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特開2024-92396紙送りロール用ウレタン発泡体および紙送りロール
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  • 特開-紙送りロール用ウレタン発泡体および紙送りロール 図1
  • 特開-紙送りロール用ウレタン発泡体および紙送りロール 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092396
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】紙送りロール用ウレタン発泡体および紙送りロール
(51)【国際特許分類】
   B65H 5/06 20060101AFI20240701BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20240701BHJP
   F16C 13/00 20060101ALI20240701BHJP
   C08G 18/40 20060101ALI20240701BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20240701BHJP
【FI】
B65H5/06 C
C08G18/00 F
F16C13/00 B
F16C13/00 A
C08G18/40 018
C08G101:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208297
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 右弥
【テーマコード(参考)】
3F049
3J103
4J034
【Fターム(参考)】
3F049AA03
3F049CA11
3F049CA12
3F049CA15
3F049DA12
3F049LB01
3J103AA02
3J103AA13
3J103AA23
3J103AA32
3J103AA37
3J103AA85
3J103BA38
3J103BA41
3J103CA03
3J103EA02
3J103FA04
3J103GA02
3J103GA33
3J103HA03
3J103HA12
3J103HA48
3J103HA51
4J034DB04
4J034DB05
4J034DB07
4J034DF02
4J034DF12
4J034DG02
4J034DG06
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC12
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034NA09
4J034QC01
4J034RA15
4J034RA19
(57)【要約】
【課題】異音の発生を抑制し得る紙送りロール用ウレタン発泡体を提供する。
【解決手段】JIS K7244-4に準じた動的粘弾性測定から得られる25℃における周波数1Hz以上10Hz以下での損失正接(tanδ)が0.6以下である、紙送りロール用ウレタン発泡体。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
JIS K7244-4に準じた動的粘弾性測定から得られる25℃における周波数1Hz以上10Hz以下での損失正接(tanδ)が0.6以下である、
紙送りロール用ウレタン発泡体。
【請求項2】
ポリテトラメチレンエーテルグリコールと、
ポリカプロラクトントリオールと、
を原料に含む、
請求項1に記載の紙送りロール用ウレタン発泡体。
【請求項3】
シリコーン整泡剤を原料に含まない、
請求項1に記載の紙送りロール用ウレタン発泡体。
【請求項4】
ゼオライトを原料に含む、
請求項1に記載の紙送りロール用ウレタン発泡体。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の紙送りロール用ウレタン発泡体を備える紙送りロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、紙送りロール用ウレタン発泡体および紙送りロールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示される紙送りロールは、紙送りロール用ウレタン組成物を用いてなる。紙送りロール用ウレタン組成物は、ポリエーテルポリオールと、イソシアネートと、を含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-68515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の紙送りロールでは、紙を搬送する際にいわゆる音鳴きという異音が発生することが問題視されていた。
本開示は、異音の発生を抑制し得る紙送りロール用ウレタン発泡体および紙送りロールを提供することを目的とする。本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
〔1〕JIS K7244-4に準じた動的粘弾性測定から得られる25℃における周波数1Hz以上10Hz以下での損失正接(tanδ)が0.6以下である、
紙送りロール用ウレタン発泡体。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、異音の発生を抑制し得る紙送りロール用ウレタン発泡体および紙送りロールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態に係る紙送りロールを模式的に示す斜視図である。
図2】給紙用ロールと分離用ロールを用いて紙送りする状態を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ここで、本開示の望ましい例を示す。
〔2〕ポリテトラメチレンエーテルグリコールと、
ポリカプロラクトントリオールと、
を原料に含む、
〔1〕に記載の紙送りロール用ウレタン発泡体。
〔3〕シリコーン整泡剤を原料に含まない、
〔1〕又は〔2〕に記載の紙送りロール用ウレタン発泡体。
〔4〕ゼオライトを原料に含む、
〔1〕から〔3〕のいずれかに記載の紙送りロール用ウレタン発泡体。
〔5〕〔1〕から〔4〕のいずれかに記載の紙送りロール用ウレタン発泡体を備える紙送りロール。
【0009】
以下、本開示を詳しく説明する。
1.紙送りロール10
図1に示す紙送りロール10は、本開示の紙送りロールの一実施形態である。紙送りロール10は、例えば、紙送りロール用ウレタン発泡体20(以下、単に発泡体20ともいう)と、シャフト(軸部材)30と、を備えている。紙送りロール10に用いる発泡体20は、例えば円筒形状である。シャフト30は、発泡体20に挿入されている。紙送りロール10は、図2に示すような給紙用ロール(送り用ロール)40および分離用ロール(リタードロール)50に用いることができ、分離用ロール50に用いることが好ましい。
【0010】
2.紙送りロール用ウレタン発泡体20
紙送りロール用ウレタン発泡体20は、ポリオールと、イソシアネートと、を含む原料(組成物)から得られる。原料は、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)と、ポリカプロラクトントリオールと、を含むことが好ましい。原料は、シリコーン整泡剤を含まないことが好ましい。シリコーン整泡剤としては、ポリシロキサン/ポリオキシアルキレン(AB)-タイプブロックコポリマーが挙げられる。原料は、ゼオライトを含むことが好ましい。
【0011】
[ポリオール]
ポリオールは、特に限定されない。ポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリマーポリオール、ポリエステルポリオール等を用いることができる。これらの中でも、ポリオールは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールを含有することが好ましい。
【0012】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、テトラヒドロフラン、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等の環状エーテルを開環、それぞれを付加重合させて得られるポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等、及び、これらのコポリエーテル等が挙げられる。また、グリセリンやトリメチロールエタン等の多価アルコールを用い、上記の環状エーテルを重合させて得ることもできる。ポリエーテルポリオールとしては、ポリテトラメチレンエーテルグリコールであることが好ましい。
【0013】
ポリエーテルポリオールの数平均分子量は、1000以上10000以下が好ましく、1200以上5000以下がより好ましく、1500以上2500以下がさらに好ましい。ポリエーテルポリオールの官能基数は、2以上5以下が好ましく、2以上4以下がより好ましく、2がさらに好ましい。ポリエーテルポリオールの含有量は、ポリオール全体を100質量部とした場合に、80質量部以上110質量部以下が好ましく、85質量部以上100質量部以下がより好ましく、90質量部以上95質量部以下がさらに好ましい。
【0014】
ポリマーポリオールは、特に限定されない。ポリマーポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール(ベースポリオール)に、スチレン、アクリロニトリル、メラミン等のビニルモノマーを重合したポリマーポリオールが挙げられる。
【0015】
ポリエステルポリオールは、特に限定されない。ポリエステルポリオールとして、ポリカプロラクトン系ポリエステルポリオール、アジペート系ポリエステルポリオール、ポリカーボネート系ポリオール等を用いることができる。
【0016】
ポリカプロラクトン系ポリエステルポリオールは、ラクトン類を開環付加重合させて得たポリカプロラクトンポリオールである。ラクトン類としては、例えば、ε-カプロラクトン、δ-バレロラクトン、γ-ブチロラクトン等が挙げられる。
【0017】
ポリカプロラクトントリオールとしては、例えば-[CO(CHn1O]n2-H(ここで、n1は1以上10以下(好ましくは3以上6以下、より好ましくは5)を表し、n2は1以上50以下(好ましくは1以上28以下)を表す。)で表される、末端にヒドロキシル基を有する基を3つ有する化合物が挙げられる。中でも、下記構造式(1)で表される化合物が好ましい。
【0018】
【化1】
【0019】
構造式(1)中、Rはアルキレン基から水素原子を1つ除いた3価の基、又はアルキレン基から水素原子を1つ除いた3価の基と、アルキレン基、-O-、及び-C(=O)-から選択される1つ以上の基とを組み合わせてなる3価の基を表す。l、m、及びnはそれぞれ独立に1以上28以下の整数を表し、l+m+nは3以上30以下である。
【0020】
構造式(1)中、Rがアルキレン基から水素原子を1つ除いた3価の基を表す場合、その基は直鎖状であっても分枝鎖状であってもよい。このアルキレン基から水素原子を1つ除いた3価の基としては、例えば炭素数1以上10以下のアルキレン基が好ましく、炭素数1以上6以下のアルキレン基がより好ましい。
また上記Rは、上記に示すアルキレン基から水素原子を1つ除いた3価の基と、アルキレン基(例えば炭素数1以上10以下のアルキレン基)、-O-、及び-C(=O)-から選択される1つ以上の基と、を組み合わせてなる3価の基であってもよい。
Rで表される3価の基としては、炭素数1以上10以下(好ましくは炭素数3以上6以下)の直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキレン基から水素原子を1つ除いた3価の基が好ましい。これらの中でも、*-CH-CH(-*)-CH-*、CH-C(-*)(-*)-(CH-*、CHCHC(-*)(-*)(CH-*で表される3価の基がより好ましい。なお、上記に列挙した3価の基は、それぞれ「*」部分で結合する。
l、m、及びnは、それぞれ独立に1以上28以下の整数を表し、2以上10以下であることが好ましく、2以上5以下であることがより好ましい。l+m+nは3以上30以下であり、6以上25以下であることが好ましく、6以上20以下であることがより好ましい。
【0021】
ポリエステルポリオールの数平均分子量は、200以上5000以下が好ましく、300以上3000以下がより好ましく、500以上1000以下がさらに好ましい。ポリエステルポリオールの官能基数は、2以上5以下が好ましく、2以上4以下がより好ましく、3がさらに好ましい。ポリエステルポリオールの含有量は、ポリオール全体を100質量部とした場合に、2.00質量部以上20.00質量部以下が好ましく、3.00質量部以上15.00質量部以下がより好ましく、5.00質量部以上10.00質量部以下がさらに好ましい。
【0022】
[イソシアネート]
イソシアネートは、特に限定されない。イソシアネートとしては、MDI系イソシアネート(ジフェニルメタンジイソシアネート系イソシアネート)が好ましい。MDI系イソシアネートとして、具体的には、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,2’-MDI)、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’-MDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’-MDI)等のモノメリックMDI、ジフェニルメタンジイソシアネートとポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートの混合物であるポリメリックMDI、これらのウレタン変性体、カルボジイミド変性体、ウレア変性体、アロファネート変性体、ビウレット変性体、イソシアヌレート変性体等、さらにこれらのイソシアネートとポリオール類を反応させて得られるMDIプレポリマー等を挙げることができる。MDI系イソシアネートは、複数種類を併用してもよい。これらの中でも、イソシアネートは、モノメリックMDIを含むことが好ましい。
【0023】
イソシアネートインデックス(INDEX)は80以上150以下が好ましく、90以上130以下がより好ましく、100以上110以下がさらに好ましい。イソシアネートインデックスは、イソシアネートにおけるイソシアネート基のモル数をポリオールの水酸基や発泡剤としての水などの活性水素基の合計モル数で割った値に100を掛けた値であり、[イソシアネートのNCO当量/活性水素当量×100]で計算される。
【0024】
イソシアネートにモノメリックMDIが含まれる場合、イソシアネートの含有量は、ポリオール全体を100質量部とした場合に、5.00質量部以上25.00質量部以下が好ましく、10.00質量部以上20.00質量部以下がより好ましく、15.00質量部以上25.00質量部以下がさらに好ましい。
【0025】
[その他の成分]
原料は、触媒を含んでいてもよい。触媒として、金属触媒(有機金属触媒)を用いることができる。金属触媒として、従来公知の金属触媒を特に限定なく採用できる。
金属触媒として、例えば、Fe(鉄)、Sn(錫)、Pb(鉛)、Bi(ビスマス)、Ni(ニッケル)、Co(コバルト)、Zr(ジルコニウム)、Cu(銅)、Zn(亜鉛)等の金属塩、有機酸金属塩等が用いることができる。より具体的には、下記の金属触媒を用いることができる。
Fe触媒:鉄(II)アセチルアセトナート等
Sn触媒:オクチル酸スズ(II)(2-エチルヘキサン酸スズ、スタナスジオクトエート)、酢酸スズ(II)、スタナスジアセテート、オクタン酸スズ(II)、スズスタナスジオレエート、ネオデカン酸スズ(II)スタナスジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジクロライド、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチルスズジマレエート、ジオクチルスズジアセテート等
Pb触媒:オクタン酸鉛、ナフテン酸鉛等
Bi触媒:オクチル酸ビスマス、ナフテン酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス、ロジン酸ビスマス等
Zr触媒:ジルコニウムアセチルアセトナート等
Ni触媒:ニッケルアセチルアセトナート、オクチル酸ニッケル、ナフテン酸ニッケル等
Co触媒:コバルトアセチルアセトナート、オクチル酸コバルト、ナフテン酸コバルト等
【0026】
原料は、乾燥剤を含んでいてもよい。乾燥剤としては、金属化合物を担持させた常温固体の無機多孔質体が用いられる。本開示における担持とは、金属化合物が物理的または化学的な吸着により、無機多孔質体に保持されている状態をいう。無機多孔質体としては、ゼオライト、セピオライト、酸化アルミニウム、シリカ等からなり、物理的な吸着作用を有する。乾燥剤の含有量は、ポリオール全体を100質量部とした場合に、0.01質量部以上0.5質量部以下が好ましく、0.05質量部以上0.3質量部以下がより好ましく、0.08質量部以上0.2質量部以下がさらに好ましい。
【0027】
原料は、顔料を含んでいてもよい。顔料としては、カーボンブラック(カーボン顔料)とポリマーポリオールの混合物などが挙げられる。混合物として、例えば、カーボンブラックが5%以上30%以下含まれることが好ましい。
【0028】
3.紙送りロール用ウレタン発泡体20の物性
(3.1)損失正接(tanδ)
紙送りロール用ウレタン発泡体20において、JIS K7244-4に準じた動的粘弾性測定から得られる25℃における周波数1Hz以上10Hz以下での損失正接(tanδ)は、0.6以下であり、0.5以下が好ましく、0.4以下がより好ましい。紙送りロール用ウレタン発泡体20において、JIS K7244-4に準じた動的粘弾性測定から得られる25℃における周波数1Hz以上10Hz以下での損失正接(tanδ)は、0以上が好ましく、0.005以上がより好ましく、0.01以上がさらに好ましい。したがって、紙送りロール用ウレタン発泡体20において、JIS K7244-4に準じた動的粘弾性測定から得られる25℃における周波数1Hz以上10Hz以下での損失正接(tanδ)は、0.6以下であり、0以上0.6以下が好ましく、0.005以上0.5以下がより好ましく、0.01以上0.4以下がさらに好ましい。なお、損失正接(tanδ)は、貯蔵弾性率M′と損失弾性率M″の比(M″/M′)である。損失正接(tanδ)は、紙送りロール用ウレタン発泡体20の形状を厚さ3mm×5mm×20mmとし、測定器として日立ハイテクサイエンス製DMA7100を用いて測定できる。
【0029】
(3.2)見かけ密度
紙送りロール用ウレタン発泡体20の見かけ密度(JIS K7222:2005準拠)は、0.2g/cm以上0.75g/cm以下が好ましく、0.49g/cm以上0.72g/cm以下がより好ましく、0.60g/cm以上0.70g/cm以下がより好ましい。
【0030】
(3.3)硬度
紙送りロール用ウレタン発泡体20のアスカーC硬度は、20以上80以下が好ましく、30以上75以下がより好ましく、50以上70以下がさらに好ましい。なお、アスカーC硬度は、JIS K7312に準じて、0℃において荷重500gfで測定することができる。
【0031】
(3.4)摩擦係数
紙送りロール用ウレタン発泡体20の初期(通紙開始前)の摩擦係数は、0.8以上1.7以下が好ましい。紙送りロール用ウレタン発泡体20の30万枚通紙後の摩擦係数は、0.8以上が好ましい。摩擦係数は、以下のようにして測定できる。紙送りロール用ウレタン発泡体20の形状は、外径が20mm、内径が13mm、軸方向の長さが38mmのチューブ状とする。紙送りロール用ウレタン発泡体20に、径が14mmのシャフト30を挿入する。測定器は、SHIMPO社製FGC-1+FGS-50V-Hとする。ロール周方向側に「用紙:Vitality、用紙幅:20mm、引取り速度:200mm/min、荷重:20gf」の条件で力をかけたとき、プッシュプルゲージ数値から摩擦係数を計算する。
【0032】
(3.5)摩耗率(外径変化率)
紙送りロール用ウレタン発泡体20の30万枚通紙後の摩耗率(外径変化率)は、50%以下が好ましい。摩耗率は、以下のようにして測定できる。紙送りロール用ウレタン発泡体20の形状は、外径が20mm、内径が13mm、軸方向の長さが38mmのチューブ状とする。紙送りロール用ウレタン発泡体20に、径が14mmのシャフト30を挿入する。測定器は、レーザースキャンマイクロメータ(Mitutiyo製LSM-6200+LSM-506S)とする。所定枚数の紙(GR100)を、紙送りロール用ウレタン発泡体に接触させながら通過(通紙)する。所定枚数の通過(通紙)前後における外径の変化(差)から摩耗率(外径変化率)を測定する。
【0033】
4.紙送りロール用ウレタン発泡体20の製造方法
紙送りロール用ウレタン発泡体20の製造方法は、特に限定されない。発泡体20の製造方法は、メカニカルフロス法を用いることが好ましい。メカニカルフロス法を用いた製造工程の一例を、以下に示す。
【0034】
まず、ポリオールおよびイソシアネート等を、攪拌混合して液状組成物を調製する。例えば、ポリオールおよびイソシアネート等を、予備混合機内において、不活性ガスの存在下で攪拌ロータの回転により攪拌混合する。得られた液状組成物と、不活性ガスとを攪拌混合機に供給し、攪拌混合機内において、不活性ガスの雰囲気下で液状組成物を機械的攪拌する。これにより、液状組成物中に不活性ガスが分散されてなるフロス状原料を調製する。このフロス状原料を攪拌混合機から吐出させて金型に注入し、金型内で硬化させる。これにより、紙送りロール用ウレタン発泡体20が得られる。
【0035】
5.本実施形態の効果
本開示の紙送りロール用ウレタン発泡体20は、紙送りロール10に用いて紙を搬送する際に、いわゆる音鳴きという異音の発生を抑制できる。また、本開示の紙送りロール用ウレタン発泡体20は、紙送りロール10に用いて紙を搬送する際に、空回りしにくく、良好に紙送りできる。
【0036】
なお、明細書に記載の種々の数値範囲は、それぞれそれらの上限値と下限値を任意に組み合わせることができ、それら全ての組み合わせが好ましい数値範囲として本明細書に記載されているものとする。
【実施例0037】
次に、実施例及び比較例を挙げて上記実施形態を更に具体的に説明する。
1.紙送りロール用ウレタン発泡体20の製造
表1の割合で配合した原料(組成物)を調製した。表1において、配合割合はポリオール全体を100質量部とした場合の配合割合(質量部)を表す。
各原料の詳細は以下の通りである。
ポリオール1:ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)、官能基数2(三菱ケミカル社製、品番:PTMG2000)
ポリオール2:カプロラクトン誘導体を用いたポリカプロラクトントリオール、官能基数3(ダイセル社製、品番:プラクセル305)
ポリオール3:カプロラクトン誘導体を用いたポリカプロラクトンジオール、官能基数2(ダイセル社製、品番:プラクセル205)
ポリオール4:ポリカーボネートジオール(東ソー社製、品番:ニッポラン982R)
ポリオール5:ポリマーポリオール(ポリスチレン:10.1%、アセトニトリル:10.9%)、官能基数3(三井化学社製、品番:POP34-28)
ポリオール6:二塩基酸系ポリエステルポリオール(ADEKA社製、品番:V14-90)
ポリオール7:ポリエーテルポリオール、官能基数2(三井化学社製、品番:AN-002)
ポリオール8:ポリマーポリオール、官能基数2(三井化学社製、品番:AN-230)
ポリオール9:ポリエーテルポリオール、官能基数3-4(AGC社製、品番:EXL830)
ポリオール10:ポリ[3-メチル-1,5-ペンタンジオール]-alt-(アジピン酸)、官能基数2(クラレ社製、品番:P-2010)
ポリオール11:1,4-ブタンジオール、官能基数2(三菱ケミカル社製、品番:1.4BD)
触媒1:ニッケルアセチルアセトナート(モメンティブ社製、品番:Lc5615)
触媒2:1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7の2-エチルヘキサン酸塩(サンアプロ社製、品番:SA102)
触媒3:鉄(II)アセチルアセトナート(ロジャースコーポレーション社製、品番:LT-CAT)
乾燥剤:ゼオライト(ユニオン昭和社製、品番:モレキュラーシーブMS-3A)
ゴム:NBRラテックス(日本ゼオン社製、品番:ニッポール1312)
整泡剤:ポリアルキレンオキシドメチルシロキサンコポリマー(モメンティブ社製、品番:L5614)
着色剤1:ポリマーポリオール:85%、カーボンブラック:15%(山陽色素社製、品番:UT4053)
着色剤2:ポリマーポリオール:85%、カーボンブラック:15%(山陽色素社製、品番:UT-BLACK4921)
イソシアネート:MDI(モノメリック)(東ソー社製、品番:MTL-S)
【0038】
上記の原料を用いて、上記実施形態に記載の製造方法(メカニカルフロス法)と同様にして、紙送りロール用ウレタン発泡体を得た。A液とB液とC液の混合液と、D液とを攪拌混合して液状組成物を調製した。得られた液状組成物を不活性ガスの雰囲気下で機械的攪拌してフロス状原料を調製した。フロス状原料を金型に注入し、金型内で硬化させる。これにより、紙送りロール用ウレタン発泡体を得た。紙送りロール用ウレタン発泡体は、紙送りロール用のチューブ状のものと、後述する損失正接(tanδ)測定用の板状のものを作製した。チューブ状の紙送りロール用ウレタン発泡体とシャフトとを用いて紙送りロール(図1参照)を作製した。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
2.評価方法
(1)見かけ密度
実施例および比較例における紙送りロール用ウレタン発泡体の見かけ密度を、JIS K7222に準じて測定した。測定結果を、表2に示す。
【0042】
(2)硬度
実施例および比較例における紙送りロール用ウレタン発泡体のアスカーC硬度を、JIS K7312に準じて測定した。測定結果を、表2に示す。
【0043】
(3)摩擦係数
実施例および比較例における紙送りロール用ウレタン発泡体をリタードローラに用いたときの摩擦係数を、初期(通紙前)、5万枚通紙後、15万枚通紙後、30万枚通紙後の状態でそれぞれ測定した。紙送りロール用ウレタン発泡体の形状は、外径が20mm、内径が13mm、軸方向の長さが38mmのチューブ状であった。紙送りロール用ウレタン発泡体に、径が14mmのシャフトを挿入した。測定器は、SHIMPO社製FGC-1+FGS-50V-Hであった。ロール周方向側に「用紙:Vitality、用紙幅:20mm、引取り速度:200mm/min、荷重:20gf」の条件で力をかけたとき、プッシュプルゲージ数値から摩擦係数を計算した。測定結果を、表2に示す。
【0044】
(4)摩耗率(外径変化率)
実施例および比較例における紙送りロール用ウレタン発泡体をリタードローラに用いたときの摩耗率(外径変化率)を、5万枚通紙後、15万枚通紙後、30万枚通紙後の状態でそれぞれ測定した。紙送りロール用ウレタン発泡体の形状は、外径が20mm、内径が13mm、軸方向の長さが38mmのチューブ状であった。紙送りロール用ウレタン発泡体に、径が14mmのシャフトを挿入した。測定器は、レーザースキャンマイクロメータ(Mitutiyo製LSM-6200+LSM-506S)であった。所定枚数の紙(GR100)を、紙送りロール用ウレタン発泡体に接触させながら通過(通紙)させた。所定枚数の通過(通紙)前後における外径の変化(差)から摩耗率(外径変化率)を測った。測定結果を、表2に示す。
【0045】
(5)損失正接(tanδ)
実施例および比較例における紙送りロール用ウレタン発泡体の損失正接(tanδ)を、JIS K7244-4に準じて測定した。損失正接(tanδ)は、25℃の環境下において、0.01Hz、0.1Hz、1Hz、10Hz、100Hzの各周波数で測定した。紙送りロール用ウレタン発泡体の形状は、厚さ3mm×5mm×20mmであった。測定器は、日立ハイテクサイエンス製DMA7100であった。測定結果を、表2に示す。
【0046】
(6)異音
実施例および比較例における紙送りロールの紙送り時の異音(音鳴き)を評価した。紙送りロール用ウレタン発泡体の形状は、外径が20mmで、軸方向の長さが38mmであった。紙送りロールを用い、460mm/secの速さで紙を移動させたときの異音の発生を官能評価した。紙送りロールの回転周波数は、7.3Hz程度であった。
異音の評価は、以下の基準とし、表2に示す。
「A」:異音(音鳴き)が聞こえなかった
「B」:異音(音鳴き)が聞こえた
【0047】
3.評価結果
表2に示すように、実施例1,2では、異音の評価が「A」であり、異音が聞こえなかった。これは、表1に示すように、実施例1,2では周波数1Hz以上10Hz以下での損失正接(tanδ)が比較例1-3に比べて小さいことに起因すると推測される。
【0048】
表2に示すように、実施例1では、実施例2および比較例1-3に比べて、5万枚通紙後、15万枚通紙後、30万枚通紙後の摩擦係数が、大きかった。また、実施例1では、実施例2および比較例1-3に比べて、5万枚通紙後、15万枚通紙後、30万枚通紙後の摩耗率(外径変化率)が、小さかった。このように、実施例1では、通紙枚数に応じた摩擦係数および摩耗率の変化が小さくなり、紙送り時に空回りしにくい構成となった。
【0049】
4.実施例の効果
以上の実施例1の紙送りロール用ウレタン発泡体では、異音の発生が生じにくく、紙送り時に空回りしにくい構成にできた。
【0050】
本開示は上記で詳述した実施形態に限定されず、様々な変形又は変更が可能である。
【符号の説明】
【0051】
10…紙送りロール
20…紙送りロール用ウレタン発泡体
30…シャフト(軸部材)
40…給紙用ロール(送り用ロール)
50…分離用ロール(リタードロール)
図1
図2