(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092465
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】配車管理装置及び配車管理方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/40 20240101AFI20240701BHJP
G08G 1/127 20060101ALI20240701BHJP
G06Q 10/083 20240101ALI20240701BHJP
【FI】
G06Q50/30
G08G1/127
G06Q10/083
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208401
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100114177
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 政康
【テーマコード(参考)】
5H181
5L010
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5H181AA15
5H181BB04
5H181BB05
5H181EE07
5H181FF10
5H181FF13
5H181LL09
5H181MA28
5L010AA16
5L049AA16
5L049CC42
5L050CC42
(57)【要約】
【課題】 サービス事業者とユーザとの間の利害のバランスを考慮して配車サービスを行う。
【解決手段】 本発明は、配車要求に基づく各候補車両に対する配車計画を作成し、該各候補車両のうちの特定の前記車両に対する前記配車計画を確定する配車計画作成部と、前記配車計画に基づく配車指示を前記特定の車両に送信する配車指示部とを備える配車管理装置である。前記配車計画作成部は、前記車両の運送スペースごとの車内環境情報と運送対象ごとの適正環境条件とに基づいて、前記候補車両を第1の候補車両と第2の候補車両とに選別する候補車両選別部と、前記候補車両に対する利用対価を決定する利用対価決定部とを備える。前記利用対価決定部は、前記第1の候補車両に対する前記利用対価と前記第2の候補車両に対する前記利用対価とが異なるように、前記利用対価を各々決定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配車要求に応じて車両の配車を管理する配車管理装置であって、
運送対象が示された配車要求を該ユーザの端末装置から取得する配車要求取得部と、
取得された前記配車要求に基づいて複数の車両の中から抽出される各候補車両に対する配車計画を作成し、作成された前記候補車両の中から選択される特定の前記車両に対する前記配車計画を確定する配車計画作成部と、
確定された前記配車計画を前記特定の車両に送信する配車指示部と、を備え、
前記配車計画作成部は、
前記運送対象ごとの適正環境条件を定義した適正環境条件テーブルと、
前記車両の運送スペースごとの車内環境情報を取得する車内環境情報取得部と、
前記車内環境情報と前記適正環境条件とに基づいて、前記候補車両を選別する候補車両選別部と、
前記候補車両に対する利用対価を決定する利用対価決定部と、を備え、
前記候補車両選別部は、
前記適正環境条件を満たす前記車内環境情報を示す前記運送スペースに空きがある前記車両を第1の候補車両として抽出し、
前記適正環境条件を満たさない前記車内環境情報を示す前記運送スペースに空きがある前記車両を第2の候補車両として抽出し、
前記利用対価決定部は、
前記第1の候補車両に対する前記利用対価と前記第2の候補車両に対する前記利用対価とが異なるように、前記利用対価を各々決定する、
配車管理装置。
【請求項2】
作成された前記各候補車両の該配車計画の選択要求を前記ユーザの前記端末装置に送信し、前記選択要求に応答して該端末装置から送信される前記選択通知を受信する選択処理部を更に備え、
前記選択処理部は、前記利用対価を含む前記選択要求に基づいて、前記候補車両ごとの前記利用対価が前記ユーザの前記端末装置上に表示されるように制御する、
請求項1に記載の配車管理装置。
【請求項3】
前記配車計画作成部は、前記候補車両ごとの前記配車要求が示す出発地への到着予想時刻を算出する配車予定時刻算出部を更に、備える、
請求項1に記載の配車管理装置。
【請求項4】
前記利用対価決定部は、前記配車要求の受付時刻と前記到着予想時刻とに基づく前記ユーザの配車待ち時間に応じて、前記第2の候補車両に対する前記利用対価を決定する、
請求項3に記載の配車管理装置。
【請求項5】
前記利用対価決定部は、前記ユーザの配車待ち時間が第1のしきい値以下の場合に、前記第2の候補車両に対する前記利用対価を前記第1の候補車両に対する前記利用対価よりも高い第1の利用対価に決定する、
請求項4に記載の配車管理装置。
【請求項6】
前記前記利用対価決定部は、前記ユーザの配車待ち時間が第2のしきい値を上回る場合に、前記第2の候補車両に対する前記利用対価を、前記第1の候補車両に対する前記利用対価よりも高く、かつ、前記第1の利用対価よりも低い第2の利用対価に決定する、
請求項5に記載の配車管理装置。
【請求項7】
前記利用対価決定部は、前記適正環境条件と前記車内環境情報との間の乖離度に応じたエネルギー消費量に基づいて、前記第2の候補車両に対する前記利用対価を決定する、
請求項1に記載の配車管理装置。
【請求項8】
配車要求に応じて車両の配車を管理する配車管理装置による配車管理方法であって、
運送対象が示された配車要求を該ユーザの端末装置から取得することと、
取得された前記配車要求に基づいて複数の車両の中から抽出される各候補車両に対する配車計画を作成することと、
作成された前記候補車両の中から選択される特定の前記車両に対する前記配車計画を確定することと、
確定された前記配車計画を該車両に送信することと、を含み、
前記配車計画を作成することは、
前記運送対象ごとの適正環境条件を定義した適正環境条件テーブルを保持することと、
前記車両の運送スペースごとの車内環境情報を取得することと、
前記車内環境情報と前記適正環境条件とに基づいて、前記候補車両を選別することと、
前記候補車両に対する利用対価を決定することと、を含み、
前記候補車両を選別することは、
前記適正環境条件を満たす前記車内環境情報を示す前記運送スペースに空きがある前記車両を第1の候補車両として抽出することと、
前記適正環境条件を満たさない前記車内環境情報を示す前記運送スペースに空きがある前記車両を第2の候補車両として抽出することと、を含み、
前記利用対価を決定することは、前記第1の候補車両に対する前記利用対価と前記第2の候補車両に対する前記利用対価とが異なるように、前記利用対価を各々決定することを含む、
配車管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配車管理技術に関し、特に、乗客と貨物(荷物)とを混載可能な車両のオンデマンド方式による配車を管理する配車管理装置及び配車管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モビリティサービスは、車両による乗客及び/又は荷物の輸送をスムーズに提供するサービスである。モビリティサービスでは、車両の稼働率を高めつつ、ユーザの利便性を向上させるために、車両の効率的な利用が要求される。とりわけ、乗客と貨物とを混載により、車両の効率的な利用が可能になる。
【0003】
例えば、下記特許文献1は、一のユーザが乗車して移動する車両を利用して他のユーザが荷物を送付することを可能とするための技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
貨客混載可能な車両を用いたモビリティサービスでは、車内の人が乗車していた同じ空間(運送スペース)に荷物が積み込まれることがある。生鮮食料品や冷凍食品といった荷物は、適切な温度管理がなされた環境下で運送されることが望ましいが、そのような環境は、人にとっては必ずしも快適であるとはいえない。したがって、例えば低温管理が必要な荷物が降ろされた後に人が乗車する場合や、人が降車した後に低温管理が必要な荷物を積み込む場合には、車内を最適な環境に調節する必要がある。
【0006】
しかしながら、上記の特許文献1に示す技術は、車両によって移動目的地へ移動することを予定している第1のユーザと、荷物を送付目的地へ送付することを希望している第2ユーザとのマッチングを行うに過ぎず、人の乗り降りや荷物の積み降ろしに応じて車内の環境を適切に調節することはできなかった。
【0007】
また、人の乗り降りや荷物の積み降ろし(運送対象)に応じて車内の環境を調節するには、空調機器の制御に伴う所定のエネルギーが必要であるため、サービス事業者にとっては効率的なエネルギーの消費の観点からどの車両を提供すべきかが重要になる。
【0008】
一方で、ユーザにとっては、サービス事業者によって単にエネルギー消費の効率性の観点から提案された車両では例えば乗車や荷積までの待ち時間がかかるなどの理由でもっと利便性の高い別の車両を選択したい場合がある。このような場合に、ユーザの要望を優先させると、サービス事業者にとっては上述のエネルギー消費の観点から好ましくない状況になり、両者の間で利害のバランスをとる必要がある。
【0009】
そこで、本発明は、サービス事業者とユーザとの間の利害のバランスを考慮して、適切な車両をユーザに提供し得る配車管理装置及び配車管理方法を提供することを目的とする。
【0010】
より具体的には、本発明は、人の乗り降りや荷物の積み降ろしにおいて、エネルギー効率を最大化し得る車両をユーザに提供することができる配車管理装置及び配車管理方法を提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、エネルギー効率を最大化し得る車両に代わる車両をユーザが希望する場合に、該ユーザに相応分の利用対価の負担を求めるようにした配車管理装置及び配車管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための本発明は、以下に示す発明特定事項乃至は技術的特徴を含んで構成される。
【0013】
ある観点に従う本発明は、複数の車両に対するオンデマンド方式による配車サービスを管理する配車管理装置である。前記配車管理装置は、運送対象が示された配車要求を該ユーザの端末装置から取得する配車要求取得部と、取得された前記配車要求に基づいて複数の車両の中から抽出される各候補車両に対する配車計画を作成し、作成された前記候補車両の中から選択される特定の前記車両に対する前記配車計画を確定する配車計画作成部と、確定された前記配車計画を前記特定の車両に送信する配車指示部と、を備える。前記配車計画作成部は、前記運送対象ごとの適正環境条件を定義した適正環境条件テーブルと、前記車両の運送スペースごとの車内環境情報を取得する車内環境情報取得部と、前記車内環境情報と前記適正環境条件とに基づいて、前記候補車両を選別する候補車両選別部と、前記候補車両に対する利用対価を決定する利用対価決定部とを備える。前記候補車両選別部は、前記適正環境条件を満たす前記車内環境情報を示す前記運送スペースに空きがある前記車両を第1の候補車両として抽出する。また、前記候補車両選別部は、前記適正環境条件を満たさない前記車内環境情報を示す前記運送スペースに空きがある前記車両を第2の候補車両として抽出する。そして、前記利用対価決定部は、前記第1の候補車両に対する前記利用対価と前記第2の候補車両に対する前記利用対価とが異なるように、前記利用対価を各々決定する。
【0014】
また、別の観点に従う本発明は、配車要求に応じて車両の配車を管理する配車管理装置による配車管理方法である。前記配車管理方法は、運送対象が示された配車要求を該ユーザの端末装置から取得することと、取得された前記配車要求に基づいて複数の車両の中から抽出される各候補車両に対する配車計画を作成することと、作成された前記候補車両の中から選択される特定の前記車両に対する前記配車計画を確定することと、確定された前記配車計画を該車両に送信することと、を含む。前記配車計画を作成することは、前記運送対象ごとの適正環境条件を定義した適正環境条件テーブルを保持することと、前記車両の運送スペースごとの車内環境情報を取得することと、前記車内環境情報と前記適正環境条件とに基づいて、前記候補車両を選別することと、前記候補車両に対する利用対価を決定することとを含む。また、前記候補車両を選別することは、前記適正環境条件を満たす前記車内環境情報を示す前記運送スペースに空きがある前記車両を第1の候補車両として抽出することと、前記適正環境条件を満たさない前記車内環境情報を示す前記運送スペースに空きがある前記車両を第2の候補車両として抽出することとを含む。そして、前記利用対価を決定することは、前記第1の候補車両に対する前記利用対価と前記第2の候補車両に対する前記利用対価とが異なるように、前記利用対価を各々決定することを含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、人の乗り降りや荷物の積み降ろしにおいて、エネルギー効率を最大化し得る車両をユーザに提供することができるようになる。また、本発明によれば、エネルギー効率を最大化し得る車両に代わる車両をユーザが希望する場合に、該ユーザに相応分の利用対価の負担を求めることにより、ユーザに対するLOS(Level of Service)を担保することができるようになる。
【0016】
本発明の他の技術的特徴、目的、及び作用効果乃至は利点は、添付した図面を参照して説明される以下の実施形態により明らかにされる。本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、また他の効果があっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る配車管理システムの全体構成の一例を説明する図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係る配車管理装置の機能構成モデルの一例を示すブロックダイアグラム図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係る配車管理装置が保持する適正環境条件テーブルの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態に係る配車管理システムにおける車両に搭載された制御装置の機能的モデルを示すブロックダイアグラムである。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態に係る配車管理システムにおける配車サービスの概要を説明するためのシーケンスチャートである。
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態に係る配車管理装置による配車管理処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図7】
図7は、本発明の一実施形態に係る配車管理装置による配車管理処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、あくまでも例示であり、以下に明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形(例えば各実施形態を組み合わせる等)して実施することができる。また、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付して表している。図面は模式的なものであり、必ずしも実際の寸法や比率等とは一致しない。図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることがある。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る配車管理システムの全体構成の一例を説明する図である。同図に示すように、配車管理システム1は、配車管理装置10と、端末装置20と、車両Vを含み、これらは通信ネットワークNを介して相互に通信可能に接続される。
【0020】
本開示の配車管理システム1は、例えば、ある地域を対象にした、複数の車両Vを用いたオンデマンド方式による配車サービスを提供する。「オンデマンド方式による配車サービス」は、ユーザからの配車要求に即時に応答して、該ユーザに所定の車両を割り当てる(配車する)サービスである。つまり、オンデマンド方式による配車サービスでは、ユーザが指定する配車予約時刻は存在しない。また、「即時に応答」とは、ユーザからの配車要求に対して間髪入れずに配車するだけでなく、ユーザが通常許容し得るようなある程度の幅をもった時間を含む概念である。本開示の配車管理システム1は、このような「オンデマンド方式による配車サービス」を前提としている。また、車両Vは、いわゆるドライバが運転する有人運転型車両及び自律走行可能な無人運転型車両を含み得る。
【0021】
配車管理装置10は、対象地域における複数の車両Vによる配車サービスを統括的に管理するコンピューティングデバイスである。配車管理装置10は、例えば配車管理サーバプログラムを実装し、プロセッサの制御の下、配車管理サーバプログラムを実行することにより、本開示の配車サービスを実現する。
【0022】
配車管理装置10は、かかる配車サービスを実現するために必要なデータを蓄積し管理する各種のデータベース12を含む。データベース12は、後述するように、例えば、ユーザ情報データベース12aと、道路地図情報データベース12bと、車両情報データベース12cと、配車計画データベース12dと、運行履歴情報データベース12eとを含み構成される(
図2参照)。本例では、データベース12は、配車管理装置10の一部として構成されているが、これに限られず、その全部又は一部が配車管理装置10とは別体に構成されても良い。
【0023】
概略的には、配車管理装置10は、車両Vによる目的地までの移動又運送のための配車を希望するユーザから配車要求を受け付けて、該配車要求に基づいて複数の車両Vの中から抽出される候補となる車両V(候補車両v)に対して配車計画を作成し、作成された配車計画の中から最適な一の車両Vに対する配車計画を確定し、確定した配車計画に従った配車指示を該一の車両Vに行う。配車計画の確定は、例えば、ユーザの承諾に応答して行われる。
【0024】
配車要求は、乗客であるユーザからの乗車のための配車要求(以下「乗車の配車要求」という。)と、荷主(荷物運送事業者又は一般ユーザ)であるユーザからの荷物運送のための配車要求(以下「荷物運送の配車要求」という。)とを含む。したがって、荷物配送事業者でない一般ユーザもまた、自身の荷物を配送してもらうために荷物運送の配車要求を行い得る。配車要求は、例えば、ユーザ名、運送対象(乗客又は荷物)、発着地(乗客であれば乗車地及び降車地、荷物であれば荷積地及び荷降地)、運送内容(乗客であれば人数、荷物であれば荷物の個数やサイズ、種類)等に関する情報を含む。
【0025】
配車計画は、車両Vが待機する場所(起点となる待機場所)から、ユーザが乗り降り又は荷物の積み降ろしを行う途中の幾つかの地点(発着地)を経由して、終点となる待機場所(最初の待機場所と同じとは限らない。)までを定めた運行ルートを含む。配車計画は、車両Vが待機中であれば、新規の配車要求に基づいて新規に作成され、また、車両Vの運行中であれば、新規の配車要求に基づいて更新され得る。
【0026】
本開示では、配車管理装置10は、ユーザの配車要求に基づいて、複数の車両Vの中から抽出される各候補車両vに対して作成される配車計画のうち、エネルギー消費量が低くなるような配車計画の候補車両vを幾つか選別し、ユーザに提案する。エネルギー消費量は、例えば、人の乗り降り及び/又は荷物の積み降ろしに起因する車内の空調制御(温度、湿度、臭気などに関する制御)のための電力消費量である。例えば、車内の運送スペース(座席又はその一区画)に生鮮食料品を積んだ車両Vが、該生鮮食料品を目的地で降ろして、次の目的地で同じ運送スペースに人を乗せる場合、生鮮食料品に適した温度設定(例えば10℃)を人に適した温度設定(例えば23℃)に変更する必要があり、その空調制御のためにエネルギーを消費する。一方、目的地ごとに同じ運送スペースでの人の乗り降りがある車両Vであれば、車内環境の大きな変更を伴う空調制御が必要とされない。したがって、配車管理装置10は、エネルギー消費効率の観点から最適な車両Vをユーザに推奨する候補車両v(配車計画)として提案する。
【0027】
一方、ユーザは、一般的には、目的地になるべく早く到着したいと考える。したがって、ユーザは、配車要求に対して配車されるまでの待ち時間(以下「配車待ち時間」という。)が長い車両Vよりも直ちに配車される車両Vの方をできれば選択したいと考える。そこで、本開示では、配車管理装置10は、エネルギー消費効率の観点から推奨した候補車両vに加えて、更にユーザの利便性の観点から抽出した他の候補車両vをユーザに併せて提案する。この場合、配車管理装置10は、最も推奨される候補車両vの利用対価(例えば利用料金)に対して、ユーザの利便性の観点から提案される他の候補車両vの利用対価を、エネルギー消費量に応じた分だけ上乗せする。
【0028】
これにより、サービス事業者にとっては、エネルギー消費効率に応じて利用対価が決定された幾つかの候補車両vをユーザに提案するので、エネルギー消費効率の低い候補車両vが選択されたとしても、追加的なエネルギー消費に伴う損失分を回収することができる。また、ユーザにとっては、種々の利用対価が示された幾つかの候補車両vの中から、利便性を考慮しながら自身の要望に沿った車両Vを選択することができるようになる。
【0029】
車両Vは、ユーザの利用に供される、車両情報データベース12cに登録された車両である。車両Vの車種(例えば、セダン、ミニバン、SUV等)は問わないが、少なくとも貨客混載が可能な車種であるものとする。車両Vは、車載バッテリーを動力源とする電気自動車(EV)であっても良い。また、車両Vは、完全な自律走行可能な自動運転車(無人運転型車両)であっても良く、いわゆる自動運転化レベルを問わない。車両Vは、配車管理装置10による指示に従って車両V自体又はその搭載機器(例えばナビゲーション装置)を制御する制御装置400を備える(
図2参照)。制御装置400は、例えば、GPSシステムを介して車両Vの地理的位置情報(以下「位置情報」という。)を取得し、これを配車管理装置10に送信するとともに、配車管理装置10から配車指示を受け付けて、車両Vの各種の機器又は装置の動作を制御する。制御装置400は、例えば、配車計画に従った運行ルートをドライバに提示するナビゲーション機能や、無人運転型車両Vであれば、車両Vの運行ルートに基づく詳細な実走行ルートを決定し、実走行ルートに沿った自律走行制御機能を含む。更に、制御装置400は、配車計画に従って車両Vの空調制御機器(図示せず)を制御し得る。車両Vは、制御装置400の制御の下、例えば配車要求に従う出発地までの移動中に車内環境を適正な状態に調節する。
【0030】
端末装置20は、例えば、乗車を希望するユーザがユーザインターフェースを操作して配車要求を行うためのコンピューティングデバイスである。端末装置20は、例えばスマートフォンやパッドコンピュータ、ノート型パーソナルコンピュータ、デスクトップ型コンピュータ等であるが、これらに限られない。端末装置20は、例えば、配車管理クライアントプログラム(いわゆる配車アプリ)を実装する。端末装置20は、プロセッサの制御の下、配車アプリを実行することにより、ユーザによる配車管理装置10の配車サービスの利用を可能にする。例えば、ユーザは、端末装置20のユーザインターフェース上の配車要求画面(図示せず)から配車要求を行い、これに応答して配車管理装置10によって作成された幾つかの候補車両vの配車計画の中から一の車両vを選択することで、車両Vの乗車予約を行い得る。
【0031】
なお、図示されていないが、配車管理システム1は、道路交通情報管理システムを含んでも良い。道路交通情報管理システムは、リアルタイムで道路交通情報を提供する情報通信システムである。例えば、道路交通情報管理システムは、道路に設置された車両センサ及びカメラから道路交通データを収集するとともに、車両Vに搭載された制御装置400から走行データを収集し、これらを統合的に処理及び編集した道路交通情報を管理する。編集された道路交通情報は、例えば、通行止めや迂回ルートの情報、特定のルート経由での地点間の所要時間等を含み得る。道路交通情報管理システムは、道路交通情報を配車管理装置10及び車両Vに適宜に提供し得る。
【0032】
このように、本開示の配車管理システム1では、オンデマンド方式による配車サービスにおいて、ユーザの配車要求に応答して、複数の車両Vの中から抽出される候補車両vごとに配車計画を作成し、これをエネルギー消費効率に応じて決定された利用対価とともにユーザに提案する。したがって、サービス事業者は、エネルギー消費効率の観点から推奨した候補車両v以外の他の候補車両vをユーザが選択した場合であっても、追加的なエネルギー消費に伴う金銭的損失分を回収することができる。また、ユーザは、種々の利用対価が示された候補車両vの中から、利便性を考慮しながら自身の要望に沿った車両Vを選択することができるようになる。これにより、サービス事業者とユーザとの間の利害のバランスを考慮した配車サービスが実現されることになる。
【0033】
図2は、本発明の一実施形態に係る配車管理装置の機能構成モデルの一例を示すブロックダイアグラム図である。同図に示すように、配車管理装置10は、例えば、フロントエンド処理部110と、配車要求取得部120と、発着地決定部130と、配車計画作成部140と、走行ルート計画部150と、車両通信インターフェース部160といった機能構成要素を含む機能構成モデルとして構成される。また、配車管理装置10は、上述したように、各種のデータベース12を含む。かかる機能モデルは、配車管理装置10が、プロセッサの制御の下、配車管理サーバプログラムを実行し、これにより、各種のハードウェア資源と協働することにより、実現される。ここに示す機能構成モデルは一例であって、ある機能構成要素における全部又は一部の機能が、他の機能構成要素によって実現されても良い。なお、同図では、説明の便宜上、ユーザの端末装置20、及び車両Vにおける制御装置400もまた示されている。
【0034】
ユーザ情報データベース12aは、配車サービスを利用するユーザに関する情報(以下「ユーザ情報」という。)を格納する。ユーザ情報は、例えば、ユーザID及びパスワード、個人属性、並びにサービス利用状況に関する情報等を含む。ユーザ情報は、例えば配車アプリの最初の起動時にユーザが所定の情報を入力することにより、配車管理装置10の制御の下、ユーザ情報データベース12aに登録される。
【0035】
道路地図情報データベース12bは、配車サービスの対象地域における道路地図に関する情報(以下「道路地図情報」という。)を格納する。道路地図情報は、例えば、住所、地名、道路、施設等に関する地図データを含む。また、道路地図情報は、ルート探索に必要な情報、例えば、道路情報、地物情報及び環境情報等を含み得る。
【0036】
車両情報データベース12cは、ユーザの利用に供される車両Vに関する情報(車両情報)を格納する。車両情報は、例えば、車両ID、車両属性(車両登録番号、車種、及び最大乗車人員/最大積載量、運送スペースの数、有人運転型又は無人運転型等)、車両性能、その他の諸元、現在の配車計画、現在位置、及び現在状態(サービス状態、バッテリー残容量(航続可能距離)、乗車人員、及び運送スペースの使用状況等)等に関する情報を含む。また、車両情報は、車内の運送スペースごとの環境情報(以下「車内環境情報」という。)を含む。車両Vから取得された車両情報は、随時更新され得る。
【0037】
配車計画データベース12dは、配車要求に基づいて、配車計画作成部140によって作成された車両Vごとの配車計画を格納する。配車計画は、起点となる待機場所から幾つかの発着地を経由して終点となる待機場所までの運行ルート及び経由地ごとの到着予想時刻等を含む。
【0038】
運行履歴情報データベース12eは、例えば車両Vごとの過去の運行履歴に関する情報(運行履歴情報)を格納する。運行履歴情報は、例えば、車両Vごとの稼働時刻(運行開始時刻及び終了時刻)、運行ルート、及び走行距離等の各種の諸元情報を含む。
【0039】
なお、図示されていないが、データベース12は、有人運転型車両Vを運転するドライバに関する情報(ドライバ情報)を格納するドライバ情報データベースを含み得る。ドライバ情報は、例えば、ドライバID及びパスワード、個人属性、運転経歴、及び勤務実績等に関する情報等を含む。
【0040】
フロントエンド処理部110は、ユーザの端末装置20との間での各種の処理を行う。一例として、フロントエンド処理部110は、ユーザの端末装置20上の配車アプリからのログイン要求に従って、ユーザ情報データベース12aを参照し、ログイン認証処理を行う。また、フロントエンド処理部110は、ユーザの端末装置20上の配車アプリからの配車要求を受け付けて、これを配車要求取得部120に引き渡し、これに応答して配車計画作成部140により作成された配車計画(候補車両v)のいずれかに対するユーザの選択を受けるために、端末装置20との間でやり取りする。すなわち、フロントエンド処理部110は、作成された配車計画に基づく選択要求を端末装置20に送信して、端末装置20のユーザインターフェース上に幾つかの配車計画(候補車両v)をその利用対価とともに表示させ、これに応答して端末装置20から送信されるいずれかの配車計画に対する選択通知又は拒否通知を受信する。この意味において、フロントエンド処理部110は、配車計画作成部140の制御の下、配車管理装置10の選択処理部としての機能を有する。
【0041】
配車要求取得部120は、フロントエンド処理部110を介して、ユーザからの配車要求を受け付けて取得する。配車要求取得部120が配車要求を受け付けた時刻は、ユーザの配車待ち時間や各種の限界時間(例えば乗車(荷積)限界時間や降車(荷降)限界時間)の計時開始時刻となる。配車要求取得部120は、取得した配車要求を発着地決定部130及び配車計画作成部140の各々に引き渡す。
【0042】
発着地決定部130は、引き渡された配車要求に基づいて、道路地図情報データベース12bを参照し、道路地図上に示される実際にユーザが実際に乗降可能又は荷物を積み降し可能な予め定められた発着地(例えば停留所)を決定する。すなわち、発着地決定部130は、配車要求が示す乗車/荷積希望地及び降車/荷降希望地に対して、道路地図情報データベース12bを参照し、対象地域においてユーザが実際に乗降可能/荷物の積降可能な地理的位置を示す出発地及び目的地を決定する。発着地決定部130は、決定した発着地を配車計画作成部140に引き渡す。
【0043】
配車計画作成部140は、与えられた配車要求に基づいて、対象地域の車両Vの中から候補となる車両(候補車両v)を抽出し、その配車計画を作成し、作成された配車計画の中から最適な配車計画の車両Vを選択して確定し、確定した配車計画に従った配車指示を該車両Vに行う。すなわち、配車計画作成部140は、候補車両vの一次抽出のため、走行ルート計画部150にルートパターンの導出を依頼する。配車計画作成部140は、エネルギー消費効率の観点から候補車両vを更に抽出して絞り込む。配車計画作成部140は、作成された幾つかの配車計画をユーザに提案し、ユーザの選択を受けて一の車両Vの配車計画を確定する。配車計画作成部140は、確定した配車計画を配車計画データベース12dに格納するとともに、車両Vに配車指示するために配車指示部162に通知する。
【0044】
本開示では、配車計画作成部140は、配車計画の作成に際して、候補車両vの車内環境情報に従って、運送対象(人又は荷物)をどの運送スペースに乗せるかを指定し得る。配車計画作成部140におけるこれらの機能構成要素の詳細については後述する。
【0045】
走行ルート計画部150は、配車計画作成部140の制御の下、各候補車両vのルートパターンを導出する。ルートパターンは、決定済みの発着地(経由地)を通る経路に対して新たな配車要求により発着地を追加した場合における全ての発着地を通るルートを示す。例えば、ルートパターンは、道路をリンクとし、その分岐点(交差点)をノードとするラティス構造として表現され得る。走行ルート計画部150は、配車計画作成部140によるルートパターンの導出依頼に応答して、道路地図情報データベース12b及び車両情報データベース12cを参照して、配車要求に適合し得る1又はそれ以上の車両Vを候補車両vとして抽出し、抽出された候補車両vの各々について、発着地に従ったルートパターンを導出する。走行ルート計画部150は、導出したルートパターンを配車計画作成部140に引き渡す。
【0046】
車両通信インターフェース部160は、通信ネットワークNを介して、車両Vとの間で各種の情報をやり取りする。例えば、車両通信インターフェース部160は、車両Vの車両情報を取得する車両情報取得部161と、配車計画に従って車両Vに移動を指示する配車指示部162とを備える。
【0047】
車両情報取得部161は、制御装置400の通信部430との間で通信を行い、位置情報取得部410によって取得された車両Vの位置情報や車内環境管理部420によって取得された運送スペースごとの環境情報等を含む車両情報を車両Vから取得する。
【0048】
配車指示部162は、配車計画作成部140の指示に従い、配車計画データベース12dを参照し、対応する配車計画を特定し、特定された配車計画に従って車両Vに運行指示を送信する。運行指示を受信した車両Vの制御装置400は、ナビゲーション機能により、例えばユーザインターフェース(図中「UI」と表示している。)440上に、配車計画に従った走行ルートを表示する。或いは、配車計画の運行ルートに従って詳細な実走行ルートを決定し、実走行ルートに沿った自律走行がなされるように制御を行う。
【0049】
次に、配車計画作成部140の各機能構成要素の詳細について説明する。配車計画作成部140は、例えば、適正環境条件テーブル141と、車内環境情報取得部142と、配車予定時刻算出部143と、候補車両選別部144と、利用対価決定部145とを含み構成される。
【0050】
適正環境条件テーブル141は、運送対象の属性ごとの適正な環境条件(以下「適正環境条件」という。)を定義したテーブルである。配車計画作成部140は、適正環境条件テーブル141を例えばメモリ上に保持する。
図3は、本発明の一実施形態に係る配車管理装置が保持する適正環境条件テーブルの一例を示す図である。同図に示すように、適正環境条件テーブル141は、例えば、運送対象「人」(乗客)については、適正温度「23℃」、適正湿度「50%」、臭気「なし」であることを定義し、運送対象「生鮮食料品」については、適正温度「10℃」、適正湿度「50%」、臭気「弱以下」であることを定義している。本例では、適正環境条件として、温度、湿度及び臭気が示されているが、これに限られない。
【0051】
車内環境情報取得部142は、車両情報取得部161を介して、車両Vの車内環境情報を取得する。車内環境情報は、車両Vの車両Vの運送スペースごとの現在の環境を示す情報である。車内環境情報取得部142は、典型的には、候補車両vの配車計画を作成するタイミングで、車両情報データベース12cを参照し、車内環境情報を取得するが、これに限られず、例えば、定期的なタイミングで車内環境情報を取得しても良い。車内環境情報取得部142は、取得された車内環境情報を候補車両選別部144に引き渡す。
【0052】
配車予定時刻算出部143は、走行ルート計画部150により導出されたルートパターンに基づいて、候補車両vが出発地(乗車地又は荷積地)に配車される予定の時刻(以下「配車予定時刻」という。)を算出する。配車予定時刻は、配車を希望したユーザの配車待ち時間を決定する。ユーザの配車待ち時間(配車要求の受付時刻から配車予定時刻まで時間)は、ユーザに提案される候補車両vの利用対価に影響を与え得る。
【0053】
候補車両選別部144は、車内環境情報と適正環境条件とに基づいて、ユーザに提案すべき幾つかの候補車両v(配車計画)を抽出し選別する。具体的には、候補車両選別部144は、取得された車内環境情報のうち、適正環境条件を満たす車内環境情報を示す運送スペースに空きがある候補車両v(以下「第1の候補車両v」という。)を抽出する。また、候補車両選別部144は、取得された車内環境情報のうち、適正環境条件を満たさない車内環境情報を示す運送スペースに空きがある1つ又はそれ以上の候補車両v(以下「第2の候補車両v」という。)を抽出し得る。ここでいう、運送スペースは、配車要求に応答して乗車又は荷積が可能な運送スペースである。例えば、新たな乗車の配車要求について、手前の目的地で乗客を降ろした直後の車両Vの場合、該乗客を乗せていた運送スペースは人の乗車に適した環境にあったことから、該車両Vから取得された該運送スペースの車内環境情報は、適正環境条件を満たすことになる。一方、新たな乗車の配車要求について、手前の目的地で生鮮食料品を降ろした直後の車両Vの場合、該生鮮食料品を載せていた運送スペースは人の乗車に適していない低温環境であったため、該車両Vから取得された該運送スペースの車内環境情報は、適正環境条件を満たさないことになる。候補車両選別部144は、第2の候補車両vについては、ユーザの配車待ち時間に応じて更に絞り込みを行い得る。
【0054】
利用対価決定部145は、候補車両選別部144により選別された候補車両vに対する利用対価を決定する。本例では、利用対価決定部145は、第1の候補車両vに対する利用対価を基準(これを「基準利用対価」と称するものとする。)に、第2の候補車両vに対して異なる利用対価を決定する。典型的には、利用対価決定部145は、第2の候補車両vに対する利用対価を第1の候補車両vに対する基準利用対価よりも所定分だけ高くなるように設定する。
【0055】
また、利用対価決定部145は、配車予定時刻算出部143により算出される配車予定時刻に基づくユーザの配車待ち時間に従って、第2の候補車両vに対する利用対価を決定する。例えば、利用対価決定部145は、配車要求を行ったユーザの配車待ち時間が第1のしきい値以下の場合に、第2の候補車両に対する利用対価を基準利用対価よりも高い第1の利用対価に決定する。つまり、ユーザの配車待ち時間が比較的短い第2の候補車両vについては、エネルギー消費効率の観点から第1の候補車両vとの差別化を図るために、利用対価を高めに設定する。また、利用対価決定部145は、配車要求を行ったユーザの配車待ち時間が第2のしきい値を上回る場合に、第2の候補車両に対する利用対価を基準利用対価よりも高く、かつ、第1の利用対価よりも低い第2の利用対価に決定する(基準利用対価<第2の利用対価<第1の利用対価)。つまり、ユーザの配車待ち時間が比較的長い第2の候補車両vについては、エネルギー消費効率の観点から第1の候補車両vとの差別化を図りつつ、ユーザの配車待ち時間が比較的短いときよりも低めに設定する。第1のしきい値と第2のしきい値とは同じであっても良いし、異なっていても良い。これにより、車両Vのエネルギー消費効率とユーザの利便性とのバランスを図りつつ、候補車両vに対する利用対価を決定し、ユーザに選択の幅を広げた提案が可能になる。
【0056】
また、利用対価決定部145は、適正環境条件と車内環境情報との間の乖離度に応じたエネルギー消費量に基づいて、第2の候補車両vに対する利用対価を決定し得る。つまり、適正環境条件と車内環境情報との間の乖離度が大きいほど、運送スペースの環境を空調制御により適正環境条件に一致させ又は近づけるためにエネルギー消費量が多くなることから、利用対価決定部145は、エネルギー消費量に応じた対価を利用対価に転嫁する。これにより、サービス事業者は、エネルギー消費に伴う損失分を合理的に回収することが可能になる。
【0057】
図4は、本発明の一実施形態に係る配車管理システムにおける車両に搭載された制御装置の機能的モデルを示すブロックダイアグラムである。同図に示すように、制御装置400aは、例えば、位置情報取得部410と、車内環境管理部420と、通信部430と、ユーザインターフェース部440とを含み構成される。
【0058】
位置情報取得部410は、GPSシステムから車両Vの位置情報を取得する。位置情報取得部410は、GPSシステムから取得された位置情報を配車管理装置10に送信するために通信部430に引き渡す。
【0059】
車内環境管理部420は、車両V内の運送スペースごとの車両内の環境を管理する。一例として、車内環境管理部420は、車両V内に設置された1つ又はそれ以上のセンサ(図示せず)から車内環境情報を取得し、これに応じて車両Vの空調機器を制御して、車両内の環境を整える。センサは、例えば、温度センサ、湿度センサ、及び臭気センサ等を含み得る(図示せず)。また、車内環境管理部420は、各センサから取得した車内環境情報を配車管理装置10に送信するために通信部430に引き渡す。
【0060】
通信部430は、配車管理装置10の車両通信インターフェース部160との間で種々の情報をやり取りするための通信インターフェースである。一例として、通信部430は、車両通信インターフェース部160から送信される車両情報の送信要求を受信し、これに応答して、位置情報を含む車両情報を車両通信インターフェース部160に送信する。他の例として、通信部430は、車両通信インターフェース部160から送信される配車指示を受信し、これをユーザインターフェース部440に引き渡す。
【0061】
ユーザインターフェース部440は、ドライバに対して車両Vの各種の状態を表示し、これに対するドライバの入力を受け付ける。例えば、ユーザインターフェース部440、配車管理装置10から送信された配車指示を表示する。
【0062】
図5は、本発明の一実施形態に係る配車管理システムにおける配車サービスの概要を説明するためのシーケンスチャートである。
【0063】
同図に示すように、配車サービスを利用しようとするユーザは、端末装置20に実装された配車アプリを実行して、ユーザインターフェース上に表示された配車要求画面に対して配車要求のための必要な情報を入力し、これにより、端末装置20は、配車要求を配車管理装置10に送信する(S501)。例えば、乗車(配車予約)を希望するユーザは、配車アプリを操作して、乗り降りのための発着地及び乗車人数等を入力する。或いは、荷物の配送を希望するユーザは、配車アプリを操作して、荷物の積み降ろしのための発着地、荷物の種類(例えば通常荷物であるか又は生鮮食料品であるか等)、及び荷物の個数やサイズ等を入力する。出発地は、例えば、配車アプリにより表示された地理的マップから選択され得る。また、出発地は、ユーザのスマートフォンに搭載されたGPS機能により取得される現在位置であっても良い。
【0064】
配車管理装置10は、端末装置20から配車要求を受信すると(S502)、対象地域における車両Vに位置情報や車内環境情報等を含む車両情報の取得を要求する(S503)。これに応答して、各車両Vは、GPSシステムから取得される自身の位置情報及び車両V内に設置されたセンサにより検出された車内環境情報等を含む車両情報を配車管理装置10に送信する(S504)。なお、車両Vによる車両情報の取得及び送信は、定期的に応じて行われても良い。配車管理装置10は、車両Vから送信される位置情報及び車内環境情報を含む車両情報を取得し、車両情報データベース12cを更新する。
【0065】
次に、配車管理装置10は、ユーザの配車要求に基づいて抽出される候補車両vの配車計画を作成し、これをユーザに提案する(S505)。すなわち、配車管理装置10は、配車要求に基づいて、ルートパターンを導出し、導出されたルートパターンに基づいて抽出される候補車両vの配車計画を作成する。このとき、配車管理装置10は、配車要求に対して、車内環境情報と適正環境条件とに基づいて、ユーザに提案すべき幾つかの候補車両v(配車計画)を抽出し、更に、第1の候補車両vと第2の候補車両vとに選別する。更に、配車管理装置10は、選別された候補車両vごとに利用対価を決定する。配車管理装置10は、利用対価が決定された各候補車両vをユーザに提案するために、その配車計画に基づく選択要求を端末装置20に送信する。
【0066】
端末装置20は、各候補車両vの配車計画の選択要求を受信すると、これをユーザインターフェース上に配車計画提案画面として表示して、提案された配車計画の中から一の配車計画の選択をユーザに促す(S506)。配車計画提案画面は、各候補車両が利用対価とともに表示される。これにより、ユーザは、この場合、ユーザは利用対価を考慮して候補車両を選択することができる。提案された配車計画の中に希望するものがない場合は、ユーザは、拒否(キャンセル)を選択する。配車計画提案画面は、例えば、車両Vが到着する乗降地の具体的な場所及び配車予定時刻、並びに利用対価等を含み得る。ユーザは、配車計画提案画面に対して、提案された配車計画のいずれかを選択することができる。ユーザが配車計画提案画面に対して配車計画を選択すると、これを受けて、端末装置20は、選択通知を配車管理装置10に送信し(S507)、配車管理装置10は、端末装置20から送信される選択通知を受信する(S508)。配車管理装置10は、選択通知が示す一の車両Vの配車計画を確定し、配車予約の確定通知を端末装置20に送信するともに、車両Vに対して該配車計画に従った配車指示を送信する(S509)。
【0067】
端末装置20は、配車予約の確定通知を受信すると、これをユーザインターフェース上に表示してユーザに配車の予約が確定したことを知らせる(S510)。一方、車両Vは、配車指示を受信すると、配車計画に従って配車サービスを実行する(S511)。すなわち、配車指示された車両Vが無人運転型車両Vであれば、無人運転型車両Vは、配車計画に従って具体的な走行ルートを計画し、配車要求を行ったユーザを乗せるために乗降地に向かうために、自律走行を開始する。また、配車指示された車両Vが有人運転型車両Vであれば、有人運転型車両Vは、ドライバをナビゲートするために、例えばナビゲーション画面に配車指示が示す配車計画に従った運行ルートを表示する。このとき、車両Vは、配車計画に従って空調制御機器を制御して、出発地までの移動中に車内環境を適正な状態に調節する。これにより、サービス事業者とユーザとの間の利害のバランスを考慮しつつ、ユーザの配車要求に応じたオンデマンド方式の車両Vの配車サービスが実現される。
【0068】
そして、配車管理装置10は、配車要求に基づく配車計画に従った車両Vの運行が完了すると、該車両Vの運行履歴情報を運行履歴情報データベース12eに格納する(S512)。運行履歴情報データベース12eに格納された運行履歴情報は、次回の車両Vのルート特性の決定に用いられる。
【0069】
図6は、本発明の一実施形態に係る配車管理装置による配車管理処理の一例を説明するためのフローチャートである。かかる処理は、配車管理装置10が、プロセッサの制御の下、配車管理サーバプログラムを実行することにより、各種のハードウェア資源との協働がなされ、実現される。
【0070】
同図に示すように、配車管理装置10は、ユーザからの新規の配車要求があるまで待機している(S601)。一方で、例えば、乗車を希望するユーザは、端末装置20のユーザインターフェース上で配車アプリを操作して、上述したように、配車要求を入力する。配車管理装置10は、ユーザからの配車要求があると(S601のYes)、各車両Vに車両情報の送信を要求し、各車両Vから送信される位置情報及び車内環境情報を含む車両情報を取得する(S602)。車両情報は、車両情報データベース12cに格納される。
【0071】
続いて、配車管理装置10は、該配車要求が示す発着地に基づいて、道路地図情報データベース12bを参照し、ユーザが実際に乗り降り又は荷物を積み降ろしするための発着地を決定する(S603)。
【0072】
次に、配車管理装置10は、決定された発着地に従って1又はそれ以上の候補車両vを抽出する(S604)。例えば、配車管理装置10は、乗車地の近傍で運行中の車両Vを候補車両vとして一次抽出する。運行中の車両Vとは、待機場所においてサービス提供可能な状態で待機している又は実際に乗客を運送中の車両である。これにより、例えば、乗車地又は降車地から遠く離れた位置にいる車両Vを候補車両vから除外することができ、導出すべきルートパターンの数を減らすことができる。
【0073】
次に、配車管理装置10は、抽出された各候補車両vについて、道路地図情報データベース12bを参照して、ルートパターンを導出する(S605)。上述したように、ルートパターンは、決定済みの発着地(経由地)を通る経路に対して新たな発着地を追加した場合にこれら全ての発着地を通るルートを示す。続いて、配車管理装置10は、導出されたルートパターンに基づいて配車計画を作成する(S606)。配車計画は、ルートパターンに対して起点となる待機場所及び終点となる待機場所並び運行ルートを含む。待機場所で待機している車両Vの配車計画は、新たに作成される。また、既に設定された配車計画に従って運行中の車両Vの配車計画は、導出されたルートパターンに基づいて配車計画が更新される。
【0074】
次に、配車管理装置10は、作成された候補車両vの配車計画のうち、所定の除外条件に該当する配車計画を除外して配車計画(候補車両v)を更に絞り込む(S607)。例えば、配車管理装置10は、航続可能距離が所定のしきい値に満たない候補車両vの配車計画を除外する。これにより、ユーザの配車要求を満たさない候補車両vが除外される。また、本開示では、配車管理装置10は、配車要求に対して、適正環境条件と車内環境情報とに基づいて、ユーザに提案すべき幾つかの候補車両v(配車計画)を更に抽出し、第1の候補車両vと第2の候補車両vとに選別する。また、配車管理装置10は、抽出され選別された各候補車両vに対して利用対価を決定する。
【0075】
続いて、配車管理装置10は、抽出された各候補車両vの配車計画の内容をユーザに提案する(S608)。すなわち、配車管理装置10は、作成した配車計画に基づく選択要求を端末装置20に送信し、これに応答して、端末装置20は、ユーザインターフェース上に各候補車両vの配車計画の内容を表示して、候補車両vの中から一の車両Vを選択するように促す。
【0076】
配車管理装置10は、選択要求に応答してユーザから選択通知を受け付けたか否かを判断する(S609)。配車管理装置10は、配車計画の提案に対してユーザから選択通知を受け付けた場合(S609のYes)、配車管理装置10は、現在の配車計画を確定する(S610)。配車管理装置10は、確定した配車計画を配車計画データベース12dに格納する。続いて、配車管理装置10は、配車予約の確定通知を端末装置20に送信するとともに、配車計画に基づく配車指示を車両Vに送信する(S611)。
【0077】
これに対して、配車管理装置10は、配車計画の提案に対してユーザから選択なし(キャンセル)を受け付けた場合(S609のNo)、該ユーザの配車要求に基づく現在の配車計画を全てキャンセルする(S610)。この場合、配車管理装置10は、配車計画の再作成のために使用された一時的に保留されていた配車計画を元の保留中の配車計画に戻す。ユーザは、別の配車サービスを希望する場合には、新たな配車要求を行うことになる。
【0078】
図7は、本発明の一実施形態に係る配車管理装置による配車管理処理の一例を説明するためのフローチャートである。より具体的には、同図は、
図7に示す配車計画の絞り込み処理(S607)の詳細を示すフローチャートである。
【0079】
同図に示すように、配車管理装置10は、車両情報データベース12cから各候補車両vの車内環境情報を取得する(S701)。或いは、配車管理装置10は、車両通信インターフェース部160を介して車内環境情報を改めて取得しても良い。車内環境情報は、車両Vの運送スペースごとの温度や湿度、臭気といった環境情報である。
【0080】
次に、配車管理装置10は、適正環境条件テーブル141を参照し(S702)、適正環境条件を満たす車内環境情報を示す運送スペースに空きがある候補車両vを第1の候補車両vとして抽出し(S703)、更に、適正環境条件を満たさない車内環境情報を示す運送スペースに空きがある候補車両vを第2の候補車両vとして抽出する(S704)。
【0081】
続いて、配車管理装置10は、抽出された第1の候補車両に対する利用対価を決定する(S705)。ここでいう利用対価は、例えば予定走行距離等に従って決定される基準利用対価(基本料金)である。配車管理装置10は、例えば、配車要求に基づく発着地間の道のりに応じて基準利用対価を決定する。
【0082】
次に、配車管理装置10は、第2の候補車両vについて、適正環境条件と車内環境情報との乖離度を算出する(S706)。例えば、10℃に保たれた運送スペースに生鮮食料品を積んだ車両Vが、該生鮮食料品を目的地で降ろして、次の目的地で同じ運送スペースに人を乗せる場合、適正環境条件テーブル141より人に適した温度設定は23℃であることから、温度差は13℃である。一方、10℃に保たれた運送スペースに生鮮食料品を積んだ車両Vが、該生鮮食料品を目的地で降ろして、次の目的地で同じ運送スペースに生鮮食料品を積み込む場合、温度差はない。配車管理装置10は、温度、湿度、及び臭気の各々における差分値に基づいて乖離度を算出する。
【0083】
続いて、配車管理装置10は、算出された乖離度が第1のしきい値以下であるか否かを判断する(S707)。配車管理装置10は、算出された乖離度が第1のしきい値以下であると判断する場合(S707のYes)、配車管理装置10は、第2の候補車両に対する利用対価を基準利用対価よりも高い第1の利用対価に決定する(S708)。つまり、配車管理装置10は、ユーザの配車待ち時間が比較的短い第2の候補車両vについては、エネルギー消費効率の観点から第1の候補車両vとの差別化を図るために、利用対価を高めに設定する。この場合、配車管理装置10は、乖離度の大きさに応じて第1の利用対価を決定しても良い。
【0084】
一方、配車管理装置10は、算出された乖離度が第1のしきい値以下でないと判断する場合(S707のNo)、続いて、配車管理装置10は、算出された乖離度が第2のしきい値を上回っているか否かを判断する(S709)。配車管理装置10は、算出された乖離度が第2のしきい値を上回っていると判断する場合(S709のYes)、配車管理装置10は、第2の候補車両に対する利用対価を基準利用対価よりも高く、かつ、第1の利用対価よりも低い第2の利用対価に決定する(S710)。つまり、配車管理装置10は、ユーザの配車待ち時間が比較的長い第2の候補車両vについては、エネルギー消費効率の観点から第1の候補車両vとの差別化を図りつつ、ユーザの配車待ち時間が比較的短いときよりも低めに設定する。これにより、車両Vのエネルギー消費効率とユーザの利便性とのバランスを図りつつ、候補車両vに対する利用対価を決定し、ユーザに選択の幅を広げた提案が可能になる。
【0085】
以上のように、本実施形態によれば、配車管理装置10は、ユーザの配車要求に応答して、複数の車両Vの中から抽出される候補車両vごとに配車計画を作成し、これをエネルギー消費効率に応じて決定された利用対価とともにユーザに提案する。したがって、サービス事業者は、エネルギー消費効率の観点から推奨した候補車両v以外の他の候補車両vをユーザが選択した場合であっても、エネルギー消費に伴う金銭的損失分を回収することができる。また、ユーザは、種々の利用対価が示された候補車両vの中から、利便性を考慮しながら自身の要望に沿った車両Vを選択することができるようになる。これにより、サービス事業者とユーザとの間の利害のバランスを考慮した配車サービスが実現されることになる。
【0086】
上記各実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな形態で実施することができる。例えば、本明細書に開示される方法においては、その結果に矛盾が生じない限り、ステップ、動作又は機能を並行して又は異なる順に実施しても良い。説明されたステップ、動作及び機能は、単なる例として提供されており、ステップ、動作及び機能のうちのいくつかは、発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略でき、また、互いに結合させることで一つのものとしてもよく、また、他のステップ、動作又は機能を追加してもよい。
【0087】
また、本明細書では、さまざまな実施形態が開示されているが、一の実施形態における特定のフィーチャ(技術的事項)を、適宜改良しながら、他の実施形態に追加し、又は該他の実施形態における特定のフィーチャと置換することができ、そのような形態も本発明の要旨に含まれる。
【符号の説明】
【0088】
1…配車管理システム
10…配車管理装置
110…フロントエンド処理部
120…配車要求取得部
130…発着地決定部
140…配車計画作成部
141…適正環境条件テーブル
142…車内環境情報取得部
143…配車予定時刻算出部
144…候補車両選別部
145…利用対価決定部
150…走行ルート計画部
160…車両通信インターフェース部
161…車両情報取得部
162…配車指示部
12…データベース
12a…ユーザ情報データベース
12b…道路地図情報データベース
12c…車両情報データベース
12d…配車計画データベース
12e…運行履歴情報データベース
20…端末装置
N…通信ネットワーク
V…車両
400…制御装置
410…位置情報取得部
420…車内環境管理部
430…通信部
440…ユーザインターフェース部