(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092452
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】半導体装置。
(51)【国際特許分類】
G01K 7/01 20060101AFI20240701BHJP
H01L 21/822 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
G01K7/01 C
H01L27/04 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208381
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エイブリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】平岡 直洋
【テーマコード(参考)】
2F056
5F038
【Fターム(参考)】
2F056JT01
2F056JT08
5F038AV04
5F038AV06
5F038AZ07
5F038AZ08
5F038BH02
5F038BH06
5F038BH16
5F038CA08
(57)【要約】
【課題】温度センサ素子としてダイオードを使用する際、ダイオードにはサンプル毎のプロセスばらつきの一要因である寄生抵抗成分がある。ダイオードに付随する寄生抵抗成分の影響をなくした温度信号を作り出す半導体装置を提供する。
【解決手段】第1の電流を生成する第1電流生成回路と、第1の電流から第2の電流を生成する第2電流生成回路と、第2の電流から第3の電流を生成する第3電流生成回路と、第3の電流をダイオードに印加し、生じた電圧を第4の電流に変換する電圧電流変換回路と、第4の電流から第5の電流を生成する第4電流生成回路と、第5電流から温度信号を生成する演算回路と、を備える半導体装置とした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電流を生成する第1電流生成回路と、
前記第1の電流から第2の電流を生成する第2電流生成回路と、
前記第2の電流から第3の電流を生成する第3電流生成回路と、
前記第3の電流をダイオードに印加し、生じた電圧を第4の電流に変換する電圧電流変換回路と、
前記第4の電流から第5の電流を生成する第4電流生成回路と、
前記第5の電流から温度信号を生成する演算回路と、を備える半導体装置。
【請求項2】
前記第2電流生成回路と、前記第3電流生成回路と、前記第4電流生成回路は、入力された電流に対し、可変倍率の電流を生成する電流生成回路である請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2電流生成回路と、前記第3電流生成回路と、前記第4電流生成回路は、カレントミラー回路である請求項1もしくは請求項2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記ダイオードは、ダイオード接続したトランジスタである請求項1記載の半導体装置。
【請求項5】
前記温度信号は、デジタル信号である請求項1記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明はデジタル温度センサ及び、特に該センサの較正における改良した半導体装置に関する。デジタル温度センサは、例えばデスクトップコンピュータやサーバコンピュータ等で使用する際には、内蔵温度センサとして用いられることが多い(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の半導体装置において、デジタル温度センサの測定温度の精度向上は、デジタル温度センサを構成する部品のトリミング技術が必要だった。本発明の目的は、構成部品にトリミング技術を適用することなく測定温度の精度を向上した半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の半導体装置は、第1の電流を生成する第1電流生成回路と、前記第1の電流から第2の電流を生成する第2電流生成回路と、前記第2の電流から第3の電流を生成する第3電流生成回路と、前記第3の電流をダイオードに印加し、生じた電圧を第4の電流に変換する電圧電流変換回路と、前記第4の電流から第5の電流を生成する第4電流生成回路と、前記第5の電流から温度信号を生成する演算回路と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、測定温度の精度に影響を与える精度悪化要素を減少させて、トリミング技術を適用することなく高精度の温度を得ることができる半導体装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の第1の実施形態の半導体装置の一例を示すブロック図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態の第1の電流生成回路の一例を示す回路図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態の第2の電流生成回路の一例を示す回路図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態の第3の電流生成回路の一例を示す回路図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態の電圧電流変換回路の一例を示す回路図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態の第4の電流生成回路の一例を示す回路図である。
【
図7】本発明の第1の実施形態の積分回路の一例を示す回路図である。
【
図8】本発明の第1の実施形態の第2のコンデンサの構成の一例を示す回路図である。
【
図9】本発明の第2の実施形態の半導体装置の一例を示すブロック図である。
【
図10】本発明の原理を説明するための回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図10をもとに、本発明の測定温度精度を向上させる原理を説明する。
図10(a)に示すように、ダイオード接続されたトランジスタ91と定電流回路93は、VDD端子とGND端子との間に直列接続されている。ダイオード接続されたトランジスタ91は、トランジスタ91内部に直列に寄生抵抗92を有する。ダイオード接続されたトランジスタ91は、トランジスタ91の寄生抵抗92を含めて、定電流回路93より電流Iが印加されている。この時にトランジスタ91の寄生抵抗92を含んだベースエミッタ間に発生する電圧を電圧VBE(I)とする。同様に
図10(b)に示すように、ダイオード接続されたトランジスタ91は、トランジスタ91の寄生抵抗92を含めて、定電流回路93より電流pIが印加されている。この時に、トランジスタ91の寄生抵抗92を含んだベースエミッタ間に発生する電圧を電圧VBE(pI)とする。
【0009】
電圧VBE(pI)と電圧VBE(I)との差電圧△VBE1は、トランジスタ91の寄生抵抗92の抵抗値をRsとすると、次の式で示される。
△VBE1=VBE(pI)―VBE(I)
=kT/q0・ln(p)+(p-1)・I・Rs ・・(1)
ここで、kはプランク定数、Tは絶対温度、q0は電気素量を示す。
【0010】
図10(c)に示すように、ダイオード接続されたトランジスタ91は、トランジスタ91の寄生抵抗92を含めて、定電流回路93より電流qIが印加されている。この時にトランジスタ91の寄生抵抗92を含んだベースエミッタ間に発生する電圧を電圧VBE(qI)とする。同様に
図10(d)に示すように、ダイオード接続されたトランジスタ91は、トランジスタ91の寄生抵抗92を含めて、定電流回路93より電流pqIが印加されている。この時に、トランジスタ91の寄生抵抗92を含んだベースエミッタ間に発生する電圧を電圧VBE(pqI)とする。
【0011】
電圧VBE(pqI)と電圧VBE(qI)との差電圧△VBE2は、トランジスタ91の寄生抵抗92の抵抗値をRsとすると、次の式で示される。
△VBE2=VBE(pqI)―VBE(qI)
=kT/q0・ln(p)+(p-1)・q・I・Rs ・・(2)
【0012】
したがって、寄生抵抗92の抵抗値Rsの項を消去した電圧△VBEは、電圧△VBE1をq倍して電圧△VBE2を差し引くことで得ることができる。
△VBE=q・△VBE1―△VBE2=kT/q0・(q-1)・ln(p) ・・(3)
【0013】
寄生抵抗92を有するトランジスタ91に、電流I、電流pI、電流qI、電流pqIを印加し、寄生抵抗92を含めたベースエミッタ間電圧VBEを測定することで、寄生抵抗92の抵抗値Rsを含まない電圧△VBEを得ることができる。電圧△VBEは、絶対温度Tに比例する電圧である。電圧△VBEを得ることで、抵抗値Rsの影響を受けない絶対温度Tが得られる。
【0014】
[第1の実施形態]
以下、図面を参照して、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態にかかる半導体装置の一例を示すブロック図である。
【0015】
本実施形態にかかる半導体装置は、第1電流生成回路21と、第2電流生成回路22と、第3電流生成回路23と、トランジスタ11と、第1のコンデンサ13と、スイッチ制御回路29と、第1スイッチ31と、第2スイッチ32と、第3スイッチ33と、演算回路28と、出力端子15と、を備える。トランジスタ11は、ベース端子とコレクタ端子が接地端子GND端子に接続され、ダイオード接続されている。ダイオード接続されたトランジスタ11は、ダイオードとして動作する。抵抗12は、ダイオード接続されたトランジスタ11の寄生抵抗12を示している。演算回路28は、電圧電流変換回路24と、第4電流生成回路25と、抵抗14と、積分回路26と、ADコンバータ回路27と、第4スイッチ34と、第5スイッチ35と、を備える。
【0016】
本実施形態にかかる半導体装置の接続を説明する。第1電流生成回路の出力端子212は、第1スイッチ31を介して、第2電流生成回路22の入力端子221に接続される。第2電流生成回路22の出力端子222は、第2スイッチ32を介して、第3電流生成回路23の入力端子231に接続される。第3電流生成回路23の出力端子232は、トランジスタ11のエミッタ端子に接続され、第3スイッチ33を介して、第1のコンデンサ13の第1端子と電圧電流変換回路24の入力端子241に接続される。電圧電流変換回路24の出力端子242は、第4スイッチ34を介して、第4電流生成回路25の入力端子251に接続される。第4電流生成回路25の出力端子252は、第5スイッチ35を介して、抵抗14の第1端子と積分回路26の入力端子261に接続される。積分回路26の出力端子262は、ADコンバータ回路27の入力端子271に接続される。ADコンバータ回路27の出力端子272は、出力端子15に接続される。トランジスタ11のベース端子とコレクタ端子と、第1のコンデンサ13の第2端子と、抵抗14の第2端子とは、GND端子に接続される。スイッチ制御回路29は、各スイッチの制御端子に接続される。
【0017】
図2は、本実施形態の第1電流生成回路21の一例を示す回路図である。第1電流生成回路21は、出力端子212と、第1のPチャネル型MOSトランジスタ(以下、PMOSトランジスタと記す)213と、定電流源214と、を有する。第1のPMOSトランジスタ213のソース端子は、VDD端子に接続される。第1のPMOSトランジスタ213のドレイン端子とゲート端子は、互いに接続されて、出力端子212と、定電流源214を介してGND端子に接続される。
【0018】
図3は、本実施形態の第2電流生成回路22の一例を示す回路図である。第2電流生成回路22は、入力端子221と、出力端子222と、第1のPMOSトランジスタアレイ223と、スイッチ36と、を有する。第1のPMOSトランジスタアレイ223は、PMOSトランジスタ223aからPMOSトランジスタ223nのn個のPMOSトランジスタを有する。スイッチ36は、n個の入力端子361aから361nと、出力端子362と、を有する。第1のPMOSトランジスタアレイ223のPMOSトランジスタ223aからPMOSトランジスタ223nのゲート端子は、入力端子221に接続される。PMOSトランジスタ223aからPMOSトランジスタ223nのソース端子は、VDD端子に接続される。PMOSトランジスタ223aからPMOSトランジスタ223nのドレイン端子は、それぞれ対応するスイッチ36の入力端子361aから入力端子361nに接続される。スイッチ36の出力端子362は、出力端子222に接続される。第1のPMOSトランジスタアレイ223と第1電流生成回路21の第1のPMOSトランジスタ213は、カレントミラー回路41を構成する。
【0019】
図4は、本実施形態の第3電流生成回路23の一例を示す回路図である。第3電流生成回路23は、入力端子231と、出力端子232と、第1のNチャネル型MOSトランジスタ(以下、NMOSトランジスタと記す)233と、第2のNMOSトランジスタ234と、第2のPMOSトランジスタ235と、第2のPMOSトランジスタアレイ236と、スイッチ37と、を有する。第2のPMOSトランジスタアレイ236は、PMOSトランジスタ236aからPMOSトランジスタ236mのm個のPMOSトランジスタを有する。スイッチ37は、m個の入力端子371aから371mと、出力端子372と、を有する。
【0020】
入力端子231は、第1のNMOSトランジスタ233のドレイン端子とゲート端子と第2のNMOSトランジスタ234のゲート端子に接続される。第1のNMOSトランジスタ233のソース端子と第2のNMOSトランジスタ234のソース端子は、GND端子に接続される。第2のPMOSトランジスタ235のソース端子は、VDD端子に接続される。第2のPMOSトランジスタアレイ236のPMOSトランジスタ236aからPMOSトランジスタ236mのゲート端子は、第2のPMOSトランジスタ235のゲート端子とドレイン端子と第2のNMOSトランジスタ234のドレイン端子と、に接続される。PMOSトランジスタ236aからPMOSトランジスタ236mのソース端子は、VDD端子に接続される。PMOSトランジスタ236aからPMOSトランジスタ236mのドレイン端子は、それぞれ対応するスイッチ37の入力端子371aから入力端子371mに接続される。スイッチ37の出力端子372は、出力端子232に接続される。第1のNMOSトランジスタ233と第2のNMOSトランジスタ234は、カレントミラー回路42を構成する。第2のPMOSトランジスタ235と第2のPMOSトランジスタアレイ236は、カレントミラー回路43を構成する。
【0021】
図5は、本実施形態の電圧電流変換回路24の一例を示す回路図である。電圧電流変換回路24は、入力端子241と、出力端子242と、オペアンプ243と、第3のPMOSトランジスタ244と、抵抗245と、を有する。入力端子241は、オペアンプ243の非反転入力端子に接続される。オペアンプ243の出力端子は、第3のPMOSトランジスタ244のゲート端子と出力端子242に接続される。第3のPMOSトランジスタ244のソース端子は、VDD端子に接続される。第3のPMOSトランジスタ244のドレイン端子は、オペアンプ243の反転入力端子と抵抗245の第1端子に接続される。抵抗245の第2端子は、GND端子に接続される。抵抗245の抵抗値は、抵抗14の抵抗値と同じ抵抗値に設定される。
【0022】
図6は、本実施形態の第4電流生成回路25の一例を示す回路図である。第4電流生成回路25は、入力端子251と、出力端子252と、第3のPMOSトランジスタアレイ253と、スイッチ38と、を有する。第3のPMOSトランジスタアレイ253は、PMOSトランジスタ253aからPMOSトランジスタ253oのo個のPMOSトランジスタを有する。スイッチ38は、複数の入力端子381aから381oと、出力端子382と、を有する。第3のPMOSトランジスタアレイ253のPMOSトランジスタ253aからPMOSトランジスタ253oのゲート端子は、入力端子251に接続される。PMOSトランジスタ253aからPMOSトランジスタ253oのソース端子は、VDD端子に接続される。PMOSトランジスタ253aからPMOSトランジスタ253oのドレイン端子は、それぞれ対応するスイッチ38の入力端子381aから入力端子381oに接続される。スイッチ38の出力端子382は、出力端子252に接続される。第3のPMOSトランジスタ244と第3のPMOSトランジスタアレイ253は、カレントミラー回路44を構成する。
【0023】
図7は、本実施形態の積分回路26の一例を示す回路図である。積分回路26は、入力端子261と、出力端子262と、第2のオペアンプ263と、第2のコンデンサ264と、第3のコンデンサ265と、スイッチ266からスイッチ269と、を有する。入力端子261は、スイッチ266の第1端子に接続される。スイッチ266の第2端子は、第2のコンデンサ264の第1端子と、スイッチ267の第1端子に接続される。第2のコンデンサ264の第2端子は、第2のオペアンプ263の反転入力端子と、スイッチ268の第1端子と、スイッチ269の第1端子と、に接続される。スイッチ268の第2端子は、第3のコンデンサ265の第1端子に接続される。第2のオペアンプ263の出力端子は、第3のコンデンサ265の第2端子と、スイッチ269の第2端子と、出力端子262と、に接続される。スイッチ267の第2端子と、第2のオペアンプ263の非反転入力端子は、GND端子に接続される。
【0024】
ここで第2のコンデンサ264は、
図8に示すように、第1端子264aと第2端子264bとの間にスイッチを介して接続する構成としても良い。具体的には、第1端子264aは、スイッチ264cの第1端子とスイッチ264dの第1端子に接続する。スイッチ264cの第2端子は、第2のコンデンサ264の第1端子とスイッチ264eの第1端子に接続される。スイッチ264dの第2端子は、第2のコンデンサ264の第2端子とスイッチ264fの第1端子に接続される。スイッチ264eの第2端子とスイッチ264fの第2端子は、第2端子264bに接続される。このように構成することで、第2のコンデンサ264は、スイッチを切り替えることで、電荷を加算することと減算することを切り替えられる。第3のコンデンサ265についても、同様の構成とすることができる。
【0025】
ADコンバータ回路27は、入力端子271から入力された積分回路26の出力信号をアナログデジタル変換し、温度についての信号をデジタル信号として出力端子15より出力する。ADコンバータ回路は、一般的な回路であるので説明は省略する。
【0026】
本実施形態の半導体装置の動作について説明する。本実施形態の半導体装置は、
図10で示した4種類の電流をトランジスタ11に通電し、それぞれの電流が通電された時の電圧VBEより、高精度の温度信号をデジタル信号として得る。
【0027】
<第1段階の動作>
第1段階の動作の概略を説明する。第1段階において、ダイオード接続されたトランジスタ11に電流Iが通電される。トランジスタ11のベースエミッタ間電圧VBE(I)は、サンプリング容量である第1のコンデンサ13に保持される。
【0028】
第1段階の具体的な動作を説明する。スイッチ制御回路29からの制御信号によって、スイッチ31からスイッチ33とスイッチ269は、オン状態とし、スイッチ34とスイッチ35とスイッチ266からスイッチ268は、オフ状態とされる。第1電流生成回路21の定電流源214は、電流Iを生成する。スイッチ31がオンなので、第1のPMOSトランジスタ213と第1のPMOSトランジスタアレイ223は、カレントミラー回路41を形成する。スイッチ36は、カレントミラー回路41のカレントミラー比が1:1となるように、スイッチ制御回路29からの制御信号によって制御される。第2電流生成回路22の出力端子222は、電流Iを第3電流生成回路23へ出力する。
【0029】
第3電流生成回路23のカレントミラー回路42は、カレントミラー比が1:1で設定され、電流Iをカレントミラー回路43へ出力する。第3電流生成回路23のスイッチ37は、カレントミラー回路43カレントミラー比が1:1となるように、スイッチ制御回路29からの制御信号によって制御される。第3電流生成回路23の出力端子232は、電流Iをダイオード接続されたトランジスタ11へ出力する。電流Iが印加された時のトランジスタ11のベースエミッタ間電圧VBE(I)は、スイッチ33を介して、サンプリング容量である第1のコンデンサ13に保持される。
【0030】
<第2段階の動作>
第2段階の動作の概略を説明する。第2段階おいて、サンプリング容量である第1のコンデンサ13に保持されたベースエミッタ間電圧VBE(I)は、演算回路28に入力される。演算回路28の電圧電流変換回路24で電流値に変換され、第4電流生成回路25で電流値がq倍され、抵抗14に加えられる。抵抗14の両端に発生した電圧は、積分回路26に入力され、第2のコンデンサ264に保持される。
【0031】
第2段階の具体的な動作を説明する。スイッチ制御回路29からの制御信号によって、スイッチ31からスイッチ33とスイッチ267とスイッチ268は、オフ状態とし、スイッチ34とスイッチ35とスイッチ266とスイッチ269は、オン状態とされる。第1のコンデンサ13に保持された電圧VBE(I)は、電圧電流変換回路24の入力端子241を介して、オペアンプ243の非反転入力端子に入力される。オペアンプ243の出力端子に接続された第3のPMOSトランジスタ244のドレイン端子は、オペアンプ243の反転入力端子に接続される。抵抗245の第1端子は、第3のPMOSトランジスタ244のドレイン端子から、電圧VBE(I)が印加される。抵抗245は、電圧VBE(I)と抵抗245の抵抗値で決まる電流Iaが流れる。抵抗245の両端に、電圧VBE(Ia)が発生する。第4電流生成回路25のスイッチ38は、スイッチ制御回路29からの制御信号によって、カレントミラー回路44が1:qのカレントミラー比で動作する様に制御される。抵抗14の抵抗値は、抵抗245の抵抗値と同じ抵抗値に設定されている。抵抗14は、q倍された電流Iaが流れる。抵抗14の両端には、電圧VBE(Ia)のq倍の電圧が発生する。
【0032】
抵抗14の両端の電圧であるq倍の電圧VBE(Ia)は、積分回路26の入力端子261に印加される。入力されたq倍の電圧VBE(Ia)は、スイッチ266とスイッチ269がオン状態であるので、第2のコンデンサ264に保持される。
【0033】
<第3段階の動作>
第3段階の動作の概略を説明する。第3段階において、ダイオード接続されたトランジスタ11にp倍の電流Iが通電される。トランジスタ11のベースエミッタ間電圧VBE(pI)は、サンプリング容量である第1のコンデンサ13に保持される。
【0034】
第3段階の具体的な動作を説明する。スイッチ制御回路29からの制御信号によって、スイッチ31からスイッチ33とスイッチ269は、オン状態とし、スイッチ34とスイッチ35とスイッチ266からスイッチ268は、オフ状態とされる。第1電流生成回路21の定電流源214は、電流Iを生成する。スイッチ31がオンなので、第1のPMOSトランジスタ213と第1のPMOSトランジスタアレイ223は、カレントミラー回路41を形成する。スイッチ36は、カレントミラー回路41のカレントミラー比が1:1となるように、スイッチ制御回路29からの制御信号によって制御される。第2電流生成回路22の出力端子222は、電流Iを第3電流生成回路23へ出力する。
【0035】
第3電流生成回路23のカレントミラー回路42は、カレントミラー比が1:1で設定され、電流Iをカレントミラー回路43へ出力する。第3電流生成回路23のスイッチ37は、カレントミラー回路43カレントミラー比が1:pとなるように、スイッチ制御回路29からの制御信号によって制御される。第3電流生成回路23の出力端子232は、p倍の電流Iをダイオード接続されたトランジスタ11へ出力する。p倍の電流Iが印加された時のトランジスタ11のベースエミッタ間電圧VBE(pI)は、スイッチ33を介して、サンプリング容量である第1のコンデンサ13に保持される。
【0036】
<第4段階の動作>
第4段階の動作の概略を説明する。第4段階において、サンプリング容量である第1のコンデンサ13に保持されたベースエミッタ間電圧VBE(pI)は、演算回路28に入力される。演算回路28の電圧電流変換回路24で電流値に変換され、第4電流生成回路25で電流値がq倍され、抵抗14に加えられる。抵抗14の両端に発生した電圧は、積分回路26に入力され、第2のコンデンサ264に保持された電圧と加減算されて、第3のコンデンサ265に保持される。
【0037】
第4段階の具体的な動作を説明する。スイッチ制御回路29からの制御信号によって、スイッチ31からスイッチ33とスイッチ267とスイッチ269は、オフ状態とし、スイッチ34とスイッチ35とスイッチ266とスイッチ268は、オン状態とされる。第1のコンデンサ13に保持された電圧VBE(pI)は、電圧電流変換回路24の入力端子241を介して、オペアンプ243の非反転入力端子に入力される。オペアンプ243の出力端子に接続された第3のPMOSトランジスタ244のドレイン端子は、オペアンプ243の反転入力端子に接続される。抵抗245の第1端子は、第3のPMOSトランジスタ244のドレイン端子から、電圧VBE(pI)が印加される。抵抗245は、電圧VBE(pI)と抵抗245の抵抗値で決まる電流pIaが流れる。抵抗245の両端に、電圧VBE(pIa)が発生する。第4電流生成回路25のスイッチ38は、スイッチ制御回路29からの制御信号によって、カレントミラー回路44が1:qのカレントミラー比で動作する様に制御される。抵抗14の抵抗値は、抵抗245の抵抗値と同じ抵抗値に設定されている。抵抗14は、q倍された電流pIaが流れる。抵抗14の両端には、電圧VBE(pIa)のq倍の電圧が発生する。
【0038】
抵抗14の両端の電圧であるq倍の電圧VBE(pIa)は、積分回路26の入力端子261に印加される。入力されたq倍の電圧VBE(pIa)は、スイッチ266とスイッチ268がオン状態であるので、第2のコンデンサ264に保持されたq倍の電圧VBE(Ia)が差し引かれて、第3のコンデンサ265に保持される。ここで第3のコンデンサ265に保持される電圧は、式(1)で示す電圧△VBE1をq倍した電圧q・△VBE1に相当する。
【0039】
<第5段階の動作>
第5段階の動作の概略を説明する。第5段階において、ダイオード接続されたトランジスタ11にpq倍の電流Iが通電される。トランジスタ11のベースエミッタ間電圧VBE(pqI)は、サンプリング容量である第1のコンデンサ13に保持される。
【0040】
第5段階の具体的な動作を説明する。スイッチ制御回路29からの制御信号によって、スイッチ31からスイッチ33とスイッチ269は、オン状態とし、スイッチ34とスイッチ35とスイッチ266からスイッチ268は、オフ状態とされる。第1電流生成回路21の定電流源214は、電流Iを生成する。スイッチ31がオンなので、第1のPMOSトランジスタ213と第1のPMOSトランジスタアレイ223は、カレントミラー回路41を形成する。スイッチ36は、カレントミラー回路41のカレントミラー比が1:qとなるように、スイッチ制御回路29からの制御信号によって制御される。第2電流生成回路22の出力端子222は、q倍の電流Iを第3電流生成回路23へ出力する。
【0041】
第3電流生成回路23のカレントミラー回路42は、カレントミラー比が1:1で設定され、q倍の電流Iをカレントミラー回路43へ出力する。第3電流生成回路23のスイッチ37は、カレントミラー回路43カレントミラー比が1:pとなるように、スイッチ制御回路29からの制御信号によって制御される。第3電流生成回路23の出力端子232は、pq倍の電流Iをダイオード接続されたトランジスタ11へ出力する。pq倍の電流Iが印加された時のトランジスタ11のベースエミッタ間電圧VBE(pqI)は、スイッチ33を介して、サンプリング容量である第1のコンデンサ13に保持される。
【0042】
<第6段階の動作>
第6段階の動作の概略を説明する。第6段階おいて、サンプリング容量である第1のコンデンサ13に保持されたベースエミッタ間電圧VBE(pqI)は、演算回路28に入力される。演算回路28の電圧電流変換回路24で電流値に変換され、第4電流生成回路25で電流値が1倍され、抵抗14に加えられる。抵抗14の両端に発生した電圧は、積分回路26に入力され、第2のコンデンサ264に保持される。
【0043】
第6段階の具体的な動作を説明する。スイッチ制御回路29からの制御信号によって、スイッチ31からスイッチ33とスイッチ267とスイッチ268は、オフ状態とし、スイッチ34とスイッチ35とスイッチ266とスイッチ269は、オン状態とされる。第1のコンデンサ13に保持された電圧VBE(pqI)は、電圧電流変換回路24の入力端子241を介して、オペアンプ243の非反転入力端子に入力される。オペアンプ243の出力端子に接続された第3のPMOSトランジスタ244のドレイン端子は、オペアンプ243の反転入力端子に接続される。抵抗245の第1端子は、第3のPMOSトランジスタ244のドレイン端子から、電圧VBE(pqI)が印加される。抵抗245は、電圧VBE(pqI)と抵抗245の抵抗値で決まる電流pqIaが流れる。抵抗245の両端に、電圧VBE(pqIa)が発生する。第4電流生成回路25のスイッチ38は、スイッチ制御回路29からの制御信号によって、カレントミラー回路44が1:1のカレントミラー比で動作する様に制御される。抵抗14の抵抗値は、抵抗245の抵抗値と同じ抵抗値に設定されている。抵抗14は、電流pqIaが流れる。抵抗14の両端には、電圧(pqIa)が発生する。
【0044】
抵抗14の両端の電圧である電圧VBE(pqIa)は、積分回路26の入力端子261に印加される。入力された電圧VBE(pqIa)は、スイッチ266とスイッチ269がオン状態であるので、第2のコンデンサ264に保持される。
【0045】
<第7段階の動作>
第7段階の動作の概略を説明する。第7段階において、ダイオード接続されたトランジスタ11にq倍の電流Iが通電される。トランジスタ11のベースエミッタ間電圧VBE(qI)は、サンプリング容量である第1のコンデンサ13に保持される。
【0046】
第7段階の具体的な動作を説明する。スイッチ制御回路29からの制御信号によって、スイッチ31からスイッチ34は、オン状態とし、スイッチ34とスイッチ35は、オフ状態とされる。第1電流生成回路21の定電流源214は、電流Iを生成する。スイッチ31がオンなので、第1のPMOSトランジスタ213と第1のPMOSトランジスタアレイ223は、カレントミラー回路41を形成する。スイッチ36は、カレントミラー回路41のカレントミラー比が1:qとなるように、スイッチ制御回路29からの制御信号によって制御される。第2電流生成回路22の出力端子222は、q倍の電流Iを第3電流生成回路23へ出力する。
【0047】
第3電流生成回路23のカレントミラー回路42は、カレントミラー比が1:1で設定され、q倍の電流Iをカレントミラー回路43へ出力する。第3電流生成回路23のスイッチ37は、カレントミラー回路43カレントミラー比が1:1となるように、スイッチ制御回路29からの制御信号によって制御される。第3電流生成回路23の出力端子232は、q倍の電流Iをダイオード接続されたトランジスタ11へ出力する。q倍の電流Iが印加された時のトランジスタ11のベースエミッタ間電圧VBE(qI)は、スイッチ33を介して、サンプリング容量である第1のコンデンサ13に保持される。
【0048】
<第8段階の動作>
第8段階の動作の概略を説明する。第8段階おいて、サンプリング容量である第1のコンデンサ13に保持されたベースエミッタ間電圧VBE(qI)は、演算回路28に入力される。演算回路28の電圧電流変換回路24で電流値に変換され、第4電流生成回路25で電流値が1倍され、抵抗14に加えられる。抵抗14の両端に発生した電圧は、積分回路26に入力され、第2のコンデンサ264に保持された電圧と加減算され、既に第3のコンデンサ265に第4段階で保持された電圧と加減算されて、第3のコンデンサ265に保持される。
【0049】
第8段階の具体的な動作を説明する。スイッチ制御回路29からの制御信号によって、スイッチ31からスイッチ33とスイッチ267とスイッチ269は、オフ状態とし、スイッチ34とスイッチ35とスイッチ266とスイッチ268は、オン状態とされる。第1のコンデンサ13に保持された電圧VBE(qI)は、電圧電流変換回路24の入力端子241を介して、オペアンプ243の非反転入力端子に入力される。オペアンプ243の出力端子に接続された第3のPMOSトランジスタ244のドレイン端子は、オペアンプ243の反転入力端子に接続される。抵抗245の第1端子は、第3のPMOSトランジスタ244のドレイン端子から、電圧VBE(qI)が印加される。抵抗245は、電圧VBE(qI)と抵抗245の抵抗値で決まる電流qIaが流れる。抵抗245の両端に、電圧VBE(qIa)が発生する。第4電流生成回路25のスイッチ38は、スイッチ制御回路29からの制御信号によって、カレントミラー回路44が1:1のカレントミラー比で動作する様に制御される。抵抗14の抵抗値は、抵抗245の抵抗値と同じ抵抗値に設定されている。抵抗14は、電流qIaが流れる。抵抗14の両端には、電圧VBE(qIa)の電圧が発生する。
【0050】
抵抗14の両端の電圧である電圧VBE(qIa)は、積分回路26の入力端子261に印加される。入力された電圧VBE(qIa)は、スイッチ266とスイッチ268がオン状態であるので、第2のコンデンサ264に保持された電圧VBE(qpIa)が差し引かれて、第3のコンデンサ265に印加される。ここで第2のコンデンサ264から第3のコンデンサ265に印加される電圧は、式(2)で示す電圧△VBE2に相当する。
【0051】
第3のコンデンサ265は、第4段階で電圧q・△VBE1に相当する電圧が保持されている。電圧△VBE2を差し引くことで、第3のコンデンサ265に保持される電圧は、式(3)で示す電圧△VBEに相当する。電圧△VBEは、式(3)に示すように、絶対温度Tに比例し、寄生抵抗12の影響が除去されている。電圧△VBEは、積分回路26の出力端子262からADコンバータ回路27の入力端子271へ入力される。ADコンバータ回路27は、入力された電圧VBEから寄生抵抗12の影響が除去された温度についてのデジタル信号が出力端子272を介して出力端子15から出力する。
【0052】
第8段階の動作の終了後、本実施形態の半導体装置は、第1段階からの動作を繰り返す。第1から第3のコンデンサは、適時に初期化される。第1段階から第8段階までの動作は、スイッチ制御回路29からのスイッチ制御信号によって行われる。
【0053】
本実施形態の半導体装置は、トリミング技術を使用することなく、ダイオード接続されたトランジスタ11のベースエミッタ間電圧から、寄生抵抗12の影響が除去され、導出される測定温度精度が向上した温度についてのデジタル信号を出力端子15から出力する。
【0054】
本実施形態は、電流生成回路としてカレントミラー回路を使用しているが、基準電流に対して可変倍率の電流を出力する回路であれば、例えばオペアンプ等を用いた回路でもよい。温度を検知するダイオードとして、ダイオード接続されたトランジスタを使用しているが、PN接続の電圧を利用しているので、ダイオードなどPN接続のある半導体であればよい。
【0055】
[第2の実施形態]
以下、図面を参照して、本発明の第2の実施形態について説明する。
図9は、本実施形態にかかる半導体装置の一例を示すブロック図である。
【0056】
本実施形態にかかる半導体装置は、第1電流生成回路21と、第3電流生成回路23と、スイッチ制御回路29と、トランジスタ11と、第1のコンデンサ13と、第1スイッチ31と、第2スイッチ32と、第3スイッチ33と、演算回路28aと、スイッチ制御回路29と、出力端子15と、を備える。演算回路28aは、電圧電流変換回路24と、第2電流生成回路22と、抵抗14と、積分回路26と、ADコンバータ回路27と、第4スイッチ34と、第5スイッチ35と、を備える。抵抗12は、ダイオード接続されたトランジスタ11の寄生抵抗12を示している。本実施形態と第1の実施形態との違いは、第1の実施形態の第2電流生成回路22と第4電流生成回路が同一の回路で構成されている点である。その他の構成は、第1の実施形態と同じである。
【0057】
スイッチ31とスイッチ34は、第1段階から第8段階で相補的なオンオフ動作をしている。同様に、スイッチ32とスイッチ35は、第1段階から第8段階で相補的なオンオフ動作をしている。第1の実施形態の第2電流生成回路22と第4電流生成回路は、同一の回路の構成が可能となる。第1の実施形態の第2電流生成回路22と第4電流生成回路を同一の回路で構成することにより、本実施形態の半導体装置は、第2電流生成回路と第4電流生成回路との間の回路ばらつきによる誤差を低減することができる。
【0058】
以上、説明したように、本発明の半導体装置は、トリミング技術を使用することなく高精度な温度信号をデジタル信号として得ることができる。各実施形態の演算回路は、ADコンバータ回路を有する構成として説明したが、アナログ信号を出力する演算回路の構成としてもよい。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
11 トランジスタ
12 寄生抵抗
13 第1のコンデンサ
15 出力端子
21、22、23、25 電流生成回路
24 電圧電流変換回路
26 積分回路
27 ADコンバータ回路
28 演算回路
29 スイッチ制御回路
41、42、43、44、 カレントミラ―回路