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特開2024-92317偏光変調素子、スマートガラス、マジックミラー、表示装置及び立体画像表示装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092317
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】偏光変調素子、スマートガラス、マジックミラー、表示装置及び立体画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/13 20060101AFI20240701BHJP
   G02F 1/1347 20060101ALI20240701BHJP
   G02B 30/54 20200101ALN20240701BHJP
   G02B 30/52 20200101ALN20240701BHJP
【FI】
G02F1/13 505
G02F1/1347
G02B30/54
G02B30/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208153
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】518078142
【氏名又は名称】上海天馬微電子有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100183955
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 悟郎
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100180334
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 洋美
(74)【代理人】
【識別番号】100177149
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 浩義
(74)【代理人】
【識別番号】100174067
【弁理士】
【氏名又は名称】湯浅 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136342
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 成美
(72)【発明者】
【氏名】田代 哲朗
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 哲史
【テーマコード(参考)】
2H088
2H189
2H199
【Fターム(参考)】
2H088EA10
2H088EA33
2H088EA34
2H088EA47
2H088GA02
2H088GA11
2H088HA02
2H088HA03
2H088HA24
2H088JA05
2H088KA26
2H088MA10
2H189AA30
2H189AA32
2H189LA03
2H189LA05
2H199BA26
2H199BA28
2H199BB09
2H199BB52
(57)【要約】
【課題】応答時間を短くでき、入射する直線偏光光の散乱を抑制できる、偏光変調素子、スマートガラス、マジックミラー、表示装置及び立体画像表示装置を提供する。
【解決手段】偏光変調素子10は、直線偏光光L1が入射する光入射側基板102と、光入射側基板102に対向する光出射側基板104と、光入射側基板102と光出射側基板104に挟持され、ねじれ配向されたネマティック液晶層106と、ネマティック液晶層106の内に分散し、ネマティック液晶層106のねじれ配向に倣って配向している重合体108と、を備える。光入射側基板102の配向軸方向と直線偏光光L1の偏光方向が直交している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線偏光光が入射する光入射側基板と、
前記光入射側基板に対向する光出射側基板と、
前記光入射側基板と前記光出射側基板に挟持され、ねじれ配向されたネマティック液晶層と、
前記ネマティック液晶層の内に分散し、前記ネマティック液晶層のねじれ配向に倣って配向している重合体と、を備え、
前記光入射側基板の配向軸方向と前記直線偏光光の偏光方向が直交している、
偏光変調素子。
【請求項2】
前記ネマティック液晶層のねじれ角が90°である、
請求項1に記載の偏光変調素子。
【請求項3】
前記重合体の含有量が、前記ネマティック液晶層を形成するネマティック液晶組成物に対して1重量%以上10重量%以下である、
請求項1に記載の偏光変調素子。
【請求項4】
光入射側基板と、前記光入射側基板に対向する光出射側基板と、前記光入射側基板と前記光出射側基板に挟持され、ねじれ配向されたネマティック液晶層と、前記ネマティック液晶層の内に分散し、前記ネマティック液晶層のねじれ配向に倣って配向している重合体とを有する、複数のねじれネマティック液晶セルを備え、
前記複数のねじれネマティック液晶セルの前記ネマティック液晶層のねじれ方向は、同じであり、
前記複数のねじれネマティック液晶セルは、一方の前記ねじれネマティック液晶セルの前記光入射側基板と他方の前記ねじれネマティック液晶セルの前記光出射側基板とを対向させて、順次積層され、
前記ねじれネマティック液晶セルの間において、一方の前記ねじれネマティック液晶セルの前記光出射側基板の配向軸方向と、他方の前記ねじれネマティック液晶セルの前記光入射側基板の配向軸方向は一致し、
前記複数のねじれネマティック液晶セルのうちの、直線偏光光が入射する1番目の前記ねじれネマティック液晶セルの前記光入射側基板の配向軸方向と、前記直線偏光光の偏光方向は直交している、
偏光変調素子。
【請求項5】
前記ねじれネマティック液晶セルの前記ネマティック液晶層のそれぞれのねじれ角の和が、90°である、
請求項4に記載の偏光変調素子。
【請求項6】
前記重合体の含有量が、前記ネマティック液晶層を形成するネマティック液晶組成物に対して1重量%以上10重量%以下である、
請求項4に記載の偏光変調素子。
【請求項7】
光入射側基板と、前記光入射側基板に対向する光出射側基板と、前記光入射側基板と前記光出射側基板に挟持され、ねじれ配向されたネマティック液晶層と、前記ネマティック液晶層の内に分散し、前記ネマティック液晶層のねじれ配向に倣って配向している重合体とを有する、3つ以上のねじれネマティック液晶セルを備え、
前記ねじれネマティック液晶セルの前記ネマティック液晶層のねじれ方向は、同じであり、
前記ねじれネマティック液晶セルは、一方の前記ねじれネマティック液晶セルの前記光入射側基板と他方の前記ねじれネマティック液晶セルの前記光出射側基板とを対向させて、順次積層され、
少なくとも1つの前記ねじれネマティック液晶セルの間において、一方の前記ねじれネマティック液晶セルの前記光出射側基板の配向軸方向と、他方の前記ねじれネマティック液晶セルの前記光入射側基板の配向軸方向が直交し、
前記少なくとも1つの前記ねじれネマティック液晶セルの間を除く、前記ねじれネマティック液晶セルの間において、一方の前記ねじれネマティック液晶セルの前記光出射側基板の配向軸方向と、他方の前記ねじれネマティック液晶セルの前記光入射側基板の配向軸方向は一致し、
前記ねじれネマティック液晶セルのうちの、直線偏光光が入射する1番目の前記ねじれネマティック液晶セルの前記光入射側基板の配向軸方向と、前記直線偏光光の偏光方向は直交している、
偏光変調素子。
【請求項8】
前記ねじれネマティック液晶セルの前記ネマティック液晶層のそれぞれのねじれ角の和が、90°である、
請求項7に記載の偏光変調素子。
【請求項9】
前記重合体の含有量が、前記ネマティック液晶層を形成するネマティック液晶組成物に対して1重量%以上10重量%以下である、
請求項7に記載の偏光変調素子。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の偏光変調素子と、
前記偏光変調素子の前記直線偏光光が入射する側に配置され、外光が入射する透光性基板と、
前記透光性基板と前記偏光変調素子との間に配置され、前記透光性基板を透過した前記外光を前記偏光変調素子に入射する前記直線偏光光として、前記偏光変調素子に出射する第1偏光板と、
前記偏光変調素子から出射された出射光が入射し、透過軸が前記第1偏光板の透過軸と直交している第2偏光板と、を備える、
スマートガラス。
【請求項11】
請求項1から9のいずれか1項に記載の偏光変調素子と、
前記偏光変調素子の前記直線偏光光が入射する側に配置され、外光が入射するハーフミラーと、
前記ハーフミラーと前記偏光変調素子との間に配置され、前記ハーフミラーを透過した前記外光を前記偏光変調素子に入射する前記直線偏光光として、前記偏光変調素子に出射する第1偏光板と、
前記偏光変調素子から出射された出射光が入射し、透過軸が前記第1偏光板の透過軸と直交している第2偏光板と、を備える、
マジックミラー。
【請求項12】
請求項1から9のいずれか1項に記載の偏光変調素子と、
前記偏光変調素子の前記直線偏光光が入射する側に配置され、前記偏光変調素子に向かって表示光を出射する表示パネルと、
前記偏光変調素子と前記表示パネルとの間に配置され、前記表示パネルの前記表示光を前記偏光変調素子に入射する前記直線偏光光として出射する第1偏光板と、
前記偏光変調素子から出射された出射光が入射し、透過軸が前記第1偏光板の透過軸と直交している第2偏光板と、
前記第2偏光板を透過した前記偏光変調素子の前記出射光が入射するハーフミラーと、を備える、
表示装置。
【請求項13】
請求項1から9のいずれか1項に記載の偏光変調素子と、
第1画像と第2画像とを順次に表示し、前記第1画像の表示光と前記第2画像の表示光とを、偏光方向が所定の第1方向である、前記偏光変調素子に入射する前記直線偏光光として出射する表示ユニットと、
前記偏光変調素子から出射された出射光が入射し、前記偏光変調素子から出射された前記出射光に対する焦点距離が、前記出射光の偏光方向によって異なる偏光二焦点レンズと、を備え、
前記第1画像と前記第2画像は、表示対象を、観察者から見て奥行き方向の異なる位置に位置する第1表示面と第2表示面のそれぞれに、前記観察者の側から投影した二次元画像であり、
前記偏光変調素子は、前記直線偏光光が前記第1画像の表示光である場合に、前記直線偏光光の偏光方向を前記所定の第1方向に維持して出射し、前記直線偏光光が前記第2画像の表示光である場合に、前記直線偏光光の偏光方向を前記所定の第1方向に直交する第2方向に変えて出射して、前記出射光の偏光方向を前記所定の第1方向と前記第2方向とに切り替えて出射し、
前記偏光二焦点レンズは、前記第1画像と前記第2画像のそれぞれを、前記第1表示面と前記第2表示面のそれぞれに、虚像として結像させる、
立体画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、偏光変調素子、スマートガラス、マジックミラー、表示装置及び立体画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ねじれネマティック液晶を利用した偏光変調素子を備える、表示装置、光スイッチ、光路偏向素子等が知られている。例えば、特許文献1は、2つの二次元画像を交互に表示する表示装置と、表示装置からの出射光を偏光光として出射する偏光板と、偏光板から出射された出射光の偏光方向を切り替える偏光切替装置(偏光変調素子)と、偏光型二焦点レンズとを備える三次元表示装置を開示している。また、特許文献2は、第1~第4の基板を有し、第1と第2基板間および第3と第4基板間に光路偏向用液晶層が設けられ、第2と第3基板間に直線偏光の偏光面を回転させる偏光面回転用液晶層が設けられた、光路偏向素子を開示している。特許文献2の偏光面回転用液晶層は、ツイストネマティック液晶層である。特許文献2では、液晶層の配向を安定化するために、高分子材料が液晶層に含有されている。高分子材料は、鎖状または3次元網目状の形状を有しており、液晶層に均一に分散されている。
【0003】
一方、応答時間を短縮するために、液晶組成物に重合体を含有させた液晶表示素子が知られている。例えば、特許文献3は、透明基板間に挟持した液晶組成物中に重合性化合物の重合体又は共重合体を含有する、液晶表示素子(光散乱型のものは除く)を開示している。特許文献3では、重合体又は共重合体はポリマーネットワークを形成し、ポリマーネットワークの光軸方向又は配向容易軸方向と低分子液晶の配向容易軸方向が、同一方向である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-129983号公報
【特許文献2】特開2009-14843号公報
【特許文献3】特許第6090482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2と特許文献3の素子は入射光を散乱させる素子ではなく、特許文献2と特許文献3の素子では、入射光の散乱について何ら考慮されていない。また、特許文献2と特許文献3は、入射光の散乱について何ら開示していない。
【0006】
本開示は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、応答時間を短くでき、入射する直線偏光光の散乱を抑制できる、偏光変調素子、スマートガラス、マジックミラー、表示装置及び立体画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、第1の観点に係る偏光変調素子は、
直線偏光光が入射する光入射側基板と、
前記光入射側基板に対向する光出射側基板と、
前記光入射側基板と前記光出射側基板に挟持され、ねじれ配向されたネマティック液晶層と、
前記ネマティック液晶層の内に分散し、前記ネマティック液晶層のねじれ配向に倣って配向している重合体と、を備え、
前記光入射側基板の配向軸方向と前記直線偏光光の偏光方向が直交している。
【0008】
第2の観点に係る偏光変調素子は、
光入射側基板と、前記光入射側基板に対向する光出射側基板と、前記光入射側基板と前記光出射側基板に挟持され、ねじれ配向されたネマティック液晶層と、前記ネマティック液晶層の内に分散し、前記ネマティック液晶層のねじれ配向に倣って配向している重合体とを有する、複数のねじれネマティック液晶セルを備え、
前記複数のねじれネマティック液晶セルの前記ネマティック液晶層のねじれ方向は、同じであり、
前記複数のねじれネマティック液晶セルは、一方の前記ねじれネマティック液晶セルの前記光入射側基板と他方の前記ねじれネマティック液晶セルの前記光出射側基板とを対向させて、順次積層され、
前記ねじれネマティック液晶セルの間において、一方の前記ねじれネマティック液晶セルの前記光出射側基板の配向軸方向と、他方の前記ねじれネマティック液晶セルの前記光入射側基板の配向軸方向は一致し、
前記複数のねじれネマティック液晶セルのうちの、直線偏光光が入射する1番目の前記ねじれネマティック液晶セルの前記光入射側基板の配向軸方向と、前記直線偏光光の偏光方向は直交している。
【0009】
第3の観点に係る偏光変調素子は、
光入射側基板と、前記光入射側基板に対向する光出射側基板と、前記光入射側基板と前記光出射側基板に挟持され、ねじれ配向されたネマティック液晶層と、前記ネマティック液晶層の内に分散し、前記ネマティック液晶層のねじれ配向に倣って配向している重合体とを有する、3つ以上のねじれネマティック液晶セルを備え、
前記ねじれネマティック液晶セルの前記ネマティック液晶層のねじれ方向は、同じであり、
前記ねじれネマティック液晶セルは、一方の前記ねじれネマティック液晶セルの前記光入射側基板と他方の前記ねじれネマティック液晶セルの前記光出射側基板とを対向させて、順次積層され、
少なくとも1つの前記ねじれネマティック液晶セルの間において、一方の前記ねじれネマティック液晶セルの前記光出射側基板の配向軸方向と、他方の前記ねじれネマティック液晶セルの前記光入射側基板の配向軸方向が直交し、
前記少なくとも1つの前記ねじれネマティック液晶セルの間を除く、前記ねじれネマティック液晶セルの間において、一方の前記ねじれネマティック液晶セルの前記光出射側基板の配向軸方向と、他方の前記ねじれネマティック液晶セルの前記光入射側基板の配向軸方向は一致し、
前記ねじれネマティック液晶セルのうちの、直線偏光光が入射する1番目の前記ねじれネマティック液晶セルの前記光入射側基板の配向軸方向と、前記直線偏光光の偏光方向は直交している。
【0010】
第4の観点に係るスマートガラスは、
上記の偏光変調素子と、
前記偏光変調素子の前記直線偏光光が入射する側に配置され、外光が入射する透光性基板と、
前記透光性基板と前記偏光変調素子との間に配置され、前記透光性基板を透過した前記外光を前記偏光変調素子に入射する前記直線偏光光として、前記偏光変調素子に出射する第1偏光板と、
前記偏光変調素子から出射された出射光が入射し、透過軸が前記第1偏光板の透過軸と直交している第2偏光板と、を備える。
【0011】
第5の観点に係るマジックミラーは、
上記の偏光変調素子と、
前記偏光変調素子の前記直線偏光光が入射する側に配置され、外光が入射するハーフミラーと、
前記ハーフミラーと前記偏光変調素子との間に配置され、前記ハーフミラーを透過した前記外光を前記偏光変調素子に入射する前記直線偏光光として、前記偏光変調素子に出射する第1偏光板と、
前記偏光変調素子から出射された出射光が入射し、透過軸が前記第1偏光板の透過軸と直交している第2偏光板と、を備える。
【0012】
第6の観点に係る表示装置は、
上記の偏光変調素子と、
前記偏光変調素子の前記直線偏光光が入射する側に配置され、前記偏光変調素子に向かって表示光を出射する表示パネルと、
前記偏光変調素子と前記表示パネルとの間に配置され、前記表示パネルの前記表示光を前記偏光変調素子に入射する前記直線偏光光として出射する第1偏光板と、
前記偏光変調素子から出射された出射光が入射し、透過軸が前記第1偏光板の透過軸と直交している第2偏光板と、
前記第2偏光板を透過した前記偏光変調素子の前記出射光が入射するハーフミラーと、を備える。
【0013】
第7の観点に係る立体画像表示装置は、
上記の偏光変調素子と、
第1画像と第2画像とを順次に表示し、前記第1画像の表示光と前記第2画像の表示光とを、偏光方向が所定の第1方向である、前記偏光変調素子に入射する前記直線偏光光として出射する表示ユニットと、
前記偏光変調素子から出射された出射光が入射し、前記偏光変調素子から出射された前記出射光に対する焦点距離が、前記出射光の偏光方向によって異なる偏光二焦点レンズと、を備え、
前記第1画像と前記第2画像は、表示対象を、観察者から見て奥行き方向の異なる位置に位置する第1表示面と第2表示面のそれぞれに、前記観察者の側から投影した二次元画像であり、
前記偏光変調素子は、前記直線偏光光が前記第1画像の表示光である場合に、前記直線偏光光の偏光方向を前記所定の第1方向に維持して出射し、前記直線偏光光が前記第2画像の表示光である場合に、前記直線偏光光の偏光方向を前記所定の第1方向に直交する第2方向に変えて出射して、前記出射光の偏光方向を前記所定の第1方向と前記第2方向とに切り替えて出射し、
前記偏光二焦点レンズは、前記第1画像と前記第2画像のそれぞれを、前記第1表示面と前記第2表示面のそれぞれに、虚像として結像させる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、ネマティック液晶層の内に分散しネマティック液晶層のねじれ配向に倣って配向している重合体を備え、直線偏光光の偏光方向と直線偏光光が入射する光入射側基板の配向軸方向が直交しているので、応答時間を短くでき、入射する直線偏光光の散乱を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態1に係る偏光変調素子の断面を示す模式図である。
図2】実施形態1に係る配向軸方向を示す模式図である。
図3】実施形態1に係るネマティック液晶層の配向と配向軸方向とを示す図である。
図4】実施形態1に係る、初期配向状態における偏光変調素子のヘイズ値を示す図である。
図5】実施形態1に係る、ON状態における偏光変調素子のヘイズ値を示す図である。
図6】実施形態2に係る偏光変調素子の断面を示す模式図である。
図7】実施形態2に係るTNセルの断面を示す模式図である。
図8】実施形態2に係る、1番目のTNセルのネマティック液晶層の配向と配向軸方向とを示す図である。
図9】実施形態2に係る、2番目のTNセルのネマティック液晶層の配向と配向軸方向とを示す図である。
図10】実施形態2に係る、3番目のTNセルのネマティック液晶層の配向と配向軸方向とを示す図である。
図11】実施形態2に係る、4番目のTNセルのネマティック液晶層の配向と配向軸方向とを示す図である。
図12】実施形態2に係る、初期状態における偏光変調素子のネマティック液晶層の配向状態を示す模式図である。
図13】実施形態2に係る、初期配向状態における偏光変調素子のヘイズ値を示す図である。
図14】実施形態2に係る、ON状態における偏光変調素子のヘイズ値を示す図である。
図15】実施形態3に係る、3番目のTNセルのネマティック液晶層の配向と配向軸方向とを示す図である。
図16】実施形態3に係る、4番目のTNセルのネマティック液晶層の配向と配向軸方向とを示す図である。
図17】実施形態3に係る、初期状態における偏光変調素子のネマティック液晶層の配向状態を示す模式図である。
図18】実施形態3に係る、初期配向状態における偏光変調素子のヘイズ値を示す図である。
図19】実施形態3に係る、ON状態における偏光変調素子のヘイズ値を示す図である。
図20】実施形態3に係る、ON状態における偏光変調素子のネマティック液晶層の配向状態を示す模式図である。
図21】実施形態4に係る、偏光変調素子が初期配向状態のスマートガラスを示す模式図である。
図22】実施形態4に係る、偏光変調素子がON状態のスマートガラスを示す模式図である。
図23】実施形態5に係る、偏光変調素子が初期配向状態のマジックミラーを示す模式図である。
図24】実施形態5に係る、偏光変調素子がON状態のマジックミラーを示す模式図である。
図25】実施形態6に係る、偏光変調素子が初期配向状態の表示装置を示す模式図である。
図26】実施形態6に係る、偏光変調素子がON状態の表示装置を示す模式図である。
図27】実施形態7に係る立体画像表示装置を示す模式図である。
図28】実施形態7に係る液晶表示パネルを示す平面図である。
図29】実施形態7に係る偏光二焦点レンズを示す断面図である。
図30】実施形態7に係る制御部を示すブロック図である。
図31】実施形態7に係る制御部のハードウェアの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施形態に係る偏光変調素子、スマートガラス、マジックミラー、表示装置及び立体画像表示装置について、図面を参照して説明する。
【0017】
<実施形態1>
図1図5を参照して、本実施形態に係る偏光変調素子10を説明する。偏光変調素子10は、図1に示すように、光入射側基板102と光出射側基板104とネマティック液晶層106と重合体108とを備える。ネマティック液晶層106に電圧を印加されていない状態(以下、初期配向状態と記載)では、偏光変調素子10は、入射する直線偏光光(入射光)L1の偏光方向を90°回転させて、出射光L2として出射する。また、ネマティック液晶層106に所定の電圧を印加された状態(以下、ON状態と記載)では、偏光変調素子10は、入射する直線偏光光L1の偏光方向を維持して、出射光L2として出射する。偏光変調素子10は、偏光変調素子10の応答時間を短くするために、ネマティック液晶層106内に重合体108を分散させた偏光変調素子(所謂、高分子安定化液晶(Polymer Stabilised Liquid Crystal)素子)であり、入射光を透過又は散乱させる光散乱型液晶素子(所謂、高分子分散液晶(Polymer Dispersed Liquid Crystal)素子又はポリマーネットワーク液晶(Polymer Network Liquid Crystal)素子)ではない。
【0018】
本明細書では、理解を容易にするため、図1における偏光変調素子10の右方向(紙面の右方向)を+X方向、上方向(紙面の上方向)を+Z方向、+X方向と+Z方向に垂直な方向(紙面の奥方向)を+Y方向として説明する。また、偏光変調素子10に入射する直線偏光光L1の偏光方向をY方向とする。
【0019】
偏光変調素子10の光入射側基板102は、直線偏光光L1が入射する基板である。光入射側基板102は、光出射側基板104に対向する。光入射側基板102と光出射側基板104はネマティック液晶層106を挟持する。光入射側基板102は、例えば、ガラス基板である。光入射側基板102は、光出射側基板104に対向する主面102aに透光性電極102bと配向膜102cとを有する。
【0020】
光入射側基板102の透光性電極102bは、主面102aの全面に渡って、ITO(Indium Tin Oxide)から形成されている。光入射側基板102の配向膜102cは、ネマティック液晶層106を所定の方向に配向させる。光入射側基板102の配向膜102cは、例えば、配向処理されたポリイミド配向膜である。ネマティック液晶層106の配向については後述する。
【0021】
偏光変調素子10の光出射側基板104は、図1に示すように、出射光L2を出射する基板である。光入射側基板102と光出射側基板104は、シール材109により貼り合わされている。光出射側基板104は、例えば、ガラス基板である。光出射側基板104は、光入射側基板102に対向する主面104aに、透光性電極104bと配向膜104cとを有する。
【0022】
光出射側基板104の透光性電極104bは、主面104aの全面に渡って、ITOから形成されている。光出射側基板104の配向膜104cは、ネマティック液晶層106を所定の方向に配向させる。光出射側基板104の配向膜104cは、例えば、配向処理されたポリイミド配向膜である。
【0023】
偏光変調素子10のネマティック液晶層106は、正の誘電率異方性Δεを有するネマティック液晶組成物から形成され、光入射側基板102と光出射側基板104に挟持される。ネマティック液晶組成物の屈折率異方性Δnは、例えば、波長589.2nmで0.1403(異常光屈折率:1.6347、常光屈折率:1.4944)である。また、ネマティック液晶層106の厚さは、例えば、6.0μmである。
【0024】
ネマティック液晶層106は、一般的なTN(Twisted Nematic)液晶素子の液晶層と同様に、初期配向状態において、光入射側基板102の配向膜102cと光出射側基板104の配向膜104cによって、ねじれ配向(ツイスト配向)されている。本明細書では、図2に示すように、ネマティック液晶組成物と配向膜102c又は配向膜104cとの界面における液晶分子106Mの初期配向方向を、光入射側基板102又は光出射側基板104の配向軸方向とする。
【0025】
本実施形態では、図3に示すように、光入射側基板102の配向軸方向112は+X方向であり、直線偏光光L1の偏光方向に直交している。光出射側基板104の配向軸方向114は-Y方向である。初期配向状態のネマティック液晶層106は、+Z側から平面視した場合に、時計回りにねじれ角α=90°で、ねじれ配向している。
【0026】
偏光変調素子10の重合体108は、ネマティック液晶層106内に分散している。また、重合体108は、初期配向状態のネマティック液晶層106のねじれ配向に倣って、配向している。なお、本明細書では、重合体108は、重合性化合物の重合体又は共重合体を指す。
【0027】
重合体108は、UV(Ultraviolet)硬化又は熱硬化する重合性化合物(反応性メソゲンとも称される)から形成される。重合体108は、例えば、ネマティック液晶組成物に重合性化合物を添加した組成物を、光入射側基板102と光出射側基板104に挟持させた後、重合性化合物を硬化させることにより、形成される。重合体108は、ネマティック液晶層106を形成するネマティック液晶組成物に対して1重量%以上10重量%以下含有されることが、好ましい。また、例えば、重合体108の常光屈折率と異常光屈折率は、それぞれ、ネマティック液晶組成物の常光屈折率と異常光屈折率と同程度である。重合性化合物としては、特許文献3、特開2009-132718号公報等に記載の重合性化合物が挙げられる。
【0028】
偏光変調素子10の作用と効果について説明する。本実施形態では、重合体108がネマティック液晶層106内に分散し、重合体108は初期配向状態のネマティック液晶層106のねじれ配向に倣って配向している。また、偏光方向がY方向である直線偏光光L1が、配向軸方向112が+X方向である光入射側基板102に入射する。直線偏光光L1の偏光方向と光入射側基板102の配向軸方向112は、直交している。初期配向状態のネマティック液晶層106は90°ねじれて配向しているので、初期配向状態の偏光変調素子10は、直線偏光光L1が入射すると、直線偏光光L1の偏光方向を90°回転させて、X方向の偏光方向を有する出射光L2を出射する。一方、ON状態(例えば、50Vを印加した状態)の偏光変調素子10では、ネマティック液晶層106の液晶分子106Mが光入射側基板102又は光出射側基板104に対して垂直に配向するので、偏光変調素子10は、直線偏光光L1が入射すると、直線偏光光L1の偏光方向を維持して、出射光L2として出射する。
【0029】
まず、偏光変調素子10の応答時間について説明する。下記の表1は、偏光変調素子10と比較例1の偏光変調素子の応答時間Ton、Toffを示す。比較例1の偏光変調素子は、ネマティック液晶層106内に重合体108を含まないことを除き、偏光変調素子10と同様の偏光変調素子である。応答時間は、出射偏光板を透過した出射光L2の輝度の変化に基づいて、求めた。出射偏光板の透過軸の方向はY方向である。具体的には、入射偏光板を介して、直線偏光光L1を偏光変調素子10又は比較例1の偏光変調素子に入射させた。電圧(±20V、50Hzの矩形波)を偏光変調素子10又は比較例1の偏光変調素子を印加して、出射偏光板を介して、出射光L2の輝度の変化を測定した。応答時間Tonは、電圧ON時に、出射偏光板を透過した出射光L2の輝度が最小輝度から最大輝度の90%に達するまでの時間である。また、応答時間Toffは、電圧OFF時に、出射偏光板を透過した出射光L2の輝度が最大輝度から最大輝度の10%に達するまでの時間である。
【0030】
【表1】
【0031】
表1に示すように、偏光変調素子10の応答時間Ton、Toffは、比較例1の偏光変調素子の応答時間Ton、Toffよりも短い。したがって、偏光変調素子10は、重合体108を有するので、応答時間Ton、Toffを短くできる。
【0032】
次に、偏光変調素子10に入射する直線偏光光L1の散乱について、説明する。図4は、初期配向状態における、偏光変調素子10のヘイズ値と比較例2の偏光変調素子のヘイズ値を示す。また、図5は、ON状態における、偏光変調素子10のヘイズ値と比較例2の偏光変調素子のヘイズ値を示す。比較例2偏光変調素子は、光入射側基板に入射する直線偏光光の偏光方向(例えばX方向)と光入射側基板の配向軸方向(例えば+X方向)が平行であることを除き、偏光変調素子10と同様の偏光変調素子である。ヘイズ値は、入射偏光板を介して、直線偏光光を偏光変調素子10又は比較例2の偏光変調素子に入射させて、測定した。
【0033】
図4図5に示すように、偏光変調素子10のヘイズ値は、比較例2の偏光変調素子のヘイズ値よりも、小さい。したがって、偏光変調素子10は、入射する直線偏光光L1の散乱を抑えて、直線偏光光L1の偏光方向を変換できる。偏光変調素子10では、光入射側基板102の配向軸方向112と直線偏光光L1の偏光方向が直交しているので、直線偏光光L1は常光としてネマティック液晶層106を進行する。重合体108はネマティック液晶層106のねじれ配向に倣って配向し、ネマティック液晶層106と重合体108の常光屈折率はそれぞれの異常光屈折率よりも小さい。したがって、ネマティック液晶層106が重合体108を含有ことによって生じる、直線偏光光L1に対するネマティック液晶層106内の屈折率差は小さく、直線偏光光L1の散乱が抑制されると推定される。
【0034】
以上のように、偏光変調素子10は応答時間Ton、Toffを短くできる。さらに、偏光変調素子10は、光入射側基板102の配向軸方向112と光入射側基板102に入射する直線偏光光L1の偏光方向が直交しているので、直線偏光光L1の散乱を抑えて、直線偏光光L1の偏光方向を変換できる。
【0035】
<実施形態2>
実施形態1では、直線偏光光L1は、1つのネマティック液晶層106により、偏光方向を変換されている。直線偏光光L1は、複数のネマティック液晶層106により、偏光方向を変換されてもよい。
【0036】
本実施形態の偏光変調素子20は、図6に示すように、ねじれ方向が同じ、4つのねじれネマティック液晶セル210~240を備える。偏光変調素子20は、図示しない接着層を介して、ねじれネマティック液晶セル210~240を順次積層することにより形成されている。初期配向状態では、偏光変調素子20は、ねじれネマティック液晶セル210に入射する直線偏光光L1の偏光方向を90°回転させて、出射光L2として出射する。また、ON状態では、偏光変調素子20は、直線偏光光L1の偏光方向を維持して、出射光L2として出射する。
【0037】
本明細書では、理解を容易にするため、ねじれネマティック液晶セルをTNセルとも記載し、直線偏光光L1が入射するTNセルから順にm(mは1以上の整数)番目のTNセルとも記載する。さらに、ねじれネマティック液晶セル(TNセル)を総称して、ねじれネマティック液晶セル200又はTNセル200とも記載する。
【0038】
まず、TNセル200を説明する。TNセル200は、図7に示すように、光入射側基板102と光出射側基板104とネマティック液晶層106と重合体108とを備える。TNセル210~240の構成は、後述する、配向軸方向212~244とネマティック液晶層106のねじれ配向とを除き、実施形態1の偏光変調素子10と同様である。なお、TNセル200の光入射側基板102は光(直線偏光光L1又は変調された直線偏光光L1)が入射する基板であり、TNセル200の光出射側基板104は光を出射する基板である。また、TNセル210~240の配向軸方向212~244を総称して、配向軸方向250とも記載する。
【0039】
TNセル200は、図6に示すように、一方のTNセル200の光入射側基板102と他方のTNセル200の光出射側基板104とを対向させて、順次積層されている。
【0040】
TNセル210~240の配向軸方向212~244とネマティック液晶層106のねじれ配向とを説明する。TNセル210~240の初期配向状態では、図8図11に示すように、ネマティック液晶層106は+Z側から平面視した場合に時計回りにねじれて配向している。また、ネマティック液晶層106のねじれ角(すなわちTNセル210~240のねじれ角)αは22.5°であり、TNセル210~240のそれぞれのネマティック液晶層106のねじれ角αの和は90°となっている。
【0041】
TNセル200の間において、一方のTNセル200の光出射側基板104の配向軸方向250と、他方のTNセル200の光入射側基板102の配向軸方向250は、一致している。また、直線偏光光L1が入射する1番目のTNセル210の光入射側基板102の配向軸方向212は、直線偏光光L1の偏光方向(Y方向)に直交している。
【0042】
具体的には、直線偏光光L1が入射する1番目のTNセル210では、図8に示すように、光入射側基板102の配向軸方向212は、+X方向である。TNセル210の光出射側基板104の配向軸方向214は、+X方向に対して時計回りに22.5°傾いている。
【0043】
2番目のTNセル220では、図9に示すように、光入射側基板102の配向軸方向222は、+X方向に対して時計回りに22.5°傾き、TNセル210の光出射側基板104の配向軸方向214に一致している。TNセル220の光出射側基板104の配向軸方向224は、+X方向に対して時計回りに45°傾いている。
【0044】
3番目のTNセル230では、図10に示すように、光入射側基板102の配向軸方向232は、+X方向に対して時計回りに45°傾き、TNセル220の光出射側基板104の配向軸方向224に一致している。TNセル230の光出射側基板104の配向軸方向234は、+X方向に対して時計回りに67.5°傾いている。
【0045】
4番目のTNセル240では、図11に示すように、光入射側基板102の配向軸方向242は、+X方向に対して時計回りに67.5°傾き、TNセル230の光出射側基板104の配向軸方向234に一致している。TNセル240の光出射側基板104の配向軸方向244は、+X方向に対して時計回りに90°傾いている(-Y方向)。
【0046】
次に、偏光変調素子20の作用と効果について説明する。本実施形態では、偏光方向がY方向である直線偏光光L1が、1番目のTNセル210の光入射側基板102に入射する。直線偏光光L1の偏光方向と1番目のTNセル210の光入射側基板102の配向軸方向112は、直交している。
【0047】
初期配向状態では、図12に示すように、TNセル210~240のそれぞれのネマティック液晶層106は、ねじれ配向している。TNセル210~240のネマティック液晶層106は同じ方向にねじれ、ねじれ角αの和が90°である。したがって、直線偏光光L1が偏光変調素子20に入射すると、偏光変調素子20は、直線偏光光L1の偏光方向を90°回転させて、X方向の偏光方向を有する出射光L2を出射する。なお、図12では、光入射側基板102、光出射側基板104等を省略している。以下の図においても、光入射側基板102、光出射側基板104等を省略する場合がある。
【0048】
ON状態では、TNセル210~240の液晶分子106Mは、光入射側基板102又は光出射側基板104に対して垂直に配向する。したがって、直線偏光光L1が偏光変調素子20に入射すると、偏光変調素子20は、直線偏光光L1の偏光方向を維持して、出射光L2として出射する。
【0049】
図13は、初期配向状態における、偏光変調素子20のヘイズ値と比較例3の偏光変調素子のヘイズ値を示す。また、図14は、ON状態(TNセル200のそれぞれに50Vを印加)における、偏光変調素子20のヘイズ値と比較例3の偏光変調素子のヘイズ値を示す。比較例3の偏光変調素子は、光入射側基板に入射する直線偏光光の偏光方向(例えばX方向)と、直線偏光光が入射する光入射側基板の配向軸方向(例えば+X方向)が平行であることを除き、偏光変調素子20と同様の偏光変調素子である。ヘイズ値の測定方法は、実施形態1のヘイズ値の測定方法と同様である。
【0050】
図13図14に示すように、偏光変調素子20のヘイズ値は、比較例3の偏光変調素子のヘイズ値よりも、小さい。したがって、偏光変調素子20は、実施形態1の偏光変調素子10と同様に、直線偏光光L1の散乱を抑えて、直線偏光光L1の偏光方向を変換できる。
【0051】
以上のように、偏光変調素子20は、直線偏光光L1が入射する1番目のTNセル210の光入射側基板102の配向軸方向112と、直線偏光光L1の偏光方向が直交しているので、直線偏光光L1の散乱を抑えて、直線偏光光L1の偏光方向を変換できる。偏光変調素子20のTNセル200が重合体108を有するので、偏光変調素子20は応答時間Ton、Toffを短くできる。また、偏光変調素子20では、ネマティック液晶層106のそれぞれのねじれ角αが小さいので、TNセル210~240のそれぞれのセル厚(ネマティック液晶層106の厚さ)を薄くすることにより、偏光変調素子20の応答時間Ton、Toffを更に短縮できる。
【0052】
<実施形態3>
実施形態2では、TNセル200の間において、一方のTNセル200の光出射側基板104の配向軸方向250と、他方のTNセル200の光入射側基板102の配向軸方向250は、一致している。少なくとも1つのTNセル200の間において、一方のTNセル200の光出射側基板104の配向軸方向250と、他方のTNセル200の光入射側基板102の配向軸方向250が、直交してもよい。
【0053】
本実施形態の偏光変調素子30は、実施形態2の偏光変調素子20と同様に、ねじれ方向が同じ、4つのTNセル210、220、230、240を備える。本実施形態では、TNセル230、240の配向軸方向250が、実施形態2のTNセル230、240の配向軸方向250と異なる。偏光変調素子30のその他の構成は、偏光変調素子20と同様である。ここでは、本実施形態のTNセル230、240の配向軸方向250と、偏光変調素子30の作用と効果と、を説明する。
【0054】
本実施形態の3番目のTNセル230では、図15に示すように、光入射側基板102の配向軸方向232は、+X方向に対して時計回りに135°傾き、TNセル220の光出射側基板104の配向軸方向224に直交している。TNセル230の光出射側基板104の配向軸方向234は、+X方向に対して時計回りに157.5°傾いている。
【0055】
本実施形態の4番目のTNセル240では、図16に示すように、光入射側基板102の配向軸方向242は、+X方向に対して時計回りに157.5°傾き、TNセル230の光出射側基板104の配向軸方向234に一致している。TNセル240の光出射側基板104の配向軸方向244は、+X方向に対して時計回りに180°回転している(-X方向)。
【0056】
偏光変調素子30の初期配向状態では、図17に示すように、TNセル210~240のそれぞれのネマティック液晶層106は同じ方向にねじれ配向し、ねじれ角αの和は90°である。また、実施形態2の偏光変調素子20と同様に、直線偏光光L1の偏光方向(Y方向)と1番目のTNセル210の光入射側基板102の配向軸方向112(+X方向)は、直交している。したがって、直線偏光光L1が偏光変調素子30に入射すると、偏光変調素子30は、実施形態2の偏光変調素子20と同様に、直線偏光光L1の偏光方向を90°回転させて、X方向の偏光方向を有する出射光L2を出射する。
【0057】
偏光変調素子30のON状態では、TNセル210~240の液晶分子106Mは、光入射側基板102又は光出射側基板104に対して垂直に配向する。したがって、直線偏光光L1が偏光変調素子20に入射すると、偏光変調素子20は、直線偏光光L1の偏光方向を維持して、出射光L2として出射する。
【0058】
下記の表2は、偏光変調素子30と比較例4の偏光変調素子の応答時間Ton、Toffを示す。比較例4の偏光変調素子は、TNセル200がネマティック液晶層106内に重合体108を含まないことを除き、偏光変調素子30と同様の偏光変調素子である。また、応答時間Ton、Toffの測定方法は、実施形態1の測定方法と同様である。
【0059】
【表2】
【0060】
表2に示すように、偏光変調素子30の応答時間Ton、Toffは、比較例4の偏光変調素子の応答時間Ton、Toffよりも短い。したがって、偏光変調素子30のTNセル200が重合体108を有するので、偏光変調素子30は応答時間Ton、Toffを短くできる。
【0061】
図18は、初期配向状態における、偏光変調素子30のヘイズ値と比較例5の偏光変調素子のヘイズ値を示す。また、図19は、ON状態(TNセル200のそれぞれに50Vを印加)における、偏光変調素子30のヘイズ値と比較例3の偏光変調素子のヘイズ値を示す。比較例5の偏光変調素子は、光入射側基板に入射する直線偏光光の偏光方向(例えばX方向)と、直線偏光光が入射する光入射側基板の配向軸方向(例えば+X方向)が平行であることを除き、偏光変調素子30と同様の偏光変調素子である。ヘイズ値の測定方法は、実施形態1の測定方法と同様である。
【0062】
図18図19に示すように、偏光変調素子30のヘイズ値は、比較例5の偏光変調素子のヘイズ値よりも、小さい。したがって、偏光変調素子30は、実施形態2の偏光変調素子20と同様に、直線偏光光L1の散乱を抑えて、直線偏光光L1の偏光方向を変換できる。
【0063】
以上のように、偏光変調素子30は応答時間Ton、Toffを短くできる。さらに、偏光変調素子30は、直線偏光光L1が入射する1番目のTNセル210の光入射側基板102の配向軸方向112と、直線偏光光L1の偏光方向が直交しているので、直線偏光光L1の散乱を抑えて、直線偏光光L1の偏光方向を変換できる。
【0064】
実施形態2の偏光変調素子20のON状態では、ネマティック液晶層106と配向膜102c、104cとの界面付近の液晶分子106Mが電界に対して十分に応答せず、液晶分子106Mによる複屈折が界面付近に残留する虞がある。さらに、偏光変調素子20は複数のTNセル200を備えているので、偏光変調素子20では、ネマティック液晶層106と配向膜102c、104cとの界面の数が多い。したがって、実施形態2の偏光変調素子20のON状態では、複屈折の残留によって、出射光L2が楕円偏光となる虞がある。
【0065】
一方、偏光変調素子30のON状態では、図20に示すように、2番目のTNセル220と3番目のTNセル230の間において、TNセル220の光出射側基板104の配向軸方向224とTNセル230の光入射側基板102の配向軸方向232が直交しているので、界面付近に残留する複屈折が相殺される。したがって、偏光変調素子30は、直線偏光光L1の偏光方向を十分に維持して、出射光L2として出射できる。
【0066】
<実施形態4>
本実施形態では、実施形態1の偏光変調素子10を用いたスマートガラス400を説明する。スマートガラス400は、家屋の窓ガラス、車両用ガラス等として使用される。スマートガラス400は、図21に示すように、偏光変調素子10と透光性基板410と第1偏光板420と第2偏光板430とを備える。
【0067】
スマートガラス400の透光性基板410は、偏光変調素子10の直線偏光光L1が入射する側(偏光変調素子10の-Z側)に配置される。透光性基板410は、透光性を有する樹脂、ガラス等から形成される。本実施形態では、外光が-Z方向から透光性基板410(スマートガラス400)に入射する。また、例えば、スマートガラス400が家屋の窓ガラスと使用された場合、外光は屋外からスマートガラス400に入射する光を指す。
【0068】
スマートガラス400の第1偏光板420は、偏光変調素子10と透光性基板410との間に配置される。第1偏光板420の透過軸の方向はY方向であり、第1偏光板420の透過軸は偏光変調素子10の光入射側基板102の配向軸方向112(+X方向)に直交している。第1偏光板420は、-Z方向からスマートガラス400に入射した外光を、偏光方向がY方向である直線偏光光L1として、偏光変調素子10に出射する。
【0069】
スマートガラス400の第2偏光板430は、偏光変調素子10の第1偏光板420と反対側(偏光変調素子10の+Z側)に配置される。偏光変調素子10から出射された出射光L2が、第2偏光板430に入射する。第2偏光板430の透過軸の方向は、X方向であり、第1偏光板420の透過軸と直交している。
【0070】
次に、スマートガラス400の動作を説明する。-Z方向からスマートガラス400に入射した外光は、透光性基板410と第1偏光板420を介して、偏光方向がY方向である直線偏光光L1として、偏光変調素子10に入射する。偏光変調素子10が初期配向状態である場合、偏光変調素子10は、直線偏光光L1の偏光方向を90°回転させて、直線偏光光L1を、X方向の偏光方向を有する出射光L2として出射する。第2偏光板430の透過軸の方向はX方向であるので、図21に示すように、出射光L2は第2偏光板430を透過する。したがって、-Z方向からスマートガラス400に入射した外光は、スマートガラス400の+Z側に位置する観察者(例えば屋内に居る観察者)の眼に到達する。すなわち、スマートガラス400の+Z側に位置する観察者は、スマートガラス400の-Z側に位置する景色、物体等を認識できる。偏光変調素子10は、直線偏光光L1の散乱を抑制できるので、スマートガラス400の+Z側に位置する観察者は、スマートガラス400を介して、ぼやけが少ない景色、物体等を見ることができる。
【0071】
一方、+Z方向からスマートガラス400に入射する光は、一般に、-Z方向からスマートガラス400に入射する外光よりも弱く、更に、第1偏光板420と第2偏光板430とに吸収される。したがって、偏光変調素子10が初期配向状態である場合、スマートガラス400の-Z側に位置する観察者は、スマートガラス400の+Z側に位置する景色、物体等を認識し難くなる。
【0072】
偏光変調素子10のネマティック液晶層106に所定の電圧よりも小さい電圧が印加されると、ネマティック液晶層106の液晶分子106Mが、光入射側基板102又は光出射側基板104に対して垂直方向に立ち上がるので、偏光変調素子10から出射する出射光L2は楕円偏光となる。したがって、第2偏光板430を透過する出射光L2の光量は、ネマティック液晶層106に印加される電圧が大きくなるに伴って、少なくなる。すなわち、スマートガラス400の+Z側に位置する観察者に見える景色、物体等は暗くなる。偏光変調素子10は、直線偏光光L1の散乱を抑制できるので、スマートガラス400の+Z側に位置する観察者は、ぼやけが少ない景色、物体等を見ることができる。スマートガラス400の-Z側に位置する観察者は、スマートガラス400の+Z側に位置する景色、物体等を、偏光変調素子10が初期配向状態である場合よりも、更に認識し難くなる。
【0073】
偏光変調素子10のネマティック液晶層106に所定の電圧が印加され、偏光変調素子10がON状態である場合、偏光変調素子10は、直線偏光光L1の偏光方向を維持して、直線偏光光L1を、X方向の偏光方向を有する出射光L2として出射する。第2偏光板430の透過軸の方向はY方向であるので、図22に示すように、出射光L2は第2偏光板430を透過できない。したがって、-Z方向からスマートガラス400に入射した外光は、スマートガラス400の+Z側に位置する観察者の眼に到達できず、スマートガラス400の+Z側に位置する観察者は、スマートガラス400の-Z側に位置する景色、物体等を見ることはできない。また、スマートガラス400の-Z側に位置する観察者も、スマートガラス400の+Z側に位置する景色、物体等を見ることはできない。
【0074】
以上のように、偏光変調素子10が直線偏光光L1の散乱を抑制できるので、スマートガラス400はぼやけの少ない視界を観察者に提供できる。
【0075】
<実施形態5>
本実施形態では、実施形態1の偏光変調素子10を用いたマジックミラー500を説明する。マジックミラー500は、図23に示すように、スマートガラス400の透光性基板410の代わりに、ハーフミラー510を備える。本実施形態の第1偏光板420と第2偏光板430は、実施形態4と同様である。
【0076】
ハーフミラー510は、偏光変調素子10の直線偏光光L1が入射する側(偏光変調素子10の-Z側)に配置される。本実施形態では、外光が-Z方向からハーフミラー510(マジックミラー500)に入射する。ハーフミラー510は、-Z方向から入射する外光の一部を透過し、-Z方向から入射する外光の他の一部を反射する。
【0077】
次に、マジックミラー500の動作を説明する。マジックミラー500では、ハーフミラー510が-Z方向から入射する外光の一部を反射する。したがって、マジックミラー500は、偏光変調素子10の状態に依らず、マジックミラー500の-Z側に位置する観察者に対して、ミラーとして機能する。
【0078】
-Z方向からマジックミラー500に入射する外光の一部は、ハーフミラー510を透過する。したがって、-Z方向からマジックミラー500に入射する外光の一部は、ハーフミラー510と第1偏光板420を介して、偏光方向がY方向である直線偏光光L1として、偏光変調素子10に入射する。偏光変調素子10が初期配向状態である場合、実施形態4のスマートガラス400に-Z方向から入射する外光と同様に、-Z方向からマジックミラー500に入射した外光は、マジックミラー500の+Z側に位置する観察者の眼に到達する。マジックミラー500の+Z側に位置する観察者は、マジックミラー500の-Z側に位置する景色、物体等を認識できる。偏光変調素子10は、直線偏光光L1の散乱を抑制できるので、マジックミラー500の+Z側に位置する観察者は、マジックミラー500を介して、ぼやけが少ない景色、物体等を見ることができる。
【0079】
偏光変調素子10のネマティック液晶層106に所定の電圧よりも小さい電圧が印加された場合、実施形態4のスマートガラス400と同様に、マジックミラー500の+Z側に位置する観察者に見える景色、物体等は暗くなる。偏光変調素子10は、直線偏光光L1の散乱を抑制できるので、スマートガラス400の+Z側に位置する観察者は、ぼやけが少ない景色、物体等を見ることができる。
【0080】
偏光変調素子10がON状態である場合、偏光変調素子10は、直線偏光光L1の偏光方向を維持して、直線偏光光L1を、X方向の偏光方向を有する出射光L2として出射する。第2偏光板430の透過軸の方向はY方向であるので、図24に示すように、出射光L2は第2偏光板430を透過できない。したがって、マジックミラー500の+Z側に位置する観察者は、マジックミラー500の-Z側に位置する景色、物体等を見ることはできない。
【0081】
以上のように、偏光変調素子10が直線偏光光L1の散乱を抑制できるので、マジックミラー500はぼやけの少ない視界を観察者に提供できる。
【0082】
<実施形態6>
本実施形態では、実施形態1の偏光変調素子10を用いた表示装置600を説明する。表示装置600は、図25に示すように、偏光変調素子10と、表示パネル610と、第1偏光板420と、第2偏光板430と、ハーフミラー620とを備える。
【0083】
表示装置600の表示パネル610は、偏光変調素子10の直線偏光光L1が入射する側(偏光変調素子10の-Z側)に配置される。表示パネル610は、文字、画像等を表示し、文字、画像等を表す表示光を偏光変調素子10に向かって+Z方向に出射する。表示パネル610は、液晶表示パネル、有機EL(Electro Luminescence)表示パネル、マイクロLED(Light emitting diode)表示パネル等である。
【0084】
表示装置600の第1偏光板420は、偏光変調素子10と表示パネル610との間に配置される。本実施形態の第1偏光板420の透過軸の方向は、実施形態4の第1偏光板420と同様に、Y方向であり、本実施形態の第1偏光板420の透過軸は偏光変調素子10の光入射側基板102の配向軸方向112(+X方向)に直交している。本実施形態の第1偏光板420は、表示パネル610から出射された表示光を、偏光方向がY方向である直線偏光光L1として、偏光変調素子10に出射する。
【0085】
表示装置600の第2偏光板430は、実施形態4の第2偏光板430と同様に、偏光変調素子10の第1偏光板420と反対側(偏光変調素子10の+Z側)に配置される。偏光変調素子10から出射された出射光L2が、本実施形態の第2偏光板430に入射する。本実施形態第2偏光板430の透過軸の方向は、X方向であり、第1偏光板420の透過軸と直交している。
【0086】
ハーフミラー620は、第2偏光板430の偏光変調素子10と反対側(第2偏光板430の+Z側)に配置される。第2偏光板430を透過した偏光変調素子10の出射光L2が、ハーフミラー620に入射する。ハーフミラー620は、入射した出射光L2を透過する。また、ハーフミラー620は、+Z方向から入射する外光の一部を透過し、+Z方向から入射する外光の他の一部を反射する。ここでの外光は、太陽光、照明光等である。
【0087】
次に、表示装置600の動作を説明する。表示パネル610の表示が明るい場合、表示装置600は、表示装置600の+Z側に位置する観察者に対して、表示パネル610の表示をハーフミラー620越しに表示する表示装置として機能する。表示パネル610の表示が暗い場合、表示装置600は、表示装置600の+Z側に位置する観察者に対して、外光を反射するミラーとして機能する。
【0088】
偏光変調素子10が初期配向状態である場合、表示パネル610の表示光は、第1偏光板420を介して、偏光方向がY方向である直線偏光光L1として、偏光変調素子10に入射する。偏光変調素子10が初期配向状態である場合、偏光変調素子10は、直線偏光光L1の偏光方向を90°回転させて、直線偏光光L1を、X方向の偏光方向を有する出射光L2として出射する。第2偏光板430の透過軸の方向はX方向であるので、図25に示すように、出射光L2は第2偏光板430を透過する。第2偏光板430を透過した出射光L2は、ハーフミラー620を透過して、表示装置600の+Z側に位置する観察者の眼に到達する。したがって、表示装置600の+Z側に位置する観察者は、表示パネル610の表示を認識できる。偏光変調素子10は直線偏光光L1の散乱を抑制できるので、表示装置600の+Z側に位置する観察者は、ぼやけが少ない表示パネル610の表示を見ることができる。
【0089】
偏光変調素子10のネマティック液晶層106に所定の電圧よりも小さい電圧が印加された場合、実施形態4のスマートガラス400と同様に、ネマティック液晶層106に印加される電圧が大きくなるに伴って、表示装置600の+Z側に位置する観察者に見える表示パネル610の表示は暗くなる。したがって、表示装置600は、表示パネル610の表示をハーフミラー620越しに表示する表示装置として機能すると共に、外光を反射するミラーとしても機能する。偏光変調素子10は直線偏光光L1の散乱を抑制できるので、表示装置600の+Z側に位置する観察者は、ぼやけが少ない表示パネル610の表示を見ることができる。
【0090】
偏光変調素子10がON状態である場合、偏光変調素子10は、直線偏光光L1の偏光方向を維持して、直線偏光光L1を、X方向の偏光方向を有する出射光L2として出射する。第2偏光板430の透過軸の方向はY方向であるので、図26に示すように、出射光L2は第2偏光板430を透過できない。したがって、表示装置600の+Z側に位置する観察者は表示パネル610の表示が見えなくなり、表示装置600は外光を反射するミラーとして機能する。
【0091】
以上のように、偏光変調素子10が直線偏光光L1の散乱を抑制できるので、表示装置600はぼやけの少ない表示を観察者に提供できる。
【0092】
<実施形態7>
本実施形態では、実施形態1の偏光変調素子10を用いた立体画像表示装置700を説明する。偏光変調素子10は、例えば、DFD(Depth Fused 3D)方式で立体画像を表示する立体画像表示装置700に用いられる。立体画像表示装置700において、偏光変調素子10は偏光切り替え素子として機能する。
【0093】
立体画像表示装置700は、例えば、接眼レンズと組み合わされて、ヘッドマウントディスプレイとして用いられる。なお、本実施形態においては、モノクロ液晶パネルを用いた立体画像表示装置700を例に説明する。
【0094】
立体画像表示装置700は、図27に示すように、表示ユニット720と、偏光変調素子10と、偏光二焦点レンズ760と、制御部780とを備える。表示ユニット720は、第1画像と第2画像とを時分割で順次に表示する。また、表示ユニット720は、第1画像と第2画像を表す表示光を、偏光変調素子10に入射する直線偏光光L1として、偏光変調素子10に出射する。偏光変調素子10は、表示ユニット720から出射された直線偏光光L1の偏光方向を、所定の第1方向と所定の第2方向とに切り替える。偏光二焦点レンズ760は、第1画像と第2画像のそれぞれを、第1表示面712と第2表示面714のそれぞれに、虚像として結像させる。制御部780は、表示ユニット720に第1画像を表す第1画像信号と第2画像を表す第2画像信号とを供給する。また、制御部780は、偏光変調素子10の偏光方向の切り替えを制御する。
【0095】
本実施形態では、所定の第1方向はY方向であり、所定の第2方向はX方向である。また、第1画像を表す第1画像信号と第2画像を表す第2画像信号を総称して、画像信号とも記載する。
【0096】
立体画像表示装置700の表示ユニット720は、液晶表示パネル722と光源部732とを備える。液晶表示パネル722は、制御部780から供給される第1画像を表す第1画像信号と第2画像を表す第2画像信号に基づいて、光源部732から発せられた光を変調して、第1画像と第2画像とを時分割で順次に表示する。液晶表示パネル722は、画像(例えば、第1画像と第2画像)を表す表示光を、偏光方向が所定の第1方向(Y方向)である直線偏光光L1として出射する。液晶表示パネル722から出射された直線偏光光L1は、偏光変調素子10に入射する。
【0097】
第1画像と第2画像は、表示対象を、観察者から見て奥行き方向(-Z方向)の異なる位置に位置する第1表示面712と第2表示面714のそれぞれに、観察者の側から投影した二次元画像である。第1表示面712と第2表示面714については、後述する。
【0098】
液晶表示パネル722は、例えば、TFT(Thin Film Transistor)によりアクティブマトリクス駆動される透過型TN液晶パネルである。液晶表示パネル722は、図28に示すように、マトリクス状に配列された画素Pとゲートドライバ723Gとデータドライバ723Dとを有する。ゲートドライバ723Gは、画素Pを行ごとに順次選択して、-Y方向に線順次走査を行う。データドライバ723Dは、選択された画素Pのそれぞれに画像信号に応じた電圧を供給して、画素Pのそれぞれに画像信号を書き込む。なお、図28では、マトリクスに配列された画素Pのうちの一部のみを図示している。また、液晶表示パネル722は偏光板、液晶等(図示せず)を備えている。
【0099】
光源部732は、液晶表示パネル722に光を照射する光源である。図27に示すように、光源部732は、液晶表示パネル722の背面側(-Z側)に配置される。光源部732は、例えば、直下型バックライトである。光源部732は、白色LED素子、反射シート、拡散シート等を備えている(いずれも図示せず)。
【0100】
立体画像表示装置700の偏光変調素子10は、制御部780から供給され画像信号に同期する切り替え信号に基づいて、表示ユニット720から出射され光入射側基板102に入射する直線偏光光L1の偏光方向を、所定の第1方向(Y方向)と所定の第2方向(X方向)とに切り替える。具体的には、第1画像が表示ユニット720の液晶表示パネル722に表示され、直線偏光光L1が第1画像の表示光である場合、偏光変調素子10は、入射した直線偏光光L1の偏光方向をY方向に維持して出射する。一方、第2画像が表示ユニット720の液晶表示パネル722に表示され、直線偏光光L1が第2画像の表示光である場合、偏光変調素子10は、入射した直線偏光光L1の偏光方向をX方向に切り替えて出射する。
【0101】
偏光変調素子10は、ONレベルの切り替え信号が偏光変調素子10に供給されると、直線偏光光L1の偏光方向をY方向に維持して、出射光L2を出射する(ON状態)。一方、偏光変調素子10は、OFFレベルの切り替え信号が供給されると、直線偏光光L1の偏光方向を90°回転させ、X方向の偏光方向を有する出射光L2を出射する(初期配向状態)。偏光変調素子10から出射した出射光L2は、偏光二焦点レンズ760に入射する。切り替え信号については、後述する。
【0102】
立体画像表示装置700の偏光二焦点レンズ760は、偏光変調素子10から出射された出射光L2に対する焦点距離が出射光L2の偏光方向(X方向とY方向)によって異なるレンズである。偏光二焦点レンズ760は、第1画像と第2画像のそれぞれを、第1表示面712と第2表示面714のそれぞれに、観察者から見て虚像として結像させる。第1表示面712と第2表示面714は、観察者から見て奥行き方向(-Z方向)の異なる位置に位置する仮想の表示面である。本実施形態では、図27に示すように、第1表示面712と第2表示面714は、観察者から見て表示ユニット720よりも遠くに位置する。また、第2表示面714が、第1表示面712よりも観察者側(+Z側)に位置している。
【0103】
観察者は、時分割で順次に表示される、第1表示面712の第1画像の虚像と第2表示面714の第2画像の虚像とを見て、表示対象が第1表示面712と第2表示面714との間に位置すると認識する。観察者が認識する表示対象の位置は、第1画像と第2画像の明るさ(例えば、輝度)の比を調整することにより、変えることができる。例えば、第1画像と第2画像の明るさの比が1:1である場合、観察者は、表示対象が第1表示面712と第2表示面714の中間に位置すると認識する。
【0104】
偏光二焦点レンズ760は、例えば、液晶レンズである。偏光二焦点レンズ(液晶レンズ)760は、図29に示すように、第1透光性基板761と、第2透光性基板762と、液晶764とを備える。
【0105】
第1透光性基板761と第2透光性基板762は、例えば、ガラス基板である。第1透光性基板761は、樹脂製のフレネルレンズ766を、第2透光性基板762に対向する主面761aに有する。第1透光性基板761と第2透光性基板762は、シール材767により貼り合わされ、液晶764を挟持する。液晶764は、例えば、正の屈折率異方性Δnを有するネマティック液晶である。液晶764は、図示しない配向膜によりY方向に配向されている。
【0106】
Y方向に偏光方向を有する出射光L2(第1画像の表示光)が、偏光二焦点レンズ760に入射すると、正の屈折率異方性Δnを有する液晶(ネマティック液晶)764がY方向に配向されているので、偏光二焦点レンズ760の出射光L2に対する焦点距離は短く、第1画像が第1表示面712に結像される。一方、X方向に偏光方向を有する出射光L2(第2画像の表示光)が、偏光二焦点レンズ760に入射すると、偏光二焦点レンズ760の出射光L2に対する焦点距離は長く、第2画像が第2表示面714に結像される。
【0107】
立体画像表示装置700の制御部780は、図示しない外部装置から入力される入力信号に基づいて、表示ユニット720の液晶表示パネル722と、偏光変調素子10とを制御する。制御部780は、図30に示すように、表示駆動部782と、偏光変調素子駆動部784とを有する。
【0108】
制御部780の表示駆動部782は、入力信号から、第1画像を表示するための第1画像信号と第2画像を表示するための第2画像信号とを生成する。また、表示駆動部782は、画像信号を液晶表示パネル722に供給する。さらに、表示駆動部782は、偏光変調素子駆動部784に、画像信号の供給開始に同期する同期信号を供給する。
【0109】
制御部780の偏光変調素子駆動部784は、表示駆動部782から供給された同期信号に基づいて、切り替え信号を生成する。また、偏光変調素子駆動部784は、生成した切り替え信号を偏光変調素子10に供給する。本実施形態では、偏光変調素子駆動部784は、第1画像が液晶表示パネル722に表示される場合に、切り替え信号をONレベル(所定の電圧)にして偏光変調素子10に供給する。
【0110】
図31は、制御部780のハードウェアの構成を示す。制御部780は、CPU(Central Processing Unit)792と、ROM(Read Only Memory)794と、RAM(Random Access Memory)796と、入出力インタフェース798とを備える。CPU792とROM794とRAM796と入出力インタフェース798は、バス799によって接続される。CPU792は、各種の処理を実行する。ROM794は、プログラムとデータとを記憶している。RAM796は、データを記憶する。入出力インタフェース798は、CPU792と、液晶表示パネル722と偏光変調素子10と外部装置との信号を入出力する。制御部780の機能は、CPU792が、ROM794に記憶されたプログラムを実行することによって、実現される。
【0111】
偏光変調素子10が直線偏光光L1の散乱を抑制できるので、立体画像表示装置700はぼやけの少ない表示を観察者に提供できる。
【0112】
<変形例>
以上、実施形態を説明したが、本開示は、要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0113】
実施形態1の偏光変調素子10では、ネマティック液晶層106のねじれ角αは90°であるが、ネマティック液晶層106のねじれ角αは90°に限定されない。
【0114】
実施形態2の偏光変調素子20と実施形態3の偏光変調素子30では、偏光変調素子20、30を形成しているTNセル200のねじれ角αは等しい。偏光変調素子20、30を形成しているTNセル200のねじれ角αは、互いに異なってもよい。また、TNセル200のネマティック液晶層106のそれぞれのねじれ角αの和は、90°に限定されない。
【0115】
実施形態2の偏光変調素子20は4つのTNセル200を備える。偏光変調素子20は、複数(2つ以上)のTNセル200を備えればよい。例えば、偏光変調素子20は、ネマティック液晶層106のねじれ角αが45°である、2つのTNセル200を備えてもよい。
【0116】
実施形態3の偏光変調素子30は4つのTNセル200を備える。偏光変調素子30は、3つ以上のTNセル200を備えればよい。例えば、偏光変調素子20は、ネマティック液晶層106のねじれ角αが30°である、3つのTNセル200を備えてもよい。
【0117】
また、実施形態3の偏光変調素子30では、2番目のTNセル220と3番目のTNセル230の間において、TNセル220の光出射側基板104の配向軸方向224と、TNセル230の光入射側基板102の配向軸方向232が、直交している。偏光変調素子30では、少なくとも1つのTNセル200の間において、一方のTNセル200の光出射側基板104の配向軸方向250と、他方のTNセル200の光入射側基板102の配向軸方向250が直交していればよい。例えば、4つのTNセル200を有する偏光変調素子30において、1番目のTNセル200と2番目のTNセル200の間と、3番目のTNセル200と4番目のTNセル200の間で、一方のTNセル200の光出射側基板104の配向軸方向250と、他方のTNセル200の光入射側基板102の配向軸方向250が、直交してもよい。
【0118】
スマートガラス400とマジックミラー500と表示装置600と立体画像表示装置700は、偏光変調素子10の代わりに、偏光変調素子20又は偏光変調素子30を備えてもよい。
【0119】
以上、好ましい実施形態について説明したが、本開示に係る特定の実施形態に限定されるものではなく、本開示には、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲が含まれる。
【符号の説明】
【0120】
10,20,30 偏光変調素子、102 光入射側基板、102a 主面、102b 透光性電極、102c 配向膜、104 光出射側基板、104a 主面、104b 透光性電極、104c 配向膜、106 ネマティック液晶層、106M 液晶分子、108 重合体、109 シール材、112,114 配向軸方向、200,210,220,230,240 TNセル(ねじれネマティック液晶セル)、212,214,222,224,232,234、242,244,250 配向軸方向、400 スマートガラス、410 透光性基板、420 第1偏光板、430 第2偏光板、500 マジックミラー、510 ハーフミラー、600 表示装置、610 表示パネル、620 ハーフミラー、700 立体画像表示装置、712 第1表示面、714 第2表示面、720 表示ユニット、722 液晶表示パネル、723D データドライバ、723G ゲートドライバ、732 光源部、760 偏光二焦点レンズ、761 第1透光性基板、761a 主面、762 第2透光性基板、764 液晶、766 フレネルレンズ、767 シール材、780 制御部、782 表示駆動部、784 偏光変調素子駆動部、792 CPU、794 ROM、796 RAM、798 入出力インタフェース、799 バス、Δn 屈折異方性、Δε 誘電率異方性、α ねじれ角、L1 直線偏光光(入射光)、L2 出射光、P 画素
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
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図18
図19
図20
図21
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図28
図29
図30
図31