2H),8.61(d,2H),8.55(d,1H),8.47(dd,1H),8.38(s,2H),8.24(dd,2H),7.94(d,1H),7.89(dd,1H),6.85(dd,2H),6.32(d,2H),1.93(s,6H)
【0171】
上記の通り、中間体1のNMR測定を行った結果、上記構造を支持する結果が得られた。他の中間体および紫外線吸収剤も上記同様にNMRで構造同定を行ったがデータは省略する。
【0172】
<紫外線吸収剤1の製造方法>
300mL三角フラスコに、ジメチルホルムアミドを100部、中間体1を5部、水酸化ナトリウムを1.7部、オクチル2-ブロモプロパン酸を8.5部仕込み、70℃で6時間攪拌した。一方、500mLビーカーに水を200部、35%塩酸を10.0部仕込み、反応液を少しずつ滴下した。30分攪拌後、ろ別し、得られたウェットケーキを水200部中に戻して室温で30分リスラリーを行い、濾別した後、水45gをふりかけ洗浄した。得られたウェットケーキを80℃で終夜乾燥し、紫外線吸収剤1を得た。
【0173】
【0174】
<中間体2の製造方法>
中間体1の製造において、レゾルシノールの代わりに6-ヒドロキシナフタレン-2-カルボン酸を用いた以外は同様な方法で製造し、中間体2を得た。
【0175】
<紫外線吸収剤2の製造方法>
300mL三角フラスコに、N-メチル-2-ピロリドンを100部、中間体2を10部、2-エチルヘキシルグリシジルエーテルを6.5部、3,5-ルチジンを0.3部仕込み、100℃に昇温して4時間撹拌した後、40℃まで降温させ反応液を得た。次いで、前記反応液に、メタノールを100部、35%塩酸を50部、水を50部を少しずつ滴下した。30分攪拌後、ろ別し、得られたウェットケーキをメタノール100部に戻し、30分攪拌後、ろ別した。次いで、得られたウェットケーキを水100部に戻し、30分攪拌後、ろ別した。得られたウェットケーキを60℃で減圧乾燥し、紫外線吸収剤2を得た。
【0176】
【0177】
<中間体3の製造方法>
中間体1の製造において、2-(7-ブロモ-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-4,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジンの代わりに2,4-ジクロロ-6-{11,11-ジメチル-11H-ベンゾ[b]フルオレン-2-イル}-1,3,5-トリアジンを用いた以外は同様な方法で製造し、中間体3を得た。
【0178】
<紫外線吸収剤3の製造方法>
紫外線吸収剤1の製造において、中間体1の代わりに中間体3を用いた以外は同様な方法で製造し、紫外線吸収剤3を得た。
【0179】
【0180】
<中間体4の製造方法>
中間体3の製造において、レゾルシノールの代わりに6-ヒドロキシナフタレン-2-カルボン酸を用いた以外は同様な方法で製造し、中間体4を得た。
【0181】
<紫外線吸収剤4の製造方法>
紫外線吸収剤2の製造において、中間体2の代わりに中間体4を用いた以外は同様な方法で製造し、紫外線吸収剤4を得た。
【0182】
【0183】
<中間体5の製造方法>
中間体1の製造において、2-(7-ブロモ-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-4,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジンの代わりに2,4-ジクロロ-6-(クリセン-2-イル)-1,3,5-トリアジンを用いた以外は同様な方法で製造し、中間体5を得た。
【0184】
<紫外線吸収剤5の製造方法>
紫外線吸収剤1の製造において、中間体1の代わりに中間体5を用いた以外は同様な方法で製造し、紫外線吸収剤5を得た。
【0185】
【0186】
<中間体6の製造方法>
中間体5の製造において、レゾルシノールの代わりに6-ヒドロキシナフタレン-2-カルボン酸を用いた以外は同様な方法で製造し、中間体6を得た。
【0187】
<紫外線吸収剤6の製造方法>
紫外線吸収剤2の製造において、中間体2の代わりに中間体6を用いた以外は同様な方法で製造し、紫外線吸収剤6を得た。
【0188】
【0189】
<中間体7の製造方法>
中間体1の製造において、2-(7-ブロモ-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-4,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジンの代わりに3-(4,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジン-2-イル)アクリジンを用いた以外は同様な方法で製造し、中間体7を得た。
【0190】
<紫外線吸収剤7の製造方法>
紫外線吸収剤1の製造において、中間体1の代わりに中間体7を用いた以外は同様な方法で製造し、紫外線吸収剤7を得た。
【0191】
【0192】
<中間体8の製造方法>
中間体7の製造において、レゾルシノールの代わりに6-ヒドロキシナフタレン-2-カルボン酸を用いた以外は同様な方法で製造し、中間体8を得た。
【0193】
<紫外線吸収剤8の製造方法>
紫外線吸収剤2の製造において、中間体2の代わりに中間体8を用いた以外は同様な方法で製造し、紫外線吸収剤8を得た。
【0194】
【0195】
<中間体9の製造方法>
300mL三角フラスコに、ニトロベンゼンを120部、2-クロロ-4,6-ビス(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-1,3,5-トリアジンを8部、塩化アルミニウムを4.3部仕込み、撹拌して懸濁させた。次に、氷水で冷却しながら、3-ヒドロキシベンゼンチオールを3.0部、少しずつ添加した。その後、徐々に室温に戻しながら終夜撹拌し、反応液を得た。一方、500mLビーカーに水を38.1部、35%塩酸を10.0部、メタノールを45.0部仕込み、反応液を少しずつ滴下した。30分攪拌後、ろ別し、得られたウェットケーキをメタノール100部中に戻して室温で30分リスラリーを行い、濾別した後、水45gをふりかけ洗浄した。得られたウェットケーキを80℃で終夜乾燥し、中間体9を得た。
【0196】
<紫外線吸収剤9の製造方法>
300mL三角フラスコに、アセトニトリルを100部、中間体9を5部、炭酸カリウムを2.5部、ブロモブタンを2.0部仕込み、70℃で6時間攪拌した。一方、500mLビーカーに水を200部、35%塩酸を10.0部仕込み、反応液を少しずつ滴下した。30分攪拌後、ろ別し、得られたウェットケーキを水200部中に戻して室温で30分リスラリーを行い、濾別した後、水45gをふりかけ洗浄した後、カラム精製、再結晶を行うことにより、紫外線吸収剤9を得た。
【0197】
【0198】
<中間体10の製造方法>
中間体9の製造において、3-ヒドロキシベンゼンチオールの代わりに6-ヒドロキシナフタレン-2-カルボン酸を用いた以外は同様な方法で製造し、中間体10を得た。
【0199】
<紫外線吸収剤10の製造方法>
300mL三角フラスコに、N-メチル-2-ピロリドンを150部、中間体10を10部を仕込み、85℃で溶解後、室温に戻した。次いで、N,N-ジメチルホルムアミドを0.5部、塩化チオニルを7.5部仕込み、室温で5分撹拌後、ジ(2-エチルヘキシル)アミンを32.1部仕込み、2時間攪拌して反応液を得た。次いで、メタノール405部、35%塩酸65部の混合液に反応液を少しずつ滴下した。1時間攪拌後、ろ別し、得られたウェットケーキをメタノール450部、水100部の混合液に戻し、30分攪拌後、ろ別した。得られたウェットケーキを80℃で乾燥し、紫外線吸収剤10を得た。
【0200】
【0201】
<中間体11の製造方法>
中間体9の製造において、2-クロロ-4,6-ビス(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-1,3,5-トリアジンの代わりに2,4-ビス(4-{[1,1’-ビフェニル]-4-イル}フェニル)-6-クロロ-1,3,5-トリアジンを用いた以外は同様な方法で製造し、中間体11を得た。
【0202】
<紫外線吸収剤11の製造方法>
紫外線吸収剤9の製造において、中間体9の代わりに中間体11を用いた以外は同様な方法で製造し、紫外線吸収剤11を得た。
【0203】
【0204】
<中間体12の製造方法>
中間体11の製造において、3-ヒドロキシベンゼンチオールの代わりに6-ヒドロキシナフタレン-2-カルボン酸を用いた以外は同様な方法で製造し、中間体12を得た。
【0205】
<紫外線吸収剤12の製造方法>
紫外線吸収剤10の製造において、中間体10の代わりに中間体12を用いた以外は同様な方法で製造し、紫外線吸収剤12を得た。
【0206】
【0207】
<中間体13の製造方法>
中間体9の製造において、2-クロロ-4,6-ビス(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-1,3,5-トリアジンの代わりに2-クロロ-4,6-ビス({8-オキサトリシクロ[7.4.0.02,7]トリデカ-1(13),2(7),3,5,9,11-ヘキサエン-5-イル})-1,3,5-トリアジンを用いた以外は同様な方法で製造し、中間体13を得た。
【0208】
<紫外線吸収剤13の製造方法>
紫外線吸収剤9の製造において、中間体9の代わりに中間体13を用いた以外は同様な方法で製造し、紫外線吸収剤13を得た。
【0209】
【0210】
<中間体14の製造方法>
中間体13の製造において、3-ヒドロキシベンゼンチオールの代わりに6-ヒドロキシナフタレン-2-カルボン酸を用いた以外は同様な方法で製造し、中間体14を得た。
【0211】
<紫外線吸収剤14の製造方法>
紫外線吸収剤10の製造において、中間体10の代わりに中間体14を用いた以外は同様な方法で製造し、紫外線吸収剤14を得た。
【0212】
【0213】
比較例で用いた比較材料は、下記の紫外線吸収剤を使用した。
【0214】
(比較材料1)LA-F70(ADEKA社製、トリアジン系紫外線吸収剤)
【化31】
【0215】
<比較材料中間体2の製造方法>
中間体9の製造において、2-クロロ-4,6-ビス(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-1,3,5-トリアジンの代わりに2,4-ビス({[1,1’-ビフェニル]-4-イル})-6-クロロ-1,3,5-トリアジンを用いた以外は同様な方法で製造し、比較材料中間体2を得た。
【0216】
<比較材料2の製造方法>
紫外線吸収剤9の製造において、中間体9の代わりに比較材料中間体2を用いた以外は同様な方法で製造し、比較材料2を得た。
【0217】
【0218】
<比較材料3の製造方法>
300mL三角フラスコに、クロロベンゼンを160部、2,4-ジクロロ-6-フェニル-1,3,5-トリアジンを8部、塩化アルミニウムを11.8部仕込み、撹拌して懸濁させた。次に、氷水で冷却しながら、2-ナフトールを12.8部、少しずつ添加した。その後、徐々に室温に戻しながら終夜撹拌し、反応液を得た。一方、500mLビーカーに水を38.1部、35%塩酸を10.0部、メタノールを45.0部仕込み、反応液を少しずつ滴下した。30分攪拌後、ろ別し、得られたウェットケーキをメタノール100部中に戻して室温で30分リスラリーを行い、濾別した後、水45gをふりかけ洗浄した。得られたウェットケーキを80℃で終夜乾燥し、比較材料3を得た。
【0219】
【0220】
<比較材料4の製造方法>
300mL三角フラスコに、クロロベンゼンを160部、2-クロロ-4,6-ジ(1-ナフチル)-1,3,5-トリアジンを8部、塩化アルミニウムを5.8部仕込み、撹拌して懸濁させた。次に、氷水で冷却しながら、2-ナフトールを4.8部、少しずつ添加した。その後、徐々に室温に戻しながら終夜撹拌し、反応液を得た。一方、500mLビーカーに水を38.1部、35%塩酸を10.0部、メタノールを45.0部仕込み、反応液を少しずつ滴下した。30分攪拌後、ろ別し、得られたウェットケーキをメタノール100部中に戻して室温で30分リスラリーを行い、濾別した後、水45gをふりかけ洗浄した。得られたウェットケーキを80℃で終夜乾燥し、比較材料4を得た。
【0221】
【0222】
<紫外線吸収剤の評価>
(実施例1-1~1-14、比較例1-1~1-4)
前記紫外線吸収剤1~14、比較材料1~4を用いて、紫外~可視吸収スペクトルを測定して下記紫外線短波長領域の吸収性、紫外線長波長領域の吸収性を評価し実施例1-1~1-14、比較例1-1~1-4を行った。また、吸光度測定用の溶液調整方法、および測定条件は以下の通りである。
【0223】
<溶液調整方法>
紫外線吸収剤1を1部、テトラヒドロフラン1000部を混合し、完全に溶解させた。続いて先の溶解液3部、テトラヒドロフラン97部を均一に混合し、濃度30ppmの溶液を調整した。
【0224】
<測定条件>
装置:U-3500(紫外可視近赤外分光光度計、日立製作所社製)
測定波長:300~700
溶媒:テトラヒドロフラン
濃度:30ppm
【0225】
<紫外線短波長領域の吸収性>
紫外~可視吸収スペクトルの評価基準は以下の通りである。結果を表1に示す。
〇:300~380nmの極大吸収波長の吸光度が1.5以上(実用域)
△:300~380nmの極大吸収波長の吸光度が1.0以上1.5未満(実用域)
×:300~380nmの極大吸収波長の吸光度が1.0未満(実用不可)
【0226】
<透過率5%以下の最大波長>
得られた吸光度を用いて、360~400nmの極大吸収波長における吸光度を1に規格化しAbs(1)を算出した。次いで、下記の計算式で透過率を算出し、透過スペクトルを作成した。
透過率T[%]=0.1n
n=Abs(1)×2
上記計算式を用いて透過率5%以下の最大波長を算出し、下記評価を行った。
【0227】
<紫外線長波長領域の吸収性>
光吸収性の評価基準は以下の通りである。結果を表1に示す。
○:透過率5%以下の最大波長が390nm以上
×:透過率5%未満の最大波長が390nm未満
【0228】
【0229】
表1に示す通り、比較例では紫外線短波長領域の吸収性と紫外線長波長領域の吸収性を両立できていないが、本発明の紫外線吸収剤は優れた紫外線短波長領域の吸収性と紫外線長波長領域の吸収性を有していることがわかった。
【0230】
<塗料>
(実施例2-1)
以下の組成で撹拌混合を行い、塗料を調整した。
紫外線吸収剤1 0.5部
樹脂:ポリエステル(バイロンGK250、東洋紡社製) 9.5部
溶剤:メチルエチルケトン 90.0部
【0231】
(実施例2-2~2-14、比較例2-1~2-6)
表2に示す混合比で、実施例2-1と同様に調整し、それぞれ実施例2-2~2-14、比較例2-1~2-6の塗料を得た。
【0232】
(塗膜の作製)
得られた塗料を厚さ1000μmのガラス基板にバーコーターを用いて乾燥膜厚で10μmとなるよう塗布し、100℃2分で乾燥させて塗膜を形成した。
(塗膜の評価)
得られた塗膜を、以下の方法で評価した。
【0233】
[ブルーライトカット性―1]
得られた塗工物の透過率を、紫外可視近赤外分光光度計を用いて測定し、以下の条件を満たすか否かを評価した。
◎:波長400nmの光透過率が1%未満:非常に良好
〇:波長400nmの光透過率が1%以上5%未満:良好
△:波長400nmの光透過率が5%以上10%未満:実用域
×:波長400nmの光透過率が全領域にわたって10%以上:実用不可
【0234】
[紫外線吸収性―1]
得られた塗工物の透過率を、紫外可視近赤外分光光度計を使用して下記基準で評価した。
◎:波長300~380nmの光透過率が全領域にわたって1%未満:非常に良好
〇:波長300~380nmの光透過率が1%以上5%未満:良好
△:波長300~380nmの光透過率が5%以上10%未満:実用域
×:波長300~380nmの光透過率が10%以上の領域がある:実用不可
【0235】
[透明性]
得られた塗工物の透明性を目視評価した。なお評価基準は以下の通りである。
○:濁りが全く認められない。良好
△:濁りが若干認められる。実用域
×:明らかに濁りが認められる。実用不可
【0236】
[耐光性]
得られた塗工物をキセノンウェザーメーターで、波長300~400nmが60W/m2の照度で100時間暴露した。暴露前後の塗工物の吸光度を、紫外可視近赤外分光光度計を使用して測定し、下記基準で評価した。
〇:極大吸収波長の吸光度の減少率が5%未満:良好
△:極大吸収波長の吸光度の減少率が5%以上、10%未満:実用域
×:極大吸収波長の吸光度の減少率が10%以上:実用不可
【0237】
【0238】
表2に示す通り、本発明の紫外線吸収剤を用いた塗膜は、波長400nm程度の光吸収性が高いためブルーライトカット性に優れる上に、紫外線吸収性にも優れており、広範囲の波長領域をカットすることができる。
また、耐光性が高く、少量添加で実用域に至るため塗工物の透明性を損なわないことがわかった。一方、比較例では本発明の紫外線吸収剤と同量添加してもブルーライトカット性と紫外線吸収性を両立できず、添加量を増やすと透明性が損なわれることがわかった。
【0239】
<光硬化性組成物>
(実施例3-1)
以下の組成で、各原料を撹拌混合し、光硬化性組成物を調整した。
紫外線吸収剤1 1.0部
光重合性化合物(多官能アクリレート「KAYARAD DPHA」日本化薬社製)
18.0部
光重合開始剤(IGM ResinBV製「Omnirad184」)1.0部
溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテル) 80.0部
【0240】
(実施例3-2~3-14、比較例3-1~3-6)
表3に示す混合比で、実施例3-1と同様に調整し、それぞれ実施例3-2~3-14、比較例3-1~3-6の光硬化性組成物を得た。なお、表3には、実施例3-1から変更した成分のみを記入した。
【0241】
(塗膜の作製)
上記の光硬化性組成物をバーコーターを用いて厚さ1mmのガラス基板に乾燥膜厚で6μmとなるよう塗布した。得られた塗布層を、100℃1分で乾燥したのち、高圧水銀ランプで400mJ/cm2の紫外線を照射して硬化し塗工物を作製した。
【0242】
(塗膜の評価)
得られた塗膜を以下評価した。また、ブルーライトカット性、紫外線吸収性、透明性および耐光性を表2と同様に評価した。結果を表3に示す。
【0243】
[耐擦傷性]
塗工物を学振試験機にセットし、スチールウールを用いて、荷重250gで10回学振させた。取り出した塗工物について、キズのつき具合を以下の基準で目視評価した。
5:キズが全くない。:良好
4:僅かにキズが付いている。:実用域
3:キズは付いているが、基材は見えていない。:実用域
2:キズが付き、一部硬化膜が剥がれている。:実用不可
1:硬化膜が剥がれてしまい、基材が剥き出しの状態。:実用不可
【0244】
[鉛筆硬度]
JIS-K5600に準拠し、鉛筆硬度試験機(HEIDON社製Scratching Tester HEIDON-14)を用い、鉛筆の芯の硬さを種々変えて、塗工物の硬化膜に対して荷重500gにて5回試験をした。5回中、1回も傷がつかない、もしくは1回のみ傷が付く時の芯の硬さを、その硬化膜の鉛筆硬度とした。評価基準は以下の通りである。
A:2H以上。
B:H。
C:Hより低い。
【0245】
【0246】
表3に示す通り、本発明の紫外線吸収剤を用いた塗膜は、波長400nm程度の光吸収性が高いためブルーライトカット性に優れる上に、紫外線吸収性にも優れており、広範囲の波長領域をカットすることができる。また、耐光性が高く、少量添加で実用域に至るため塗工物の透明性を損なわず、耐擦傷性、鉛筆硬度も有している。一方、比較例では本発明の紫外線吸収剤と同量添加してもブルーライトカット性と紫外線吸収性を両立できず、添加量を増やすと透明性が損なわれることがわかった。
【0247】
<粘着剤>
(粘着性樹脂の製造例L-1)
攪拌機、還流冷却機、窒素導入管、温度計、滴下管を備えた反応装置を使用して、窒素雰囲気下にてn-ブチルアクリレート96.0部と、2-ヒドロキシルエチルアクリレート4.0部の合計量のうちの50%、及び重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチルニトリルを0.2部、溶剤として酢酸エチルを150部反応槽に仕込み、前記合計量の残りの50%と適量の酢酸エチルを滴下槽に仕込んだ。次いで、加熱を開始して反応槽内での反応開始を確認してから、還流下、滴下管の内容物、及び0.01部の2,2’-アゾビスイソブチルニトリルの酢酸エチル希釈液を滴下した。滴下終了後、還流状態を維持したまま5時間反応を行った。反応終了後、冷却し、適量の酢酸エチルを添加することで、アクリル系樹脂である粘着性樹脂の製造例F-1を得た。得られた製造例F-1の粘着剤樹脂の重量平均分子量は50万、不揮発分は40%、粘度は3,200mPa・sであった。
【0248】
(粘着性樹脂の製造例L-2)
攪拌機、還流冷却機、窒素導入管、温度計、滴下管を備えた反応装置を使用して、窒素雰囲気下にてn-ブチルアクリレート96.0部と、アクリル酸4.0部の合計量のうちの50%、及び重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチルニトリルを0.2部、溶剤として酢酸エチルを150部反応槽に仕込み、前記合計量の残りの50%と適量の酢酸エチルを滴下槽に仕込んだ。次いで、加熱を開始して反応槽内での反応開始を確認してから、還流下、滴下管の内容物、及び0.01部の2,2’-アゾビスイソブチルニトリルの酢酸エチル希釈液を滴下した。滴下終了後、還流状態を維持したまま5時間反応を行った。反応終了後、冷却し、適量の酢酸エチルを添加することで、アクリル系樹脂である粘着性樹脂の製造例F-2を得た。得られた製造例F-2の粘着剤樹脂の重量平均分子量は60万、不揮発分は40%、粘度は4,000mPa・sであった。
【0249】
(実施例4-1)
粘着性樹脂として、製造例L-1の粘着性樹脂の不揮発分100部に対して、紫外線吸収剤1を1.0部を混合し、シランカップリング剤としてKBM-403(信越化学工業製)を0.1部、硬化剤としてトリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体(略号:TDI-TMP、NCO量=13.2%、不揮発分=75%)を0.4部加え、よく攪拌し粘着剤を得た。その後、この粘着剤を厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート基材の剥離フィルム上に、乾燥後の厚みが50μmになるように塗布し、100℃の熱風オーブンで2分間乾燥させた。そして、粘着剤層側に25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを貼り合せ、この状態で室温にて7日間エージングさせ、粘着シートを得た。
【0250】
(実施例4-2~4-14、比較例4-1~4-6)
表4に示す混合比で、実施例4-1と同様に調整して、それぞれ実施例4-2~5-14、比較例4-1~5-6の粘着シートを得た。
【0251】
(粘着シートの評価)
得られた粘着シートを以下評価した。また、ブルーライトカット性、紫外線吸収性、透明性および耐光性を表2と同様に評価した。結果を表4に示す。
[粘着力]
得られた粘着シートを幅25mm・縦150mmの大きさに準備した。23℃、相対湿度50%雰囲気下、前記粘着シートから剥離性フィルムを剥がして露出した粘着剤層をガラス板に貼り付け、2kgロールで1往復圧着した。24時間放置した後に引張試験機を用いて180度方向に300mm/分の速度で引き剥がす180°ピール試験において粘着力を測定し、下記の評価基準に基づいて評価を行った。(JIS Z0237:2000に準拠)
○:「粘着力が10N以上であり、良好。」
×:「粘着力が10N未満であり、実用不可。」
【0252】
[保持力]
得られた粘着シートを幅25mm・縦150mmの大きさに準備した。JIS Z0237:2000に準拠して前記粘着シートから剥離性シートを剥がして、研磨した幅30mm・縦150mmのステンレス板の下端部幅25mm・横25mmの部分に粘着剤層を貼着し、2kgロールで1往復圧着した後、40℃雰囲気で1kgの荷重をかけ、7万秒放置することで保持力を測定した。評価は、粘着シート貼付面上端部が下にずれた長さを測定した。
評価基準
○:「粘着シートのずれた長さが0.5mm未満である。良好。」
×:「粘着シートのずれた長さが0.5mm以上である。実用不可。」
【0253】
【0254】
表4に示す通り、本発明の紫外線吸収剤を用いた塗膜は、波長400nm程度の光吸収性が高いためブルーライトカット性に優れる上に、紫外線吸収性にも優れており、広範囲の波長領域をカットすることができる。また、耐光性が高く、少量添加で実用域に至るため塗工物の透明性を損なわず、良好な粘着力と保持力もある。一方、比較例では本発明の紫外線吸収剤と同量添加してもブルーライトカット性と紫外線吸収性を両立できず、添加量を増やすと透明性が損なわれることがわかった。
【0255】
<成形体>
実施例で使用した熱可塑性樹脂を以下に示す。
(F-1)ポリエチレン(サンテックLD M2270、MFR=7g/10min、旭化成ケミカルズ社製)
(F-2)ポリエチレン(ノバテックUJ790、MFR=50g/10min、日本ポリエチレン社製)
(F-3)ポリプロピレン(ノバテックPP FA3EB、MFR=10.5g/10min、日本ポリプロ社製)
(F-4)ポリプロピレン(プライムポリプロJ226T、MFR=20g/10min、プライムポリマー社製)
(G-1)ポリエステルMA-2101M(ポリエステル、ユニチカ社製、結晶性樹脂、融点264℃、MFR45g/10min(280℃/2.16kg))
(G-2)ユーピロンS-3000(ポリカーボネート樹脂、三菱エンジニアリングプラスチック社製、非晶性樹脂、ガラス転移温度145℃、MFR15g/10min(300℃/1.2kg))
(G-3)トパス6013M-07(シクロオレフィン樹脂、ポリプラスチックス社製、非晶性樹脂、ガラス転移温度142℃、MFR13g/10min(260℃/2.16kg))
(G-4)アペル(シクロオレフィン樹脂、三井化学社製、非晶性樹脂、ガラス転移温度135℃、MFR11g/10min以上(260℃/2.16kg))
(G-5)アミランCM3001-N(ポリアミド、東レ社製、結晶性樹脂、融点265℃、MFR7g/10min以上(235℃/2.16kg))
(G-6)ULTEM(ポリエーテルイミド、サウジ基礎産業公社製、非晶性樹脂、ガラス転移温度217℃、MFR8g/10min以上(337℃/6.6kg))
【0256】
(実施例5-1)
<マスターバッチの製造>
紫外線吸収剤1を2部と、ポリオレフィン樹脂(F-1)98部とを同じ供給口からスクリュー径30mmの二軸押出機(日本製鋼所社製)に投入し、240℃で溶融混錬した上で、ペレタイザーを用いてペレット状にカッティングしてマスターバッチ(K-1)を作製した。
【0257】
<フィルム成形>
希釈樹脂のポリオレフィン樹脂(F-1)90部に対して、得られたマスターバッチ(D-1)10部を混合し、T-ダイ成形機(東洋精機社製)を用いて、温度180℃で溶融混合し、厚さ250μmのフィルム(X-1)を成形した。
【0258】
(実施例5-2~5-14、比較例5-1~5-6)
実施例5-1と同様に、表5記載の材料を用いて、厚さ250μmのフィルム(X-2)~(X-14)、(XX-1)~(XX-6)を成形した。
【0259】
(実施例5-15)
<マスターバッチの製造>
紫外線吸収色素1を2部と、ポリエステル(G-1)98部とを同じ供給口からスクリュー径30mmの二軸押出機(日本製鋼所社製)に投入し、240℃で溶融混錬した上で、ペレタイザーを用いてペレット状にカッティングしてマスターバッチ(K-15)を作製した。
【0260】
<フィルム成形>
希釈樹脂のポリエステル(G-1)95部に対して、得られたマスターバッチ(K-15)10部を混合し、T-ダイ成形機(東洋精機社製)を用いて、温度180℃で溶融混合し、厚さ250μmのフィルム(X-15)を成形した。
【0261】
(実施例5-15~5-28、比較例5-7~5-12)
実施例5-15と同様に、表5記載の材料を用いて、厚さ250μmのフィルム(X-15)~(X-28)、(XX-7)~(XX-12)を成形した。
【0262】
得られたフィルムを以下評価した。また、ブルーライトカット性、紫外線吸収性、透明性および耐光性を表2と同様に評価した。結果を表5に示す。
【0263】
【0264】
表5に示す通り、本発明の紫外線吸収剤を用いた塗膜は、400nm程度の光吸収性が高いためブルーライトカット性に優れる上に、紫外線吸収性にも優れており、広範囲の波長領域をカットすることができる。また、耐光性が高く、少量添加で実用域に至るため塗工物の透明性も高いことがわかった。一方、比較例では本発明の紫外線吸収剤と同量添加してもブルーライトカット性と紫外線吸収性を両立できず、添加量を増やすと透明性が損なわれることがわかった。
【0265】
<金属成分含有量による紫外線吸収性およびブルーライトカット性評価>
<紫外線吸収剤15の製造方法>
300mL三角フラスコに、ニトロベンゼンを120部、2-クロロ-4,6-ビス(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-1,3,5-トリアジンを8部、塩化アルミニウムを4.3部仕込み、撹拌して懸濁させた。次に、氷水で冷却しながら、2-ナフトールを3.5部、少しずつ添加した。その後、徐々に室温に戻しながら終夜撹拌し、反応液(A‘-1)を得た。一方、500mLビーカーに水を38.1部、35%塩酸を10.0部、メタノールを45.0部仕込み、反応液(A‘-1)を少しずつ滴下した。30分攪拌後、ろ別し、紫外線吸収剤15を含むウェットケーキ(a-1)を得た。
【0266】
【0267】
<紫外線吸収剤16~21の製造方法>
【0268】
<紫外線吸収剤16の製造方法>
[紫外線吸収剤16]
前記ウェットケーキ(a-1)を80℃で終夜乾燥し、前記一般式(1)で示される紫外線吸収剤15を含む紫外線吸収剤16を得た。
【0269】
[紫外線吸収剤17]
前記ウェットケーキ(a-1)に、メタノール45gをふりかけ洗浄し、濾別してウェットケーキ(a-2)を得た。得られたウェットケーキを80℃で終夜乾燥し、紫外線吸収剤15を含む紫外線吸収剤17を得た。
【0270】
[紫外線吸収剤18]
前記ウェットケーキ(a-2)をメタノール100g中に戻して室温で30分リスラリーを行い、濾別してウェットケーキ(a-3)を得た。得られたウェットケーキを80℃で終夜乾燥し、紫外線吸収剤15を含む紫外線吸収剤18を得た。
【0271】
[紫外線吸収剤19]
前記ウェットケーキ(a-3)を得た後、水45gをふりかけ洗浄し、濾別してウェットケーキ(a-4)を得た。得られたウェットケーキを80℃で終夜乾燥し、紫外線吸収剤15を含む紫外線吸収剤19を得た。
【0272】
[紫外線吸収剤20]
前記ウェットケーキ(a-4)を水150g中に戻して室温で30分リスラリーを行い、濾別してウェットケーキ(a-5)を得た。得られたウェットケーキを80℃で終夜乾燥し、紫外線吸収剤15を含む紫外線吸収剤20を得た。
【0273】
<紫外線吸収剤21の製造方法>
[紫外線吸収剤21]
前記反応液(A‘-1)に水を加えて抽出・分液操作を行い、得られた有機層に5%重曹水と飽和食塩水を加えて分液した。得られた有機層を減圧濃縮し紫外線吸収剤21を得た。
【0274】
(金属成分の測定方法)
本発明の紫外線吸収剤の金属成分の測定には、ICP発光分析を用いた。
<測定条件>
紫外線吸収剤16を約0.2g精秤し、マイクロウェーブ試料前処理装置(Milestone General社製 MLS-1200MEGA)で分解処理(分解試薬として精密分析用硝酸2mLを添加)を行った。次いで 得られた分解液に超純水を加え、濾過した後の濾液25mLをメスフラスコで定容する。 この溶液をICP発光分析(バリアン社製、720-ES ICP オプティカル・エミッション・スペクトロメーター)で測定し、金属イオンを定量した。尚、本実施例で示す金属成分の含有量とは、Na、Mg、Al、K、Ca、およびFeの各イオンの含有量の合計値を意味する。
紫外線吸収剤16の金属分析を行った結果、Na:2115ppm、Mg:803ppm、Al:44953ppm、K:137ppm、Ca:3299ppm、Fe:529ppmの結果が得られた。金属成分の合計値は、51836ppmであった。
【0275】
上記の通り、本明細書では紫外線吸収剤16を例にしてICP発光分析による金属量の測定を行った。紫外線吸収剤17~21も同様に評価し実施例6-1~6-6を行った。結果を表6に示す。
【0276】
<溶液分光>
実施例1-1と同様に、紫外線吸収剤16~21を用いて、それぞれブルーライトカット性、紫外線吸収性、を評価し実施例6-1~6-6を行った。結果を表6に示す。
【0277】
<紫外線吸収性-2>
紫外~可視吸収スペクトルの評価基準は以下の通りである。
〇:300~380nmの極大吸収波長の吸光度が1.5以上
△:300~380nmの極大吸収波長の吸光度が1.0以上1.5未満
×:300~380nmの極大吸収波長の吸光度が1.0未満
【0278】
<ブルーライトカット性-2>
紫外~可視吸収スペクトルの評価基準は以下の通りである。
◎:400nmの吸光度が0.8以上
〇:400nmの吸光度が0.4以上、0.8未満
△:400nmの吸光度が0.2以上、0.4未満
×:400nmの吸光度が0.2未満
【0279】
【0280】
表6に示す通り、金属成分が50000ppm以下の場合、紫外線吸収性とブルーライトカット性が特に良好であることがわかった。また、金属成分が10000ppm以下では、さらに吸収性が良好であった。
【0281】
(実施例7-1)
<マスターバッチの製造>
紫外線吸収剤16を2部と、ポリエステル(G-1)98部とを同じ供給口からスクリュー径30mmの二軸押出機(日本製鋼所社製)に投入し、240℃で溶融混錬した上で、ペレタイザーを用いてペレット状にカッティングしてマスターバッチ(K-29)を作製した。
【0282】
<フィルム成形>
希釈樹脂のポリエステル(G-1)95部に対して、得られたマスターバッチ(K-29)10部を混合し、T-ダイ成形機(東洋精機社製)を用いて、温度180℃で溶融混合し、厚さ250μmのフィルム(X-29)を成形した。
【0283】
(実施例7-2~7-6)
実施例7-1と同様に、表7記載の材料を用いて、厚さ250μmのフィルム(X-30)~(X-34)を成形した。
【0284】
得られたフィルムをに対して、ブルーライトカット性、紫外線吸収性および透明性を表2と同様に評価した。結果を表7に示す。
【0285】
[耐光性-2]
得られたフィルムをキセノンウェザーメーターで、300~400nmが60W/m2の照度で500時間暴露した。暴露前後のフィルムの吸光度を、紫外可視近赤外分光光度計を使用して測定し、下記基準で評価した。
◎:極大吸収波長の吸光度の減少率が2%未満:良好
〇:極大吸収波長の吸光度の減少率が2%以上、5%未満:良好
△:極大吸収波長の吸光度の減少率が5%以上、10%未満:実用域
×:極大吸収波長の吸光度の減少率が10%以上:実用不可
【0286】
【0287】
表7に示す通り、金属成分が0.1ppm以上50000ppm以下の本発明の紫外線吸収剤を用いた成形体は、紫外線吸収性とブルーライトカット性が特に良好であり、耐光性が高い。また、少量添加で実用域に至るためフィルムの透明性も高いことがわかった。
【0288】
(実施例8-1)
<マスターバッチの製造>
紫外線吸収剤16を2部と熱可塑性樹脂(G-1)98部とを同じ供給口からスクリュー径30mmの二軸押出機(日本製鋼所社製)に投入し、300℃で溶融混錬した上で、ペレタイザーを用いてペレット状にカッティングしてマスターバッチ(K-29)を作製した。
【0289】
<フィルム成形>
希釈樹脂の熱可塑性樹脂(G-1)90部に対して、得られたマスターバッチ(K-29)10部を混合し、T-ダイ成形機(東洋精機社製)を用いて、温度300℃で溶融混合した。次いで、10分間300℃で滞留させた。その後、厚さ250μmのフィルム(Y-1)を成形した。
【0290】
(実施例8-2~8-6)
実施例8-1と同様に、表8記載の材料を用いて、厚さ250μmのフィルム(Y-2)~(Y-6)を成形した。
【0291】
[滞留後のブルーライトカット性]
得られたフィルムの透過率を、紫外可視近赤外分光光度計(島津製作所社製)を用いて測定し、以下の条件を満たすか否かを評価した。
◎:波長400nmの光透過率が1%未満:非常に良好
〇:波長400nmの光透過率が1%以上5%未満:良好
△:波長400nmの光透過率が5%以上10%未満:実用域
×:波長400nmの光透過率が全領域にわたって10%以上:実用不可
【0292】
[耐熱性]
得られたフィルム(Y-1)~(Y-6)について、実施例(7-1)~(7-6)、で得られたフィルム(X-29)~(X-34)との紫外線吸収性の差を比較し評価した。評価基準は以下の通りである。
◎:波長400nmの光透過率の差が1%未満:良好
〇:波長400nmの光透過率の差が1%以上5%未満:実用域
△:波長400nmの光透過率の差が5%以上10%未満:実用不可
×:波長400nmの光透過率の差が10%以上:実用不可
【0293】
なお、実施例8-1~8-6の原料および配合比は、それぞれ実施例7-1~7-6と同一であるため表8には結果のみを記載する。
【0294】
【0295】
表8に示す通り、金属成分が0.1ppm以上50000ppm以下の本発明の紫外線吸収剤を用いた成形体は、フィルム成形時の溶融混合時の滞留時間によるブルーライトカット性の変化率が特に小さい。よって良好な耐熱性を保有していることが確認された。