(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092319
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】給湯器
(51)【国際特許分類】
F24H 1/14 20220101AFI20240701BHJP
F24H 15/174 20220101ALI20240701BHJP
F24H 15/219 20220101ALI20240701BHJP
F24H 15/238 20220101ALI20240701BHJP
F24H 15/325 20220101ALI20240701BHJP
F24H 15/421 20220101ALI20240701BHJP
【FI】
F24H1/14 B
F24H15/174
F24H15/219
F24H15/238
F24H15/325
F24H15/421
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208158
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000112015
【氏名又は名称】株式会社パロマ
(74)【代理人】
【識別番号】100166017
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 和政
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 俊輝
【テーマコード(参考)】
3L034
【Fターム(参考)】
3L034BA22
3L034BB02
3L034CA03
3L034CA05
(57)【要約】
【課題】加熱初期に熱交換器から出湯管に流れ込む湯水の出口温度をより迅速にねらい温度に近づけやすく、加熱初期後の期間には出湯温度を安定させやすい。
【解決手段】給湯器1において、制御装置12は、予め定められたねらい温度から第2サーミスタ(出口温度検出部)によって検出される出口温度Tbを減じた値に対して係数Gを乗じることによりオフセットバイパス率Bofを算出し、オフセットバイパス率Bofが大きいほどバイパス率Bを大きくするようにバイパス弁19を調整し、出湯温度Trを設定温度Ttに近づけるように調整制御を行う。制御装置12は、ガスバーナ4Aの燃焼開始後の加熱初期には、第1係数G1を用いてオフセットバイパス率を算出する第1調整制御を行い、加熱初期の後、係数として第2係数G2を用いる第2調整制御を行う。制御装置12は、常に、又は所定条件が成立した場合に、第1係数G1よりも第2係数G2を低く決定する決定方法で係数Gを決定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを燃焼させ、前記ガスの燃焼によって生じた排気を供給するガスバーナと、
前記ガスバーナから供給される前記排気によって加熱される伝熱管を備える熱交換器と、
水を導入する入水口と前記伝熱管との間に設けられ、前記伝熱管に水を供給する入水管と、
前記伝熱管の下流側に接続され、前記伝熱管から供給される湯を流す出湯管と、
前記入水管から分岐する水のバイパス経路を構成するとともに前記出湯管に接続され、前記バイパス経路を介して前記出湯管に水を流し得るバイパス管と、
前記入水管から前記バイパス管を介して前記出湯管に流れる水の通水量を調整するバイパス弁と、
前記バイパス弁を制御する制御装置と、
前記熱交換器から前記出湯管に流れ込む湯水の出口温度を第1位置にて検出する出口温度検出部と、
前記出湯管における前記第1位置よりも下流側の第2位置にて出湯温度を検出する出湯温度検出部と、
を有し、
前記通水量と、前記入水管において前記バイパス管よりも前記熱交換器側へ供給される供給水量と、の和を総水量とし、前記総水量に対する前記通水量の比率をバイパス率とした場合に、前記バイパス弁によって前記通水量が調整されることにより前記バイパス率が調整され、
前記制御装置は、
予め定められたねらい温度から前記出口温度検出部によって検出される前記出口温度を減じた値に対して係数を乗じることによりオフセットバイパス率を算出し、
前記オフセットバイパス率が大きいほど前記バイパス率を大きくするように前記バイパス弁を調整し、前記出湯温度を設定温度に近づけるように調整制御を行い、
前記ガスバーナの燃焼開始後の加熱初期には、前記係数として第1係数を用いて前記オフセットバイパス率を算出する第1調整制御を行い、
前記加熱初期の後、前記係数として第2係数を用いて前記オフセットバイパス率を算出する第2調整制御を行い
常に、又は所定条件が成立した場合に、前記第1係数よりも前記第2係数を低く決定する決定方法で前記係数を決定する
給湯器。
【請求項2】
前記制御装置は、前記設定温度が閾値温度未満である場合に、前記第1係数よりも前記第2係数を低く決定する決定方法で前記係数を決定する
請求項1に記載の給湯器。
【請求項3】
前記通水量を検出する水量検出部を有し、
前記制御装置は、前記係数として前記第1係数及び前記第2係数のいずれを決定する場合でも、前記水量検出部によって検出される前記通水量が大きいほど前記係数を大きくし、
前記決定方法は、前記水量検出部によって検出される前記通水量がいずれの値でも場合でも、当該値に基づいて決定される前記第1係数よりも当該値に基づいて決定される前記第2係数の方が低い
請求項1又は請求項2に記載の給湯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、給湯器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の給湯装置は、熱交換器と、熱交換器に接続されて水道水を供給する入水管と、熱交換器に接続されて加熱された湯を出湯する出湯管と、入水管と出湯管との間に接続されて熱交換器をバイパスするバイパス管と、を備える。更に給湯装置は、バイパス管流れる流量を制御可能なミキシングモータと、内胴温度を検出する内胴サーミスタと、内胴サーミスタによって得られる内胴温度に応じてミキシングモータの動作を制御するコントローラと、を備える。この給湯装置では、コントローラは、内胴サーミスタによって得られる内胴温度の低下勾配に応じて、ミキシングモータによってバイパス管を流れる流量を減少させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バイパス管を備えた給湯器は、「バイパス管を流れる水の量と熱交換器を流れる水の量とを加算した総水量」に対する「バイパス管を流れる水の量」の割合(バイパス率)を調整することで、熱交換器の加熱度合いや熱交換器を流れる湯水の加熱度合いを調整することができる。例えば、上記バイパス率が大きいほど、熱交換器は加熱されやすく、上記バイパス率が小さいほど、熱交換器は加熱されにくくなる。
【0005】
この種の給湯器では、バイパス率の増加速度や減少速度を大きくすると、熱交換器を通る湯水を加熱する速度を大きく変更することができるが、目標温度に対するオーバーシュートやアンダーシュートが大きくなりやすいという問題がある。一方で、バイパス率の増加速度や減少速度が抑えられると、目標温度に対するオーバーシュートやアンダーシュートは抑制されやすいが、湯水の温度を目標温度に近づけるまでの時間が長くなりやすい。
【0006】
本開示の目的の一つは、加熱初期に熱交換器から出湯管に流れ込む湯水の出口温度をより迅速にねらい温度に近づけやすく、加熱初期後の期間には出湯温度を安定させやすい技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一つである給湯器は、
ガスを燃焼させ、前記ガスの燃焼によって生じた排気を供給するガスバーナと、
前記ガスバーナから供給される前記排気によって加熱される伝熱管を備える熱交換器と、
水を導入する入水口と前記伝熱管との間に設けられ、前記伝熱管に水を供給する入水管と、
前記伝熱管の下流側に接続され、前記伝熱管から供給される湯を流す出湯管と、
前記入水管から分岐する水のバイパス経路を構成するとともに前記出湯管に接続され、前記バイパス経路を介して前記出湯管に水を流し得るバイパス管と、
前記入水管から前記バイパス管を介して前記出湯管に流れる水の通水量を調整するバイパス弁と、
前記バイパス弁を制御する制御装置と、
前記熱交換器から前記出湯管に流れ込む湯水の出口温度を第1位置にて検出する出口温度検出部と、
前記出湯管における前記第1位置よりも下流側の第2位置にて出湯温度を検出する出湯温度検出部と、
を有し、
前記通水量と、前記入水管において前記バイパス管よりも前記熱交換器側へ供給される供給水量と、の和を総水量とし、前記総水量に対する前記通水量の比率をバイパス率とした場合に、前記バイパス弁によって前記通水量が調整されることにより前記バイパス率が調整され、
前記制御装置は、
予め定められたねらい温度から前記出口温度検出部によって検出される前記出口温度を減じた値に対して係数を乗じることによりオフセットバイパス率を算出し、
前記オフセットバイパス率が大きいほど前記バイパス率を大きくするように前記バイパス弁を調整し、前記出湯温度を設定温度に近づけるように調整制御を行い、
前記ガスバーナの燃焼開始後の加熱初期には、前記係数として第1係数を用いて前記オフセットバイパス率を算出する第1調整制御を行い、
前記加熱初期の後、前記係数として第2係数を用いて前記オフセットバイパス率を算出する第2調整制御を行い
常に、又は所定条件が成立した場合に、前記第1係数よりも前記第2係数を低く決定する決定方法で前記係数を決定する
給湯器。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る技術は、加熱初期に熱交換器から出湯管に流れ込む湯水の出口温度をより迅速にねらい温度に近づけやすく、加熱初期後の期間には出湯温度を安定させやすい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る給湯器を概略的に例示する説明図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る給湯器で行われる出湯制御の流れを例示するフローチャートである。
【
図3】
図3は、
図2で例示される出湯制御における通常制御の流れを例示するフローチャートである。
【
図4】
図4は、
図3で例示される通常制御における微分FBバイパス率計算の流れを例示するフローチャートである。
【
図5】
図5は、経過時間tpが基準時間以下である場合の水量と係数(第1係数)との対応関係を示す表である。
【
図6】
図6は、経過時間tpが基準時間を超える場合の水量と係数との対応関係を示す表である。
【
図7】
図7は、水量と係数との対応関係を示すグラフである。
【
図8】
図8は、第1実施形態の発明を適用しない参考例1における時間経過に伴う各値の推移を示すグラフである。
【
図9】
図9は、第1実施形態の発明を適用しない参考例2における時間経過に伴う各値の推移を示すグラフである。
【
図10】
図10は、第1実施形態の発明を適用した例における時間経過に伴う各値の推移を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、本開示の実施形態が列記されて例示される。なお、以下で例示される特徴は、矛盾しない組み合わせでどのように組み合わされてもよい。
【0011】
〔1〕ガスを燃焼させ、前記ガスの燃焼によって生じた排気を供給するガスバーナと、
前記ガスバーナから供給される前記排気によって加熱される伝熱管を備える熱交換器と、
水を導入する入水口と前記伝熱管との間に設けられ、前記伝熱管に水を供給する入水管と、
前記伝熱管の下流側に接続され、前記伝熱管から供給される湯を流す出湯管と、
前記入水管から分岐する水のバイパス経路を構成するとともに前記出湯管に接続され、前記バイパス経路を介して前記出湯管に水を流し得るバイパス管と、
前記入水管から前記バイパス管を介して前記出湯管に流れる水の通水量を調整するバイパス弁と、
前記バイパス弁を制御する制御装置と、
前記熱交換器から前記出湯管に流れ込む湯水の出口温度を第1位置にて検出する出口温度検出部と、
前記出湯管における前記第1位置よりも下流側の第2位置にて出湯温度を検出する出湯温度検出部と、
を有し、
前記通水量と、前記入水管において前記バイパス管よりも前記熱交換器側へ供給される供給水量と、の和を総水量とし、前記総水量に対する前記通水量の比率をバイパス率とした場合に、前記バイパス弁によって前記通水量が調整されることにより前記バイパス率が調整され、
前記制御装置は、
予め定められたねらい温度から前記出口温度検出部によって検出される前記出口温度を減じた値に対して係数を乗じることによりオフセットバイパス率を算出し、
前記オフセットバイパス率が大きいほど前記バイパス率を大きくするように前記バイパス弁を調整し、前記出湯温度を設定温度に近づけるように調整制御を行い、
前記ガスバーナの燃焼開始後の加熱初期には、前記係数として第1係数を用いて前記オフセットバイパス率を算出する第1調整制御を行い、
前記加熱初期の後、前記係数として第2係数を用いて前記オフセットバイパス率を算出する第2調整制御を行い
常に、又は所定条件が成立した場合に、前記第1係数よりも前記第2係数を低く決定する決定方法で前記係数を決定する
給湯器。
【0012】
上記〔1〕の給湯器は、加熱初期にはオフセットバイパス率をより大きく設定し、熱交換器の加熱を促進することができる。よって、上記給湯器は、加熱初期には熱交換器の温度を早期に上昇させてドレンの発生を抑制することができる。一方で、上記給湯器は、加熱初期の後の期間に、オフセットバイパス率を相対的に低く設定し、ねらい温度に緩やかに近づけることができる。よって、上記給湯器は、出口温度がある程度上昇した後に、ねらい温度付近で出口温度が急激かつ大きく変化することを抑制することができ、ねらい温度付近で出口温度の上昇と下降が繰り返されるハンチング現象を抑えやすい。
【0013】
〔2〕前記制御装置は、前記設定温度が閾値温度未満である場合に、前記第1係数よりも前記第2係数を低く決定する決定方法で前記係数を決定する
〔1〕に記載の給湯器。
【0014】
設定温度が相対的に小さい場合、熱交換器の温度がある程度上昇した後に出口温度を急激に変化させる方法を用いると、出口温度がねらい温度を超えてより大きく上昇しやすくなる。しかしながら、上記〔2〕の給湯器のように、熱交換器の温度がある程度上昇した後に出口温度が急激かつ大きく変化することを抑制すれば、設定温度が相対的に小さい場合に出口温度がねらい温度を大きく超えて上昇しすぎることを抑えやすくなる。
【0015】
〔3〕前記通水量を検出する水量検出部を有し、
前記制御装置は、前記係数として前記第1係数及び前記第2係数のいずれを決定する場合でも、前記水量検出部によって検出される前記通水量が大きいほど前記係数を大きくし、
前記決定方法は、前記水量検出部によって検出される前記通水量がいずれの値でも場合でも、当該値に基づいて決定される前記第1係数よりも当該値に基づいて決定される前記第2係数の方が低い
〔1〕又は〔2〕に記載の給湯器。
【0016】
上記〔3〕の給湯器は、加熱初期には、水量が大きいほど熱交換器の加熱度合いを大きく調整するように水量に合わせた加熱を行い、いずれの水量の場合でも、オフセットバイパス率をより大きく設定して熱交換器の加熱を促進することができる。一方で、この給湯器は、加熱初期の後の期間にも、水量が大きいほど熱交換器の加熱度合いを大きく調整するように水量に合わせた加熱を行うが、第2係数を用いる場合には、いずれの水量の場合でも、オフセットバイパス率をより小さく設定し、ねらい温度付近で出口温度が急激かつ大きく変化することを抑制することができる。
【0017】
<第1実施形態>
1.給湯器の概要
図1には、第1実施形態に係る給湯器1が例示される。
図1に示される給湯器1は、バイパスミキシング式の給湯装置として構成される。給湯器1において、器具本体内には、給気ファン3を備えた燃焼室2が設けられている。燃焼室2は、内部にガスを燃焼させる空間が構成された器具である。燃焼室2には、給気ファン3によって空気が供給され、ガス管8を介して燃料ガスが供給される。
【0018】
燃焼室2の内部には、ガスバーナ4Aを備えたバーナユニット4が複数設けられる。複数のバーナユニット4は、互いに燃焼能力が異なっている。具体的には、バーナユニット4毎に、ガスバーナ4Aの個数が異なっている。各々のガスバーナ4Aは、混合ガスを燃焼させ、混合ガスの燃焼によって生じた排気を供給するように動作する。ガスバーナ4Aによって燃焼される混合ガスは、ガス管8を介して供給される燃料ガスと、給気ファン3からの一次空気とが混合されるガスである。ガスバーナ4Aは、上記ガスを燃焼させ、上記ガスの燃焼によって生じた排気を供給するように機能する。
【0019】
ガスバーナ4Aに通じるガス管8は、共通の経路をなす共通管8Aと、共通管8Aから各々のバーナユニット4へと分岐する複数の分岐管8Bとを備える。共通管8Aには、元電磁弁9及びガス比例弁10が設けられている。各々の分岐管8Bには、切替電磁弁11,11・・がそれぞれ設けられている。元電磁弁9、ガス比例弁10、切替電磁弁11,11・・の各々は、制御装置12によって開度又は開閉が制御される。符号13はイグナイタであり、符号14は点火電極であり、符号15はフレームロッドである。制御装置12は、イグナイタ13及び点火電極14を動作させて点火させ得る。
【0020】
熱交換器5は、ガスバーナ4Aの燃焼によって加熱され、熱交換を行う器具である。熱交換器5は、ガスバーナ4Aから供給される排気(燃焼排気)によって加熱される伝熱管5Aを備える。伝熱管5Aの一端側には入水管6が接続され、他端側には出湯管7が接続される。入水管6から伝熱管5Aに水が流れ込むと、流れ込んだ水は伝熱管5Aを通って出湯管7に流れ出る。
【0021】
入水管6は、給湯器1の外部に設けられた水道管(図示省略)から水を導入する入水口と熱交換器5の伝熱管5Aとの間に設けられ、入水口から導入された水を伝熱管5Aに供給する配管である。入水管6の下流側の端部は、伝熱管5Aの上流側の端部に接続される。
【0022】
出湯管7は、伝熱管5Aの下流側端部に接続され、伝熱管5Aから供給される湯を流すように配策される配管である。出湯管7の一端は伝熱管5Aに接続され、他端は給湯栓20に接続される。出湯管7は、例えば、給湯栓20が開放している状態(湯を排出し得る開放状態)のときに伝熱管5Aから給湯栓20に湯を流す。
【0023】
バイパス管16は、入水管6と出湯管7との間に設けられる配管であり、熱交換器5をバイパスするように水を流し得る配管である。バイパス管16は、入水管6から分岐する水のバイパス経路を構成するように一端が入水管6に接続され、他端が出湯管7に接続され、上記バイパス経路を介して出湯管7に水を流し得る配管である。バイパス管16は、例えば、給湯栓20が開放している状態でバイパス弁19が開放しているときに入水管6から導入される水を出湯管7に向かって流すように構成される。
【0024】
入水管6におけるバイパス管16との接続位置よりも上流側には、器具全体に流れる水量を検出する水量センサ17と通水量調節装置18とが設けられる。
図1の例では、水量センサ17は、入水管6において水入口と上記接続位置との間の部位に設けられ、この部位を流れる水の水量(即ち、外部から入水管6に導入される水の水量)を検出する。制御装置12は水量センサ17から与えられる情報に基づいて水量センサ17が設けられた位置の水量(即ち、外部から入水管6に導入される水量)を把握する。通水量調節装置18は、入水管6において水入口と上記接続位置との間の部位に設けられ、この部位を流れる水の水量を調整する。具体的には、通水量調節装置18は、入水管6に介在する弁体を有し、当該弁体の開度が調節可能とされている。制御装置12は、通水量調節装置18の位置の水量を調節するように通水量調節装置18を制御し、具体的には、通水量調節装置18の弁体の開度を調節するように制御することで、入水管6を流れる水の量を調整する。
【0025】
バイパス弁19は、入水管6からバイパス管16を介して出湯管7に流れる水の量(通水量)を調整する弁であり、例えば、弁体と駆動装置とを有してなる。
図1の例では、バイパス弁19は、バイパス管16における入水管6との接続位置付近に設けられ、バイパス管16を流れる水の量を調節するバイパス水量調節装置として動作する。制御装置12は、バイパス弁19の位置の水量を調節するようにバイパス弁19を制御し、具体的には、バイパス弁19の弁体の開度を調節するように制御することで、入水管6からバイパス管16へ流れ込む水の量を調整する。
【0026】
出湯管7においてバイパス管16と接続部分より下流側(給湯栓20側)には、第1サーミスタ21が設けられる。第1サーミスタ21は、出湯管7において第1サーミスタ21が設けられた位置(バイパス管16との接続部分と、給湯栓20との間の位置)の湯水の温度を検出する。第1サーミスタ21が検出する温度は、給湯栓20から放出される直前の湯水の温度である。第1サーミスタ21が検出する温度が出湯温度の一例に相当する。出湯温度は、Trと表される。
【0027】
出湯管7においてバイパス管16と接続部分より上流側(熱交換器5側)には、第2サーミスタ22が設けられる。第2サーミスタ22は、出湯管7において第2サーミスタ22が設けられた位置(伝熱管5Aと、バイパス管16との接続部分との間の位置)の湯水の温度を検出する。第2サーミスタ22が検出する温度は、出湯管7において伝熱管5Aから流れ出た直後の湯水の温度である。第2サーミスタ22が検出する温度は、出口温度Tbとも称される。
【0028】
入水管6において、バイパス管16と接続部分より上流側には、第3サーミスタ23が設けられる。第3サーミスタ23は、入水管6において第3サーミスタ23が設けられた位置(水入口と、バイパス管16との接続部分との間の位置)の水の温度を検出する。第3サーミスタ23が検出する温度は、入水管6内において水入口から導入された直後の水の温度である。第3サーミスタ23が検出する温度が入水温度の一例に相当する。以下の説明では、入水温度は、Tiと表される。第1サーミスタ21、第2サーミスタ22、第3サーミスタ23が検出した各温度は、制御装置12に与えられる。
【0029】
制御装置12は、各種制御を行い得る制御装置であり、例えば、情報処理機能や各種演算機能などを有するマイクロコンピュータなどの情報処理装置、各種情報を記憶し得る半導体メモリなどの記憶装置、各機器と通信を行うための通信装置、その他のインタフェースなどを備える。制御装置12は、例えば、リモートコントローラ24と通信可能とされている。リモートコントローラ24は、ユーザが外部から操作を行い得る装置であり、例えば、設定温度等を設定操作可能な操作装置である。リモートコントローラ24は、制御装置12に対して各種情報を与え、制御装置12から各種情報を取得し得る。
【0030】
2.通水制御の概要
次に、通水制御について説明する。
制御装置12は、
図2に示されるような流れで出湯制御を行い、バイパス弁19などを制御する。制御装置12は、開始条件が成立した場合に、
図2の制御を開始する。上記開始条件は、例えば制御装置12に対して図示されていない電源装置から電力の供給が開始されたことや、
図2の制御の終了後、電源投入状態が維持されていることなどである。その他の開始条件であってもよい。
【0031】
制御装置12は、
図2の出湯制御を開始した場合、まず、ステップS1において通水が検知されたか否かを判定する。例えば、制御装置12は、ステップS1において水量センサ17が検知する水量が閾値を超えたと判定した場合に、肯定の判定(Yesの判定)を行い、処理をステップS2に進める。一方、ステップS1において水量センサ17が検知する水量が閾値を超えていないと判定した場合に、否定の判定(Noの判定)を行い、
図2の出湯制御を終了する。なお、制御装置12は、
図2の出湯制御を終了した場合、所定の短時間後に
図2の出湯制御を開始する。
【0032】
制御装置12は、処理をステップS2に進めた場合、点火制御を行う。制御装置12は、ステップS2で点火制御を行う場合、給気ファン3を回転させてプリパージを行い、元電磁弁9、切替電磁弁11及びガス比例弁10をそれぞれ開いてガスバーナ4Aにガスを供給すると共に、イグナイタ13を作動させてガスバーナ4Aを点火させる。ガスバーナ4Aの点火はフレームロッド15で確認される。制御装置12は、ステップS2で点火制御を行う場合、例えば、複数のバーナユニット4のいずれかに対してのみ点火を行い、ステップS2では、点火するバーナユニット4にガスを供給する分岐管8Bに設けられた切替電磁弁11を開く。
【0033】
制御装置12は、ステップS2の点火制御によって点火がなされた後、処理をステップS3に進め、バイパス管16を流れる水の量を抑えるバイパス抑制制御を行う。バイパス抑制制御は、後述するバイパス増大制御のときよりもバイパス率を抑制する制御である。バイパス率は、入水管6においてバイパス管16よりも熱交換器5側へ供給される水の量である「供給水量」と、バイパス管16を流れる水の量である「通水量」と、の和を総水量Wtとした場合の、上記総水量Wtに対する上記通水量の比率である。以下の説明では、供給水量がW1とされ、通水量がW2とされ、水入口から入り込む水の水量である入水量が総水量Wtである。供給水量W1は、入水管6においてバイパス管16が接続される位置(具体的には、バイパス管16における入水管6側の端部位置)よりも熱交換器5側へ供給される水の水量である。通水量W2は、バイパス管16において、バイパス弁19から出湯管7へと流れる水の類焼である。通水量W2は、W2=Wt-W1の式で特定される。Wtは、供給水量W1と通水量W2の和であり、Wt=W1+W2である。バイパス率Bは、B=W2/Wtの式で特定される。
【0034】
制御装置12は、ステップS3においてバイパス抑制制御を行う場合、例えば、バイパス弁19によって経路を遮断することで、バイパス管16の通水量を0とし、バイパス率を0とする。従って、バイパス抑制制御中は、供給水量W1と総水量Wt(入水量)とが同一となり、外部から入水管6に流れ込んだ水の全部が伝熱管5Aへと流れる。制御装置12は、ステップS3にてバイパス抑制制御を開始した後、ステップS4において点火後の経過時間が閾値T1に達したか否かを判定し、点火後の経過時間が閾値T1に達していないと判定した場合には、処理をステップS3に戻してバイパス抑制制御を継続する。一方、制御装置12は、ステップS4において点火後の経過時間が閾値T1に達したと判定した場合には、処理をステップS5に進め、バイパス増大制御を行う。つまり、制御装置12は、少なくとも点火時点から時間T1までの間にわたってバイパス抑制制御を継続し、点火時点から時間T1が経過した場合には、バイパス抑制制御を終了してバイパス増大制御を開始する。
【0035】
上述のように、制御装置12は、ステップS2においてガスバーナ4Aの燃焼が開始してから初期期間の開始時点(点火時点から時間T1が経過した時点)までの少なくとも一部期間(望ましくは全部期間)において、バイパス率Bを上記初期期間のバイパス率Bよりも低くするようにバイパス弁19を制御する。ステップS2でのガスバーナ4Aの点火から時間T1が経過するまでの期間(バイパス抑制制御が行われる期間)は、「プレ制御期間」とも称される。上記初期期間は、上記プレ制御期間の後の期間であり、後述のバイパス増大制御が行われる期間である。
【0036】
なお、ステップS2にて点火制御が行われる前もバイパス抑制制御がなされていてもよく、例えば、ステップS2にて点火制御が行われる前から(例えば、ステップS1にて通水が検知される前から)バイパス管16のバイパス率を0としておき、ステップS2にて点火制御が行われた前後でバイパス率を0で維持し続け、更に、ステップS4でYesと判定されるまで、バイパス率を0で維持し続けてもよい。
【0037】
制御装置12は、ステップS5においてバイパス増大制御を行う場合、例えば、バイパス弁19によって経路を開放し、バイパス率Bが予め定められた固定比率とするようにバイパス弁19の開度を調節する。バイパス増大制御は、後述する通常制御のときよりもバイパス率を増大させる制御である。制御装置12は、ステップS5にてバイパス増大制御を開始した後、ステップS6において点火後の経過時間が閾値T2に達したか否かを判定し、点火後の経過時間が閾値T2に達していないと判定した場合には、処理をステップS5に戻してバイパス増大制御を継続する。一方、制御装置12は、ステップS6において点火後の経過時間が閾値T2に達したと判定した場合には、処理をステップS7に進め、通常制御を行う。この通常制御は、通水が非検知となるまで(即ち、ステップS8でYesとなるまで)繰り返される。通常制御については、後の記載で詳述される。なお、この例では、T1<T2である。つまり、制御装置12は、点火時点から時間T1が経過した時点から時間T2が経過するまでの間にわたってバイパス増大制御を継続し、点火時点から時間T2が経過した場合には、バイパス増大制御を終了して通常制御を開始する。固定比率の値は特に限定されず、例えば、0.3であってもよく、この値よりも若干大きかったり、小さかったりしてもよい。
【0038】
このように、制御装置12は、ガスバーナ4Aの燃焼が開始した後の上記初期期間のバイパス率Bを、上記初期期間が経過した後の通常期間のバイパス率Bよりも高くするようにバイパス弁19を制御する。上記初期期間は、上述のバイパス増大制御が行われる期間であり、具体的には、点火から時間T1が経過した時点から時間T2が経過するまでの期間である。つまり、上記初期期間の終了時点は、ステップS2でのガスバーナ4Aの点火から、予め定められた一定時間T2が経過した時点である。上記通常期間は、後述の通常制御が行われる期間であり、点火から時間T2が経過した時点からステップS8において通水が非検知となるまでの期間である。
【0039】
3.通常制御の詳細
制御装置12は、ステップS7において通常制御を行う場合、後述されるミキシング制御を所定時間毎(例えば、0.25秒ごと)に行い、所定時間毎にバイパス率を調整することができる。
【0040】
具体的には、制御装置12が、
図3のような流れでミキシング制御を行い、ステップS7の通常制御が継続している間(ステップS6でYesと判定された後、ステップS8でYesと判定されるまでの間)には、
図3の制御を継続する。そして、制御装置12は、ステップS7の通常制御を終了する場合、即ち、ステップS8でYesと判定する場合、
図3の制御を終了し、
図2の制御を終了することになる。
【0041】
制御装置12は、ステップS6でYesと判定することにより
図3の制御を開始した場合、ステップS11において、
図3の制御の開始又は前回のステップS16の終了から所定時間(例えば、0.25秒)が経過したか否かを判定し、経過したと判定した場合には、処理をステップS12に進める。
【0042】
制御装置12は、処理をステップS12に進めた場合、ステップS12においてFFバイパス率を算出する。制御装置12は、このFFバイパス率は、例えば、以下の式(1)によって算出する。FFバイパス率は、Bffと表される。内洞ねらい温度は、例えば、予め定められた固定値であってもよく、設定温度等に応じて定められる更新値であってもよい。内洞ねらい温度は、Taと表される。設定温度は、出湯口から放出される湯の目標温度であり、利用者がリモートコントローラ24を操作することによって設定可能な設定値である。設定温度12は、例えば制御装置12において更新可能に記憶される。設定温度は、Ttと表される。Tiは、上述された入水温度である。式(1)は、内洞ねらい温度Taと設定温度Ttと入水温度Tiとに基づいてFFバイパス率Bffを算出する式である。
Bff=(Ta-Tt)/(Ta-Ti)・・(1)
【0043】
制御装置12は、ステップS12においてFFバイパス率Bffを算出した後、処理をステップS13に進め、ステップS13においてオフセットバイパス率を算出する。オフセットバイパス率は、Bofと表される。制御装置12は、このオフセットバイパス率を、例えば、以下の式(2)によって算出する。式(2)において、Tbは、上述の出口温度Tbである。式(2)では、Gの値が大きくなるほど、出口温度Tbが内洞ねらい温度Taに至るまでの上昇速度が大きくなる。なお、係数Gの設定方法は後述される。
Bof=G×(Ta-Tb)・・(2)
【0044】
制御装置12は、ステップS13においてオフセットバイパス率Bofを算出した後、処理をステップS14に進め、ステップS14においてFBバイパス率を算出する。このFBバイパス率は、出湯温度Trに基づいたバイパス率の補正値で、以下の式(3)によって計算される。αは定数である。FBバイパス率は、Bfbと表される。式(3)は、出湯温度Trと設定温度Ttと内洞ねらい温度Taと入水温度Tiとに基づいてFBバイパス率Bfbを算出する式である。
Bfb=(Tr-Tt)×α/(Ta-Ti)・・(3)
【0045】
制御装置12は、ステップS14においてFBバイパス率Bfbを算出した後、処理をステップS15に進め、ステップS15において微分FBバイパス率を算出する。この微分FBバイパス率は、内胴温度の変化(傾き)に応じて後述の算出方法で決定される。微分FBバイパス率は、Bdと表される。
【0046】
制御装置12は、ステップS15において微分FBバイパス率Bdを算出した後、ステップS12~S15で算出されたFFバイパス率Bff、オフセットバイパス率Bof、FBバイパス率Bfb、微分FBバイパス率Bdを加算して、目標バイパス率Btを算出する。以下では、目標バイパス率は、Btと表される。目標バイパス率Btは、Bt=Bff+Bof+Bfb+Bdの式によって特定される。
【0047】
制御装置12は、ステップS15において微分FBバイパス率Bdを算出する場合、例えば、
図4のような流れで算出する。制御装置12は、ステップS15の処理を開始した場合、まず、
図4のステップS20において内胴温度の傾きを求める。この傾きは、検出された内胴温度と前回の制御で記憶された前回内胴温度との差を求めることで得る。こうして得られた内胴温度は、次回に使用する前回内胴温度としてS11で記憶される。
【0048】
次に、S22では、S20で得られた内胴温度の傾きが、-0.1℃を超えているか否か、すなわち低下傾向にないか否かを判別する。ここで傾きが-0.1℃を超えていれば、低下傾向でないとして、S23で内胴温度の傾きは0とする。一方、傾きが-0.1℃を超えていなければ、低下傾向であるとして、S24で、以下の式(4)によって今回の微分FBバイパス率を算出する。
今回の微分FBバイパス率=内胴温度傾き×30/(内胴ねらい温度-入水温度)・・(4)
【0049】
制御装置12は、S25の判別では、前回算出して記憶された前回微分FBバイパス率が、S14で得た今回の微分FBバイパス率を下回っているか否かを判別する。ここで前回微分FBバイパス率が今回の微分FBバイパス率を下回っていなければ、S27において、今回の微分FBバイパス率を微分FBバイパス率Bdとし、これを次回使用する前回微分FBバイパス率として記憶する。一方、前回微分FBバイパス率が今回の微分FBバイパス率を下回っていれば、S26において、以下の式(5)によって微分FBバイパス率を修正する。これは、前回微分FBバイパス率と今回の微分FBバイパス率とを用いて平滑化した微分FBバイパス率を得るものである。
微分FBバイパス率Bd=(前回微分FBバイパス率×m+今回の微分FBバイパス率×n)/(m+n) (但し、m>n)・・(5)
こうしてS24或いはS26で得られた微分FBバイパス率を
図2における目標バイパス率の算出に用いることになる。なお、
図4を参照して説明された上述の微分FBバイパス率Bdの決定方法はあくまで一例であり、上述の決定方法を多少修正してもよく、他の決定方法によって微分FBバイパス率Bdを算出してもよい。
【0050】
4.係数Gの設定方法
図1に示される代表例では、出口温度検出部の一例に相当する第2サーミスタ22が温度を検出する位置が第1位置である。第2サーミスタ22は、熱交換器5から出湯管7に流れ込む湯水の温度を出口温度として上記第1位置にて検出する。そして、代表例では、出湯温度検出部の一例に相当する第1サーミスタ21が温度を検出する位置が第2位置である。第1サーミスタ21は、出湯管7における上記第1位置よりも下流側の上記第2位置にて出湯管7を流れる湯水の温度を出湯温度として検出する。そして、代表例では、水量センサ17が検出する水量Wtが総水量の一例に相当する。総水量Wtは、バイパス管16を流れる水の量である通水量W2と、入水管6においてバイパス管16よりも熱交換器5側へ供給される水の量である供給水量W1と、の和である。そして、バイパス率Bは、総水量Wtに対する通水量W2の比率(W2/Wt)である。
【0051】
給湯器1では、制御装置12がバイパス弁19を調整することにより通水量W2が調整され、このように通水量W2が調整されることによりバイパス率Bが調整される。制御装置12は、短時間毎に目標バイパス率Btを算出し、目標バイパス率Btの算出毎(
図3のステップS16の実行毎)に、各バイパス弁19の開度を新しい目標バイパス率Btとなる開度にすることにより、バイパス率Bを目標バイパス率Btに調整する。
【0052】
制御装置12は、ステップS13においてオフセットバイパス率Bofを算出する場合、上述したように、ステップS13の実行時点の内洞ねらい温度Taと出口温度Tbとに基づいて、Bof=G×(Ta-Tb)の算出式によってオフセットバイパス率Bofを算出する。即ち、制御装置12は、予め定められたねらい温度(内洞ねらい温度Ta)から第2サーミスタ22(出口温度検出部)によって検出される出口温度Tbを減じた値(Ta-Tb)に対して係数Gを乗じることによりオフセットバイパス率Bofを算出する。そして、制御装置12は、ステップS13での算出の際に用いる係数Gを、ステップS13の実行時点の設定温度Ttと、総水量Wtと、ステップS13の実行開始時点における燃焼開始からの経過時間tpとに基づいて、基づいて以下の方法で決定する。経過時間tpは、ガスバーナ4Aの燃焼開始からステップS13の実行開始時点までの経過時間である。
【0053】
代表例では、上記経過時間tpが予め定められた基準時間以下である場合が加熱初期であり、上記経過時間tpが上記基準時間を超えた場合が加熱初期後の期間である。制御装置12は、ステップS13の処理を実行する場合、当該処理の開始時点までの経過時間tpが上記基準時間以下である場合、第1の係数決定方法で算出される第1係数G1を上記係数Gとして用いる。制御装置12は、ステップS13の処理の開始時点までの経過時間tpが上記基準時間を超えている場合において、ステップS13の処理の開始時点での設定温度Ttが閾値温度Tth未満である場合には、第2の係数決定方法で算出される第2係数G2を上記係数Gとして用いる。制御装置12は、ステップS13の処理の開始時点までの経過時間tpが上記基準時間を超えている場合であっても、ステップS13の処理の開始時点での設定温度Ttが閾値温度Tth以上である場合には、第1の係数決定方法で算出される第1係数G1を上記係数Gとして用いる。
【0054】
代表例では、ステップS13の処理の開始時点までの経過時間tpが基準時間以下である条件、又は、ステップS13の処理の開始時点までの経過時間tpが基準時間を超え且つステップS13の処理の開始時点での設定温度Ttが閾値温度Tth以上である条件、を満たす場合が第1条件を満たす場合である。また、ステップS13の処理の開始時点までの経過時間tpが基準時間を超え且つステップS13の処理の開始時点での設定温度Ttが閾値温度Tth未満である条件、を満たす場合が第2条件を満たす場合である。
図5は、経過時間tpが基準時間以下である場合の水量と係数との対応関係を示す表である。
図6の左の表は、経過時間tpが基準時間を超える場合において設定温度Ttが閾値温度Tth未満である場合の水量と係数との対応関係を示す表である。
図6の右の表は、経過時間tpが基準時間を超える場合において設定温度Ttが閾値温度Tth以上である場合の水量と係数との対応関係を示す表である。
【0055】
図5、
図6、
図7のように、制御装置12は、上記第1条件を満たす場合、第1の係数決定方法で第1係数G1を決定し、この第1係数G1を係数Gに用いる。具体的には、上記第1条件を満たす場合において総水量WtがX1未満である場合の第1係数G1を、Ga1とし、総水量WtがX3以上である場合の第1係数G1を、Ga3とする。上記第1条件を満たす場合において総水量WtがX1以上且つX2未満である場合の第1係数G1は、二点(X1,Ga1)(X2,Ga2)を通る直線式によって求められる値とする。具体的には、水量がXである場合に、G1-Ga1=((Ga2-Ga1)/(X2-X1))×(X-X1)によって求められる第1係数G1を係数Gとして用いる。上記第1条件を満たす場合において総水量WtがX2以上且つX3未満である場合の第1係数G1は、二点(X2,Ga2)(X3,Ga3)を通る直線式によって求められる値とする。具体的には、水量がXである場合に、G1-Ga2=((Ga3-Ga3)/(X3-X2))×(X-X2)によって求められる第1係数G1を係数Gとして用いる。
【0056】
図6、
図7のように、制御装置12は、上記第2条件を満たす場合、第2の係数決定方法で第2係数G2を決定し、この第2係数G2を係数Gに用いる。具体的には、上記第2条件を満たす場合において総水量WtがX1未満である場合の第2係数G2を、Gb1とし、総水量WtがX3以上である場合の第2係数G2を、Gb3とする。上記第2条件を満たす場合において総水量WtがX1以上且つX2未満である場合の第2係数G2は、二点(X1,Gb1)(X2,Gb2)を通る直線式によって求められる値とする。具体的には、水量がXである場合に、G2-Gb1=((Gb2-Gb1)/(X2-X1))×(X-X1)によって求められる第2係数G2を係数Gとして用いる。上記第2条件を満たす場合において総水量WtがX2以上且つX3未満である場合の第2係数G2は、二点(X2,Gb2)(X3,Gb3)を通る直線式によって求められる値とする。具体的には、水量がXである場合に、G2-Gb2=((Gb3-Gb3)/(X3-X2))×(X-X2)によって求められる第1係数G1を係数Gとして用いる。
【0057】
上述の式において、Ga1<Ga2<Ga3である。また、Gb1<Gb2<Gb3である。更に、Ga1>Gb1、Ga2>Gb2、Ga3>Gb3である。具体的には、Ga1>Gb3である。Ga1は、例えば、0.025であり、Ga2は、例えば、0.06であり、Ga3は、例えば、0.08である。Gb1は、例えば、0.005であり、Gb2は、例えば、0.012であり、Gb3は、例えば、0.016である。X1は、例えば、2(L/min)であり、X2は、例えば、10(L/min)であり、X3は、例えば、15(L/min)である。閾値温度Tthは、例えば、華氏125度である。
【0058】
このように、制御装置12は、上述の方法で係数Gを決定し、オフセットバイパス率Bofが大きいほどバイパス率Bを大きくするようにバイパス弁19を調整し、出湯温度Trを設定温度Ttに近づけるように調整制御を行う。そして、上述したように、制御装置12は、ガスバーナ4Aの燃焼開始後の上記加熱初期には、係数Gとして、第1の係数決定方法で算出された第1係数G1を用いてオフセットバイパス率Bofを算出する第1調整制御を行い、上記加熱初期の後の期間には、係数Gとして、第2の係数決定方法で算出された第2係数G2を用いてオフセットバイパス率Bofを算出する第2調整制御を行う。そして、所定条件が成立した場合、具体的には、設定温度Ttが閾値温度未満である場合、第1係数G1よりも第2係数G2を低く決定する決定方法で係数Gを決定する。
【0059】
3.効果の例
給湯器1は、加熱初期にはオフセットバイパス率Bofをより大きく設定し、熱交換器5の加熱を促進することができる。よって、給湯器1は、加熱初期には熱交換器5の温度を早期に上昇させてドレンの発生を抑制することができる。一方で、給湯器1は、加熱初期の後の期間に、オフセットバイパス率Bofを相対的に低く設定し、ねらい温度(内洞ねらい温度Ta)に緩やかに近づけることができる。よって、給湯器1は、出口温度Tbがある程度上昇した後に、ねらい温度Ta付近で出口温度Tbが急激かつ大きく変化することを抑制することができ、ねらい温度Ta付近で出口温度Tbの上昇と下降が繰り返されるハンチング現象を抑えやすい。
【0060】
図8は、第2の係数決定方法を用いずに第1の係数決定方法のみを用いて給湯動作を行った場合の実験結果の一例であり、入水温度が摂氏25度、設定温度Ttが華氏100度、総水量Wtが3(L/min)の場合の例である。
図9は、第2の係数決定方法を用いずに第1の係数決定方法のみを用いて給湯動作を行った場合の実験結果の一例であり、入水温度が摂氏25度、設定温度Ttが華氏100度、総水量Wtが10(L/min)の場合の例である。
図8、
図9のように、第2の係数決定方法を用いない場合には、内洞温度(出口温度Tb)の上下動が繰り返されてしまい、出湯温度が安定しにくい。一方、
図10は、本願発明を適用した一例であり、入水温度が摂氏25度、設定温度Ttが華氏100度、総水量Wtが10(L/min)の場合の例である。
図10のように、本願発明を適用した場合には、内洞温度(出口温度Tb)が早期に上昇しやすく、ある程度の時間で内洞温度(出口温度Tb)や出湯温度Trが安定しやすい。
【0061】
給湯器1において制御装置12は、設定温度Ttが閾値温度Tth未満である場合に、第1係数G1よりも第2係数G2を低く決定する決定方法で係数Gを決定する。設定温度Ttが相対的に小さい場合、熱交換器5の温度がある程度上昇した後に出口温度Tbを急激に変化させる方法を用いると、出口温度Tbがねらい温度Taを超えてより大きく上昇しやすくなる。しかしながら、給湯器1のように、熱交換器5の温度がある程度上昇した後に出口温度Tbが急激かつ大きく変化することを抑制すれば、設定温度Ttが相対的に小さい場合に出口温度Tbがねらい温度Taを大きく超えて上昇しすぎることを抑えやすくなる。
【0062】
給湯器1は、加熱初期には、水量が大きいほど熱交換器5の加熱度合いを大きく調整するように水量に合わせた加熱を行い、いずれの水量の場合でも、オフセットバイパス率Bofをより大きく設定して熱交換器5の加熱を促進することができる。一方で、この給湯器1は、加熱初期の後の期間にも、水量が大きいほど熱交換器5の加熱度合いを大きく調整するように水量に合わせた加熱を行うが、第2係数G2を用いる場合には、いずれの水量の場合でも、オフセットバイパス率Bofをより小さく設定し、ねらい温度付近Taで出口温度Tbが急激かつ大きく変化することを抑制することができる。
【0063】
<他の実施形態>
本発明は、上記記述及び図面によって説明された実施形態に限定されるものではない。例えば、上述又は後述の実施形態の特徴は、矛盾しない範囲であらゆる組み合わせが可能である。また、上述又は後述の実施形態のいずれの特徴も、必須のものとして明示されていなければ省略することもできる。さらに、上述された実施形態は、次のように変更されてもよい。
【0064】
上述された実施形態はあくまで一例であり、適宜設計変更可能である。例えば、給湯器1は、出湯管から分岐する経路を介して浴槽に湯を供給し得るように構成されていてもよい。
【0065】
上述された実施形態では、通常制御時の目標バイパス率Btは、Bt=Bff+Bof+Bfb+Bdの式によって算出されるが、この例に限定されず、Bff、Bfb、Bdの一部が省略されたり、これらの一部の算出方法が変更されたり、補正値が加えられたりしてもよい。
【0066】
上述された実施形態では、
図2のS3のバイパス抑制制御やS5のバイパス増大制御が行われるが、これらのうちのいずれか一方又は両方の制御を省略してもよい。例えば、
図2のステップS2の後にステップS7の処理を行うようにしてもよく、ステップS4でYesと判定される場合に、ステップS7の制御を行うようにしてもよく、
図2の制御において、ステップS3、S4の制御を省略してもよい。
【0067】
なお、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、今回開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示された範囲内又は特許請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0068】
1 :給湯器
4A :ガスバーナ
5 :熱交換器
5A :伝熱管
6 :入水管
7 :出湯管
12 :制御装置
16 :バイパス管
19 :バイパス弁
21 :第1サーミスタ(出湯温度検出部)
22 :第2サーミスタ(出口温度検出部)