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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092445
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】アイロンパーマ方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/49 20060101AFI20240701BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20240701BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20240701BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20240701BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20240701BHJP
   A61Q 5/10 20060101ALI20240701BHJP
   A61Q 5/04 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
A61K8/49
A61K8/44
A61K8/41
A61K8/46
A61K8/19
A61Q5/10
A61Q5/04
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208364
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】397021235
【氏名又は名称】株式会社サニープレイス
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(72)【発明者】
【氏名】向井 信人
(72)【発明者】
【氏名】向井 孝
(72)【発明者】
【氏名】宮越 正哉
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA112
4C083AA122
4C083AB032
4C083AB081
4C083AB082
4C083AB312
4C083AB332
4C083AB351
4C083AC072
4C083AC092
4C083AC102
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC302
4C083AC352
4C083AC392
4C083AC532
4C083AC581
4C083AC582
4C083AC691
4C083AC692
4C083AC731
4C083AC732
4C083AC771
4C083AC772
4C083AC851
4C083AD282
4C083AD322
4C083AD442
4C083AD532
4C083BB06
4C083BB11
4C083BB24
4C083BB44
4C083CC34
4C083CC36
4C083DD06
4C083DD08
4C083DD23
4C083EE25
4C083EE26
(57)【要約】
【課題】
本発明の目的は、毛髪染毛を行う上で、より色もちが良く、毛髪を傷めにくく皮膚障害を低減可能なヘアカラー及びアイロンパーマ方法を提供することにある。
【解決手段】
本発明のアイロンパーマ方法は、(A)塩基性染料、HC染料、アミノ酸、カチオン界面活性剤、増粘剤、油剤、第一のpH調整剤及び湿潤剤を少なくとも含有するヘアカラー剤であって、前記ヘアカラー剤のpHは、pH6.8以上であるヘアカラー剤と、
(B)少なくとも還元剤を含有するカーリング料と、を混合する工程と、
前記混合したヘアカラー剤とカーリング料との混合物を塗布する工程と、
前記混合物を塗布後、アイロンパーマ処理を行う工程と、を含むことを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)塩基性染料、HC染料、アミノ酸、カチオン界面活性剤、増粘剤、油剤、第一のpH調整剤及び湿潤剤を少なくとも含有するヘアカラー剤であって、前記ヘアカラー剤のpHは、pH6.8以上であるヘアカラー剤と、
(B)少なくとも還元剤を含有するカーリング料と、を混合する工程と、
前記混合したヘアカラー剤とカーリング料との混合物を塗布する工程と、
前記混合物を塗布後、アイロンパーマ処理を行う工程と、を含むことを特徴とするアイロンパーマ方法。
【請求項2】
前記アイロンパーマ処理を行う工程後に、ヘアセット料を塗布する工程を有する請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記アミノ酸は、システイン、アルギニン、リシン、又はヒスチジンから選択される少なくとも1種である請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記塩基性染料は、INCI(INCI:International Nomenclature of Cosmetic Ingredient:化粧品原料国際命名法)名において、塩基性青3(ベーシックブルー3)、塩基性青7(ベーシックブルー7)、塩基性青99(ベーシックブルー99)、塩基性赤76(ベーシックレッド76)、塩基性黄57(ベーシックイエロー57),塩基性茶16(ベーシックブラウン16)、又は塩基性茶17(ベーシックブラウン17)から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記HC染料は、INCI(INCI:International Nomenclature of Cosmetic Ingredient:化粧品原料国際命名法)名において、HC青2(HCブルー2)、HC黄2(HCイエロー2)、HC黄4(HCイエロー4)、HC黄5(HCイエロー5)、HC赤1(HCレッド1)、HC赤3(HCレッド3)、又はHC橙1(HCオレンジ1) から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記カチオン界面活性剤は、4級アンモニウム塩、及び/又は3級アミンである請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記カーリング料は、0.01~10重量%のチオグリセリンと、アニモニア水とを含有することを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記カーリング料は、更に、チオグリコール酸及びその塩類、システイン及びその塩類、システアミン及びその塩類、チオ乳酸、及びその塩類、ブチロラクトンチオール、亜硫酸ナトリウムからなる群から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
さらに、前記混合物を塗布後に所定時間を設ける工程を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アイロンパーマ方法に関し、特に、毛髪を傷めにくく皮膚障害を低減可能であり、色もち及び浸透染着力に優れるヘアカラー剤組成物を用いたアイロンパーマ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘアカラーリングとして、主として、医薬部外品の永久染毛料であるヘアカラーと、化粧品の半永久染毛料であるヘアマニキュアやヘアカラートリートメント等がある。特に、永久染毛料のヘアカラーにはパラフェニレンジアミン(酸化染料)という物質が含まれるものが主流となっているが、黒色系の濃色の場合はジアミン系化合物の配合量が多くなるので更に注意が必要となっている。
【0003】
例えば、パラフェニレンジアミン(酸化染料)を含むヘアカラーリング組成物として、(a)水溶性過酸素ブリーチ、(b)有機ペルオキシ酸ブリーチ前駆体及び/又は予め形成された有機ペルオキシ酸から選択されたブリーチング助剤、及び(c)1以上のヘアカラーリング剤を含むことを特徴とするヘアカラーリング組成物が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表平11-501947号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1を含む従来技術のごとく、パラフェニレンジアミンなどの酸化染料を含むものは、上述のように黒色系の濃色の場合はジアミン系化合物の配合量が多くなるのに加えて、パラフェニレンジアミン(酸化染料)という物質が原因での皮膚障害が報告されている。
【0006】
また、半永久染毛料のヘアマニキュアは1回の使用で色素(酸性染料)が髪の内部まで浸透し2~3週間の色持ちが特徴であるが、頭皮に付着し放置時間が長くなれば長くなるほど染まった色素が取れにくくなり、施術する側では生え際ギリギリまで塗布するのが難しく、施術者の技量の割にはヘアカラーに比べて染まりが悪いためサロンや美容室では敬遠されがちな染毛料となっている。
【0007】
さらに、上述のヘアカラーでは、コルテックス(毛皮質。毛髪の内部)までしっかり染めることができるが、一般的なヘアカラートリートメントでは、キューティクル(毛小皮)及び毛髪表面近くのコルテックスを染めるもので、十分に色もちが良いヘアカラーを達成できない場合もあった。
【0008】
一方、染毛と同時にアイロンパーマなどの処理を行いたい等の要望も存在する。アイロンパーマなどの処理を行う場合にも、パーマネントウェーブ剤に配合されている還元剤等により染色性や、十分に色もちが良いヘアカラーを達成できない場合もあった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、毛髪染毛を行う上で、より色もちが良く、毛髪を傷めにくく皮膚障害を低減可能なヘアカラー及びアイロンパーマ方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明者らは、ヘアカラー方法及びアイロンパーマ方法について鋭意検討した結果、本発明を見出すに至った。
【0011】
すなわち、本発明のアイロンパーマ方法は、(A)塩基性染料、HC染料、アミノ酸、カチオン界面活性剤、増粘剤、油剤、第一のpH調整剤及び湿潤剤を少なくとも含有するヘアカラー剤であって、前記ヘアカラー剤のpHは、pH6.8以上であるヘアカラー剤と、
(B)少なくとも還元剤を含有するカーリング料と、を混合する工程と、
前記混合したヘアカラー剤とカーリング料との混合物を塗布する工程と、
前記混合物を塗布後、アイロンパーマ処理を行う工程と、を含むことを特徴とする。
【0012】
また、本発明のアイロンパーマ方法の好ましい実施態様において、前記アイロンパーマ処理を行う工程後に、ヘアセット料を塗布する工程を有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明のアイロンパーマ方法の好ましい実施態様において、前記アミノ酸は、システイン、アルギニン、リシン、又はヒスチジンから選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明のアイロンパーマ方法の好ましい実施態様において、前記塩基性染料は、INCI(INCI:International Nomenclature of Cosmetic Ingredient:化粧品原料国際命名法)名において、塩基性青3(ベーシックブルー3)、塩基性青7(ベーシックブルー7)、塩基性青99(ベーシックブルー99)、塩基性赤76(ベーシックレッド76)、塩基性黄57(ベーシックイエロー57),塩基性茶16(ベーシックブラウン16)、又は塩基性茶17(ベーシックブラウン17)から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明のアイロンパーマ方法の好ましい実施態様において、前記HC染料は、INCI(INCI:International Nomenclature of Cosmetic Ingredient:化粧品原料国際命名法)名において、HC青2(HCブルー2)、HC黄2(HCイエロー2)、HC黄4(HCイエロー4)、HC黄5(HCイエロー5)、HC赤1(HCレッド1)、HC赤3(HCレッド3)、又はHC橙1(HCオレンジ1) から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
【0016】
また、本発明のアイロンパーマ方法の好ましい実施態様において、前記カチオン界面活性剤は、4級アンモニウム塩、及び/又は3級アミンであることを特徴とする。
【0017】
また、本発明のアイロンパーマ方法の好ましい実施態様において、前記カーリング料は、0.01~10重量%のチオグリセリンと、アニモニア水とを含有することを特徴とする。
【0018】
また、本発明のアイロンパーマ方法の好ましい実施態様において、前記カーリング料は、更に、チオグリコール酸及びその塩類、システイン及びその塩類、システアミン及びその塩類、チオ乳酸、及びその塩類、ブチロラクトンチオール、亜硫酸ナトリウムからなる群から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする。
【0019】
また、本発明のアイロンパーマ方法の好ましい実施態様において、さらに、前記混合物を塗布後に所定時間を設ける工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明のアイロンパーマ方法によれば、かぶれや接触性皮膚炎のリスクを低減することに加え、ヘアカラーの使用期間が長くなる場合にも毛髪を傷め難いながらも、色持ち良く、施術者側において頭皮への付着を気にせず新生部までヘア・カラーリングを提供することができ、同時にアイロンパーマも提供可能であるという有利な効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のアイロンパーマ方法は、(A)塩基性染料、HC染料、アミノ酸、カチオン界面活性剤、増粘剤、油剤、第一のpH調整剤及び湿潤剤を少なくとも含有するヘアカラー剤であって、前記ヘアカラー剤のpHは、pH6.8以上であるヘアカラー剤と、
(B)少なくとも還元剤を含有するカーリング料(パーマネントウェーブ第1剤ともいう。)と、を混合する工程と、
前記混合したヘアカラー剤と、カーリング料との混合物を塗布する工程と、
前記混合物を塗布後、アイロンパーマ処理を行う工程と、を含むことを特徴とする。
【0022】
まず、本発明に適用可能なヘアカラー剤組成物及びヘアカラー剤について以下に説明する。
【0023】
本発明に適用可能なヘアカラー剤組成物は、塩基性染料と、HC染料、アミノ酸と、カチオン界面活性剤と、増粘剤と、油剤と、pH調整剤と、湿潤剤とを含有するヘアカラー剤組成物であって、前記ヘアカラー剤組成物のpHは、pH6.8以上であることを特徴とする。本発明に適用可能なヘアカラー剤組成物においては、pH6.8以上にすることによって、キューティクルを開き易くし、同時にL-アルギニン、L-リシン、L-ヒスチジン、またその塩類といった塩基性アミノ酸を毛髪内部に送り込み、(毛髪の傷みとして)過去に毛髪から流出した塩基性アミノ酸を補って補修しながらカラーリングできる製品である。すなわち、本発明に適用可能なヘアカラ―剤組成物を適用すると、キューティクルを開くことが可能であり、色もちが良いヘアカラーを達成し得るという有利な効果を奏するものである。
【0024】
また、本発明に適用可能なヘアカラー剤組成物の好ましい実施態様において、キューティクルを開き易くしpHを6.8以上に調整するという観点から、前記pH調整剤は、クエン酸、リン酸、乳酸、リンゴ酸、アンモニア水、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、モノエタノールアミン、リン酸アンモニウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸アンモニウム、乳酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸ナトリウムから選択される少なくとも一種を挙げることができる。弱アルカリ性で毛髪への残留が少ないという観点から、好ましくは、前記pH調整剤としては、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム等を挙げることができる。
【0025】
キューティクルを効率よく開き、色もちを良好に発揮し得るという観点から、本発明に適用可能なヘアカラー剤組成物のpH値としては、好ましくは、6.8以上、より好ましくは、7.0~9.0さらに好ましくは、pH7.3~8.0に調整することができる。
【0026】
また、本発明に適用可能なヘアカラー剤組成物の好ましい実施態様において、前記アミノ酸は、システイン、アルギニン、リシン、又はヒスチジンから選択される少なくとも1種であることを特徴とする。また、アミノ酸の量としては、特に限定されないが、毛髪の保湿及び柔軟性を保つという観点から、組成物の合計量に対して、好ましくは、0.01~0.5質量%、より好ましくは、0.01~0.3質量%、さらに好ましくは0.02~0.2質量%とすることができる。
【0027】
また、本発明に適用可能なヘアカラー剤組成物の好ましい実施態様において、前記塩基性染料は、INCI(INCI:International Nomenclature of Cosmetic Ingredient:化粧品原料国際命名法)名において、塩基性青3(ベーシックブルー3)、塩基性青7(ベーシックブルー7)、塩基性青99(ベーシックブルー99)、塩基性赤(ベーシックレッド76)、塩基性黄57(ベーシックイエロー57)、塩基性茶16(ベーシックブラウン16)、又は塩基性茶17(ベーシックブラウン17)から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。なお、INCI(INCI:International Nomenclature of Cosmetic Ingredient:化粧品原料国際命名法)は、国際命名法委員会(INC:International Nomenclature Committee)が作成した化粧品成分の国際的表示名称である。また、前記塩基性染料の量としては、特に限定されないが、染色力は強くないが毛髪へのダメージが少ないという観点から、組成物の合計量に対して、好ましくは0.0005~5質量%、より好ましくは、0.01~3質量%、さらに好ましくは、0.1~1質量%とすることができる。
【0028】
また、本発明に適用可能なヘアカラー剤組成物の好ましい実施態様において、前記HC染料は、INCI名において、HC青2(HCブルー2)、HC黄2(HCイエロー2)、HC黄4(HCイエロー4)、HC黄5(HCイエロー5)、HC赤1(HCレッド1)、HC赤3(HCレッド3)、又はHC橙1(HCオレンジ1) から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。また、前記HC染料の量としては、特に限定されないが、HC染料は毛髪内を染色するため、より深みのある発色を呈するという観点から、組成物の合計量に対して、好ましくは、0.0005~5質量%、より好ましくは、0.01~3質量%、さらに好ましくは0.1~1.5質量%とすることができる。
【0029】
また、本発明に適用可能なヘアカラー剤組成物の好ましい実施態様において、毛髪に与える感触をさらに向上させるという観点から、前記カチオン界面活性剤は、4級アンモニウム塩、及び/又は3級アミンであることを特徴とする。また、本発明に適用可能なヘアカラー剤組成物の好ましい実施態様において、前記4級アンモニウム塩は、塩化アルキルトリメチルアンモニウム液、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、又は臭化ステアリルトリメチルアンモニウムであることを特徴とする。また、好ましい実施態様において、前記3級アミンは、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、又はべヘナミドプロピルジメチルアミンであることを特徴とする。また、前記カチオン界面活性剤の量としては、特に限定されないが、塩基性染料の毛髪染着力の向上という観点から、組成物の合計量に対して、好ましくは0.01~10質量%、より好ましくは0.1~5質量%、さらに好ましくは1~3質量%とすることができる。
【0030】
その他、本発明に適用可能なヘアカラー剤組成物には、増粘剤、湿潤剤、油剤等を含むことができる。本発明においては、これら増粘剤等について、本発明の効果を逸脱しない限り、特に限定されず、公知のものを使用することができる。増粘剤としては、製品の安定性という観点から、例えばヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、ポリエチレングリコール等を挙げることができる。また、前記増粘剤の量としては、特に限定されないが、製品の安定性向上という観点から、組成物の合計量に対して、好ましくは0.05~0.8質量%、より好ましくは0.1~0.5質量%、さらに好ましくは0.2~0.4質量%とすることができる。
【0031】
また、湿潤剤としては、グリセリン、ジグリセリン、1、3-ブチレングリコールを挙げることができる。また、前記湿潤剤の量としては、特に限定されないが、製品の塗布のしやすさという観点から、組成物の合計量に対して、好ましくは0.1~15質量%、より好ましくは0.5~10質量%、さらに好ましくは1~5質量%とすることができる。
【0032】
また、油剤としては、油脂、ロウ、炭化水素、アルキルグリセリルエーテル、エステル、シリコーン、高級アルコール等を挙げることができる。また、前記油剤の量としては、特に限定されないが、塗布放置時間の乾燥を防ぐとともに製品の安定性という観点から、好ましくは、1~30質量%、より好ましくは2~20質量%、さらに好ましくは3~15質量%とすることができる。
【0033】
また、本発明に適用可能なヘアカラー剤は、上述の本発明に適用可能なヘアカラー剤組成物を含むことを特徴とする。所望により、又はヘアカラー剤の用途によって、ヘアカラー剤に適宜本発明に適用可能なヘアカラー剤組成物を含めることができる。
【0034】
また、本発明に適用可能なカーリング料及びヘアセット料(パーマネントウェーブ第2剤ともいう。)の一例は、以下の通りである。
【0035】
まず、本発明に適用可能なカーリング料の一例について説明する。本発明に適用可能なカーリング料は、少なくともアルカリ剤を含有し、好ましい態様において、0.1~10重量%のチオグリセリンと、アニモニア水とを含有することができる。チオグリセリンは、保湿力の高い還元剤であり、カラーリング料の還元剤としても用いることが可能である。チオグリセリンの含有率は、頭皮、毛髪への安全性、およびウェーブ形成力を向上させるという観点から、カーリング料の全量に対して、0.01~10重量%、好ましくは0.05~7重量%、より好ましくは0.1~4重量%とすることができる。
【0036】
本発明に適用可能なカーリング料において、アンモニア水を含有することができる。アンモニア水は、アルカリ剤として毛髪を膨潤にさせるため塩結合に作用し、有効成分の働きを助けることができる。また、アンモニア水は揮発性が高いため、毛髪残留性が極めて低く、放置時間中に揮散し、薬剤のpH低下が起こるので、オーバータイムが起こり難いといった利点がある。したがって、比較的パーマネントウェーブがかかりやすい軟毛向き、及び損傷毛向きの処理剤として配合することが可能である。さらに、皮膚への残留性が低いため、施術者の手荒れの心配が少ないといった特徴を有する。本発明においては、アンモニア水を含んでいれば特に限定されることはないが、皮膚、及び毛髪への安全性、およびウェーブ形成力を向上させるという観点から、カーリング料の全量に対して、アンモニア水の含有率は0.01~4重量%、より好ましくは0.05~1重量%とすることができる。
【0037】
本発明に適用可能なカーリング料において、チオグリセリンとアンモニアとの組合せは、ウェーブ形成力(カーリング性能の1つ)が著しく向上するという有利な効果を奏する。
【0038】
パーマネントウェーブ(縮毛矯正)処理剤は、一般にカーリング料とヘアセット料とから構成される。カーリング料に配合されている有効成分は、還元剤の他に、pHをアルカリに調整することによって、毛髪を膨潤させ有効成分の毛髪内浸透性に寄与させると共に還元剤の還元力を高めるためのアルカリ剤や、パーマネントウェーブによるダメージからの保護とパーマネントウェーブ後の状態保持のためのコンディショニング剤、毛髪保護剤や、アルカリ剤等の臭いをマスクしたりするための香料や、還元剤の過反応を抑える反応調整剤や、頭皮への刺激を緩和する抗炎症剤や、金属封鎖剤や、界面活性剤などを含有することができる。
【0039】
一方、ヘアセット料に配合されている有効成分は、切断された-SS-結合を再結合するための酸化剤であり、他に、pH調整剤や、コンディショニング剤や、金属封鎖剤や、界面活性剤などを含有することができる。
【0040】
本発明に適用可能なカーリング料及びヘアセット料に適用可能な、処理剤として以下のようなものを挙げることができる。例えば、医薬部外品としてのパーマネントウェーブ剤には、有効成分や、効能、効果、用法により次の9種類、すなわち、チオグリコール酸またはその塩類を有効成分とするコールドニ浴式パーマネントウェーブ剤、システインの塩類またはアセチルシステインを有効成分とするコールドニ浴式パーマネントウェーブ剤、チオグリコール酸またはその塩類を有効成分とする加温ニ浴式パーマネントウェーブ剤、システインの塩類またはアセチルシステインを有効成分とする加温ニ浴式パーマネントウェーブ剤、チオグリコール酸またはその塩類を有効成分とするコールド一浴式パーマネントウェーブ剤、チオグリコール酸またはその塩類を有効成分とするカーリング料用時調製発熱ニ浴式パーマネントウェーブ剤、チオグリコール酸またはその塩類を有効成分とするコールドニ浴式縮毛矯正剤、チオグリコール酸またはその塩類を有効成分とする加温ニ浴式縮毛矯正剤、チオグリコール酸またはその塩類を有効成分とし高温整髪用アイロンを使用する加温ニ浴式縮毛矯正剤等を例示することができる。
【0041】
本発明に適用可能なカーリング料及びヘアセット料には、このような公知の処理剤を適用することも可能である。また、好ましい実施態様において、前記カーリング料及びヘアセット料には、更に、チオグリコール酸及びその塩類、システイン及びその塩類、システアミン及びその塩類、チオ乳酸、及びその塩類、ラクトンチオールからなる群から選ばれる1種以上を含有することができる。
【0042】
チオグリコール酸は、単独でのpHは酸性であり、アルカリ剤と組み合わせることにより中和された塩類となり、強い還元剤としての効果をもち、膨潤力も強めることができる。チオグリコール酸は、毛髪中に存在する-SS-結合の切断をともないながら、速やかに毛髪内(コルテックス)に浸透する。システインを有効成分とするパーマネントウェーブ剤ではシステインの安定化剤としても配合することができる。チオグリコール酸及びその塩類の含有率は、皮膚、及び毛髪への安全性、およびウェーブ形成力を向上させるという観点から、パーマネントウェーブ剤の全量に対して、0.01~10重量%、より好ましくは0.05~5重量%である。
【0043】
システインは、保湿性があり、毛髪中の-SS-結合を切断するチオグリコール酸またはその塩を有効成分とするパーマネントウェーブ剤では保湿剤として配合することができる。分子中にフリーのアミノ基が毛髪表面のマイナスイオンと相互作用するため、健常毛において、システインは毛髪中にほとんど浸透しない。さらに、コルテックス中の-SS-結合は、ほとんど切断されないので、システイン処理した毛髪は、チオグリコール酸で処理した毛髪に比較してヘアダメージが少ない。システイン及びその塩類の含有率は、皮膚、及び毛髪への安全性、およびウェーブ形成力を向上させるという観点から、パーマネントウェーブ剤の全量に対して、0.01~10重量%、より好ましくは0.05~5重量%である。なお、システインの塩類として、L-システイン、塩酸L-システイン、DL-システイン、塩酸DL-システインなどが添加可能である。
【0044】
システアミンは、もともと海外市場において、低pH(pH8.3)条件下で、プロフェッショナル用製品として使用されていたが、感作性が問題になり、米国において2001年頃から、使用されていない。システアミンは、分子量が小さいため、毛髪内浸透性が高く、pH8、当モル濃度下において、チオグリコール酸またはその塩を有効成分とするパーマネントウェーブ剤と同等の強いウェーブ効果が得られる。しかしながら、分子中にアミノ基が存在するため、毛髪、皮膚への残留性が高く、感作性、反応臭、残臭、更にはその後のパーマネント処理に悪影響を及ぼすといった問題点が指摘されている。システアミン及びその塩類の含有率は、皮膚、及び毛髪への安全性、およびウェーブ形成力を向上させるという観点から、パーマネントウェーブ剤の全量に対して、0.01~10重量%、より好ましくは0.05~5重量%である。
【0045】
チオ乳酸は、チオグリコール酸とシステインの中間的な還元性を有し、毛髪中の-SS-結合を切断するパーマネントウェーブ剤の有効成分として配合することができる。チオ乳酸の含有率は、皮膚、及び毛髪への安全性、およびウェーブ形成力を向上させるという観点から、パーマネントウェーブ剤の全量に対して、0.01~10重量%、より好ましくは0.05~5重量%である。
【0046】
ブチロラクトンチオール(販売名;スピエラ、原料名;2-メルカプト-4-ブタノリド)は、酸性領域(pH=7以下)においてもウェーブ形成が可能であり、毛髪損傷が非常に少ないといった優れた特徴を持つ。その反面、原料臭、反応臭、残臭が強いといった欠点を有しており、香料などを用いたマスキング方法が提案されている。ブチロラクトンチオールの含有率は、皮膚、及び毛髪への安全性、およびウェーブ形成力を向上させるという観点から、パーマネントウェーブ剤の全量に対して、0.01~10重量%、より好ましくは0.05~5重量%とすることができる。ブチロラクトンチオールの市販品としては、例えば、スピエラ〔昭和電工(株)〕が挙げられる。
【0047】
亜硫酸ナトリウム(サルファイト)は、還元作用が温和である特徴を持つが、毛髪に対する反応生成物として、ブンテ塩を形成し、毛髪に悪い影響が出るといった場合もある。亜硫酸ナトリウムの含有率は、皮膚、及び毛髪への安全性、およびウェーブ形成力を向上させるという観点から、パーマネントウェーブ剤の全量に対して、0.01~10重量%、より好ましくは0.05~5重量%である。
【0048】
その他、本発明の処理剤には、ウェーブ形成力を向上させるという観点から、チオリンゴ酸、メルカプトエタノール、ジチオスレイトール、亜硫酸、亜硫酸水素、チオ硫酸及びそれらの塩を例示することができ、これらは単独でまたは2種類以上の組み合わせで用いることができる。
【0049】
また、本発明の毛髪処理剤の好ましい実施態様において、前記毛髪処理剤が、更に、N-アセチルシステインを含有する。N-アセチルシステインも、保湿性があり、毛髪中の-SS-結合を切断するチオグリコール酸またはその塩を有効成分とするウエーブ剤では保湿剤として配合することができる。また、本発明の主成分であるチオグリセンとアンモニアとの組合せにさらに、Nーアセチルシステインを添加した場合、これまで明らかにされていなかったが、パーマネントウェーブ施術後の毛髪のつや感が著しく向上することが見出された。N-アセチルシステインの含有率は、皮膚、及び毛髪への安全性、およびウェーブ形成力を向上させるという観点から、パーマネントウェーブ剤の全量に対して、0.01~10重量%、より好ましくは0.05~5重量%である。
【0050】
カーリング料のpHは、その機能が発揮される範囲が一般に6~10であり、特に限定されるものではないが、毛髪損傷の抑制、及びウェーブ形成力を向上させるという観点から、好ましくは、7.0~9.5、より好ましくは、前記毛髪処理剤のpHが、7.5~9.2の範囲である。
【0051】
本発明によるパーマネントウェーブ剤(第1剤及び/又は第2剤)の主成分は上記の通りであるが、下記の添加物等を適宜必要に応じて加えてもよい。
【0052】
また、アルカリ剤として、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、2-アミノ-2-メチル-1、3-プロパンジオールなどのアミノアルコール類や、L-アルギニンなどの塩基性アミノ酸や、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどの炭酸塩や、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどの苛性アルカリや、モルホリンなどが添加可能である。添加方法については、常法による。
【0053】
他に、水、油性成分(例えば、スフィンゴ脂質、セラミド、コレステロール誘導体、リン脂質等)、植物油(例えば、オリーブ油、大豆油、マカデミアナッツ油等)、ロウ類(例えば、ホホバ油、カルナバロウ、セラック、ミツロウ等)、炭化水素(例えば、流動パラフィン、軽質流動パラフィン、スクワラン、ワセリン等)、高級脂肪酸(例えば、ミリスチン酸、オレイン酸、イソステアリン酸等)、アルコール類(例えば、セタノール、イソステアリルアルコール、コレステロール、フィトステロール等)、エステル類(例えば、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、オレイン酸オクチルドデシル、トリイソステアリン酸グリセリル、乳酸セチル等)、シリコーン類(例えば、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、環状ジメチルシリコーン、アルコール変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン等)、アミノ酸類(例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸などの酸性アミノ酸及びグリシン、セリン、メチオニンなどの中性アミノ酸等)、PPT類(例えば、加水分解シルク、加水分解小麦、加水分解大豆、加水分解コラーゲン、加水分解ケラチン、シリル化加水分解シルク、シリル化加水分解小麦、シリル化加水分解大豆、シリル化加水分解コラーゲン、シリル化加水分解ケラチン等)、糖類(例えば、ブドウ糖、ショ糖、ソルビトール、マルトース、トレハロース等)、天然高分子類(例えば、アルギン酸、コンニャクマンナン、アラビアガム、キトサン、ヒアルロン酸、キサンタンガム、ヒドロキシエチルセルロース、カチオン化セルロース、カチオン化グアーガム等)、合成高分子(例えば、アニオン性高分子、カチオン性高分子、非イオン性高分子、両性高分子)、アニオン界面活性剤(例えば、アルキルエーテルカルボン酸塩、N-アシルグルタミン酸、N-アシルメチルタウリン塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルエーテル硫酸塩等)、カチオン界面活性剤(例えば、アルキルアミン塩、脂肪酸アミドアミン塩、アルキル4級アンモニウム塩等)、両性界面活性剤(例えば、グリシン型両性界面活性剤、アミノプロピオン酸型両性界面活性剤、アミノ酢酸ベタイン型両性界面活性剤、スルホベタイン型両性界面活性剤等)、非イオン界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等)、染料(例えば、タール色素、天然色素等)、植物エキス(例えば、カミツレエキス、コンフリーエキス、セージエキス、ローズマリーエキス等)、ビタミン類(例えば、L-アスコルビン酸、DL-α-トコフェロール、D-パンテノール等)、紫外線吸収剤(例えば、パラアミノ安息香酸、サリチル酸オクチル、パラメトキシケイ皮酸2-エトキシエチル等)、防腐剤(例えば、安息香酸、安息香酸ナトリウム、サリチル酸、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラベン、フェノキシエタノール等)、酸化防止剤(例えば、亜硫酸水素ナトリウム、ジブチルヒドロキシトルエン等)、金属イオン封鎖剤、(例えば、エデト酸塩、ポリリン酸ナトリウム、フィチン酸等)、pH調整剤(例えば、クエン酸、乳酸、リン酸、水酸化ナトリウム、アンモニア水、アミノメチルプロパノール等)、溶剤(例えば、エタノールイソプロパノール、ベンジルアルコール等)、噴射剤(例えば、LPG、ジメチルエーテル、窒素ガス等)、香料などの従来公知の化粧品成分を配合することができる。添加方法については、常法による。
【0054】
なお、本発明によるカーリング料及びヘアセット料は、ともに通常の方法に従い、液状、ミルク状、クリーム状、ムース状、エアゾール形態などの剤形として提供することができる。
【0055】
本発明のアイロンパーマ方法は、上述したヘアカラー剤と、カーリング料と、を混合する工程を有する。ヘアカラー剤とカーリング料をヘアカラー剤を1~5に対してカーリング料を5とすることができる。例えば、ヘアカラー剤:カーリング料=1~5:5の配合比で、カップの場合はスパチラまたは刷毛で均一になるまで撹拌し、スポイトボトルの場合は均一になるまで上下に振って混合することができる。また、本発明のアイロンパーマ方法の好ましい実施態様において、さらに、前記混合物を塗布後に所定時間を設ける工程を含むことを特徴とする。すなわち、本発明において、前記混合したヘアカラー剤と、カーリング料との混合物を塗布する場合、5~15分間程度放置して毛髪を軟化させることができる。混合物の塗布は複数回おこなってもよい。ヘアカラー剤及びカーリング料の混合物の塗布後の放置時間は、毛髪のダメージ度、髪質、用いる薬剤の作用の強弱等により適宜調整することができる。
【0056】
次いで、混合物の塗布後の毛髪を水洗し、風乾により毛髪を乾燥させてもよい。水洗は、従来と同様に一般的な水洗で行うことができる。風乾は、特に限定されず、従来公知の方法が利用できる。
【0057】
水洗及び風乾により、毛髪内では水素結合が開鎖している状態になる。この状態となった後にヘアセット料によって処理を行うと、風乾によって乾燥された時のウェーブ状態が毛髪に記憶されることになる。
【0058】
本発明においては、前記混合物を塗布後、アイロンパーマ処理を行う工程と、を含むことを特徴とする。アイロンパーマ処理については、特に限定されず、常法を用いることができる。適当温度についても、適宜調節することができ、特に限定されないが、例えば、好ましくは140~200℃、より好ましくは、160~180℃とすることができる。
【0059】
また、本発明のアイロンパーマ方法の好ましい実施態様において、前記アイロンパーマ処理を行う工程後に、ヘアセット料を塗布する工程を有することを特徴とする。ヘアセット料は、酸化剤を含むことができる。当該ヘアセット料を塗布し、放置した後に、次いで水洗することができる。このようなヘアセット料に用いられる酸化剤としては、例えば、過酸化水素、臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウムなどが挙げられる。酸化剤の配合量としては、ヘアセット料の全量に対して、過酸化水素では0.5~2.5重量%、臭素酸ナトリウムでは3.5~10.0重量%とすることができる。また、放置時間は、過酸化水素を配合した場合では3~8分、臭素酸ナトリウムでは8~15分とすることができる。放置時間が短いと酸化処理が不充分でウェーブ形成が不十分となりやすく、放置時間が長すぎると毛髪が損傷する虞がある。ヘアセット料処理を終えた後に、水洗を行い、残留するヘアセット料処理を十分に除去する。この際、トリートメント剤を併用してもよい。また、水洗後には、乾燥、整髪料などによる毛髪のセットなどのパーマネントウェーブ処理に伴う一般的な処理を行うことが可能である。
【0060】
また、本発明の好ましい実施態様において、さらに、前記ヘアカラー剤は、抗体産生抑制剤を含むことができる。抗体産生抑制剤としては、アレルギー疾患の予防や改善という観点から、ザクロ種子エキス、アガリクス属等に属するキノコ、ヤナギハッカ、エーデルワイス等抽出物を挙げることができる。
【0061】
例えば、抗体産生抑制剤として、ザクロ種子エキスを用いた場合を例に説明すれば以下の通りである。ザクロ種子エキスは、ザクロの種子由来のエキスである。本発明に適用するザクロ種子エキスは、ザクロの種子由来である限り、総てのザクロ種子エキスを対象とする。
【0062】
また、好ましい実施態様において、前記ザクロ種子エキスは、プニカ酸、又はエラグ酸を含むことを特徴とする。ザクロ種子エキスは、例えば、以下の方法により得ることができる。まず、ザクロ種子を粉砕して得た粉砕物を、エタノール、メタノール、水、ヘキサンからなる群から選択される少なくとも1種の溶媒に浸漬して、上清を分取して前記ザクロ種子エキスを得たことを特徴とする。例えば、振とう抽出させることができる。振とう抽出において、例えば、約4℃等の低温室にてローテーターにセットして回転させながら抽出することができる。
【0063】
より詳細には、まず、ザクロ種子を準備する。ザクロ種子は、必要に応じて洗浄し、乾燥する。乾燥は十分に行なうのが好ましい。後の粉砕を均質に行なうためである。
【0064】
次に、ザクロ種子を粉砕する。粉砕の方法は特に限定されず、ボールミル、ハンマーミル、ローラーミル、ロッドミル、サンプルミル、スタンプミル、ディスインテグレーター、乳鉢、冷却装置付きブレンダーなどの公知の粉砕機を用いることができる。なお、粉砕時における発熱により、ザクロ種子組成物の分解等が発生することも考えられることより、粉砕時間を数秒とし、十数回繰り返すことができる。
【0065】
次いで、ザクロ種子を粉砕し粉砕物を得た後、各種溶媒に前記粉砕物を浸漬する。この場合の溶媒は、特に限定されず、所望とする効果に対応して適宜溶媒を設定することができる。また、本発明のザクロ種子エキスの製造方法の好ましい実施態様において、溶媒が、エタノール、メタノール、ヘキサン、水からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。溶媒としては、エタノール、メタノール、水、へキサン、酢酸エチル、クロロホルム、アセトンなどの極性、非極性溶媒を問わず挙げることができる。好ましくは、メタノール、エタノール、水等を挙げることができる。
【0066】
浸漬は、緩やかな攪拌下で行なうことができる。各種溶媒に前記粉砕物を浸漬して各種溶液を得る。各種溶液について、溶液の状態に応じて攪拌を行い、場合によりそのまま溶液を放置しても良い。攪拌する場合には、特に限定されないが、10時間~48時間、好ましくは、およそ1日(24時間)攪拌を持続させることができる。
【0067】
その後、上清を分取することによりザクロ種子エキスを得ることができる。必要に応じて、上清を蒸発乾固する。蒸発乾固は、エバポレーターを用いて、20℃~60℃、好ましくは、37℃~40℃の温浴上で行なうことができる。蒸発乾固することにより、ザクロ種子エキスを長期間保存することができる。
【0068】
ザクロ種子中に含まれる成分は、ザクロ種子を極性の異なる溶媒を用いて抽出することにより、その物性により振り分けられる。したがって、使用した溶媒により、ザクロ種子エキスの成分の種類及び含有量は異なる。
【実施例0069】
以下では本発明のアイロンパーマ方法に適する、ヘアカラー剤及びパーマネントウェーブ剤を用いた実施例を説明するが、本発明は、下記の実施例に限定して解釈されるものではない。
【0070】
実施例1
まず、本発明に適用可能なヘアカラー剤の一例を作成した。
【0071】
アルカリ剤(pH調整剤)に関しては、弱アルカリ性で皮膚刺激が起きにくいという観点から、本実施例においては、炭酸水素アンモニウムを一例として、試験を行った。
【0072】
また、人の毛髪の約80%はアミノ酸由来のケラチンタンパク質により構成され、L-システインはその毛髪にも多く含まれるアミノ酸であり、L-システインおよびその塩類は毛髪の保湿および柔軟性を保たせる目的で配合を試みた。代表的な塩基性アミノ酸としてL-アルギニン、L-リシン、L-ヒスチジンがあるが、これらは損傷すると流出することが知られていて、塩基性アミノ酸およびその塩類を0.01~0.5質量%が好ましいことが判明した。
【0073】
次いで、本発明に適用可能なカーリング料及びヘアセット料の一例を作成した。
【0074】
以下に、本発明の一実施態様におけるヘアカラー剤組成物(カラートリートメント剤、処方例1)、カーリング料(処方例2)、及びヘアセット料(処方例3)の成分例を示す。
【0075】
(処方例1;ヘアカラー剤)
成分(表示名称) 重量%
水 残部
グリセリン 1.00
BG 1.00
ペンチレングリコール 1.00
ヒドロキシエチルセルロース 0.25
ステアルトリモニウムブロミド 1.50
イソプロパノール 1.00
ミリスチルアルコール 5.00
ベヘニルアルコール 1.00
パルミチン酸エチルヘキシル 2.00
パルミチン酸セチル 1.00
ステアリン酸グリコール 2.00
シア脂 1.00
炭酸水素アンモニウム 1.00
フェノキシエタノール 0.60
エタノール 1.00
グリチルリチン酸2K 0.10
ザクロ種子エキス 0.10
塩基性青99 0.30
塩基性茶16 0.50
HC青2 0.60
HC黄4 0.20
HC黄2 0.10
アルギニン 0.10
ヒスチジンHCl 0.02
リシンHCl 0.02
合計 100.00
【0076】
処方例1(ヘアカラー剤)の製造元等を表1に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
調整方法:
1.水相を75~77℃まで撹拌しながら加温する。
2.油相を77~79℃まで加熱しながら撹拌し、均一にする。
3.75~77℃までに加熱した水相に色素を加えて均一にし、油相を加えて乳化し、均一になるまで撹拌する。
4.内容物をゆっくりと冷却し、43℃以下になったら防腐剤および清涼成分、消炎成分、アミノ酸群を加えて均一になるまで撹拌し、32℃以下になるまで冷却する
【0079】
なお、pH測定には以下の機種および電極を用いた。
pHメーターの機種:F-71((株)堀場製作所)
pHメーターの電極:形式9615((株)堀場製作所)
【0080】
(処方例2;カーリング料)
成分(表示名称) 重量%
チオグリコール酸アンモニウム 1.98
チオグリセリン 2.40
アンモニア水(25wt%) pH9に調整
水酸化ナトリウム 適量
炭酸水素ナトリウム 1.00
炭酸水素アンモニウム 0.50
塩化セチルトリメチルアンモニウム 1.00
プロモイスWK-GB*1 5.00
キトフィルマー *2 0.50
濃グリセリン 0.50
エデト酸4ナトリウム 0.05
精製水 残部
合計 100.00
*1加水分解ケラチン(20%配合)
*2ヒドロキシプロピルキトサン(4%配合)
【0081】
(処方例3;ヘアセット料)
成分(表示名称) 重量%
臭素酸ナトリウム 8.00
塩化ラウリルトリメチルアンモニウム 1.00
エデト酸2ナトリウム 0.05
クエン酸 pH9に調整
リンゴ酸 適量
精製水 残部
合計 100.00
【0082】
<染毛性>
約1gの人毛白髪100%毛束(品番:BM-W-A、ビューラックス社製)を0.5%のラウリル硫酸ナトリウム水溶液に40℃で30分間浸漬し、その後流水中でよく洗浄し、室温にて風乾させ評価用毛束とした。染毛とアイロンパーマを施術する以下の3方法で比較した。
【0083】
<パーマネントウェーブ剤とヘアカラートリートメント剤を混合し、同時施術>
処方例1のヘアカラー剤5gと処方例2のカーリング料を5gを均一になるまで混合し、評価用毛束2本に塗布後25℃の恒温槽に15分間放置した。その後、当社のウーロンシャンプー(販売名:ナノサプリ クレンジングシャンプーOT)で洗浄し温水ですすぎ、ドライヤーで乾かした。そして当社のアイロン(販売名:メデルアイロン)を180℃に設定し2回毛束を通した。その後、処方例3のヘアセット剤を2本の毛束に5g塗布し室温で5分間放置。その後、温水ですすぎドライヤーで乾かし、染色具合良好な毛束を分光測色計で測定用毛束とした。
【0084】
実施例2
実施例1で作成した処方例1のヘアカラー剤1gと処方例2のカーリング料を5gを均一になるまで混合し、評価用毛束2本に塗布後25℃の恒温槽に15分間放置した。その後、当社のウーロンシャンプー(販売名:ナノサプリ クレンジングシャンプーOT)で洗浄し温水ですすぎ、ドライヤーで乾かした。そして当社のアイロン(販売名:メデルアイロン)を180℃に設定し2回毛束を通した。その後、実施例1で作成した処方例3のヘアセット料を2本の毛束に5g塗布し室温で5分間放置。その後、温水ですすぎドライヤーで乾かし、染色具合良好な毛束を分光測色計で測定用毛束とした。
【0085】
比較例1
比較例1として、先にアイロンパーマ、その後染毛した場合を試験した。評価用毛束2本に実施例1で作成した処方例2のパーマネントウェーブ剤を5g塗布し、15分間室温放置した。その後、当社のウーロンシャンプー(販売名:ナノサプリ クレンジングシャンプーOT)で洗浄し温水ですすぎ、ドライヤーで乾かした。そして当社のアイロン(販売名:メデルアイロン)を180℃に設定し2回毛束を通した。その後、実施例1で作成した処方例3のヘアセット料を2本の毛束に5g塗布し室温で5分間放置した。その後、温水ですすぎドライヤーで乾かした。そして実施例1で作成した処方例1のヘアカラー剤を2本の毛束に5g塗布し25℃の恒温槽に15分間放置した。その後、当社のウーロンシャンプー(販売名:ナノサプリ クレンジングシャンプーOT)で洗浄し温水ですすぎ、ドライヤーで乾かし、染色具合良好な毛束を分光測色計で測定用毛束とした。
【0086】
比較例2
比較例2として、先に染毛、その後アイロンパーマを行った場合を試験した。評価用毛束2本に実施例1で作成した処方例1のヘアカラー剤を2本の毛束に5g塗布し25℃の恒温槽に15分間放置した。その後、当社のウーロンシャンプー(販売名:ナノサプリ クレンジングシャンプーOT)で洗浄し温水ですすぎ、ドライヤーで乾かした。その後、2本の毛束に実施例1で作成した処方例2のカーリング料を5g塗布し、15分間室温放置した。その後、当社のウーロンシャンプー(販売名:ナノサプリ クレンジングシャンプーOT)で洗浄し温水ですすぎ、ドライヤーで乾かした。そして当社のアイロン(販売名:メデルアイロン)を180℃に設定し2回毛束を通した。その後、実施例1で作成した処方例3のヘアセット剤を2本の毛束に5g塗布し室温で5分間放置した。その後、温水ですすぎドライヤーで乾かし、染色具合良好な毛束を分光測色計で測定用毛束とした。結果を表2に示す。
【0087】
【表2】
【0088】
データについて、分光測色計(型番:CM-dG,コニカミノルタ社製)で測定を行った。標準の光D65:紫外域を含む昼光で照らされている、物体色の測定用光源を意味する。CIE(国際照明委員会)やJISなどで定められている標準の光である。
【0089】
<染毛性の判定>
分光測色計(型番:CM-dG,コニカミノルタ社製)を用いて色差及び明度を測定し、表4に示した。染色性良好という観点から実施例2が優れているが、実施例1と実施例2の放置時間とシャンプー回数の比較を表3に示した。
【0090】
【表3】
【0091】
「白髪ぼかし」という施術を考えるとしっかり染毛するというよりも白髪を淡く染めるという手法であれば、施術時間やシャンプー回数とかを考慮すると実施例1の施術方法は有効である。染めたい色に応じて処方例2のカーリング料に対して実施例2の処方例1のヘアカラー剤20%(実施例2)~100%(100%の場合は実施例1)の範囲がアイロンパーマと白髪ぼかしを組み合わせた施術の方法の効果を表4に示した。
【0092】
【表4】
【0093】
以上の結果から、ヘアカラー剤とカーリング料や、さらにヘアセット料を使用してアイロンパーマに適用した場合に、良好な白髪ぼかし等を実現することが可能となった。