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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092420
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】調光ガラス
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1345 20060101AFI20240701BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
G02F1/1345
G02F1/13 505
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208327
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】堀川 喜美雄
【テーマコード(参考)】
2H088
2H092
【Fターム(参考)】
2H088EA34
2H088GA10
2H088HA01
2H088HA02
2H088MA20
2H092GA44
2H092GA48
2H092HA03
2H092NA25
2H092PA01
2H092QA15
2H092RA10
(57)【要約】
【課題】貼り合わせ加工時の不具合発生を抑制し、駆動エリアが電極を覆うために狭くなってしまうことのない電極構成の調光ガラスを提供する。
【解決手段】一対のガラス板2と、一対のガラス板に挟持される、透明状態と不透明状態との切り替え可能な調光フィルム8と、を有し、調光フィルムは、一対のガラス板に挟持されない部分を有し、調光フィルムは、透明状態と不透明状態との切り替え制御用の電極対6を有し、電極対は、一対のガラス板に挟持されない部分に形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のガラス板と、前記一対のガラス板に挟持される、透明状態と不透明状態との切り替え可能な調光フィルムと、を有し、
前記調光フィルムは、前記一対のガラス板に挟持されない部分を有し、
前記調光フィルムは、透明状態と不透明状態との切り替え制御用の電極対を有し、
前記電極対は、前記一対のガラス板に挟持されない部分に形成されていることを特徴とする調光ガラス。
【請求項2】
前記電極対の各電極が、前記一対のガラス板の異なる端辺に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の調光ガラス。
【請求項3】
前記電極対が複数組形成されていることを特徴とする請求項1に記載の調光ガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明度を変化させて光の透過/不透過を制御できる調光ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
電気的制御により透明/不透明を切替えすることができる調光フィルムは、様々な用途で用いられている。その使用例としては、窓ガラスに粘着材を介して貼合されたり、2枚のガラスに接着材を介して挟持されて調光ガラスとして使用されたりしている。
【0003】
調光フィルムの構成の一例としては、透明導電層が積層された1対のPETフィルム基材の透明導電層の間に液晶層を備える。調光フィルムは、透明導電層に設けられた電極を通じて液晶層に電圧が印加されることにより、液晶層の液晶分子の配向状態が変化し、入射した光を散乱させる不透明状態と、入射した光を透過させる透明状態とを切り替え可能となっている。特許文献1にはその際の電極の形成方法の提案がなされている。
【0004】
一般的な調光ガラスは、図11に示す様に、上記の様に構成された調光フィルム11を2枚のガラス13の間に挟んで貼り合わせ加工し、対になった電極12を含めた調光フィルム全体がガラス13に挟み込まれて構成されている。しかし貼り合わせ加工時および使用時において、以下のような問題が生じることが知られている。
【0005】
すなわち、
ア)ガラス13との貼り合わせ加工時、電極12周辺にシワ16やいわゆるエア噛み15が生じ易い。シワ発生は、貼り合わせ加工時に熱がかかるが、調光フィルム本体と電極材料の熱的寸法変化量が異なるためにおこると推定される。また、エア噛みは、貼り合わせ加工時、電極部の段差にエアが取り込まれ外部への排出が困難なため起こると推定される。
イ)調光ガラス設置後、使用場所から電極が見えるのは外観上好ましくない。そのため、電極を隠すように電極幅以上のカバー14を取付けるなどの処置が必要となる。これにより、透明/不透明を切替え可能な駆動エリアが狭くなるだけでなく額縁の幅が広くなるおそれもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6-281943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、貼り合わせ加工時の不具合発生を抑制し、駆動エリアが電極を覆うために狭くなってしまうことのない電極構成の調光ガラスを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、
一対のガラス板と、前記一対のガラス板に挟持される、透明状態と不透明状態との切り替え可能な調光フィルムと、を有し、
前記調光フィルムは、前記一対のガラス板に挟持されない部分を有し、
前記調光フィルムは、透明状態と不透明状態との切り替え制御用の電極対を有し、
前記電極対は、前記一対のガラス板に挟持されない部分に形成されていることを特徴とする調光ガラスである。
【0009】
上記調光ガラスにおいて、
前記電極対の各電極が、前記一対のガラス板の異なる端辺に形成されていて良い。
【0010】
上記調光ガラスにおいて、
前記電極対が複数形成されていて良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電極対の電極の段差による貼り合わせ加工時の不具合の発生を抑制でき、また透明/不透明を切替えできる駆動エリアの一部に電極を覆うカバーを設ける必要がなく、駆動エリアが狭くならない調光ガラスが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の調光ガラスの層構成例の断面模式図である。
図2】本発明の調光ガラスの構成例の平面図である。
図3】本発明の調光ガラスの構成例の平面図である。
図4】本発明の調光ガラスの構成例の平面図である。
図5】本発明の調光ガラスの構成例の平面図である。
図6】本発明の調光ガラスの構成例の平面図である。
図7】本発明の調光ガラスの構成例の平面図である。
図8】本発明の調光ガラスの構成例の平面図である。
図9】本発明の調光ガラスの作成方法の例を示す図である。
図10】本発明の調光ガラスの作成方法の別例を示す図である。
図11】従来の調光ガラスの構成例の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。また以下に示す実施形態では、発明を実施するために技術的に好ましい限定がなされているが、この限定は本発明の必須要件ではない。また以下において、同等の部材等には同一の符号を付して説明を省略することがある。
【0014】
図1は、本発明の調光ガラスの層構成例の断面模式図である。調光ガラス1は、透明導電層5付きの一対のPETフィルム4、4の間に液晶層7が配置され、透明導電層5それぞれの一端に電極6a、6bからなる電極対6が形成されて積層された調光フィルム8の両面に、接着剤層3でガラス板2がそれぞれ接着されて積層された構成となっている。
【0015】
本発明の調光ガラス1においては、電極6a、6bが、調光フィルム8の透明導電層5上の、ガラス板2から退避していて挟持されない部分に形成され、ガラス板2の間に挟まれていない。そのため、電極6a、6bがあることによって調光フィルム8に生じる段差や凹凸が、ガラス板2の貼り合わせに影響せず、電極6a、6b周辺でのシワやエア噛みが発生する恐れがない。
【0016】
電極6a、6bの形状は電極6a、6bへの電気配線の都合に合わせて任意の形状とすることができる。また、その配置は、後述する様に種々の配置とすることができる。
【0017】
液晶層7は、透明導電層5間に電圧が印加され、また解除されることで液晶の配向が制御されて、調光フィルム8の透明な状態と不透明な状態が切り替えられる。液晶は調光フィルムに一般に用いられるPDLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal)液晶、PNLC(Polymer Network Liquid Crystal)液晶などを採用できる。
【0018】
液晶層7を間に挟む透明導電層5付きのフィルムのフィルム基材としては、特に限定するものではないが、前述の様にPETフィルムが好ましい。これはPETフィルムの熱膨張率がPNLC液晶などと同等であるため、加工時に熱が加わったときにも熱膨張率の差に起因するストレスが掛かり難いためである。
【0019】
続いて、本発明の調光ガラスの構成例について具体的に説明する。図2図8は本発明の調光ガラスの構成例の平面図である。図2の例では、調光ガラス1のType1として、調光フィルム8の電極6a、6bが、ガラス板2の所定の端辺の外側に近接して形成されている例である。ガラス板2のうち調光フィルム8が間に挟まっている領域9が透明/不透明の切り替えが可能な駆動エリア9であり、後述の例でも同様とする。Type1では、電極対6が駆動エリア9の外側に形成されているので、例えば調光ガラス1を装着する窓の桟内部や壁にうまく収納することができ、不可視のエリアとすることができるため、電極対6をカバーなどで覆う必要がない。
【0020】
電極6a、6bがガラス板2の外側に形成されることで、調光フィルム8とガラス板2の貼り合わせの際に電極6a、6bに起因する段差や凹凸が影響しない。なお、電極6a、6bと区別するのは説明上の便宜のためであって、それ以外に特段の区別はない。
【0021】
図3の例では、Type2として、調光フィルム8がガラス板2の所定の端辺の外側に長く延びて、電極6a、6bがガラス板2の所定の端辺から外側に離間して形成されている例である。調光ガラス1の設置状況や電極6a、6bへの配線の都合に合わせ、この様に離間して形成しても良い。
【0022】
続いて図4の例では、Type3として、調光フィルム8の電極6a、6bがガラス板2の所定の端辺の外側に近接して形成され、電極6a、6b以外の部位の調光フィルム8が切除されている例である。設置する際に電極6a、6b以外の部位の調光フィルムが邪魔になることがない。
【0023】
続いて図5の例では、Type4として、調光フィルム8の電極6a、6bのうち、一方の電極6aがガラス板2の所定の端辺の外側に離間して形成され、他方の電極6bが所定の端辺の外側に近接して形成されている例である。電極に接続される配線の取り回し等、電気的接続時の便宜などに応じ、この様な配置としても良い。
【0024】
続いて図6の例では、Type5として、調光フィルム8の電極6a、6bがガラス板2の所定の端辺の外側に近接して、かつ厚み方向で見たときに重なるような位置に形成されている例である。すなわち、断面で見ればちょうど図1の様な配置となっている例である。平面視したとき、電極6a、6bが重なった状態であるので、配置のスペースを節約できる。従来の構成では、この様に電極を重なった配置とすると、電極に起因する段差や凹凸も重畳するため、調光フィルム8とガラス板2との貼り合わせ加工が困難となってしまっていたが、本実施形態の構成では貼り合わせ領域には当該重畳部が存しないため既述の問題点が一切発生しないという利点がある。
【0025】
続いて図7の例では、Type6として、調光フィルム8の電極6aがガラス板2の所定の端辺の外側に、電極6bが異なる端辺の外側に、それぞれ形成されている例である。電極6a、6bの配線をガラス板2の異なる端辺に分けて配線することができる。
【0026】
続いて図8の例では、Type7として、調光フィルム8の電極6aがガラス板2の所定の端辺の外側の2箇所に形成され、電極6bが他の端辺の外側の2箇所に形成されている例である。調光フィルム8およびガラス板2が大サイズの場合など、大きさに応じて複
数箇所に電極部を形成できる。また、Type7であれば、透明導電層を複数領域に分割し、分割された領域毎に独立して駆動させるような構成も採用しうる。
【0027】
図7図8の各図に示した様に、異なる端辺に電極を形成したり、端辺に複数の電極を形成したりすることもできる。従来は調光フィルム8とガラス板2の貼り合わせ時にシワやエア噛みの発生のリスクがそれだけ高くなってしまっていたが、本実施形態の調光ガラスではそのような虞は無い。従って電極の設計の自由度が上がり、電極を設ける位置や電極の数をより柔軟に設計できる。
【0028】
図9は、本実施形態の調光ガラスの作成方法の例を示す図である。所定のサイズの調光フィルム8の所定の端辺に電極6a、6bからなる電極対をまず形成する。電極を形成する方法は特に限定されず、例えば銀ペーストを均一な厚みに塗布した後乾燥させて電極とする、銅箔を導電性接着剤で貼り付ける、銅メッキにより電極を形成する、などといった公知の方法で形成することができる。
【0029】
その後、調光フィルム8を、接着剤層を設けた2枚のガラス板2で、電極6a、6bが挟み込まれない様にして貼り合わせて調光ガラス1を得る。
【0030】
図10は、本実施形態の調光ガラスの作成方法の別例を示す図である。所定のサイズの調光フィルム8の調光フィルム8に、電極対の形成が予定される所定の端辺の部分を残して接着剤層を設けた2枚のガラス板2を貼り合わせる。その後、調光フィルム8のガラス板2が貼り合わせられていない領域に、前述と同様の方法で電極6a、6bを形成する。
【0031】
本発明の調光ガラスは、上記のいずれの方法でも作成することができ、電極部の段差による貼り合わせ加工時の不具合の発生を抑制でき、駆動エリアが電極カバーなどにより狭くならない調光ガラスが得られる。
【符号の説明】
【0032】
1・・・調光ガラス
2・・・ガラス板
3・・・接着剤層
4・・・PETフィルム
5・・・透明導電層
6・・・電極対
6a、6b・・・電極
7・・・液晶層
8・・・調光フィルム
9・・・駆動エリア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11