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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092382
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】熱感知器の加熱試験器
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/00 20060101AFI20240701BHJP
   G08B 17/06 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
G08B17/00 K
G08B17/06 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208278
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000111074
【氏名又は名称】ニッタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】田中 晴隆
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 俊介
【テーマコード(参考)】
5C085
5G405
【Fターム(参考)】
5C085AA01
5C085AB01
5C085CA12
5C085FA25
5G405AB01
5G405CA13
5G405CA53
5G405FA17
(57)【要約】
【課題】試験対象が熱感知器である場合に、短時間に作動試験の結果が得られる加熱試験器を提供する。
【解決手段】熱源を内蔵し複数種類の熱感知器を覆うことが可能なカップ部を有するヘッド部と、該ヘッド部が先端部に装着された操作ロッドとを備え、建物の高所に設置されている熱感知器に前記カップ部を被せて当該熱感知器の作動試験を行うための加熱試験器において、前記ヘッド部は通信手段と熱放出部および撮像手段を備え、少なくとも前記熱放出部は前記カップ部内に設けられた垂直方向可動台上に載置され、前記通信手段は撮像手段が撮影した映像データを送信可能であり、前記垂直方向可動台は前記通信手段により受信した指令に従って動作する垂直方向移動手段によって上下方向移動可能に構成した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源を内蔵し複数種類の熱感知器を覆うことが可能なカップ部を有するヘッド部と、該ヘッド部が先端部に装着された操作ロッドとを備え、建物の高所に設置されている熱感知器に前記カップ部を被せて当該熱感知器の作動試験を行うための加熱試験器であって、
前記ヘッド部は、通信手段と熱放出部および撮像手段を備え、少なくとも前記熱放出部は前記カップ部内に設けられた垂直方向可動台上に載置され、
前記通信手段は、前記撮像手段が撮影した映像データを送信可能であり、
前記垂直方向可動台は、前記通信手段により受信した指令に従って動作する垂直方向移動手段によって上下方向移動可能に構成されていることを特徴とする熱感知器の加熱試験器。
【請求項2】
前記垂直方向可動台には、少なくとも前記熱放出部を水平方向に回動させる水平方向回動手段が設けられ、
前記水平方向回動手段は、前記通信手段により受信した指令に従って前記熱放出部を水平方向に回動させるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の熱感知器の加熱試験器。
【請求項3】
前記水平方向回動手段には、少なくとも前記熱放出部を垂直方向に回動させる垂直方向回動手段が設けられ、
前記垂直方向回動手段は、前記通信手段により受信した指令に従って前記熱放出部を垂直方向に回動させるように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の熱感知器の加熱試験器。
【請求項4】
前記熱放出部および前記撮像手段を有する交換用ユニットを備え、前記垂直方向回動手段には、少なくとも前記熱放出部と前記撮像手段とを水平方向に回動させる交換手段が設けられ、
前記交換手段は、前記通信手段により受信した指令に従って前記交換用ユニットを水平方向に回動させるように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の熱感知器の加熱試験器。
【請求項5】
前記通信手段は所定の携帯情報端末との間で無線通信を行う無線通信手段であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の熱感知器の加熱試験器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災感知器の試験器に関し、特に建物の天井等に設置された熱感知式の火災感知器(以下、熱感知器)を検査するための加熱試験器に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の天井等に設置された火災感知器を備えた火災報知システムにおいては、火災感知器が正常に作動するか検査するため、定期的に保守点検が実施される。この保守点検では、例えば、試験対象が熱感知式の火災感知器(以下、熱感知器)の場合、火災感知器に試験器のヘッド部(熱源を内蔵したカップ)を近づけて熱をあてる、「あぶり試験」と呼ばれる作動試験が行われる。
従来、熱感知器の作動試験に使用される加熱試験器には、熱源として燃料を用いたものと電熱線を用いたものがある。このうち、電熱線を用いた加熱試験器は、燃料を用いたものに比べて単位時間に発生可能な熱量が少ないため、所定温度以上に加熱するのに時間がかかるとともに、熱源が局所的であり、カップ内を均一に過熱することが困難であるため試験時間が長くなるという課題があった。
【0003】
また、従来、効率的な作動試験を行えるようにするための感知器の試験器に関する発明として、例えば特許文献1や2に記載されているものがある。
このうち、特許文献1に記載されている火災感知器の試験装置は、試験対象の火災感知器を覆うための開口部を備える筐体(カップ)と、筐体が先端に装着された棒状部材と、通信部とを備え、筐体内には、擬似的な火災を発生させる疑似火災発生部と疑似火災発生部を撮像する撮像部を設け、撮像部が撮像した映像を通信部により通信端末へ送信して、映像を解析して火災感知器が正常に動作したか否かを判定し、判定結果を通信端末の表示部に表示するように構成したものである。
【0004】
特許文献2に記載されている感知器の試験器は、支持棒の先端に装着された煙感知器試験装置の本体に、発煙部、煙溜め部、感知器試験部、感知器試験部と煙溜め部とを仕切り分離する隔壁、煙溜め部から隔壁に形成された連通口及び感知器試験部に形成された排気口を経由して外部に至る気流経路及び煙溜め部に形成された吸気口から外気を導入して気流経路に気流を発生させ、発煙部から放出された煙を当該気流に乗せて搬送する電動ファンを設けたものである。また、特許文献2の試験器においては、試験状態で煙感知器の検煙部と感知器試験部の底面との距離に応じて変位又は変形して、煙流経路を整流する蛇腹状の伸縮体を有する整流部を設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-10571号公報
【特許文献2】特開2019-174883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されている火災感知器の試験装置は、撮像部と通信部を備え撮像部が撮像した映像を端末装置の表示部に表示することができるという利点がある。しかし、近年、火災感知器には、大小さまざまな大きさや筐体の形状の異なる感知器などが製品化され設置されているため、多種多様な感知器に対応可能な加熱試験器を構成しようとすると、感知器を覆うための開口部を備える筐体(カップ)を大きくする必要がある。そして、この筐体(カップ)を大きくした試験器に特許文献1の発明を適用すると、撮像部が撮像した映像内の着目箇所の画像が小さくなり、識別が難しくなることがあるという課題がある。
【0007】
一方、特許文献2に記載されている火災感知器の試験器は、煙感知器の検煙部と感知器試験部の底面との距離に応じて変位又は変形して、煙流経路を整流する蛇腹状の伸縮体を有する整流部を備えているため、試験対象の感知器のサイズや筐体の形状が異なっても伸縮体を変形させて気流経路を変化させることで適切に作動試験を行うことができるという利点がある。
【0008】
しかし、特許文献2の試験器は、試験対象が煙感知器であるため、伸縮体を変形させることで複数種類の火災感知器に対応できるが、試験対象が熱感知器の場合には、熱源そのものの高さを変えて、熱源を感知器のセンサ(サーミスタ)に近づける必要があるので、特許文献2の発明の構成をそのまま適用することができない。また、試験対象の感知器のサイズが小さい場合、作業の度に熱源を内蔵する筐体(カップ)に対するセンサの相対的な位置が変化するため、特許文献2の発明の構成では熱源を最適な位置へ移動させることができないことがある。さらに、サーミスタではなくバイメタルを使用するタイプの感知器では、外部からの衝撃によって作動するおそれがあるという課題がある。
【0009】
本発明は上記のような課題に着目してなされたもので、その目的とするところは、試験対象が熱感知器である場合に、短時間に作動試験の結果が得られる加熱試験器を提供することにある。
本発明の他の目的は、試験対象の熱感知器のサイズや筐体の形状が異なっても、熱源を最適な位置へ移動させることができる加熱試験器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、
熱源を内蔵し複数種類の熱感知器を覆うことが可能なカップ部を有するヘッド部と、該ヘッド部が先端部に装着された操作ロッドとを備え、建物の高所に設置されている熱感知器に前記カップ部を被せて当該熱感知器の作動試験を行うための加熱試験器において、
前記ヘッド部は、通信手段と熱放出部および撮像手段を備え、少なくとも前記熱放出部は前記カップ部内に設けられた垂直方向可動台上に載置され、
前記通信手段は、前記撮像手段が撮影した映像データを送信可能であり、
前記垂直方向可動台は、前記通信手段により受信した指令に従って動作する垂直方向移動手段によって上下方向移動可能に構成したものである。
【0011】
上記のような構成を有する加熱試験器によれば、熱放出部を搭載した垂直方向可動台は、通信手段により受信した指令に従って動作する垂直方向移動手段によって上下方向移動可能に構成されているため、試験対象の熱感知器のセンサの位置に応じて熱放出部の高さを調整することができるので、センサ近傍の温度を速やかに上昇させて短時間に作動試験の結果を得ることができる。また、撮像手段が撮影した映像データを送信可能な通信手段を備えるため、試験対象の熱感知器のサイズが異なっても、作業者は映像データに基づいて熱放出部の最適な位置を判断して移動させることができる。
【0012】
ここで、望ましくは、前記垂直方向可動台には、少なくとも前記熱放出部を水平方向に回動させる水平方向回動手段が設けられ、
前記水平方向回動手段は、前記通信手段により受信した指令に従って前記熱放出部を水平方向に回動させるように構成する。
さらに、望ましくは、前記水平方向回動手段には、少なくとも前記熱放出部を垂直方向に回動させる垂直方向回動手段が設けられ、
前記垂直方向回動手段は、前記通信手段により受信した指令に従って前記熱放出部を垂直方向に回動させるように構成する。
上記のような構成によれば、試験対象の熱感知器の筐体の形状やセンサの位置が異なっても、熱源を最適な位置へ移動させることができる。
【0013】
さらに、望ましくは、前記熱放出部および前記撮像手段を有する交換用ユニットを備え、前記垂直方向回動手段には、少なくとも前記熱放出部と前記撮像手段とを水平方向に回動させる交換手段が設けられ、
前記交換手段は、前記通信手段により受信した指令に従って前記交換用ユニットを水平方向に回動させるように構成する。
かかる構成によれば、熱放出部と共に撮像手段(カメラ)も適切な位置へ移動させることができるため、熱源を移動させる最適な位置を正確に見つけることができ、それによってより短時間に作動試験の結果を得ることができる。
【0014】
さらに、望ましくは、前記通信手段は所定の携帯情報端末との間で無線通信を行う無線通信手段であるようにする。
かかる構成によれば、作業者が操作ロッドを操作してヘッド部のカップを試験対象の熱感知器に被せた状態で、保持している携帯情報端末に撮像手段が撮影した映像を表示させることができるとともに、携帯情報端末を用いて加熱試験器に対する指令を送信することができるため、試験作業の効率を高め、短時間に作動試験の結果を得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の加熱試験器によれば、試験対象が熱感知器である場合に、短時間に作動試験の結果を得ることができる。また、試験対象の熱感知器のサイズや筐体の形状が異なっても、熱源を最適な位置へ移動させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(A),(B)は本発明の実施形態に係る加熱試験器の概略構成を示す断面図である。
図2】(A)は実施形態の加熱試験器の垂直方向可動台を上昇させた状態を示す断面図、(B)は実施形態の水平方向回動ユニットを回動させた状態を示す断面図である。
図3】(A)は実施形態の加熱試験器の垂直方向回動ユニットを回動させた状態を示す断面図、(B)は実施形態の加熱試験器の交換用ユニットを回動させた状態を示す断面図である。
図4】実施形態に係る加熱試験器に指令を与える携帯情報端末の操作画面の構成例を示す図である。
図5】実施形態に係る加熱試験器の回動機構の第1変形例を示す平面図である。
図6】実施形態に係る加熱試験器の回動機構の第2変形例を示す平面図である。
図7】実施形態に係る加熱試験器の上下方向移動機構の他の構成例を示すもので、(A),(B)は垂直方向可動台を下降させた状態と上昇させた状態を示す断面図である。
図8】(A),(B)は実施形態に係る加熱試験器の上下方向移動機構のさらに他の構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明では、感知器が設置される天井の側を上側とし、床側を下側とする。
図1(A),(B)は、本発明の実施形態に係る加熱試験器の概略構成を示す。
本発明の実施形態の加熱試験器10は、熱感知器(以下、単に感知器と称する)が正常に作動するか検査するための作動試験に用いられる加熱試験器であり、例えば図1(A),(B)に示すように、作業者が把持して操作するための操作ロッド11と、該操作ロッド11の先端に結合され内部に加熱手段を有するヘッド部12と、を備えている。
【0018】
また、ヘッド部12内にはカメラおよび無線通信モジュールが内蔵されており、カメラの映像は無線通信で、作業者が保持しているスマートフォンのような携帯情報端末へ送信され、映像や試験結果が携帯情報端末の表示部に表示されるように構成されている。さらに、本実施形態の加熱試験器10は、作業者が保持している携帯情報端末からの指令によって、各種の動作を行い、対象の感知器の試験を行うように構成されている。
【0019】
次に、図1(A),(B)に示す加熱試験器10の構成の詳細について説明する。
図1(A)の加熱試験器10においては、ヘッド部12は、建物の天井等に設置されている感知器の下方から当該感知器を囲って覆うことができる大きさの有底円筒状をなす内側カップ21と、該内側カップ21を内部に保持するための外側カップ22とを備えている。内側カップ21と外側カップ22とは、内側カップ21の外周面と外側カップ22の内周面との間に設けられた固着部23によって結合されている。
【0020】
さらに、本実施形態の加熱試験器10は、内側カップ21の内部に、ネジ軸24の上端に結合され円板状をなし内側カップ21の内周面に沿って上下移動可能な垂直方向可動台25と、該垂直方向可動台25上に載置された水平方向回動ユニット26と、該水平方向回動ユニット26の上部に搭載された垂直方向回動ユニット27と、該垂直方向回動ユニット27に保持された交換用ユニット28とを備える。
上記交換用ユニット28には、熱風の吹き出し口28Aとカメラ28Bが設けられている。交換用ユニット28の吹き出し口28Aは、内部に電熱線等の熱源が設けられているものでも良いし、垂直方向回動ユニット27の下部もしくは下方に熱源と送風用のファンが設けられ、そこからの熱風を吹き出すダクトとして構成されていても良い。
【0021】
固着部23により内側カップ21と外側カップ22を結合する代わりに、図1(B)に示すように、内側カップ21を挟んで180度対向する位置に一対のピン23A,23Bを設け、内側カップ21がこのピンを回動軸として、外側カップ22内で揺動するように構成しても良い。このようにすることで、操作ロッド11が天井面に対して傾斜した状態でも、内側カップ21の上部開口端全体が天井面に接触可能にすることができる。また、ピン23A,23Bがカップの上部に位置することで、内側カップ21は、操作ロッド11が傾斜していても、その重量で常時垂直な姿勢を保持することができる。さらに、外側カップ22の代わりにU字状をなす2股金具で内側カップ21を保持するようにしても良い。
【0022】
図1(A),(B)に示す加熱試験器10においては、昇降用の送りネジとなる上記ネジ軸24の上端と垂直方向可動台25との間には回転用垂直軸29Aと回転用モータ(図示省略)が設けられ、このモータを回転させるとネジ軸24が回転して、垂直方向可動台25が上方または下方へ移動するように構成されている。
また、垂直方向可動台25と水平方向回動ユニット26との間には回動用垂直軸29Bと回転用モータ(図示省略)が設けられ、このモータを回転させると水平方向回動ユニット26が時計回り方向または反時計回り方向へ回動するように構成されている。
【0023】
さらに、水平方向回動ユニット26と垂直方向回動ユニット27との間には回動用水平軸29Cと回転用モータ(図示省略)が設けられ、このモータを回転させると垂直方向回動ユニット27が左方向または右方向へ傾動するように構成されている。また、垂直方向回動ユニット27と交換用ユニット28との間には交換用垂直軸29Dと回転用モータ(図示省略)が設けられ、このモータを回転させると交換用ユニット28が時計回り方向または反時計回り方向へ回動するように構成されている。
なお、上記モータを動作させるための電源は、ヘッド部12に内蔵した電池でも良いし、ヘッド部12より給電用のケーブルを引き出して、操作ロッド11の下部に設けた電池よりケーブルを介して給電するように構成しても良い。
【0024】
なお、図1(A)の加熱試験器10においては、操作ロッド11の先端部に、破線で示すようにネジ軸24の下端部が挿入可能な嵌合穴11aを設けて、ネジ軸24の下端部と外側カップ22との干渉を回避するように構成しても良い。また、操作ロッド11を、パイプ状に形成するとともに、ネジ軸24の下端を延長して操作ロッド11の下端から突出させ、端部にハンドルを設け、このハンドルを回すことによって、手動でネジ軸24を回転させて昇降させるように構成しても良い。
【0025】
図2(A)には図1(A)の状態から垂直方向可動台25が上方へ移動した状態が、図2(B)には図1(A)の状態から水平方向回動ユニット26が90度回転した状態が、それぞれ示されている。また、図3(A)には図1(A)の状態から垂直方向回動ユニット27が右方向へ傾動した状態が、図3(B)には図1(A)の状態から交換用ユニット28が180度回転した状態が、それぞれ示されている。
【0026】
上記のように構成された加熱試験器10によれば、交換用ユニット28(吹き出し口28Aおよびカメラ28B)の高さを変化させることができるとともに、吹き出し口28Aとカメラ28Bの位置関係や向きを変化させることができる。そのため、試験対象の感知器の大きさや形状が異なっていたとしても、カメラ28Bの映像に基づいて吹き出し口28Aの最適な位置を見つけ、感知器のセンサとの距離や吹き出し口28Aの向きを調整し、さらにカメラ28Bの位置と吹き出し口28Aの位置を交換することで調整した位置に吹き出し口を配置することができ、加熱から感知器の作動までに要する時間を短縮することができる。また、交換用ユニット28を搭載した垂直方向可動台25が上方へ移動するため、内側カップ21の上部空間の体積を減らすことができ、熱せられる領域が限定されるため、加熱に要する時間ひいては試験時間を短縮することができる。
【0027】
前述したように構成された本実施形態の加熱試験器10は、作業者が保持する携帯情報端末から指令によって動作し試験を行うように構成されている。
図4には、加熱試験器10に指令を与えるとともに、試験器に内蔵されているカメラ28Bからの映像を受信して表示する携帯情報端末30のタッチパネル式の表示部の指令入力画面の構成例が示されている。なお、携帯情報端末30の内部メモリには、図4のような指令入力画面を表示させるとともに、画面操作による指令入力を検知して対応する指令を加熱試験器10へ送信する機能を実現する専用のアプリケーションプログラムが格納されている。
【0028】
図4に示す指令入力画面には、中央に位置合わせ用のマーカMaがカメラ28Bの映像に重なった状態で表示され、その周りに頂点が上下左右の4方向をそれぞれ向くように配設された三角形のマークM1~M4が表示されている。画面の下部には、ノブNを有するスクロールバーSが表示されている。
作業者が指先でマークM1~M4にタッチすると、携帯情報端末30は、タッチされたマークに応じて、加熱試験器10の上記ヘッド部12内の水平方向回動ユニット26および垂直方向回動ユニット27を作動させて、カメラ28Bをタッチされたマークの頂点が向いている方向へ移動させる指令を加熱試験器10へ送信する。
【0029】
また、スクロールバーSのノブNにタッチしてこれを右方向または左方向へ移動させると、携帯情報端末30は垂直方向可動台25を上方または下方へ移動させる指令を加熱試験器10へ送信する。
携帯情報端末30が上記のような機能を有することにより、作業者は保持している携帯情報端末30の画面の映像を見ながら、画面上のマークやスクロールバーを操作してカメラや吹き出し口の位置を感知器の試験に最適な位置へ移動させる調整を行うことができる。なお、スクロールバーSは、図4の画面において上下方向に配設されていても良い。
【0030】
次に、上記実施形態の加熱試験器の変形例について説明する。
図5には、第1の変形例の試験器における内側カップ21の内部機構(垂直方向可動台25とその上部の機構)を上方から見た様子が示されている。また、図1および図2においては、交換用ユニット28の吹き出し口28Aとカメラ28Bを別々に示しているが、吹き出し口28Aの中にカメラ28Bを配置することも可能であり、図5の変形例においては、そのように構成されている場合における吹き出し口28Aとカメラ28Bの位置が示されている。
【0031】
本変形例においては、上記実施例における垂直方向回動ユニット27がなく、代わりに、第2の水平方向回動ユニット26Bが設けられ、水平方向回動ユニット26の回動用垂直軸29Bの中心から離れた位置にある回動用垂直軸29Eを中心にして第2の水平方向回動ユニット26Bが回動するように構成されている。
さらに、交換用ユニット28はその中心に配置された交換用垂直軸29Dを中心にして回動可能であり、カメラ28Bが交換用垂直軸29Dから偏心した位置に設けられている。そのため、この変形例においては、図5(A)~(D)に示されているように、吹き出し口28Aとカメラ28Bを水平面内で360度任意の位置に移動させることができる。また、水平方向回動ユニット26の回動中心である回動用垂直軸29Bからカメラ28Bまでの距離も変えることができる。なお、カメラ28Bが吹き出し口28Aと一体で、第2の水平方向回動ユニット26Bの外周付近に配置される場合は、交換用垂直軸29Dを省略した構成も可能である。
【0032】
図6には、第2の変形例の加熱試験器における内側カップ21の内部機構(垂直方向可動台25とその上部の機構)を上方から見た様子が示されている。
本変形例の試験器においては、水平方向回動ユニット26および垂直方向回動ユニット27がなく、代わりに、垂直方向可動台25上に所定の間隔をおいて2本の平行なガイドレール25A,25Bが配設されている。そして、このガイドレール25A,25B間に可動レール25Cがガイドレール25A,25Bと直交する向きに載置され、この可動レール25C上に、吹き出し口28Aとカメラ28Bを有する交換用ユニット28が移動可能に載置されている。
【0033】
この変形例においては、直交する2つのガイドレールが設けられているため、交換用ユニット28を水平面内で360度任意の位置に移動させることができるとともに、垂直方向可動台25の中心から交換用ユニット28までの距離も広い範囲に亘って変えることができる。
なお、上記水平面内の移動機構に加えて交換用ユニット28自体も回転可能に構成しても良い。これにより、交換用ユニット28の吹き出し口28Aとカメラ28Bの位置関係も変えることができる。また、交換用ユニット28を垂直面内で回動させる垂直方向回動ユニット27を設けた構成も、垂直方向回動ユニット27を省略した構成も可能である。
【0034】
図7には、第3の変形例の加熱試験器における内側カップ21の内部機構が示されている。
本変形例は、垂直方向可動台25の上下方向移動機構の他の例を示すもので、ボールネジの代わりに、ラックとピニオンを上下方向移動機構として用いたものである。具体的には、内側カップ21がなく外側カップ22の内周面の180度離れた位置に、一対のラック41A,41Bが上下方向に配設されているとともに、垂直方向可動台25の両側部には、上記ラック41A,41Bに噛み合うピニオン42A,42Bと該ピニオン42A,42Bを回動させるモータ(図示省略)が設けられている。
また、この変形例においては、水平方向回動ユニット26と垂直方向回動ユニット27との間に内部に電熱線を有する熱源50が配設され、垂直方向回動ユニット27内に交換用ユニット28の吹き出し口28Aまで熱風を誘導する通路が設けられている。
【0035】
図8(A),(B)には、垂直方向可動台25の上下方向移動機構の他の構成例が示されている。
このうち、図8(A)は、ジャッキと同様な機構を応用したもので、4本のリンクアーム43a~43dが菱形をなすように互いに端部がピンで連結されるとともに、水平対角線上に送りネジ44が配設されており、送りネジ44を外側カップ22の側部に設けられたモータ(図示省略)によって回転させると、菱形リンクが変形して垂直方向可動台25を上下方向へ移動させるように構成されている。
【0036】
一方、図8(B)は、2本のリンクアーム45a,45bがX字状をなすように交差され中央がピン46で連結されるとともに、ピン46に端部が連結された送りネジ44が配設されており、送りネジ44を外側カップ22の下部に設けられたモータ(図示省略)によって回転させると、リンクアーム45a,45bの角度が変化して垂直方向可動台25を上下方向へ移動させるように構成されている。かかる構成によれば、送りネジ44の移動量の2倍の量だけ垂直方向可動台25を移動させることができる。
【0037】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、適宜変更可能である。例えば、上記実施形態では、吹き出し口28Aとカメラ28Bを有する交換用ユニット28および水平方向回動ユニット26を搭載した垂直方向可動台25を上下方向へ移動させる機構を設けているが、水平方向回動ユニット26または水平方向回動ユニット26と垂直方向回動ユニット27を省略した加熱試験器10として構成してもよい。なお、その場合、図4に示す指令入力画面は、三角形のマークM1~M4のうち上下を向くマークまたは左右を向くマークと上下を向くマークを省略した構成とすることができる。
また、上記実施形態の加熱試験器から上下方向移動機構を省略した加熱試験器10として構成してもよい。なお、その場合、図4に示す指令入力画面は、スクロールバーSを省略して三角形のマークM1~M4が表示されている構成とすることができる。
【0038】
さらに、上記実施形態では、作業者が保持するスマートフォンによって加熱試験器からの映像を受信して表示するとともに、スマートフォンの画面操作による指令の送信すなわち遠隔操作で上下方向移動機構や水平/垂直方向回動機構が動作するように構成したものについて説明したが、加熱試験器に対する指令は、スマートフォンに限定されず、専用のコントローラを操作ロッド11の下部に設けて指令入力可能に構成しても良い。
また、上記実施形態では、交換用ユニット28に吹き出し口28Aとカメラ28Bを設けたものについて説明したが、交換用ユニット28には吹き出し口28Aのみを設け、カメラ28Bは垂直方向可動台25上または内側カップ側に設けるようにしても良い。
【0039】
また、ヘッド部12に画像認識機能を有するマイコンを搭載した制御部を設け、制御部は画像認識機能によりカメラ28Bの画像を処理して感知器の筐体を認識し、上下方向移動時に所定距離以上感知器に近づかないように自動停止する機能を有するように構成しても良い。さらに、センサとしてサーミスタを有する熱感知器にあっては、サーミスタは一般に黒色に着色されているので、水平/垂直方向回動時に、画像認識処理で黒色部分をサーミスタと判断して熱風の吹き出し口がその方向を向くといった制御を行うように構成しても良い。
また、前記実施例の加熱試験器では、小さい感知器に対して最適な位置に移動して試験した状態のまま、次に大きい感知器に対して試験を行おうとすると、吹き出し口28Aとカメラ28Bが感知器にぶつかるおそれがあるので、試験を終えた際(例えば、感知器から離れたことをカメラ28Bの映像から検知した場合や、吹き出し口28Aからの熱の放出を止めた場合等)には、所定の位置に戻るようにすることが好ましい。
【符号の説明】
【0040】
10 加熱試験器
11 操作ロッド
12 ヘッド部
21 内側カップ
22 外側カップ
23 固着部
23A,23B ピン
24 ネジ軸
25 垂直方向可動台
26 水平方向回動ユニット
27 垂直方向回動ユニット
28 交換用ユニット
28A 吹き出し口
28B カメラ
29A 回転用垂直軸
29B 回動用垂直軸
29C 回動用水平軸
29D 交換用垂直軸
30 携帯情報端末
図1
図2
図3
図4
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図8