(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092362
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】香料組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/33 20060101AFI20240701BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20240701BHJP
A61Q 13/00 20060101ALI20240701BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20240701BHJP
A61Q 15/00 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
A61K8/33
A61K8/49
A61Q13/00 101
A61Q5/00
A61Q15/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208243
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】306018376
【氏名又は名称】クラシエ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】井上 薫
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AC062
4C083AC072
4C083AC172
4C083AC211
4C083AC212
4C083AC232
4C083AC692
4C083AC841
4C083AC842
4C083AD112
4C083AD152
4C083AD282
4C083AD532
4C083BB06
4C083CC17
4C083CC31
4C083DD23
4C083EE06
4C083EE18
4C083KK02
(57)【要約】
【課題】
4級カチオン界面活性剤に起因する臭気をマスキングするとともに、良好なサクラ調の香り立ちを持続する香料組成物、および当該香料組成物を含有することを特徴とする毛髪化粧料を提供することを課題とする。
【解決手段】
下記(A1):(A2)の質量比が1:1~1:5であることを特徴とする香料組成物により上記課題を解決する。好ましくは、(A1)がベンズアルデヒド又はアニスアルデヒドから選ばれる少なくとも1種、又は/及び(A2)がエチレンブラシレート、アンブレットライド、ハバノライド、及びエグザルトリドの群から選ばれる少なくとも1種
である。
(A1)ベンズアルデヒド類又はベンズアルデヒド類似化合物から選ばれる少なくとも1種
(A2)大環状ムスク化合物から選ばれる少なくとも1種、
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A1):(A2)の質量比が1:1~1:5であることを特徴とする香料組成物。(A1)ベンズアルデヒド類又はベンズアルデヒド類似化合物から選ばれる少なくとも1種
(A2)大環状ムスク化合物から選ばれる少なくとも1種、
【請求項2】
(A1)がベンズアルデヒド又はアニスアルデヒドから選ばれる少なくとも1種、
又は/及び
(A2)がエチレンブラシレート、アンブレットライド、ハバノライド、及びエグザルトリドの群から選ばれる少なくとも1種
である請求項1に記載の香料組成物。
【請求項3】
下記(A1)及び(A2)からなる(B)に起因する臭気マスキング剤。
(A1)ベンズアルデヒド類又はベンズアルデヒド類似化合物から選ばれる少なくとも1種
(A2)大環状ムスク化合物から選ばれる少なくとも1種、
(B)4級カチオン界面活性剤、
【請求項4】
(A1)がベンズアルデヒド又はアニスアルデヒドから選ばれる少なくとも1種
又は/及び
(A2)がエチレンブラシレート、アンブレットライド、ハバノライド、及びエグザルトリドの群から選ばれる少なくとも1種
である請求項3に記載の臭気マスキング剤。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の香料組成物を含有する毛髪化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香料組成物に関する。更に詳しくは、特定の香料組成物の組み合わせにより良好なサクラ調の香気を呈することを可能とするサクラ調香料組成物、およびサクラ調香料組成物を配合することを特徴とする毛髪化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
香粧品の分野においては、製品を製造する際に好ましくない臭気を様々な香料を用いてマスキングすることは汎用の技術として、広く一般に適用されている(非特許文献1~2参照)。
【0003】
上記マスキングの技術は、シャンプーやボディソープなどの洗浄剤組成物の分野にも応用され、商品の原料臭低減や嗜好性向上において大きな役割を担っている。4級カチオン界面活性剤は毛髪コンディショニング組成物と種々の技術分野で使用されており(例えば、特許文献1参照)、毛髪のまとまり効果や指どおりを良くするため化粧料の基剤として多く使用されている。特に、毛髪コンディショニング組成物の成分として用いられている4級カチオン界面活性剤は特有の臭気を有することが知られている(特許文献2参照)。毛髪コンディショニング組成物として用いる際には香料を用いて該臭気をマスキングすることが必要となる。
【0004】
また近年のサクラ調の香調を有した製品が入浴剤をはじめシャンプー、ボディソープ、ボディクリームなど多岐にわたり提案されている。その中、特有の基剤臭をマスキングし、サクラ特有の香気でマスキングし、かつ良好な香り立ちを呈することを可能とする技術は研究途上であり、今後の技術開発が期待される分野であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-363040号公報
【特許文献2】特開平7-277948号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】周知慣用技術集「香料」第I部香料一般、日本国特許庁、1999年1月29日発行、230-250頁
【非特許文献2】周知慣用技術集「香料」第III部香粧品用香料、日本国特許庁、2001年6月15日発行、532-535頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、4級カチオン界面活性剤に起因する臭気をマスキングするとともに、良好なサクラ調の香り立ちを持続する香料組成物、および当該香料組成物を含有することを特徴とする毛髪化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記問題点を鋭意研究した結果、
(A1)ベンズアルデヒド類又はベンズアルデヒド類似化合物と(A2)大環状ムスク化合物を組み合わせることで、4級カチオン界面活性剤に起因する臭気に対して優れたマスキング効果を有するとともに、良好なサクラ調の香り立ちとともに優れたサクラ調の残香
を呈することを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち本発明は以下のとおりである。
[1]
下記(A1):(A2)の質量比が1:1~1:5であることを特徴とする香料組成物である。
(A1)ベンズアルデヒド類又はベンズアルデヒド類似化合物から選ばれる少なくとも1種
(A2)大環状ムスク化合物から選ばれる少なくとも1種、
[2]
(A1)がベンズアルデヒド又はアニスアルデヒドから選ばれる少なくとも1種、
又は/及び
(A2)がエチレンブラシレート、アンブレットライド、ハバノライド、及びエグザルトリドの群から選ばれる少なくとも1種
である香料組成物である。
【0010】
[3]
下記(A1)及び(A2)からなる(B)に起因する臭気マスキング剤である。
(A1)ベンズアルデヒド類又はベンズアルデヒド類似化合物から選ばれる少なくとも1種
(A2)大環状ムスク化合物から選ばれる少なくとも1種、
(B)4級カチオン界面活性剤、
[4]
(A1)がベンズアルデヒド又はアニスアルデヒドから選ばれる少なくとも1種
又は/及び
(A2)がエチレンブラシレート、アンブレットライド、ハバノライド、及びエグザルトリドの群から選ばれる少なくとも1種
である(B)に起因する臭気マスキング剤である。
【0011】
[5]
前記香料組成物を含有する毛髪化粧料である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、4級カチオン界面活性剤が有する特有の臭気をマスキングしながら、良好なサクラ調の香り立ちを持続することを可能とする香料組成物を提供するとともに、当該香料組成物を含有する毛髪化粧料を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本明細書において、「臭気をマスキングする」とは、4級カチオン界面活性剤に起因する臭気をサクラ調の香りにより感じにくくさせることを意味し、「香り立ちを持続する」とは、サクラ調の香りが毛髪への塗布時からリンスオフ後の残香において持続することを意味する。
【0015】
<(A1)ベンズアルデヒド類及びベンズアルデヒド類似化合物>
本発明で用いる(A1)成分は、下記一般式(1)で示されるベンズアルデヒド類又はベンズアルデヒド類似化合物である。
(化1)
CHO―(C6H4) ―R1 (1)
〔式中、R1は水素又はヒドロキシル基、メトキシ基を示す。〕
【0016】
(A1)成分として、例えば次のような化合物を用いることができる。ベンズアルデヒド(CAS番号:100-52-7)は、芳香族アルデヒドの一種であり、甘いアーモンド様の芳香を有する化合物である。ヒドロキシベンズアルデヒド(CAS番号:123-08-0)は、芳香族アルデヒドの一種であり、甘いアーモンド様やバニラ様の方向を有する化合物である。アニスアルデヒド(CAS番号:123-11-5)は、芳香族アルデヒドの一種であり、ミモザ様の芳香を有する化合物である。
【0017】
<(A2)大環状ムスク化合物>
本発明に用いる(A2)成分は、大環状ムスク化合物である。大環状ムスクは、主に15個の炭素原子を含む環状の化合物であって、さらに、酸素原子を1個以上有していている化合物である。好ましい大環状ムスク化合物として、3-メチルシクロペンタデカン-1-オン(ムスコン)、シクロペンタデカノン(エギザルトン:フィルメニッヒ社)、5-シクロヘキサデセン-1-オン(アンブレトン:高砂香料工業株式会社)、シクロヘキサデカノン、シクロペンタデカノリド(エグザルトリド:フィルメニッヒ社)、11(12)-シクロペンタデセノリド(ハバノライド:フィルメニッヒ社)、9-シクロペンタデセノリド(アンブレットライド:ジボダン社)、シクロヘキサデカノリド(ヘキサデカノライド:IFF社)、およびエチレンブラシレートなどを例示することができる。
【0018】
さらに本発明において、(A1)と(A2)を特定の配合比率で組み合わせることで、良好なサクラ調の香り立ちを持続する効果を見出した。これは(A1)成分のサクラ調の香りのパウダリー感に対し、(A2)成分の大環状ムスク化合物が保留効果の作用がはたらき、サクラ調の香りの持続の効果が得られるものと推測される。
【0019】
本発明において、サクラ調の香り立ちを持続させる効果を得るためには、(A1)と(A2)の配合比((A1)/(A2))を0.1以上10以下とするのが好ましく、0.2以上1.0以下がさらに好ましい。0.1以上であれば使用時における嗜好性が良好であるとともに香気持続性があり、10以下であればサクラ調特有の香り立ちが得られ使用時における嗜好性の低下が生じず、残香におけるサクラ調が損なわれることがない。一方、0.1より小さい場合では、使用時における嗜好性が損なわれるとともに、残香においてサクラ調の持続が認められない。10より大きい場合では使用時のサクラ調は認められるものの、残香においてサクラ調の持続が認められない。
【0020】
本発明における(A1)と(A2)の合計配合量は、毛髪化粧料全体質量中0.001~1.0質量%が好ましく、0.005~1.0質量%がより好ましい。0.001質量%以上であれば、良好なマスキング効果を十分に得ることができ使用時における嗜好性が良好であり、1.0質量%以下であれば香気が強すぎず、使用時において良好な香り立ちとともに嗜好性の高い毛髪化粧料を提供することができる。
【0021】
<(B)4級カチオン界面活性剤>
本発明で用いる(B)成分は4級カチオン界面活性剤である。4級カチオン界面活性剤は、毛髪化粧料において毛髪のコンディショニング目的で使用される。4級カチオン界面活性剤は、毛髪化粧料において流し時のなめらかさとドライ中のなめらかさに寄与する点で優れている反面、特有のアミン様の臭気を発する。好ましい4級カチオン界面活性剤として、ベヘニルPGトリモニウムクロリド、ベヘントリモニウムクロリド、セトリモニウムクロリド、ステアルトリモニウムクロリドなどを例示することができる。
【0022】
本発明において、(A1)と(A2)を組み合わせることで、(B)成分に起因する臭気をマスキングする効果を得られることを見出した。これは(A1)成分のサクラ調の香りのパウダリー感に対し、(A2)成分の大環状ムスク化合物が香り立ちの押し上げる作用がはたらき、(B)成分の臭気に対して、マスキング効果が得られるものと推測される。
【0023】
<その他成分>
本発明の毛髪化粧料には、その他成分として、ノニオン性ポリマーを含有することができる。ノニオン性ポリマーは、組成物の保護コロイド性、保水性を高め、被膜形成能に優れた成分である。したがって、上記成分(B)に加えて更にノニオン性ポリマーを含有することにより、毛髪化粧料の機能を向上させることができる。
【0024】
ノニオン性ポリマーとして、具体的には、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリグルタミン酸、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、アクリル酸アルキル共重合体等が挙げられるが、特にヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いることが好ましい。これらノニオン性ポリマーは市販品を使用することができ、具体的に例示すれば、HECダイセルSE400等のシリーズ(ダイセル社製)、メトローズ60SH10000等のメトローズシリーズ(信越化学工業社製)等が挙げられる。本発明の洗浄剤組成物には、これらノニオン性ポリマーを1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
ノニオン性ポリマーの配合量は、洗い流し時の毛髪のきしみの無さと乾燥時の毛先のまとまりの観点から本発明のコンディショニング組成物に対して0.01~5質量%であることが好ましく、更には0.1~1質量%であることが好ましい。0.01質量%以上であれば乾燥時の毛先のまとまりが良好で、5質量%以下であれば洗い流し時の毛髪のきしみの無さが良好である。
【0026】
本発明の香料組成物を含有する皮膚化粧料、毛髪化粧料、トイレタリー製品は、所望の剤型に応じて公知の製造技術、処方に基づき製造することができ、香料組成物の効果を損なわない範囲で、必要に応じて界面活性剤、油脂類、炭化水素類、ロウ類、高分子化合物、粘度調整剤、防腐剤、キレート剤、安定化剤、顔料、香料などの成分を配合することができる。
【0027】
<毛髪化粧料>
本発明における毛髪化粧料としては、コンディショニング、トリートメントがあげられ、剤型としてヘアリンス、ヘアコンディショナー、ヘアトリートメント、ヘアパック、ヘアマスク、ヘアクリーム、アウトバストリートメント等があげられる。
【実施例0028】
以下、本発明を実施例及び比較例を例示することにより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。まず、実施例に用いた評価方法、及び評価基準を示す。
【0029】
香気の評価方法について以下に記載する。
<評価方法>
表1及び2に記載の配合量で各原料を混合し毛髪化粧料を調製し、専門パネラー5人により下記の評価方法で実施した。毛髪化粧料の香りを毛髪への塗布時、リンスオフ後、残
香について、以下の評価基準に基づき評価した。
【0030】
(1)マスキング評価
毛髪化粧料10g を、規格瓶(ED-40) に入れ、下記評価基準でマスキングの評価をし、専門パネラー5名の平均値を算出した。
<マスキング評価基準>
5点:全く臭気が感じられない
3点:わずかに臭気が感じられる
1点:強く臭気が感じられる
<マスキング判定基準>
◎:平均値が4.0以上
〇:平均値が3.0以上4.0未満
△:平均値が2.0以上3.0未満
×:平均値が2.0未満
【0031】
(2)~(4)サクラ調の香り立ち・持続性評価
以下のポイントで、下記評価基準でサクラ様の香り立ちの評価をし、専門パネラー5名の平均値を算出した。
(2)毛髪塗布時
毛髪化粧料3gを片方の手に取り、毛髪10g塗布したのちに評価を実施。
(3)リンスオフ直後
毛髪化粧料3gを片方の手に取り、毛髪10g塗布したのち、10秒間40℃の水で洗い流したのちに評価を実施。
(4)タオルドライ後(持続性)
毛髪化粧料3gを片方の手に取り、毛髪10g塗布したのち、10秒間40℃の水で洗い流し、タルドライを5秒間行った後、ドライヤーで完全に乾いたと感じるまで毛束を乾燥させたのちに評価を実施。
【0032】
<サクラ調の香り立ち・持続性評価基準>
5点:サクラ調の香気をよく感じることができる。
4点:サクラ調の香気を感じることができる。
3点:サクラ調の香気を弱いが感じることができる。
2点:サクラ調の香気をごくわずかに感じることができる。
1点:サクラ調の香気が全く感じることができない。
<サクラ調の香り立ち・持続性判定基準>
◎:平均値が4.0以上
〇:平均値が3.0以上4.0未満
△:平均値が2.0以上3.0未満
×:平均値が2.0未満
【0033】
【0034】
【0035】
実施例および比較例で使用した香料組成物を表3に示す。
【0036】
【0037】
表1および表2の実施例および比較例について、上記の測定条件により洗浄剤組成物の活性剤およびカチオンカポリマーのマスキング効果を測定したところ、表1に記載の実施例は、表2に記載の各比較例に対し、いずれの特性も優れており良好な結果を得た。