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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092375
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】繊維製品処理剤組成物
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/463 20060101AFI20240701BHJP
   D06M 13/00 20060101ALI20240701BHJP
   D06M 23/12 20060101ALI20240701BHJP
   C07C 211/62 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
D06M13/463
D06M13/00
D06M23/12
C07C211/62
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208262
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【氏名又は名称】義経 和昌
(74)【代理人】
【識別番号】100203242
【弁理士】
【氏名又は名称】河戸 春樹
(72)【発明者】
【氏名】植松 潤平
(72)【発明者】
【氏名】古川 昌和
(72)【発明者】
【氏名】山元 将嗣
(72)【発明者】
【氏名】菊地 久美子
(72)【発明者】
【氏名】園部 円香
(72)【発明者】
【氏名】高村 香
(72)【発明者】
【氏名】田代 雅也
【テーマコード(参考)】
4H006
4L031
4L033
【Fターム(参考)】
4H006AA03
4H006AB90
4L031AB31
4L031BA19
4L031BA35
4L033AB04
4L033AC10
4L033AC15
4L033BA00
4L033BA86
(57)【要約】
【課題】悪臭成分の要因となる菌の増殖を抑え、かつ優れたマスキング性能により、優れた使用感・清潔感を有する繊維製品処理剤組成物を提供する。
【解決手段】
(a)1種または2種以上の特定の4級アンモニウム塩(1)、(b)1種または2種以上の4級アンモニウム塩(1)とは異なる4級アンモニウム塩(2)、および(c)香料成分(1)を内包するマイクロカプセル、を含有する組成物を製造し、繊維製品処理剤組成物として使用する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)1種または2種以上の下記一般式(1)の4級アンモニウム塩(1)、(b)1種または2種以上の下記一般式(2)の4級アンモニウム塩(2)、および(c)香料成分(1)を内包するマイクロカプセル、を含有する繊維製品処理剤組成物。
【化1】

[式中、R1は炭素数12以上22以下のアルキル基又はアルケニル基である。Yは、-COO-、-CONR5-、-OCO-又は-NR5CO-である。ここで、R5は水素原子、炭素数1以上3以下のアルキル基又はヒドロキシアルキル基である。R2は炭素数1以上5以下のアルキレン基である。R3はそれぞれ独立に、炭素数1以上3以下のアルキル基、-R2-OH又は-R2-Y-R1である。ただし、2種以上の4級アンモニウム塩(1)を含む場合、少なくとも1つのYは-COO-又は-OCO-である。R4は炭素数1以上3以下のアルキル基である。Xは対陰イオンである。]
【化2】

[式中、Rは炭素数5以上19以下のアルキル基又はアルケニル基であり、Rは炭素数1以上6以下のアルキレン基又は-(O-R11)n-である。ここでR11はエチレン基もしくはプロピレン基であり、nは平均付加モル数を示し、1以上10以下である。Tは-COO-、-OCO-、-CONH-、-NHCO-又はフェニレン基である。mは0又は1である。R10は炭素数1以上3以下のアルキル基、ベンジル基又はフェネチル基を示す。Rは、R10が炭素数1以上3以下のアルキル基の場合は炭素数5以上19以下のアルキル基又はアルケニル基であり、R10がベンジル基、又はフェネチル基の場合は炭素数1以上3以下のアルキル基である。R9は炭素数1以上3以下のアルキル基である。Z-は対陰イオンである。]
【請求項2】
Yが-COO-である請求項1に記載の繊維製品処理剤組成物。
【請求項3】
が-R-COO-Rである請求項2に記載の繊維製品処理剤組成物。
【請求項4】
が塩化物イオンである請求項1~3のいずれかに記載の繊維製品処理剤組成物。
【請求項5】
mが0である請求項1~4のいずれかに記載の繊維製品処理剤組成物。
【請求項6】
10がベンジル基である請求項5に記載の繊維製品処理剤組成物。
【請求項7】
10が炭素数1以上3以下のアルキル基であり、Rが炭素数5以上19以下のアルキル基又はアルケニル基である請求項5に記載の繊維製品処理剤組成物。
【請求項8】
が塩化物イオンである請求項1~7のいずれかに記載の繊維製品処理剤組成物。
【請求項9】
(c)成分のマイクロカプセルが、シリカを含むシェル(第二シェル)と該シェルの内部に香料化合物を含むコア及び該コアを内包するシリカを含むシェル(第一シェル)とを有するマイクロカプセルである、請求項1~8のいずれかに記載の繊維製品処理組成物。
【請求項10】
(c)成分のマイクロカプセルのメジアン径D50が、0.1μm以上50μm以下である、請求項1~9のいずれかにに記載の繊維製品処理剤組成物。
【請求項11】
(c)成分のマイクロカプセルの前記シェルが、アルコキシシランのゾル-ゲル反応を行うことにより形成されてなるシリカを構成成分として含む、請求項1~10のいずれかに記載の繊維製品処理剤組成物。
【請求項12】
前記ゾル-ゲル反応を2段階で行うことにより形成されてなるシリカを構成成分として含む、請求項11に記載の繊維製品処理剤組成物。
【請求項13】
前記アルコキシシランが、テトラエトキシシランである、請求項11又は12に記載の繊維製品処理剤組成物。
【請求項14】
(c)成分の香料成分(1)が、1種または2種以上の香料化合物を含み、香料化合物の全量中、logPが2.0以上5.0以下、且つ25℃の蒸気圧が0.01Pa以上8.00Pa以下である香料化合物の割合が25質量%以上である、請求項1~13のいずれかに記載の繊維製品処理剤組成物。
【請求項15】
(a)成分を3質量%以上20質量%以下、(b)成分を0.1質量%以上5質量%以下、(c)成分の香料成分(1)を0.005質量%以上0.5質量%以下含有する請求項1~14のいずれかに記載の繊維製品処理剤組成物。
【請求項16】
更に(d)成分としてマイクロカプセルに封入されていない1種または2種以上の香料化合物を含む香料成分(2)を含む請求項1~15に記載の繊維製品処理剤組成物。
【請求項17】
更に(e)成分として非イオン界面活性剤を含む請求項1~16のいずれかに記載の繊維製品処理剤組成物。
【請求項18】
請求項1~17のいずれかに記載の繊維製品処理剤組成物を衣類の洗濯時に衣類に接触させたのち部屋干しする、部屋干し臭抑制方法。
【請求項19】
請求項1~17の何れかに記載の繊維製品処理剤組成物を含有する消臭剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維製品処理剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、洗濯における消費者の求める価値として、従来求められていた汚れ落ちの性能に関しては勿論、芳香性のバリエーションや抗菌に代表される衛生的価値なども重要となっている。
【0003】
特に抗菌性に関して、生乾き等により発生する微生物が不快臭を産生することが明らかとなっており、その対応が望まれている。具体的な微生物として、例えば念入りに洗濯を行っていても落とし切れていない皮脂汚れに由来し、衣類繊維に残存しているAnte-iso脂肪酸を資化することで、不快臭成分の一つである4-メチル-3-ヘキセン酸(4M3H)を産生するM.osloensis(モラクセラ・オスロエンシス)が知られている(特許文献1)。
【0004】
従来、上述の対策として香料によるマスキングや洗剤による除菌、また柔軟剤による抗菌が行われてきた。特許文献2及び特許文献3には生物分解性の4級アンモニウム化合物と塩化ベンザルコニウムを用いた防臭性の柔軟剤組成物が開示されている。またこれらの先行技術文献には、臭気の原因が菌由来であることが開示されている。
【0005】
更に特許文献4及び特許文献5にはカプセルとモノアルキルカチオンを含有し、凍結復元性が高く、かつ配合されたカプセル化香料の分散性の良い液体柔軟剤組成物の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-97367号公報
【特許文献2】特開2001-336065号公報
【特許文献3】特開2019-131943号公報
【特許文献4】特開2015-034371号公報、
【特許文献5】特開2015-227515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、細菌は生育条件が整うと容易に増殖し、例えば長期着用により付着する汗や皮脂を養分として、着用直後では感じられなかった不快臭が認められる事が考えられる。特にM.osloensis (モラクセラ・オスロエンシス)は、一般的な抗菌性の洗剤や柔軟剤を用いて、処理を施し乾燥した繊維製品であっても、着用後に発汗や降雨等で濡れてから暫くすると、特徴的な不快臭が再発する、いわゆる戻り臭を発生する菌体として知られており、長期的な微生物の増殖抑制が求められている。
【0008】
また、柔軟剤組成物のような4級アンモニウム塩を含有する繊維製品処理剤は保管状況により不安定化し、特に店頭や家庭で日光が当たる状況下で保管された場合、一部が濃縮しゲル状物が出来ることがある。その場合、組成物中のマイクロカプセルの濃度勾配ができ、衣類に不均一に吸着され、マスキングによる十分な消臭効果が期待できなくなることがある。
【0009】
本発明は、悪臭成分の一つである4-メチル-3-ヘキセン酸(4M3H)の主要発生細菌であるM.osloensis(モラクセラ・オスロエンシス)の増殖を抑え、かつ優れたマスキング性能により、消費者へ優れた使用感・清潔感を提供する繊維製品処理剤組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、(a)1種または2種以上の下記一般式(1)の4級アンモニウム塩(1)、(b)1種または2種以上の下記一般式(2)の4級アンモニウム塩(2)、および(c)香料成分(1)を内包するマイクロカプセル、を含有する繊維製品処理剤組成物に関する。
【化1】

[式中、R1は炭素数12以上22以下のアルキル基又はアルケニル基である。Yは、-COO-、-CONR5-、-OCO-又は-NR5CO-である。ここで、R5は水素原子、炭素数1以上3以下のアルキル基又はヒドロキシアルキル基である。R2は炭素数1以上5以下のアルキレン基である。R3はそれぞれ独立に、炭素数1以上3以下のアルキル基、-R2-OH又は-R2-Y-R1である。ただし、2種以上の4級アンモニウム塩(1)を含む場合、少なくとも1つのYは-COO-又は-OCO-である。R4は炭素数1以上3以下のアルキル基である。Xは対陰イオンである。]
【化2】

[式中、Rは炭素数5以上19以下のアルキル基又はアルケニル基であり、Rは炭素数1以上6以下のアルキレン基又は-(O-R11)n-である。ここでR11はエチレン基もしくはプロピレン基であり、nは平均付加モル数を示し、1以上10以下である。Tは-COO-、-OCO-、-CONH-、-NHCO-又はフェニレン基である。mは0又は1である。R10は炭素数1以上3以下のアルキル基、ベンジル基又はフェネチル基を示す。Rは、R10が炭素数1以上3以下のアルキル基の場合は炭素数5以上19以下のアルキル基又はアルケニル基であり、R10がベンジル基、又はフェネチル基の場合は炭素数1以上3以下のアルキル基である。R9は炭素数1以上3以下のアルキル基である。Z-は対陰イオンである。]
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、悪臭成分の一つである4-メチル-3-ヘキセン酸(4M3H)の主要発生細菌であるM.osloensis(モラクセラ・オスロエンシス)の増殖を抑え、衣類に抗菌効果を付与する繊維製品処理剤組成物を提供することができる。また、日光暴露後も取り扱いに適した品質を維持することにより、香料のマイクロカプセルによる優れたマスキング性能を提供することが出来る。これら抗菌性とマスキングによる消臭効果により、悪臭がせず、心地よい香りの躍動感を感じる衣類を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<(a)成分>
本発明の繊維製品処理剤組成物は(a)成分として、前記一般式(1)の4級アンモニウム塩(1)を含有する。
【0013】
前記一般式(1)で示される式中、Rは、消臭効果及び抗菌効果の観点から、炭素数12以上22以下の飽和炭化水素基又は不飽和炭化水素基から選ばれる1種以上の炭化水素基であり、好ましくは炭素数15以上19以下の飽和炭化水素基又は不飽和炭化水素基から選ばれる1種以上の炭化水素基である。柔軟効果の観点から、好ましくはヘプタデシル基、ペンタデシル基、8-ヘプタデセニル基または8,11-ヘプタデセジエニル基である。
このような(a)成分は一般には繊維製品に柔軟効果を付与する目的で用いられる成分であるが、本発明では後述する(b)成分、及び(c)成分の相乗作用により繊維製品に高い消臭効果を付与することができる。
【0014】
は、消臭効果の観点から、それぞれ独立に炭素数1以上5以下のアルキレン基であり、好ましくはエチレン基又はプロピレン基であり、より好ましくはエチレン基である。
【0015】
Yは消臭効果の観点から、好ましくは-COO-または-OCO-、更に好ましくは-COO-である。
【0016】
は、消臭基剤合成効率の観点から、好ましくは-R-Y-Rであり、その際のYも好ましくは-COO-または-OCO-、更に好ましくは-COO-である。
【0017】
また、Rは炭素数1以上3以下のアルキル基であり、消臭基剤合成効率の観点から、好ましくはメチル基である。
【0018】
は対陰イオンであり、ハロゲン化物イオン、好ましくは塩化物イオン、炭素数1以上3以下のアルキル硫酸エステルイオン、炭素数12以上18以下の脂肪酸イオン、及び炭素数1以上3以下のアルキル基が1個以上3個以下置換していてもよいベンゼンスルホン酸イオンから選ばれる陰イオンが好ましく、炭素数1以上3以下のアルキル硫酸エステルイオンから選ばれる陰イオンがより好ましく、モノメチル硫酸イオン又はモノエチル硫酸イオンがより好ましい。
【0019】
好ましいYが-COO-である(a)成分は、例えば、炭素数1以上3以下、更に炭素数2又は3のヒドロキシアルキル基を有するトリアルカノールアミン、好ましくはトリエタノールアミンと、脂肪酸との脱水エステル化反応又は前記アミンと、脂肪酸の低級アルコールエステルとのエステル交換反応、続いてアルキル化剤により4級化反応を行うことで調製することができる。その際、脂肪酸として炭素数又は不飽和度の異なる脂肪酸の混合物、又は脂肪酸低級アルコールエステルとして脂肪酸部分の炭素数又は不飽和度の異なる脂肪酸低級アルコールエステルの混合物を用いることで、(a)成分を製造することができる。
【0020】
具体的に用いることが好ましい脂肪酸は、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸又はリノール酸あるいはこれらの混合物から選ばれる脂肪酸、もしくは、パーム油、大豆油又はオリーブ油由来の組成を持つ脂肪酸が好ましい。
【0021】
(a)成分の製造に用いる脂肪酸又は脂肪酸混合物の酸価は、組成物の液性の点で、好ましくは180mgKOH/g以上、より好ましくは200mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは240mgKOH/g以下、より好ましくは210mgKOH/g以下である。
また、(a)成分の製造に用いる脂肪酸又は脂肪酸混合物のヨウ素価は、組成物の液性の点で、好ましくは30g/100g以上、より好ましくは40g/100g以上であり、そして、好ましくは100g/100g以下、より好ましくは95g/100g以下である。
なお、脂肪酸又は脂肪酸混合物の酸価及びヨウ素価は「岩波理化学辞典」第4版 岩波書店に記載された方法により測定される値である。
【0022】
本発明の繊維製品処理剤組成物中の(a)成分の含有量は、洗濯1回当たりの使用量を少なくできる点、及び消臭効果の点から、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましく8質量%以上であり、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは18質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。
【0023】
<(b)成分>
本発明の繊維製品処理剤組成物は(b)成分として、前記一般式(2)の4級アンモニウム塩(2)を含有する。
【0024】
前記一般式(2)で示される式中、Rは、消臭効果、抗菌効果及び耐光性の観点から、アルキル基又はアルケニル基の炭素数が5以上、好ましくは7以上、そして、19以下、好ましくは17以下、より好ましくは15以下、最も好ましくは13以下である。
【0025】
は炭素数1以上6以下のアルキレン基又は-(O-R11)n-である。Rがアルキレン基である場合の炭素数は、消臭効果、抗菌効果及び耐光性の観点から、好ましくは2以上3以下である。Rが-(O-R11)n-である場合、R11は炭素数2以上3以下のアルキレン基、好ましくはエチレン基であり、nは平均付加モル数を表し、好ましくは1以上10以下、より好ましくは5以下の数である。
【0026】
Tは-COO-、-OCO-、-CONH-、-NHCO-、又はフェニレン基である。mは、0又は1である。消臭効果、抗菌効果及び耐光性の観点から、Tは-COO-、-OCO-が好ましく、mは0が好ましい。
【0027】
10は炭素数1以上3以下のアルキル基、ベンジル基、又はフェネチル基である。
は、R10がベンジル基、又はフェネチル基の場合は炭素数1以上3以下のアルキル基であり、R10が炭素数1以上3以下のアルキル基の場合は炭素数5以上、好ましくは7以上、そして、19以下、好ましくは17以下、より好ましくは15以下、最も好ましくは13以下のアルキル基又はアルケニル基である。
消臭効果、抗菌効果及び耐光性の観点から、R10がベンジル基かつRがメチル基、または、R10がメチル基かつRが炭素数5以上13以下のアルキル基又はアルケニル基、が好ましい。
が炭素数5以上19以下のアルキル基又はアルケニル基の場合は、炭素数は5以上、好ましくは7以上、そして、19以下、好ましくは17以下、より好ましくは15以下、そして最も好ましくは13以下である。
【0028】
9は炭素数1以上3以下のアルキル基であり、消臭効果、抗菌効果及び耐光性の観点から、メチル基が好ましい。
【0029】
-は、対陰イオンであり、ハロゲン化物イオン、好ましくは塩化物イオン、炭素数1以上3以下のアルキル硫酸エステルイオン、炭素数12以上18以下の脂肪酸イオン、及び炭素数1以上3以下のアルキル基が1個以上3個以下置換していてもよいベンゼンスルホン酸イオンから選ばれる陰イオンが好ましく、メチル硫酸エステルイオン又はエチル硫酸エステルイオン又はハロゲン化物イオンがより好ましく、中でも塩化物イオンがより好ましい。
【0030】
本発明の(b)成分は消臭効果及び抗菌効果だけではなく、(a)成分を含有する繊維製品処理剤の耐光性を改善することができ、繊維製品処理剤組成物中の(b)成分の含有量は、消臭効果及び抗菌効果の観点から、あるいは耐光性安定性向上の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上であり、そして、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下である。
【0031】
<(c)成分>
本発明の繊維製品処理剤組成物は(c)成分として、香料成分(1)を内包するマイクロカプセルを含有する。
【0032】
具体的には、マイクロカプセルのシェルの構成成分としては、シリカ、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ゼラチン、アルギン酸、メラミン、尿素膜、ウレタン膜、CMC(細胞膜複合体)膜、等が例示できる。強度や含有する香料の放出能の観点から、構成成分としてはシリカが好ましい。以下、(c)成分のシリカを構成成分として含むシェルを有するマイクロカプセルを、シリカカプセルともいう。香料成分(1)は、1種または2種以上の香料化合物を含有する香料組成物(1)としてシリカカプセルに内包することができる。
【0033】
<シェル>
本発明のシリカカプセルのシェルは、シリカを構成成分として含む。本発明のシリカカプセルのシェルは、シェルを構成している構造の一部または実質的全部がシリカを構成成分としてできていることを特徴とする。
本発明のシリカカプセルのシェルは、アルコキシシランを前駆体としたゾル-ゲル反応により形成されてなるものが好ましい。
【0034】
また、本発明のシリカカプセルのシェルは、本発明の効果を阻害しない範囲で、シリカ以外の無機重合体を構成成分として含んでもよい。本発明において無機重合体とは、無機元素を含む重合体をいう。該無機重合体としては、無機元素のみからなる重合体、主鎖が無機元素のみから構成され側鎖又は置換基として有機基を有する重合体等が挙げられる。
前記無機重合体は、好ましくは金属元素を含む金属酸化物であり、更に好ましくは金属アルコキシド[M(OR)x]を前駆体として、前述のシリカのゾル-ゲル反応と同様の反応により形成されてなる重合体である。ここで、Mは金属元素であり、Rは炭化水素基である。
金属アルコキシドを構成する金属元素としては、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、亜鉛等が挙げられる。
【0035】
前記アルコキシシランは、香料成分(1)の内包率を高める観点並びにデリバリー性能を良好に発現させる観点から、好ましくはテトラアルコキシシランである。
前記テトラアルコキシシランとしては、ゾル-ゲル反応を促進する観点から、好ましくは炭素数1以上4以下のアルコキシ基を有するものであり、より好ましくはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、及びテトライソプロポキシシランから選ばれる1種以上であり、更に好ましくはテトラメトキシシラン及びテトラエトキシシランから選ばれる1種以上であり、より更に好ましくはテトラエトキシシランである。
【0036】
(シリカカプセルの製造)
本発明のシリカカプセルのシェルは、香料化合物の内包率を高める観点、及び長期保持性を向上させる観点、並びに香料成分(1)のデリバリー性能を良好に発現させる観点から、ゾル-ゲル反応を2段階で行うことにより形成されてなるシリカを構成成分として含むことが好ましい。すなわち、本発明のシリカカプセルは、下記の工程1及び工程2を含む方法により製造することが好ましい。
工程1:カチオン性界面活性剤を含む水相成分と、香料成分(1)及びテトラアルコキシシランを含む油相成分とを乳化して得られる乳化液を、酸性条件下でゾル-ゲル反応に供し、コアと、シリカを構成成分とする第一シェルと、を有するシリカカプセル(1)を形成し、該シリカカプセル(1)を含有する水分散体を得る工程。
工程2:工程1で得られたシリカカプセル(1)を含有する水分散体に、更にテトラアルコキシシランを添加してゾル-ゲル反応を行い、第一シェルを包接する第二シェルを有するシリカカプセル(2)を形成する工程。
【0037】
〔工程1〕
工程1は、カチオン性界面活性剤を含む水相成分と、香料成分(1)及びテトラアルコキシシランを含む油相成分とを乳化して得られる乳化液を、酸性条件下でゾル-ゲル反応に供し、コアと、シリカを構成成分とする第一シェルとを有するシリカカプセル(1)を形成し、該シリカカプセル(1)を含有する水分散体を得る工程である。
【0038】
工程1におけるカチオン性界面活性剤として、アルキルアミン塩、アルキル第4級アンモニウム塩等が挙げられる。アルキルアミン塩は、好ましくは第2級アミン又は第3級アミンの塩であり、より好ましくは第3級アミンの塩である。アルキルアミン塩及びアルキル第4級アンモニウム塩は、少なくとも1つの長鎖アルキル基を有し、任意に、好ましくは少なくとも1つの長鎖アルキル基、短鎖アルキル基及びベンジル基から選ばれる基を有する化合物が好ましい。長鎖アルキル基の炭素数は、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、更に好ましくは14以上であり、そして、好ましくは22以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは18以下である。短鎖アルキル基の炭素数は、好ましくは1以上、そして、好ましくは4以下であり、より好ましくは1又は2であり、更に好ましくは1、すなわちメチル基である。
アルキルアミン塩としては、長鎖アルキル基が前記炭素数の範囲である、長鎖モノアルキルモノメチル2級アミン塩、長鎖モノアルキルジメチル3級アミン塩等のアルキルアミン塩が挙げられる。
第4級アンモニウム塩としては、長鎖アルキル基及び短鎖アルキル基がそれぞれ前記炭素数の範囲である、長鎖アルキルトリ短鎖アルキル4級アンモニウム塩、ジ長鎖アルキルジ短鎖アルキル4級アンモニウム塩、長鎖アルキルベンジルジ短鎖アルキル4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0039】
アルキルアミン塩としては、ラウリルジメチルアンモニウムアセテート、ステアリルジメチルアンモニウムアセテート等のアルキルアミン酢酸塩が挙げられる。
アルキルトリメチルアンモニウム塩としては、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド等のアルキルトリメチルアンモニウムクロライド;ラウリルトリメチルアンモニウムブロマイド、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド、ステアリルトリメチルアンモニウムブロマイド等のアルキルトリメチルアンモニウムブロマイド等が挙げられる。
ジアルキルジメチルアンモニウム塩としては、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド等のジアルキルジメチルアンモニウムクロライド;ジステアリルジメチルアンモニウムブロマイド等のジアルキルジメチルアンモニウムブロマイド等が挙げられる。
アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩としては、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムブロマイド等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤は、これらの中でも、好ましくは第4級アンモニウム塩であり、より好ましくは炭素数10以上22以下のアルキル基を有するアルキルトリメチルアンモニウム塩であり、更に好ましくは炭素数10以上22以下のアルキル基を有するアルキルトリメチルアンモニウムクロライドであり、より更に好ましくはラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、及びセチルトリメチルアンモニウムクロライドから選ばれる1種以上であり、より更に好ましくはセチルトリメチルアンモニウムクロライドである。
【0040】
工程1において、本発明の効果を阻害しない範囲で、カチオン性界面活性剤に加えて、更に他の乳化剤を含んでもよい。他の乳化剤としては、高分子分散剤、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。
【0041】
工程1において水相成分中のカチオン性界面活性剤の含有量は、乳化滴の分散安定性の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.4質量%以上であり、そして、乳化液の分散安定性に寄与しない余剰の乳化剤による乳化剤ミセルの形成を抑制し、カプセル化効率を向上させる観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは2質量%以下である。
【0042】
工程1で得られる乳化液の総量に対する油相成分の量は、製造効率の観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15%以上であり、そして、安定な乳化液を得る観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。
【0043】
工程1におけるテトラアルコキシシランの添加量は、ゾル-ゲル反応を促進させ、十分に緻密なシェルを形成する観点から、工程1の香料化合物の総量に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは12質量%以上、更に好ましくは14質量%以上であり、そして、過剰のテトラアルコキシシランが香料化合物中に残存することを抑制する観点から、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、より更に好ましくは35質量%以下である。
【0044】
工程1は、好ましくは下記の工程1-1~1-4を含む。
工程1-1:カチオン活性剤を含む水相成分を調製する工程
工程1-2:香料とテトラアルコキシシランを混合し、油相成分を調製する工程
工程1-3:工程1-1で得られた水相成分と工程1-2で得られた油相成分とを混合及び乳化し、乳化液を得る工程
工程1-4:工程1-3で得られた乳化液を、1段階目のゾル-ゲル反応に供し、コアと、シリカを構成成分とする第一シェルとを有するシリカカプセル(1)を形成する工程
【0045】
工程1の乳化液における乳化滴のメジアン径D50は、シリカカプセル外環境に対する比表面積を少なくし、長期保持性を高める観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上、更に好ましくは0.3μm以上であり、そして、シリカカプセル(1)の物理的強度の観点から、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下、更に好ましくは10μm以下、より更に好ましくは5μm以下、より更に好ましくは3μm以下である。
乳化滴のメジアン径D50は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0046】
工程1におけるゾル-ゲル反応の初期pHは、テトラアルコキシシランの加水分解反応と縮合反応のバランスを保つ観点、及び親水性の高いゾルの生成を抑制し、カプセル化の進行を促進する観点から、好ましくは3.0以上、より好ましくは3.3以上であり、更に好ましくは3.5以上であり、そして、シリカシェル(1)の形成と乳化滴の凝集の併発を抑制し、緻密なシェルを有するシリカカプセル(1)を得る観点から、好ましくは4.5以下、より好ましくは4.3以下、更に好ましくは4.1以下である。
【0047】
香料組成物を含む油相成分の酸性、アルカリ性の強さに応じて、所望の初期pHに調整する観点から、任意の酸性又はアルカリ性のpH調整剤を用いてもよい。
前記乳化液のpHが所望の値以下となることもある。その場合には、後述するアルカリ性のpH調整剤を用いて調整することが好ましい。
すなわち、工程1-4は、好ましくは、下記の工程1-4’であってもよい。
工程1-4’:工程1-3で得られた乳化液のpHを、pH調整剤を用いて調整し、1段階目のゾル-ゲル反応を行い、コアと第一シェルとを有するシリカカプセル(1)を形成し、該シリカカプセル(1)を含有する水分散体を得る工程
【0048】
酸性のpH調整剤として、塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸、酢酸、クエン酸等の有機酸、陽イオン交換樹脂等を水やエタノール等に加えた液などが挙げられ、好ましくは塩酸、硫酸、硝酸、クエン酸である。
アルカリ性のpH調整剤として、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリスヒドロキシメチルアミノメタンなどが挙げられ、好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウムである。
【0049】
工程1におけるゾル-ゲル反応の反応温度は、水相として含まれる水の融点以上、沸点以下であれば任意の値を選択することができるが、ゾル-ゲル反応における加水分解反応と縮合反応のバランスを制御し、緻密なシェルを形成する観点から、温度を一定範囲にするのが好ましい。該範囲としては、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは15℃以上、そして、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下、更に好ましくは40℃以下である。
【0050】
〔工程2〕
工程2は、工程1で得られたシリカカプセル(1)を含有する水分散体に、更にテトラアルコキシシランを添加してゾル-ゲル反応を行い、第一シェルを包接する第二シェルを有するシリカカプセル(2)を形成する工程である。
【0051】
工程2におけるテトラアルコキシシランの添加量は、第一シェルを包接した第二シェルを形成する観点から、工程1の香料化合物に対して、好ましくは7質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、そして、水相に分散するシリカゾルの生成を抑制し、シリカカプセルの分散安定性を向上させる観点から、好ましくは200質量%以下、より好ましくは170質量%以下、更に好ましくは150質量%以下である。
【0052】
工程2において、工程1で得られるシリカカプセル(1)を含有する水分散体に添加するテトラアルコキシシランは、全量を一括で添加してもよく、間欠的に分割して添加してもよく、連続的に添加してもよいが、緻密性の高い第二シェルを形成する観点から、連続的に滴下して添加することが好ましい。
テトラアルコキシシランを連続的に滴下して添加する場合、その滴下時間は製造の規模に応じて適宜設定することができるが、添加するテトラアルコキシシランと水分散体との分離を抑制する観点から、好ましくは5分以上、より好ましくは10分以上、更に好ましくは30分以上であり、そして、好ましくは1200分以下、より好ましくは1000分以下、更に好ましくは500分以下である。
【0053】
本発明において、テトラアルコキシシランの添加総量、すなわち工程1及び工程2で用いられるテトラアルコキシシランの合計添加量は、工程1の香料化合物に対して、好ましくは30質量%以上、より好ましくは35質量%以上、更に好ましくは40質量%以上であり、そして、好ましくは250質量%以下、より好ましくは200質量%以下、更に好ましくは150質量%以下である。テトラアルコキシシランの添加総量を上記範囲にすることにより、内包する香料化合物を長期間保持することができる。
【0054】
本発明において、工程2におけるテトラアルコキシシランの添加前の水分散体の総量に対して、工程1の香料化合物及びテトラアルコキシシランの合計量は、香料化合物の長期保持性を向上させる観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは18質量%以下、更に好ましくは15質量%以下、より更に好ましくは10質量%以下であり、そして、生産効率の観点から、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上である。
工程2におけるテトラアルコキシシランの添加前の水分散体の総量に対する、工程1の香料化合物及びテトラアルコキシシランの合計量の調整は、工程1の香料化合物及びテトラアルコキシシランの量と工程1で得られる水分散体の総量とが上記範囲となるように工程1を行ってもよく、工程1で得られた水分散体に更に水を添加して希釈することにより行ってもよい。
【0055】
本発明は、生産効率の観点から、工程2において、テトラアルコキシシランの添加前に、工程1で得られた水分散体を水で希釈してもよい。工程1で得られた水分散体の希釈前の総量に対する、工程1の香料化合物及びテトラアルコキシシランの合計量は、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、より更に好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
希釈倍率は、好ましくは2倍以上、より好ましくは2.5倍以上であり、そして、好ましくは20倍以下、より好ましくは10倍以下、より好ましくは7倍以下である。
【0056】
工程2におけるゾル-ゲル反応の反応温度は、分散媒として含まれる水の融点以上、沸点以下であれば任意に選択することができるが、ゾル-ゲル反応における加水分解反応と縮合反応のバランスを制御し、緻密なシェルを形成する観点から、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは15℃以上であり、そして、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下、更に好ましくは40℃である。工程1のゾル-ゲル反応と工程2のゾル-ゲル反応とで異なる反応温度で実施しても良い。
【0057】
本発明は、工程2において、工程1で得られた水分散体に、更に有機高分子化合物を水分散体を安定させ凝集を抑制する目的で添加してもよい。ここで、有機高分子化合物とは重量平均分子量5,000以上の化合物を意味する。
前記有機高分子化合物としては、ノニオン性ポリマー、カチオン性ポリマー、アニオン性ポリマーが挙げられる。
前記ノニオン性ポリマーは、水中で電荷を有しない水溶性ポリマーを意味する。ノニオン性ポリマーを用いることにより、シリカカプセルの用途に応じた機能を該シリカカプセル(2)に付与させることができる。
前記有機高分子化合物としてノニオン性ポリマー、カチオン性ポリマー、又はアニオン性ポリマーを用いる場合、例えば本発明に係るシリカカプセルを柔軟剤組成物等の繊維処理剤組成物に用いる際には、シリカカプセルの繊維への吸着性の向上が期待できる。
本明細書において「水溶性ポリマー」とは、105℃で2時間乾燥させ、恒量に達したポリマーを25℃の水100gに溶解させたときに、その溶解量が1mg以上であるポリマーをいう。
【0058】
ノニオン性ポリマーとしては、ノニオン性モノマー由来の構成単位を有するポリマー、水溶性多糖類(セルロース系、ガム系、スターチ系等)及びその誘導体等が挙げられる。
ノニオン性モノマーとしては、炭素数1以上22以下の脂肪族アルコール由来の炭化水素基を有する(メタ)アクリレート;スチレン等のスチレン系モノマー;ベンジル(メタ)アクリレート等の芳香族基含有(メタ)アクリレート;酢酸ビニル;ビニルピロリドン;ビニルアルコール;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。なお、(メタ)アクリレートは、アクリレート又はメタクリレートの意味である。同様に、(メタ)アクリルは、アクリル又はメタクリルの意味である。
【0059】
カチオン性ポリマーとしては、四級アンモニウム塩基を含有するポリマーの他、窒素系のカチオン基を有するポリマー、pH調整によりカチオン性を帯びることがあるポリマー等が挙げられる。カチオン性ポリマーを用いることにより、工程1で得られるシリカカプセル(1)が水分散体中で凝集しやすい状況を緩和することができ、続く工程2において粗大粒子等の生成を抑制できる。
カチオン性ポリマーとしては、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、ポリ(アクリル酸-co-ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、ポリ(アクリルアミド-co-ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、ポリ(アクリルアミド-co-アクリル酸-co-ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)等のポリジアリルジメチルアンモニウム塩及びその共重合体、ポリ(2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド)、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、カチオン化セルロース、カチオン化グアーガム、カチオン化タラガム、カチオン化フェヌグリークガム、カチオン化ローカストビンガム等が挙げられる。これらの中でも、ポリジアリルジメチルアンモニウム塩及びその共重合体が好ましく、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、ポリ(アクリル酸-co-ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、及びポリ(アクリルアミド-co-アクリル酸-co-ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)から選ばれる1種以上がより好ましく、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)が更に好ましい。
【0060】
カチオン性ポリマーのカチオン基当量は、シリカカプセル(1)の分散性の観点及び粗大粒子の生成を抑制する観点、並びに長期保持性を向上させる観点から、好ましくは1meq/g以上、より好ましくは3meq/g以上、更に好ましくは4.5meq/g以上であり、そして、好ましくは10meq/g以下、より好ましくは8meq/g以下である。カチオン性ポリマーにアニオン基が含まれてもよいが、その場合、カチオン性ポリマーに含まれるアニオン基当量は、好ましくは3.5meq/g以下、より好ましくは2meq/g以下、更に好ましくは1meq/g以下である。なお、本発明において、カチオン性ポリマーのカチオン基当量は、モノマー組成に基づいた計算により算出したものを用いる。
【0061】
アニオン性ポリマーとしては、カルボキシル基を有するモノマー単位を含有するポリマーの他、スルホン酸基を有するモノマー単位を含有するポリマー、pH調整によりアニオン性を帯びるポリマー等が挙げられる。
アニオン性ポリマーとしては、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリマレイン酸、ポリ((メタ)アクリル酸-co-マレイン酸)、ポリ((メタ)アクリル酸-co-無水マレイン酸)、ポリ((メタ)アクリル酸-co-イソブチレン)、ポリ((メタ)アクリル酸-co-スチレン)、ポリ(イソブチレン-co-マレイン酸)、ポリ(スチレン-co-マレイン酸)、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。なお、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸又はメタクリル酸の意味である。
【0062】
有機高分子化合物の添加量は、工程1で得られた水分散体に対して、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上であり、そして、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下である。
【0063】
工程2により得られるシリカカプセル(2)は、水中に分散した状態で得られる。上記の工程で製造することにより、香料成分(1)のほとんどをシリカカプセルに内包させることができるので、用途によってはこれをそのまま使用することができる。場合によっては、シリカカプセルを分離して使用することもできる。分離方法としては、ろ過法、遠心分離法等を採用することができる。
【0064】
<コア>
本発明に係るシリカカプセルのコアは香料成分(1)を含む。
本発明では、繊維が発汗等の水分で湿潤した際の香り立ちの観点から、香料成分(1)に含まれる香料化合物の全量中、logPが2.0以上5.0以下、且つ25℃の蒸気圧が0.01Pa以上8.00Pa以下である香料化合物の割合が25質量%以上であることが好ましい。
【0065】
本発明において、logP値とは、有機化合物の水と1-オクタノールに対する親和性を示す係数である。1-オクタノール/水分配係数Pは、1-オクタノールと水の2液相からなる溶媒に微量の化合物が溶質として溶け込んで分配平衡に到達した際の、それぞれの溶媒中における化合物の平衡濃度の比であり、底10に対するそれらの対数logPの形で示すのが一般的である。今日では、化合物分子を構成する原子の数及び化学結合のタイプによって決められる原子団のフラグメント値を用いた計算プログラムによって算出される、“計算logP(ClogPという場合がある)”の値が広く用いられており、本発明においても、化合物の選択に際して、ClogPの値を用いるが、この値は実験的に得られるlogP値と同等とみなしてよい。本願で用いたlogP値は、ClogP値であり、以後ClogP値と表記する。
【0066】
ClogPが2.0以上5.0以下、且つ25℃の蒸気圧が0.01Pa以上8.00Pa以下である香料化合物として、例えば、γ-ウンデカラクトン、2-シクロヘキシリデン-2-フェニルアセトニトリル、ダマセノン、δ-ダマスコン、α-メチル-β-(p-t-ブチルフェニル)-プロピオンアルデヒド、β-イオノン、ミルラアルデヒド、エチルトリシクロ〔5.2.1.0-2,6〕デカン-2-カルボキシレート(フルーテート)、シトロネロール、ゲラニオール、α-イオノン、パチョリアルコール、6,7-ジヒドロ-1,1,2,3,3-ペンタメチル-4(5H)-インダノン、メチルジヒドロジャスモネート、ヘキシルシンナミックアルデヒド、アミルシンナミックアルデヒド、プロピオン酸アリルシクロヘキシル、酪酸ジメチルベンジルカルビニル、プロピオン酸トリシクロデセニル、サリチル酸アミル、γ-メチルイオノン、α-ダマスコン、β-ダマスコン、ネロリンヤラヤラ、2,4,6-トリメチル-4-フェニル-1,3-ジオキサン、フェニルヘキサノール、2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール、ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト〔2,1-b〕フラン、γ-ノナラクトン、メチルβ-ナフチルケトン、オイゲノール、リラール、酢酸ジメチルベンジルカルビニル、イソ-ダマスコン、2-シクロヘキシリデン-2-フェニルアセトニトリル、γ-デカラクトン、α-メチル-3,4-メチレンジオキシヒドロシンナミックアルデヒド、7-メチル-3,5-ジヒドロ-2H-ベンゾジオキセピノン、トリシクロデシニルアセテート(酢酸トリシクロデセニル)、トリシクロデシニルプロピオネート、2-ペンチルオキシグリコール酸アリル、1-(2-tert-ブチルシクロヘキシロキシ)-2-ブタノール、シトロネリロキシアセトアルデヒド、インドール、4-メチル-3-デセン-5-オール、パラ-メンタン-8-チオール-3-オン、3-(パラ-tert-ブチルフェニル)-プロパナール、エチルシンナメート、5-メチル-3-ヘプタノンオキシム、メチルアンスラニレート、ターピネオール、β-カリオフィレン、酢酸シトロネリル、酢酸ゲラニル、酢酸ネリル、酢酸[4-(t-ブチル)シクロヘキシル]、テトラヒドロゲラニオール、2-イソブチル-4ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピラノール(フロローサ)、α-ダイナスコン、シスジャスモン、ビシクロ[3.2.1]オクタン-8-1,5-ジメチルオキシム、2,4-ジメチル-4,4α,5,9β-テトラヒドロインデノ[1,2-d]-m-ジオキシン、3-(パラ-エチルフェニル)-2,2-ジメチルプロパナール、エチル-2-tert-ブチルシクロヘキシル-カーボネート、安息香酸ヘキシル、4-アセトキシ-3-アミルテトラヒドロピラン、ドデシルアルデヒド、ジヒドロ-β-イオノン、メチルシクロオクチルカーボネート、メチルフェニルグリシド酸エチル、イソオイゲノール、メチルイソオイゲノール、ジフェニルオキサイド、2,2,5-トリメチル-5-ペンチルシクロペンタノン、チモール、ネロリンブロメリア、5,6-ジメチル-8-イソプロペニル、ビシクロ[4.4.0]-1-デセン-3-オン、3-(4-イソプロピルフェニル)-プロパナール、4-イソプロピルシクロヘキサンメタノール、メチルアンスラニル酸メチル、ドデカンニトリル、3-ドデセナール、イソプロピルミリスチレートが挙げられる。
【0067】
また、香料成分(1)の香料化合物としては、ClogP値が2.0よりも低い香料化合物を用いることもできる。ClogP値が2.0よりも低い香料化合物として、例えば、クマリン(1.5)、フェニルエチルアルコール(1.6)、cis-3-ヘキセノール(1.6)、ラズベリーケトン(1.5)、ヘリオトロピン(1.8)などが挙げられる。なお( )内の数字はClogP値である。
【0068】
また、香料成分(1)の香料化合物としては、ClogP値が5.0よりも高い香料化合物を用いることもできる。ClogP値が5.0よりも高い香料化合物として、例えば、2-[2-(4-メチル-3-シクロヘキセン-1-イル)プロピル]シクロペンタノン(5.1)、7-アセチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロ-1,1,6,7-テトラメチルナフタレン(5.2)、アセチルセドレン(5.2)、ネロリドール(5.7)、ベンジルアルコール(7.1)、カリオフィレン(6.3)などが挙げられる。なお( )内の数字はClogP値である。
【0069】
また、香料成分(1)の香料化合物としては、蒸気圧が0.01Paよりも低い香料化合物を用いることもできる。蒸気圧が0.01Paよりも低い香料化合物として、例えば、1,4-ジオキサシクロヘプタデカン-5,17-ジオン(0.0000585)、エチレンブラッシレート(0.0000585)などが挙げられる。なお( )内の数字は蒸気圧である(単位はPa)。
【0070】
また、香料成分(1)の香料化合物としては、蒸気圧が8.00Paよりも高い香料化合物を用いることもできる。蒸気圧が8.00Paよりも高い香料化合物として、例えば、2-メチル酪酸エチル(1070)、エチル-2-メチルペンタノエート(384)、リモネン(193)、2-ペンチルオキシグリコール酸アリル(19.7)、2,4-ジメチル-3-シクロヘキセニルカルボキシアルデヒド(46.9)、リナロール(11.1)、リナリルアセテート(17.5)、テトラヒドロリナロール(9.51)、1,8-シネオール(208)、イソボルニルアセテート(14.3)、オシメン(358)、シス-3-ヘキセノール(125)、トリプラール(46.9)、スチラリルアセテート(14.9)などが挙げられる。なお( )内の数字は蒸気圧である(単位はPa)。
【0071】
本発明の繊維製品処理剤組成物中の(c)成分の含有量は、消臭効果の観点からマイクロカプセル中の香料成分(1)として、好ましくは0.02質量%以上、より好ましくは0.07質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、そして、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.7質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下含有する。
【0072】
更に、(c)成分のマイクロカプセルは香料成分(1)の他に希釈剤、溶剤、及び固化剤から選ばれる1種以上を内包してもよい。希釈剤ないし溶剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、及びグリセリンを挙げることができ、脂肪酸アルコール、脂肪酸の低級アルコールエステル、及び脂肪酸のグリセリンエステルを挙げることもできる。
【0073】
<(d)成分>
本発明の繊維製品処理剤組成物は、(d)成分として、香料成分(2)を更に含有することが好ましい。
香料成分(2)としては、一般に繊維製品処理剤組成物に使用される天然香料或いは合成香料が挙げられ、例えば、印藤元一著「合成香料 化学と商品知識」,1969年,化学工業日報社刊、STEFFEN ARCTANDER著「Perfume and Flavor Chemicals」,1969年,MONTCLAIR,N.J.刊等に記載の香料を用いることができる。
また、本発明に使用される香料は、香料として使用されることが知られている有機化合物であって、「香料と調香の実際知識」(中島基貴著、産業図書株式会社、1995年6月21日発行)に記載の香料を適宜、香調、用途にしたがって組み合わせて用いることができる。
更に、香料としては、香りの持続性、残香性を向上させることを目的として、特開2009-256818号公報に記載されるヒドロキシ基を有する香料成分をケイ酸エステル体として併用することもできる。また、洗濯用仕上げ剤として知られている、柔軟剤、糊剤、スタイリング剤又はその他仕上げ剤の特許文献に記載された香料成分や香料組成物を用いることができる。
【0074】
本発明において香料成分(2)として好適に使用することができる香料化合物として、脂肪酸エーテル、芳香族エーテル(ヒドロキシフェニルエーテルを除く)等のエーテル、脂肪酸オキサイド、テルペン類のオキサイド等のオキサイド、アセタール、ケタール、フェノール、ヒドロキシフェニルエーテル、脂肪酸、テルペン系カルボン酸、水素化芳香族カルボン酸、芳香族カルボン酸等の酸、酸アマイド、ニトロムスク、ニトリル、アミン、ピリジン、キノリン、ピロール、インドール等の含窒素化合物を例示することができる。
香料成分(2)は、これらの1種または2種以上の香料化合物を含む香料組成物(2)として用いることができる。
【0075】
本発明の繊維製品処理剤組成物が(d)成分を含有する場合の(d)成分の含有量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上であり、そして、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下である。また、(c)成分に対する(d)成分の質量比(c)成分/(d)成分は耐光性及び消臭効果の点から0.01以上好ましくは0.03以上であり、そして2以下好ましくは1以下、特に好ましくは0.5以下である。
【0076】
<(e)成分>
本発明の繊維製品処理剤組成物は、(e)成分として下記一般式(e-1)及び一般式(e-2)から選ばれる非イオン性界面活性剤を含有することが好ましい。
1g-O-[(CO)(CO)]-H (e-1)
〔式中、R1gは炭素数8以上、好ましくは10以上であり、そして、18以下、好ましくは16以下のアルキル基又はアルケニル基である。s及びtは平均付加モル数であって、sは6以上、好ましくは10以上であり、そして、50以下、好ましくは40以下の数であり、tは0以上、好ましくは1以上であり、そして、5以下、好ましくは3以下の数である。エチレン基(CO)及びプロピレン基(CO)は、ランダム型又はブロック型に結合している。〕
【化3】

〔式中、R2gは、炭素数8以上、好ましくは10以上であり、そして、18以下、好ましくは16以下のアルキル基又はアルケニル基である。-A<は-N<又は-C(O)N<であり、u及びvはそれぞれ独立に0以上、40以下の数であり、u+vは5以上60以下の数である。R3g、R4gはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基である。〕
【0077】
本発明の繊維製品処理剤組成物が(e)成分を含有する場合、その含有量は、耐光性の観点から好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
【0078】
本発明の繊維製品処理剤組成物は、保存安定性を向上させる観点から(f)成分として、無機塩を含有することができる。無機塩としては、保存安定性を向上させる観点から、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、及び塩化マグネシウムから選ばれる1種以上が好ましい。
本発明の繊維製品処理剤組成物が(f)成分を含有する場合、その含有量は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上であり、そして、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下である。
【0079】
本発明の繊維製品処理剤組成物は、(a)成分である第4級アンモニウム塩(1)の加水分解を抑制することを目的として、繊維製品処理剤組成物の原液のpHを2.5以上4.0以下に調整する観点から、(g)成分として、酸性化合物を更に配合することが好ましい。
酸性化合物としては、無機酸又は有機酸が挙げられる。無機酸の具体例としては、塩酸、硫酸が使用できる。有機酸の具体例としては、炭素数1以上10以下の1価又は多価のカルボン酸、又は炭素数1以上20以下の1価又は多価のスルホン酸が挙げられる。より具体的にはメチル硫酸、エチル硫酸、p-トルエンスルホン酸、(o-、m-、p-)キシレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、グリコール酸、メチルグリシン二酢酸、エチレンジアミン四酢酸、クエン酸、安息香酸、及びサリチル酸から選ばれる1種以上が挙げられる。これらの中でも、メチルグリシン二酢酸、エチレンジアミン四酢酸、及びクエン酸から選ばれる1種以上が好ましい。
酸性化合物の配合量に特に制限はなく、pHが前記範囲になるように適宜使用することができる。
【0080】
本発明の繊維製品処理剤組成物は、長期保存時の色相変化や染料の褪色及び香りの変質を抑制する観点から、(h)成分として、キレート剤を含有することができる。キレート剤としては、エタン-1-ヒドロキシ-1,1-ジホスホン酸、エチレンジアミン四酢酸、メチルグリシン二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、エチレンジアミン二コハク酸、L-グルタミン酸-N,N-二酢酸、N-2-ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、クエン酸、コハク酸、及びそれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩が好ましく、ナトリウム塩、カリウム塩が例示できる。
本発明の繊維製品処理剤組成物が(h)成分を含有する場合、その含有量は、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上であり、そして、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下である。
【0081】
<(i)成分>
本発明の繊維製品処理剤組成物においては、基材の劣化を抑制する観点から、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)等の酸化防止剤を用いることができ、また、審美や長期保存時の着色を防ぐ観点から、繊維製品処理剤組成物において一般的に用いられる染料及び顔料を用いることもできる。更に、プロキセルBDNの商品名で市販されている防腐、防菌、防黴剤を用いることもできる。また、安息香酸及びその塩も防腐、防菌、防黴剤として用いることもできる。
【0082】
本発明の繊維製品処理剤組成物は、例えば、衣料、寝具などの繊維製品用として好適である。衣料は、衣類、タオル、寝具、寝具用の繊維製品(シーツ、枕カバーなど)などの衣料の洗浄に用いられる。これら以外の洗濯が可能な繊維製品も本発明では衣料として洗浄の対象とすることができる。本発明において繊維製品とは、これら各種繊維を用いた織物、編物、不織布等の布帛及びそれを用いて得られた繊維製品、例えば、アンダーシャツ、Tシャツ、ワイシャツ、帽子、ハンカチ、タオル、マスク等の製品を意味する。好ましい繊維製品は織物、編み物等の織布及び織った繊維製品である。
【0083】
<実施例及び比較例>
以下、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
【0084】
(a)成分
<合成例1:(a)成分の合成>
パーム油を原料とした酸価206.9mgKOH/gの脂肪酸と、トリエタノールアミンとを、反応モル比1.65/1(脂肪酸/トリエタノールアミン)で、脱水エステル化反応させることにより、N,N-ジアルカノイルオキシエチル-N-ヒドロキシエチルアミンを主成分とする縮合物を得た。
次にこの縮合物のアミン価を測定し、該縮合物に対してジメチル硫酸を0.95当量用い、定法に従って4級化を行ない、エタノールを10質量%含有するN,N-ジアルカノイルオキシエチル-N-ヒドロキシエチル-N-メチルアンモニウムメチルサルフェートを主成分とするエステル型ジアルキルアンモニウム塩の混合物を、(a)成分の4級アンモニウム塩(1)として得た。但し、ここでいう“アルカノイル”の用語は、アルカノイルがパーム油原料の脂肪酸残基であるため、飽和脂肪酸以外に不飽和脂肪酸由来の残基、例えばアルケノイル等の意味も含むものとする。なお、前記調製手順や反応条件は、特開2010-209493号公報の合成例2にしたがって行った。
【0085】
(b)成分
(b)成分としては、以下の化合物を4級アンモニウム塩(2)として用いた。
(b-1)ベンザルニコウムクロライド
(b-2)ジデシルジメチルアンモニウムクロライド
また、上記(b-1)、(b-2)の比較化合物として、(b-3)トリメチルラウリルアンモニウムクロライドも用いた。
【0086】
(c)成分
(c)成分のシリカカプセルに内包する香料成分(1)として、表1に示す香料化合物を記載の含有量で含む香料組成物を用いた。香料成分(1)中の ClogP2.0以上5.0以下、且つ、蒸気圧0.01Pa以上8.00Pa以下の香料化合物の割合は、31.5質量%である。なお表1の香料成分を香料成分(1-1)という。
【0087】
【表1】
【0088】
<合成例1>(c)の合成
(工程1)
1.49gのコータミン60W(商品名、花王株式会社製、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、有効分30質量%)を88.52gのイオン交換水で希釈して水相成分を得た。この水相成分に、24.13gの前記表1に示す配合割合の香料成分(1)と6.01gのテトラエトキシシラン(以下、「TEOS」ともいう)を混合して調製した油相成分を加え、ホモミキサー(HsiangTai製、モデル:HM-310、以下同様)を用いて回転数6,500rpmを5分、更に回転数8,000rpmを5分の条件にて混合液を乳化し、乳化液を得た。この時の乳化滴のメジアン径D50は1.09μmであった。
得られた乳化液のpHを0.2N塩酸を用いて3.7に調整した後、撹拌翼と冷却器を備えたセパラブルフラスコに移し、液温を30℃に保ちつつ、24時間撹拌し、香料成分(1)からなるコアとシリカからなる第一シェルとを有するシリカカプセル(1)を含有する水分散体を得た。
【0089】
(工程2)
工程1で得られた水分散体100.22gに対し、水305.58gを添加して得られる混合液を液温30℃で撹拌しながら、24gのTEOSを添加した。24時間撹拌を続けた後に冷却することにより、第一シェルを包接する第二シェルを形成し、香料成分(1)が非晶質シリカで内包されたシリカカプセル(2)を含有する水分散体を得た。シリカカプセル(2)のメジアン径D50は3.0μmであった。乳化滴及びシリカカプセル(2)のメジアン径D50は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置「LA-960」(商品名、株式会社堀場製作所製)を用いて測定した。測定はフローセルを使用し、媒体は水、屈折率は1.40-0iに設定した。乳化液又はシリカカプセルを含む水分散体をフローセルに添加し、透過率が90%付近を示した濃度で測定を実施し、体積基準でメジアン径D50を求めた。
なお、第一シェルの厚さは約5nmであり、第二シェルの厚さは5~30nmであった。
【0090】
(d)成分
表2に記載の香料化合物を記載の配合量で含む香料組成物、香料成分(2)、を(d)成分として用いた。なお表2の香料成分を香料成分(2-1)という。
【0091】
【表2】
【0092】
(e)成分
(e)成分の非イオン性界面活性剤としては、オキシエチレン基の平均付加モル数が30モルであるポリオキシエチレンラウリルエーテルを用いた。
【0093】
(f)成分の無機塩としては、塩化カルシウムを用いた。
【0094】
(g)成分の酸性化合物としては、クエン酸を用いた。
【0095】
(h)成分のキレート剤としては、メチルグリシン二酢酸三ナトリウムを用いた。
【0096】
(i)成分としては、プロキセルBDN(アーチ・ケミカル・ジャパン社製)を用いた。
【0097】
<繊維製品処理剤組成物の調製>
300mLのガラスビーカー(内径7cm、高さ11cm)に、繊維製品処理剤組成物のできあがり質量が200gになるのに必要な量の90%に相当する量のイオン交換水と、(e)成分、(g)成分、(h)成分、(i)成分を入れ、ウォーターバスを用いてイオン交換水の温度を60±2℃に調温した。
次いで、スリーワンモーター(新東科学株式会社製、「TYPE HEIDON 1200G」)に装着した撹拌羽根(タービン型撹拌羽根、3枚翼、翼長2cm)を前記ビーカーの底面から1cmの高さに設置し、回転数300rpmで撹拌しながら、あらかじめ65℃で溶融、混合した(a)成分である4級アンモニウム塩混合物を投入した後、60±2℃加熱下、10分間、300rpmにて撹拌した。
次に、5℃のウォーターバスを用いて、混合液の温度が30±2℃になるまで冷却した。これに、(b)成分、(c)成分、(d)成分、及び(f)成分を順次投入し、5分間撹拌した。更に、できあがり質量(200g)となるようにイオン交換水を加え、5分間撹拌して繊維製品処理剤組成物を得た。なお、pHは3.5に調整した。
各組成物の各成分の含有量を、実施例、比較例について表3に示す(単位は質量部)。
【0098】
【表3】
【0099】
得られた実施例1~8及び比較例1~6の繊維製品処理剤組成物について、以下の2つの試験を行った。
【0100】
〔消臭試験〕
一般家庭から回収した、半年から一年間使用した洗濯済みの中古肌着(綿100%、Tシャツ)を使用した。National(パナソニック株式会社)製電気バケツ式洗濯機(「MiniMini」、型番:NA-35)に20℃に調整した市水を4.5L注水し、実施例及び比較例の繊維製品処理剤組成物を木綿肌着1.5kg当たり10gとなる量を投入して1分間撹拌した。その後、木綿肌着1枚を投入し、更に5分撹拌した。2槽式洗濯機の脱水槽で5分間脱水し、脱水直後の肌着をラップフィルムで包み、チャック式プラスチック製袋に密封し、30℃の高温そうに5時間保存して生乾き臭を発生させた。その後、20℃/60%RHの部屋で24時間乾燥した。
用意した肌着から20cm×20cmの大きさの布を裁断し、臭い評価パネラー10名による消臭評価に用いた。スプレーを用いて布を水で10-20%o.w.f.湿潤させた後に布を4つ折りにして数秒静置した後、布を開いて折り目の交点の香りを嗅ぎ、以下のように採点した。
+3:心地よい香りの躍動感を強く感じる。
+2:香りの躍動感を強く感じる。
+1:香りの躍動感をあまり感じない。
0:香りの躍動感を感じない。
【0101】
以上に加え、悪臭を感じた場合に下記基準に従って点数を加算した。
-1:やや悪臭を感じる。
-2:悪臭を感じる。
-3:悪臭を強く感じる。
パネラーごとに点数を算出し、10名分の平均点を用いて以下のように評価した。
◎:2.2点以上
〇:1.6~2.2点
△:1~1.6点
×:1点以下
結果を表3に示す。
【0102】
〔耐光性試験〕
低温サイクルキセノンフェードメーター(スガ試験機株式会社製、XL75)を使用して試験した。試験機内に、所定の組成に調製したサンプルを400g充填した容器(PE、PA混合)の最大面積面を、ランプに向けて設置し、下記の照射条件で光を照射した後、試験機の運転を止め、そのまま18時間放置した(1サイクル)。これを11サイクル行った後、内部液を動かさないように注意深く試験機内から取り出した。
(照射条件)
・設定照射照度:42W/m
・設定放射時間:6時間(積算放射照度:0.9MJ/m
・ブラックパネル温度:45℃
【0103】
これを評価パネラー10名で観察し、以下のように採点した。
+2:基準(比較例1)よりゲル状物が大幅に少ない。
+1:基準よりゲル状物が少ない。
0:基準と同程度のゲル状物が生成している。
パネラー10名の採点の平均点を用いて以下のように評価した。
◎:1.6点以上
〇:1.2~1.6点以上
△:0.8~1.2点
×:0.8点以下
結果を表3に示す。
【0104】
実施例1~8の組成物は全て、良好な消臭試験結果を与えた。(b)成分及び(c)成分を含まない比較例1、(a)成分を含まない比較例2、(b)成分を含まない比較例3、(c)成分を含まない比較例4、は、消臭効果がみられなかった。また、(b)成分としてメチル基を3つ有するラウリルトリメチルアンモニウムクロライドを用いた比較例5及び6では、実施例1~8より消臭効果が劣った。
また、実施例1~8は、基準とした比較例1に比べてゲル状物が少なかった。比較例2及び4も同様にゲル状物は少なかったが、(b)成分を含まない比較例3、(b)成分としてメチル基を3つ有するラウリルトリメチルアンモニウムクロライドを用いると、実施例1~8よりもゲル状物の生成が顕著であった。
以上の結果から、本願の規定された(a)~(c)成分を用いることにより、良好な消臭効果や日光暴露後のゲル状物の抑制が実現されることが明らかとなり、本願の課題が解決された。
【0105】
表4には本発明の効果を有する配合例を示す。なお、(c-1)~(c-3)成分、及び(d-1)~(d-3)成分は表5で示す成分であり、(c-1)は上記(c)と同一の成分、(c-2)及び(c-3)は、各々国際特許第2021/132726号の実施例7及び14に従って製造したものである。
【0106】
【表4】
【0107】
【表5】