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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092447
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/04 20060101AFI20240701BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20240701BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240701BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
H02J7/04 H
H01M10/44 P
H01M10/48 Z
H02J7/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208370
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】副島 崇礼
(72)【発明者】
【氏名】藤巻 寿隆
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA01
5G503CA08
5G503CB09
5G503DA04
5G503EA05
5H030AA01
5H030AS08
5H030AS14
5H030BB01
5H030BB21
5H030FF51
(57)【要約】
【課題】二次電池のハイレート劣化を適切に抑制した上で、一定以上の充電効率を維持できる電池モジュールを提供する。
【解決手段】ここに開示される電池モジュール1は、電池ケース内に電極体と電解液が収容された二次電池110を含む電池デバイス100と、電池デバイス100の充放電を制御する制御装置200とを備えている。そして、制御装置200は、充電中の二次電池110の余剰電解液の増加量LΔを測定する増加量測定手段210と、余剰電解液の増加量LΔに基づいて電池デバイス100に対する充電電流の電流値を補正する電流補正制御を実施する電流値補正手段220とを含む。これによって、ハイレート劣化の程度に応じて電流値を補正しながら充電を継続することができるため、二次電池のハイレート劣化を適切に抑制した上で、一定以上の充電効率を維持することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池ケース内に電極体と電解液が収容された二次電池を含む電池デバイスと、
前記電池デバイスの充放電を制御する制御装置と
を備えており、
前記制御装置は、
充電中の前記二次電池の余剰電解液の増加量LΔを測定する増加量測定手段と、
前記余剰電解液の増加量LΔに基づいて前記電池デバイスに対する充電電流の電流値を補正する電流補正制御を実施する電流値補正手段と
を含む、電池モジュール。
【請求項2】
前記制御装置は、前記余剰電解液の増加量LΔが所定の閾値Lを超えた場合に、前記電流補正制御の開始を前記電流値補正手段に指示する開始判定手段をさらに含む、請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項3】
前記増加量測定手段は、
所定の第1のSOCでの余剰電解液の液量である第1液量Lと、前記第1のSOCよりも高SOCである第2のSOCでの余剰電解液の液量である第2液量Lと、前記電池ケース内に存在する前記電解液の総量である総液量Lとを取得する液量取得手段と、
以下の式(1)に基づいて余剰電解液の増加量LΔを算出する算出手段と
を備えている、請求項1又は2に記載の電池モジュール。
Δ=(L-L)/L (1)
【請求項4】
前記第1のSOCは、10%~20%の範囲内で設定されている、請求項3に記載の電池モジュール。
【請求項5】
前記二次電池のX線透過画像を撮像するX線画像撮影装置をさらに備えており、
前記液量取得手段は、
前記X線画像撮影装置に前記X線透過画像の撮像を指示する撮像指示手段と、
前記X線透過画像の画像解析に基づいて前記余剰電解液の液量を測定する画像解析手段と
を備えている、請求項3に記載の電池モジュール。
【請求項6】
前記画像解析手段は、前記電極体と前記電池ケースとの間の領域に前記電池ケースの側面に沿った測定線を設定し、当該測定線上の輝度の変化を解析することによって、前記余剰電解液の液量を測定するように構成されている、請求項5に記載の電池モジュール。
【請求項7】
前記増加量測定手段は、前記二次電池の傾斜角度θを検出する角度検出手段をさらに備えており、
前記撮像指示手段は、前記傾斜角度θが所定の撮影角度θを超えた際に、前記X線画像撮影装置に前記X線透過画像の撮像を指示する、請求項5に記載の電池モジュール。
【請求項8】
前記電池ケースは、アルミニウム、樹脂によって形成されている、請求項5に記載の電池モジュール。
【請求項9】
前記電池デバイスは、複数の前記二次電池を備えた組電池を含む、請求項1または2に記載の電池モジュール。
【請求項10】
前記制御装置は、
複数の前記二次電池の中から基準電池を任意に選択する選択手段と、
前記基準電池の前記余剰電解液の増加量LΔの測定を前記増加量測定手段に指示する測定指示部と
を備えている、請求項9に記載の電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示される技術は、電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池等の二次電池は、電動車両や携帯端末などの様々な分野において広く用いられている。この二次電池は、通常、制御装置と接続された電池モジュールの状態で外部機器(電動車両や携帯端末など)に搭載される。この制御装置は、二次電池の充放電を適宜制御する。また、二次電池は、例えば、電池ケース内に電解液と電極体とが収容された構成を有している。かかる構成の二次電池では、電極体の内部(正極と負極との極間)に電解液が浸透している。また、この種の二次電池では、電極体内部に浸透しない余剰電解液を、電極体の外部(電極体と電池ケースとの間)に生じさせることがある。これによって、電極体内部の電解液が不足した際に、当該電極体内部に電解液を供給できる。
【0003】
ところで、上記構成の二次電池では、急速充電中に電池抵抗が急激に増加する劣化現象(ハイレート劣化)が生じることがある。このハイレート劣化は、急速充電中の電極(特に負極)の膨張によって電極体内部の電解液が流出することで生じる。これに対して、特許文献1(特開2021-180122号公報)に記載の制御装置(ECU)は、ハイレート劣化の進行を抑制するように構成されている。具体的には、特許文献1に記載の制御装置は、電極体内部の塩濃度分布の偏りに基づいてハイレート劣化量を算出する。そして、この制御装置は、充電中にハイレート劣化量が許容値を上回った場合に充電を中断し、かつ、充電中断中にハイレート劣化量が許容値を下回った場合に充電を再開するように構成されている。なお、特許文献1に記載の技術では、二次電池の電流値に基づいて、上記塩濃度分布の偏りを算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-180122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年の電動車両や携帯端末の普及に伴い、電池モジュールの性能向上に対する要求が高まっている。これに対して、特許文献1に記載の技術は、ハイレート劣化が検出される度に充電を中断するため、高い充電効率を維持することが困難である。ここに開示される技術は、かかる問題を解決するためになされたものであり、二次電池のハイレート劣化を適切に抑制した上で、一定以上の充電効率を維持できる電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するべく、ここに開示される技術によって以下の構成の電池モジュールが提供される。
【0007】
ここに開示される電池モジュールは、電池ケース内に電極体と電解液が収容された二次電池を含む電池デバイスと、電池デバイスの充放電を制御する制御装置とを備えている。そして、制御装置は、充電中の二次電池の余剰電解液の増加量LΔを測定する増加量測定手段と、余剰電解液の増加量LΔに基づいて電池デバイスに対する充電電流の電流値を補正する電流補正制御を実施する電流値補正手段とを含む。
【0008】
上述の通り、ここに開示される電池モジュールは、充電中の余剰電解液の増加量LΔを測定する。この「余剰電解液の増加量LΔ」は、充電中の電極の膨張によって電極体外部に流出した電解液の量を示している。すなわち、この余剰電解液の増加量LΔが少ない状態では、ハイレート劣化が殆ど進行していないとみなすことができる。一方、余剰電解液の増加量LΔが多くなると、ハイレート劣化が進行していると解される。そして、上記構成の電池モジュールの電流値補正手段は、余剰電解液の増加量LΔに基づいた電流補正制御を実施する。これによって、ハイレート劣化の程度に応じて電流値を補正しながら充電を継続できるため、二次電池のハイレート劣化を適切に抑制した上で、一定以上の充電効率を維持することができる。
【0009】
また、ここに開示される電池モジュールの好適な一態様では、制御装置は、余剰電解液の増加量LΔが所定の閾値Lを超えた場合に、電流補正制御の開始を電流値補正手段に指示する開始判定手段をさらに含む。かかる構成の電池モジュールでは、ハイレート劣化が殆ど生じていない状況で電流補正制御が行われない。これによって、さらに高い充電効率を維持することができる。
【0010】
また、ここに開示される電池モジュールの好適な一態様では、増加量測定手段は、所定の第1のSOCでの余剰電解液の液量である第1液量Lと、第1のSOCよりも高SOCである第2のSOCでの余剰電解液の液量である第2液量Lと、電池ケース内に存在する電解液の総量である総液量Lとを取得する液量取得手段と、以下の式(1)に基づいて余剰電解液の増加量LΔを算出する増加量算出手段とを備えている。これによって、より正確な余剰電解液の増加量LΔを取得することができる。
Δ=(L-L)/L (1)
【0011】
また、ここに開示される電池モジュールの好適な一態様では、第1のSOCは、10%~20%の範囲内で設定されている。このような低SOC領域を測定の始期とすることによって、より正確な余剰電解液の増加量LΔを取得することができる。
【0012】
また、ここに開示される電池モジュールの好適な一態様では、二次電池のX線透過画像を撮像するX線画像撮影装置をさらに備えている。そして、かかる態様における増加量測定手段は、X線画像撮影装置にX線透過画像の撮像を指示する撮像指示手段と、X線透過画像の画像解析に基づいて余剰電解液の液量を測定する画像解析手段とを備えている。これによって、余剰電解液の液量を直接測定できるため、より正確な余剰電解液の増加量LΔを取得できる。
【0013】
また、ここに開示される電池モジュールの好適な一態様では、画像解析手段は、電極体と電池ケースとの間の領域に電池ケースの側面に沿った測定線を設定し、当該測定線上の輝度の変化を解析することによって、余剰電解液の液量を測定するように構成されている。これによって、余剰電解液の液量をより正確に測定できる。
【0014】
また、ここに開示される電池モジュールの好適な一態様では、増加量測定手段は、二次電池の傾斜角度θを検出する角度検出手段をさらに備えている。そして、かかる態様における撮像指示手段は、傾斜角度θが所定の撮影角度θを超えた際に、X線画像撮影装置にX線透過画像の撮像を指示する。これによって、余剰電解液の液量をより正確に測定できる。
【0015】
また、ここに開示される電池モジュールの好適な一態様では、電池ケースは、アルミニウム、樹脂によって形成されている。これによって、鮮明なX線透過画像を容易に取得できる。
【0016】
また、ここに開示される電池モジュールの好適な一態様では、電池デバイスは、複数の二次電池を備えた組電池を含む。ここに開示される技術は、このような組電池を電池デバイスとして使用する電池モジュールにも適用できる。
【0017】
また、ここに開示される電池モジュールの好適な一態様では、制御装置は、複数の二次電池の中から基準電池を任意に選択する選択手段と、基準電池の余剰電解液の増加量LΔの測定を増加量測定手段に指示する測定指示部とを備えている。これによって、複数の二次電池を備えた組電池の充電電流を容易に制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】一実施形態に係る電池モジュールの構成を示すブロック図である。
図2図1中の電池デバイスの外観を模式的に示す斜視図である。
図3図2中の二次電池の外観を模式的に示す斜視図である。
図4図3に示す二次電池の内部構造を模式的に示す縦断面図である。
図5】一実施形態に係る電池モジュールの充電制御の処理ステップの概要を示すフローチャートである。
図6】増加量測定ステップの一例を説明するフローチャートである。
図7】二次電池のX線透過画像の一例である。
図8図7中の測定線M上の輝度の変化を示すラインプロファイルである。
図9】余剰電解液の増加量LΔ(%)と抵抗増加率(%)との関係を示すグラフである。
図10】他の実施形態に係る電池モジュールの充電制御の処理ステップの概要を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1の実施形態>
以下、ここに開示される技術の一実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって、ここに開示される技術の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここに開示される技術は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の図面においては、同じ作用を奏する部材・部位に同じ符号を付して説明している。さらに、各図における寸法関係(長さ、幅、厚み等)は実際の寸法関係を反映するものではない。
【0020】
1.電池モジュールの主要構成
図1は、本実施形態に係る電池モジュールの構成を示すブロック図である。図2は、図1中の電池デバイスの外観を模式的に示す斜視図である。図3は、図2中の二次電池の外観を模式的に示す斜視図である。図4は、図3に示す二次電池の内部構造を模式的に示す縦断面図である。なお、本明細書で説明する図中の符号Xは幅方向を示しており、符号Yは奥行方向を示しており、符号Zは高さ方向を示している。さらに、符号L、R、F、Rr、U、Dは、それぞれ、左方、右方、前方、後方、上方、下方を示している。但し、これらの方向は、説明の便宜上定めたものであり、製造後の二次電池の使用態様を限定することを意図したものではない。
【0021】
図1に示すように、本実施形態に係る電池モジュール1は、電池デバイス100と、制御装置200とを備えている。さらに、本実施形態に係る電池モジュール1には、液量取得デバイス300も設けられている。以下、各々について説明する。
【0022】
(1)電池デバイス
図1に示すように、本実施形態における電池デバイス100は、二次電池110を備えている。この電池デバイス100の一例として、図2に示す構成の組電池100Aを含む構成が挙げられる。この組電池100Aは、複数の二次電池110を備えている。各々の二次電池110は、後述する電池ケース10の扁平面10f(図3参照)が相互に対向するように配列される。また、隣接した2つの二次電池110の間には、スペーサ120が配置されている。そして、この複数の二次電池110は、一対の拘束板130に挟まれている。この一対の拘束板130は、配列方向(図2中の奥行方向Y)に沿って延びる架橋部材140で接続されている。これによって、各々の二次電池110は、所定の拘束圧で拘束される。また、図2に示す組電池100Aは、複数の二次電池110の各々を電気的に接続する接続部材150を備えている。この接続部材150は、隣接する二次電池110の電極端子40を接続する。これによって、複数の二次電池110を1つの電池デバイス100として使用できる。また、図1に示すように、本実施形態における電池デバイス100は、通信部190を備えている。この通信部190は、他の機器(例えば制御装置200)と通信できるように構成されている。なお、本明細書における「通信部」による通信方法は、有線通信でもよく、無線通信でもよい。
【0023】
次に、電池デバイス100中の二次電池110の構造の一例を説明する。図3及び図4に示すように、この二次電池110は、電池ケース10内に電極体20と電解液30が収容されることによって構成されている。
【0024】
(1-a)電池ケース
電池ケース10は、内部空間を有する箱状の容器である。この電池ケース10の内部空間には、電極体20と電解液30が収容される。なお、図3及び図4に示す電池ケース10は、扁平な直方体状の容器である。具体的には、電池ケース10は、上面開口を有する箱状部材であるケース本体14と、当該ケース本体14の上面開口を塞ぐ板状部材である封口板12とを備えている。なお、後述の増加量測定ステップ(図5中のS20)においてX線透過画像を取得する場合、電池ケース10は、アルミニウム(アルミニウム合金を含む)や樹脂などによって形成されていることが好ましい。これらの材料で形成された電池ケース10は、X線透過率が高いため、増加量測定ステップS20において鮮明なX線透過画像を取得できる。
【0025】
また、封口板12には、電池ケース10の内部に電解液30を注液するための注液孔12aが設けられている。なお、この注液孔12aは、電解液30の注液後に封止部材16で封止される。さらに、封口板12には、一対の電極端子40が取り付けられている。各々の電極端子40は、複数の導電部材を組み合わせた構造体であり、高さ方向Zに沿って延びている。そして、電極端子40の下端部を構成する集電部材40aは、電池ケース10の内部で電極体20と接続される。
【0026】
(1-b)電極体
電極体20は、セパレータを介して正極と負極とが対向した部材である。かかる電極体20の構造の一例として、捲回電極体や積層型電極体などが挙げられる。捲回電極体は、長尺シート状の正極と負極とセパレータとを捲回することによって形成される。一方、積層型電極体は、極間にセパレータが介在するように、短尺な正極と負極とを交互に積層させることによって形成される。なお、電極体20の構成部材(正極、負極およびセパレータ等)は、一般的な二次電池で使用され得る材料を特に制限なく使用でき、ここに開示される技術を限定するものではないため詳細な説明を省略する。
【0027】
(1-c)電解液
電解液30は、正極と負極との間で電荷担体を移動させる液状の電解質である。電解液30の大部分は、電極体20の内部(正極と負極との極間)に浸透している。また、本実施形態では、電極体20内部に浸透しない余剰電解液32が、電極体20の外部(電極体20と電池10ケースとの間)に存在している。これによって、電極体20内部の電解液30が不足した際に、当該電極体20内部に電解液30を供給できる。なお、電解液30も、一般的な二次電池で使用され得るものを特に制限なく使用できる。
【0028】
(2)制御装置
制御装置200は、電池デバイス100の充放電を制御する機器である。この制御装置200は、各種制御を司るコントローラ(例えばCPU)と、プログラムやデータ等を記憶する記憶部とを備えたコンピュータである。なお、制御装置200は、外部機器(車両や携帯端末等)の制御を司る制御部を兼ねていてもよい。但し、制御装置200のハードウェアとしての構成は、ここに開示される技術を限定するものではない。すなわち、制御装置200は、後述の電流補正制御が実施できるように構成されていればよい。
【0029】
ここで、本実施形態における制御装置200は、充電中の二次電池110の余剰電解液の増加量LΔを測定する増加量測定手段210と、余剰電解液の増加量LΔに基づいて電池デバイス100に対する充電電流の電流値を補正する電流補正制御を実施する電流値補正手段220とを備えている。さらに、制御装置200は、余剰電解液の増加量LΔが所定の閾値Lを超えた場合に電流補正制御の開始を電流値補正手段220に指示する開始判定手段230と、他の機器(例えば電池デバイス100)と通信できるように構成された通信部250とを備えている。なお、制御装置200に含まれる各手段による詳細な処理の内容は後述する。
【0030】
(3)液量取得デバイス
液量取得デバイス300は、二次電池110の余剰電解液32の液量を測定する装置である。本実施形態に係る電池モジュール1では、液量取得デバイス300として、二次電池110のX線透過画像を撮像するX線画像撮影装置が用いられている。また、本実施形態における電池デバイス100は、図2に示す組電池100Aに含まれずに孤立した二次電池(撮像用電池)を備えている。この撮像用電池は、組電池100Aに含まれる二次電池110と同じ構成を有しており、当該組電池100Aに電気的に接続されている。また、撮像用電池には、組電池100Aに含まれる二次電池110と略同等の拘束圧が加えられている。すなわち、撮像用電池は、組電池100Aの外部に配置されていることを除いて、組電池100Aに含まれる二次電池110と同じ条件で充放電が行われる。本実施形態におけるX線画像撮影装置300は、この撮像用電池のX線透過画像を取得できる位置に配置されている。これによって、複数の二次電池110が拘束された組電池100Aが構築されている場合でも、鮮明なX線透過画像を容易に取得できる。また、図1に示すように、液量取得デバイス300も、他の機器(例えば制御装置200)と通信可能な通信部310を備えている。
【0031】
(4)充電デバイス
また、図1に示すように、電池デバイス100は、充電デバイス400と接続可能に構成されている。この充電デバイス400は、電池デバイス100の二次電池110に充電電流を供給する装置である。なお、充電デバイス400は、電池モジュール1に搭載されていてもよいし、電池デバイス100と接続可能な外部装置でもよい。例えば、ここに開示される技術をハイブリッド車両に適用する場合には、当該ハイブリッド車両の内燃機関、モータ・ジェネレータ、DC-DCコンバータおよびこれらの制御装置を含むものが充電デバイス400として機能し得る。この場合、充電デバイス400は、電池デバイス100と常に接続された状態であり、制御装置等によるスイッチング動作の切り替えによって充電状態と非充電状態とが切り替えられる。一方、ここに開示される技術を電気自動車や携帯端末などに適用する場合には、外部充電装置が充電デバイス400として機能する。この場合、充電デバイス(外部充電装置)400は、電池デバイス100を充電する際に、電池デバイス100や制御装置200と電気的に接続される。また、図1に示すように、充電デバイス400も、他の機器(例えば制御装置200)と通信可能な通信部410を備えている。
【0032】
2.充電制御の処理ステップ
以下、本実施形態に係る電池モジュール1において実施される充電制御の処理ステップについて説明する。図5は、本実施形態に係る電池モジュールの充電制御の処理ステップの概要を示すフローチャートである。図6は、増加量測定ステップの一例を説明するフローチャートである。図7は、二次電池のX線透過画像の一例である。図8は、図7中の測定線M上の輝度の変化を示すラインプロファイルである。図9は、余剰電解液の増加量LΔ(%)と抵抗増加率(%)との関係を示すグラフである。
【0033】
図5に示すように、本実施形態における充電制御の処理ステップは、充電開始ステップS10と、増加量測定ステップS20と、余剰電解液の増加量判定ステップS30と、電流値補正ステップS40とを備えている。さらに、本実施形態では、電流値補正ステップS40の後に、SOC判定ステップS50が設けられている。以下、各ステップについて説明する。
【0034】
(1)充電開始ステップS10
本ステップでは、電池デバイス100の充電を開始する。なお、詳細な充電条件は、二次電池110の寸法や材料などに応じて適宜設定されるものであり、ここに開示される技術を限定する要素ではないため詳細な説明を省略する。また、本実施形態における充電制御は、常時実施してもよいし、急速充電(ハイレート充電)中にのみ実施してもよい。急速充電中は特にハイレート劣化が生じやすいため、この状況に絞って本実施形態における充電制御を実施すれば、充電効率を維持しつつ、ハイレート劣化を抑制しやすくなる。
【0035】
(2)増加量測定ステップS20
本ステップでは、余剰電解液の増加量測定手段210によって、充電中の二次電池110の余剰電解液の増加量LΔを測定する。この「余剰電解液の増加量LΔ」は、充電中の電極の膨張によって電極体20の外部に流出した電解液30の量を示している。すなわち、余剰電解液の増加量LΔが多くなると、二次電池110のハイレート劣化が進行しているとみなすことができる。一方、余剰電解液の増加量LΔが少ない状態では、ハイレート劣化が進行していないとみなすことができる。
【0036】
以下、増加量測定ステップS20における「余剰電解液の増加量LΔ」の測定手順の一例を説明する。図1に示すように、本実施形態における増加量測定手段210は、液量取得手段211と算出手段212とを備えている。図6に示すように、増加量測定手段210は、液量取得手段211と算出手段212との協働によって、L測定ステップS21と、L測定ステップS22と、L取得ステップS23と、LΔ算出ステップS24とを実施する。
【0037】
(2-a)L測定ステップS21
本ステップにおいて、液量取得手段211は、第1液量Lを測定する。ここで測定される「第1液量L」とは、予め定められた第1のSOCにおける余剰電解液の液量(ml)である。例えば、第1のSOCは、充電が必要となる低SOC領域に設定される。例えば、第1のSOCは、10%~20%(例えば17%程度)の範囲内に設定される。このような低SOC領域では、電極の膨張による電解液30の流出が殆ど生じていない。このため、第1液量Lを基準として、後述する第2液量Lとの差分を求めることによって、充電の進行に伴う電解液30の流出(ハイレート劣化)をより正確に測定できる。
【0038】
なお、「余剰電解液の液量(ml)」は、二次電池110のX線透過画像の画像解析に基づいて測定することが好ましい。これによって、余剰電解液32の実際の液量を正確に測定することができる。かかるX線透過画像の画像解析を実施するため、本実施形態における液量取得手段211は、撮像指示手段211aと画像解析手段211bとを備えている。以下、X線透過画像を用いた余剰電解液の液量の測定について具体的に説明する。
【0039】
余剰電解液の液量の測定では、まず、通信部250を介して、撮像指示手段211aがX線画像撮影装置300にX線透過画像の撮像を指示する。そして、X線画像撮影装置300は、撮像指示手段211aからの指示に応じて二次電池110のX線透過画像を取得する。なお、X線透過画像の撮像条件は、余剰電解液32の液面32aを正確に認識できるような条件に適宜調節することが好ましい。一例として、撮影時の管電圧は、125kV~175kV(例えば150kV)の範囲に設定することが好ましい。また、管電流は、175μA~225μA(例えば200μA)の範囲に設定することが好ましい。そして、X線画像撮影装置300は、撮像したX線透過画像を、通信部310を介して、制御装置200の画像解析手段211bに送信する。
【0040】
なお、余剰電解液32の液面32aは二次電池110(電池セル)が地面に対して水平姿勢である状態では判別しにくい場合がある。その場合、二次電池110が傾いた状態でX線透過画像を撮影するのがよい。この場合、重力方向の下方における電池ケース10の角に余剰電解液32が集まるため、図7に示すように余剰電解液32の液面32aが比較的に判別しやすくなる。例えば、自動車に電池デバイス100を搭載する場合には、車両に対し電池デバイス100(例えば、撮像用電池のみ)の姿勢を傾ける装置を搭載することが好ましい。これによって、車両走行中に電池デバイス100(二次電池110)を傾けて余剰電解液32の液面32aを正確に認識できる。また、充電デバイス400が外部充電装置である場合には、外部充電装置に電池デバイス100の姿勢を傾ける装置が取り付けられていることが好ましい。
【0041】
次に、画像解析手段211bは、X線透過画像の画像解析に基づいて余剰電解液の液量を測定する。以下、X線透過画像を解析する手順の一例について図7を参照しながら説明する。画像解析手段211bは、最初に、撮像したX線透過画像の電極体20と電池ケース10との間の領域に、電池ケース10の側面10sに沿って延びる測定線Mを設定する。そして、所定の画像解析ソフト(Image-Jなど)を用いて測定線M上の輝度の変化を分析する。例えば、図8に示す分析結果では、100ピクセル付近で輝度値が急激に低下している。これは、余剰電解液32が存在している領域のX線透過率が低いためである。このことに基づいて、画像解析手段211bは、100ピクセル付近の位置に余剰電解液32の液面32aが存在しているとみなす。次に、図8では、400ピクセル付近の位置で輝度値がさらに低下している。これは、X線透過性が殆どない電池ケース10の底面10bに到達したためである。このことに基づいて、画像解析手段211bは、100~400ピクセルの領域に余剰電解液32が存在しているとみなす。そして、本実施形態における画像解析手段211bには、予備試験の結果に基づいて、「X線透過画像における余剰電解液32の存在領域(ピクセル)」と「実際の余剰電解液の液量(ml)」との関係式が記憶されている。画像解析手段211bは、この関係式に基づいて、図8中の「余剰電解液の存在領域」から余剰電解液の液量(ml)を算出する。そして、画像解析手段211bは、算出した余剰電解液の液量(本ステップでは第1液量L)を算出手段212に送信する。
【0042】
(2-b)L測定ステップS22
次に、本ステップにおいて、液量取得手段211は、第2液量Lを測定する。ここで測定される「第2液量L」とは、第1のSOCよりも高SOCである第2のSOCでの余剰電解液の液量である。例えば、第2のSOCは、二次電池110の充電がある程度進行した高いSOC領域に設定される。これによって、充電が十分に進行した状態の余剰電解液の液量を「第2液量L」とすることができるため、二次電池110のハイレート劣化の程度をより正確に評価できる。また、第1のSOCを始点としてSOCが一定量上昇する度に第2液量Lが測定されるように、液量取得手段211に複数の第2のSOCが設定されていてもよい。これによって、ハイレート劣化の進行に応じた電流補正制御をより精密に実施することができる。
【0043】
なお、第2液量Lは、第1のSOCよりも高SOC領域で測定を行うことを除いて、第1液量Lと同じ手順で測定される。すなわち、第2液量Lは、二次電池110のX線透過画像の画像解析に基づいて測定できる。このX線透過画像に基づいた第2液量Lの測定は、重複した説明となるため、ここでの説明を省略する。なお、測定後の第2液量Lは、上記第1液量Lと同様に、算出手段212に送信される。
【0044】
(2-c)L取得ステップS23
本ステップにおいて、液量取得手段211は、電池ケース10内に存在する電解液30の総量(総液量L)を取得する。ここでの「総液量L」とは、電極体20外部に存在する余剰電解液32と、電極体20内部に浸透している電解液30の合計量である。後述のLΔ算出ステップS24において総液量Lを反映させることによって、電解液30の注液量に左右されずに、二次電池110のハイレート耐性を評価できる。この総液量Lも、液量取得手段211から算出手段212に送信される。なお、電解液30の総液量Lは、制御装置200の記憶部に予め記憶されている。この電解液30の総液量Lは、電池設計時の規格値を使用してもよいし、二次電池110の構築時(電解液30の注液時)に測定した実測値を使用してもよい。
【0045】
(2-d)LΔ算出ステップS24
本ステップでは、液量取得手段211が取得した各パラメータに基づいて余剰電解液の増加量LΔを算出する。具体的には、算出手段212は、液量取得手段211から送信された第1液量Lと第2液量Lと総液量Lを以下の式(1)に代入することで余剰電解液の増加量LΔを算出する。この余剰電解液の増加量LΔは、充電中の電極の膨張によって電極体外部に流出した電解液の量(L-L)を電解液30の総液量Lで規格化した値である。なお、算出手段212は、算出した余剰電解液の増加量LΔを開始判定手段230と電流値補正手段220に送信する。
Δ=(L-L)/L (1)
【0046】
(3)増加量判定ステップS30
本ステップでは、開始判定手段230において、余剰電解液の増加量LΔと所定の閾値Lとを比較判定する増加量判定ステップS30を実施する。なお、本ステップにおける閾値Lは、製造対象の二次電池の規格に応じて適宜設定される。例えば、閾値Lは、0.05%~10%の範囲内で設定され得る。
【0047】
そして、余剰電解液の増加量LΔが閾値Lを超えた場合(S30:YESの場合)には、電極体20から電解液30が多量に流出していると解される。この場合、開始判定手段230は、二次電池110のハイレート劣化が進行していると判断し、電流補正制御(S40)の開始を電流値補正手段220に指示する。一方、余剰電解液の増加量LΔが閾値L以下となった場合(S30:NOの場合)には、充電中の電解液30の流出量が少ないと解される。この場合、開始判定手段230は、二次電池110のハイレート劣化が殆ど進行していないと判断し、電流補正制御を行わずに充電を継続する旨を電流値補正手段220に指示する。
【0048】
(4)増加量判定ステップS30
本ステップにおいて、電流値補正手段220は、余剰電解液の増加量LΔに基づいて電池デバイス100に対する充電電流の電流値を補正する。具体的には、ハイレート劣化が進行していると判断された(S30:YESの)二次電池110に対して、電流値が高い充電電流を供給し続けると、電極体20から更に多量の電解液30が流出する。この場合、電極体20内部の充放電領域の分布に大きな偏りが生じ、電解液30が流入しても電池性能が十分に回復しない恒久的な劣化となるおそれがある。このため、電流値補正手段220は、電池デバイス100に対する充電電流の電流値を低下させるような補正制御を行う。これによって、充電電流を停止させることなく、二次電池110のハイレート劣化の進行を防止できる。
【0049】
なお、本ステップにおける具体的な補正条件は、二次電池や外部機器の規格に応じて適宜設定することができ、ここに開示される技術を限定するものではない。例えば、電流値補正手段220には、「通常の電流値」と「ハイレート劣化時の電流値」の2種類の電流値が記憶されていてもよい。かかる構成の電流値補正手段220は、増加量判定ステップS30でNO(LΔ≦L)となった場合に「通常の電流値」を採用し、YES(LΔ>L)となった場合に「ハイレート劣化時の電流値」を採用する。これによって、充電効率の低下を抑制しつつ、ハイレート劣化の進行を防止できる。また、他の例として、電流値補正手段220には、余剰電解液の増加量LΔと電流値との関係が規定されたマトリクス状のデータベースが記憶されていてもよい。かかる構成の電流値補正手段220は、算出手段212から送信された余剰電解液の増加量LΔに基づいて、適切な電流値をデータベースの中から選択することができる。
【0050】
(5)SOC判定ステップS50
次に、本実施形態に係る電池モジュール1の制御装置200は、二次電池の現在のSOCと、予め定められた充電完了SOCとを比較するSOC判定ステップS50を実施する。そして、現在のSOCが充電完了SOC未満である(S50:NO)場合、制御装置200は、増加量測定ステップS20と増加量判定ステップS30と増加量判定ステップS30とを繰り返し実施する。これによって、ハイレート劣化の進行状況に応じて電流値を適宜補正しながら電池デバイス100の充電を継続できる。一方、現在のSOCが充電完了SOC以上となった(S50:YES)場合、制御装置200は、充電が完了したと判断して充電制御処理を終了する(END)。
【0051】
(6)まとめ
以上の通り、本実施形態に係る電池モジュール1の制御装置200は、充電中の余剰電解液の増加量LΔを測定する。この余剰電解液の増加量LΔは、充電中の電極の膨張によって流出した電解液30の量を示している。すなわち、余剰電解液の増加量LΔが多い二次電池110は、電解液30が多量に流出しており、ハイレート劣化が進行しているといえる。このことは、本発明者が実施した実験によっても裏付けられている。具体的には、図9に示すように、充電中の余剰電解液の増加量LΔ(%)が大きくなるにつれて、充電中の抵抗増加率が高くなることが確認されている。そして、本実施形態に係る電池モジュール1の制御装置200には、余剰電解液の増加量LΔに基づいた電流補正制御を実施する電流値補正手段220が設けられている。これによって、ハイレート劣化の程度に応じて電流値を補正しながら充電を継続ため、ハイレート劣化を抑制した上で、一定以上の充電効率を維持することができる。
【0052】
2.電池モジュールの他の構成
以上、本実施形態に係る電池モジュール1の主要な構成について説明した。なお、本実施形態に係る電池モジュール1は、上述した構成の他に、ここに開示される技術による効果を向上させる種々の構成を有している。以下、これらの構成について説明する。
【0053】
(1)角度検出手段
上述した通り、二次電池110のX線透過画像は、図7に示すような二次電池110が傾いた状態の画像であることが好ましい。これによって、高さ方向の下方に余剰電解液32が集められるため、余剰電解液32の液量が少ない場合でも正確な測定を実施できる。しかし、ここに開示される技術において、上述した電池デバイス100を傾ける装置は必須ではない。例えば、電池デバイス100が自動車に搭載されている場合、二次電池110が傾いた状態のX線透過画像を撮影するために、二次電池110の傾斜角度θを検出する角度検出手段215を利用することができる。例えば、電池モジュール1をハイブリッド車両に搭載した場合には、当該車両のECU(エンジンコントロールユニット)の角度検出手段を援用し、走行中の二次電池110の傾斜角度θを検出することができる。そして、角度検出手段215は、当該傾斜角度θを撮像指示手段211aに送信する。そして、撮像指示手段211aは、坂道や左右傾斜地を走行中に傾斜角度θが所定の撮影角度θを超えた際に、X線画像撮影装置300にX線透過画像の撮像を指示する。これによって、二次電池110が傾いたX線透過画像を容易に取得できる。なお、ここに開示される技術を限定するものではないが、X線透過画像の撮影に適した傾斜角度θは、30°~60°であるため、このような傾斜角度が確保できた際にX線透過画像を撮影することが好ましい。
【0054】
(2)基準設定手段
また、本実施形態における電池デバイス100は、複数の二次電池110を備えた組電池である。このような組電池を備えた電池モジュール1では、複数の二次電池110の中から測定対象(基準電池)を任意に選択し、当該基準電池の余剰電解液の増加量LΔに基づいて電池デバイス100全体の電流補正制御を行うことが好ましい。これによって、電流補正制御が必要以上に煩雑になることを防止できる。具体的には、図1に示すように、本実施形態における制御装置200は、複数の二次電池110の中から基準電池を設定する基準設定手段240を備えている。そして、この基準設定手段240は、複数の二次電池110の中から基準電池を任意に選択する選択手段241と、当該基準電池の余剰電解液の増加量LΔの測定を増加量測定手段210に指示する測定指示部242とを備えている。これによって、所望の二次電池110を基準電池とし、当該基準電池の余剰電解液の増加量LΔを測定することができる。なお、上述の通り、組電池100Aから孤立した撮像用電池が設けられている場合、選択手段241は、当該撮像用電池を基準電池として選択する。これによって、鮮明なX線透過画像を常に取得することができる。なお、基準電池の数は、特に限定されない。例えば、選択手段241が複数の基準電池を選択した場合、増加量測定手段210は、複数の余剰電解液の増加量LΔを取得し、その最大値を開始判定手段230に送信するとよい。これによって、最もハイレート劣化が進んだ二次電池110に基づいて電流補正制御が行われるため、ハイレート劣化の進行をより適切に抑制できる。
【0055】
<他の実施形態>
以上、ここに開示される電池モジュールの一実施形態について説明した。なお、ここに開示される電池モジュールは、上述の実施形態に限定されず、種々の事項を適宜変更できる。以下、上述の実施形態から変更可能な事項の一例について説明する。
【0056】
1.開始判定手段の有無
上述の実施形態に係る電池モジュールは、充電中の余剰電解液の増加量LΔと閾値Lとを比較し、電流補正制御の要否を判定する開始判定手段230を備えている。しかし、ここに開示される電池モジュールは、開始判定手段230を備えていなくてもよい。例えば、図10に示すフローチャートでは、図5中の増加量判定ステップS30に相当する処理を実施しておらず、余剰電解液の増加量LΔに基づいた電流補正制御を常に実行している。かかる構成を採用した場合でも、ハイレート劣化の程度に応じて電流値を補正しながら充電を継続できるため、ハイレート劣化の進行を適切に抑制した上で、一定以上の充電効率を維持することができる。但し、かかる構成の電池モジュールは、ハイレート劣化が殆ど生じていない状況でも電流補正制御を実施し、充電電流の電流値を低減する。これによる充電効率の低下を考慮すると、上述の実施形態のように、余剰電解液の増加量LΔが閾値Lを超えるまでは電流補正制御を実施しないように、制御ステップを構築した方が好ましい。
【0057】
2.余剰電解液の増加量LΔの測定手段
上述の実施形態では、X線透過画像の画像解析に基づいて余剰電解液の液量(第1液量L、第2液量L)を測定し、測定結果に基づいて余剰電解液の増加量LΔを算出している。しかし、余剰電解液の液量を測定する手段は、X線透過画像の画像解析に限定されない。ここに開示される技術は、電池ケース内の余剰電解液の液量を把握するために用いられる従来公知の手段を特に制限なく利用できる。例えば、余剰電解液の液量は、満充電時の電圧値や充放電中の電圧の変化量などを利用して測定することもできる。満充電時の電圧値を利用する手段は、特開2022-44621号公報に開示されている。また、充放電中の電圧の変化量を利用する手段は、特開2021-182474号公報に開示されている。また、特開2021-170436号公報には、二次電池の超音波像の画像解析に基づいて余剰電解液の液量を測定する手段が開示されている。このときの超音波像の画像解析は、上述したX線透過画像の画像解析と同様に、画像の輝度分析を利用した手法を採用し得る。ここに開示される電池モジュールの増加量測定手段は、上述した測定技術を利用して充電中の余剰電解液の増加量LΔを測定する増加量測定手段を包含する。但し、電圧値に基づいた余剰電解液の液量は、いわゆる推測値であるため、実際の余剰電解液の液量とは異なる可能性がある。従って、測定結果の精密性を考慮すると、余剰電解液の液量を直接測定可能な手段(X線透過画像や超音波像の画像解析など)を利用した方が好ましい。
【0058】
以上、ここに開示される技術の実施形態について説明した。しかし、上述の説明は例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、上述の説明にて例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0059】
すなわち、ここに開示される技術は、以下の[項目1]~[項目10]に記載の技術を包含する。
【0060】
[項目1]
電池ケース内に電極体と電解液が収容された二次電池を含む電池デバイスと、
前記電池デバイスの充放電を制御する制御装置と
を備えており、
前記制御装置は、
充電中の前記二次電池の余剰電解液の増加量LΔを測定する増加量測定手段と、
前記余剰電解液の増加量LΔに基づいて前記電池デバイスに対する充電電流の電流値を補正する電流補正制御を実施する電流値補正手段と
を含む、電池モジュール。
【0061】
[項目2]
前記制御装置は、前記余剰電解液の増加量LΔが所定の閾値Lを超えた場合に、前記電流補正制御の開始を前記電流値補正手段に指示する開始判定手段をさらに含む、項目1に記載の電池モジュール。
【0062】
[項目3]
前記増加量測定手段は、
所定の第1のSOCでの余剰電解液の液量である第1液量Lと、前記第1のSOCよりも高SOCである第2のSOCでの余剰電解液の液量である第2液量Lと、前記電池ケース内に存在する前記電解液の総量である総液量Lとを取得する液量取得手段と、
以下の式(1)に基づいて余剰電解液の増加量LΔを算出する算出手段と
を備えている、項目1又は2に記載の電池モジュール。
Δ=(L-L)/L (1)
【0063】
[項目4]
前記第1のSOCは、10%~20%の範囲内で設定されている、項目3に記載の電池モジュール。
【0064】
[項目5]
前記二次電池のX線透過画像を撮像するX線画像撮影装置をさらに備えており、
前記液量取得手段は、
前記X線画像撮影装置に前記X線透過画像の撮像を指示する撮像指示手段と、
前記X線透過画像の画像解析に基づいて前記余剰電解液の液量を測定する画像解析手段と
を備えている、項目3又は4に記載の電池モジュール。
【0065】
[項目6]
前記画像解析手段は、前記電極体と前記電池ケースとの間の領域に前記電池ケースの側面に沿った測定線を設定し、当該測定線上の輝度の変化を解析することによって、前記余剰電解液の液量を測定するように構成されている、項目5に記載の電池モジュール。
【0066】
[項目7]
前記増加量測定手段は、前記二次電池の傾斜角度θを検出する角度検出手段をさらに備えており、
前記撮像指示手段は、前記傾斜角度θが所定の撮影角度θを超えた際に、前記X線画像撮影装置に前記X線透過画像の撮像を指示する、項目5又は6に記載の電池モジュール。
【0067】
[項目8]
前記電池ケースは、アルミニウム、樹脂によって形成されている、項目5~7のいずれか一項に記載の電池モジュール。
【0068】
[項目9]
前記電池デバイスは、複数の前記二次電池を備えた組電池である、項目1~8のいずれか一項に記載の電池モジュール。
【0069】
[項目10]
前記制御装置は、
複数の前記二次電池の中から基準電池を任意に選択する選択手段と、
前記基準電池の前記余剰電解液の増加量LΔの測定を前記増加量測定手段に指示する測定指示部と
を備えている、項目9に記載の電池モジュール。
【符号の説明】
【0070】
1 電池モジュール
10 電池ケース
20 電極体
30 電解液
32 余剰電解液
40 電極端子
100 電池デバイス
100A 組電池
110 二次電池
190 通信部
200 制御装置
210 増加量測定手段
211 液量取得手段
211a 撮像指示手段
211b 画像解析手段
212 算出手段
215 角度検出手段
220 電流値補正手段
230 開始判定手段
240 基準設定手段
241 選択手段
242 測定指示部
250 通信部
300 液量取得デバイス(X線画像撮影装置)
310 通信部
400 充電デバイス
410 通信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10