(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092425
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】二重壁のシール構造及びキャンピングカー
(51)【国際特許分類】
B60P 3/34 20060101AFI20240701BHJP
B62D 33/00 20060101ALI20240701BHJP
B62D 33/04 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
B60P3/34 Z
B62D33/00 A
B62D33/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208332
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 和徳
(72)【発明者】
【氏名】新島 健之
(57)【要約】
【課題】第1壁の汚れを抑制する。
【解決手段】二重壁30のシール構造は第1壁31と第1壁31に対して上下方向に移動可能に設けられる第2壁32とにより構成される二重壁30で用いられる。第1壁31は、下側壁31aと、下側壁31aに接続されるとともに下側壁31aから横方向にオフセットする上側壁31bとを有する。第2壁32は下降した状態で下側壁31aと上下方向に離間して重なり合う。二重壁30のシール構造は段差部33に設けられ、上側壁31bから横方向に離れるほど高さが低くなる傾斜面41aを有する傾斜部41と、傾斜面41aと上下方向に対向するとともに上側壁31bに当接して第2壁32に設けられ、第2壁32が下降した状態で傾斜面41aに従って変形する第1パッキン51Aとを備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1壁と、前記第1壁に対して上下方向に移動可能に設けられる第2壁とにより構成される二重壁のシール構造であって、
前記第1壁は、下側壁と、前記下側壁に接続されるとともに前記下側壁から横方向にオフセットする上側壁とを有し、
前記第2壁は、下降した状態で前記下側壁と上下方向に離間して重なり合い、
前記下側壁と前記上側壁との互いの接続部に形成される段差部に設けられ、前記上側壁から横方向に離れるほど高さが低くなる傾斜面を有する傾斜部と、
前記傾斜面と上下方向に対向するとともに前記上側壁に当接して前記第2壁に設けられ、前記第2壁が下降した状態で前記傾斜面に従って変形する第1シール部材と、
を備えることを特徴とする二重壁のシール構造。
【請求項2】
請求項1に記載の二重壁のシール構造であって、
前記第1シール部材と並んで前記第2壁に設けられ、前記第2壁が下降した状態で前記第2壁と前記下側壁との間でシールを行う第2シール部材をさらに備えることを特徴とする二重壁のシール構造。
【請求項3】
請求項1に記載の二重壁のシール構造であって、
前記第1シール部材は中空構造を有する、
ことを特徴とする二重壁のシール構造。
【請求項4】
請求項1に記載の二重壁のシール構造であって、
前記第1シール部材は板状の形状を有する、
ことを特徴とする二重壁のシール構造。
【請求項5】
請求項1に記載の二重壁のシール構造であって、
前記第2シール部材はスポンジ製である、
ことを特徴とする二重壁のシール構造。
【請求項6】
請求項1から5いずれか1項に記載の二重壁のシール構造を備えるキャビンが架装されている、
ことを特徴とするキャンピングカー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二重壁のシール構造及びキャンピングカーに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には主荷室及び副荷室からなる荷室が拡張可能な車両用荷室が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上方に拡張する構造のキャビンでは第1壁と、第1壁に対して上下方向に移動可能な第2壁とを備える二重壁が形成される。第1壁は下側壁と、当該下側壁に接続されるとともに当該下側壁から横方向にオフセットする上側壁とを有する。第2壁は第1壁の下側壁に上方から重ねられ、第1壁の上側壁とともに横方向に二重壁を構成する。
【0005】
このような二重壁では、第2壁が下降した状態で第1壁の下側壁に当接すると、手や指などを挟み込む危険性がある。このため、第2壁が下降した状態で第2壁と下側壁との間に隙間を設けることが考えられる。しかしながらこの場合は、水やごみが隙間に入り込んでそのまま滞留する虞がある。結果、例えば滞留した水やごみが第2壁の上昇の際に第1壁の汚れとして目立つ虞がある。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたもので、第1壁の汚れを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1壁と、第1壁に対して上下方向に移動可能に設けられる第2壁とにより構成される二重壁のシール構造であって、第1壁は下側壁と、下側壁に接続されるとともに下側壁から横方向にオフセットする上側壁とを有し、第2壁は下降した状態で下側壁と上下方向に離間して重なり合い、下側壁と上側壁との互いの接続部に形成される段差部に設けられ上側壁から横方向に離れるほど高さが低くなる傾斜面を有する傾斜部と、傾斜面と上下方向に対向するとともに上側壁に当接して第2壁に設けられ、第2壁が下降した状態で傾斜面に従って変形する第1シール部材とを備えることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、上側壁に当接する第1シール部材を第2壁の下降中にワイパーとして機能させることで、水やごみを下方に集めることができる。またその後、水やごみを傾斜面によって外側に排出することができる。さらに、第2壁が下降した状態では第1シール部材が傾斜面に従って変形することで、第2壁と傾斜面との間をシールすることができる。結果、第1壁の下側壁と第2壁の間の隙間に入り込んだ水やごみがそのまま滞留することを抑制すると共に、外部からその隙間へ水やごみが入り込むことを抑制することができるため、第1壁の汚れを抑制できる。
【0009】
また本発明は、第1シール部材と並んで第2壁に設けられ、第2壁が下降した状態で第2壁と下側壁との間でシールを行う第2シール部材をさらに備えることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、第2壁が下降した状態で、第2シール部材により第2壁及び下側壁間の隙間を埋めることで、水やごみが入り込むことを抑制できる。
【0011】
また本発明は、第1シール部材は中空構造を有することを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、第2壁の下降中に第1シール部材で水やごみを適切に下方に集めることができる。またその後、第2壁が下降した状態で、傾斜面に従って変形する第1シール部材により、第2壁と下側壁との間を適切にシールすることができる。
【0013】
また本発明は、第1シール部材は板状の形状を有することを特徴とする。
【0014】
この発明でも、第2壁の下降中に水やごみを適切に下方に集めることができる。またその後、第2壁が下降した状態で、傾斜面に従って変形する第1シール部材により、第2壁と下側壁との間を適切にシールすることができる。
【0015】
また本発明は、第2シール部材はスポンジ製であることを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、第2壁と下側壁との間での手や指の挟まれを防止しつつも、水やごみが入り込むことを抑制できる。
【0017】
また本発明は、上記二重壁のシール構造を備えるキャビンが架装されていることを特徴とするキャンピングカーである。
【0018】
この発明によれば、キャンピングカーに架装されたキャビンにおいて第1壁の下側壁と第2壁との間の隙間に入り込んだ水やごみがそのまま滞留することを抑制できると共に、外部からその隙間へ水やごみが入り込むことを抑制できる。また、走行中に風切音の発生を抑制することもできる。
【発明の効果】
【0019】
これらの態様によれば、第1壁の汚れを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態に係るキャビンの外観斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るキャビンの外観背面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るキャビンの要部の縦断面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る二重壁のシール構造の第1の要部拡大図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る二重壁のシール構造の第2の要部拡大図である。
【
図6】
図4と同様の状態で変形例のパッキンを示す図である。
【
図7】
図5と同様の状態で変形例のパッキンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0022】
図1、
図2はキャビン1の外観図である。
図1、
図2ではキャンピングカー100に架装された状態でキャビン1を示す。
図1ではキャンピングカー100の左後方、
図2では後方から見たキャビン1の外観を示す。
図1ではキャビン1が拡張していない基本状態を示し、
図2ではキャビン1が上方及び側方に拡張した状態を示す。キャンピングカー100の上方、下方(鉛直方向)はキャビン1の上方、下方に、キャンピングカー100の側方(左右方向)はキャビン1の側方に、キャンピングカー100の前方、後方はキャビン1の前方、後方に対応する。
【0023】
キャンピングカー100は破線で示す小型トラックをベース車両とし、当該小型トラックのキャブ50後方にキャビン1を架装した構成とされる。キャビン1は木造の部屋構造体であり、運転席が設けられたキャブ50とは別にキャンピングカー100に設けられる。キャビン1には審美性や剛性等の観点からアルミパネルやスチールフレーム等の金属部材も適宜用いられる。キャビン1は断熱材を挟み込んだ壁構造を有し、これによりキャビン1の室内空間の断熱性が高められる。キャビン1の室内空間はキャンプ地での居住などユーザの居住空間として利用される。
【0024】
キャビン1は拡張構造を有し、上方に拡張可能とされる。このため、キャンピングカー100では走行中にキャビン1を拡張しないことで風の抵抗を軽減するとともに車両重心を低くすることができる。また、キャンプ滞在中にはキャビン1を拡張することで広い室内空間の利用が可能になる。
【0025】
キャビン1は拡張構造の構成要素として第1シェル10と第2シェル20とを有する。第1シェル10は下側シェルであり、キャンピングカー100の車体に設けられる。第1シェル10は上面が開口した箱状の形状を有し、第1シェル10には第2シェル20が重ねられる。第2シェル20は天井シェルであり、下面が開口した箱状の形状を有する。第2シェル20は上方から第1シェル10に被せられ第1シェル10を覆う。従って、第2シェル20は第1シェル10の外側に設けられる。
【0026】
図2に示すように、第1シェル10の側方サイズは上側部分10bのほうが下側部分10aよりも一回り小さく、第2シェル20は上側部分10bに覆い被さるかたちで上方から第1シェル10に重ねられる。上側部分10bの側壁は第2シェル20の側壁の厚さに応じて下側部分10aの側壁よりもキャビン1の内側に設けられる。
【0027】
第2シェル20は図示しないレールを介して上下方向に移動可能に第1シェル10に設けられる。当該レールには例えばリニアガイドのスライドレールを用いることができる。キャビン1には第2シェル20を駆動する図示しないアクチュエータが設けられ、当該アクチュエータが基本状態から第2シェル20を上方に駆動すると、第2シェル20が上方に移動する。結果、キャビン1が上方に拡張した状態になり、上方への拡張が行われる。アクチュエータには油圧アクチュエータである油圧シリンダを用いることができる。
【0028】
図2に示すように、キャビン1はさらに側方(右側方)にも拡張可能に構成される。
図2ではキャビン1が上方及び側方に拡張した状態を示すが、キャビン1は基本状態から側方に拡張した状態にすることもできる。キャビン1が上方に拡張した状態はキャビン1が上方及び側方に拡張した状態を含む。
【0029】
図3はキャビン1の要部の縦断面図である。
図3では
図1に示す平面Aによる断面でキャビン1の左側方の部分を要部として示す。第1シェル10は第1壁31を有し、第2シェル20は第2壁32を有する。第1壁31は第1シェル10の側壁を構成し、第2壁32は第2シェル20の側壁を構成する。このため、第2壁32は第1壁31に対し上下方向に移動可能に設けられる。第1シェル10では第1シェル10の側壁を含む周壁が第1壁31と同様に構成され、第2シェル20では第2シェル20の側壁を含む周壁が第2壁32と同様に構成される。第1シェル10と第2シェル20とは二重壁30を構成する。
【0030】
第1壁31は二重壁30のシール構造の構成要素であり、下側壁31aと上側壁31bとを有する。下側壁31aは下側部分10aの側壁であり、上側壁31bは上側部分10bの側壁である。下側壁31aと上側壁31bとはともに平板状の形状を有し、上側壁31bは下側壁31aから横方向(キャビン1の側方)にオフセットして配置される。上側壁31bは下側壁31aからキャビン1の内側にオフセットする。上側壁31bは下側壁31aに接続される。下側壁31aと上側壁31bの互いの接続部には、段差部33が形成される。段差部33は横方向に互いにオーバーラップつまり重なり合う下側壁31aの上端部と上側壁31bの下端部とが互いに接続されることで形成される。
【0031】
第2壁32は二重壁30のシール構造の構成要素であり、平板状の形状を有する。第2壁32は上側壁31bと横方向にオーバーラップ及び離間して配置される。第2壁32は下側壁31aと上下方向にオーバーラップして配置される。第2壁32と下側壁31aとは外面(上側壁31b側とは反対側の面)同士が面一になるように配置される。第2壁32と下側壁31aとは概ね同じ厚さに設定される。第2壁32は下側壁31aに上方から重ねられ、二重壁30は第1壁31の上側壁31bと第2壁32とにより形成される。
【0032】
第2壁32は下降した状態(キャビン1が拡張していない状態)で下側壁31aと上下方向に離間して配置される。これにより、第2壁32と下側壁31bとの間に隙間を設けて手や指の挟まれを防止することができる。その一方で、そのままの状態では第2壁32が下降した状態で当該隙間に水やごみが入り込んでそのまま滞留し得る。結果、例えば滞留した水やごみが第2壁32の上昇の際に第1壁31の汚れとして目立つことが懸念される。
【0033】
本実施形態ではキャビン1が二重壁30のシール構造の構成要素として着座部40とパッキン50Aとをさらに備える。着座部40は段差部33に設けられる。着座部40には第2壁32が下降した状態でパッキン50Aが当接する。パッキン50Aは第2壁32に設けられ、第2壁32が下降した状態で上下方向に離間する第2壁32と下側壁31aとの間でシールを行う。パッキン50Aは第2壁32の下端部に設けられ、第1パッキン51Aと第2パッキン52とを備える。着座部40とパッキン50Aとはさらに次に説明するように構成される。
【0034】
図4、
図5は二重壁30のシール構造の要部拡大図である。
図4、
図5では
図3に示すB部を拡大して示す。
図4では第2壁32が上昇或いは下降中で且つパッキン50Aが着座部40に当接していない状態を示す。
図5では第2壁32が下降した状態を示す。
【0035】
着座部40は例えば金属製或いは樹脂製であり、傾斜部41と平端部42とを有する。傾斜部41は上側壁31bから横方向に離れるほど高さが低くなる傾斜面41aを有する。平端部42は傾斜部41よりも外側(横方向に上側壁31bから離れる側)で段差部33に設けられる。平端部42は傾斜面41aに連なる平坦面42aを有する。傾斜面41aと平坦面42aとは他の面を介して接続されてもよい。平坦面42aを含む平端部42は特段設けられなくてもよい。
【0036】
第1パッキン51Aはゴム製であり、断面矩形状の形状を有する。第1パッキン51Aは第2壁32に設けられる。第1パッキン51Aは第2壁32の下端部に設けられ、傾斜面41aと上下方向に対向して配置される。第1パッキン51Aは中空構造を有し、上側壁31bに当接する。第1パッキン51Aは第2壁32に設けられた状態で上側壁31bに押し当てられ、中空構造により変形し易くなっている。
【0037】
このように構成された第1パッキン51Aは、第2壁32が下降する際に上側壁31bに押し当てられた状態で変形しながら下降し、上側壁31bの表面に付着した水やごみを拭い落とすワイパーとして機能する。また、第1パッキン51Aにより下方に集められた水やごみは傾斜面41aによって外側に排出される。この際、第1パッキン51Aは傾斜面41aに倣って内側から徐々に変形し、中空構造により傾斜面41aとの密着性も良好となる。結果、異物の掃き出し効果が高められ、異物の排出が促進される。さらに、
図5に示すように第2壁32が下降した状態で、第1パッキン51Aは傾斜面41aに従って変形し、第2壁32と傾斜面41aとの間をシールする。結果、水やごみが外部から第1パッキン51Aよりも内側に入り込むことが抑制される。さらに、キャンピングカー100の走行中には、第1パッキン51Aにより第1壁31の上側壁31bと第2壁32との間の隙間に風が入り込むことが防止されることで、走行中の風切音の発生も抑制される。第1パッキン51Aは傾斜面41aに当接してから第2壁32の下降に応じて傾斜面41aに従い次第に変形する。これによっても、第1パッキン51Aにより集められた水やごみは、傾斜面41aに沿って外側に押し出されるようにして排出される。
【0038】
第2パッキン52はスポンジ製であり、断面矩形状の形状を有する。第2パッキン52の材質にはNBR(ニトリルゴム)が用いられ、第2パッキン52はNBR系スポンジとされる。NBR系スポンジはNBRを発泡させスポンジにしたものである。第2パッキン52の材質にはEPDM(エチルプロピレンゴム)などが用いられてもよい。第2パッキン52は第2壁32に設けられる。第2パッキン52は第2壁32の下端部に設けられ、上側壁31bから横方向に離れる側に第1パッキン51Aと並んで配置される。第1パッキン51Aと第2パッキン52との配置は入れ替えられてもよい。第2パッキン52は平坦面42aと上下方向に対向して配置される。
図5に示すように、第2パッキン52は第2壁32が下降した状態で平坦面42aに当接することで、第2壁32と下側壁31aとの間でシールを行う。これにより、第2壁32が下降した状態で第2壁32及び下側壁31a間の隙間が埋められ、水やごみが入り込むことが抑制される。
【0039】
第2パッキン52はスポンジ製なので、下降してきた第2壁32と平坦面41aとの間に仮に手や指を入れてしまっていたとしても、第2パッキン52が変形するだけで手や指が挟まれることはない。ゴム製でさらに中空構造の第1パッキン51Aについても同様である。手や指が挟まれる危険性は、第1パッキン51A及び第2パッキン52の厚さ寸法を十分に確保することでなくすことができる。
【0040】
第1パッキン51Aの厚さは第2パッキン52の厚さよりも大きくてもよい。つまり、第1パッキン51Aの縦方向の寸法は第2パッキン52の縦方向の寸法より大きくてもよい。これにより、第1パッキン51Aの下面を第2パッキン52の下面よりも突出させ、第2シェル20の最下降位置付近でまず第1パッキン51Aを傾斜面41aに接触させることができる。結果、異物の掃き出し効果が高くなる。第2パッキン52を設ける代わりに、第1パッキン51Aが第2パッキン52の位置に追加して設けられてもよいし、或いは第2パッキン52の位置まで延長して設けられてもよい。この場合でも、第2壁32が下降した状態で第2壁32及び下側壁31a間の隙間を埋めることで水やごみが入り込むことを抑制でき、また、手や指の挟まれを防止できる。このことは次に説明するパッキン50Bについても同様であり、パッキン50Aの代わりに次のように構成されるパッキン50Bが設けられてもよい。
【0041】
図6、
図7は変形例のパッキン50Bを示す図である。
図6、
図7では
図4、
図5と同様の状態でパッキン50Bを示す。パッキン50Bは第1パッキン51Bと第2パッキン52とを有する。第1パッキン51Bはゴム製であり、板状の形状を有する。第1パッキン51Bは上側壁31bに対しへらとして機能し、上側壁31bを拭うとともに表面にこびりついた異物をはがす作用を有する。このような第1パッキン51Bはへら形状を有し、へら形状は先端部が尖った形状とすることができる。また、第1パッキン51Bの先端部は概ね水平ではなく、内側に向かって斜め下に傾斜して設けられてもよい。
【0042】
第1パッキン51Bの先端部は他の部分よりも下方に厚さが増した段状部であってもよく、当該段状部は第1パッキン51Aと同様の中空構造を有してもよい。この場合、段状部で上側壁31bを拭うとともに表面にこびりついた異物をはがすことに加えて、中空構造で第1パッキン51Aと同様の作用を得ることができる。
【0043】
第1パッキン51Bは第2壁32が下降する際に先端部が上側壁31bに押し当てられた状態で変形しながら下降し、この際にへら形状により上側壁31bの表面にこびりついた異物をはがしつつ、上側壁31bの表面から水やごみを拭い落とす。また、第1パッキン51Bにより下方に集められた水やごみは傾斜面41aによって外側に排出される。さらに、
図7に示すように第2壁32が下降した状態で、第2パッキン51Bは傾斜面41aに従って変形し、第2壁32と傾斜面41aとの間をシールする。これにより、第1パッキン51Bよりも内側に水やごみが入り込むことや、走行中の風切音の発生が抑制される。第1パッキン51Aと第1パッキン51Bとは第1シール部材に相当し、第2パッキン52は第2シール部材に相当する。
【0044】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0045】
二重壁30のシール構造は第1壁31と、第1壁31に対して上下方向に移動可能に設けられる第2壁32とにより構成される二重壁30で用いられる。第1壁31は、下側壁31aと、下側壁31aに接続されるとともに下側壁31aから横方向にオフセットする上側壁31bとを有する。第2壁32は下降した状態で下側壁31aと上下方向に離間して重なり合う。二重壁30のシール構造は下側壁31aと上側壁31bとの互いの接続部に形成される段差部33に設けられ、上側壁31bから横方向に離れるほど高さが低くなる傾斜面41aを有する傾斜部41と、傾斜面41aと上下方向に対向するとともに上側壁31bに当接して第2壁32に設けられ、第2壁32が下降した状態で傾斜面41aに従って変形する第1パッキン51Aとを備える。
【0046】
この構成によれば、上側壁31bに当接する第1パッキン51Aを第2壁32の下降中にワイパーとして機能させることで、水やごみを下方に集めることができる。またその後、水やごみを傾斜面41aによって外側に排出することができる。さらに、第2壁32が下降した状態では第1パッキン51Aが傾斜面41aに従って変形することで、第2壁32と傾斜面41aとの間をシールすることができる。結果、第1壁31の下側壁31aと第2壁32の間の隙間に入り込んだ水やごみがそのまま滞留することを抑制できると共に、外部からその隙間へ水やごみが入り込むことを抑制できるので、第1壁31の汚れを抑制できる。
【0047】
二重壁30のシール構造は、第1パッキン51Aと並んで第2壁32に設けられ、第2壁32が下降した状態で第2壁32と下側壁31aとの間でシールを行う第2パッキン52をさらに備える。
【0048】
この構成によれば、第2壁32が下降した状態で、第2パッキン52により第2壁32及び下側壁31a間の隙間を埋めることで、水やごみが入り込むことを抑制できる。
【0049】
第1パッキン51Aは中空構造を有する。このような構成によれば、第2壁32の下降中に第1パッキン51Aで水やごみを適切に下方に集めることができ、またその後、第2壁32が下降した状態で、傾斜面41aに従って変形する第1パッキン51Aにより、第2壁32と下側壁31aとの間を適切にシールすることができる。
【0050】
第1パッキン51Aの代わりに板状の形状を有する第1パッキン51Bが用いられてもよい。この場合、上側壁31bの表面にこびりついた異物をはがしつつ第2壁32の下降中に水やごみを適切に下方に集めることができ、また、その後傾斜面41aに従って変形する第1パッキン51Bにより、第2壁32と下側壁31aとの間を適切にシールすることができる。
【0051】
第2パッキン52はスポンジ製である。このような構成によれば、第2壁32と下側壁31aとの間での手や指の挟まれを防止しつつも、水やごみが入り込むことを抑制できる。
【0052】
上述した二重壁30のシール構造を備えるキャビン1は、第1シェル10と、第1シェル10と重ねられ上方に移動することで上方への拡張を行う第2シェル20と、を備える。第1壁31は第1シェル10の側壁を構成し、第2壁20は第2シェル20の側壁を構成する。キャンピングカー100はキャビン1が架装されている。
【0053】
このようなキャンピングカー100によれば、キャビン1において第1壁31の下側壁31aと第2壁32との間の隙間に入り込んだ水やごみがそのまま滞留することを抑制できる共に、外部からその隙間へ水やごみが入り込むことを抑制できる。また、キャビン1が架装されているキャンピングカー100によれば、走行中に風切音の発生を抑制することもできる。
【0054】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0055】
例えば二重壁30のシール構造はスライドドアや蓋などキャビン1以外にも適用することができる。また、キャビン1はキッチンカーなどキャンピングカー100以外の車両に用いることもできる。キャビン1は荷物や貨物等を収容するコンテナとして用いられてもよい。キャビン1は被牽引車両に搭載されてもよく、移動式住宅として用いられてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1・・・キャビン、10・・・第1シェル、20・・・第2シェル、30・・・二重壁、31・・・第1壁、31a・・・下側壁、31b・・・上側壁、32・・・第2壁、33・・・段差部、41・・・傾斜部、41a・・・傾斜面、50A、50B・・・パッキン、51A、51B・・・第1パッキン、52・・・第2パッキン、100・・・キャンピングカー