(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092386
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】オフセットフィン、熱交換器、フィン用板材、及び、オフセットフィンの製造方法
(51)【国際特許分類】
F28F 3/06 20060101AFI20240701BHJP
F28F 3/08 20060101ALI20240701BHJP
F28D 9/00 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
F28F3/06 A
F28F3/08 301A
F28D9/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208283
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】江口 駿作
(72)【発明者】
【氏名】上藤 陽一
(72)【発明者】
【氏名】永井 友人
【テーマコード(参考)】
3L103
【Fターム(参考)】
3L103AA35
3L103DD15
3L103DD54
(57)【要約】
【課題】オフセットフィンと流体との間における伝熱性能の向上を図ることが可能なオフセットフィンを提供する。
【解決手段】オフセットフィンは、互いに板厚方向にずれて位置すると共に板厚方向に直交する第一方向に交互に並ぶ第一接合板部及び第二接合板部、並びに、板厚方向に延びて第一方向に隣り合う第一接合板部と第二接合板部とを接続し、第一方向に間隔をあけて並ぶ複数の接続板部、を有することで、周期的に板厚方向に蛇行しながら第一方向に延びる波形構造を複数備え、複数の波形構造は、板厚方向及び第一方向に直交する第二方向に並び、第二方向に隣り合う2つの波形構造の接続板部は、互いに第一方向にずれて位置し、少なくとも1つの波形構造においては、接続板部のうち第二方向の一方側に向く前縁面が、板厚方向に対して第二方向の他方側に傾斜している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに板厚方向にずれて位置すると共に前記板厚方向に直交する第一方向に交互に並ぶ第一接合板部及び第二接合板部、並びに、前記板厚方向に延びて前記第一方向に隣り合う前記第一接合板部と前記第二接合板部とを接続し、前記第一方向に間隔をあけて並ぶ複数の接続板部、を有することで、周期的に前記板厚方向に蛇行しながら前記第一方向に延びる波形構造を複数備え、
複数の前記波形構造は、前記板厚方向及び前記第一方向に直交する第二方向に並び、
前記第二方向に隣り合う2つの前記波形構造の前記接続板部は、互いに前記第一方向にずれて位置し、
少なくとも1つの前記波形構造においては、前記接続板部のうち前記第二方向の一方側に向く前縁面が、前記板厚方向に対して前記第二方向の他方側に傾斜しているオフセットフィン。
【請求項2】
同一の前記波形構造において前記第一方向に隣り合う2つの前記接続板部の前記前縁面は、前記板厚方向に対して互いに逆向きに傾斜している請求項1に記載のオフセットフィン。
【請求項3】
前記第一接合板部と前記接続板部との接続部分が、前記第一接合板部と前記接続板部とを滑らかに接続するように丸みを帯びており、
前記第二接合板部と前記接続板部との接続部分が、前記第二接合板部と前記接続板部とを滑らかに接続するように丸みを帯びている請求項1又は請求項2に記載のオフセットフィン。
【請求項4】
前記第二方向から見て、複数の前記第一接合板部が前記第一方向に隙間なく並ぶように、かつ、複数の前記第二接合板部が前記第一方向に隙間なく並ぶように、複数の前記波形構造が前記第一方向にずれて位置する請求項1又は請求項2に記載のオフセットフィン。
【請求項5】
同一の前記波形構造において前記第一方向に順番に並ぶ前記接続板部、前記第一接合板部、前記接続板部、前記第二接合板部を1周期として、
前記第二方向に連続する複数の前記波形構造が、前記第一方向の一方側に1/4周期ずつずれている請求項4に記載のオフセットフィン。
【請求項6】
前記第一接合板部及び前記第二接合板部のうち前記第二方向の一方側に向く前縁面が、前記第一方向に対して前記第二方向の他方側に傾斜する傾斜面を有する請求項1又は請求項2に記載のオフセットフィン。
【請求項7】
請求項1又は請求項2に記載のオフセットフィンと、
前記板厚方向において前記オフセットフィンを間に配置する一対のプレートと、を備え、
前記一対のプレートのうち第一プレートに、前記第一接合板部が重ねて接合され、
前記一対のプレートのうち第二プレートに、前記第二接合板部が重ねて接合される熱交換器。
【請求項8】
単一の平面を有するフィン用板材であって、
前記平面に沿う第一方向に間隔をあけて交互に並ぶ第一接合板部及び第二接合板部、並びに、前記第一方向において前記第一接合板部と前記第二接合板部との間に配置され、前記第一接合板部と前記第二接合板部とを接続する複数の接続板部、を有する単位構造を複数備え、
複数の前記単位構造は、前記平面に沿って前記第一方向に直交する第二方向に並び、
前記第二方向に隣り合う2つの前記単位構造は、互いに前記第一方向にずれて位置し、
少なくとも1つの前記単位構造においては、前記接続板部のうち前記第二方向の一方側に向く前縁面が、前記第一方向に対して前記第二方向の他方側に傾斜し、
同一の前記単位構造において、前記第一接合板部と前記接続板部との第一境界線、及び、前記第二接合板部と前記接続板部との第二境界線は、前記第二方向に対して傾斜せずに延びているフィン用板材。
【請求項9】
請求項8に記載のフィン用板材を用いてオフセットフィンを製造するオフセットフィンの製造方法であって、
前記フィン用板材を前記第一境界線において谷折りで折り曲げ、かつ、前記フィン用板材を前記第二境界線において山折りで折り曲げるオフセットフィンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、オフセットフィン、熱交換器、フィン用板材、及び、オフセットフィンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、熱交換器に用いられるオフセットフィンが開示されている。オフセットフィンは、流体の流れ方向から見て周期的に上下方向に蛇行する波形状の波形構造を複数有する。各波形構造のうち上下方向に延びるフィン部は、幅方向(流体の流れ方向から見て左右方向)において一定の間隔ピッチで並んでいる。フィン部の間隔ピッチは、複数の波形構造の間で等しい。複数の波形構造は、流体の流れ方向に並んでいる。流れ方向に隣り合う2つの波形構造(第一波形構造、第二波形構造)は、2つの波形構造のフィン部が幅方向にずれて位置するように、幅方向にオフセット配置されている。これにより、上流側に位置する第一波形構造のフィン部の間を通る流体が、下流側に位置する第二波形構造のフィン部の前縁に当たることで、オフセットフィンに流れる流体において乱流の発生が促進される。当該乱流の発生により、流体が流れることでオフセットフィンの表面に現れる温度境界層の発達を抑制できるため、流体とオフセットフィンとの間における伝熱性能が向上する。
【0003】
また、特許文献1のオフセットフィンでは、波形構造のフィン部が流体の流れ方向に対して幅方向に傾斜して延びている。これにより、オフセットフィンに流れる流体において乱流の発生がさらに促進され、流体とオフセットフィンとの間における伝熱性能の向上が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種のオフセットフィンにおいては、オフセットフィンと流体との間における伝熱性能を向上できる余地がある。
【0006】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであって、オフセットフィンと流体との間における伝熱性能の向上を図ることが可能なオフセットフィン、これを備える熱交換器、オフセットフィンの製造に用いるフィン用板材、及び、フィン用板材を用いたオフセットフィンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係るオフセットフィンは、互いに板厚方向にずれて位置すると共に前記板厚方向に直交する第一方向に交互に並ぶ第一接合板部及び第二接合板部、並びに、前記板厚方向に延びて前記第一方向に隣り合う前記第一接合板部と前記第二接合板部とを接続し、前記第一方向に間隔をあけて並ぶ複数の接続板部、を有することで、周期的に前記板厚方向に蛇行しながら前記第一方向に延びる波形構造を複数備える。複数の前記波形構造は、前記板厚方向及び前記第一方向に直交する第二方向に並ぶ。前記第二方向に隣り合う2つの前記波形構造の前記接続板部は、互いに前記第一方向にずれて位置する。少なくとも1つの前記波形構造においては、前記接続板部のうち前記第二方向の一方側に向く前縁面が、前記板厚方向に対して前記第二方向の他方側に傾斜している。
【0008】
また、本開示に係る熱交換器は、前記オフセットフィンと、前記板厚方向において前記オフセットフィンを間に配置する一対のプレートと、を備える。前記一対のプレートのうち第一プレートに、前記第一接合板部が重ねて接合される。前記一対のプレートのうち第二プレートに、前記第二接合板部が重ねて接合される。
【0009】
また、本開示に係るフィン用板材は、単一の平面を有するフィン用板材であって、前記平面に沿う第一方向に間隔をあけて交互に並ぶ第一接合板部及び第二接合板部、並びに、前記第一方向において前記第一接合板部と前記第二接合板部との間に配置され、前記第一接合板部と前記第二接合板部とを接続する複数の接続板部、を有する単位構造を複数備える。複数の前記単位構造は、前記平面に沿って前記第一方向に直交する第二方向に並ぶ。前記第二方向に隣り合う2つの前記単位構造は、互いに前記第一方向にずれて位置する。少なくとも1つの前記単位構造においては、前記接続板部のうち前記第二方向の一方側に向く前縁面が、前記第一方向に対して前記第二方向の他方側に傾斜する。同一の前記単位構造において、前記第一接合板部と前記接続板部との第一境界線、及び、前記第二接合板部と前記接続板部との第二境界線は、前記第二方向に対して傾斜せずに延びている。
【0010】
また、本開示に係るオフセットフィンの製造方法は、前記フィン用板材を用いてオフセットフィンを製造するオフセットフィンの製造方法であって、前記フィン用板材を前記第一境界線において谷折りで折り曲げ、かつ、前記フィン用板材を前記第二境界線において山折りで折り曲げる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、オフセットフィンと流体との間における伝熱性能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の一実施形態に係る熱交換器を模式的に示す斜視図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係るオフセットフィンを示す平面図である。
【
図3】
図2のオフセットフィンを
図2のIII方向から見た正面図である。
【
図4】
図2のオフセットフィンを
図2のIV方向から見た側面図である。
【
図5】
図2~
図4のオフセットフィンの要部をY軸方向から見た正面図である。
【
図6】
図2~
図4のオフセットフィンの要部をX軸方向から見た側面図である。
【
図7】
図2~
図4のオフセットフィンの要部をZ軸方向から見た平面図である。
【
図8】本開示の一実施形態に係るフィン用板材を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[熱交換器]
以下、
図1~
図8を参照して、本開示の一実施形態について説明する。
図1に示すように、熱交換器1は、いわゆるプレート式熱交換器と呼ばれるものであり、一対のプレート2の間にオフセットフィン3を配置した構造を有する。
【0014】
図1に例示する熱交換器1は、複数のプレート2と、複数のオフセットフィン3と、を有する。複数のプレート2は、これらの厚さ方向(Z軸方向)に間隔をあけて並んでいる。オフセットフィン3は、厚さ方向に隣り合う一対のプレート2の間に配置され、ろう付け等により各プレート2に接合される。オフセットフィン3は、一対のプレート2の隙間を確保する強度部材として機能する。また、オフセットフィン3は、一対のプレート2の間において一方向(Y軸方向)に流体が流通する流路を形成する。流体は、液体であってもよいし、気体であってもよく、特に限定されない。
【0015】
これにより、熱交換器1は、厚さ方向に並ぶ複数の流路を有する。これら複数の流路には、高温側流体が流通する高温側流路と、低温側流体が流通する低温側流路とがある。高温側流路と低温側流路とは厚さ方向に交互に並ぶ。また、高温側流路における高温側流体の流れ方向と、低温側流路における低温側流体の流れ方向と、は互いに逆向きとなっている。
熱交換器1では、高温側流体及び低温側流体を流通させることで、高温側流体と低温側流体とが、プレート2及びオフセットフィン3を介して熱交換される。
【0016】
[オフセットフィン]
次に、
図2~
図7を参照して、オフセットフィン3について説明する。
図2~
図4に示すように、オフセットフィン3は、複数の波形構造10を有する。波形構造10の数は、任意であってよいが、本実施形態では4つである。
【0017】
[波形構造の構成]
各波形構造10は、第一接合板部11と、第二接合板部12と、複数の接続板部13と、を有する。
各波形構造10において、第一接合板部11と第二接合板部12とは、これらの板厚方向(Z軸方向)において互いにずれて位置する。また、第一接合板部11と第二接合板部12とは、Z軸方向に直交するX軸方向(第一方向)に交互に並ぶ。
図2、
図3に例示する波形構造10において、X軸方向における第一接合板部11及び第二接合板部12の寸法(幅寸法)は互いに等しい。第一、第二接合板部11,12の幅寸法は、複数の波形構造10の間においても互いに等しい。また、第一接合板部11がZ軸負方向側(板厚方向の一方側)に位置し、第二接合板部12がZ軸正方向側(板厚方向の他方側)に位置する。
図2、
図3に例示する各波形構造10では、第一接合板部11及び第二接合板部12の数が2つずつであるが、これに限ることはない。
【0018】
各波形構造10における複数の接続板部13は、それぞれZ軸方向に延びてX軸方向に隣り合う第一接合板部11と第二接合板部12とを接続する。複数の接続板部13は、X軸方向に間隔をあけて並ぶ。また、各接続板部13は、Y軸方向に対してX軸方向に傾斜せずにY軸方向に延びている。接続板部13のZ軸方向における寸法(高さ寸法)は、複数の波形構造10の間において互いに等しい。
【0019】
各波形構造10は、
図3に示すように、周期的にZ軸方向に蛇行しながらX軸方向に延びる。具体的に、各波形構造10は、
図3に示すようにZ軸方向及びX軸方向に直交するY軸方向(第二方向)から見て、X軸方向に順番に並ぶ接続板部13、第一接合板部11、接続板部13、第二接合板部12を1周期とした波形状に形成されている。
【0020】
図3に示すように、本実施形態の各波形構造10では、第一接合板部11と接続板部13との接続部分が、第一接合板部11と接続板部13とを滑らかに接続するように丸みを帯びている。また、第二接合板部12と接続板部13との接続部分が、第二接合板部12と接続板部13とを滑らかに接続するように丸みを帯びている。各接続部分は、
図3に示すようにY軸方向から見て扇状に形成されている。扇状とされた接続部分の曲率半径は、例えば第一、第二接合板部11,12、接続板部13の厚さ寸法よりも大きくてよい。
【0021】
[複数の波形構造の相対配置]
複数の波形構造10は、Z軸方向及びX軸方向に直交するY軸方向(第二方向)に並ぶ。Y軸方向に隣り合う2つの波形構造10の接続板部13は、互いにX軸方向にずれて位置する。具体的には、Y軸方向に隣り合う2つの波形構造10が、X軸方向に1/4周期だけずれている。このため、Y軸方向から見て、所定の波形構造10においてX軸方向に隣り合う2つの接続板部13の間には、所定の波形構造10に対してY軸方向に隣り合わせて位置する別の波形構造10の接続板部13が位置する。
【0022】
以下の説明では、Y軸正方向側(第二方向の他方側)に順番に並ぶ4つの波形構造10を、それぞれ第一波形構造10A、第二波形構造10B、第三波形構造10C、第四波形構造10Dと呼ぶことがある。
【0023】
図2、
図3に示すように、Y軸正方向側に順番に連続して並ぶ第一波形構造10Aと、第二波形構造10Bと、第三波形構造10Cとは、X軸負方向側(第一方向の一方側)に1/4周期ずつずれている。第四波形構造10Dは、第三波形構造10Cに対してX軸正方向側(第一方向の他方側)に1/4周期ずれている。このため、第二波形構造10Bと第四波形構造10Dとは、X軸方向において相互にずれずに位置する、すなわちY軸方向において重なる。
【0024】
上記のように複数の波形構造10がX軸方向にオフセット配置されたオフセットフィン3では、
図3に示すように、Y軸方向から見て複数の第一接合板部11がX軸方向に隙間なく並ぶ。具体的には、互いに異なる波形構造10の第一接合板部11がX軸方向に並ぶ。同様に、複数の第二接合板部12がX軸方向に隙間なく並ぶ。具体的には、互いに異なる波形構造10の第二接合板部12がX軸方向に並ぶ。
【0025】
[接続板部の前縁面]
図2、
図4に示すように、第一、第三波形構造10A,10Cの各接続板部13のうちY軸負方向側(第二方向の一方側)に向く前縁面15は、Z軸方向に対してY軸正方向側(第二方向の他方側)に傾斜している。また、第一、第三波形構造10A,10Cのそれぞれにおいては、X軸方向に隣り合う接続板部13の前縁面15が、Z軸方向に対して逆向きに傾斜している。
図2、
図4に例示する第一波形構造10Aにおいて、最もX軸正方向側に位置する接続板部13の前縁面15は、Z軸正方向側に向かうにしたがってY軸正方向側に傾斜している。一方、第一波形構造10Aにおいて上記した接続板部13に対してX軸負方向側に隣り合う別の接続板部13の前縁面15は、Z軸正方向側に向かうにしたがってY軸負方向側に傾斜している。
【0026】
[接合板部の前縁面]
図2に示すように、各波形構造10の第一、第二接合板部11,12は、それぞれY軸負方向側(第二方向の一方側)に向く前縁面17を有する。各接合板部11,12の前縁面17は、X軸正方向側に順番に並ぶ2つの傾斜面171,172(第一傾斜面171、第二傾斜面172)を含む。これら2つの傾斜面171,172は、いずれもX軸方向に対してY軸方向に傾斜している。ただし、2つの傾斜面171,172は、互いに逆向きに傾斜している。このため、各接合板部11,12の前縁面17は、平面視V字状に形成されている。
【0027】
具体的に、第一、第三波形構造10A,10Cの各接合板部11,12においては、第一傾斜面171が、各接合板部11,12のX軸負方向側の端部からX軸正方向側に向かうにしたがってY軸正方向側に傾斜している。一方、第二傾斜面172は、各接合板部11,12のX軸正方向側の端部からX軸負方向側に向かうにしたがってY軸正方向側に傾斜している。このため、第一、第三波形構造10A,10Cの各接合板部11,12の前縁面17は、Y軸正方向側に窪む平面視V字状に形成されている。
【0028】
一方、第二、第四波形構造10B,10Dの各接合板部11,12においては、第一傾斜面171が、各接合板部11,12のX軸負方向側の端部からX軸正方向側に向かうにしたがってY軸負方向側に傾斜している。一方、第二傾斜面172は、各接合板部11,12のX軸正方向側の端部からX軸負方向側に向かうにしたがってY軸負方向側に傾斜している。このため、第二、第四波形構造10B,10Dの各接合板部11,12の前縁面17は、Y軸負方向側に張り出す平面視V字状に形成されている。
【0029】
また、本実施形態においては、第一、第三波形構造10A,10Cの各接合板部11,12の前縁面17が、X軸方向において非対称なV字状に形成されている。具体的に、第一波形構造10Aにおいては、平面視で、各接合板部11,12の第一傾斜面171が第二傾斜面172よりも長い。一方、第三波形構造10Cにおいては、平面視で、各接合板部11,12の第一傾斜面171が第二傾斜面172よりも短い。
【0030】
一方、第二、第四波形構造10B,10Dの各接合板部11,12の前縁面17は、X軸方向において対称なV字状に形成されている。すなわち、第二、第四波形構造10B,10Dにおいては、平面視で、各接合板部11,12の第一、第二傾斜面171,172の長さが互いに等しい。
【0031】
[接合板部の後縁面]
図2に示すように、各波形構造10の第一、第二接合板部11,12は、ぞれぞれY軸正方向側に向く後縁面18を有する。各接合板部11,12の後縁面18は、前述した前縁面17に対応する平面視V字状に形成されている。具体的に、第一、第三波形構造10A,10Cの各接合板部11,12の後縁面18は、X軸方向において対称なV字状に形成されている。一方、第二、第四波形構造10B,10Dの各接合板部11,12の後縁面18は、X軸方向において非対称なV字状に形成されている。
以上のことから、各波形構造10の接合板部11,12は、いずれも平面視で、X軸方向において非対称なV字状に形成されている。
【0032】
同一の波形構造10において、第一、第二接合板部11,12の平面視した形状及び大きさは、互いに等しい。また、第一、第二接合板部11,12の形状は、複数の波形構造10(第一~第四波形構造10A~10D)の間で互いに異なっている。
【0033】
本実施形態のオフセットフィン3では、Y軸方向に隣接して並ぶ複数の波形構造10の第一接合板部11が一体に形成され、単一の平板を形成している。具体的には、第一波形構造10Aの第一接合板部11の後縁面18の一部が、第二波形構造10Bの第一接合板部11の前縁面17の第二傾斜面172に接続されることで、Y軸方向に並ぶ第一、第二波形構造10A,10Bの第一接合板部11が一体に形成されている。また、第二波形構造10Bの第一接合板部11の後縁面18の一部が、第三波形構造10Cの第一接合板部11の前縁面17の第二傾斜面172に接続されることで、Y軸方向に並ぶ第二、第三波形構造10B,10Cの第一接合板部11が一体に形成されている。また、第三波形構造10Cの第一接合板部11の後縁面18の一部が、第四波形構造10Dの第一接合板部11の前縁面17の第一傾斜面171に接続されることで、Y軸方向に並ぶ第三、第四波形構造10C,10Dの第一接合板部11が一体に形成されている。
同様に、Y軸方向に隣接して並ぶ複数の波形構造10の第二接合板部12が一体に形成され、一つの平面板を形成している。Y軸方向に並ぶ第一~第四波形構造10A~10Dの第二接合板部12の接続態様は、上記した第一接合板部11の場合と同じである。
【0034】
以上のように構成される本実施形態のオフセットフィン3は、
図1、
図3に示すように、一対のプレート2の間に配置される。そして、一対のプレート2のうち第一プレート2Aに、各波形構造10の第一接合板部11が重ねて、ろう付け等により接合される。また、一対のプレート2のうち第二プレート2Bに、各波形構造10の第二接合板部12が重ねて、ろう付け等により接合される。
【0035】
[接続板部の前縁面による流れ]
次に、本実施形態のオフセットフィン3を含む熱交換器1における流体の流れについて説明する。
図5,
図6に示すように、本実施形態のオフセットフィン3では、第一波形構造10Aの各接続板部13の前縁面15が、Z軸方向に対してY軸正方向側に傾斜している。このため、オフセットフィン3に対して流体をY軸正方向側に流したときには、
図5、
図6の矢印D1,D2で示すように、流体が傾斜する接続板部13の前縁面15に沿って流れる。すなわち、流体は、傾斜する接続板部13の前縁面15において、Y軸正方向側だけではなくZ軸方向にも流れる。これにより、当該X軸方向において接続板部13に隣接する領域には、
図5の矢印D3,D4で示す旋回流(二次流れ)が発生する。当該旋回流は、Y軸方向を軸とした螺旋状の流れである。
【0036】
また、第一波形構造10Aにおいては、X軸方向に隣り合う2つの接続板部13の前縁面15が、Z軸方向に対して逆向きに傾斜している。このため、これら隣り合う2つの接続板部13の前縁面15においては、
図5、
図6の矢印D1,D2で示すように、流体がZ軸方向において互いに逆向きに流れる。これにより、隣り合う2つの接続板部13の間において、
図5の矢印D3,D4で示すように、旋回流を複雑に発生させることができる。
【0037】
図示しないが、上記と同様の旋回流は、第一波形構造10Aと同様の構造(接続板部13の前縁面15がZ軸方向に対してY軸正方向側に傾斜する構造、及び、X軸方向に隣り合う2つの接続板部13の前縁面15がZ軸方向に対して逆向きに傾斜する構造)を有する第三波形構造10Cにおいても発生する。
【0038】
[接合板部の前縁面による流れ]
また、
図5、
図7に示すように、本実施形態のオフセットフィン3では、第一波形構造10Aの第二接合板部12の前縁面17が、X軸方向に対してY軸正方向側に傾斜する第一、第二傾斜面171,172を有する。このため、オフセットフィン3に対して流体をY軸正方向側に流したときには、
図5、
図7の矢印D5,D6で示すように、流体が第一、第二傾斜面171,172に沿って流れる。すなわち、流体は、第一、第二傾斜面171,172において、Y軸正方向側だけではなくX軸方向にも流れる。これにより、当該Z軸方向において第二接合板部12に隣接する領域には、
図5の矢印D7,D8で示す旋回流が発生する。
また、第一波形構造10Aの第二接合板部12では、その前縁面15がY軸正方向側に窪む平面視V字状に形成されるように、第一、第二傾斜面171,172が互いに逆向きに傾斜している。このため、Z軸方向において第二接合板部12に隣接する領域には、回転方向が互いに逆向きとなる旋回流D7,D8が発生する。
【0039】
図示しないが、上記と同様の旋回流は、第一、第二傾斜面171,172を有する第一波形構造10Aの第一接合板部11(
図2参照)においても発生する。また、上記と同様の旋回流は、第二、第三波形構造10B,10Cの各接合板部11,12の第一傾斜面171、及び、第四波形構造10Dの各接合板部11,12の第二傾斜面172(
図2参照)においても発生する。
【0040】
[接合板部の配列による流れ]
また、
図3に示すように、本実施形態のオフセットフィン3では、Y軸方向から見て、互いに異なる波形構造10の第一接合板部11がX軸方向に隙間なく並ぶ。このため、X軸方向の何れの位置においても、Y軸方向において第一接合板部11による段差が現れる。同様に、Y軸方向から見て、互いに異なる波形構造10の第二接合板部12がX軸方向に隙間なく並ぶため、X軸方向の何れの位置においても、Y軸方向において第二接合板部12による段差が現れる。これにより、オフセットフィン3に対してY軸正方向側に流体を流したときには、X軸方向の何れの位置においても、当該段差に起因する乱流が発生する。
【0041】
[フィン用板材]
次に、
図8を参照して、オフセットフィン3の製造に用いるフィン用板材100について説明する。
図8に示すフィン用板材100は単一の平面を有する、すなわち、フィン用板材100は平板状に形成されている。フィン用板材100は、折り曲げ加工が可能な板材である。フィン用板材100は、複数の単位構造110を有する。単位構造110は、製造後のオフセットフィン3における波形構造10に対応する。このため、本実施形態における単位構造110の数は4つである。4つの単位構造110は、フィン用板材100の平面に沿うY軸方向(第二方向)に並ぶ。以下の説明では、Y軸正方向側(第二方向の他方側)に順番に並ぶ4つの単位構造110を、それぞれ第一単位構造110A、第二単位構造110B、第三単位構造110C、第四単位構造110Dと呼ぶことがある。第一~第四単位構造110A~110Dは、オフセットフィン3における第一~第四波形構造10A~10Dにそれぞれ対応する。
【0042】
[単位構造の構成]
各単位構造110は、オフセットフィン3に対応する第一接合板部11、第二接合板部12、及び、複数の接続板部13と、を有する。
第一接合板部11と第二接合板部12とは、フィン用板材100の平面に沿ってY軸方向に直交するX軸方向(第一方向)に間隔をあけて交互に並ぶ。各単位構造110の第一接合板部11、第二接合板部12の形状及び大きさは、オフセットフィン3の各波形構造10と同じである。すなわち、各接合板部11,12は前縁面17及び後縁面18を有する。また、各接合板部11,12の前縁面17は第一傾斜面171及び第二傾斜面172を有する。
図8に例示する各単位構造110では、第一接合板部11及び第二接合板部12の数が2つずつであるが、これに限ることはない。
【0043】
各単位構造110において、複数の接続板部13は、X軸方向において第一接合板部11と第二接合板部12との間に配置され、第一接合板部11と第二接合板部12とを接続する。これら複数の接続板部13は、X軸方向に間隔をあけて並ぶ。
第一、第三単位構造110A,110Cにおいては、Y軸負方向側(第二方向の一方側)に向く接続板部13の前縁面15が、X軸方向に対してY軸正方向側に傾斜している。同一の単位構造110における複数の接続板部13の前縁面15の傾斜方向は、互いに同じとなっている。また、接続板部13の前縁面15の傾斜方向は、第一単位構造110Aと第三単位構造110Cとの間で互いに逆向きとなっている。なお、第二、第四単位構造110B,110Dにおいては、接続板部13の前縁面が、X軸方向に対して傾斜せずにX軸方向に延びている。
同一の単位構造110においては、Z軸方向(フィン用板材100の板厚方向)から見た複数の接続板部13の形状及び大きさが互いに等しい。なお、接続板部13の形状は、複数の単位構造110の間で互いに異なっている。
【0044】
各単位構造110において、第一接合板部11と接続板部13との第一境界線141、及び、第二接合板部12と接続板部13との第二境界線142は、Y軸方向に対して傾斜せずに延びている。
図8においては、第一境界線141が一点鎖線で示されている。また、第二境界線142が破線で示されている。
【0045】
[複数の単位構造の相対配置]
Y軸方向に隣り合う2つの単位構造110は、X軸方向にずれて位置する。具体的には、Y軸方向に隣り合う2つの単位構造110の第一接合板部11が、X軸方向における第一接合板部11の幅寸法の半分程度ずれて位置する。同様に、Y軸方向に隣り合う2つの単位構造110の第二接合板部12が、X軸方向における第二接合板部12の幅寸法の半分程度ずれて位置する。
第二単位構造110Bは、第一単位構造110Aに対してX軸負方向側にずれて位置する。第三単位構造110Cは、第二単位構造110Bに対してX軸負方向側にずれて位置する。すなわち、3つ(複数)の単位構造110が同一方向にずれて位置している。第四単位構造110Dは、第三単位構造110Cに対してX軸正方向側にずれて位置する。このため、第四単位構造110Dは、X軸方向において第二単位構造110Bに対してずれずに位置する。
【0046】
また、フィン用板材100では、Y軸方向に隣接して並ぶ複数の単位構造110の第一接合板部11が一体に形成されている。すなわち、Y軸方向に隣り合う第一接合板部11同士が一体に接続されている。同様に、Y軸方向に隣接して並ぶ複数の単位構造110の第二接合板部12が一体に形成されている。すなわち、Y軸方向に隣り合う第二接合板部12同士が一体に接続されている。Y軸方向に隣り合う第一接合板部11同士の具体的な接続態様、及び、Y軸方向に隣り合う第二接合板部12同士の具体的な接続態様、は、オフセットフィン3と同様である。
【0047】
フィン用板材100には、孔145及び切れ込み146(スリット)が形成されている。孔145及び切れ込み146は、フィン用板材100に折り曲げ加工を施すだけで本実施形態のオフセットフィン3を製造できるように形成されている。孔145及び切れ込み146は、フィン用板材100をその板厚方向(Z軸方向)に貫通する。
【0048】
孔145は、第一単位構造110Aと第二単位構造110Bとの間、及び、第三単位構造110C及び第四単位構造110Dとの間、のそれぞれにおいてX軸方向に間隔をあけて複数(
図8では3つ)並んでいる。
図8に示すZ軸方向から見た平面視で、各孔145の輪郭は、第一、第二接合板部11,12の前縁面17や後縁面18の一部をなす傾斜した辺を含んでいる。
【0049】
切れ込み146は、第二単位構造110Bと第三単位構造110Cとの間に形成され、X軸方向に間隔をあけて複数(図示例では3つ)並んでいる。各切れ込み146は、X軸方向に対してY軸方向に傾斜して延びている。傾斜した切れ込み146は、第三単位構造110Cの接続板部13の傾斜した前縁面15、及び、第三単位構造110Cの第一、第二接合板部11,12の傾斜した前縁面17(第一傾斜面171)に対応している。
【0050】
[オフセットフィンの製造方法]
次に、上記したフィン用板材100を用いて本実施形態のオフセットフィン3を製造する製造方法の一例について説明する。
オフセットフィン3を製造するためには、フィン用板材100を第一、第二境界線141,142において折り曲げればよい。具体的には、
図8のようにZ軸正方向側から見て、フィン用板材100を第一境界線141において谷折りで折り曲げる。また、フィン用板材100を第二境界線142において山折りで折り曲げる。これにより、
図2~
図4に示したオフセットフィン3を製造することができる。フィン用板材100の折り曲げは、例えばプレス加工によって行われてよい。
【0051】
[作用効果]
以上説明したように、本実施形態のオフセットフィン3及びこれを備える熱交換器1では、第一、第三波形構造10A,10Cの各接続板部13の前縁面15が、Z軸方向に対してY軸正方向側に傾斜している。このため、オフセットフィン3に対して流体をY軸正方向側に流したときには、旋回流D3,D4(
図5参照)が発生する。これにより、接続板部13の主面など流体の流れ方向に沿う面に現れる温度境界層の発達を抑制できる。すなわち、温度境界層の厚さを薄く抑えることができる。その結果として、流体とオフセットフィン3との間における伝熱性能を向上させることができる。
【0052】
また、本実施形態のオフセットフィン3及び熱交換器1では、X軸方向に隣り合う2つの接続板部13の前縁面15が、Z軸方向に対して逆向きに傾斜している。このため、これら2つの接続板部13の間において旋回流D3、D4を複雑に発生させることができる。これにより、流体とオフセットフィン3との間における伝熱性能をさらに向上させることができる。
【0053】
また、本実施形態のオフセットフィン3及び熱交換器1では、Y軸方向から見て、互いに異なる波形構造10の第一接合板部11がX軸方向に隙間なく並ぶ。また、Y軸方向から見て、互いに異なる波形構造10の第二接合板部12がX軸方向に隙間なく並ぶ(
図3参照)。このため、X軸方向の何れの位置においても、Y軸方向において第一接合板部11、及び、第二接合板部12による段差が現れる。このため、オフセットフィン3に対して流体をY軸正方向側に流したときには、第一方向の何れの位置においても、当該段差に起因する乱流が発生する。これにより、第一方向の何れの位置においても、温度境界層の発達が抑制される。したがって、オフセットフィン3の全体にわたって、流体とオフセットフィン3との間における伝熱性能を向上させることができる。
【0054】
また、本実施形態のオフセットフィン3及び熱交換器1では、Y軸方向に連続して並ぶ複数の波形構造10が、X軸負方向側に1/4周期ずつずれている。これにより、Y軸方向から見て、複数の第一接合板部11をX軸方向に隙間なく並べることができ、また、複数の第二接合板部12をX軸方向に隙間なく並べることができる。
【0055】
また、本実施形態のオフセットフィン3及び熱交換器1では、各波形構造10の接続板部13の前縁面15が、X軸方向に対してY軸方向に傾斜する傾斜面171,172を有する。このため、オフセットフィン3に対してY軸正方向側に流体を流したときには、当該傾斜面171,172に起因して旋回流D7,D8(
図5参照)が発生する。これにより、接合板部11,12の主面など流体の流れ方向に沿う面に現れる温度境界層の発達を抑制できる。すなわち、温度境界層の厚さを薄く抑えることができる。その結果として、流体とオフセットフィン3との間における伝熱性能を向上させることができる。
【0056】
また、本実施形態のオフセットフィン3及び熱交換器1では、接合板部11,12と接続板部13との接続部分が丸みを帯びている。このため、当該接続部分の近傍において流体が滞留することを抑制できる。また、当該接続部分が、接続板部13の前縁面15や接合板部11,12の前縁面17に起因して発生する旋回流D3,D4,D7,D8を阻害することを抑制できる。これにより、接続部分の近傍において、流体とオフセットフィン3との間における伝熱性能が低下することを抑制又は防止できる。
【0057】
また、本実施形態のオフセットフィン3及びこれを備える熱交換器1では、各波形構造10の接続板部13がY軸方向に対してX軸方向に傾斜せずにY軸方向に延びている。このため、オフセットフィン3に対して流体をY軸正方向側に流したときに、接続板部13によって流体の流れ方向が変化することを効果的に抑制できる。これにより、当該流体の圧力損失を小さく抑えることができる。
【0058】
また、本実施形態のフィン用板材100では、同一の単位構造110において、第一接合板部11と接続板部13との第一境界線141、及び、第二接合板部12と接続板部13との第二境界線142は、それぞれY軸方向に対して傾斜せずに延びている。すなわち、第一、第二境界線141,142がY軸方向に対して傾斜していない。これにより、本実施形態のオフセットフィン3の製造方法において、フィン用板材100の向き(角度)を変化させることなく、フィン用板材100を第一、第二境界線141,142において折り曲げることができる。これにより、フィン用板材100の向きの変化に基づいて製造誤差が生じることを抑制又は防止できる。
【0059】
また、本実施形態のフィン用板材100には、孔145及び切れ込み146が形成されている。これにより、所定の単位構造110の第一、第二境界線141,142においてフィン用板材100を折り曲げるときに、当該折り曲げが隣り合う別の単位構造110に影響することを抑制又は防止できる。
【0060】
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこれらの実施形態によって限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0061】
本開示において、Y軸方向から見て、複数の第一接合板部11をX軸方向に隙間なく並べたり、複数の第二接合板部12をX軸方向に隙間なく並べたりするように、複数の波形構造10をX軸方向にずらして配置する具体的な手法は、上記実施形態で示した手法に限られない。
【0062】
本開示において、各波形構造10の第一、第二接合板部11,12の前縁面17は、平面視V字状に形成されることに限らず、少なくともX軸方向に対してY軸正方向側に傾斜する1つの傾斜面を有していればよい。また、当該傾斜面は直線状に延びることに限らず、例えば湾曲するように延びてもよい。
【0063】
<付記>
上述の実施形態に記載のオフセットフィン3、熱交換器1、フィン用板材100、及び、オフセットフィン3の製造方法は、例えば以下のように把握される。
【0064】
(1)第1の態様に係るオフセットフィン3は、互いに板厚方向にずれて位置すると共に前記板厚方向に直交する第一方向に交互に並ぶ第一接合板部11及び第二接合板部12、並びに、前記板厚方向に延びて前記第一方向に隣り合う前記第一接合板部11と前記第二接合板部12とを接続し、前記第一方向に間隔をあけて並ぶ複数の接続板部13、を有することで、周期的に前記板厚方向に蛇行しながら前記第一方向に延びる波形構造10を複数備え、複数の前記波形構造10は、前記板厚方向及び前記第一方向に直交する第二方向に並び、前記第二方向に隣り合う2つの前記波形構造10の前記接続板部13は、互いに前記第一方向にずれて位置し、少なくとも1つの前記波形構造10A,10Cにおいては、前記接続板部13のうち前記第二方向の一方側に向く前縁面15が、前記板厚方向に対して前記第二方向の他方側に傾斜しているオフセットフィン3である。
【0065】
上記構成のオフセットフィン3では、接続板部13のうち第二方向の一方側に向く前縁面15が傾斜している。このため、オフセットフィン3に対して第二方向の他方側に流体を流したときに、接続板部13の前縁面15に沿って流体が流れることで旋回流(二次流れ)が発生する。これにより、接続板部13の主面など流体の流れ方向に沿う面に現れる温度境界層の発達を抑制できる。すなわち、温度境界層の厚さを薄く抑えることができる。その結果として、流体とオフセットフィン3との間における伝熱性能を向上させることができる。
【0066】
(2)第2の態様に係るオフセットフィン3は、同一の前記波形構造10A,10Cにおいて前記第一方向に隣り合う2つの前記接続板部13の前記前縁面15は、前記板厚方向に対して互いに逆向きに傾斜している(1)に記載のオフセットフィン3である。
【0067】
上記構成のオフセットフィン3では、第一方向に隣り合う2つの接続板部13の前縁面15においては、流体が接合板部11,12の板厚方向において互いに逆向きに流れる。これにより、これら2つの接続板部13の間において旋回流を複雑に発生させることができる。その結果として、流体とオフセットフィン3との間における伝熱性能をさらに向上させることができる。
【0068】
(3)第3の態様に係るオフセットフィン3は、前記第一接合板部11と前記接続板部13との接続部分が、前記第一接合板部11と前記接続板部13とを滑らかに接続するように丸みを帯びており、前記第二接合板部12と前記接続板部13との接続部分が、前記第二接合板部12と前記接続板部13とを滑らかに接続するように丸みを帯びている(1)又は(2)に記載のオフセットフィン3である。
【0069】
上記構成のオフセットフィン3では、第一、第二接合板部11,12と接続板部13との接続部分が丸みを帯びていることで、当該接続部分の近傍において流体が滞留することを抑制できる。また、当該接続部分が、接続板部13の前縁面15などに起因して発生する旋回流を阻害することを抑制できる。これにより、当該接続部分の近傍において、流体とオフセットフィン3との間における伝熱性能が低下することを抑制又は防止できる。
【0070】
(4)第4の態様に係るオフセットフィン3は、前記第二方向から見て、複数の前記第一接合板部11が前記第一方向に隙間なく並ぶように、かつ、複数の前記第二接合板部12が前記第一方向に隙間なく並ぶように、複数の前記波形構造10が前記第一方向にずれて位置する(1)から(3)のいずれか一項に記載のオフセットフィン3である。
【0071】
上記構成のオフセットフィン3では、第一方向の何れの位置においても、第二方向において第一接合板部11及び第二接合板部12による段差が現れる。このため、オフセットフィン3に対して第二方向に流体を流したときには、第一方向の何れの位置においても、当該段差に起因する乱流が発生する。これにより、第一方向の何れの位置においても、温度境界層の発達が抑制される。したがって、オフセットフィン3の全体にわたって、流体とオフセットフィン3との間における伝熱性能を向上させることができる。
【0072】
(5)第5の態様に係るオフセットフィン3は、同一の前記波形構造10において前記第一方向に順番に並ぶ前記接続板部13、前記第一接合板部11、前記接続板部13、前記第二接合板部12を1周期として、前記第二方向に連続する複数の前記波形構造10が、前記第一方向の一方側に1/4周期ずつずれている(4)に記載のオフセットフィン3である。
【0073】
上記構成のオフセットフィン3では、第二方向から見て、複数の第一接合板部11を第一方向に隙間なく並べることができ、また、複数の第二接合板部12を第一方向に隙間なく並べることができる。
【0074】
(6)第6の態様に係るオフセットフィン3は、前記第一接合板部11及び前記第二接合板部12のうち前記第二方向の一方側に向く前縁面17が、前記第一方向に対して前記第二方向の他方側に傾斜する傾斜面171,172を有する(1)から(5)のいずれか一項に記載のオフセットフィン3である。
【0075】
上記構成のオフセットフィン3では、オフセットフィン3に対して第二方向の他方側に流体を流したときに、第一、第二接合板部11,12の前縁面17の傾斜面171,172に沿って流体が流れることで旋回流(二次流れ)が発生する。これにより、第一、第二接合板部11,12の主面など流体の流れ方向に沿う面に現れる温度境界層の発達を抑制できる。すなわち、温度境界層の厚さを薄く抑えることができる。その結果として、流体とオフセットフィン3との間における伝熱性能を向上させることができる。
【0076】
(7)第7の態様に係る熱交換器1は、(1)から(6)のいずれか一項に記載のオフセットフィン3と、前記板厚方向において前記オフセットフィン3を間に配置する一対のプレート2と、を備え、前記一対のプレート2のうち第一プレート2Aに、前記第一接合板部11が重ねて接合され、前記一対のプレート2のうち第二プレート2Bに、前記第二接合板部12が重ねて接合される熱交換器1である。
【0077】
上記構成の熱交換器1では、一対のプレート2の間において第二方向の他方側に流体を流したときに、オフセットフィン3の接続板部13の前縁面15に起因して旋回流が発生するため、第一、第二プレート2A,2Bの主面など流体の流れ方向に沿う面に現れる温度境界層の発達を抑制できる。これにより、流体とオフセットフィン3との間における伝熱性能を向上させることができる。
【0078】
(8)第8の態様に係るフィン用板材100は、単一の平面を有するフィン用板材100であって、前記平面に沿う第一方向に間隔をあけて交互に並ぶ第一接合板部11及び第二接合板部12、並びに、前記第一方向において前記第一接合板部11と前記第二接合板部12との間に配置され、前記第一接合板部11と前記第二接合板部12とを接続する複数の接続板部13、を有する単位構造110を複数備え、複数の前記単位構造110は、前記平面に沿って前記第一方向に直交する第二方向に並び、前記第二方向に隣り合う2つの前記単位構造110は、互いに前記第一方向にずれて位置し、少なくとも1つの前記単位構造110においては、前記接続板部13のうち前記第二方向の一方側に向く前縁面15が、前記第一方向に対して前記第二方向の他方側に傾斜し、同一の前記単位構造110において、前記第一接合板部11と前記接続板部13との第一境界線141、及び、前記第二接合板部12と前記接続板部13との第二境界線142は、前記第二方向に対して傾斜せずに延びているフィン用板材100である。
【0079】
上記構成のフィン用板材100を用い、第一接合板部11と接続板部13との第一境界線141、及び、第二接合板部12と接続板部13との第二境界線142において折り曲げることで、前述のオフセットフィン3を製造することができる。
また、第一、第二境界線141,142が第二方向に対して傾斜していないため、フィン用板材100の向き(角度)を変化させることなく、フィン用板材100を第一、第二境界線141,142において折り曲げることができる。これにより、フィン用板材100の向きの変化に基づいて製造誤差が生じることを抑制又は防止できる。
【0080】
(9)第9の態様に係るオフセットフィン3の製造方法は、(8)に記載のフィン用板材100を用いてオフセットフィン3を製造するオフセットフィン3の製造方法であって、前記フィン用板材100を前記第一境界線141において谷折りで折り曲げ、かつ、前記フィン用板材100を前記第二境界線142において山折りで折り曲げるオフセットフィン3の製造方法である。
【0081】
上記のオフセットフィン3の製造方法によれば、前述のオフセットフィン3を製造することができる。
また、第一、第二境界線141,142が第二方向に対して傾斜していないため、フィン用板材100の向き(角度)を変化させることなく、フィン用板材100を第一、第二境界線141,142において折り曲げることができる。これにより、フィン用板材100の向きの変化に基づいて製造誤差が生じることを抑制又は防止できる。
【符号の説明】
【0082】
1 熱交換器
2 プレート
2A 第一プレート
2B 第二プレート
3 オフセットフィン
10 波形構造
10A 第一波形構造
10B 第二波形構造
10C 第三波形構造
10D 第四波形構造
11 第一接合板部
12 第二接合板部
13 接続板部
15 接続板部13の前縁面
17 接合板部11,12の前縁面
100 フィン用板材
110 単位構造
110A 第一単位構造
110B 第二単位構造
110C 第三単位構造
110D 第四単位構造
141 第一境界線
142 第二境界線
171 第一傾斜面
172 第二傾斜面