(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092404
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】リアクトル、コンバータ、および電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H01F 37/00 20060101AFI20240701BHJP
H01F 27/24 20060101ALI20240701BHJP
H01F 27/255 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
H01F37/00 A
H01F37/00 M
H01F27/24 K
H01F27/24 H
H01F37/00 R
H01F27/255
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208307
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116366
【弁理士】
【氏名又は名称】二島 英明
(72)【発明者】
【氏名】村下 将也
(57)【要約】
【課題】コイルの損失を低減することができるリアクトルを提供する。
【解決手段】コイルと磁性コアとを備え、磁性コアは、第一コアと第二コアとを備え、第一コアは、第一エンドコア部と、サイドコア部とを含み、第二コアは、第二エンドコア部を含み、第一コアおよび第二コアの少なくとも一つは、ミドルコア部の少なくとも一部を含み、ミドルコア部はコイル内に配置され、サイドコア部は、コイルを挟むようにミドルコア部と並列に配置され、第一コアの比透磁率は第二コアの比透磁率よりも低く、サイドコア部は、第一エンドコア部に結合された第一端と、第二エンドコア部に結合された第二端とを有し、サイドコア部とコイルとの間の間隔は、第一端における第一間隔よりも第二端における第二間隔の方が大きく、第一間隔と第二間隔との比が0.32以上0.70以下である、リアクトル。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の形状を有するコイルと、θ状の形状を有する磁性コアとを備え、
前記コイルは、第一端面および第二端面を有し、
前記磁性コアは、第一コアと第二コアとを備え、
前記第一コアは、第一エンドコア部と、サイドコア部とを含み、
前記第二コアは、第二エンドコア部を含み、
前記第一コアおよび前記第二コアの少なくとも一つは、ミドルコア部の少なくとも一部を含み、
前記第一エンドコア部は、前記コイルの前記第一端面と向かい合うように配置され、
前記第二エンドコア部は、前記コイルの前記第二端面と向かい合うように配置され、
前記ミドルコア部は前記コイル内に配置され、
前記サイドコア部は、前記コイルを挟むように前記ミドルコア部と並列に配置される第一サイドコア部と第二サイドコア部とを有し、
前記第一コアの比透磁率は前記第二コアの比透磁率よりも低く、
前記第一サイドコア部および前記第二サイドコア部はそれぞれ、前記第一エンドコア部に結合された第一端と、前記第二エンドコア部に結合された第二端とを有し、
前記第一サイドコア部と前記コイルとの間の間隔、および前記第二サイドコア部と前記コイルとの間の間隔はそれぞれ、前記第一端における第一間隔よりも前記第二端における第二間隔の方が大きく、
前記第一間隔と前記第二間隔との比が0.32以上0.70以下である、
リアクトル。
【請求項2】
前記ミドルコア部は、第一ミドルコア部と第二ミドルコア部とを有し、
前記第一ミドルコア部は、前記第一エンドコア部に結合され、
前記第二ミドルコア部は、前記第二エンドコア部に結合されている、請求項1に記載のリアクトル。
【請求項3】
前記ミドルコア部は、前記第一ミドルコア部と前記第二ミドルコア部との間にギャップ部を有する、請求項2に記載のリアクトル。
【請求項4】
前記第一サイドコア部および前記第二サイドコア部はそれぞれ、前記第一端から前記第二端に向かって幅が細くなるテーパー形状を有する、請求項1に記載のリアクトル。
【請求項5】
前記第一サイドコア部および前記第二サイドコア部はそれぞれ、前記第一端から前記第二端に向かって幅が細くなる段付き形状を有する、請求項1に記載のリアクトル。
【請求項6】
前記第一コアの比透磁率が5以上50以下である、請求項1に記載のリアクトル。
【請求項7】
前記第一コアは、樹脂中に軟磁性粉末が分散された複合材料の成形体により構成されている、請求項1に記載のリアクトル。
【請求項8】
前記第二コアの比透磁率が100以上500以下である、請求項1に記載のリアクトル。
【請求項9】
前記第二コアは、圧粉成形体により構成されている、請求項1に記載のリアクトル。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のリアクトルを備える、
コンバータ。
【請求項11】
請求項10に記載のコンバータを備える、
電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リアクトル、コンバータ、および電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車などの車両に搭載されるコンバータの構成部品にリアクトルがある。リアクトルは、コイルと、磁性コアとを備える。特許文献1の
図5から
図8に記載されたリアクトルは、1つのコイルと、2つのコア片を組み合わせた磁性コアとを備える。この磁性コアは、2つのE字状のコア片からなる所謂E-E型コアである。この磁性コアは、2つのコア片の端面同士が向かい合うように組み合わされることで、θ状に構成される。磁性コアは、エンドコア部と、ミドルコア部と、サイドコア部とを有する。エンドコア部は、コイルの端面と向かい合うように配置される。ミドルコア部は、コイル内に配置される。サイドコア部は、コイルを挟むようにミドルコア部と並列に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
磁性コアからの漏れ磁束によるコイルの損失を低減することが望まれる。
【0005】
本開示は、コイルの損失を低減することができるリアクトルを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のリアクトルは、
筒状の形状を有するコイルと、θ状の形状を有する磁性コアとを備え、
前記コイルは、第一端面および第二端面を有し、
前記磁性コアは、第一コアと第二コアとを備え、
前記第一コアは、第一エンドコア部と、サイドコア部とを含み、
前記第二コアは、第二エンドコア部を含み、
前記第一コアおよび前記第二コアの少なくとも一つは、ミドルコア部の少なくとも一部を含み、
前記第一エンドコア部は、前記コイルの前記第一端面と向かい合うように配置され、
前記第二エンドコア部は、前記コイルの前記第二端面と向かい合うように配置され、
前記ミドルコア部は前記コイル内に配置され、
前記サイドコア部は、前記コイルを挟むように前記ミドルコア部と並列に配置される第一サイドコア部と第二サイドコア部とを有し、
前記第一コアの比透磁率は前記第二コアの比透磁率よりも低く、
前記第一サイドコア部および前記第二サイドコア部はそれぞれ、前記第一エンドコア部に結合された第一端と、前記第二エンドコア部に結合された第二端とを有し、
前記第一サイドコア部と前記コイルとの間の間隔、および前記第二サイドコア部と前記コイルとの間の間隔はそれぞれ、前記第一端における第一間隔よりも前記第二端における第二間隔の方が大きく、
前記第一間隔と前記第二間隔との比が0.32以上0.70以下である。
【発明の効果】
【0007】
本開示のリアクトルは、コイルの損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態1に係るリアクトルを示す概略斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係るリアクトルを示す概略平面図である。
【
図3】
図3は、
図2に示すリアクトルの半分を示す概略平面図である。
【
図4】
図4は、実施形態2に係るリアクトルを示す概略平面図である。
【
図5】
図5は、
図4に示すリアクトルの半分を示す概略平面図である。
【
図6】
図6は、ハイブリッド自動車の電源系統を模式的に示す構成図である。
【
図7】
図7は、コンバータを備える電力変換装置を模式的に示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
(1)本開示のリアクトルは、
筒状の形状を有するコイルと、θ状の形状を有する磁性コアとを備え、
前記コイルは、第一端面および第二端面を有し、
前記磁性コアは、第一コアと第二コアとを備え、
前記第一コアは、第一エンドコア部と、サイドコア部とを含み、
前記第二コアは、第二エンドコア部を含み、
前記第一コアおよび前記第二コアの少なくとも一つは、ミドルコア部の少なくとも一部を含み、
前記第一エンドコア部は、前記コイルの前記第一端面と向かい合うように配置され、
前記第二エンドコア部は、前記コイルの前記第二端面と向かい合うように配置され、
前記ミドルコア部は前記コイル内に配置され、
前記サイドコア部は、前記コイルを挟むように前記ミドルコア部と並列に配置される第一サイドコア部と第二サイドコア部とを有し、
前記第一コアの比透磁率は前記第二コアの比透磁率よりも低く、
前記第一サイドコア部および前記第二サイドコア部はそれぞれ、前記第一エンドコア部に結合された第一端と、前記第二エンドコア部に結合された第二端とを有し、
前記第一サイドコア部と前記コイルとの間の間隔、および前記第二サイドコア部と前記コイルとの間の間隔はそれぞれ、前記第一端における第一間隔よりも前記第二端における第二間隔の方が大きく、
前記第一間隔と前記第二間隔との比が0.32以上0.70以下である。
【0011】
本開示のリアクトルは、コイルの損失を低減することができる。サイドコア部の比透磁率が低く、第二エンドコア部の比透磁率が高い場合、第二端の近傍領域においてサイドコア部から第二エンドコア部へショートカットする漏れ磁束が発生するおそれがある。この漏れ磁束がコイルに鎖交することによって、コイルに損失が発生する。本開示のリアクトルによれば、第一端における第一間隔よりも第二端における第二間隔の方が大きいことで、コイルに鎖交する漏れ磁束を抑制することができる。コイルへの漏れ磁束が減少するため、コイルの損失を低減できる。第一間隔と第二間隔との比が0.70以下であることで、コイルへの漏れ磁束が十分に抑制されるため、コイルの損失を効果的に低減できる。特に、第一間隔と前記第二間隔との比が0.32以上0.70以下である場合、インダクタンスの減少を抑制しつつ、コイルの損失を効果的に低減できる。
【0012】
第一コアと第二コアとの磁気特性が異なることで、磁性コア全体の磁気特性を調整できる。第一コアの比透磁率が第二コアの比透磁率よりも低いことで、所定のインダクタンスが得られ易い。
【0013】
(2)上記(1)に記載のリアクトルにおいて、
前記ミドルコア部は、第一ミドルコア部と第二ミドルコア部とを有し、
前記第一ミドルコア部は、前記第一エンドコア部に結合され、
前記第二ミドルコア部は、前記第二エンドコア部に結合されていてもよい。
【0014】
上記(2)の構成は、第一ミドルコア部と第二ミドルコア部との磁気特性を異ならせることができる。このような構成により、磁性コア全体の磁気特性を調整できる。
【0015】
(3)上記(2)に記載のリアクトルにおいて、
前記ミドルコア部は、前記第一ミドルコア部と前記第二ミドルコア部との間にギャップ部を有してもよい。
【0016】
上記(3)の構成は、ギャップ部によって、磁性コア全体の磁気特性を調整できる。
【0017】
(4)上記(1)から(3)のいずれかに記載のリアクトルにおいて、
前記第一サイドコア部および前記第二サイドコア部はそれぞれ、前記第一端から前記第二端に向かって幅が細くなるテーパー形状を有してもよい。
【0018】
上記(4)の構成は、コイルの損失を低減し易い。
【0019】
(5)上記(1)から(3)のいずれかに記載のリアクトルにおいて、
前記第一サイドコア部および前記第二サイドコア部はそれぞれ、前記第一端から前記第二端に向かって幅が細くなる段付き形状を有してもよい。
【0020】
上記(5)の構成は、コイルの損失を低減し易い。
【0021】
(6)上記(1)から(5)のいずれかに記載のリアクトルにおいて、
前記第一コアの比透磁率が5以上50以下であってもよい。
【0022】
上記(6)の構成は、所定のインダクタンスが得られ易い。
【0023】
(7)上記(1)から(6)のいずれかに記載のリアクトルにおいて、
前記第一コアは、樹脂中に軟磁性粉末が分散された複合材料の成形体により構成されていてもよい。
【0024】
一般的に、複合材料の成形体の比透磁率は低い。上記(7)の構成は、第一コアの比透磁率が第二コアの比透磁率よりも低い磁性コアを構成し易い。第一コアが複合材料の成形体により構成されていることで、第一コアの比透磁率を例えば5以上50以下に調整し易い。
【0025】
(8)上記(1)から(7)のいずれかに記載のリアクトルにおいて、
前記第二コアの比透磁率が100以上500以下であってもよい。
【0026】
上記(8)の構成は、所定のインダクタンスが得られ易い。
【0027】
(9)上記(1)から(8)のいずれかに記載のリアクトルにおいて、
前記第二コアは、圧粉成形体により構成されていてもよい。
【0028】
一般的に、圧粉成形体の比透磁率は高い。上記(9)の構成は、第一コアの比透磁率が第二コアの比透磁率よりも低い磁性コアを構成し易い。第二コアが圧粉成形体により構成されていることで、第二コアの比透磁率を例えば100以上500以下に調整し易い。
【0029】
(10)本開示のコンバータは、
上記(1)から(9)のいずれか1つに記載のリアクトルを備える。
【0030】
本開示のコンバータは、本開示のリアクトルを備えることから、損失が小さい。
【0031】
(11)本開示の電力変換装置は、
上記(10)に記載のコンバータを備える。
【0032】
本開示の電力変換装置は、本開示のコンバータを備えることから、損失が小さい。
【0033】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0034】
[実施形態1]
〔リアクトル〕
図1から
図3を参照して、実施形態1のリアクトル1aを説明する。リアクトル1aは、コイル2と磁性コア3とを備える。磁性コア3は、第一コア3aと第二コア3bとを備える。磁性コア3は、
図2に示すように、第一コア3aと第二コア3bとが組み合わされることで構成されている。磁性コア3は、ミドルコア部31と、サイドコア部33と、エンドコア部35とによりθ状に形成されている。
図1は、リアクトル1aを上方から見た斜視図である。
図2は、リアクトル1aを上方から見た平面図である。
図3は、
図2に示すリアクトル1aの半分のみを示す部分平面図である。
【0035】
実施形態1のリアクトル1aの特徴は、以下の要件(a)、(b)を満たす点にある。
(a)第一コア3aの比透磁率は第二コア3bの比透磁率よりも低い。
(b)
図3に示すように、第二間隔D2が第一間隔D1よりも大きく、かつ、第一間隔D1と第二間隔D2との比D1/D2が0.32以上0.70以下である。
【0036】
リアクトル1aは、第二間隔D2が第一間隔D1よりも大きいことで、コイル2の損失を低減することができる。特に、第一間隔D1と第二間隔D2との比D1/D2が0.32以上0.70以下であることで、インダクタンスの減少を抑制しつつ、コイル2の損失を効果的に低減することができる。以下、リアクトル1aの構成を詳細に説明する。
【0037】
<コイル>
コイル2は、
図1および
図2に示すように、磁性コア3のミドルコア部31に配置される。コイル2は、筒状の形状を有する。コイル2は、第一端面2aと第二端面2bとを有する。本実施形態では、コイル2は、平角線をエッジワイズ巻きすることにより形成されたエッジワイズコイルである。
【0038】
コイル2の形状は多角筒状でもよいし、円筒状でもよい。多角筒状とは、コイル2の端面の輪郭形状が多角形状であることをいう。多角形状は、例えば、四角形状、六角形状および八角形状である。四角形状には、矩形状が含まれる。矩形状には、正方形状が含まれる。四角形には、幾何学上の四角形に限らず、4つの角部をつないで構成された形状を含む。即ち、4つの角部を面取りにより丸めた形状、または、4つの角部を直線状に面取りした形状など、細部に変更が加えられた四角形も含む。円筒状とは、コイル2の端面の輪郭形状が円形状であることをいう。円形状には、真円形状のみならず、楕円形状も含まれる。本実施形態では、コイル2の形状が矩形筒状である。
【0039】
<磁性コア>
磁性コア3は、
図1および
図2に示すように、ミドルコア部31と、サイドコア部33と、エンドコア部35とを有する。
図2および
図3では、ミドルコア部31とエンドコア部35との境界、およびサイドコア部33とエンドコア部35との境界が二点鎖線で示されている。この点は、後述する
図4および
図5でも同様である。磁性コア3は、
図2に示すように、平面視においてθ状の形状を有する。
【0040】
以下の説明では、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向を次のように定義する。X軸方向は、コイル2の軸に沿った方向であって、第一端面2aから第二端面2bに向かう方向である。Y軸方向は、ミドルコア部31とサイドコア部33とが並列される方向であって、ミドルコア部31からサイドコア部33に向かう方向である。Y軸方向は、X軸方向に直交する。ミドルコア部31から第一サイドコア部331に向かう方向をY1方向とする。ミドルコア部31から第二サイドコア部332に向かう方向をY2方向とする。Z軸方向は、X軸方向とY軸方向の双方に直交する。Z方向は、X軸とY軸とを含むXY平面を水平にした場合、下から上に向かう方向である。
【0041】
磁性コア3はθ状の閉磁路を形成する。コイル2が通電されると、磁性コア3に磁束が流れる。コイル2によって発生した磁束は、ミドルコア部31から、エンドコア部35とサイドコア部33とを経由して、ミドルコア部31に戻るように流れる。
図2中の破線矢印は磁束の流れを示している。この点は、後述する
図4でも同様である。
【0042】
(ミドルコア部)
ミドルコア部31は、
図2に示すように、コイル2内に配置される。ミドルコア部31の数は1つである。ミドルコア部31はX軸方向に延びている。ミドルコア部31の長さに沿った方向はコイル2の軸に沿った方向と一致する。ミドルコア部31の長さは、コイル2の長さと同じまたはそれ以上である。ここでいう長さとは、X軸方向に沿った距離のことをいう。ミドルコア部31の両端部はコイル2の両端面から突出していてもよい。この突出する部分もミドルコア部31の一部である。ミドルコア部31の形状は、コイル2の内側形状に対応した形状である。本実施形態では、ミドルコア部31の形状が略直方体状である。
【0043】
ミドルコア部31は、第一エンドコア部35aと第二エンドコア部35bとの間に配置される。第一エンドコア部35aおよび第二エンドコア部35bについては後述する。ミドルコア部31は、第一端32aと第二端32bとを有する。第一端32aは、第一エンドコア部35aに結合される。第二端32bは、第二エンドコア部35bに結合される。
【0044】
本実施形態では、ミドルコア部31は、第一ミドルコア部31aと第二ミドルコア部31bとを有する。第一ミドルコア部31aと第二ミドルコア部31bとは、X軸方向に沿って直列に並んでいる。第一ミドルコア部31aと第二ミドルコア部31bとの境界はコイル2内に位置する。第一ミドルコア部31aは、第一エンドコア部35aに結合される第一端32aを含む。第二ミドルコア部31bは、第二エンドコア部35bに結合される第二端32bを含む。結合されるとは、くっついて離れないことを意味する。第一ミドルコア部31aと第一エンドコア部35aとは一体に成形されていてもよい。第一ミドルコア部31aと第一エンドコア部35aとがそれぞれ独立した別部品である場合、例えば、第一端32aが第一エンドコア部35aに接着されていてもよいし、第一ミドルコア部31aと第一エンドコア部35aとの少なくとも一部同士が樹脂モールドに覆われることよって一体化されていてもよい。第二ミドルコア部31bと第二エンドコア部35bとは一体に成形されていてもよい。第二ミドルコア部31bと第二エンドコア部35bとがそれぞれ独立した別部品である場合、例えば、第二端32bが第二エンドコア部35bに接着されていてもよいし、第二ミドルコア部31bと第二エンドコア部35bとの少なくとも一部同士が樹脂モールドに覆われることよって一体化されていてもよい。樹脂モールドは、第一コア3aと第二コア3bの各々の少なくとも一部を覆うように一連に形成された成形部材である。本実施形態では、第一ミドルコア部31aと第一エンドコア部35aとが一体に成形されている。第二ミドルコア部31bと第二エンドコア部35bとが一体に成形されている。
【0045】
第一ミドルコア部31aおよび第二ミドルコア部31bの各々の長さは、適宜設定することができる。本実施形態では、第一ミドルコア部31aの長さと第二ミドルコア部31bの長さとが異なる。第一ミドルコア部31aが第二ミドルコア部31bよりも長い。第一ミドルコア部31aが第二ミドルコア部31bよりも短くてもよい。第一ミドルコア部31aの長さと第二ミドルコア部31bの長さとが同じであってもよい。
【0046】
本実施形態では、ミドルコア部31がギャップ部31gを有する。ギャップ部31gは、第一ミドルコア部31aと第二ミドルコア部31bとの間に設けられている。ミドルコア部31がギャップ部31gを有することで、インダクタンスを調整することができる。ギャップ部31gは、コイル2内に位置する。ギャップ部31gがコイル2内に位置する場合、ギャップ部31gがコイル2から露出する場合に比較して、ギャップ部31gからの漏れ磁束が減少する。そのため、ギャップ部31gからの漏れ磁束がコイル2に鎖交することを抑制し易い。ギャップ部31gからの漏れ磁束に起因する損失を低減することができる。ギャップ部31gの長さは、所定のインダクタンスが得られるように適宜設定される。ギャップ部31gの長さは、例えば0.1mm以上3mm以下、0.3mm以上2.5mm以下、更に0.5mm以上2mm以下である。ギャップ部31gは、エアギャップでもよい。ギャップ部31gは、例えば、樹脂またはセラミックスからなる非磁性材により構成されていてもよい。ミドルコア部31がギャップ部31gを有する場合、ミドルコア部31の長さは、第一ミドルコア部31aの長さと、第二ミドルコア部31bの長さと、ギャップ部31gの長さとを合計した長さである。ギャップ部31gはなくてもよい。ギャップ部31gがない場合、第一ミドルコア部31aと第二ミドルコア部31bとが互いに接しており、第一ミドルコア部31aと第二ミドルコア部31bとの間に実質的に隙間がない。
【0047】
(エンドコア部)
エンドコア部35は、
図2に示すように、コイル2の外に配置される。エンドコア部35は、コイル2の両端面とそれぞれ向かい合うように配置される。エンドコア部35の数は2つである。エンドコア部35は第一エンドコア部35aと第二エンドコア部35bとを有する。第一エンドコア部35aと第二エンドコア部35bとは、X軸方向に間隔をあけて配置されている。第一エンドコア部35aおよび第二エンドコア部35bはそれぞれ、互いに向かい合う内側面を有する。第一エンドコア部35aは、コイル2の第一端面2aと向かい合う。第一エンドコア部35aには、ミドルコア部31の第一端32aが結合される。第二エンドコア部35bは、コイル2の第二端面2bと向かい合う。第二エンドコア部35bには、ミドルコア部31の第二端32bが結合される。
【0048】
第一エンドコア部35aおよび第二エンドコア部35bの各々の形状は、所定の磁路が形成される形状であれば特に限定されない。本実施形態では、第一エンドコア部35aおよび第二エンドコア部35bの各々の形状が略直方体状である。
【0049】
(サイドコア部)
サイドコア部33は、
図2に示すように、コイル2の外に配置される。サイドコア部33は、コイル2を挟むようにミドルコア部31と並列に配置される。サイドコア部33の数は2つである。サイドコア部33はX軸方向に延びている。サイドコア部33の長さに沿った方向はミドルコア部31の長さに沿った方向と平行である。サイドコア部33の長さは、ミドルコア部31の長さと同等である。
【0050】
サイドコア部33は、第一サイドコア部331と第二サイドコア部332とを有する。第一サイドコア部331と第二サイドコア部332とは、Y軸方向に間隔をあけて配置されている。第一サイドコア部331は、ミドルコア部31からY1方向に離れて配置される。第二サイドコア部332は、ミドルコア部31からY2方向に離れて配置される。本実施形態では、第一サイドコア部331と第二サイドコア部332とが、ミドルコア部31の中心線に対して線対称に配置されている。
【0051】
第一サイドコア部331および第二サイドコア部332は、第一エンドコア部35aと第二エンドコア部35bとの間に配置される。第一サイドコア部331および第二サイドコア部332はそれぞれ、第一端34aと第二端34bとを有する。第一端34aは、第一エンドコア部35aに結合される。第二端34bは、第二エンドコア部35bに結合される。
【0052】
本実施形態では、サイドコア部33と第一エンドコア部35aとが一体に成形されている。サイドコア部33と第一エンドコア部35aとがそれぞれ独立した別部品であってもよい。この場合、例えば、第一端34aが第一エンドコア部35aに接着されていてもよいし、サイドコア部33と第一エンドコア部35aとの少なくとも一部同士が樹脂モールドに覆われることによって一体化されていてもよい。本実施形態では、サイドコア部33と第二エンドコア部35bとがそれぞれ独立した別部品である。サイドコア部33と第二エンドコア部35bとは図示しない樹脂モールドによって一体化されている。サイドコア部33の第二端34bが第二エンドコア部35bに接着されていてもよい。
【0053】
〈サイドコア部とコイルとの間の間隔〉
本実施形態では、第一サイドコア部331とコイル2との間の間隔、および第二サイドコア部332とコイル2との間の間隔がそれぞれ、X軸方向にわたって一定ではない。つまり、サイドコア部33とコイル2との間の間隔が、サイドコア部33の全長にわたって一定ではない。サイドコア部33とコイル2との間の間隔は、第一端34aから第二端34bに向かって大きくなっている。サイドコア部33とコイル2との間の間隔とは、サイドコア部33の内側面とコイル2の外周面との間の間隔のことをいう。サイドコア部33の内側面は、コイル2の外周面と向かい合う面である。
【0054】
図3を参照して、サイドコア部33とコイル2との間の間隔について詳しく説明する。
図3は、
図2に示すリアクトル1aをミドルコア部31の中心線で2分割した部分のうち、第一サイドコア部331を含む半分のみを示している。ここでは、
図3を参照して、第一サイドコア部331とコイル2との間の間隔について説明するが、第二サイドコア部332とコイル2との間の間隔も同様である。第一サイドコア部331とコイル2との間の間隔は、第一端34aにおける第一間隔D1よりも第二端34bにおける第二間隔D2の方が大きい。第一間隔D1とは、第一サイドコア部331の内側面のうちの第一端34aに位置する内側面と、コイル2の外周面を延長した仮想面との間隔のことをいう。第一端34aの端面と内側面との角部が面取りされている場合は、面取りはないものとみなす。つまり、第一端34aの端面の延長面と内側面の延長面との角部と、上記仮想面との間隔を第一間隔D1とみなす。第二間隔D2とは、第一サイドコア部331の内側面のうちの第二端34bに位置する内側面と、コイル2の外周面を延長した仮想面との間隔のことをいう。第二端34bの端面と内側面との角部が面取りされている場合は、面取りはないものとみなす。つまり、第二端34bの端面の延長面と内側面の延長面との角部と、上記仮想面との間隔を第二間隔D2とみなす。
【0055】
第一間隔D1と第二間隔D2との比は0.32以上0.70以下である。第一間隔D1と第二間隔D2との比はD1/D2で表される。比D1/D2が小さいほど、第二間隔D2が大きい。第二間隔D2が大きいほど、第二端34bの近傍領域においてサイドコア部33とコイル2との間隔が大きくなる。そのため、第二端34bの近傍領域においてサイドコア部33から第二エンドコア部35bに向けてショートカットする漏れ磁束がコイル2に鎖交することを抑制することができる。コイル2への漏れ磁束が減少するため、コイル2の損失を低減できる。比D1/D2が0.70以下であることで、コイル2への漏れ磁束が十分に抑制されるため、コイル2の損失を効果的に低減できる。比D1/D2が小さくなり過ぎる、即ち第二間隔D2が大き過ぎると、インダクタンスが減少するおそれがあり、所定のインダクタンスが得られ難くなる場合がある。比D1/D2比が0.32以上であることで、インダクタンスの減少を抑制し易い。比D1/D2は、更に0.35以上0.70以下、0.40以上0.60以下でもよい。
【0056】
〈サイドコア部の形状〉
サイドコア部33は、サイドコア部33の幅が第一端34aから第二端34bに向かって細くなる形状を有する。サイドコア部33は、第二端34bの幅が第一端34aの幅よりも細ければよい。サイドコア部33は、第一端34aと第二端34bとの間の少なくとも一部に幅が細くなる部分を有していればよく、第一端34aと第二端34bとの間の一部に幅が一定になる部分を有していてもよい。サイドコア部33の幅は、サイドコア部33のY軸方向の寸法である。本実施形態では、第一サイドコア部331の形状と第二サイドコア部332の形状とが、ミドルコア部31の中心線に対して線対称である。
【0057】
図3を参照して、本実施形態におけるサイドコア部33の形状を詳しく説明する。ここでは、第一サイドコア部331の形状について説明する。第一サイドコア部331はテーパー形状を有する。テーパー形状とは、第一端34aから第二端34bに向かって連続的に幅が細くなる部分を有する形状のことをいう。本実施形態では、第一サイドコア部331は、全長にわたってテーパー形状に形成されている。第一サイドコア部331の内側面は、コイル2の外周面に対して傾斜する傾斜面33tを有する。傾斜面33tは、第一端34aから第二端34bに向かってコイル2の外周面から遠ざかるように傾斜する。コイル2の外周面に対する傾斜面33tの角度は、第一間隔D1と第二間隔D2との比が所定の範囲を満たすように適宜設定される。傾斜面33tの角度とは、傾斜面33tとコイル2の外周面とがなすとが角度のことをいう。コイル2の外周面はX軸に平行である。傾斜面33tの角度は、第一サイドコア部331の長さに応じて適宜設定することができる。傾斜面33tの角度は、例えば1°以上5°未満、更に2°以上4°以下である。
【0058】
(第一コア・第二コア)
磁性コア3は、
図2に示すように、第一コア3aと第二コア3bとにより構成される。本実施形態では、第一コア3aがE字状の形状を有し、かつ、第二コア3bがT字状の形状を有する。つまり、磁性コア3は、E字状の第一コア3aとT字状の第二コア3bとからなるE-T型である。
【0059】
(第一コア)
第一コア3aは、第一エンドコア部35aと、サイドコア部33とを含む。本実施形態では、第一コア3aは、第一エンドコア部35aと、第一ミドルコア部31aと、第一サイドコア部331と、第二サイドコア部332とを有する。第一ミドルコア部31aと、第一エンドコア部35aと、第一サイドコア部331と、第二サイドコア部332とは一体に成形されている。第一コア3aは一体成形品であるので、第一コア3aを構成する各コア部は同じ材質である。即ち、第一コア3aを構成する各コア部の磁気特性は実質的に同じである。第一コア3aの形状は、平面視においてE字状である。
【0060】
(第二コア)
第二コア3bは、第二エンドコア部35bを含む。本実施形態では、第二コア3bは、第二エンドコア部35bと、第二ミドルコア部31bとを有する。第二エンドコア部35bと、第二ミドルコア部31bとは一体に成形されている。第二コア3bは一体成形品であるので、第二コア3bを構成する各コア部は同じ材質である。即ち、第二コア3bを構成する各コア部の磁気特性は実質的に同じである。第二コア3bの形状は、平面視においてT字状である。
【0061】
第一コア3aおよび第二コア3bの少なくとも一つは、ミドルコア部31の少なくとも一部を含む。第一コア3aはミドルコア部31の全部を有していてもよい。第一コア3aがミドルコア部31の全部を有する場合、第二コア3bは第二エンドコア部35bのみを有する。この場合、第二コア3bの形状は、平面視においてI字状である。第二コア3bはミドルコア部31の全部を有していてもよい。第二コア3bがミドルコア部31の全部を有する場合、第一コア3aは第一エンドコア部35aと、第一サイドコア部331と、第二サイドコア部332とからなる。この場合、第一コア3aの形状は、平面視においてU字状である。
【0062】
〈第一コア・第二の比透磁率〉
第一コア3aの比透磁率は第二コア3bの比透磁率よりも低い。つまり、磁性コア3において、サイドコア部33の比透磁率が第二エンドコア部35bの比透磁率よりも低い。第一コア3aおよび第二コア3bの各々の比透磁率は、上記関係を満たした上で、所定のインダクタンスが得られるように適宜設定される。第一コア3aの比透磁率は、例えば5以上50以下である。第二コア3bの比透磁率は、例えば50以上500以下である。第一コア3aの比透磁率が5以上50以下の範囲内で、かつ、第二コア3bの比透磁率が50以上500以下の範囲内であれば、所定のインダクタンスが得られ易い。第一コア3aの比透磁率は、10以上45以下、更に15以上40以下でもよい。第二コア3bの比透磁率は、100以上450以下、更に150以上400以下でもよい。第一コア3aの比透磁率と第二コア3bの比透磁率との差は、例えば50以上である。第一コア3aの比透磁率と第二コア3bの比透磁率との差は、50以上450以下、更に100以上400以下でもよい。
【0063】
比透磁率は、次のようにして求めることができる第一コア3aと第二コア3bのそれぞれからリング状の測定試料を切り出す。各々の測定試料に、一次側:300巻き、二次側:20巻きの巻線を施す。B-H初磁化曲線をH=0(Oe)以上100(Oe)以下の範囲で測定し、このB-H初磁化曲線のB/Hの最大値を求める。この最大値を比透磁率とする。ここでいう磁化曲線とは、いわゆる直流磁化曲線のことである。
【0064】
〈第一コア・第二コアの材質〉
第一コア3aおよび第二コア3bはそれぞれ、軟磁性材料の成形体により構成されている。成形体は、例えば、圧粉成形体または複合材料の成形体である。第一コア3aと第二コア3bとは、互いに異なる材質の成形体で構成されている。互いに異なる材質とは、第一コア3aおよび第二コア3bを構成する各々の成形体において、個々の構成要素の材質が異なる場合は勿論、個々の構成要素の材質が同じであっても、構成要素の含有量が異なる場合も含む。例えば、第一コア3aと第二コア3bとが圧粉成形体で構成されていても、圧粉成形体を構成する軟磁性粉末の材質および含有量の少なくとも1つが異なれば、互いに異なる材質である。また、第一コア3aと第二コア3bとが複合材料の成形体で構成されていても、複合材料を構成する軟磁性粉末の材質および含有量の少なくとも1つが異なれば、互いに異なる材質である。
【0065】
圧粉成形体は、軟磁性粉末を含む原料粉末を圧縮成形してなる。圧粉成形体は、複合材料の成形体に比較して軟磁性粉末の含有量が多い。そのため、圧粉成形体は、複合材料の成形体に比較して磁気特性が高い。磁気特性は、例えば、比透磁率と飽和磁束密度である。圧粉成形体は、例えば、バインダ樹脂および成形助剤の少なくとも一つを含有してもよい。圧粉成形体における軟磁性粉末の含有量は、圧粉成形体を100体積%とするとき、例えば85体積%以上99.99体積%以下である。
【0066】
複合材料の成形体は、樹脂中に軟磁性粉末が分散されてなる。複合材料の成形体は、未固化の樹脂中に軟磁性粉末を分散させた流動性の素材を金型に充填し、樹脂を固化させることで得られる。複合材料の成形体は、軟磁性粉末の含有量を容易に調整できる。そのため、複合材料の成形体は、磁気特性を調整し易い。複合材料の成形体における軟磁性粉末の含有量は、複合材料の成形体を100体積%とするとき、例えば20体積%以上80体積%以下である。
【0067】
軟磁性粉末を構成する粒子は、軟磁性金属の粒子、軟磁性金属の粒子の外周に絶縁被覆を備える被覆粒子、および軟磁性非金属の粒子からなる群より選択される少なくとも一種である。軟磁性金属は、例えば、純鉄または鉄基合金である。鉄基合金は、例えば、Fe(鉄)-Si(シリコン)合金またはFe-Ni(ニッケル)合金である。絶縁被覆は、例えばリン酸塩である。軟磁性非金属は、例えばフェライトである。
【0068】
本実施形態では、第一コア3aが複合材料の成形体により構成されている。第二コア3bが圧粉成形体により構成されている。第一コア3aが複合材料の成形体により構成されると共に、第二コア3bが圧粉成形体により構成されていることで、磁性コア3全体の磁気特性を調整できる。また、第一コア3aが複合材料の成形体により構成されている場合、第一コア3aの比透磁率が5以上50以下を満たし易い。第二コア3bが圧粉成形体により構成されている場合、第二コア3bの比透磁率が100以上500以下を満たし易い。
【0069】
[実施形態2]
図4および
図5を参照して、実施形態2のリアクトル1bを説明する。実施形態2のリアクトル1bは、サイドコア部33の形状が段付き形状である点が、実施形態1のリアクトル1aと相違する。以下の説明は、実施形態1との相違点を中心に行う。実施形態1と同様の構成は、同じ符号を付して説明を省略する。
【0070】
図5を参照して、本実施形態におけるサイドコア部33の形状を詳しく説明する。ここでは、第一サイドコア部331の形状について説明する。サイドコア部33は段付き形状を有する。段付き形状とは、第一端34aから第二端34bに向かって段階的に幅が細くなる部分を有する形状のことをいう。第一サイドコア部331の内側面は、段部33sを有する。本実施形態では、段部33sが第一サイドコア部331の長さの中心に位置する。第一サイドコア部331は、1つの段部33sによって、2つの領域に分かれている。第一端34aから段部33sまでの領域が第一領域341である。段部33sから第二端34bまでの領域が第二領域342である。第二領域342の幅は第一領域341の幅よりも細い。第一領域341の内側面と第二領域342の内側面はそれぞれ、コイル2の外周面と平行である。第二領域342の内側面とコイル2の外周面との間の間隔は、第一領域341の内側面とコイル2の外周面との間の間隔よりも大きい。段部33sの幅は、第一間隔D1と第二間隔D2との比が所定の範囲を満たすように適宜設定される。段部33sの幅は、段部33sのY軸方向に沿った距離に相当する。段部33sの幅は、コイル2の外周面から第二領域342の内側面までの距離と、コイル2の外周面から第一領域341の内側面までの距離との差に等しい。つまり、段部33sの幅はD2-D1で表される。段部33sの幅は、例えば1mm以上5mm未満、更に1.25mm以上4mm以下である。
【0071】
本実施形態では、段部33sの数は1つであるが、段部33sは複数あってもよい。段部33sの数がnの場合、サイドコア部33を構成する領域の数はn+1である。第n+1領域は第n領域よりも第二端34bに近い領域であり、第n+1領域の幅は第n領域の幅より細い。第一領域から第n+1領域に向かうにつれて段階的に幅が細くなる。
【0072】
サイドコア部33の形状は、テーパー形状と段付き形状とが組み合わされた形状であってもよい。サイドコア部33の形状の変形例としては、例えば、次のような形状がある。
(1)
図5において、第一領域341はテーパー形状であり、第二領域342は第一領域341に対して段部33sがなく、かつ、幅が一定である形状であってもよい。
(2)
図5において、第一領域341はテーパー形状であり、第二領域342は第一領域341に対して段部33sがあり、かつ、幅が一定である形状であってもよい。
(3)
図5において、第一領域341は幅が一定である形状であり、第二領域342は第一領域341に対して段部33sがなく、かつ、テーパー形状であってもよい。
(4)
図5において、第一領域341は幅が一定である形状であり、第二領域342は第一領域341に対して段部33sがあり、かつ、テーパー形状であってもよい。
【0073】
[実施形態3]
〔コンバータ・電力変換装置〕
実施形態のリアクトルは、以下の通電条件を満たす用途に利用できる。通電条件は、例えば、最大直流電流が100A以上1000A以下程度であり、平均電圧が100V以上1000V以下程度であり、使用周波数が5kHz以上100kHz以下程度である。実施形態のリアクトルは、代表的には電気自動車およびハイブリッド自動車などの車両などに搭載されるコンバータの構成部品、およびこのコンバータを備える電力変換装置の構成部品に利用できる。
【0074】
ハイブリッド自動車および電気自動車などの車両1200は、
図6に示すようにメインバッテリ1210と、メインバッテリ1210に接続される電力変換装置1100と、メインバッテリ1210からの供給電力により駆動して走行に利用されるモータ1220とを備える。モータ1220は、代表的には、3相交流モータである。モータ1220は、走行時、車輪1250を駆動し、回生時、発電機として機能する。ハイブリッド自動車の場合、車両1200は、モータ1220に加えてエンジン1300を備える。
図6では、車両1200の充電箇所としてインレットを示すが、プラグを備える形態とすることができる。
【0075】
電力変換装置1100は、メインバッテリ1210に接続されるコンバータ1110と、コンバータ1110に接続されて、直流と交流との相互変換を行うインバータ1120とを有する。この例に示すコンバータ1110は、車両1200の走行時、200V以上300V以下程度のメインバッテリ1210の入力電圧を400V以上700V以下程度にまで昇圧して、インバータ1120に給電する。コンバータ1110は、回生時、モータ1220からインバータ1120を介して出力される入力電圧をメインバッテリ1210に適合した直流電圧に降圧して、メインバッテリ1210に充電させている。入力電圧は、直流電圧である。インバータ1120は、車両1200の走行時、コンバータ1110で昇圧された直流を所定の交流に変換してモータ1220に給電し、回生時、モータ1220からの交流出力を直流に変換してコンバータ1110に出力している。
【0076】
コンバータ1110は、
図7に示すように複数のスイッチング素子1111と、スイッチング素子1111の動作を制御する駆動回路1112と、リアクトル1115とを備え、ON/OFFの繰り返しにより入力電圧の変換を行う。入力電圧の変換とは、ここでは昇降圧を行う。スイッチング素子1111には、電界効果トランジスタ、絶縁ゲートバイポーラトランジスタなどのパワーデバイスが利用される。リアクトル1115は、回路に流れようとする電流の変化を妨げようとするコイルの性質を利用し、スイッチング動作によって電流が増減しようとしたとき、その変化を滑らかにする機能を有する。リアクトル1115として、実施形態のリアクトルを備える。実施形態のリアクトルを備えることで、電力変換装置1100およびコンバータ1110の損失が小さい。
【0077】
車両1200は、コンバータ1110の他、メインバッテリ1210に接続された給電装置用コンバータ1150や、補機類1240の電力源となるサブバッテリ1230とメインバッテリ1210とに接続され、メインバッテリ1210の高圧を低圧に変換する補機電源用コンバータ1160を備える。コンバータ1110は、代表的には、DC-DC変換を行うが、給電装置用コンバータ1150や補機電源用コンバータ1160は、AC-DC変換を行う。給電装置用コンバータ1150のなかには、DC-DC変換を行うものもある。給電装置用コンバータ1150や補機電源用コンバータ1160のリアクトルに、実施形態のリアクトルと同様の構成を備え、適宜、大きさまたは形状などを変更したリアクトルを利用できる。また、入力電力の変換を行うコンバータであって、昇圧のみを行うコンバータまたは降圧のみを行うコンバータに、実施形態のリアクトルを利用することもできる。
【0078】
<試験例1>
実施形態1のリアクトル1aと同様の構成のリアクトルについて、インダクタンスと損失を評価した。
【0079】
試験例1では、表1に示す試料No.1-0から試料No.1-7のリアクトルを設計した。試料No.1-0から試料No.1-7は、サイドコア部33の内側面における傾斜面33tの角度を0°から7°までの範囲で変更したモデルである。設計したリアクトルの基本構成を以下に示す。
【0080】
(磁性コアのサイズ)
・磁性コア3の長さL:80mm
・磁性コア3の幅W:65mm
・磁性コア3の高さH:25mm
長さLは、
図1に示すように、磁性コア3のX軸方向の寸法である。幅Wは磁性コア3のY軸方向の寸法である。高さHは磁性コア3のZ軸方向の寸法である。
(各コア部のサイズ)
・ミドルコア部31の長さ:53mm
・ミドルコア部31の幅:25mm
・第一サイドコア部331および第二サイドコア部332の各長さ:53mm
・第一サイドコア部331および第二サイドコア部332の各幅:9mm
・第一エンドコア部35aおよび第二エンドコア部35bの各長さ:13.5mm
・第一エンドコア部35aおよび第二エンドコア部35bの各幅:65mm
・ギャップ部31gの長さ:2mm
各コア部の長さは、X軸方向の寸法である。各コア部の幅はY軸方向の寸法である。各コア部の高さ、即ちZ軸方向の寸法は25mmである。
【0081】
第一コア3aの比透磁率:20
第二コア3bの比透磁率:200
【0082】
試料No.1-0から試料No.1-7における傾斜面の角度を表1に示す。また、各試料について、第一間隔D1、第二間隔D2、および第一間隔D1と第二間隔D2との比(D1/D2)を表1に示す。傾斜面33tの角度が0°である試料No.1-0は、サイドコア部33とコイル2との間の間隔がサイドコア部33の全長にわたって一定である。つまり、試料No.1-0では、第一間隔D1と第二間隔D2との比が1である。試料No.1-0における第一間隔D1および第二間隔D2はそれぞれ2mmである。
【0083】
各試料のリアクトルについて、インダクタンスおよび損失の解析を行った。インダクタンスおよび損失の解析には、市販の電磁界解析ソフトウェアである株式会社JSOL製のJMAG-Designer21.0を使用し、磁界過渡応答解析を行った。
【0084】
(インダクタンスの解析)
0Aから400Aの電流をコイルに流したときのインダクタンスを解析した。電流値が0Aのときにおけるコイルの鎖交磁束量からインダクタンスの最大値を求めた。各試料におけるインダクタンスを表1に示す。表1に示すインダクタンスは、試料No.1-0のインダクタンスを基準(100%)とした比率で示す。
【0085】
(損失の解析)
直流電流0A、入力電圧300V、出力電圧600V、周波数20kHzの電圧をコイルに印加したときの損失を解析した。磁束密度分布および電流密度分布からコイルの損失を求めた。各試料におけるコイル損失を表1に示す。表1に示すコイル損失は、試料No.1-0のコイル損失を基準(100%)とした比率で示す。
【0086】
【0087】
表1に示すように、試料No.1-1から試料No.1-7のコイル損失は、試料No.1-0のコイル損失に比較して、1%以上低減されている。試料No.1-1から試料No.1-7は、第一間隔D1よりも第二間隔D2が大きく、第一間隔D1と第二間隔D2との比が0.70以下である。試料No.1-1から試料No.1-7の結果から、第二間隔D2が大きくなる、即ち第一間隔D1と第二間隔D2との比が小さくなるほど、コイル損失を低減する効果が得られ易いことがわかる。ただし、第一間隔D1と第二間隔D2との比が小さくなると、試料No.1-0のインダクタンスに比較してインダクタンスが減少することがわかる。試料No.1-1から試料No.1-4のインダクタンスは、試料No.1-0のインダクタンスに比較して5%未満の減少である。インダクタンスの減少が5%未満であれば、試料No.1-0とほぼ同等のインダクタンスとみなすことができる。試料No.1-1から試料No.1-4は第一間隔D1と第二間隔D2との比が0.32以上である。インダクタンスを良好に保ちつつ、かつ、コイル損失を低減する効果が得られる第一間隔D1と第二間隔D2との比は、0.32以上0.70以下と考えられる。
【0088】
<試験例2>
実施形態2のリアクトル1bと同様の構成のリアクトルについて、インダクタンスと損失を評価した。
【0089】
試験例2では、表2に示す試料No.2-0から試料No.2-4のリアクトルを設計した。試料No.2-0からNo.2-4は、サイドコア部33の内側面における段部33sの幅を0mmから5mmまでの範囲で変更したモデルである。設計したリアクトルの基本構成は試験例1と同じである。
【0090】
試料No.2-0からNo.2-4のリアクトルにおける段部の幅を表2に示す。また、各試料について、第一間隔D1、第二間隔D2、および第一間隔D1と第二間隔D2との比(D1/D2)を表1に示す。段部の幅が0mmである試料No.2-0は、サイドコア部33とコイル2との間の間隔がサイドコア部33の全長にわたって一定である。つまり、試料No.2-0では、第一間隔D1と第二間隔D2との比が1である。試料No.2-0における第一間隔D1および第二間隔D2はそれぞれ2mmである。
【0091】
各試料のリアクトルについて、インダクタンスおよび損失の解析を行った。各試料におけるインダクタンスおよびコイルの損失を試験例1と同様にして求めた。各試料におけるインダクタンスおよびコイル損失を表2に示す。表2に示すインダクタンスは、試料No.2-0のインダクタンスを基準(100%)とした比率で示す。表2に示すコイル損失は、試料No.2-0のコイル損失を基準(100%)とした比率で示す。
【0092】
【0093】
表2に示すように、試料No.2-1から試料No.2-4のコイル損失は、試料No.2-0のコイル損失に比較して、1%以上、さらには2%以上低減されている。試料No.2-1から試料No.2-4は、第一間隔D1と第二間隔D2との比が0.70以下である。試料No.2-1から試料No.2-3のインダクタンスは、試料No.2-0のインダクタンスに比較して5%未満の減少である。試験例2の結果からも、インダクタンスを良好に保ちつつ、かつ、コイル損失を低減する効果が得られる第一間隔D1と第二間隔D2との比は、0.32以上0.70以下と考えられる。
【符号の説明】
【0094】
1a、1b リアクトル
2 コイル
2a 第一端面、2b 第二端面
3 磁性コア
3a 第一コア、3b 第二コア
31 ミドルコア部
31a 第一ミドルコア部、31b 第二ミドルコア部
31g ギャップ部
32a 第一端、32b 第二端
33 サイドコア部
331 第一サイドコア部、332 第二サイドコア部
33t 傾斜面、33s 段部
34a 第一端、34b 第二端
341 第一領域、342 第二領域
35 エンドコア部
35a 第一エンドコア部、35b 第二エンドコア部
D1 第一間隔、D2 第二間隔
L 長さ、W 幅、H 高さ
1100 電力変換装置
1110 コンバータ、1111 スイッチング素子、1112 駆動回路
1115 リアクトル、1120 インバータ
1150 給電装置用コンバータ、1160 補機電源用コンバータ
1200 車両
1210 メインバッテリ、1220 モータ、1230 サブバッテリ
1240 補機類、1250 車輪
1300 エンジン
【手続補正書】
【提出日】2023-12-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0040
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0040】
以下の説明では、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向を次のように定義する。X軸方向は、コイル2の軸に沿った方向であって、第一端面2aから第二端面2bに向かう方向である。Y軸方向は、ミドルコア部31とサイドコア部33とが並列される方向であって、ミドルコア部31からサイドコア部33に向かう方向である。Y軸方向は、X軸方向に直交する。ミドルコア部31から第一サイドコア部331に向かう方向をY1方向とする。ミドルコア部31から第二サイドコア部332に向かう方向をY2方向とする。Z軸方向は、X軸方向とY軸方向の双方に直交する。Z軸方向は、X軸とY軸とを含むXY平面を水平にした場合、下から上に向かう方向である。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0055
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0055】
第一間隔D1と第二間隔D2との比は0.32以上0.70以下である。第一間隔D1と第二間隔D2との比はD1/D2で表される。比D1/D2が小さいほど、第二間隔D2が大きい。第二間隔D2が大きいほど、第二端34bの近傍領域においてサイドコア部33とコイル2との間隔が大きくなる。そのため、第二端34bの近傍領域においてサイドコア部33から第二エンドコア部35bに向けてショートカットする漏れ磁束がコイル2に鎖交することを抑制することができる。コイル2への漏れ磁束が減少するため、コイル2の損失を低減できる。比D1/D2が0.70以下であることで、コイル2への漏れ磁束が十分に抑制されるため、コイル2の損失を効果的に低減できる。比D1/D2が小さくなり過ぎる、即ち第二間隔D2が大き過ぎると、インダクタンスが減少するおそれがあり、所定のインダクタンスが得られ難くなる場合がある。比D1/D2が0.32以上であることで、インダクタンスの減少を抑制し易い。比D1/D2は、更に0.35以上0.70以下、0.40以上0.60以下でもよい。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0057
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0057】
図3を参照して、本実施形態におけるサイドコア部33の形状を詳しく説明する。ここでは、第一サイドコア部331の形状について説明する。第一サイドコア部331はテーパー形状を有する。テーパー形状とは、第一端34aから第二端34bに向かって連続的に幅が細くなる部分を有する形状のことをいう。本実施形態では、第一サイドコア部331は、全長にわたってテーパー形状に形成されている。第一サイドコア部331の内側面は、コイル2の外周面に対して傾斜する傾斜面33tを有する。傾斜面33tは、第一端34aから第二端34bに向かってコイル2の外周面から遠ざかるように傾斜する。コイル2の外周面に対する傾斜面33tの角度は、第一間隔D1と第二間隔D2との比が所定の範囲を満たすように適宜設定される。傾斜面33tの角度とは、傾斜面33tとコイル2の外周面とがな
す角度のことをいう。コイル2の外周面はX軸に平行である。傾斜面33tの角度は、第一サイドコア部331の長さに応じて適宜設定することができる。傾斜面33tの角度は、例えば1°以上5°未満、更に2°以上4°以下である。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0063
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0063】
比透磁率は、次のようにして求めることができる。第一コア3aと第二コア3bのそれぞれからリング状の測定試料を切り出す。各々の測定試料に、一次側:300巻き、二次側:20巻きの巻線を施す。B-H初磁化曲線をH=0(Oe)以上100(Oe)以下の範囲で測定し、このB-H初磁化曲線のB/Hの最大値を求める。この最大値を比透磁率とする。ここでいう磁化曲線とは、いわゆる直流磁化曲線のことである。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0090
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0090】
試料No.2-0からNo.2-4のリアクトルにおける段部の幅を表2に示す。また、各試料について、第一間隔D1、第二間隔D2、および第一間隔D1と第二間隔D2との比(D1/D2)を表1に示す。段部33sの幅が0mmである試料No.2-0は、サイドコア部33とコイル2との間の間隔がサイドコア部33の全長にわたって一定である。つまり、試料No.2-0では、第一間隔D1と第二間隔D2との比が1である。試料No.2-0における第一間隔D1および第二間隔D2はそれぞれ2mmである。