(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092431
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】蓄電デバイスの製造方法および固定用治具
(51)【国際特許分類】
H01M 50/169 20210101AFI20240701BHJP
H01M 50/103 20210101ALI20240701BHJP
H01M 50/15 20210101ALI20240701BHJP
H01G 11/06 20130101ALI20240701BHJP
H01G 11/84 20130101ALI20240701BHJP
【FI】
H01M50/169
H01M50/103
H01M50/15
H01G11/06
H01G11/84
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208345
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】鹿田 勝也
【テーマコード(参考)】
5E078
5H011
【Fターム(参考)】
5E078AA14
5E078AB02
5E078AB06
5E078LA07
5H011AA09
5H011DD13
5H011DD26
(57)【要約】
【課題】レーザ抜けが生じにくい蓄電デバイスの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明により、ケース本体12と封口板14と電極体20とを備える蓄電デバイス100の製造方法が開示される。かかる製造方法は、ケース本体12の長側壁12bの側からケース本体12と封口板14とに対して第1の荷重P1を加えてケース本体12と封口板14と挟持する一対の長辺クランプ部231,232と、一対の長辺クランプ部231,232の組立体100Aと対向する側の面にそれぞれ設けられ、組立体100Aに対して第1の荷重P1よりも小さい第2の荷重P2を加える弾性部240と、を備える固定用治具200を用意する治具用意工程と、組立体100Aを固定用治具200によって固定する組立体固定工程と、組立体100Aを固定した状態で封口板14とケース本体12とをレーザ溶接するレーザ溶接工程と、を含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状の底壁と、前記底壁の長辺から延び相互に対向する一対の長側壁と、前記底壁の短辺から延び相互に対向する一対の短側壁と、前記底壁に対向する開口と、を有するケース本体と、
前記ケース本体の前記開口内に配置され、外周縁部が前記ケース本体の前記開口の内周縁部とレーザ溶接されている矩形状の封口板と、
前記ケース本体に収容される電極体と、
を備える蓄電デバイスの製造方法であって、
前記電極体を前記ケース本体の内部に収容し、かつ前記ケース本体の前記開口内に前記封口板を配置して、組立体を作製する組立体作製工程と、
前記ケース本体の前記長側壁の側から、前記ケース本体と前記封口板とに対して第1の荷重を加えて前記ケース本体と前記封口板と挟持する一対の長辺クランプ部と、一対の前記長辺クランプ部の前記組立体と対向する側の面にそれぞれ設けられ、前記組立体に対して前記第1の荷重よりも小さい第2の荷重を加える1つまたは複数の弾性部と、を備える固定用治具を用意する治具用意工程と、
前記組立体を前記固定用治具によって固定する組立体固定工程と、
前記組立体を前記固定用治具によって固定した状態で、前記封口板と前記ケース本体とをレーザ溶接するレーザ溶接工程と、
を含む、蓄電デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記弾性部は、複数であり、
複数の前記弾性部は、平面視で前記長側壁に沿って点在している、
請求項1に記載の蓄電デバイスの製造方法。
【請求項3】
前記底壁から前記開口に向かう方向を高さ方向としたときに、
複数の前記弾性部は、それぞれ、前記高さ方向において、前記長側壁のうち、前記封口板の下端よりも前記底壁に近い側であって、かつ、前記電極体の上端よりも前記開口に近い側を押圧するように配置されている、
請求項2に記載の蓄電デバイスの製造方法。
【請求項4】
複数の前記弾性部のうち少なくとも1つは、前記長側壁に当接する当接部と、前記当接部に取り付けられ、前記長側壁に近づく方向と前記長側壁から遠ざかる方向とに伸縮する圧縮ばねと、を有する、
請求項1から3のいずれか1つに記載の蓄電デバイスの製造方法。
【請求項5】
複数の前記弾性部のうち少なくとも1つは、前記長側壁に近づく方向と前記長側壁から遠ざかる方向とに弾性変形するゴムまたはゴム弾性を有する軟質樹脂を有する、
請求項1から3のいずれか1つに記載の蓄電デバイスの製造方法。
【請求項6】
前記弾性部は、平面視で前記長側壁に沿って延びる帯状部分を有する、
請求項1に記載の蓄電デバイスの製造方法。
【請求項7】
前記弾性部は、前記長側壁に近づく方向と前記長側壁から遠ざかる方向とに弾性変形するゴムまたはゴム弾性を有する軟質樹脂を有する、
請求項6に記載の蓄電デバイスの製造方法。
【請求項8】
前記弾性部は、前記組立体と対向する側の面に金属製の放熱板を有する、
請求項6または7に記載の蓄電デバイスの製造方法。
【請求項9】
矩形状の底壁と、前記底壁の長辺から延び相互に対向する一対の長側壁と、前記底壁の短辺から延び相互に対向する一対の短側壁と、前記底壁に対向する開口と、を有するケース本体と、前記ケース本体の前記開口内に配置される矩形状の封口板と、前記ケース本体に収容される電極体と、を備える組立体に対して、前記封口板の外周縁部と前記ケース本体の前記開口の内周縁部とをレーザ溶接する際に用いられる固定用治具であって、
前記ケース本体の前記長側壁の側から、前記ケース本体と前記封口板とに対して第1の荷重を加えて前記ケース本体と前記封口板と挟持する一対の長辺クランプ部と、
一対の前記長辺クランプ部の前記組立体と対向する側の面にそれぞれ設けられ、前記組立体に対して前記第1の荷重よりも小さい第2の荷重を加える1つまたは複数の弾性部と、
を備える、固定用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電デバイスの製造方法および固定用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、矩形状の底壁と、底壁の長辺から延び相互に対向する一対の長側壁と、底壁の短辺から延び相互に対向する一対の短側壁と、底壁に対向する開口と、を有するケース本体と、ケース本体の開口内に配置され、外周縁部がケース本体の開口の内周縁部とレーザ溶接されている矩形状の封口板(蓋体)と、ケース本体に収容される電極体と、を備えた蓄電デバイスが知られている。この種の蓄電デバイスは、例えばケース本体の内部に電極体を収容し、ケース本体の開口内に封口板を配置した後、封口板とケース本体とをレーザ溶接することで製造される。
【0003】
これに関連する従来技術文献として、特許文献1~4が挙げられる。例えば特許文献1には、一対のブロック状のクランプ(治具)でケース本体の長側壁の上端部を押圧固定し、この状態で封口板とケース本体とをレーザ溶接することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-113160号公報
【特許文献2】特開2013-187087号公報
【特許文献3】特開2019-186156号公報
【特許文献4】特開2021-086749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、車両等に搭載される電池では、ますます高容量化が進み、電極体のサイズが大きくなっている。これに伴ってケース本体や封口板が長くなると、特に長辺方向でケース本体および封口板のそれぞれの加工誤差(公差寸法や真直度)が大きくなる。その結果、本発明者の検討によれば、ケース本体と封口板を組み合わせたときに、ケース本体の長側壁と封口板との間に最大で0.094mm程度の隙間が生じることがあった。ケース本体と封口板との間に大きな隙間があると、レーザ溶接時に隙間からケース本体内にレーザ光が入り込んでしまう、所謂レーザ抜けが生じる虞がある。レーザ抜けによってケース本体内に入り込んだレーザ光が電極体にあたると、電極体が焼けこげたり内部短絡したりして、損傷することがありうる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、レーザ溶接時にレーザ抜けが生じにくい蓄電デバイスの製造方法および固定用治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明により、矩形状の底壁と、上記底壁の長辺から延び相互に対向する一対の長側壁と、上記底壁の短辺から延び相互に対向する一対の短側壁と、上記底壁に対向する開口と、を有するケース本体と、上記ケース本体の上記開口内に配置され、外周縁部が上記ケース本体の上記開口の内周縁部とレーザ溶接されている矩形状の封口板と、上記ケース本体に収容される電極体と、を備える蓄電デバイスの製造方法が提供される。かかる製造方法は、上記電極体を上記ケース本体の内部に収容し、かつ上記ケース本体の上記開口内に上記封口板を配置して、組立体を作製する組立体作製工程と、上記ケース本体の上記長側壁の側から、上記ケース本体と上記封口板とに対して第1の荷重を加えて上記ケース本体と上記封口板と挟持する一対の長辺クランプ部と、一対の上記長辺クランプ部の上記組立体と対向する側の面にそれぞれ設けられ、上記組立体に対して上記第1の荷重よりも小さい第2の荷重を加える1つまたは複数の弾性部と、を備える固定用治具を用意する治具用意工程と、上記組立体を上記固定用治具によって固定する組立体固定工程と、上記組立体を上記固定用治具によって固定した状態で、上記封口板と上記ケース本体とをレーザ溶接するレーザ溶接工程と、を含む。
【0008】
上記製造方法では、治具用意工程において、一対の長辺クランプ部に弾性部を備えた固定用治具を用意し、組立体固定工程において、かかる固定用治具で組立体を固定する。すると弾性部は、ケース本体の長側壁と封口板との間に隙間が開いている個所で、長側壁を封口板側に押圧するように作用する。その結果、弾性部を備えていない従来の固定用治具を用いる場合と比べて、相対的に長側壁を封口板に対して好適に密着させて、隙間を小さくすることができる。したがって、レーザ溶接工程においてレーザ抜けが生じることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る蓄電デバイスを模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1のII-II線に沿う模式的な縦断面図である。
【
図3】
図3は、組立体固定工程を説明する模式的な平面図である。
【
図4】
図4は、
図3のIV-IV線に沿う模式的な縦断面図である。
【
図5】
図5は、弾性部の機能を説明するための平面図であり、
図5(A)は組立体作製工程、
図5(B)は組立体固定工程の状態をそれぞれ表している。
【
図6】
図6は、第1変形例に係る弾性部近傍の模式的な縦断面図である。
【
図7】
図7(A)は、第2変形例に係る
図6相当図であり、
図7(B)は、第2変形例に係る
図5(B)相当図である。
【
図8】
図8(A)は、第3変形例に係る
図6相当図であり、
図8(B)は、第3変形例に係る
図5(B)相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、ここで開示される技術のいくつかの好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって、ここで開示される技術の実施に必要な事柄(例えば、ここで開示される技術を特徴付けない蓄電デバイスの一般的な構成および製造プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここで開示される技術は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、本明細書において範囲を示す「A~B」の表記は、「A以上B以下」の意と共に、「Aを超える」および「B未満」の意を包含するものとする。
【0011】
<蓄電デバイス>
図1は、蓄電デバイス100の模式的な斜視図である。
図2は、
図1のII-II線に沿う模式的な縦断面図である。なお、以下の説明において、図面中の符号L、R、F、Rr、U、Dは、左、右、前、後、上、下を表す。また、図面中の符号Xは、蓄電デバイス100の短辺方向(厚み方向)を示し、符号Yは、短辺方向と直交する長辺方向を示し、符号Zは、蓄電デバイス100の高さ方向を示す。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、蓄電デバイス100の設置形態を何ら限定するものではない。
【0012】
蓄電デバイス100は、例えば、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池等の二次電池であってもよく、リチウムイオンキャパシタや電気二重層キャパシタ等であってもよい。蓄電デバイス100は、ここでは二次電池、具体的にはリチウムイオン二次電池である。
【0013】
図2に示すように、蓄電デバイス100は、電池ケース10と、電極体20と、を備えている。図示は省略するが、蓄電デバイス100は、ここではさらに非水電解液を備えている。非水電解液としては、一般的な非水電解液二次電池(例えば、リチウムイオン二次電池)で使用されるものを特に制限なく使用できる。ただし、他の実施形態において、電解質は固体状(固体電解質)で、電極体20と一体化されていてもよい。
【0014】
電池ケース10は、電極体20および非水電解液を収容する容器である。
図1に示すように、電池ケース10は、ここでは扁平かつ有底の直方体形状(角形)の外形を有する。電池ケース10の材質は、従来から使用されているものと同じでよく、特に制限はない。電池ケース10は、金属製であり、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金等からなることが好ましい。電池ケース10は、ここではアルミニウム製である。
図2に示すように、電池ケース10は、ケース本体12と、封口板(蓋体)14と、を備えている。
【0015】
ケース本体12は、有底かつ角筒形である。ケース本体12は、
図1に示すように、矩形状の底壁12aと、底壁12aの長辺から延び相互に対向する一対の長側壁12bと、底壁12aの短辺から延び相互に対向する一対の短側壁12cと、底壁12aに対向する開口12h(
図2参照)と、を備えている。長側壁12bおよび短側壁12cの厚み(板厚)は、典型的には1mm以下、例えば0.3~0.5mmである。大容量の蓄電デバイス100において、長側壁12bの長辺方向Yの長さは、10cm以上、20cm以上、30cm以上でありうる。短側壁12cの短辺方向Xの長さは、長側壁12bの長辺方向Yの長さの1/3以下、1/4以下、1/5以下、1/6以下でありうる。長側壁12bは、短側壁12cよりも面積が大きい。開口12hは、一対の長側壁12bの封口板14側の端部と一対の短側壁12cの封口板14側の端部とで区画されている。開口12hは、矩形状である。
【0016】
なお、本明細書において「矩形状」とは、完全な矩形状(長方形状)に加えて、矩形状の長辺と短辺とを接続する角部がR状になっている形状や、角部に切り欠きを有する形状等をも包含する用語である。また、以下の説明では、ケース本体12の開口12hおよび封口板14側を「上」、ケース本体12の底壁12a側を「下」という場合がある。
【0017】
封口板14は、開口12hを封口する矩形状の板状部材である。
図2に示すように、封口板14は、ケース本体12の開口12h内に配置されている。封口板14は、ケース本体12の底壁12aと対向している。平面視において、封口板14の外形は、開口12hよりも小さい。封口板14の厚み(板厚)は、典型的には長側壁12bよりも厚く、例えば0.5~5mm、1~2mmである。封口板14の外周縁部は、ケース本体12の開口12hの内周縁部と全周に亘ってレーザ溶接されている。封口板14の外周縁部には、全周に亘ってレーザ溶接部Wが形成されている。これによって、電池ケース10が一体化されると共に、気密に封止(密閉)されている。なお、
図1では、レーザ溶接部Wの図示を省略している。
【0018】
図1、
図2に示すように、封口板14には、正極端子30および負極端子40が取り付けられている。正極端子30および負極端子40は、ここでは封口板14に、かしめ固定されている。正極端子30および負極端子40は、図示しない絶縁部材によって封口板14と絶縁されている。
図2に示すように、正極端子30は、電池ケース10の内部で、正極集電部材50を介して電極体20の正極と電気的に接続されている。負極端子40は、電池ケース10の内部で、負極集電部材60を介して電極体20の負極と電気的に接続されている。
【0019】
電極体20は、
図2に示すように、電池ケース10の内部に収容されている。電極体20は従来と同様でよく、特に制限はない。図示は省略するが、電極体20は、正極と負極を有する。電極体20は、ここでは帯状の正極と帯状の負極とが帯状のセパレータを介して絶縁された状態で積層され、捲回軸を中心として長手方向に捲回されてなる扁平な捲回電極体である。ただし、他の実施形態において、電極体20は、方形状の正極シートと方形状の負極シートとが絶縁された状態で積層されてなる積層電極体であってもよい。
【0020】
電極体20は、ここでは捲回軸が底壁12aおよび封口板14と略平行になり、かつ長側壁12bおよび短側壁12cと略直交する向きで、電池ケース10の内部に収容されている。電極体20は、外表面が平坦な一対の幅広面20f(
図4参照)を有している。電極体20の幅広面20fはケース本体12の長側壁12bと当接している。そのため、長側壁12bのなかで電極体20の幅広面20fと当接している部分は、荷重を加えても撓みにくい。長側壁12bの上端から電極体20の幅広面20fの上端までの高さ(高さ方向Zの長さ)L1は、ここでは20mm程度である。一方、長側壁12bの上端部(高さL1の部分)では、電極体20が長側壁12bから離れている。そのため、長側壁12bの上端部は、荷重を加えると撓みやすい(変形しやすい)。
【0021】
図2に示すように、電極体20の捲回軸方向(
図2の長辺方向Y)の一方の端部には、正極集電部22が設けられている。他方の端部には、負極集電部24が設けられている。正極集電部22には、正極集電部材50が取り付けられている。負極集電部24には、負極集電部材60が取り付けられている。正極集電部材50は、正極端子30と電極体20の正極とを電気的に接続する導通経路を構成している。負極集電部材60は、負極端子40と電極体20の負極とを電気的に接続する導通経路を構成している。
【0022】
<蓄電デバイスの製造方法>
上記したような蓄電デバイス100は、例えば、(S1A)組立体作製工程と、(S1B)治具用意工程と、(S2)組立体固定工程と、(S3)レーザ溶接工程と、(S4)注液工程と、を含む製造方法によって製造できる。なお、(S1A)組立体作製工程と(S1B)治具用意工程の順序は、特に限定されない。また、注液工程は必須ではなく、例えば非水電解液にかえて固体電解質を用いる場合等には、省略することができる。また、本実施形態の製造方法は、任意の段階で上記以外の工程を適宜含んでもよい。
図3は、(S2)組立体固定工程を説明する模式的な平面図である。
図4は、
図3のIV-IV線に沿う模式的な縦断面図である。以下、適宜図面を参照しつつ、各工程について説明する。
【0023】
(S1A)組立体作製工程では、組立体100A(
図3、
図4参照)を作製する。具体的には、まず、上述したケース本体12および封口板14と、電極体20と、を用意する。次に、封口板14と電極体20とを一体化する。詳しくは、かしめ加工によって封口板14に正極端子30および負極端子40を取り付ける。電極体20の正極集電部22には、正極集電部材50を取り付け、負極集電部24には、負極集電部材60を取り付ける。正極集電部材50は、正極端子30と溶接接合し、負極集電部材60は、負極端子40と溶接接合する。
【0024】
次に、電極体20をケース本体12の内部に収容すると共に、ケース本体12の開口12h内に封口板14を配置して、組立体100Aを作製する。具体的には、封口板14に固定された電極体20を、開口12hからケース本体12の内部空間に挿入する。これにより、封口板14はケース本体12内に挿入され、封口板14の外周縁部が、ケース本体12の開口12hの内周縁部と対向する。なお、ここで「組立体」とは、ケース本体12と封口板14と電極体20とを備え、ケース本体12と封口板14とが未封止の状態のもの、すなわち、レーザ溶接を行う前の中間物をいう。
【0025】
なお、通常、封口板14の外形は、ケース本体12の開口12hよりも小さく形成されている。これは、本工程でケース本体12の開口12h内に封口板14を配置する際に、金属製のケース本体12と金属製の封口板14とが擦れて、金属粉が発生することを抑制するためである。さらに、本発明者の知見によれば、ケース本体12および封口板14には、それぞれ加工精度が規定されているが、その範囲内で加工誤差(公差寸法、真直度)が生じうる。例えばケース本体12には、板厚のバラつき(偏差)や、開口12h形成時(トリムカット時)の応力曲がり、ウネリ、等が生じうる。また、封口板14には、板厚のバラつき(偏差)や、カット時の応力曲がり、ウネリ、正極端子30および負極端子40のかしめ加工時の潰れ膨張、等が生じうる。これらの加工誤差により、後述する固定用治具200で固定されていない状態の組立体100Aでは、ケース本体12の長側壁12bと封口板14との間に、最大で0.094mm程度の大きな隙間G(
図5(A)参照)が発生する場合がある。
【0026】
(S1B)治具用意工程では、
図3、
図4に示すような固定用治具200を用意する。固定用治具200は、後述する(S3)レーザ溶接工程においてケース本体12と封口板14とを溶接する際に、組立体100Aのケース本体12と封口板14とを挟持して、押圧固定するためのものである。本実施形態の固定用治具200は、
図3に示すように、筐体210と、固定部材221と、第1~第3の可動部材222,223,224と、一対の長辺クランプ部231,232と、一対の短辺クランプ部233,234と、複数の弾性部240と、を備えている。一対の長辺クランプ部231,232と、一対の短辺クランプ部233,234と、で区画される領域には、組立体100Aが配置される。なお、第2、第3の可動部材223,224と、一対の短辺クランプ部233,234と、は必須ではなく、他の実施形態において省略することもできる。
【0027】
筐体210は、
図3に示すように、矩形状のベース部215と、矩形状のベース部215の長辺から延び相互に対向する第1立設部211および第2立設部212と、矩形状のベース部215の短辺から延び相互に対向する第3立設部213および第4立設部214と、を備えている。筐体210は、ここでは金属製であり、例えば、モリブデン、銅、ステンレス鋼等で構成されている。第2立設部212には、挿通孔Hが形成されている。挿通孔Hは、後述する第1の可動部材222の軸受け(ブッシュ)である。挿通孔Hには、第1の可動部材222の軸部SMが挿通されている。
【0028】
固定部材221は、
図3、
図4に示すように、第1立設部211に支持されている。固定部材221は、ここでは金属製であり、例えば筐体210と同じ金属で構成されている。固定部材221は、筐体210の第1立設部211に固定されている。固定部材221は、短辺方向Xに移動不可能に構成されている。固定部材221には、後述する長辺クランプ部231が設けられている。
【0029】
第1の可動部材222は、
図3、
図4に示すように、筐体210の第2立設部212に支持されている。第1の可動部材222は、ここでは金属製であり、例えば筐体210と同じ金属で構成されている。第1の可動部材222は、軸部SMを備える。軸部SMは、丸棒状のシャフトである。軸部SMは、第2立設部212の挿通孔Hに挿通されている。第1の可動部材222は、固定部材221とは異なり、短辺方向Xに移動可能に構成されている。具体的には、第1の可動部材222は、2つの付勢ばねES1を備えている。第1の可動部材222は、付勢ばねES1を介して筐体210の第2立設部212に取り付けられている。付勢ばねES1は、例えばコイルスプリング(押しばね)である。
【0030】
第1の可動部材222は、
図3に矢印A2で示すように、付勢ばねES1によって対向する第1立設部211の側(
図3の前側)に向けて付勢されている。これにより、第1の可動部材222は、付勢ばねES1の弾性変形の範囲で、第2立設部212に近づく方向および第2立設部212から離れる方向に移動可能に構成されている。第1の可動部材222には、後述する長辺クランプ部232が設けられている。
【0031】
第2の可動部材223は、
図3に示すように、筐体210の第3立設部213に支持されている。第3の可動部材224は、筐体210の第4立設部214に支持されている。第2,第3の可動部材223,224は、ここでは金属製であり、例えば筐体210と同じ金属で構成されている。第2,第3の可動部材223,224は、長辺方向Yに対称的に設けられている。第2,第3の可動部材223,224は、それぞれ長辺方向Yに移動可能に構成されている。具体的には、第2,第3の可動部材223,224は、それぞれ付勢ばねES2を備えている。第2,第3の可動部材223,224は、それぞれ、付勢ばねES2を介して筐体210の第3立設部213または第4立設部214に取り付けられている。付勢ばねES2は、例えばコイルスプリングである。
【0032】
第2の可動部材223は、
図3に矢印A3で示すように、付勢ばねES2によって対向する第4立設部214の側(
図3の右側)に向けて付勢されている。これにより、第2の可動部材223は、付勢ばねES2の弾性変形の範囲で、第3立設部213に近づく方向および第3立設部213から離れる方向に移動可能に構成されている。第2の可動部材223には、後述する短辺クランプ部233が設けられている。第3の可動部材224は、
図3に矢印A4で示すように、付勢ばねES2によって対向する第3立設部213の側(
図3の左側)に向けて付勢されている。これにより、第3の可動部材224は、付勢ばねES2の弾性変形の範囲で、第4立設部214に近づく方向および第4立設部214から離れる方向に移動可能に構成されている。第3の可動部材224には、後述する短辺クランプ部234が設けられている。
【0033】
一対の長辺クランプ部231,232は、
図3に示すように、組立体100Aの一対の長側壁12bと封口板14の長辺とに対して第1の荷重P1(
図4参照)を加えて、長側壁12bと封口板14とを挟持するように構成されている。詳しくは、一方の長辺クランプ部231は、固定部材221の組立体100Aと対向する側の面に設けられている。他方の長辺クランプ部232は、第1の可動部材222の組立体100Aと対向する側の面に設けられている。一対の長辺クランプ部231,232は、それぞれ組立体100Aの長側壁12bと対向するように設けられている。一対の長辺クランプ部231,232は、短辺方向Xに対向配置されている。一対の長辺クランプ部231,232は、組立体100Aを介して、短辺方向Xに対称に設けられている。
【0034】
一対の長辺クランプ部231,232は、弾性を有しない硬質材料で構成されている。一対の長辺クランプ部231,232は、ここでは金属製である。一対の長辺クランプ部231,232は、例えばベリリウム銅等の伝熱性および硬度が高い金属材料で構成されていることが好ましい。長辺クランプ部231は、ここでは固定部材221とは別の部材(別の材質)であり、例えばネジ締結によって固定部材221に固定されている。同様に、長辺クランプ部232は、ここでは第1の可動部材222とは別の部材(別の材質)であり、例えばネジ締結によって第1の可動部材222に固定されている。ただし、他の実施形態において、長辺クランプ部231は固定部材221と一体に形成されていてもよいし、長辺クランプ部232は第1の可動部材222と一体に形成されていてもよい。
【0035】
一対の長辺クランプ部231,232が組立体100Aの長側壁12bと封口板14とを挟持する圧力(第1の荷重P1)は、例えばケース本体12の長側壁12bの材質や厚み等によって適宜変更すべき設計事項である。特に限定されるものではないが、ケース本体12が厚み1mm以下のアルミニウム製である場合、第1の荷重P1は、概ね100N以上、例えば200~300N程度が好ましい。これにより、後述する(S2)組立体固定工程において、長側壁12bと封口板14の長辺とを強固に固定することができる。なお、第1の荷重P1は、付勢ばねES1のばね定数(
図3の付勢力A2)によって調整できる。
【0036】
図3に示すように、一対の長辺クランプ部231,232は、それぞれ長辺方向Yに沿って延びている。一対の長辺クランプ部231,232の長辺方向Yの長さは、それぞれ組立体100Aの長側壁12bと略同じかそれよりも長いことが好ましい。
図3、
図4からわかるように、一対の長辺クランプ部231,232は、それぞれ略直方体形状である。一対の長辺クランプ部231,232は、それぞれ固定部材221または第1の可動部材222よりも組立体100Aの側に突出している。一対の長辺クランプ部231,232は、ここでは組立体100Aの長側壁12bに直接接触(当接)して、組立体100Aを押圧するように構成されている。ただし、後述する変形例にも記載するように、一対の長辺クランプ部231,232は、他の部材を介在させた状態で、間接的に組立体100Aを押圧するように構成されていてもよい。
【0037】
図4に示すように、高さ方向Zにおいて、一対の長辺クランプ部231,232は、組立体100Aの長側壁12bの上端部(封口板14側の端部)を、長さL2で押圧するように設けられている。長さL2は、ケース本体12の上端から電極体20の幅広面20fの上端までの高さL1(ここでは20mm)よりも短い。すなわち、一対の長辺クランプ部231,232は、長側壁12bの上端部よりも下側(底壁12a側)を押圧しないように構成されている。長さL2は、典型的には封口板14の厚みよりも大きく、例えば5mm以上(長さL1の1/4以上)であって、かつ10mm以下(長さL1の1/2以下)であることが好ましい。長さL2は、ここでは8~10mmである。また、ケース本体12の上端と、長辺クランプ部231,232の上端との間の距離D1は、ここでは1mmである。
【0038】
弾性部240は、一対の長辺クランプ部231,232に、それぞれ設けられている。
図3に示すように、複数の弾性部240は、組立体100Aの長側壁12bと対向する側の面に設けられている。
図4に示すように、複数の弾性部240は、組立体100Aの長側壁12bに対して第1の荷重P1よりも小さい第2の荷重P2を加えるように構成されている。詳しくは後述するが、一対の長辺クランプ部231,232に弾性部240を備えることにより、組立体100Aの状態で長側壁12bと封口板14との間に大きな隙間G(
図5(A)参照)が開いていても、後述する(S2)組立体固定工程においてケース本体12の長側壁12bを封口板14に近づけて、隙間Gを小さくすることができる。
【0039】
複数の弾性部240は、ここではそれぞれ、組立体100Aの長側壁12bに当接し、長側壁12bを押圧する当接部Cと、当接部Cに取り付けられ、長側壁12bに近づく方向と長側壁12bから遠ざかる方向と(
図3の短辺方向X)に伸縮する圧縮ばねSと、を備えている。当接部Cは、外形が凸形状である。当接部Cは、一対の長辺クランプ部231,232に組立体100Aが挟持される前(クランプ前)の状態で、先端部が長辺クランプ部231,232から組立体100A側に突出した状態で圧縮ばねSに支持されている。当接部Cは、圧縮ばねSの弾性変形の範囲で、組立体100Aの長側壁12bに近づく方向および組立体100Aの長側壁12bから離れる方向(
図3の短辺方向X)に移動可能に構成されている。当接部Cは、ここでは加圧ピンである。圧縮ばねSは、長辺クランプ部231,232に設けられた凹部に収められている。圧縮ばねSは、一対の長辺クランプ部231,232に組立体100Aが挟持された際に、当接部Cと組立体100Aの長側壁12bとの間に圧縮状態で介在される。これにより、当接部Cを介して長側壁12bに第2の荷重P2が加えられる。
【0040】
第2の荷重P2は、一対の長辺クランプ部231,232が組立体100Aを挟持する圧力(第1の荷重P1)よりも小さければよく、例えばケース本体12の長側壁12bの材質や厚み等によって適宜変更すべき設計事項である。第2の荷重P2は、例えば組立体100Aの長側壁12bを0.03~0.05mm分、封口板14側に変形させて、隙間G(
図5(A)参照)を、0.06mm以下に調整できるような圧力であるとよい。一例では、第1の荷重P1の1/100~1/40であることが好ましい。特に限定されるものではないが、ケース本体12が厚み1mm以下のアルミニウム製である場合、第2の荷重P2は、概ね1N以上、例えば3~5N程度が好ましい。これにより、後述する(S2)組立体固定工程において、長側壁12bを封口板14の長辺に好適に密着させて、隙間Gを小さくすることができる。なお、第2の荷重P2は、圧縮ばねSのばね定数(付勢力)によって調整できる。
【0041】
図3に示すように、複数の弾性部240は、ここでは短辺方向Xに対向配置されている。複数の弾性部240は、一対の長辺クランプ部231,232に対称に設けられている。複数の弾性部240は、それぞれ組立体100Aの長側壁12bと対向するように設けられている。複数の弾性部240は、平面視で組立体100Aの長側壁12bに沿って点在している。言い換えれば、複数の弾性部240は、組立体100Aの長側壁12bと対向する側の面に、間欠的に配置されている。これにより、例えば隙間Gが大きくなりやすい個所では弾性部240の数を増やしたり第2の荷重P2を大きくしたりする等、弾性部240の配置や第2の荷重P2(
図4参照)に対する設計の自由度を高められる。
【0042】
複数の弾性部240は、長側壁12bに直接対向(当接)して、長側壁12bを局所的に(部分的に)押圧するように構成されている。複数の弾性部240は、長辺方向Yに等間隔で配置されている。長辺方向Yにおいて、組立体100Aの長側壁12bには、長辺クランプ部231,232と複数の弾性部240とが交互に当接している。長側壁12bの一部が、弾性部240のみならず金属製の(特には伝熱性の高い)長辺クランプ部231,232とも接触していることで、レーザ溶接時の放熱性が高められ、後述する(S3)レーザ溶接工程において、安定してレーザ溶接を行うことができる。なお、弾性部240の個数は、ここでは7つが図示されているが、例えば長側壁12bの長辺方向Yの長さ等によってその個数は適宜変更しうる。
【0043】
図4に示すように、高さ方向Zにおいて、弾性部240は、組立体100Aの長側壁12bの上端部(封口板14側の端部)を押圧するように設けられていることが好ましい。言い換えれば、電極体20の上端よりも開口12hに近い側を押圧するように設けられていることが好ましい。長側壁12bの上端から弾性部240までの距離(ここでは、圧縮ばねSの軸中心までの距離)L3は、10mm以下、さらには6mm以下が好ましい。上述の通り、長側壁12bは、封口板14に近い部分(開口12h側の端部)ほど撓みやすく変形容易である。したがって、距離L3を所定値以下とすることで、第2の荷重P2を小さく設定できる。距離L3は、2mm以上が好ましく、さらには4mm以上が好ましい。これにより、長側壁12bの高さに交差の範囲でバラつきがあっても、ここに開示される技術の効果を安定して発揮できる。また、弾性部240は、封口板14の下端よりも下方(底壁12a側)を押圧するように設けられていることが好ましい。これにより、第2の荷重P2で長側壁12bを撓ませやすくなる。
【0044】
一対の短辺クランプ部233,234は、
図3に示すように、組立体100Aの一対の短側壁12cと封口板14の短辺とに対して所定の荷重を加えて、短側壁12cと封口板14とを挟持するように構成されている。詳しくは、一方の短辺クランプ部233は、第2の可動部材223の組立体100Aと対向する側の面に設けられている。他方の短辺クランプ部234は、第3の可動部材224の組立体100Aと対向する側の面に設けられている。一対の短辺クランプ部233,234は、それぞれ組立体100Aの短側壁12cと対向するように設けられている。一対の短辺クランプ部233,234は、長辺方向Yに対向配置されている。一対の短辺クランプ部233,234は、組立体100Aを介して、長辺方向Yに対称に設けられている。なお、一対の短辺クランプ部233,234の材質は、一対の長辺クランプ部231,232と同様であってよい。
【0045】
図3に示すように、一対の短辺クランプ部233,234は、それぞれ短辺方向Xに沿って延びている。一対の短辺クランプ部233,234の短辺方向Xの長さは、それぞれ、組立体100Aの短側壁12cと略同じである。一対の短辺クランプ部233,234は、ここでは組立体100Aの短側壁12cに直接接触(当接)して、組立体100Aを押圧するように構成されている。図示は省略するが、高さ方向Zにおいて、一対の短辺クランプ部233,234は、長辺クランプ部231、232に準じて、組立体100Aの短側壁12cの上端部(封口板14側の端部)と対向するように設けられている。
【0046】
なお、本実施形態では、一対の短辺クランプ部233,234には弾性部240は設けられていない。これは、一対の短辺クランプ部233,234と対向する短側壁12cの長さが長側壁12bに比べて短く、短側壁12cと封口板14との間には大きな隙間が生じにくいためである。ただし、他の実施形態において、短辺クランプ部233,234にも、長辺クランプ部231,232と同様に、1つまたは複数の弾性部240が設けられていてもよい。
【0047】
(S2)組立体固定工程では、
図3、
図4に示すように、(S1A)組立体作製工程で作製した組立体100Aを、(S1B)治具用意工程で用意した固定用治具200で固定して、レーザ溶接の位置決めを行う。具体的には、例えば、固定用治具200の一対の長辺クランプ部231,232と、一対の短辺クランプ部233,234と、で区画される領域に、上方から組立体100Aを差し込む。すると、組立体100Aの長側壁12bには、一対の長辺クランプ部231,232を介して第1の荷重P1が加えられる。また、組立体100Aの短側壁12cには、一対の短辺クランプ部233,234を介して所定の荷重が加えられる。これにより、固定用治具200によって、ケース本体12と封口板14とが挟持され、固定される。
【0048】
また、本実施形態では、固定用治具200の一対の長辺クランプ部231,232に弾性部240が備えられているので、組立体100Aの長側壁12bには、さらに弾性部240を介して第2の荷重P2が加えられる。
図5(A)、(B)は、弾性部240の機能を説明するための平面図である。
図5(A)に示すように、(S1A)組立体作製工程で作製した組立体100Aでは、加工誤差(公差寸法や真直度)により、規定された加工精度の範囲内で長側壁12bと封口板14との間に大きな隙間Gが開いている場合がある。
【0049】
このような場合、
図5(B)に示すように、隙間Gのある部分に配置された弾性部240の圧縮ばねSが、長側壁12bの表面形状(うねり等)に追従して伸長し、弾性部240(詳しくは当接部C)が、ケース本体12の長側壁12bを封口板14側(
図5(B)の短辺方向Xの前側)に押圧する。その結果、長側壁12bが封口板14の長辺に押し当てられる。これにより、弾性部240を備えていない従来の固定用治具を用いる場合(例えば、長辺クランプ部の全体が金属のように弾性を有しない硬質材料で構成されている場合)と比べて、相対的に隙間Gを小さくすることができる。その結果、長辺方向Yの全体に亘って長側壁12bと封口板14とを好適に密着させることができる。したがって、後述する(S3)レーザ溶接工程でレーザ抜けが生じることを抑制できる。
【0050】
なお、隙間Gは、後述する(S3)レーザ溶接工程でレーザ抜けが生じないレベルまで小さくなればよく、必ずしもゼロである必要はない。レーザ光の照射条件等によっても異なり得るが、一例では、隙間Gが0.06mm以下に低減されていることが好ましい。例えば、加工誤差によって最大で0.094mm程度の隙間Gが生じうる場合には、隙間Gが、弾性部240によって0.034mm(=0.094mm-0.06mm)程度低減されれば充分である。
【0051】
(S3)レーザ溶接工程では、固定用治具200によって組立体100Aのケース本体12と封口板14とを固定した状態で、封口板14の外周縁部を、全周に亘りケース本体12の開口12hの内周縁部とレーザ溶接する。レーザ光の照射条件(例えば、出力、ビーム径、加工速度(レーザ光の走査速度)等)は、従来と同様であってよい。ここに開示される技術では、ケース本体12と封口板14との隙間Gが小さく抑えられている。これにより、レーザ抜けが生じることを抑制できる。その結果、電極体20にレーザ光があたりにくくなり、電極体20が損傷することを抑制できる。
【0052】
また、本工程では、溶接個所から高温の溶融金属が微粒子(所謂、スパッタ)となって発生する場合があるが、ケース本体12の長側壁12bと封口板14との隙間Gが小さく抑えられていることで、たとえスパッタが発生したとしても、溶融金属がケース本体12内に落下することを抑制できる。これにより、溶融金属が電極体20内に混入して、電極体20が短絡することを抑制できる。さらに、ケース本体12と封口板14とが密接していることにより、本工程で封口板14の熱ひずみ変形を小さく抑えられる。
【0053】
(S4)注液工程では、封口板14に設けられた図示しない注液孔からケース本体12の内部に非水電解液を注液する。そして、注液孔を注液栓等で封止する。以上のようにして、
図1、
図2に示すような蓄電デバイス100を製造することができる。
【0054】
<蓄電デバイスの用途>
蓄電デバイス100は、各種用途に利用可能であるが、特に電池ケース10が大きく、エネルギー密度が高い大型の(大容量の)蓄電デバイスとして好ましく利用することができる。好適な用途としては、例えば、プラグインハイブリッド自動車(PHEV;Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、ハイブリッド自動車(HEV;Hybrid Electric Vehicle)、電気自動車(BEV;Battery Electric Vehicle)等の車両に搭載されるモーター用の動力源(車両駆動用の電源)が挙げられる。
【0055】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、上記実施形態は例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0056】
例えば、上記した実施形態では、弾性部240が、当接部Cと圧縮ばねSとで構成され、当接部Cが加圧ピンであった。しかし、これには限定されない。変形例において、当接部Cは、例えば外形が略球状の加圧ボールであってもよい。弾性部240は、加圧ボールと圧縮ばねSとを備えたボールプランジャによって構成されていてもよい。このような態様によれば、長辺クランプ部231,232の加工(弾性部240の取り付け)が容易となり、製造工程を簡略化できる。
【0057】
また、他の変形例において、弾性部240は、長側壁12bに近づく方向と長側壁12bから遠ざかる方向とに弾性変形するゴムまたはゴム弾性を有する軟質樹脂であってもよい。ゴムとしては、例えばウレタンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。軟質樹脂は、弾性変形可能な合成樹脂である。軟質樹脂としては、例えば熱可塑性のエラストマ(弾性体)が挙げられる。ゴムまたはゴム弾性を有する軟質樹脂は、短辺方向Xの圧縮変形率((第1の荷重P1を加える前の短辺方向Xの厚み-第1の荷重を加えたときの短辺方向Xの厚み)/第1の荷重P1を加える前の短辺方向Xの厚み)が、2%以上であるとよい。これにより、隙間Gを0.06mm以下に抑えることができる。なお、一般的なウレタンゴム(硬度60付近)であれば、圧縮変形率が10%くらいあるため、充分である。このような態様によれば、弾性部240と長側壁12bとが当接する面積を増やして、ここに開示される技術の効果を高いレベルで発揮できる。
【0058】
例えば、上記した実施形態では、弾性部240が複数であり、ケース本体12の長側壁12bに沿って点在していた。しかし、これには限定されない。他の変形例において、弾性部240は、平面視でケース本体12の長側壁12bに沿って延びる帯状であってもよい。その場合、弾性部240は、1つであってもよい。帯状の弾性部240は、長側壁12bを長辺方向Yに沿って連続的に押圧するように構成されている。
【0059】
図6は、第1変形例に係る弾性部241近傍の模式的な縦断面図である。
図6に示すように、第1変形例において、弾性部241は、1つである。弾性部241は、上記したようなゴムまたはゴム弾性を有する軟質樹脂からなっている。弾性部241は、高さ方向Zの長さが、長辺クランプ部232と略同じである。図示は省略するが、弾性部241は、長辺方向Yの長さも長辺クランプ部232と略同じである。弾性部241は、長辺クランプ部232の組立体100A側(
図6の前側)の端部を覆っている。この場合、長辺クランプ部232は、組立体100Aの長側壁12bに当接(直接接触)しない。第1の荷重P1は、弾性部241を介して組立体100Aに加えられる。本変形例では、弾性部241が、長辺方向Yに沿って連続的に、好ましくは長辺方向Yの全体に亘って、長側壁12bと当接する。このため、弾性部241が長側壁12bの表面形状に追従しやすくなり、長側壁12bを封口板14に対してより高いレベルで密着させることができる。また、組立体100Aに安定して荷重を加えることができる。
【0060】
図7(A)は、第2変形例に係る弾性部242近傍の模式的な縦断面図である。
図7(A)に示すように、第2変形例において、弾性部242は、薄板状の放熱板M1と、圧縮ばねS1と、を備えている。放熱板M1は、組立体100Aと対向する側の面に配置されている。放熱板M1は、第1変形例の弾性部241と同様、長辺クランプ部232の組立体100A側(
図7(A)の前側)の端部を覆っている。放熱板M1は、金属製であり、例えば、銅等の放熱性および柔軟性の高い金属材料で構成されている。放熱板M1は、柔軟性(短辺方向Xへの可撓性)を兼ね備えている。放熱板M1の厚みt1は、典型的にはケース本体12の板厚よりも薄く、例えば0.1~0.3mm程度が好ましい。図示は省略するが、圧縮ばねS1は、実施形態の如く長辺方向Yに沿って複数配置されている(点在している)。圧縮ばねS1は、実施形態の圧縮ばねSと同様であってよい。隙間g1(
図7(B)参照)を0.06mm以下に抑えたい場合、圧縮ばねS1は、最大引張り長と最大圧縮長との差が、0.03~0.05mmであるとよい。
【0061】
図7(B)は、第2変形例に係る
図5(B)相当図である。
図7(B)に示すように、本変形例では、隙間のある部分(
図7(B)の中央部)に配置された弾性部242の圧縮ばねS1が、隙間のない部分(
図7(B)の両端部)に配置された弾性部242の圧縮ばねS1に比べて伸長している。その結果、隙間のある部分では、長側壁12bに放熱板M1が押し当てられ、これによって長側壁12bが封口板14側に押圧される。このような態様によれば、放熱板M1と長側壁12bとがより広い面積で当接する。また、放熱板M1は、反対側の面が金属製の長辺クランプ部232とも当接しているので、レーザ溶接時の熱を長辺クランプ部232に好適に逃がすことができる。そのため、放熱性を特に好適に向上できる。したがって、レーザ溶接をとりわけ安定して行うことができる。
【0062】
図8(A)は、第3変形例に係る弾性部243近傍の模式的な縦断面図である。
図8(A)に示すように、第3変形例において、弾性部243は、薄板状の放熱板M2と、弾性体Eと、を備えている。放熱板M2は、第2変形例の放熱板M1と同様であってよい。放熱板M2は、金属製の長辺クランプ部232と接続され、放熱経路が確保されている。弾性体Eは、上記したようなゴムまたはゴム弾性を有する軟質樹脂からなっている。隙間g2(
図8(B)参照)を0.06mm以下に抑えたい場合、弾性体Eは、上記した圧縮変形率が、2%以上であるとよい。
【0063】
図8(B)は、第3変形例に係る
図5(B)相当図である。
図8(B)に示すように、本変形例では、厚み3mmの弾性体Eが第1の荷重P1で2mmに変形し、すなわち1mm(0.06mmよりも十分に大きい量)圧縮されている。その結果、長側壁12bに連続的に放熱板M2が押し当てられ、これによって長側壁12bが封口板14側に押圧される。このような態様によれば、弾性部243に放熱性を備えつつ、放熱板M2と長側壁12bとが広い面積で当接するため、ここに開示される技術の効果を高いレベルで発揮できる。
【0064】
また、ここに開示される技術では、上記した実施形態と変形例とを適宜組み合わせることもできる。例えば、長辺クランプ部231,232において、長辺方向Yの両端部には、実施形態の如く点状の弾性部240を配置し、長辺方向Yの中央部には、第1変形例の如く帯状の弾性部241を配置してもよい。このような態様によれば、組立体100Aの位置決めの精度を向上できる。また、これとは逆に、長辺クランプ部231,232において、長辺方向Yの中央部には、実施形態の如く点状の弾性部240を配置し、長辺方向Yの両端部には、第1変形例の如く帯状の弾性部241を配置してもよい。本発明者の検討によれば、長辺方向Yの端部には大きな隙間が生じやすい。このような態様によれば、長辺方向Yの端部では隙間を小さくすると共に、長辺方向Yの中央部では、レーザ溶接時の放熱性を好適に向上できる。
【0065】
以上の通り、ここで開示される技術の具体的な態様として、以下の各項に記載のものが挙げられる。
項1:矩形状の底壁と、上記底壁の長辺から延び相互に対向する一対の長側壁と、上記底壁の短辺から延び相互に対向する一対の短側壁と、上記底壁に対向する開口と、を有するケース本体と、上記ケース本体の上記開口内に配置され、外周縁部が上記ケース本体の上記開口の内周縁部とレーザ溶接されている矩形状の封口板と、上記ケース本体に収容される電極体と、を備える蓄電デバイスの製造方法であって、上記電極体を上記ケース本体の内部に収容し、かつ上記ケース本体の上記開口内に上記封口板を配置して、組立体を作製する組立体作製工程と、上記ケース本体の上記長側壁の側から、上記ケース本体と上記封口板とに対して第1の荷重を加えて上記ケース本体と上記封口板と挟持する一対の長辺クランプ部と、一対の上記長辺クランプ部の上記組立体と対向する側の面にそれぞれ設けられ、上記組立体に対して上記第1の荷重よりも小さい第2の荷重を加える1つまたは複数の弾性部と、を備える固定用治具を用意する治具用意工程と、上記組立体を上記固定用治具によって固定する組立体固定工程と、上記組立体を上記固定用治具によって固定した状態で、上記封口板と上記ケース本体とをレーザ溶接するレーザ溶接工程と、を含む、蓄電デバイスの製造方法。
項2:上記弾性部は、複数であり、複数の上記弾性部は、平面視で上記長側壁に沿って点在している、項1に記載の蓄電デバイスの製造方法。
項3:上記底壁から上記開口に向かう方向を高さ方向としたときに、複数の上記弾性部は、それぞれ、上記高さ方向において、上記長側壁のうち、上記封口板の下端よりも上記底壁に近い側であって、かつ、上記電極体の上端よりも上記開口に近い側を押圧するように配置されている、項1または2に記載の蓄電デバイスの製造方法。
項4:複数の上記弾性部のうち少なくとも1つは、上記長側壁に当接する当接部と、上記当接部に取り付けられ、上記組立体に近づく方向と上記組立体から遠ざかる方向とに伸縮する圧縮ばねと、を有する、項1から3のいずれか1つに記載の蓄電デバイスの製造方法。
項5:複数の上記弾性部のうち少なくとも1つは、上記組立体に近づく方向と上記組立体から遠ざかる方向とに弾性変形するゴムまたはゴム弾性を有する軟質樹脂を有する、項1から4のいずれか1つに記載の蓄電デバイスの製造方法。
項6:上記弾性部は、平面視で上記長側壁に沿って延びる帯状部分を有する、項1に記載の蓄電デバイスの製造方法。
項7:上記弾性部は、上記組立体に近づく方向と上記組立体から遠ざかる方向とに弾性変形するゴムまたはゴム弾性を有する軟質樹脂を有する、項6に記載の蓄電デバイスの製造方法。
項8:上記弾性部は、上記組立体と対向する側の面に金属製の放熱板を有する、項6または7に記載の蓄電デバイスの製造方法。
項9:矩形状の底壁と、上記底壁の長辺から延び相互に対向する一対の長側壁と、上記底壁の短辺から延び相互に対向する一対の短側壁と、上記底壁に対向する開口と、を有するケース本体と、上記ケース本体の上記開口内に配置される矩形状の封口板と、上記ケース本体に収容される電極体と、を備える組立体に対して、上記封口板の外周縁部と上記ケース本体の上記開口の内周縁部とをレーザ溶接する際に用いられる固定用治具であって、上記ケース本体の上記長側壁の側から、上記ケース本体と上記封口板とに対して第1の荷重を加えて上記ケース本体と上記封口板と挟持する一対の長辺クランプ部と、一対の上記長辺クランプ部の上記組立体と対向する側の面にそれぞれ設けられ、上記組立体に対して上記第1の荷重よりも小さい第2の荷重を加える1つまたは複数の弾性部と、を備える、固定用治具。
【符号の説明】
【0066】
10 電池ケース
12 ケース本体
12b 長側壁
12c 短側壁
12h 開口
14 封口板
20 電極体
100 蓄電デバイス
100A 組立体
200 固定用治具
210 筐体
221 固定部材
222 第1の可動部材
231 長辺クランプ部
232 長辺クランプ部
240、241、242、243 弾性部