(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092318
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】スロットル装置
(51)【国際特許分類】
F02D 11/10 20060101AFI20240701BHJP
【FI】
F02D11/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208156
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 雄一
(72)【発明者】
【氏名】久野 章人
【テーマコード(参考)】
3G065
【Fターム(参考)】
3G065CA24
3G065CA33
3G065DA04
(57)【要約】
【課題】スロットル装置のコイルスプリングのオープナスプリング部とリターンスプリング部の一方だけが共振したときに中間フックに過度の負荷がかかるのを抑止する。
【解決手段】一つの実施形態はスロットル装置であって、スロットルシャフトと結合され駆動源によって回転させられる回転部材と、スロットルボデーと回転部材との間に介装されスロットルバルブをデフォルト位置に向かって付勢するコイルスプリングとを備える。コイルスプリングは第一のスプリング部と第二のスプリング部とこれらを接続する中間フックとを有する。中間フックは回転部材に設けられた第一のストッパとスロットルボデーに設けられた第二のストッパとに係合でき、第一のストッパまたは第二のストッパに係合したとき第一のスプリング部の側にある部分が第一のストッパまたは第二のストッパに当接するようになっている。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スロットル装置であって、
吸気通路を形成するスロットルボデーと、
前記吸気通路を開閉するスロットルバルブと、
前記スロットルバルブと結合されたスロットルシャフトと、
前記スロットルシャフトと結合され駆動源によって回転させられる回転部材と、
前記スロットルボデーと前記回転部材との間に介装され前記スロットルバルブをデフォルト位置に向かって付勢するコイルスプリングとを備え、
前記コイルスプリングは、第一の端部を含む第一のスプリング部と、第二の端部を含む第二のスプリング部と、前記第一のスプリング部と前記第二のスプリング部とを接続する中間フックとを有し、
前記第一の端部は前記回転部材に設けられた第一のスプリング係止部に係止され、第二の端部は前記スロットルボデーに設けられた第二のスプリング係止部に係止されており、
前記中間フックは前記回転部材に設けられた第一のストッパと前記スロットルボデーに設けられた第二のストッパとに係合できるようになっており、
前記回転部材または前記スロットルシャフトに設けられ前記第一のスプリング部と前記第二のスプリング部の内周側を支持する内周支持部と、前記回転部材に設けられ前記第一のスプリング部の外周側を支持する外周支持部とを備えており、
前記中間フックは前記第一のスプリング部の側にある第一部分と前記第二のスプリング部の側にある第二部分とを有し、前記中間フックが前記第一のストッパまたは前記第二のストッパに係合したとき、前記第一部分が前記第一のストッパまたは前記第二のストッパに当接するようになっているスロットル装置。
【請求項2】
請求項1のスロットル装置であって、前記中間フックが前記第一のストッパまたは前記第二のストッパに係合したとき、前記第二部分が前記第一のストッパまたは前記第二のストッパに当接しないようになっているスロットル装置。
【請求項3】
請求項1または2のスロットル装置であって、前記中間フックは前記第一のストッパと前記第二のストッパに対向するストッパ対向面を有し、前記ストッパ対向面が前記コイルスプリングの中心軸線に対し傾いているスロットル装置。
【請求項4】
請求項1または2のスロットル装置であって、前記第一のストッパと前記第二のストッパの少なくとも一方の当接面が前記回転部材の中心軸線に対し傾いているスロットル装置。
【請求項5】
請求項1のスロットル装置であって、前記回転部材は前記第一のスプリング係止部に係止された前記第一のスプリング部の前記第一の端部を包囲する保持穴を有しているスロットル装置。
【請求項6】
請求項5のスロットル装置であって、前記第一のスプリング係止部が前記保持穴の内壁として形成されているスロットル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術はスロットル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンに供給される吸気量を調節する自動車のスロットル装置は、通常、スロットルバルブ(ディスク)に固定されたシャフトを電気モータで回転させることによってボデーに形成された吸気通路を開閉するようになっている。多くの場合、このようなスロットル装置には、モータへの通電が断たれたときでも若干の吸気量を確保できるようにスロットルバルブを規定のデフォルト位置に動かす機構が設けられる。例えば、特開2020-033942号公報に開示されているスロットル装置では、コイルスプリング(トーションスプリング)によってスロットルバルブをデフォルト位置に向かって付勢している。
【0003】
具体的には、電気モータの回転をシャフトに伝達するためのギヤ列の最終ギヤとスロットル装置のボデーとの間にこのコイルスプリングが取り付けられている。このコイルスプリングは互いに逆の向きに巻かれたオープナスプリング部とリターンスプリング部とをU字状の中間フックで接続することにより構成されている。中間フックがギヤとボデーの一方のみに係止されることでリターンスプリング部とオープナスプリング部の一方がデフォルト位置への付勢力を発揮するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のようにスロットルバルブをデフォルト位置に向かって付勢するコイルスプリングは、ギヤとボデーに取り付けられた状態においてその一部の周回が大きく偏心することがあるため、コイルスプリングの内側や外側にコイルスプリングを支持する部材がギヤに設けられることがある。上記の特開2020-033942号公報では、内周支持部がオープナスプリング部とリターンスプリング部の両者を内側から支持している一方で、外周支持部はオープナスプリング部のみを外側から押さえている。このようにオープナスプリング部とリターンスプリング部の一方だけが外周支持部により支持されていると、両者が異なる方向に偏心し、周方向に見て内周支持部や外周支持部との接触点がずれることとなる。その結果、オープナスプリング部とリターンスプリング部とで中間フックから支持点までの長さが異なることとなり、一方だけが共振すると中間フック(特にU字の折り返し点)に過度の負荷がかかる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本技術のひとつの態様はスロットル装置であって、吸気通路を形成するスロットルボデーと、前記吸気通路を開閉するスロットルバルブと、前記スロットルバルブと結合されたスロットルシャフトと、前記スロットルシャフトと結合され駆動源によって回転させられる回転部材とを備える。スロットル装置はさらに、前記スロットルボデーと前記回転部材との間に介装され前記スロットルバルブをデフォルト位置に向かって付勢するコイルスプリングを備える。前記コイルスプリングは、第一の端部を含む第一のスプリング部と、第二の端部を含む第二のスプリング部と、前記第一のスプリング部と前記第二のスプリング部とを接続する中間フックとを有する。前記第一の端部は前記回転部材に設けられた第一のスプリング係止部に係止され、第二の端部は前記スロットルボデーに設けられた第二のスプリング係止部に係止されている。前記中間フックは前記回転部材に設けられた第一のストッパと前記スロットルボデーに設けられた第二のストッパとに係合できるようになっている。前記回転部材または前記スロットルシャフトに設けられ前記第一のスプリング部と前記第二のスプリング部の内周側を支持する内周支持部と、前記回転部材に設けられ前記第一のスプリング部の外周側を支持する外周支持部とを備えている。前記中間フックは前記第一のスプリング部の側にある第一部分と前記第二のスプリング部の側にある第二部分とを有し、前記中間フックが前記第一のストッパまたは前記第二のストッパに係合したとき、前記第一部分が前記第一のストッパまたは前記第二のストッパに当接するようになっている。
【0007】
実施形態によっては、前記中間フックが前記第一のストッパまたは前記第二のストッパに係合したとき、前記第二部分が前記第一のストッパまたは前記第二のストッパに当接しないようになっている。
【0008】
実施形態によっては、前記中間フックは前記第一のストッパと前記第二のストッパに対向するストッパ対向面を有し、前記ストッパ対向面が前記コイルスプリングの中心軸線に対し傾いている。
【0009】
実施形態によっては、前記第一のストッパと前記第二のストッパの少なくとも一方の当接面が前記回転部材の中心軸線に対し傾いている。
【0010】
実施形態によっては、前記回転部材は前記第一のスプリング係止部に係止された前記第一のスプリング部の前記第一の端部を包囲する保持穴を有している。
【0011】
実施形態によっては、前記第一のスプリング係止部が前記保持穴の内壁として形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一つの実施形態としてのスロットル装置の斜視図である。
【
図2】スロットル装置のモータとスロットルシャフトを通る平面で切った断面図であり、斜線を施した面が断面を示す。
【
図5】コイルスプリングを単独で示す側面図であり、中心軸線に対して傾いた中間フックを示している。
【
図6】スロットルギヤにコイルスプリングのオープナスプリング部を取り付けた状態を示す図であり、コイルスプリングは中間フックで切断されている。
【
図7】スロットルバルブがデフォルト位置にあるときのスロットル装置のハウジング部を蓋を開けて示す図である。
【
図8】スロットルバルブが全閉位置にあるときのスロットル装置のハウジング部を蓋を開けて示す図である。
【
図9】スロットルバルブが全開位置にあるときのスロットル装置のハウジング部を蓋を開けて示す図である。
【
図10】偏心するオープナスプリング部とそれに作用する外周支持部とを軸方向に見た図である。
【
図11】外周支持部に押さえられることによってオープナスプリング部がリターンスプリング部とは異なる方向に偏心している状態を示す側面図である。
【
図12】外周支持部がない場合の偏心するオープナスプリング部を軸方向に見た図である。
【
図13】外周支持部がない場合の偏心するオープナスプリング部の側面図である。
【
図14】別の実施形態として、スロットルギヤの中心軸線に対して傾いたギヤ側ストッパを示す側面図である。
【
図15】スロットルギヤに取り付ける途中において外周支持部の内側に嵌まり込もうとするコイルスプリングを示す斜視図である。
【
図16】スロットルギヤに取り付けられたコイルスプリングを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、各種実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0014】
[スロットル装置]
図1~
図3は、自動車等の車両に搭載されエンジンへの空気吸入量を調節する、ひとつの実施形態としてのスロットル装置10を示す。スロットル装置10は吸気通路13を形成するスロットルボデー12を備える。スロットルボデー12は金属製あるいは樹脂製とすることができる。また、スロットル装置10は吸気通路13を通過する流量を調節する回転可能な円板状のスロットルバルブ(ディスク)15を備える。スロットルバルブ15は、吸気通路13の両側においてスロットルボデー12に取り付けられた軸受18、19を介して回転可能に支持されたスロットルシャフト17に固定される。スロットルバルブ15は吸気通路13にほぼ直交する全閉位置(
図8)から吸気通路13とほぼ平行になる全開位置(
図9)までの間で回転可能である。スロットルシャフト17が回転するとスロットルバルブ15が開閉する。スロットルバルブ15とスロットルシャフト17はいずれも金属製とすることができる。
【0015】
[モータと伝達機構]
スロットル装置10はスロットルバルブ15を駆動するための駆動源としてのモータ22を備える。モータ22が出力する回転は、伝達機構を介してスロットルシャフト17に伝達される。モータ22と伝達機構はスロットルボデー12に形成されたハウジング部に収容され、スロットルボデー12はこのハウジング部を閉じる蓋29を備える。一つの実施形態として、伝達機構は、モータ22の出力軸23に固定された駆動ギヤ24、スロットルボデー12に中間軸27を介して回転可能に支持された中間ギヤ26、スロットルシャフト17に同軸で固定された従動ギヤであるスロットルギヤ20からなる。中間ギヤ26は中間軸27に同軸に固定された大径歯部26aと小径歯部26bを有し、大径歯部26aには駆動ギヤ24、小径歯部26bにはスロットルギヤ20の歯部28がそれぞれ噛み合わされる。スロットルギヤ20は樹脂製とすることができる。スロットルシャフト17はスロットルギヤ20に設けられた取付穴21に差し込まれて、端部のかしめにより固定される。モータ22は外部の電子制御装置(ECU)によって制御される。モータ22の回転方向と回転量を制御することによりスロットルバルブ15の開度が調節される。
【0016】
[コイルスプリング]
図2、
図3、
図5に示すように、スロットル装置10は、スロットルバルブ15を全閉位置(
図8)から少し開いた位置である所定のデフォルト位置(
図7)に向かって付勢するコイルスプリング30を備える。このコイルスプリング30はトーションスプリングとして機能する。モータ22に通電されているとき(すなわち出力軸23を制御できるとき)には、コイルスプリング30の付勢力に逆らってスロットルバルブ15を全閉位置(
図8)と全開位置(
図9)の間の任意の位置に回転させることができる。モータ22への通電が断たれたときには、コイルスプリング30の付勢力によりスロットルバルブ15が自動的にデフォルト位置まで回転させられ、吸気通路13を通して若干量の空気をエンジンに供給することが可能となる。
【0017】
具体的には、コイルスプリング30は互いに逆向きに巻かれたリターンスプリング部35(例えば約6回巻き)とオープナスプリング部37(例えば約2回巻き)が接続されて構成され、スロットルボデー12とスロットルギヤ20との間に介装される。コイルスプリング30の両端部31、32は径方向外方に突出するように曲げられ、一方の端部31はスロットルボデー12に設けられたボデー側スプリング係止部40(
図7参照)に係止され、他方の端部32はスロットルギヤ20に設けられたギヤ側スプリング係止部42に係止される。スロットルボデー12に係止された方の端部31はリターンスプリング部35の端部でもあり、スロットルギヤ20に係止された方の端部32はオープナスプリング部37の端部でもある。
【0018】
図3、
図5、
図6、
図16に示すように、リターンスプリング部35とオープナスプリング部37の接続部はU字状の折り返し部となっており、この折り返し部が径方向外方に突出するように曲げられる。この曲げられた折り返し部は中間フック33としてスロットルギヤ20に設けられたギヤ側ストッパ44とスロットルボデー12に設けられたボデー側ストッパ46の少なくともいずれかに係止されるようになっている。スロットルギヤ20がデフォルト位置(
図7)にあるとき、中間フック33は、スロットルギヤ20に設けられたギヤ側ストッパ44とスロットルボデー12に設けられたボデー側ストッパ46の両方に係止されている。このときリターンスプリング部35とオープナスプリング部37はいずれも自然状態から縮径する方向に捩じられて予荷重を付与された状態(弾性エネルギーを蓄えた状態)となっている。
【0019】
モータ22の駆動によりスロットルギヤ20がデフォルト位置(
図7)から全閉位置(
図8)に向かって回転しようとすると、コイルスプリング30の中間フック33はスロットルボデー12に設けられたボデー側ストッパ46に係止されるため、両端をスロットルボデー12によって拘束されたリターンスプリング部35は無効化される。一方で、スロットルギヤ20は中間フック33がボデー側ストッパ46に係止されたままスロットルボデー12に対して相対回転するため、スロットルギヤ20のギヤ側ストッパ44は中間フック33から離れる。スロットルギヤ20はコイルスプリング30の端部32を保持したまま回転するため、オープナスプリング部37はさらに縮径する方向に捩れる。スロットルギヤ20がデフォルト位置よりも全閉位置側にあるときにモータ22への通電が断たれると、スロットルギヤ20はオープナスプリング部37の付勢力によりデフォルト位置に戻される。
【0020】
モータ22の駆動によりスロットルギヤ20がデフォルト位置(
図7)から全開位置(
図9)に向かって回転しようとすると、中間フック33はスロットルギヤ20のギヤ側ストッパ44に係止されたままとなるため、両端をスロットルギヤ20によって拘束されたオープナスプリング部37は無効化される。一方で、スロットルギヤ20はギヤ側ストッパ44で中間フック33を係止したままスロットルボデー12に対して相対回転するため、リターンスプリング部35はさらに縮径する方向に捩れる。スロットルギヤ20がデフォルト位置よりも全開位置側にあるときにモータ22への通電が断たれると、スロットルギヤ20はリターンスプリング部35の付勢力によりデフォルト位置に戻される。
【0021】
スロットルギヤ20がデフォルト位置と全閉位置との間で回転するとオープナスプリング部37は捩れるが、この時のオープナスプリング部37のコイル線の各部分の回転量は均一ではない。例えば、オープナスプリング部37のうちスロットルギヤ20によって保持された端部32に近い部分はスロットルギヤ20に追随して回転するため、スロットルギヤ20に対する相対回転量は小さい。一方、オープナスプリング部37のうちボデー側ストッパ46に拘束された中間フック33に近い部分は、スロットルボデー12に対する回転量が小さい分、スロットルギヤ20に対する相対回転量は大きくなる。
【0022】
[内周支持部]
図4、
図6に示すように、スロットルギヤ20は、コイルスプリング30の内部に向かって突出しコイルスプリング30の偏心を抑制する内周支持部47を有する。一例として、内周支持部47はスロットルギヤ20の歯部28が形成された板状の基部から突出する筒状部として形成される。スロットルシャフト17を固定するための前述の取付穴21は、この筒状の内周支持部47の内側にインサート成形によって結合された金属板に形成することができる。内周支持部47は少なくともオープナスプリング部37を突き抜ける高さに形成され、リターンスプリング部35の内部に(例えば中間フック33からリターンスプリング部35の約2周分まで)突き出す高さに形成することもできる。
【0023】
図10、
図11に模式的に示したように、オープナスプリング部37は縮径方向に捩って予荷重を付与した状態で取り付けられるため、オープナスプリング部37の端部32側の周回37aはスロットルギヤ20の中心軸線に対しギヤ側スプリング係止部42から受ける反力とおおよそ同じ方向(矢印70)に偏心しようとする。これに対して内周支持部47はこの偏心しようとする周回37aの内周側を支持する。また、リターンスプリング部35も縮径方向に捩って予荷重を付与した状態で取り付けられるため、リターンスプリング部35の最も中間フック33側の周回35bはスロットルギヤ20の中心軸線に対しギヤ側ストッパ44(またはボデー側ストッパ46)から受ける反力とおおよそ同じ方向(矢印74)に偏心しようとする。これに対して内周支持部47はこの偏心しようとする周回35bの内周側を支持する。内周支持部47はまたスロットル装置10の作動中にスロットルギヤ20の回転によって捩られることで発生しうるコイルスプリング30の偏心を抑制する。
【0024】
図示しない別の実施形態として、スロットルギヤ20ではなくスロットルシャフト17に内周支持部を形成することもできる。
【0025】
図2に示すように、スロットルボデー12はスロットルギヤ20に近い方の軸受18を保持する軸受保持部45を有する。この軸受保持部45はリターンスプリング部35の内部に突き出す高さに形成し、リターンスプリング部35に対する追加の内周支持部として機能させることができる。しかしながら、以下の説明において単に内周支持部と言えばスロットルギヤ20に形成された内周支持部47を指す。
【0026】
[外周支持部]
図4、
図6に示すように、スロットルギヤ20には、コイルスプリング30のオープナスプリング部37の外周側と当接する少なくとも一つの外周支持部50が設けられる。外周支持部50はスロットルギヤ20に一体的に形成することができる。一つの実施形態として、外周支持部50は、スロットルギヤ20の歯部28が形成された基部48から内周支持部47と同じ側に延びるように形成される。例えば、外周支持部50はオープナスプリング部37と点接触するような形状とすることができ、例えばスロットルギヤ20の軸方向に平行に延びる円柱状とすることができる。
【0027】
図12、
図13に模式的に示したように、外周支持部50が形成されていないスロットルギヤ120を用いた場合、オープナスプリング部37に付与された予荷重に起因して、オープナスプリング部37の中間フック33側の周回37bはスロットルギヤ20の中心軸線に対しボデー側ストッパ46(またはギヤ側ストッパ44)から受ける反力とおおよそ同じ方向(矢印72)に大きく偏心する。特にオープナスプリング部37の巻き数(約2回)が比較的少ないため、ボデー側ストッパ46とギヤ側スプリング係止部42から受ける反力が各周回に分散されにくく、オープナスプリング部37の各周回の偏心量は大きくなりがちである。これにより、オープナスプリング部37のうち中間フック33に近い部分(図において右側)が内周支持部47に押し当てられ、その対極側にある部分(図において左側)は内周支持部47から大きく離れる。スロットルギヤ20がデフォルト位置から全閉位置に向かって回転するとオープナスプリング部37がさらに縮径方向に捩れるため、オープナスプリング部37が内周支持部47を押す力は増加する。スロットルギヤ20がデフォルト位置と全閉位置との間で回転する際には、中間フック33がボデー側ストッパ46に拘束されているため、前述の通りオープナスプリング部37のうち中間フック33に近い部分はスロットルギヤ20に対する相対回転量が大きい。したがって、オープナスプリング部37のこの部分が内周支持部47に押し当てられていると、スロットルギヤ20が回転する際にオープナスプリング部37と内周支持部47との間に摩擦が生じ、結果的にスロットルギヤ20の回転抵抗となる。
【0028】
これに対し、
図10、
図11に示すように、スロットルギヤ20に外周支持部50が設けられている上述の実施形態の場合、外周支持部50がオープナスプリング部37の中間フック33側の周回37bの外周側に当接し、その偏心を抑制する。これにより、その中間フック33側の周回37bがスロットルギヤ20の内周支持部47から離される。結果的に、オープナスプリング部37の中間フック33側の周回37bの内周側が内周支持部47から離される。したがって、スロットルギヤ20がデフォルト位置と全閉位置との間で回転する際にオープナスプリング部37と内周支持部47との間に生じる摩擦をなくすことができる。これにより、内周支持部47の摩耗を抑えることができるだけでなく、モータ22への負荷が低減されることからモータ22の小型化や伝達機構の減速比の削減が可能となり、スロットル装置10の小型化につながる。
【0029】
図示しない別の実施形態として、外周支持部50は、オープナスプリング部37の中間フック33側の周回37bを内周支持部47から完全に離す代わりに、オープナスプリング部37が内周支持部47を押す力を低減するように構成することもできる。すなわち、オープナスプリング部37が偏心しようとする方向(
図10の矢印72)とは逆の方向にオープナスプリング部37を押し返すように構成することができる。これにより、スロットルギヤ20が回転する際にオープナスプリング部37と内周支持部47との間に生じる摩擦を低減することができる。
【0030】
図6に示すように、外周支持部50は、オープナスプリング部37の中間フック33側の周回37bに中間フック33から略180°~360°の範囲内(例えば約270°)の位置で当接するように配置することができる。これにより、オープナスプリング部37と内周支持部47との間の相対回転が比較的に大きい箇所における接触を避け、効果的に摩擦を低減することができる。
【0031】
スロットルギヤ20の中心軸線から内周支持部47の外周面までの距離は一定でなくてよい。例えば、内周支持部47の外周面のうちオープナスプリング部37の端部32側の周回37aを支持すべき部分では大きく、オープナスプリング部37の中間フック33側の周回37bが偏心により外周面に近づいて来る部分では小さく設定することができる。
【0032】
図11に示すように、オープナスプリング部37が配置される内周支持部47と外周支持部50の間の最小間隔dは、オープナスプリング部37のコイル線径の2倍未満とすることができる。これにより、オープナスプリング部37のコイル線同士が内周支持部47と外周支持部50との間で重なるのを防止し、オープナスプリング部37の姿勢を安定化することができる。
【0033】
[中間フックの当接角度]
図11に示すように、コイルスプリング30の中間フック33のストッパ対向面34の向きは、中間フック33のオープナスプリング側脚部38(折り返し点39よりオープナスプリング部37側にある部分)がギヤ側ストッパ44に当接するような向きとする。ここで言う中間フック33のストッパ対向面34とは、ギヤ側ストッパ44に対向する側において中間フック33のオープナスプリング側脚部38とリターンスプリング側脚部36とが成す平面を指すものとする。コイルスプリング30単体で見た場合(
図5参照)、中間フック33のストッパ対向面34をコイルスプリング30の中心軸線76に対して(角度θだけ)傾けることにより上記のような向きを実現できる。リターンスプリング側脚部36はギヤ側ストッパ44に当接しなくてよいが、図示しない別の実施形態として、ギヤ側ストッパ44に当接させてもよい。例えば、中間フック33のストッパ対向面34はギヤ側ストッパ44の当接面49に対する角度αが0~7度となるような向きとすることができる。
【0034】
前述の通り、オープナスプリング部37は外周支持部50によって外周側から支持されているため、その中間フック33側の周回37bが内周支持部47から離されている。一方で、リターンスプリング部35は外周支持部50によって支持されていないため、その中間フック33側の周回35bはむしろ内周支持部47によって支持されている。その結果、オープナスプリング部37は中間フック33から周方向に見て3/4周ほどの位置で外周支持部50に支持されているのに対し、リターンスプリング部35は1/4周ほどの位置で内周支持部47に支持されており、両者の最初の支持点がずれている。この中間フック33から最初の支持点までの長さ(スパン)の違いにより、オープナスプリング部37とリターンスプリング部35の一方だけがコイルスプリング30の軸方向に共振する傾向にある。しかし、上述のように中間フック33のオープナスプリング側脚部38がギヤ側ストッパ44に当接しているため、オープナスプリング部37が共振しても、その振動が中間フック33の折り返し点39まで伝わるのが阻止される。したがって、折り返し点39に繰り返しの曲げや捩りの応力が加わるのが抑制され、振動に対するスロットル装置10の耐久性が向上する。
【0035】
図14に示すように、別の実施形態として、中間フック33のストッパ対向面34を傾ける代わりに、ギヤ側ストッパ44の当接面49をスロットルギヤ20の中心軸線あるいは中間フック33のストッパ対向面34に対して(角度βだけ)傾けることにより中間フック33のオープナスプリング側脚部38がギヤ側ストッパ44に当接するようにすることもできる。また、図示しない別の実施形態として、ギヤ側ストッパ44を傾けるのみならず、同じく中間フック33が当接するボデー側ストッパ46の当接面を同様に傾けることもできる。さらに別の実施形態として、中間フック33のストッパ対向面34と、ギヤ側ストッパ44、ボデー側ストッパ46の当接面とをいずれも傾けることもできる。これらの実施形態でも、オープナスプリング部37が共振した場合、上述と同様の理由からその振動が中間フック33の折り返し点39まで伝わるのが阻止される。
【0036】
[係止溝と保持穴]
図15、
図16に示すように、コイルスプリング30のギヤ側の端部32を係止させるギヤ側スプリング係止部42には、端部32を嵌合させることのできる係止溝43を設けることができる。さらに、ギヤ側スプリング係止部42は、コイルスプリング30のギヤ側の端部32を包囲する保持穴64の内壁として設けることもできる。これによりコイルスプリング30のギヤ側の端部32が使用時の振動や組み付け時にギヤ側スプリング係止部42から完全に外れてしまうのを抑止することができる。例えば、保持穴64は、ギヤ側スプリング係止部42を形成する支持柱66とギヤ側ストッパ44を形成する支持柱68との間に架橋部67をわたすことによって形成できる。コイルスプリング30のギヤ側の端部32は、特に架橋部67によってギヤ側スプリング係止部42から外れるのが抑制される。図示しない実施形態として、架橋部67の代わりに、ギヤ側スプリング係止部42を形成する支持柱66からギヤ側ストッパ44を形成する支持柱68に向かって延びる突起を設けてもよい。このようにギヤ側ストッパ44の支持柱68まで達しない突起であってもコイルスプリング30のギヤ側の端部32を部分的に包囲する保持穴を形成することができる。
【0037】
[スロットルギヤへのコイルスプリングの組み付け]
図15に示すように、コイルスプリング30をスロットルギヤ20に取り付けるには、端部32をギヤ側スプリング係止部42に係止させてから、オープナスプリング部37を縮径方向に捩りながら中間フック33をギヤ側ストッパ44に係止させる。このとき、オープナスプリング部37が確実に内周支持部47と外周支持部50との間に嵌まり込むように注意する必要がある。
図16はスロットルギヤ20に正しく取り付けられたコイルスプリング30を示している。
【0038】
[障害構造]
図4、
図15、
図16に示すように、スロットルギヤ20には、コイルスプリング30を誤った位置に取り付けるのを防止するための障害構造60を設けることもできる。障害構造60はスロットルギヤ20の基部48から外周支持部50と同じ側に延びるブロックとすることができる。障害構造60は好ましくはスロットルギヤ20の外周支持部50とギヤ側スプリング係止部42との間に配置される。一つの具体例として、障害構造60はスロットルギヤ20の軸心から見て約45°の角度範囲にわたる弧状のブロックとすることができる。また、障害構造60には頂部からスロットルギヤ20の基部48に向かって内側(内周支持部47側)へ傾斜する内側斜面62を設けることもできる。
【0039】
[他の実施形態]
図示しない別の実施形態として、コイルスプリング30は、スロットルバルブ15の開閉に要求される回転方向やスロットルバルブ15から延びるスロットルシャフト17の方向によっては、図示したものに対して鏡像となる形態のコイルスプリングを用いることもできる。このような鏡像の形態を用いる場合でもリターンスプリング部とコイルスプリングとが依然として互いに逆向きに巻かれたものであることは言うまでもない。
【0040】
さらに別の実施形態として、コイルスプリング30のリターンスプリング部35とオープナスプリング部37の巻き数は図示したものとは異なる数とすることができる。また別の実施形態として、リターンスプリング部35とオープナスプリング部37の各周回の径の相対的な大きさも図示したものとは異なる大きさに設定することができる。
【0041】
さらに別の実施形態として、コイルスプリング30を構成する二つのスプリング部のうちスロットルギヤ20に係止された第一のスプリング部をリターンスプリング部、スロットルボデー12に係止された第二のスプリング部をオープナスプリング部として機能させることもできる。この場合、スロットルバルブ15を開閉する際のスロットルギヤ20の回転方向が
図6に示した方向とは逆になる。このような実施形態においても、上述のような外周支持部を設けることにより(オープナスプリング部ではなく)リターンスプリング部の偏心を抑えることができる。さらに、中間フックのリターンスプリング側脚部をギヤ側ストッパに当接させることにより、リターンスプリング部が共振してもその振動が中間フックの折り返し点まで伝わるのを阻止することができる。
【0042】
以上、具体的な実施形態を説明したが、本技術はこれらの実施形態に限定されるものではなく、当業者であれば本技術の目的を逸脱することなく様々な置換、改良、変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0043】
10 スロットル装置
12 スロットルボデー
13 吸気通路
14 ハウジング部
15 スロットルバルブ
17 スロットルシャフト
18、19 軸受
20 スロットルギヤ
21 取付穴
22 モータ
23 出力軸
24 駆動ギヤ
26 中間ギヤ
26a 中間ギヤの大径歯部
26b 中間ギヤの小径歯部
27 中間軸
28 スロットルギヤの歯部
29 ハウジング部の蓋
30 コイルスプリング
31 コイルスプリングのボデー側の端部
32 コイルスプリングのギヤ側の端部
33 コイルスプリングの中間フック
34 中間フックのストッパ対向面
35 リターンスプリング部
35b リターンスプリング部の最も中間フック側の周回
36 中間フックのリターンスプリング側脚部
37 オープナスプリング部
38 中間フックのオープナスプリング側脚部
39 中間フックの折り返し点
37a オープナスプリング部の端部側の周回
37b オープナスプリング部の中間フック側の周回
40 ボデー側スプリング係止部
42 ギヤ側スプリング係止部
43 係止溝
44 ギヤ側ストッパ
45 軸受保持部
46 ボデー側ストッパ
47 内周支持部
48 スロットルギヤの基部
50 外周支持部
52 外側斜面
60 障害構造
62 内側斜面
64 保持穴
66 ギヤ側スプリング係止部の支持柱
67 架橋部
68 ギヤ側ストッパの支持柱
76 コイルスプリングの中心軸線