(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092351
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】起泡剤組成物、気泡含有食品、および気泡含有食品の作製方法
(51)【国際特許分類】
A23L 11/00 20210101AFI20240701BHJP
A23J 3/14 20060101ALI20240701BHJP
A21D 2/36 20060101ALI20240701BHJP
A21D 2/26 20060101ALI20240701BHJP
A21D 13/44 20170101ALI20240701BHJP
A23G 1/52 20060101ALI20240701BHJP
A23G 1/48 20060101ALI20240701BHJP
A23G 1/50 20060101ALI20240701BHJP
A23L 29/00 20160101ALI20240701BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20240701BHJP
A23L 29/256 20160101ALI20240701BHJP
A23L 29/269 20160101ALI20240701BHJP
A23L 29/238 20160101ALI20240701BHJP
【FI】
A23L11/00 F
A23J3/14
A21D2/36
A21D2/26
A21D13/44
A23G1/52
A23G1/48
A23G1/50
A23L29/00
A23L5/00 M
A23L29/256
A23L29/269
A23L29/238
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208227
(22)【出願日】2022-12-26
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)ウェブサイトの掲載日 令和4年(2022年)3月16日 (2)ウェブサイトのアドレス https://oft.organo.co.jp/orgadmin/wp-content/uploads/2022/03/9a202e4d9dd30cc3fb34385deee20536.pdf (3)公開者 オルガノフードテック株式会社 (4)公開された発明の内容 オルガノフードテック株式会社が、上記アドレスのウェブサイトで公開されたオルガノフードテック株式会社のウェビナー「知らなきゃ損する!?亜麻の種子由来の多糖類”アマシードガム」にて、柳澤勝が発明した起泡剤組成物について公開した。 (1)ウェブサイトの掲載日 令和4年(2022年)3月23日 (2)ウェブサイトのアドレス https://shareshima.com/webinar (3)公開者 オルガノフードテック株式会社 (4)公開された発明の内容 オルガノフードテック株式会社が、上記アドレスのウェブサイトで公開されたICS-net株式会社のウェビナー「第18回 ゲル化剤・増粘安定剤の基礎知識とアプリケーション」における「知らなきゃ損する!?亜麻の種子由来の多糖類”アマシードガム”」にて、柳澤勝が発明した起泡剤組成物について公開した。
(71)【出願人】
【識別番号】506009453
【氏名又は名称】オルガノフードテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 勝
【テーマコード(参考)】
4B014
4B020
4B032
4B035
4B041
【Fターム(参考)】
4B014GB04
4B014GE05
4B014GG06
4B014GG07
4B014GK08
4B014GL04
4B014GL10
4B014GL11
4B014GP27
4B020LB24
4B020LG09
4B020LK06
4B020LP30
4B032DB10
4B032DG08
4B032DK02
4B032DK12
4B032DK17
4B032DK18
4B032DK21
4B032DK32
4B032DL02
4B035LC03
4B035LC16
4B035LG23
4B035LG24
4B035LG25
4B035LG27
4B035LG33
4B035LK05
4B035LP59
4B041LC03
4B041LD01
4B041LH07
4B041LH08
4B041LH10
4B041LK15
4B041LK24
4B041LP25
(57)【要約】
【課題】アレルギーの表示や乳化剤の表示を行わなくてもよく、動物性原料を使用しなくても気泡含有食品を得ることができる起泡剤組成物、その起泡剤組成物を含む気泡含有食品、および気泡含有食品の作製方法を提供する。
【解決手段】アマシードガムを含有する、起泡剤組成物、その起泡剤組成物を用いた気泡含有食品、および気泡含有食品の作製方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソラマメタンパクを含有することを特徴とする起泡剤組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の起泡剤組成物であって、
さらにキサンタンガム、アマシードガム、グァーガム、グルコマンナン、およびカラギナンのうちの少なくとも1つを含有することを特徴とする起泡剤組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の起泡剤組成物であって、
さらにカードランを含有することを特徴とする起泡剤組成物。
【請求項4】
ソラマメタンパクを含有することを特徴とする気泡含有食品。
【請求項5】
請求項4に記載の気泡含有食品であって、
さらにキサンタンガム、アマシードガム、グァーガム、グルコマンナン、およびカラギナンのうちの少なくとも1つを含有することを特徴とする気泡含有食品。
【請求項6】
請求項4または5に記載の気泡含有食品であって、
さらにカードランを含有することを特徴とする気泡含有食品。
【請求項7】
ソラマメタンパクを用いることを特徴とする気泡含有食品の作製方法。
【請求項8】
請求項7に記載の気泡含有食品の作製方法であって、
さらにキサンタンガム、アマシードガム、グァーガム、グルコマンナン、およびカラギナンのうちの少なくとも1つを用いることを特徴とする気泡含有食品の作製方法。
【請求項9】
請求項7または8に記載の気泡含有食品の作製方法であって、
さらにカードランを用いることを特徴とする気泡含有食品の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、起泡剤組成物、その起泡剤組成物を含む気泡含有食品、および気泡含有食品の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カフェラテや生クリーム、ムースやスフレホットケーキ、メレンゲクッキー等、泡自体の食感を楽しんだり、調理のときに泡を混ぜることによって体積を増したり、食感を調整したりと、泡を利用した食品は多く知られている。
【0003】
これらのような泡を利用する食品では、起泡や泡沫の安定のために一般的に卵白やゼラチン等が使用されているが、卵白やゼラチンはいずれもアレルギーの原因となる可能性がある。また、卵白やゼラチンは、動物性の原料であるため、持続可能な開発目標であるSDGsの流れから見ると、これらのような原料に頼りすぎるのは好ましくない。
【0004】
泡を利用する食品のための植物性の原料として大豆を使用したものが知られており、例えば、特許文献1には、アルギン酸塩と、キレート剤と、カルシウム塩と、カゼイン、カゼインの分解物、大豆タンパク質、および大豆タンパク質の分解物からなる群より選ばれる少なくとも1種の起泡性物質と、水とを含有する泡形成用組成物が開示されている。特許文献2には、大豆蛋白中の7Sおよび11S成分を別途に加水分解して得られるポリペプチドと水溶性多糖類および熱凝固性蛋白とを含有する起泡剤組成物が開示されている。しかし、大豆もアレルギーの原因となる可能性がある。
【0005】
特許文献3には、食用に適する高分子素材として蛋白質、多糖類等が溶解および/または分散したコロイド水溶液において、優れた起泡性および泡安定性を有したポリグリセリン脂肪酸エステルを主成分とする起泡性乳化剤が開示されている。特許文献3では特定のポリグリセリン脂肪酸エステルを主成分とする乳化剤で泡立たせることを特徴としているが、乳化剤の使用が好ましくない場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6974201号公報
【特許文献2】特開2002-165568号公報
【特許文献3】特開2004-254612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、アレルギーの表示や乳化剤の表示を行わなくてもよく、動物性原料を使用しなくても気泡含有食品を得ることができる起泡剤組成物、その起泡剤組成物を含む気泡含有食品、および気泡含有食品の作製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ソラマメタンパクを含有する、起泡剤組成物である。
【0009】
前記起泡剤組成物において、さらにキサンタンガム、アマシードガム、グァーガム、グルコマンナン、およびカラギナンのうちの少なくとも1つを含有することが好ましい。
【0010】
前記起泡剤組成物において、さらにカードランを含有することが好ましい。
【0011】
本発明は、ソラマメタンパクを含有する、気泡含有食品である。
【0012】
前記気泡含有食品において、さらにキサンタンガム、アマシードガム、グァーガム、グルコマンナン、およびカラギナンのうちの少なくとも1つを含有することが好ましい。
【0013】
前記気泡含有食品において、さらにカードランを含有することが好ましい。
【0014】
本発明は、ソラマメタンパクを用いる、気泡含有食品の作製方法である。
【0015】
前記気泡含有食品の作製方法において、さらにキサンタンガム、アマシードガム、グァーガム、グルコマンナン、およびカラギナンのうちの少なくとも1つを用いることが好ましい。
【0016】
前記気泡含有食品の作製方法において、さらにカードランを用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、アレルギーの表示や乳化剤の表示を行わなくてもよく、動物性原料を使用しなくても気泡含有食品を得ることができる起泡剤組成物、その起泡剤組成物を含む気泡含有食品、および気泡含有食品の作製方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施例1、比較例1において得られたメレンゲの撹拌直後(10秒後)の気泡層と水層の体積を示すグラフである。
【
図2】実施例2において得られたメレンゲの撹拌直後(10秒後)の気泡層と水層の体積を示すグラフである。
【
図3】実施例2において得られたメレンゲの撹拌終了から10分後の気泡層と水層の体積を示すグラフである。
【
図4】実施例4で作製した焼成ソラマメメレンゲを示す写真である。(a)はカードランの添加なし(実施例4-1)の場合の写真、(b)はカードラン2質量%添加(実施例4-5)の場合の写真である。
【
図5】実施例5、比較例2で作製したホットケーキを示す写真である。(a)は、無添加区(比較例2-1)の写真、(b)は、対照区1(比較例2-2)の写真、(c)は、対照区2(比較例2-3)の写真、(d)は、試験区1(実施例5-1)の写真、(e)は、試験区2(実施例5-2)の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0020】
<起泡剤組成物>
本発明の実施の形態に係る起泡剤組成物は、ソラマメタンパクを含有する。
【0021】
本発明者らは、各種の植物性の原料のうちソラマメタンパクを用いることによって、アレルギーの表示や乳化剤の表示を行わなくてもよく、動物性原料を使用しなくても気泡含有食品を得ることができることを見出した。例えば、ソラマメタンパクを水に加えて撹拌することによって、メレンゲやラテ様の泡を作ることができる。ソラマメタンパクの水溶液は非常に泡立ちがよく、ハンドミキサー等の撹拌装置で撹拌するとよく泡立つ。同じマメ科の大豆やヒヨコマメタンパクではここまで泡立たなかった。
【0022】
本実施形態に係る起泡剤組成物は、ソラマメタンパクを含有し、さらにキサンタンガム、アマシードガム、グァーガム、グルコマンナン、およびカラギナンのうちの少なくとも1つを含有してもよい。ソラマメタンパクに増粘剤としてキサンタンガム、アマシードガム、グァーガム、グルコマンナン、およびカラギナンのうちの少なくとも1つを併用することによって、気泡がきめ細かくなり、泡を安定化させることができる。これらのうち、気泡の安定性が良好である等の点から、キサンタンガム、アマシードガム、カラギナンが好ましい。
【0023】
本実施形態に係る起泡剤組成物は、ソラマメタンパクを含有し、さらにカードランを含有してもよい。本実施形態に係る起泡剤組成物は、ソラマメタンパクを含有し、さらにキサンタンガム、アマシードガム、グァーガム、グルコマンナン、およびカラギナンのうちの少なくとも1つと、カードランと、を含有してもよい。ソラマメタンパクに加熱凝固性のあるカードランを併用することによって、得られるソラマメメレンゲの加熱耐性が向上し、卵白メレンゲ代替として加熱がかかる工程(例えば、80~180℃)でも使用することができる。ソラマメタンパクにキサンタンガム、アマシードガム、グァーガム、グルコマンナン、およびカラギナンのうちの少なくとも1つと、カードランとを併用することによって、気泡がきめ細かくなり、泡を安定化させることができ、さらに加熱がかかる工程でも使用することができる。
【0024】
ソラマメタンパクは、そら豆から分離されるタンパク質である。そら豆は、マメ科の植物である。用いるソラマメタンパクとしては特に制限はないが、粉末化したものが好ましく、タンパク質の含有量が70質量%以上のものが好ましい。
【0025】
キサンタンガムは、とうもろこしや大豆等を栄養分として微生物キサントモナス・キャンペストリス(Xanthomonas campestriss)が発酵する際に産生される天然の増粘多糖類であり、グルコース、マンノース、グルクロン酸の繰り返し単位からなる。キサンタンガムとしては、一般に入手可能なものを制限なく使用することができる。
【0026】
アマシードガムは、アマ科アマ(Linum usitatissimum LINNE)の種子から得られたものであり、多糖類を主成分とするものである。アマシードガムとしては、一般に入手可能なものを制限なく使用することができる。
【0027】
グァーガムは、マメ科のグァー豆(Cyamopsis tetragonoloba)の種子の胚乳部から得られたものであり、多糖類を主成分とするものである。グァーガムとしては、一般に入手可能なものを制限なく使用することができる。
【0028】
グルコマンナンは、コンニャクイモの塊茎に存在する多糖類である。例えば、コンニャクイモを水洗後、スライスして乾燥して粉砕し、さらに澱粉質等の不純物を分離したものがコンニャク精粉と呼ばれる。このコンニャク精粉にはグルコマンナンが約75~85質量%程度含まれている。グルコマンナンは、グルコース(単糖の一種)とマンノース(単糖の一種)が、およそ2:3の割合で多数結合した食物繊維である。グルコマンナンとしては、一般に入手可能なものを制限なく使用することができる。
【0029】
カラギナンは、紅藻類から抽出される多糖類であり、D-ガラクトース(または3,6-アンヒドロ-D-ガラクトース)と硫酸から構成され、以下に示すように、その硫酸基の結合状態により、ラムダカラギナン、イオタカラギナン、カッパカラギナンの3種に分類される。これらのうち、カラギナンとして、イオタカラギナンを含むことが好ましい。カラギナンとしては、一般に入手可能なものを制限なく使用することができる。
【化1】
【0030】
カードランは、微生物によって生産されるβ-1,3-グルコシド結合を主体とする加熱凝固性多糖類である。この多糖類としては、アルカリゲネス属またはアグロバクテリウム属の微生物によって生産されるもの等が挙げられる。具体的には、カードランは、アルカリゲネス・フェカリス・バールミクソゲネス(Alcaligenes faecalis var.myxogenes)菌株10C3K[アグリカルチュラル・バイオロジカル・ケミストリー,Vol.30,p196(1966)]、アルカリゲネス・フェカリス・バールミクソゲネス(Alcaligenes faecalis var.myxogenes)菌株10C3Kの変異株NTK-u(IFO13140)、アグロバクテリウム・ラジオバクター(IFO13127)およびその変異株U-19(IFO13126)により生産される多糖類である。カードランは、市販のものを使用してもよい。
【0031】
本実施形態に係る起泡剤組成物において、キサンタンガム、アマシードガム、グァーガム、グルコマンナン、およびカラギナンのうちの少なくとも1つを含有する場合のキサンタンガム、アマシードガム、グァーガム、グルコマンナン、およびカラギナンのうちの少なくとも1つの含有量は、例えば、ソラマメタンパク100質量%に対して、4質量%~20質量%の範囲であり、好ましくは6質量%~14質量%の範囲である。キサンタンガム、アマシードガム、グァーガム、グルコマンナン、およびカラギナンのうちの少なくとも1つの含有量がソラマメタンパク100質量%に対して4質量%未満であると、効果が得られない場合があり、20質量%を超えると、得られる気泡含有食品の気泡が潰れたり、舌触りが滑ったりする場合がある。
【0032】
本実施形態に係る起泡剤組成物において、カードランを含有する場合のカードランの含有量は、例えば、ソラマメタンパク100質量%に対して、20質量%以上であり、好ましくは30質量%~100質量%の範囲である。カードランの含有量がソラマメタンパク100質量%に対して20質量%未満であると、効果が得られない場合があり、100質量%を超えると、混合の段階で気泡が潰れる場合がある。
【0033】
本実施形態に係る起泡剤組成物の形態は、特に限定されず、例えば粉末の形態であってもよいし、粒状に造粒した顆粒の形態であってもよい。
【0034】
<気泡含有食品>
本実施形態に係る気泡含有食品は、上記起泡剤組成物を含有する気泡含有食品であり、ソラマメタンパクを含有する気泡含有食品である。
【0035】
本実施形態に係る気泡含有食品は、ソラマメタンパクを含有し、さらにキサンタンガム、アマシードガム、グァーガム、グルコマンナン、およびカラギナンのうちの少なくとも1つを含有してもよい。ソラマメタンパクに増粘剤としてキサンタンガム、アマシードガム、グァーガム、グルコマンナン、およびカラギナンのうちの少なくとも1つを併用することによって、気泡がきめ細かくなり、泡を安定化させることができる。これらのうち、気泡の安定性が良好である等の点から、キサンタンガム、アマシードガム、カラギナンが好ましい。
【0036】
本実施形態に係る気泡含有食品は、ソラマメタンパクを含有し、さらにカードランを含有してもよい。本実施形態に係る気泡含有食品は、ソラマメタンパクを含有し、さらにキサンタンガム、アマシードガム、グァーガム、グルコマンナン、およびカラギナンのうちの少なくとも1つと、カードランと、を含有してもよい。ソラマメタンパクに加熱凝固性のあるカードランを併用することによって、卵白メレンゲ代替として加熱がかかる工程でも使用することができる。ソラマメタンパクにキサンタンガム、アマシードガム、グァーガム、グルコマンナン、およびカラギナンのうちの少なくとも1つと、カードランとを併用することによって、気泡がきめ細かくなり、泡を安定化させることができ、さらに加熱がかかる工程でも使用することができる。
【0037】
気泡含有食品としては、メレンゲ様食品(メレンゲ代替物)、カフェラテ、生クリーム、ムース、スフレホットケーキ、シフォンケーキ等が挙げられる。これらのうち、上記起泡剤組成物は、スフレホットケーキ、シフォンケーキ等に特に好適に適用される。
【0038】
本実施形態に係る気泡含有食品であるメレンゲ様食品中のソラマメタンパクの含有量は、気泡含有食品に占める水の質量に対して、例えば、1質量%~10質量%の範囲であり、好ましくは3質量%~7質量%の範囲である。メレンゲ様食品中のソラマメタンパクの含有量が、気泡含有食品に占める水の質量に対して1質量%未満であると、効果が得られない場合があり、10質量%を超えると、粘度が高くなり泡立たない場合がある。
【0039】
キサンタンガム、アマシードガム、グァーガム、グルコマンナン、およびカラギナンのうちの少なくとも1つを含有する場合の本実施形態に係る気泡含有食品であるメレンゲ様食品中のキサンタンガム、アマシードガム、グァーガム、グルコマンナン、およびカラギナンのうちの少なくとも1つの含有量は、気泡含有食品に占める水の質量に対して、例えば、0.2質量%~1.0質量%の範囲であり、好ましくは0.3質量%~0.7質量%の範囲である。メレンゲ様食品中のアマシードガム、グァーガム、グルコマンナン、およびカラギナンのうちの少なくとも1つの含有量が、気泡含有食品に占める水の質量に対して0.2質量%未満であると、効果が得られない場合があり、1.0質量%を超えると、潰れたり、舌触りが滑ったりする場合がある。
【0040】
カードランを含有する場合の本実施形態に係る気泡含有食品であるメレンゲ様食品中のカードランの含有量は、気泡含有食品に占める水の質量に対して、例えば、1質量%以上であり、好ましくは1.5質量%~5質量%の範囲である。メレンゲ様食品中のカードランの含有量が、気泡含有食品に占める水の質量に対して1質量%未満であると、効果が得られない場合があり、5質量%を超えると、混合の段階で気泡が潰れる場合がある。
【0041】
本実施形態に係る気泡含有食品は、上記起泡剤組成物の他に、一般的に気泡含有食品に用いられる食物繊維、澱粉、加工デンプン、澱粉分解物、糖類、甘味料等の他の成分を含んでもよい。
【0042】
気泡含有食品中の他の成分の含有量は、各種気泡含有食品の製造の常法に従えばよく、特に制限はない。
【0043】
本実施形態に係る気泡含有食品は、上記起泡剤組成物を含有することにより、アレルギーの表示や乳化剤の表示を行わなくてもよく、動物性原料を含まない気泡含有食品である。
【0044】
<気泡含有食品の作製方法>
本実施形態に係る気泡含有食品の作製方法は、ソラマメタンパクを含有する起泡剤組成物を用いる方法であり、ソラマメタンパクを用いる方法である。
【0045】
本実施形態に係る気泡含有食品の作製方法は、ソラマメタンパクを用いる方法であり、さらにキサンタンガム、アマシードガム、グァーガム、グルコマンナン、およびカラギナンのうちの少なくとも1つを用いてもよい。ソラマメタンパクに増粘剤としてキサンタンガム、アマシードガム、グァーガム、グルコマンナン、およびカラギナンのうちの少なくとも1つを併用することによって、起泡がきめ細かくなり、泡を安定化させることができる。これらのうち、気泡の安定性が良好である等の点から、キサンタンガム、アマシードガム、カラギナンが好ましい。
【0046】
本実施形態に係る気泡含有食品の作製方法は、ソラマメタンパクを用いる方法であり、さらにカードランを用いてもよい。本実施形態に係る気泡含有食品は、ソラマメタンパクを用いる方法であり、さらにキサンタンガム、アマシードガム、グァーガム、グルコマンナン、およびカラギナンのうちの少なくとも1つと、カードランと、を用いてもよい。ソラマメタンパクに加熱凝固性のあるカードランを併用することによって、卵白メレンゲ代替として加熱がかかる工程(例えば、80~180℃)を行ってもよい。ソラマメタンパクにキサンタンガム、アマシードガム、グァーガム、グルコマンナン、およびカラギナンのうちの少なくとも1つと、カードランとを併用することによって、気泡がきめ細かくなり、泡を安定化させることができ、さらに加熱がかかる工程を行ってもよい。
【0047】
本実施形態に係る気泡含有食品の作製方法は、例えば、ソラマメタンパクと、必要に応じてキサンタンガム、アマシードガム、グァーガム、グルコマンナン、およびカラギナンのうちの少なくとも1つやカードランと、水と、を混合して起泡させてソラマメメレンゲを作製するソラマメメレンゲ作製工程を含み、得られたソラマメメレンゲをさらに各種食品に添加してもよい。
【0048】
気泡含有食品の作製方法は、各種気泡含有食品の製造の常法に従えばよく、特に制限はない。
【0049】
メレンゲ様食品(メレンゲ代替物)であるソラマメメレンゲは、例えば、次の方法で作製すればよい。水に粉体(ソラマメタンパク、必要に応じて、キサンタンガム、アマシードガム、グァーガム、グルコマンナン、およびカラギナンのうちの少なくとも1つや、カードラン等)を混合して混合物を得る。この混合物を例えば10~40℃でハンドミキサー等の撹拌装置によって撹拌して、ソラマメメレンゲを得る。
【0050】
ムースオショコラは、例えば、通常のムースオショコラの作製手順と同様に作製することができる。例えば、湯煎したダークチョコレートに例えば上記の方法で作製したソラマメメレンゲの約半量をいれ、よく混合した後、残りの約半量を泡を潰さないようにゆっくりと混合し、冷蔵庫で冷却して固めて作製すればよい。
【0051】
スフレホットケーキは、例えば、通常のスフレホットケーキの作製手順と同様に作製することができる。例えば、まず小麦粉と水とで生地を作製し、静置しておく。例えば上記の方法で作製したソラマメメレンゲの約半量を生地とよく混合した後、残りの約半量を泡を潰さないようにゆっくりと混合したものを焼成して作製すればよい。
【0052】
本実施形態に係る起泡剤組成物を気泡含有食品に添加することにより、アレルギーの表示や乳化剤の表示を行わなくてもよく、動物性原料を含まない気泡含有食品を得ることができる。
【実施例0053】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0054】
<実施例1、比較例1>
[植物性タンパクの選定]
植物性タンパクとして、ソラマメタンパク(実施例1)、ヒヨコマメタンパク(比較例1-1)、大豆タンパク(比較例1-2)、エンドウタンパク(比較例1-3)、緑豆タンパク(比較例1-4)を用い、以下の手順でメレンゲ様の気泡含有食品を作製した。
【0055】
(メレンゲ様食品の作製手順)
(1)500mLビーカー中、水200mLに各植物性タンパク10gを添加、混合して混合物(5質量%タンパク溶液)を得る。
(2)混合物を20℃でハンドホイッパーによって3分間撹拌して、メレンゲ様食品(気泡含有食品)を得た。
【0056】
得られたメレンゲ様食品について、撹拌直後(10秒後)の気泡層と水層の体積を目視で測定した。結果を表1および
図1に示す。
【0057】
【0058】
ソラマメタンパクを用いることによって、メレンゲ様の気泡含有食品を得ることができた。植物タンパクの中ではエンドウタンパク、ソラマメタンパク、緑豆タンパクが、泡立ちが良好であった。特にソラマメタンパクが泡立ちが良好であり、風味もマイルドであったため、メレンゲ様の気泡含有食品の作製への使用に適している。
【0059】
<実施例2>
[ソラマメタンパクの添加量の検討]
ソラマメタンパクについて添加量の検討を行った。水に対するソラマメタンパクの添加量を表2に示す濃度(1,2,3,5,7,10質量%)に変えて、以下の手順でメレンゲ様の気泡含有食品(ソラマメメレンゲ)を作製した。
【0060】
(ソラマメメレンゲの作製手順)
(1)500mLビーカー中、水100mLにソラマメタンパクを表2に示す濃度(1,2,3,5,7,10質量%)になるように、それぞれ添加、混合して混合物(ソラマメタンパク溶液)を得る。
(2)混合物を20℃でハンドホイッパーによって3分間撹拌して、ソラマメメレンゲ(気泡含有食品)を得た。
【0061】
得られたソラマメメレンゲについて、撹拌直後(10秒後)および撹拌終了から10分後の気泡層と水層の体積を目視で測定した。結果を表2、表3および
図2、
図3に示す。
【0062】
【0063】
【0064】
ソラマメメレンゲ2質量%までは水層が全体の2割以上あり、泡立ちがやや悪かった。気泡層の体積(mL)を見ると、ソラマメメレンゲ3~10質量%までが泡立ちが良好であることがわかる。一方、ソラマメメレンゲの添加量7質量%から、泡が重くなっていき、体積も減少し始めた。これより、ソラマメタンパクの添加量は、水に対して3~7質量%が特に良好であることがわかった。
【0065】
<実施例3、参考例1>
[安定化用の増粘剤の選定]
ソラマメタンパクに、安定化用の増粘剤として、グァーガム(実施例3-1)、キサンタンガム(実施例3-2)、アマシードガム(実施例3-3)、カラギナン(実施例3-4)、グルコマンナン(実施例3-5)、サイリウムシードガム(参考例1-1)、タラガム(参考例1-2)、プルラン(参考例1-3)、アラビアガム(参考例1-4)、タマリンドシードガム(冷水可溶タイプ)(参考例1-5)、カルボキシメチルセルロース(CMC)(参考例1-6)、カードラン(参考例1-7)を用い、以下の手順でメレンゲ様の気泡含有食品を作製した。
【0066】
(ソラマメメレンゲの作製手順)
(1)500mLビーカー中、水100mLにソラマメタンパク5gを添加、混合して混合物(ソラマメタンパク溶液)を得る。
(2)混合物を20℃でハンドホイッパーによって3分間撹拌した後、各増粘剤0.5g(水に対して0.5質量%)を添加し、さらに追加で3分間撹拌して、ソラマメメレンゲを得た。
【0067】
得られたソラマメメレンゲについて、撹拌終了から10分後および一晩経過後(24時間後)に、分離して水層ができているかどうかを目視で評価した。結果を表4に示す。
【0068】
【0069】
用いた増粘剤のうち、グァーガム、キサンタンガム、アマシードガム、カラギナン、グルコマンナンは、撹拌終了から10分後には分離が見られなかった。特に、キサンタンガム、アマシードガム、カラギナンは、撹拌終了から一晩経過後でも分離が見られなかった。
【0070】
水層が分離しなかったものについて増粘剤の添加量を減らして同様の試験を行ったところ、グァーガム0.3質量%、キサンタンガム0.2質量%、アマシードガム0.2質量%、カラギナン0.3質量%、グルコマンナン0.3質量%(0.2質量%では分離小)が添加量の下限値と考えられる。また、いずれも増粘剤を多く添加するとコストが上昇したり、ぬめりが発生するので、水に対する添加量は1質量%が上限値と考えられる。これより、増粘剤は、メレンゲ処方中の水の量に対して、0.2~1質量%の範囲が好ましい。
【0071】
<実施例4>
[カードランの添加および添加量の検討]
ソラマメタンパクに、安定化用の増粘剤として、アマシードガムを用い、さらにカードランの添加量を表5に示す濃度(0,0.5,1,1.5,2質量%)に変えて加え、以下の手順でメレンゲ様の気泡含有食品を作製した。
【0072】
(ソラマメメレンゲの作製手順)
(1)500mLビーカー中、表5に示す配合比率(質量部)で水にソラマメタンパクを添加、混合して混合物(ソラマメタンパク溶液)を得る。
(2)混合物を20℃でハンドホイッパーによって3分間撹拌する。
(3)グラニュー糖で倍散したアマシードガムを表5に示す配合比率(質量部)で加え、さらに3分間撹拌する。
(4)カードランを表5に示す配合比率(質量部)で加え(無添加の場合はカードランを加えずに)、さらに3分間撹拌して、ソラマメメレンゲ(気泡含有物)を得た。
(5)直径5cm、高さ3cmのセルクルに気泡含有物を充填し、摺り切りした後、セルクルを外す。
(6)直ちに100℃に設定したオーブンで1時間加熱して、焼成ソラマメメレンゲを得た。
【0073】
得られた焼成ソラマメメレンゲについて、高さを測定した。結果を表5に示す。また、得られた焼成ソラマメメレンゲ(カードランなし、カードラン2質量%添加)についての写真を
図4に示す。
図4(a)は、カードランの添加なし(実施例4-1)の場合の写真、
図4(b)は、カードラン2質量%添加(実施例4-5)の場合の写真である。
【0074】
【0075】
カードランの添加量が水に対して1.5質量%を超えたところで、気泡含有物が焼成後も潰れずに残っていた。加熱凝固性のあるカードランを併用することによって、卵白メレンゲ代替として加熱がかかる工程でも使用することができた。
【0076】
<実施例5、比較例2>
[ホットケーキの作製]
表6に示す配合比率(質量部)で、以下の手順でホットケーキを作製した。用いたソラマメメレンゲは、表7に示す配合比率(質量部)で、以下の手順で作製した。イオタ型カラギナンとして、オルピン(登録商標)Jを使用し、ソラマメタンパクとして、オルプロテイン(登録商標)FP-ACを使用し、カードランとしてカードランNSを使用した。
【0077】
(ソラマメメレンゲの作製手順)
(1)水道水にソラマメタンパクを添加、混合して混合物(ソラマメタンパク溶液)を得る。
(2)混合物を20℃でハンドホイッパーによって3分間撹拌して、よく泡立てる。
(3)粉末水飴、イオタ型カラギナンを事前に混合したものを加え、ハンドホイッパーによって角が立つまで撹拌する(約3分間)。
(4)乳酸カルシウム、カードランを加え、ハンドホイッパーによって3分間撹拌して、ソラマメメレンゲ(気泡含有物)を得た。
【0078】
(ホットケーキの作製手順)
(1)米粉、グラニュー糖、ベーキングパウダーを混合したものにオーツミルクを加え、よく混合する。
(2)(1)に対照区1は全卵をそのまま加え、対照区2では卵黄をまず添加し、卵白はハンドホイッパーを用いて約8分立てで泡立てたものを約1/3ずつ加え、よく混合する。試験区では(1)にソラマメメレンゲを約1/3ずつ加え、よく混合して生地を得る。
(3)150℃にセットしたホットプレートに生地を80g流しこみ、片面3分間で両面加熱して、ホットケーキを得た。
(4)得られたホットケーキを半分にカットした。
【0079】
カットしたホットケーキについて、中心の高さ(cm)を比較した。また、得られたホットケーキについて、試験者による官能評価を行った。結果を表8に示す。得られたホットケーキの写真を
図5に示す。
図5(a)は、無添加区(比較例2-1)の写真、
図5(b)は、対照区1(比較例2-2)の写真、
図5(c)は、対照区2(比較例2-3)の写真、
図5(d)は、試験区1(実施例5-1)の写真、
図5(e)は、試験区2(実施例5-2)の写真である。
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
このように、ソラマメタンパクを用いることによって、ふんわり感のあるホットケーキを得ることができた。
【0084】
<実施例6、比較例3>
[ムースオショコラの作製]
表9に示す配合比率(質量部)で、以下の手順でムースオショコラを作製した。用いたソラマメメレンゲは、表9に示す配合比率(質量部)で、以下の手順で作製した。
【0085】
(ソラマメメレンゲの作製手順)
(1)500mLビーカーに水とソラマメタンパクを入れ、添加、混合して混合物(ソラマメタンパク溶液)を得る。
(2)混合物を20℃でハンドホイッパーによって3分間撹拌して、泡立てる。
(3)澱粉分解物と、増粘剤を加える場合は増粘剤(アマシードガム、イオタ型カラギナン、またはサイリウムシードガム)とを加え、さらに3分間撹拌する。
(4)へらで全体を混合した後、乳酸カルシウムを添加する試験区はここで乳酸カルシウムを添加し、追加で3分間撹拌して、ソラマメメレンゲ(気泡含有物)を得た。
【0086】
(ムースオショコラの作製手順)
(1)ダークチョコレートを湯煎で溶解する。
(2)グラニュー糖と温めたアーモンドミルク、対照区1の場合は全卵のうちの卵黄を加え、均一になるようによく混合する。
(3)対照区1の場合は、ハンドホイッパーを用いて卵白を八分立てにしたメレンゲを準備する。試験区の場合は上記の方法でソラマメメレンゲを準備する。
(4)メレンゲまたはソラマメメレンゲを(2)に約1/3添加し、よく混合する。
(5)残りのメレンゲまたはソラマメメレンゲを(4)に加え、さっくり混合した後、型に充填する。
(6)5℃に設定した冷蔵庫で2時間静置して、ムースオショコラを得た。
【0087】
得られたムースオショコラについて、試験者による官能評価を行った。結果を表9に示す。
【0088】
【0089】
このように、ソラマメタンパクを用いることによって、口どけが良好であり、基準(対照区1)より崩れにくいムースオショコラを得ることができた。
【0090】
このように、実施例の起泡剤組成物によって、アレルギーの表示や乳化剤の表示を行わなくてもよく、動物性原料を使用しなくても気泡含有食品を得ることができた。