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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092383
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】竪型粉砕機
(51)【国際特許分類】
   B02C 15/04 20060101AFI20240701BHJP
   B02C 25/00 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
B02C15/04
B02C25/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208280
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】300041192
【氏名又は名称】UBEマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】三隅 高寛
【テーマコード(参考)】
4D063
4D067
【Fターム(参考)】
4D063EE03
4D063EE12
4D063EE24
4D063EE26
4D063GA06
4D063GA07
4D063GA08
4D063GD13
4D067FF02
4D067FF13
4D067GA04
4D067GA05
4D067GB02
(57)【要約】
【課題】潤滑剤の保持状態を維持させつつ、運転中におけるシーリングの状態を把握できる竪型粉砕機を提供すること。
【解決手段】本発明の竪型粉砕機1は、回転テーブル5と、回転テーブル5に接して転動するローラ81と、ローラ81を回転可能に支持する主軸82と、主軸82の周りに設けられるシールS1,S2とを有する粉砕ローラ8A,8Bと、シールS1,S2の状態を判定するシール状態判定システム50と、を備える。
シール状態判定システム50は、シールS1,S2に向けてグリースGを供給する供給部60と、シールS1,S2に向けて供給されたグリースGを回収する回収部70と、を備える。回収部70は回収部70を通るグリースGの圧力を検出する圧力検出ユニット73と、圧力検出ユニット73で検出される運転時圧力Pdに基づいて、シールS1,S2の状態を判定するコントローラ18と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転テーブルと、
前記回転テーブルに接して転動するローラと、前記ローラを回転可能に支持する円柱状の主軸と、前記主軸の周りに設けられるシールとを有する粉砕ローラと、
前記シールの状態を判定するシール状態判定システムと、を備え、
前記シール状態判定システムは、
前記シールに向けてグリースを供給する供給部と、
前記シールに向けて供給された前記グリースを回収する回収部と、を備え、
前記回収部は、
回収される前記グリースの圧力を検出する圧力計と、
前記圧力計で検出される運転時圧力に基づいて、前記シールの状態を判定するコントローラと、を備える竪型粉砕機。
【請求項2】
前記回収部は、
前記シールの側の上流から下流に向けて前記グリースが通る回収配管と、
前記回収配管の途中に設けられるフィルタと、
前記フィルタよりも上流側における前記回収配管の内部の前記グリースの圧力を検出する前記圧力計と、
前記フィルタよりも上流側の前記回収配管に設けられるフローサイトと、を備える、
請求項1に記載の竪型粉砕機。
【請求項3】
前記供給部は、
前記グリースを蓄える供給側貯留槽と、
前記供給側貯留槽から前記グリースを吸引するとともに前記シールに向けて前記グリースを前記コントローラの設定に基づいて圧送する供給ポンプと、
前記供給側貯留槽から前記シールに向けて前記供給ポンプにより圧送される前記グリースが通る供給配管と、を備え、
前記コントローラは、
前記運転時圧力が予め定められる圧力上限値を超えるか、または、
前記運転時圧力が予め定められる圧力下限値を割り込めば、
前記シールに異常が生じているものとみなし、
前記供給ポンプが前記グリースを圧送する時間間隔をそれまでより短く設定する、
請求項1に記載の竪型粉砕機。
【請求項4】
複数の前記粉砕ローラを備え、
前記回収部において、
前記コントローラは、複数の前記粉砕ローラのそれぞれに設けられる前記シールの状態を判定する、
請求項1に記載の竪型粉砕機。
【請求項5】
複数の前記粉砕ローラを備え、
前記供給部において、
前記供給配管は、分配弁を介して、複数の前記粉砕ローラに対応するように分岐される、
請求項3に記載の竪型粉砕機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば竪型粉砕機のローラに用いられるシールの状態を判定できるシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
竪型粉砕機は、例えば石炭、オイルコークス、石灰石、高炉スラグ、電炉スラグ、セメント原料、化学品等を原料として粉砕する。
竪型粉砕機において、原料はミル内で回転するテーブル上に落下した後、遠心力でテーブル外周に運ばれていき、テーブル外周にある油圧シリンダで加圧されたローラによって、ローラとテーブルとの間に噛み込まれて粉砕される。この時、ローラはそれ自体が回転、つまり自転しているのではなく、テーブルの回転によって従動的に回転する。したがって、ローラは、軸受を介して主軸に回転可能に取り付けられる。
【0003】
竪型粉砕機の運転を続けると、原料の粉砕に伴って、竪型粉砕機の中にダストが発生する。そこで、ローラを遊転可能に支持する軸受へのダストが混入するのと潤滑油がローラの外部に漏れるのを防止するために、主軸の周りにはシールが設けられている。このシールには、そのシール性の確保のためにグリースが供給される。ところが、竪型粉砕機を分解しない限りシールの状態を確認することができない。これは、竪型粉砕機の運転中は元より、停止中であっても同じである。したがって、運転中におけるシールの例えば摩耗、欠損などの状態を把握できれば、竪型粉砕機の健全な運転に寄与できる。
【0004】
特許文献1は、旋動式破砕機のダストシールのメンテナンス作業において、環状空間の圧力変化量によってダストシールの摩耗状態を判定する技術を開示する。つまり、特許文献1は、シールの状態を確認する方法として圧縮エアを導入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-085078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、圧縮エアを導入すると、シールの性能を確保するための潤滑剤であるグリースが圧縮エアにより所望する部位から噴出するおそれがあり、潤滑剤の保持状態を維持できないことが想定される。
以上より、本発明は、潤滑剤の保持状態を維持させつつ、運転中におけるシールの状態を把握できる竪型粉砕機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の竪型粉砕機は、回転テーブルと、回転テーブルに接して転動するローラと、ローラを回転可能に支持する円柱状の主軸と、主軸の周りに設けられるシールとを有する粉砕ローラと、シールの状態を判定するシール状態判定システムと、を備える。
シール状態判定システムは、シールに向けてグリースを供給する供給部と、シールに向けて供給されたグリースを回収する回収部と、を備える。
回収部は、回収部を通るグリースの圧力を検出する圧力計と、圧力計で検出される運転時圧力に基づいて、シールの状態を判定するコントローラと、を備える。
【0008】
本発明の竪型粉砕機において、回収部は、好ましくは、シールの側の上流から下流に向けてグリースが通る回収配管と、回収配管の途中に設けられるフィルタと、フィルタよりも上流側における回収配管の内部のグリースの圧力を検出する圧力計と、フィルタよりも上流側の回収配管に設けられるフローサイトと、を備える。
【0009】
本発明の竪型粉砕機において、供給部は、好ましくは、グリースを蓄える供給側貯留槽と、供給側貯留槽からグリースを吸引するとともにシールに向けてグリースをコントローラの設定に基づいて圧送する供給ポンプと、供給側貯留槽からシールに向けて供給ポンプにより圧送されるグリースが通る供給配管と、を備え、
コントローラは、運転時圧力が予め定められる圧力上限値を超えるか、または、運転時圧力が予め定められる圧力下限値を割り込めば、
シールに異常が生じているものとみなし、供給ポンプがグリースを圧送する時間間隔をそれまでより短く設定する。
【0010】
本発明の竪型粉砕機において、好ましくは、複数の粉砕ローラを備え、回収部において、コントローラは、複数の粉砕ローラのそれぞれに設けられるシールの状態を判定する。
【0011】
本発明の竪型粉砕機において、好ましくは、複数の粉砕ローラを備え、供給部において、供給配管は、分配弁を介して、複数の粉砕ローラに対応するように分岐される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の竪型粉砕機によれば、竪型粉砕機に不可避的に用いられるグリースGを利用してシールの状態を判定できるので、潤滑剤の保持状態を維持しつつシールの状態を判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る竪型粉砕機の概略構成を示す図である。
図2】実施形態に係る竪型粉砕機に付設されるシール状態判定システムの構成を示す図である。
図3】実施形態に係るシール状態判定システムにおけるローラの構成を示す部分断面図である。
図4】実施形態に係るコントローラの構成を示す図である。
図5】実施形態にシール状態の判定結果の表示例を示す図である。
図6】実施形態にシール状態の判定結果の他の表示例を示す図である。
図7】シール状態判定システムにおける判定の手順を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら、実施形態に係る竪型粉砕機1について説明する。
竪型粉砕機1は、竪型粉砕機1の粉砕ローラ8A,8Bのシールに供給される潤滑剤としてのグリースGの状態、特にグリースGの圧力を検出することにより、シールの状態を判定する。
【0015】
[竪型粉砕機1の全体構成:図1
図1に示すように、本実施形態に係る竪型粉砕機1は、動力源として、例えば減速機4の側方に設けられた回転テーブル用モータ2と、後述するロータ用モータ3とを備えている。減速機4は、回転テーブル用モータ2からの回転力を減速して回転テーブル5に伝達する。
【0016】
また、竪型粉砕機1は、減速機4の上に配置されて減速機4を介して回転テーブル用モータ2により回転駆動される回転テーブル5と、回転テーブル5上を回転テーブル5の回転に従動して転動可能な複数、ここでは2台の粉砕ローラ8A,8Bと、を備える。竪型粉砕機1は、回転テーブル5の上方に配置された分級機構としての回転部である回転ロータ31を有するセパレータ30とを備えている。ロータ用モータ3は、セパレータ30の回転ロータ31を回転駆動する。なお、本実施形態のセパレータ30は、回転部である回転ロータ31と固定羽根32とを備えて構成されているが、固定羽根32を備えずにセパレータ30自身が回転するものを採用し得る。
【0017】
竪型粉砕機1は、回転テーブル用モータ2およびロータ用モータ3の動作を制御するコントローラ18を備えている。コントローラ18は、回転テーブル用モータ2およびロータ用モータ3の動作を制御することで、回転テーブル5や回転ロータ31の回転数や回転速度を自在に制御する。また、竪型粉砕機1は、回転テーブル用モータ2およびロータ用モータ3を含む上述した構成要素を内部に収容するケーシング10を備えている。
【0018】
ケーシング10の内側には、セパレータ30の回転ロータ31の上方の端部よりやや内側上方まで延び且つ製品取出口29の下方に位置するように設けられた円環状のショートパス防止板40と、このショートパス防止板40から回転ロータ31の側方に向けて僅かに下方に延びるように形成されたシール板41とが備えられている。
ショートパス防止板40は、下方から上方へ向かうガスのセパレータ30から製品取出口29への気流回り込みやショートパス流れを抑制する。
【0019】
図1において一部断面で示される回転テーブル5は、平面視して円形の中央領域5Aおよびその周りの円環状のローラ転動領域5Bを備えている。回転テーブル5の中央領域5Aの上方には、竪型粉砕機1の上部から回転テーブル5の中央に向かって鉛直方向に延びる円筒状のシュート6が備えられている。シュート6には、上方から粉砕対象となる新規原料が供給される。
【0020】
シュート6の外周側には、内部循環原料(粉粒体)供給用の漏斗状のコーン7が備えられている。これらシュート6およびコーン7の下端部は、例えばそれぞれ同一面を構成するように配置されている。従って、新規原料および内部循環原料は、シュート6およびコーン7を介して回転テーブル5の中央領域5Aの上面に安定的に供給される。回転テーブル5の中央領域5A上に供給された各原料は、回転テーブル5の回転力によりローラ転動領域5Bに導かれる。
【0021】
また、竪型粉砕機1は、例えば回転テーブル5のローラ転動領域5B上を回転テーブル5の回転に従動して転動可能な複数の粉砕ローラ8A,8Bを備えている。2台の粉砕ローラ8A,8Bは、例えばローラ転動領域5Bを円周方向において二等分する位置に配置される。粉砕ローラ8Aと粉砕ローラ8Bの間には図示が省略される補助ローラが、ローラ転動領域を円周方向に二等分する位置に配置されてもよい。粉砕ローラの台数は2台に限らず、例えば、3台、4台、6台とすることができる。補助ローラについても同様である。
【0022】
粉砕ローラ8A,8Bのそれぞれは、軸により揺動自在にケーシング10に取り付けられた加圧装置のアーム9A,9Bを介して、例えば油圧シリンダ11のピストンロッド11Aに連結されている。加圧装置としての油圧シリンダ11を作動させることにより、粉砕ローラ8A,8Bを回転テーブル5のローラ転動領域5Bに押し付けて原料層に粉砕力を与えることができる。
【0023】
粉砕ローラ8A,8Bは主に原料を微粉砕し、補助ローラは主に原料層から脱気を行うために用いられる。回転テーブル5の中央領域5A上に供給されローラ転動領域5Bに供給されて、このローラ転動領域5Bにおいて回転テーブル5と粉砕ローラ8A,8Bおよび補助ローラとの間を通過した各原料は、回転テーブル5の外周縁部に周設されたダムリング12により堰き止められる。ダムリング12は、例えばその高さが調整可能に構成されている。
【0024】
回転テーブル5の外周部とケーシング10との間には、ガスの吹き上げ部となる環状通路13が形成されている。ケーシング10には、外部に設けられたエグゾーストファンからガスを環状通路13に導入するためのガス導入ダクト14が設けられている。
また、ケーシング10には、十分に粉砕されずに環状通路13に落下した原料を取り出すための下部取出ダクト15が設けられている。
【0025】
ケーシング10の内側の上方には、セパレータ30がシュート6を囲んでコーン7の内側領域に配置されている。セパレータ30は、回転羽根を有する回転ロータ31がロータ用モータ3およびベルト3Aによって、例えばベルト駆動で回転する回転筒3Bと共に回転することにより、回転テーブル5および粉砕ローラ8A,8B等により粉砕された原料(粉粒体)を所定粒度の製品(微粉体)に分級する。また、コーン7の上部において、セパレータ30の回転ロータ31の外周側における対応する位置、すなわち回転ロータ31からやや離れた位置には、固定羽根32が設けられている。
【0026】
そして、ケーシング10の上方に設けられた製品取出口29からは、ガス流れによって吹き上げられセパレータ30(固定羽根32および回転ロータ31)を通過した、十分に粉砕された微粉体が製品として取り出される。
【0027】
[シール状態判定システム50:図2図3
竪型粉砕機1は、複数の粉砕ローラ8A,8Bのそれぞれに備えられるシールS1,S2の状態を判定するシール状態判定システム50を備える。シール状態判定システム50は、粉砕ローラ8A,8Bに備えられるシールS1,S2を潤滑する目的で供給される粘度の高い潤滑剤、例えばグリースGについて測定される圧力に基づいてシールS1,S2の状態を判定する。以下、シール状態判定システム50の構成について図2を参照して説明した後に、それぞれの粉砕ローラ8A,8Bに装着されるシールS1,S2について図3を参照して説明する。
【0028】
シール状態判定システム50は、二つの粉砕ローラ8A,8BにグリースGを供給する供給部60と、粉砕ローラ8A,8Bから排出されるグリースGを回収する回収部70と、を備える。
【0029】
グリース(grease)Gとは、液体である原料基油(潤滑油)に増ちょう剤を分散させて半固体または固体化した潤滑剤をいう。原料基油は、大別すると精製鉱油、合成潤滑油およびそれらの混合油が適用される。増ちょう剤は、原料基油中にコロイド状に分散して原料基油を半固体または固体状にする物質であり、金属石けん型と非石けん型とに大別される。グリースGは、原料基油および増ちょう剤の他に特殊な性質を与える添加剤を構成成分として含むこともある。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、極圧剤、金属不活性剤、固体潤滑剤が使用される。
【0030】
グリースGは、通常、潤滑すべき面が動くために液体である潤滑油では潤滑剤としての膜が付着した状態を保つのが難しい摺動面に適用される。グリースGは使用中に異物の混入や温度上昇などによる劣化があるため定期的な更新が必要である。そこで、本実施形態では、粉砕ローラ8A,8BにおけるグリースGの供給個所において、供給部60により新しいグリースGを注入する一方、それまで使用されていた古いグリースGを押し出して回収部70により回収する。
【0031】
[供給部60:図2
供給部60は、上流側からグリースGを蓄える供給側貯留槽61と、供給側貯留槽61に蓄えられるグリースGを吸引するとともに粉砕ローラ8A,8Bに向けて供給する供給ポンプ63と、供給ポンプ63から供給されるグリースGを粉砕ローラ8A,8Bに分配する分配弁65と、を順に備える。
供給部60は、グリースGを粉砕ローラ8A,8Bに供給する供給配管67を備える。供給配管67は、供給側貯留槽61と供給ポンプ63を繋ぐ第1供給配管67Aと、供給ポンプ63と分配弁65を繋ぐ第2供給配管67Bと、を備える。また、供給配管67は、分配弁65と粉砕ローラ8Aを繋ぐ第3分岐管67C1と、分配弁65と粉砕ローラ8Bを繋ぐ第3分岐管67C2と、を備える。さらに、供給配管67は、分配弁65と供給側貯留槽61を繋ぐ第4供給配管67Dを備える。供給配管67は、ここでは1本の例を示しているが、供給するグリースGの量が多く要求される場合には、2本以上の供給配管67を設けてもよい。
【0032】
供給部60において、供給ポンプ63は、コントローラ18の指示にしたがって、第1供給配管67Aを介して、連続的にまたは断続的に供給側貯留槽61からグリースGを吸引する。吸引されたグリースGは、第2供給配管67Bを介して分配弁65まで供給される。分配弁65まで供給されたグリースGは分配弁65で例えば均等に分配され、分配されたグリースGのそれぞれは第3分岐管67C1および第3分岐管67C2を通って粉砕ローラ8A,8Bに向けて供給される。なお、供給部60における上流および下流は、供給されるグリースG通る向きによって特定される。回収部70における上流および下流についても同様に定義される。
【0033】
供給部60において、分配弁65はあくまで好ましい形態にすぎず、分配弁65を介することなく、単純に第2供給配管67Bを単純に二股の第3分岐管67C1と第3分岐管67C2に分配してもよい。ただし、粉砕ローラ8A,8Bのそれぞれに要求されるグリースGの量に差がある場合には、この差に応じた量のグリースGを第3分岐管67C1と第3分岐管67C2に分配する必要があるので、分配弁65を設けることが好ましい。
【0034】
[回収部70:図2
回収部70は、粉砕ローラ8A,8Bから回収されるグリースGの素性を目視で観察できるフローサイト(flow sight)71と、フローサイト71を通ったグリースGの圧力を検出するとともに検出結果を出力する圧力検出ユニット73と、を順に備える。回収部70は、圧力検出ユニット73よりも下流に、グリースGからダストを取り除くフィルタ75と、フィルタ75を通ってダストが取り除かれたグリースGを貯留する回収側貯留槽77と、を備える。
回収部70は、粉砕ローラ8A,8BからグリースGを回収する回収配管79を備える。回収配管79は、粉砕ローラ8A,8Bとフローサイト71を繋ぐ第1回収配管79Aと、フローサイト71とフィルタ75を繋ぐ第2回収配管79Bと、フィルタ75と回収側貯留槽77を繋ぐ第3回収配管79Cと、を備える。
【0035】
回収部70において、フローサイト71は、サイトグラス(sight glass)とも称され、第1回収配管79Aから第2回収配管79Bを通るグリースGの流速・流量などの状態を目視によって観察できる器具である。フローサイト71を設けることによって、グリースGの色やダストの混ざり具合などを確認して、状態を目視観察できる。
【0036】
フィルタ75は、粉砕ローラ8A,8Bから回収されるグリースGに混入するダストを取り除く。取り除かれたダストは、フィルタ75の上流側に目詰まりとして残り、グリースGがフィルタ75を通過する際の抵抗となる。したがって、フィルタ75に堆積されるダストが増えるのにつれてこの抵抗が大きくなり、フィルタ75よりも上流側の第2回収配管79Bの内部のグリースGの圧力が大きくなる。例えば、ダストが取り除かれる前のフィルタ75に目詰まりのない状態、つまり初期状態の第2回収配管79Bの内部の圧力検出領域ApのグリースGの圧力が、ダストの目詰まりにより初期圧力Piよりも高くなることがある。一方で、グリースGの圧力が初期圧力Piよりも低くなることもある。例えば、転がり軸受83,83に供給される潤滑油LがグリースGに混入すれば、グリースGの粘度が低くなる。以上の通りであり、フィルタ75を設けることにより、竪型粉砕機1の運転時における圧力検出領域Apの圧力(運転時圧力Pd)は、グリースGへのダストの混入および潤滑油の混入の一方または双方により変動し得る。そこで、竪型粉砕機1は、圧力検出ユニット73を設けることで、運転時圧力Pdの動向を検出し、検出結果に応じた処置を施す。この点について、詳しくはコントローラ18の説明において言及する。
【0037】
ダストを取り除くことができる限りフィルタ75の種類は限定されず、例えば金属製のメッシュ、樹脂製のメッシュなどが適用される。これらメッシュ(mesh)の目開き、開口率は、粉砕ローラ8A,8Bにおいて発生し得るダストを捕獲できる限り任意である。
【0038】
圧力検出ユニット73は、竪型粉砕機1が運転を開始してから、圧力検出領域Apの初期圧力Piおよび運転時圧力Pdを継続的に検出するとともに、検出された圧力を電気的な信号に変換、生成してコントローラ18に伝送する。生成された圧力の電気的な信号を、以下、検出圧力データと称する。コントローラ18は、圧力検出ユニット73から取得する検出圧力データに基づいて、シールS1,S2の状態を判定する。
この圧力検出ユニット73は、アンプ回路を内蔵するタイプの圧力計であり、検出した気体、液体などの流体の圧力を、計装信号の標準された信号(DC4~20mAおよび、DC1~5V)として伝送する。圧力計としてはブルドン管圧力計、隔膜式圧力計などの公知の圧力計が広く適用される。
【0039】
[粉砕ローラ8の構成:図3
次に、図3を参照して、粉砕ローラ8A,8BにおけるグリースGを供給部60により供給し、かつ、回収部70により回収できる構成を説明する。なお、粉砕ローラ8Aと粉砕ローラ8Bは同じ構成を備えているので、ここでは粉砕ローラ8Aについて説明する。
粉砕ローラ8Aは、回転テーブル5の回転に従動して転動可能な円錐台形状の外観を有するローラ81と、ローラ81を回転可能に支持する円柱状の主軸82と、ローラ81と主軸82の間に介在される転がり軸受83,83と、を備える。粉砕ローラ8は、転がり軸受83,83がケーシング10に対して固定される主軸82とローラ81の間に介在されることにより、回転テーブル5の回転に伴ってローラ81が転動可能とされる。
【0040】
主軸82には、供給配管67に連なるグリースGの供給路82Aと、回収配管79に連なる回収路82Bと、を備える。供給路82Aと回収路82Bは、好ましい例として、中心軸線Cを中心にして、互いに線対称の位置に設けられる。供給路82Aは鉛直方向Hの上側に設けられ、回収路82Bは鉛直方向Hの下側に設けられる。
【0041】
供給路82Aは、中心軸線Cと平行に設けられる軸方向供給路82A1と、軸方向供給路82A1の先端に連なり、鉛直方向Hの上側に向けて形成される径方向供給路82A2と、を備える。径方向供給路82A2は図中の上端が主軸82の外周面に開口する。この開口はグリースGの供給口82A3を構成する。供給口82A3が開口するのは、シール室84の内部であって、シールS1とシールS2の間である。供給配管67から供給されるグリースGは、軸方向供給路82A1、径方向供給路82A2および供給口82A3を順に通って、シール室84の内部であってシールS1とシールS2の間に供給される。
【0042】
回収路82Bは、中心軸線Cと平行に設けられる軸方向回収路82B1と、軸方向回収路82B1の先端に連なり、鉛直方向Hの下側に向けて形成される径方向回収路82B2と、を備える。径方向回収路82B2は図中の下端が主軸82の外周面に開口する。この開口は、グリースGの回収口82B3を構成する回収口82B3が開口するのは、シール室84の内部であって、後述するシールS1とシールS2の間である。シールS1とシールS2の間に蓄えられていたグリースGは、供給路82Aから新たに供給されるグリースGにより径方向回収路82B2に押し出される。この押出に連動して、それまで軸方向回収路82B1に留まっているグリースGは回収配管79に向けて押し出される。このグリースGの押出が繰り返されると、回収されるグリースGはフローサイト71およびフィルタ75を通って回収側貯留槽77に至る。
【0043】
粉砕ローラ8Aはシール室84を備える。シール室84は、粉砕によって生じるダストDが転がり軸受83,83に達するのを防止するために設けられている。また、シール室84は、転がり軸受83,83に供給される潤滑油Lが粉砕ローラ8の外へ漏れるのを防止するために設けられている。転がり軸受83,83には図示のように潤滑油Lが供給される。
シール室84は、内部にグリースGが蓄えられる空隙の周囲を取り囲むように、主軸82の周方向に連なって形成される円環状の空隙である。シール室84の内部には、シールS1とシールS2が中心軸線Cの方向に間隔をあけて設けられる。シールS1とシールS2は主軸82の周方向に連なって設けられるので、シールS1とシールS2の間はシールS1とシールS2の頂部に比べて窪んだ主軸82の周方向に連なるグリース溜が設けられる。供給口82A3から供給されるグリースGはこのグリース溜を満たすが、新たにグリースGが供給口82A3から供給されるとグリース溜を満たしていたそれまでの古いグリースGは回収口82B3、径方向回収路82B2および軸方向回収路82B1を順に通って回収部70(回収配管79)に至る。
シールS1,S2が摩耗、欠損などの異常状態に陥れば、ダストDがグリース溜に混入し、転がり軸受83,83に供給される潤滑油Lがグリース溜に浸入する。グリース溜に浸入した潤滑油Lは、シール室84を通って粉砕ローラ8の外部に漏れだすおそれがある。
【0044】
[コントローラ18:図4
竪型粉砕機1のシール状態判定システム50は、シール室84に設けられるシールS1,S2の状態を、コントローラ18を通じて判定する。以下、図4を参照し、シール状態判定に関わるコントローラ18の構成を説明する。
【0045】
コントローラ18は、図4に示すように、送受信部18A、記憶部18B、処理部18C、入力/表示部18Dを備える。この機能の区分は一例であり、さら機能を細分化したり、機能を統合したりすることができる。一例として、入力/表示部18Dは、入力に特化される部分と表示に特化される部分に区分できる。コントローラ18は、CPU(Central Processing Unit)、半導体メモリおよびディスプレイなどを備えるコンピュータ装置により構成される。
【0046】
[送受信部18A]
送受信部18Aは、供給ポンプ63について動作を指示する信号を送信する。また、送受信部18Aは、圧力検出ユニット73で生成される検出圧力データを受信する。送受信部18Aが受信した検出圧力データは処理部18Cに転送される。
なお、コントローラ18は、回転テーブル用モータ2およびロータ用モータ3の動作を制御するので、この制御に必要なデータの送受信、記憶および処理を行う。しかし、ここではシール状態の判定に関わる説明を行うことを主旨とするため、回転テーブル用モータ2およびロータ用モータ3の動作に関する説明は省略される。
【0047】
[記憶部18B]
記憶部18Bは、シール状態を判定するのに必要なデータを記憶する基準データ記憶部18B1と、供給ポンプ63の運転条件に関するデータを記憶する条件データ記憶部18B2と、を備える。
【0048】
[基準データ記憶部18B1:図4
基準データ記憶部18B1は、検出圧力データと比較することにより、圧力検出領域ApにおけるグリースGの圧力が許容範囲にあるか否かの判定を行う基準となるデータ(基準データJ)を記憶する。この基準データJは、竪型粉砕機1の運転を行う際に、処理部18Cに提供される。
運転時圧力Pdは初期圧力Piから変動する。この変動は、フィルタ75へのダストの目詰まりによる増加(+ΔP)と、グリースGへの潤滑油Lの混入による減少(-ΔP)を含む。基準データJは、この初期圧力Piからの圧力の増減に閾値が加えられる以下の式(2),(3)により定義される。式(2)は運転時圧力Pdとして許容される圧力上限値を示し、式(3)は運転時圧力Pdとして許容される下限値を示している。運転時圧力Pdがこの圧力上限値と圧力下限値の範囲に収まっていればシールS1,S2は正常と判断される。また、運転時圧力Pdがこの圧力上限値を超えればシールS1,S2に異常が生じているものとみなし、圧力下限値を割ればグリースGに潤滑油Lが混入しているものとみなす。つまり、基準データJは式(4)により定義される。
【0049】
運転時圧力Pdは増加(+ΔP)する場合と減少(-ΔP)する場合があるが、両者の生じる時期が相違する。この時期の相違は、以下に説明するように、2つのシールS1,S2の損耗の順番に基づく。グリースGの前後にはシールS1,S2が設けられているが、通常は、ダストDを受けるシールS1から損耗するために、シールS1の側からダストDが徐々にグリースGに混入していく。グリースGに混入するダストDはフィルタ75で濾されていくのでフィルタ75の詰り具合によって圧力が徐々に上昇(+ΔP)していく。
その後もダストDが混入し続けると、潤滑油Lに対応するシールS2の損耗が始まる。その損耗の程度が進むと、潤滑油LがグリースGに混入するのに伴って、徐々に圧力が低下(-ΔP)する。グリースGを保持できないほどにシールS1,S2が損耗すると、圧力はさらに低下(-ΔP)していく。
【0050】
以上は、経時的に生じる通常の損耗の場合であるのに対して、異常な損耗がシールS1に生ずることもある。この場合は、早期に運転時圧力Pdが減少(-ΔP)する。典型的には、短時間に大量のダストDが流入するとシールS1が破損してしまい、シールS2との間のグリースGが保持されなくなるので、運転時圧力Pdは急激に減少(-ΔP)する。
【0051】
以上の通りであり、増加(+ΔP)と減少(-ΔP)は生じる時期が異なるので、両者が相殺されることで運転時圧力Pdの変動を検知できないといことはほとんどないが、そのような事態に対応するためにフローサイト71を設け、視覚的に観察できるようにしている。
【0052】
Pu=Pi+Psu … 式(2)
Pl=Pi-Psl … 式(3)
Pi-Psl ≦ Pd ≦ Pi+Psu …式(4)
Pd:運転時圧力 Pi:初期圧力(運転開始直後の圧力)
Pu:圧力上限値 Pl:圧力下限値
Psu:圧力増加を考慮した閾値 Psl:圧力減少を考慮した閾値
【0053】
[条件データ記憶部18B2:図4
条件データ記憶部18B2は、竪型粉砕機1においてグリースGを供給する時間的な間隔に関するデータを記憶する。この供給条件データCは、竪型粉砕機1を運転している際中に、処理部18Cに提供される。
供給条件データCは、シールS1,S2が正常と判定されているときの正常時条件CnとシールS1,S2が異常と判定されたときの異常時条件Caとがある。ただし、異常時条件Caは、運転時圧力Pdが前述の式(2)で表される圧力上限値Pu(Pi+Psu)を超えたときの超過時条件Cauと運転時圧力Pdが前述の式(3)で表される圧力下限値Pl(Pi-Psl)を割り込んだときの不足時条件Calとがある。基準データJとの対応を以下に示しておく。
【0054】
正常時 Pi-Psl ≦ Pd ≦ Pi+Psu : Cn
超過時 Pi+Psu < Pd : Cau
不足時 Pd < Pi-Psl : Cal
【0055】
供給条件は、竪型粉砕機1に供される複数種類の粉砕原料の如何に関わらず共通の条件とすることができるし、複数種類の粉砕原料のそれぞれに対応する異なる条件とすることもできる。
また、供給条件データCは、竪型粉砕機1のオペレータが粉砕に先立って入力/表示部18Dから入力することができる。また、例えば粉砕したい原料の種類にそれぞれについて予め供給条件が記憶部18Bに記憶されていてもよい。
【0056】
[処理部18C:図4
竪型粉砕機1の運手を開始する前に、処理部18Cは、基準データ記憶部18B1から基準データJを取得し、かつ、条件データ記憶部18B2から供給条件データCを取得する。また、処理部18Cは、竪型粉砕機1の運転が開始されると、送受信部18Aを介して検出圧力データを取得する。これで、シール状態判定システム50が機能する前提が整う。
なお、処理部18Cは、回転テーブル用モータ2よびロータ用モータ3の動作を制御するが、以下での説明は省略される。
【0057】
処理部18Cは、取得する供給条件データCに基づいて、供給ポンプ63を駆動させる。竪型粉砕機1の運転が開始される当初、処理部18Cは正常時条件Cnに基づいた所定の時間間隔で供給ポンプ63を駆動させる。また、処理部18Cは、予め定められた時間だけ供給ポンプ63を駆動させる。
【0058】
処理部18Cは、取得する検出圧力データ(初期圧力Pi、運転時圧力Pd)と基準データJを比較する。具体的には、処理部18Cは、運転時圧力Pdが式(4)を満たすか否かを判定する。
処理部18Cは、運転時圧力Pdが式(4)を満たしていると判定している間は、正常時条件Cnに基づいた所定の時間間隔で供給ポンプ63を駆動させる。処理部18Cは、運転時圧力Pdが式(4)を満たしていないと判定すると、それまでの正常時条件Cnから異常時条件Caに切り替えて供給ポンプ63を駆動させる。ただし、運転時圧力Pdが式(2)で表される圧力上限値Pu(Pi+Psu)を超えた場合は、正常時条件Cnよりも時間間隔の短い超過時条件Cauで供給ポンプ63を供給させる。また、運転時圧力Pdが式(3)で表される圧力下限値Pl(Pi-Psl)を割り込んだ場合は、正常時条件Cnよりも時間間隔の長い不足時条件Calで供給ポンプ63を供給させる。
【0059】
処理部18Cは、運転時圧力Pdが式(4)を満たしていないと判定すると、供給ポンプ63を駆動させる時間間隔を変更するのに加えて、入力/表示部18Dにこの判定結果を表示させることができる。判定結果の表示例は、次項で説明する。
【0060】
[入力/表示部18D:図4図5図6
入力/表示部18Dは、竪型粉砕機1の運転に関する種々の条件、特に供給条件データCが入力される。入力される供給条件データCは条件データ記憶部18B2に記憶される。
入力/表示部18Dは、竪型粉砕機1の運転に関する種々の情報、特に処理部18Cにおける判定に関する情報を表示する。
【0061】
図5および図6は判定結果の表示例を示している。運転時圧力Pdが式(4)を満たしている場合には、図5に示されるように、運転時圧力PdおよびシールS1,S2が正常であり、グリースGが正常時条件Cnに基づく時間間隔で供給されることが表示される。運転時圧力Pdが圧力上限値Pu(Pi+Psu)を超えると、図6(a)に示されるように、シールS1,S2に異常が生じたおそれがあること、グリースGが超過時条件Cauに基づく時間間隔で供給されることが表示される。運転時圧力Pdが圧力下限値Pl(Pi-Psl)を割り込むと、図6(b)に示されるように、圧力下限値Pl(Pi-Psl)を割り込み、シールS1,S2に異常が生じたおそれがあること、グリースGが不足時条件Calに基づく時間間隔で供給されることが表示される。
【0062】
コントローラ18は、入力/表示部18Dによる視覚的な判定結果を表示するのに替えてまたは加えて、音により判定結果を発生することもできる。
【0063】
[竪型粉砕機1の粉砕動作:図1
以上のように構成された竪型粉砕機1は、具体的には、例えば次のように粉砕に関する動作を行う。
まず、回転テーブル5を回転させた状態で新規原料がシュート6から回転テーブル5の中央領域5A上に供給される。供給された新規原料は、回転テーブル5の回転によりテーブル半径方向の遠心力を受けて、回転テーブル5上を外周方向に滑りながら移動する。移動の際に原料は、回転テーブル5により回転方向の力を受け、回転テーブル5との間で滑って回転テーブル5の回転数よりいくらか遅い回転を行う。
【0064】
このように、原料に回転テーブル5の半径方向および回転方向の2つの力が合成された力が作用することによって、原料は回転テーブル5上を渦巻状の軌跡を描きながら中央領域5Aからローラ転動領域5Bに導かれる。こうしてローラ転動領域5Bに導かれた原料は、粉砕ローラ8A,8Bおよび補助ローラと回転テーブル5との間にローラ軸方向とある角度をなす方向から進入する。こうして、噛み込まれて脱気および粉砕されると共にダムリング12により堰き止められる。
【0065】
一方、ガス導入ダクト14からの空気や熱風等のガスは、環状通路13からケーシング10の内部に吹き上がる。粉砕後にダムリング12を乗り越えた原料(粉粒体)や、粉砕の際に飛散して機内を浮遊する原料、或いは内部循環原料(粉粒体)の中で、粒子径が特に大きくないものはガスの気流に乗って上方に吹き上げられる。
【0066】
上方に吹き上げられた原料は、ガスに同伴されてケーシング10内を上昇し、ケーシング10の上方に位置するセパレータ30の固定羽根32および回転ロータ31により分級作用を受ける。これにより、所定粒度のもの(微粉体)はガスと共に製品取出口29から製品として排出される。これと共に粗粉の粉粒体は、内部循環原料として回転テーブル5上にコーン7を介して再度落下し、粉砕される。
【0067】
また、ダムリング12を乗り越えた原料の中で、例えば粒子径の極端に大きなものや金属等を含んで極端に重いものなどは、環状通路13から竪型粉砕機1の下方に落下し、下部取出ダクト15から外部に取り出される。取り出された原料は、必要に応じて、搬送ライン(図示せず)からシュート6に戻され、外部循環により竪型粉砕機1にて粉砕される。
【0068】
[シール状態判定システム50の動作:図7
次に、図7を参照してシール状態判定システム50の動作を説明する。なお、この動作の前提として、コントローラ18は前述した機能、データを有しているものとする。また、ここでは粉砕ローラ8A,8Bの一方に対する動作を説明するが、粉砕ローラ8A,8Bのそれぞれについて以下説明する動作が実行される。
【0069】
<圧力検出ユニット73の動作>
竪型粉砕機1の運転が開始されると、圧力検出ユニット73は、初期圧力Piを検出するとともに、初期圧力Piを検出した後には運転時圧力Pdを検出する(図7 S101)。初期圧力Piおよび運転時圧力Pdは、コントローラ18に向けて転送される。なお、初期圧力Piは竪型粉砕機1の運転当初だけ検出されるものであるが、運転時圧力Pdはそれ以後も継続的に検出され、かつコントローラ18に向けて転送される。なお、運転時圧力Pdの検出は継続的に行われてもよいし、時間間隔をあけて断続的に行われてもよい。
【0070】
<コントローラ18の動作>
コントローラ18は、検出された初期圧力Piおよび初期圧力Piを圧力検出ユニット73から取得し、式(4)で定義される基準データJを設定する(S103)。
また、コントローラ18は、供給ポンプ63の駆動間隔について正常時条件Cnを条件データ記憶部18B2から取得し、供給ポンプ63の運転を正常時条件Cnで規定される駆動間隔により制御する(S105)。
【0071】
コントローラ18の処理部18Cは、運転時圧力Pdを取得し、(4)で定義される基準データJに基づいてシールS1,S2の状態を判定する(S107)。具体的には、処理部18Cは、取得する運転時圧力Pdが圧力上限値Puと圧力下限値Plで規定される範囲にあるか否かを判定する。運転時圧力Pdが圧力上限値Puと圧力下限値Plで規定される範囲にあれば、処理部18Cはその後も取得する運転時圧力Pdにより同様の判定を繰り返す(S107 Yes)。運転時圧力Pdが圧力上限値Puと圧力下限値Plで規定される範囲から外れれば(S107 No)、運転時圧力Pdが圧力上限値Puを超えたのか(S109 Yes)、それとも、運転時圧力Pdが圧力下限値Plを割り込んだのか(S109 No)の判定を行う。
【0072】
運転時圧力Pdが圧力上限値Puを超えたのであれば(S109 Yes)、処理部18Cは供給ポンプ63の駆動間隔を正常時条件Cnから超過時条件Cauに切り替える(S111)。この場合、運転時圧力Pdが圧力下限値Plを割り込むまで超過時条件Cauが保持される。また、運転時圧力Pdが圧力下限値Plを割り込んだのであれば(S109 No)、処理部18Cは供給ポンプ63の駆動間隔を正常時条件Cnから不足時条件Calに切り替える(S113)。その後、処理部18Cは、切り替えられた超過時条件Cauまたは不足時条件Calにしたがって、供給ポンプ63の駆動間隔を制御する。
【0073】
[竪型粉砕機1が奏する効果]
竪型粉砕機1は、以下の効果を奏する。
竪型粉砕機1は、竪型粉砕機1の粉砕ローラ8に供給される潤滑剤としてのグリースGの状態、特に回収配管79を通るグリースGの圧力を検出することにより、シールS1,S2の状態を判定する。つまり、シール状態判定システム50によれば、グリースGの保持状態を維持しながら、竪型粉砕機1の運転の最中にシールS1,S2の状態を把握できる。
【0074】
シール状態判定システム50において、回収部70はグリースGが通る回収配管79の途中にフィルタ75を設ける。このフィルタ75にグリースGに含まれるダストDが捕集されると、フィルタ75を通過するグリースGの抵抗となるために、圧力検出ユニット73で検知される圧力が高くなる。そうすれば、損耗するなどしてシールS1,S2が異常な状態でありダストDがグリースGに混入したことを認識できる。
【0075】
シール状態判定システム50において、供給部60に備えられる一台の供給ポンプ63によりグリースGを圧送して、グリースGをシールS1,S2に向けて新たに供給するとともに、すでに供給されていたグリースGを圧力検出に供されるように押し出す。したがって、シール状態判定システム50は圧力検出のための駆動源を一つで賄うことができるので、竪型粉砕機1の製造コストまたは竪型粉砕機1の接地ペースを抑えることができる。
【0076】
シール状態判定システム50において、運転時圧力Pdが予め定められる圧力上限値Puを超えるか、または、運転時圧力Pdが予め定められる圧力下限値Plを割り込めば、供給ポンプ63がグリースGを圧送する時間間隔をそれまでより短く設定する。このように、異常が生じたであろうシールS1,S2に通常では過剰となる量のグリースGを供給するので、シールS1,S2が致命的な状態になるのを遅らせることができる。
【0077】
上記以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
竪型粉砕機1が複数台の粉砕ローラ8A,8Bを備えるが、コントローラ18は、複数の粉砕ローラ8A,8Bのそれぞれに設けられるシールS1,S2の状態を判定することができる。そうすることにより、状態が好ましくないシールS1,S2を特定することができるとともに、当該シールS1,S2に対してグリースGを圧送する時間間隔をそれまでより短く設定できる。例えば、粉砕ローラ8AのシールS1,S2に異常が検出されるが、粉砕ローラ8Bについて異常が検出されない場合がある。この場合には、粉砕ローラ8AのシールS1,S2にグリースGを供給する時間間隔を短くするが、粉砕ローラ8BのシールS1,S2にグリースGを供給する時間間隔は従前のままとする。これは、分配弁65による分配の比率を1:0に設定するなどして実現される。
【0078】
また、実施形態においては、グリースGと潤滑油Lの組み合わせの例を示したが、例えばグリースGの代わりに粘度の高い潤滑油と潤滑油Lの代わりに粘度の低い潤滑油の組み合わせによっても本発明を実現できる。
【符号の説明】
【0079】
1 竪型粉砕機
2 回転テーブル用モータ
3 ロータ用モータ
3A ベルト
3B 回転筒
4 減速機
5 回転テーブル
5A 中央領域
5B ローラ転動領域
6 シュート
7 コーン
8A,8B 粉砕ローラ
81 ローラ
82 主軸
83 転がり軸受
84 シール室
9A,9B アーム
10 ケーシング
11 油圧シリンダ
11A ピストンロッド
12 ダムリング
13 環状通路
14 ガス導入ダクト
15 下部取出ダクト
18 コントローラ
29 製品取出口
30 セパレータ
31 回転ロータ
32 固定羽根
40 ショートパス防止板
41 シール板
47 偏心開口
49 偏心プレート
50 シール状態判定システム
60 供給部
61 供給側貯留槽
63 供給ポンプ
65 分配弁
67 供給配管
67A 第1供給配管
67B 第2供給配管
67C1,67C2 第3分岐管
67D 第4供給配管
70 回収部
71 フローサイト
73 圧力検出ユニット
75 フィルタ
77 回収側貯留槽
79 回収配管
79A 第1回収配管
79B 第2回収配管
79C 第3回収配管
D ダスト
L 潤滑油
G グリース
S1,S2 シール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7