(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092330
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】プラグファン
(51)【国際特許分類】
F04D 29/28 20060101AFI20240701BHJP
F04D 29/30 20060101ALI20240701BHJP
F04D 29/66 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
F04D29/28 J
F04D29/30 D
F04D29/66 M
F04D29/28 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208181
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000104836
【氏名又は名称】クボタ空調株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高口 未来
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA12
3H130AB26
3H130AB46
3H130AC11
3H130BA14C
3H130BA66C
3H130CB02
3H130CB03
3H130CB05
3H130CB09
3H130CB11
3H130EA08C
3H130EB04C
3H130EC12C
(57)【要約】
【課題】騒音の低減を図るとともに、羽根をプレス曲げ加工で低コストに制作することができるプラグファンを提供する。
【解決手段】側板2がファン軸心方向前方に向けて開口する吸込み口5を有し、主板3の外周縁と側板2の外周縁の間にファン径方向外側に向けて開口する吹出し口6を有し、羽根板4は、ファン回転方向前方の気流入口側の羽根前縁7がファン径方向内側に位置し、ファン回転方向後方の気流出口側の羽根後縁8がファン径方向外側に位置し、主板3は、羽根後縁7よりもファン径方向外側に広がる外周部9を有し、外周部9にファン軸心方向後方に反った主板開口縁10を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファン軸心方向で相対向する前方の側板と後方の主板と、主板と側板の間にファン軸心回りに配置する複数の羽根板を有し、
側板がファン軸心方向前方に向けて開口する吸込み口を有し、主板の外周縁と側板の外周縁の間にファン径方向外側に向けて開口する吹出し口を有し、
羽根板は、ファン回転方向前方の気流入口側の羽根前縁がファン径方向内側に位置し、ファン回転方向後方の気流出口側の羽根後縁がファン径方向外側に位置し、
主板は、羽根後縁よりもファン径方向外側に広がる外周部を有し、外周部にファン軸心方向後方に反った主板開口縁を有することを特徴とするプラグファン。
【請求項2】
羽根板は、羽根板全体がファン軸心に対して傾斜角を有し、主板から吸込み口に向けてファン径方向外側に広がることを特徴とする請求項1に記載のプラグファン。
【請求項3】
羽根板は、羽根前縁から羽根後縁までファン軸心に対して一定の傾斜角を有することを特徴とする請求項2に記載のプラグファン。
【請求項4】
羽根板は、ファン軸心に対する一定の傾斜角を7°から9°の範囲で定めることを特徴とする請求項3に記載のプラグファン。
【請求項5】
羽根板は、ファン径方向において側板の側が主板の側よりファン径方向外側に位置し、主板から側板までの羽根板翼幅方向で相対向する位置における主板の側の羽根内径が側板の側の羽根内径より小さいことを特徴とする請求項2に記載のプラグファン。
【請求項6】
羽根板は、主板から側板までの羽根板翼幅方向が平面状をなし、羽根前縁から羽根後縁までの羽根板弦長方向がファン回転方向前方に湾曲する曲面状をなし、主板の側と側板の側において羽根前縁の入口角と羽根後縁の出口角が相違し、側板の側の入口角が主板の側の入口角より小さく、側板の側の出口角が主板の側の出口角より小さいことを特徴とする請求項1に記載のプラグファン。
【請求項7】
羽根板は、主板から側板までの羽根板翼幅方向が平面状をなし、羽根前縁から羽根後縁までの羽根板弦長方向がファン回転方向前方に湾曲する曲面状をなし、羽根前縁の側に羽根板の反り線よりもファン径方向外側に反った迎え部を有することを特徴とする請求項1に記載のプラグファン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機等において用いられるプラグファンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載のラジアル・ファン・ホイールは、回転方向とは反対側に傾斜した羽根を備えており、頂部ディスクと底部ディスクの外側縁域が羽根の有効直径を超えて突出している。そして、底部ディスクと頂部ディスクの間において羽根の有効直径および外側直径によって、流体の運動エネルギーを圧力ポテンシャルに転換している。
【0003】
また、特許文献2に記載のターボファンは、モータの回転軸に固定されるボスを有する主板と、吸込み導風壁を形成するシュラウドと、複数の羽根部材を熱可塑性樹脂で別々に成形している。主板は、複数の羽根部材との嵌合部を有し、シュラウドは複数の羽根部材との嵌合部を有し、複数の羽根部材を回転軸に平行に配置して主板とシュラウドに超音波溶着にて一体化したものである。
【0004】
また、特許文献3に記載のターボファン用羽根車は、駆動源に係合される主板と、主板に対向配置された側板と、主板と側板との間に周方向に配列された複数枚の羽根を備えている。各羽根は前縁側から見たときに前縁が主板と成す入口傾斜角を78°~89°に設定し、羽根の出口傾斜角、すなわち各羽根を後縁側から見たときに後縁が主板と成す角度を90°に設定している。
【特許文献1】特表2006-51936
【特許文献2】特開2016-84743
【特許文献3】特許第4934467号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、プラグファンは、ハウジングのない状態で高い静圧効率が得られるが、騒音面で不利となることから、空気調和機や設備の建屋側において騒音対策を行う必要がある。
【0006】
羽根断面が翼形状の羽根を使用すると、低騒音、高効率を実現できる。しかし、翼断面形状の羽根は、その製造に樹脂成型や複数回の曲げ工程を要し、製法、材質に制約があった。
【0007】
本発明は上記した課題を解決するものであり、騒音の低減を図るとともに、羽根をプレス曲げ加工で低コストに制作することができるプラグファンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のプラグファンは、ファン軸心方向で相対向する前方の側板と後方の主板と、主板と側板の間にファン軸心回りに配置する複数の羽根板を有し、側板がファン軸心方向前方に向けて開口する吸込み口を有し、主板の外周縁と側板の外周縁の間にファン径方向外側に向けて開口する吹出し口を有し、羽根板は、ファン回転方向前方の気流入口側の羽根前縁がファン径方向内側に位置し、ファン回転方向後方の気流出口側の羽根後縁がファン径方向外側に位置し、主板は、羽根後縁よりもファン径方向外側に広がる外周部を有し、外周部にファン軸心方向後方に反った主板開口縁を有することを特徴とする。
【0009】
本発明のプラグファンにおいて、羽根板は、羽根板全体がファン軸心に対して傾斜角を有し、主板から吸込み口に向けてファン径方向外側に広がることを特徴とする。
【0010】
本発明のプラグファンにおいて、羽根板は、羽根前縁から羽根後縁までファン軸心に対して一定の傾斜角を有することを特徴とする。
【0011】
本発明のプラグファンにおいて、羽根板は、ファン軸心に対する一定の傾斜角を7°から9°の範囲で定めることを特徴とする。
【0012】
本発明のプラグファンにおいて、羽根板は、ファン径方向において側板の側が主板の側よりファン径方向外側に位置し、主板から側板までの羽根板翼幅方向で相対向する位置における主板の側の羽根内径が側板の側の羽根内径より小さいことを特徴とする。
【0013】
本発明のプラグファンにおいて、羽根板は、主板から側板までの羽根板翼幅方向が平面状をなし、羽根前縁から羽根後縁までの羽根板弦長方向がファン回転方向前方に湾曲する曲面状をなし、主板の側と側板の側において羽根前縁の入口角と羽根後縁の出口角が相違し、側板の側の入口角が主板の側の入口角より小さく、側板の側の出口角が主板の側の出口角より小さいことを特徴とする。
【0014】
本発明のプラグファンにおいて、羽根板は、主板から側板までの羽根板翼幅方向が平面状をなし、羽根前縁から羽根後縁までの羽根板弦長方向がファン回転方向前方に湾曲する曲面状をなし、羽根前縁の側に羽根板の反り線よりもファン径方向外側に反った迎え部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
以上のように本発明によれば、主板が羽根後縁よりもファン径方向外側に広がる外周部に、ファン軸心方向後方に反った主板開口縁を有することで、吹出し口の開口が拡大し、出口幅が増加することで、大風量側において送風機効率の最高効率が改善する。よってプラグファンの使用範囲が拡大する。
【0016】
また、羽根板全体が、すなわち羽根前縁のみならず羽根前縁から羽根後縁までがファン軸心に対して傾斜角を有し、主板から吸込み口に向けてファン径方向外側に広がる形態をなすことで、吸込み口の側が開くように羽根板が広がり、羽根後縁のファン出口における圧力変動を緩和して騒音を抑制できる。
【0017】
さらに、羽根板は、羽根前縁から羽根後縁までファン軸心に対して一定の傾斜角を有する形態とすることもでき、ファン軸心に対する一定の傾斜角を7°から9°の範囲で、例えば8°とすることで騒音抑制の効果を最適化できる。
【0018】
また、主板の側の羽根内径が側板の側の羽根内径より小さいことで、送風機効率の最高効率が改善する。
【0019】
また、羽根板は、主板の側と側板の側において羽根前縁の入口角と羽根後縁の出口角が相違し、側板の側の入口角が主板の側の入口角より小さく、側板の側の出口角が主板の側の出口角より小さいことで、騒音が低減し、大風量側において静圧が改善し、プラグファンの使用範囲が拡大する。なお、ここでは、入口角は羽根前縁における反り線の接線に対する法線と、ファン軸心から羽根前縁に至る線とのなす角度であり、出口角は羽根後縁における反り線の接線に対する法線と、ファン軸心から羽根後縁に至る線とのなす角度である。
【0020】
また、羽根板は、羽根前縁の側に羽根板の反り線よりもファン径方向外側に反った迎え部を有することで、送風機効率の最高効率が改善する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施の形態におけるプラグファンの断面図
【
図2】同実施の形態におけるプラグファンの一部破断正面図
【
図4】同実施の形態におけるプラグファンの側板のない正面図
【
図5】同実施の形態におけるプラグファンの羽根板の傾斜を示す模式図
【
図6】同実施の形態におけるプラグファンの羽根板の正面図
【
図7】同実施の形態におけるプラグファンの要部拡大図
【
図8】同実施の形態におけるプラグファンの羽根板の要部を示す模式図
【
図9】同実施の形態におけるプラグファンの羽根板の入口角および出口角を示す模式図
【
図10】従来例として示すプラグファンの羽根板の入口角および出口角を示す模式図
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1から
図9において、プラグファン1は、ファン軸心方向で相対向する前方の側板2と後方の主板3の間にファン軸心回りに複数の羽根板4を配置している。
【0023】
側板2はファン軸心方向前方に向けて開口する吸込み口5を有し、主板3の外周縁と側板2の外周縁の間にファン径方向外側に向けて開口する吹出し口6を有している。
【0024】
羽根板4は、ファン回転方向前方の気流入口側の羽根前縁7がファン径方向内側に位置し、ファン回転方向後方の気流出口側の羽根後縁8がファン径方向外側に位置している。主板3は、羽根後縁8よりもファン径方向外側に広がる外周部9に、ファン軸心方向後方に反った主板開口縁10を有している。
【0025】
すなわち、
図5に示すように、ファンの呼び径φD(主板3における羽根後縁8がファン軸心回りに描く軌跡の直径)に対して、主板3は外周部9の主板開口縁10がファン軸心方向後方に反りながらφ1.13Dにまで広がっている。このため、吹出し口6の開口が拡大し、出口幅が0.3Dから0.31Dにまで増加する。
【0026】
このように、主板3が羽根後縁8よりもファン径方向外側に広がる外周部9に、ファン軸心方向後方に反った主板開口縁10を有することで、吹出し口6の開口が拡大し、出口幅が増加して、大風量側において送風機効率の最高効率が3.4%改善する。
【0027】
送風機効率の改善の評価は、
図10に示す羽根板50(詳細は後述する)を使用し、主板3の大きさがファンの呼び径φDに対し1.07Dであるものを比較対照のプラグファンとしておこなった。
【0028】
羽根板4は、主板3から側板2までの羽根板翼幅方向が平面状をなし、羽根前縁7から羽根後縁8までの羽根板弦長方向がファン回転方向前方に湾曲する曲面状をなし、鋼板のプレス曲げ加工により制作している。よって、従来の翼断面形状の羽根に比べて初期投資が小さく、かつ低コストで制作できる。
【0029】
また、羽根板4は、
図7に示すように、羽根板全体がファン軸心に対して傾斜角θを有し、主板3から吸込み口5に向けてファン径方向外側に広がっている。
図7では羽根板全体をファン軸心に対して平行に配置した場合を二点鎖線で示し、その比較において傾斜角θを示している。
【0030】
この傾斜角θは羽根前縁7から羽根後縁8までの間に変化してもよいが、ここでは、羽根板4が羽根前縁7から羽根後縁8までファン軸心に対して一定の傾斜角θを有している。傾斜角θは7°から9°の範囲で定めることができ、8°が最適である。
【0031】
このように、羽根板全体がファン軸心に対して一定の傾斜角θを有し、主板3から吸込み口5に向けてファン径方向外側に広がる形態をなすことで、吸込み口5の側が開くように羽根板4が広がり、羽根後縁8のファン出口における圧力変動を緩和して騒音を抑制でき、一定の傾斜角θを8°とすることで騒音抑制の効果を最適化できる。
【0032】
また、羽根板4は、
図7に示すように、ファン径方向において側板2の側が主板3の側よりファン径方向外側に位置し、主板3から側板2までの羽根板翼幅方向で相対向する位置における主板3の側の羽根内径d1が側板2の側の羽根内径d2より小さくなっている。このように、主板3の側の羽根内径d1が側板2の側の羽根内径d2より小さいことで、送風機効率の最高効率が1.4%改善する。
【0033】
また、羽根板4は、
図9に示すように、側板2の側の弦長C1が0.37Dであり、主板3の側の弦長C2が0.4Dであり、側板2の側と主板3の側とにおいて羽根前縁7の入口角θ1、θ2と羽根後縁8の出口角θ3、θ4が相違している。
【0034】
側板2の側の入口角θ1が主板3の側の入口角θ2より小さく、側板2の側の出口角θ3が主板3の側の出口角θ4より小さくなっている。入口角θ1、θ2は羽根前縁7における反り線の接線に対する法線N1、N2と、ファン軸心から羽根前縁7に至る線L1、L2とのなす角度であり、出口角θ3、θ4は羽根後縁8における反り線の接線に対する法線N3、N4と、ファン軸心から羽根後縁に至る線L3、L4とのなす角度である。
【0035】
このように、側板2の側の入口角θ1が主板3の側の入口角θ2より小さく、側板2の側の出口角θ3が主板3の側の出口角θ4より小さいことで、騒音が低減し、大風量側において静圧が改善し、プラグファンの使用範囲が拡大する。
【0036】
ちなみに、
図10に示す比較対照の羽根板50では、弦長C3が0.36Dであり、入口角θ5が実施例の入口角θ1、θ2より小さく、出口角θ6が実施例の出口角θ3、θ4より大きくなっている。
【0037】
また、羽根板4は、
図8に示すように、羽根前縁7の側に羽根板4の反り線よりもファン径方向外側に反った迎え部11を有している。このように、羽根板4が迎え部11を有することで、送風機効率の最高効率が0.7%改善する。
【0038】
以上のように、本実施の形態のプラグファンによれば、
図10に示す比較対照のプラグファンに比べてトータルで送風機効率の最高効率が5.5%改善し、騒音値が5dB(A)低減した。
【符号の説明】
【0039】
1 プラグファン
2 側板
3 主板
4 羽根板
5 吸込み口
6 吹出し口
7 羽根前縁
8 羽根後縁
9 外周部
10 主板開口縁
11 迎え部
50 比較対照の羽根板
D 呼び径(直径)
θ 傾斜角
d1、d2 羽根内径
θ1、θ2、θ5 入口角
θ3、θ4、θ6 出口角
N1、N2、N3、N4 法線
L1、L2、L3、L4 線
C1、C2、C3 弦長