(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092469
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】ワーク保持部材及び積層体
(51)【国際特許分類】
B32B 15/08 20060101AFI20240701BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
B32B15/08 E
H01L21/60 311S
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208411
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 敬介
(72)【発明者】
【氏名】大西 謙司
【テーマコード(参考)】
4F100
5F044
【Fターム(参考)】
4F100AB01A
4F100AB04A
4F100AB10A
4F100AB11A
4F100AB31A
4F100AG00A
4F100AK33B
4F100AK33G
4F100AK35B
4F100AK35G
4F100AK49B
4F100AK49G
4F100AK52C
4F100AK53B
4F100AK53G
4F100AL05B
4F100AL05G
4F100AT00
4F100BA03
4F100CA02B
4F100CA02H
4F100CB10B
4F100CB10G
4F100DJ01C
4F100EJ082
4F100EJ08B
4F100GB41
4F100JK06
4F100JL14
4F100JL16
5F044KK01
5F044LL01
5F044RR17
5F044RR18
5F044RR19
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、電子部品が実装された基板(ワーク)をワーク保持層から取り外すときに、前記ワーク保持層と支持体との間に生じる剥離を抑制できるワーク保持部材を提供する。
【解決手段】本発明に係るワーク保持部材3は、支持体1と、該支持体上に積層される接着シート2と、該接着シート上に積層され、かつ、ワークを保持するワーク保持層と、を備え、前記接着シートは、有機成分として、熱硬化性樹脂を含み、前記ワーク保持層は、有機多孔質体層であり、前記熱硬化性樹脂は、カルボキシ基を有する第1ポリマーと、エポキシ基を有する第2ポリマーと、エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含み、前記有機成分の全量に占める前記群から選択される少なくとも1種の質量比率が、20質量%以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、該支持体上に積層される接着シートと、該接着シート上に積層され、かつ、ワークを保持するワーク保持層と、を備え、
前記接着シートは、有機成分として、熱硬化性樹脂を含み、
前記ワーク保持層は、有機多孔質体層であり、
前記熱硬化性樹脂は、カルボキシ基を有する第1ポリマー、エポキシ基を有する第2ポリマー、及び、エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含み、
前記有機成分の全量に占める前記群から選択される少なくとも1種の質量比率が、20質量%以上である
ワーク保持部材。
【請求項2】
前記有機多孔質体層は、シリコーン発泡体層である
請求項1に記載のワーク保持部材。
【請求項3】
前記シリコーン発泡体層の厚さは、500μm以下である
請求項2に記載のワーク保持部材。
【請求項4】
前記支持体は、金属板、ガラス板、及び、シリコン板からなる群から選ばれる1種である
請求項1乃至3のいずれか1項記載のワーク保持部材。
【請求項5】
前記金属板は、ステンレス板、アルミニウム板、及び、アルミニウム合金板からなる群から選択される1種である
請求項4に記載のワーク保持部材。
【請求項6】
支持体と、該支持体上に積層される接着シートと、該接着シート上に積層され、かつ、ワークを保持するワーク保持層と、を備えるワーク保持部材と、
前記ワーク保持層上に保持されているワークと、を備え、
前記ワーク保持部材が、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のワーク保持部材である
積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク保持部材及び積層体に関する。より詳しくは、本発明は、ワークを保持するワーク保持部材、及び、該ワーク保持部材上にワークが保持された積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品装置の製造において、電子部品を基板などのワークの表面に実装すること、すなわち、電子部品をワークに表面実装することが知られている(例えば、下記特許文献1及び2)。
【0003】
下記特許文献1には、電子部品装置たる半導体装置の製造において、電子部品たる半導体チップを基板(ワーク)の表面に取り付けたり、基板に取り付けた後の半導体チップにリフロー処理を行ったりなどして実装するときに、ステージ上に基板を載置することが開示されている。
より具体的には、下記特許文献1には、バンプ電極を備える複数の半導体チップを高さ方向に積層させた半導体チップ積層体を得て、該半導体チップ積層体を支持基板(ワーク)上に取り付けた状態とし、前記半導体チップ積層体を取り付けた支持基板を第1のステージたる搬送板上に載置した後、該第1のステージたる搬送板を第2のステージたる加熱炉内のステージ上に載置してリフロー処理を行い、支持基板上に半導体チップを実装することにより、半導体装置を製造することが開示されている。
【0004】
また、半導体装置の製造では、外部との導通を確保すべくリフロー処理後の半導体チップにボンディングワイヤを取り付けた後、ボンディングワイヤが取り付けられた半導体チップに熱硬化性を有するモールド樹脂を用いてモールド処理を施すことも知られている。
なお、前記リフロー処理及び前記モールド処理は、通常、180℃以上もの高温で実施される。
【0005】
下記特許文献2には、電子部品装置たる有機EL装置の製造において、電子部品たるIZO膜やITO膜などといった透明電極膜を透明基板(ワーク)上に取り付けて、前記透明電極膜をアニールして実装するときに、ステージ上に前記透明基板を載置することが開示されている。
より具体的には、下記特許文献2には、前記透明基板を基板ステージ上に載置し、スパッタリング法により前記透明基板上に電子部品たる透明電極膜を取り付けた後、アニール処理を行って前記透明基板上に前記透明電極膜を実装して、有機EL装置を製造することが開示されている。
なお、前記アニール処理は、前記透明電極膜の機能を十分に発現させるために、通常、150℃程度の温度で実施される。
【0006】
上記のように電子部品を基板(ワーク)に実装させる時には、前記基板は、通常、何らかの部材を介在させてステージ上に載置される。
例えば、前記基板は、支持体と該支持体上に積層されたワーク保持層とを備えるワーク保持部材を介在させてステージ上に載置される。
より具体的には、前記ワーク保持部材の前記ワーク保持層に基板(ワーク)を保持させた状態で前記支持体をステージ上に載置することにより、前記基板はステージ上に載置される。
そして、前記ワーク保持部材では、前記ワーク保持層は、通常、接着剤によって形成された接着剤層や接着剤をシート状に成形した接着シートによって前記支持体に取り付けられている。
すなわち、前記ワーク保持部材は、通常、前記支持体と前記ワーク保持層との間に、接着剤層や接着シートを介在させて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-150202号公報
【特許文献2】特開2008-140735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記基板は、モールド処理前やアニール処理前などの電子部品の表面実装時の加熱処理前においては、前記ワーク保持部材のワーク保持層に固定されているものの、モールド処理後やアニール処理後などの電子部品の表面実装時の加熱処理後においては、前記ワーク保持部材のワーク保持層から取り外される。
【0009】
ところで、電子部品が実装された基板、すなわち、加熱処理後の基板を前記ワーク保持部材のワーク保持層から取り外すときに、前記ワーク保持層から電子部品が実装された基板を適切に取り外せないことがある。
より具体的には、前記支持体と前記ワーク保持層との間で剥離が生じることにより、電子部品が実装された基板に伴って前記ワーク保持層が前記支持体から取り外されるようになって、電子部品が実装された基板を前記ワーク保持層から取り外せないことがある。
【0010】
上記のようなワーク保持部材は、電子部品の表面実装のために単回使用されるものではなく、数十回以上に亘って繰り返し使用されるものであることから、前記支持体と前記ワーク保持層との間で剥離が生じることは好ましくない。
【0011】
しかしながら、電子部品が実装された基板を前記ワーク保持層から取り外すときに、前記ワーク保持層と前記支持体との間に生じる剥離を抑制することについて、未だ十分な検討がなされているとは言い難い。
【0012】
そこで、本発明は、電子部品が実装された基板を前記ワーク保持層から取り外すときに、前記ワーク保持層と前記支持体との間に生じる剥離を抑制できるワーク保持部材を提供することを課題とする。
また、本発明は、前記ワーク保持部材上にワークが保持された積層体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者が鋭意検討したところ、支持体と、該支持体上に積層される接着シートと、該接着シート上に積層され、かつ、ワークを保持するワーク保持層と、を備えるワーク保持部材において、前記接着シートを、有機成分として、特定の熱硬化性樹脂を含むものとした上で、前記ワーク保持層を有機多孔質体層とすることにより、電子部品が実装された基板を前記ワーク保持層から取り外すときに、前記ワーク保持層と前記支持体との間に生じる剥離を抑制できることを見出した。
そして、本発明を想到するに至った。
【0014】
すなわち、本発明に係るワーク保持部材は、
支持体と、該支持体上に積層される接着シートと、該接着シート上に積層され、かつ、ワークを保持するワーク保持層と、を備え、
前記接着シートは、有機成分として、熱硬化性樹脂を含み、
前記ワーク保持層は、有機多孔質体層であり、
前記熱硬化性樹脂は、カルボキシ基を有する第1ポリマー、エポキシ基を有する第2ポリマー、及び、エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含み、
前記有機成分の全量に占める前記群から選択される少なくとも1種の質量比率が、20質量%以上である。
【0015】
また、本発明に係る積層体は、
支持体と、該支持体上に積層される接着シートと、該接着シート上に積層され、かつ、ワークを保持するワーク保持層と、を備えるワーク保持部材と、
前記ワーク保持層上に保持されているワークと、を備え、
前記ワーク保持部材が、上記のワーク保持部材である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電子部品が実装された基板を前記ワーク保持層から取り外すときに、前記ワーク保持層と前記支持体との間に生じる剥離を抑制できるワーク保持部材を提供することができる。
また、前記ワーク保持部材上にワークが保持された積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係るワーク保持部材の構成を示す断面図。
【
図2】本発明の一実施形態に係る積層体の構成を示す断面図。
【
図3A】ワーク保持部材のワーク保持層上にワークを保持する様子を示す断面図。
【
図3B】ワーク保持部材のワーク保持層上にワークを保持した状態を示す断面図。
【
図3C】ワーク上に半導体チップを取り付ける様子を示す断面図。
【
図3D】ワーク上に取り付けられた半導体チップを樹脂封止する様子を示す断面図。
【
図3E】樹脂封止された半導体チップが取り付けられたワークをワーク保持部材から取り外す様子を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[ワーク保持部材]
以下、
図1を参照しながら、本発明の一実施形態に係るワーク保持部材について説明する。
なお、以下では、本発明の一実施形態に係るワーク保持部材を、単に、本実施形態に係るワーク保持部材と称することがある。
【0019】
本実施形態に係るワーク保持部材10は、支持体1と、支持体1上に積層される接着シート2と、接着シート2上に積層され、かつ、ワークを保持するワーク保持層3と、を備える。
本実施形態に係るワーク保持部材10では、接着シート2は、有機成分として、熱硬化性樹脂を含む。
本実施形態に係るワーク保持部材10では、ワーク保持層3は、有機多孔質体層である。
本実施形態に係るワーク保持部材10では、前記熱硬化性樹脂は、カルボキシ基を有する第1ポリマー、エポキシ基を有する第2ポリマー、及び、エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含む。
本実施形態に係るワーク保持部材10では、前記有機成分の全量に占める前記群から選択される少なくとも1種の質量比率が、20質量%以上である。
【0020】
本実施形態に係るワーク保持部材10は、例えば、ワークの表面に電子部品を実装するために用いられる。
より具体的には、本実施形態に係るワーク保持部材10は、半導体装置の製造において、回路基板の表面に半導体チップを実装するために用いられる。
また、本実施形態に係るワーク保持部材10は、有機EL装置の製造において、透明基板上にIZO膜やITO膜などの透明電極膜を実装するために用いられる。
【0021】
支持体1は、該支持体1上に積層される接着シート2を支持するとともに、該接着シート2を介して前記接着シート2上に積層されるワーク保持層3を支持する。
【0022】
支持体1は、金属板、ガラス板、及び、シリコン板からなる群から選ばれる1種であることが好ましい。
【0023】
前記金属板は、ステンレス板、アルミニウム板、及び、アルミニウム合金板からなる群から選ばれる1種であることが好ましい。
【0024】
前記ステンレス板としては、オーステナイト系ステンレス板、フェライト系ステンレス板、オーステナイト・フェライト系ステンレス板、マルテンサイト系ステンレス板、析出硬化系ステンレス板が挙げられる。
【0025】
前記オーステナイト系ステンレス板としては、例えば、SUS301、SUS301L、SUS301J1、SUS302B、SUS303、SUS304、SUS304BA、SUS304Cu、SUS304L、SUS304N1、SUS304N2、SUS304LN、SUS304J1、SUS304J2、SUS305、SUS309S、SUS310S、SUS312L、SUS315J1、SUS315J2、SUS316、SUS316L、SUS316LN、SUS316Ti、SUS316J1、SUS316J1L、SUS317、SUS317L、SUS317LN、SUS317J1、SUS317J2、SUS836L、SUS890L、SUS321、SUS347、SUSXM7、SUSXM15J1などが挙げられる。
前記フェライト系ステンレス板としては、例えば、SUS405、SUS410L、SUS429、SUS430、SUS430LX、SUS430J1L、SUS434、SUS436L、SUS436J1L、SUS445J1、SUS445J2、SUS444、SUS447J1、SUSXM27などが挙げられる。
前記オーステナイト・フェライト系ステンレス板としては、例えば、SUS329J1、SUS329J3L、SUS329J4Lなどが挙げられる。
前記マルテンサイト系ステンレス板としては、例えば、SUS403、SUS410、SUS410S、SUS420J1、SUS420J2、SUS440Aなどが挙げられる。
前記析出硬化系ステンレス板としては、例えば、SUS630、SUS631などが挙げられる。
【0026】
耐食性に優れ、かつ、高温環境下での強度低下が小さいことから、上記各種のステンレス板の中でも、前記オーステナイト系ステンレス板を用いることが好ましく、前記オーステナイト系ステンレス板の中でも、SUS304BAを用いることが特に好ましい。
なお、SUS304BAは、冷間圧延加工により得られたSUS304に光輝焼鈍処理を施した後、光輝焼鈍処理後のSUS304に光沢を向上させるための調整圧延を施すことにより得られるものである。
すなわち、SUS304BAは、鏡面に近い光沢を有するものである。
【0027】
前記アルミニウム板は、アルミニウムの純度が99%以上の板である。
前記アルミニウム板としては、A1050、A1080、A1100などが挙げられる。
【0028】
前記アルミニウム合金板は、アルミニウム以外に他の金属を含み、かつ、前記アルミニウムの純度が99%未満の板である。
前記他の金属としては、銅、マンガン、マグネシウム、シリコン、亜鉛などが挙げられる。
前記アルミニウム合金としては、A2017、A3004、A5052、A6061などが挙げられる。
なお、A2017は、前記他の金属として銅を含むものであり、A3004は、前記他の金属としてマンガンを含むものであり、A5052は、前記他の金属としてマグネシウムを含むものであり、A6061は、前記他の金属としてシリコンやマグネシウムを含むものである。
【0029】
前記ガラス板としては、板ガラスやスライドガラスなどが挙げられる。
【0030】
前記シリコン板は、99%以上の純度でケイ素を含む板であることが好ましい。
前記シリコン板が99%以上の純度でケイ素を含むものである場合、該シリコン板は、半導体ウェハであってもよい。
また、前記シリコン板は、ワーク保持層3上に保持されるワークと平面視において同寸法を有するものであってもよい。
なお、前記半導体ウェハは、通常、円盤状に加工される。
【0031】
支持体1の厚さは、0.3mm以上であることが好ましく、0.5mm以上であることがより好ましく、1.0mm以上であることがより好ましい。
また、支持体1の厚さは、5.0mm以下であることが好ましく、4.0mm以下であることがより好ましく、3.0mm以下であることがより好ましく、2.0mm以下であることがより好ましい。
支持体1の厚さは、シックネスケージを用いて測定することができる。
シックネスゲージとしては、例えば、尾崎製作所社製のシックネスゲージJA-257(端子サイズ:上下φ20mm)が挙げられる。
【0032】
ワーク保持層3は、接着シート2と当接している面と反対面側にワークを保持する。
上記したように、ワーク保持層3は、有機多孔質体層である。
ワーク保持層3は、樹脂を含む樹脂組成物によって形成される。
そのため、多孔質化処理を施した樹脂組成物を用いることにより、ワーク保持層3を前記有機多孔質体層とすることができる。
前記有機多孔質体層は、有機発泡体層として構成されていることが好ましい。
前記多孔質化処理として発泡処理を施した樹脂組成物を用いることにより、前記有機多孔質体層を前記有機発泡体層とすることができる。
すなわち、前記樹脂組成物を発泡させた状態でワーク保持層3を構成することにより、ワーク保持層3を前記有機発泡体層とすることができる。
【0033】
ワーク保持層3は、電子部品の表面実装のために単回使用されるものではなく、数十回に亘って繰り返し使用されるものである。
【0034】
ワーク保持層3では、樹脂組成物に含まれる樹脂によって接着性が発現される。
これにより、ワーク保持層3は、接着力によってワークを保持することができる。
また、ワーク保持層3は、接着力によって接着シート2に接着させることができる。
前記ワークは、セラミック基板、シリコン基板、ガラス基板、及び、樹脂フィルム基板からなる群から選択される1種であることが好ましい。
前記樹脂フィルム基板としては、ポリイミドフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムなどが挙げられる。
前記ワークが、半導体装置の製造に用いられる基板である場合には、該基板は、少なくとも一方面に回路が形成された回路基板であってもよい。
また、前記回路には、センサ素子が含まれていてもよい。
【0035】
ワーク保持層3の厚さは、10μm以上3500μm以下であることが好ましい。
ワーク保持層3の厚さは、20μm以上であることがより好ましく、30μm以上であることがさらに好ましく、40μm以上であることがよりさらに好ましく、50μm以上であることがより好ましい。
また、ワーク保持層3の厚さは、500μm以下であることが好ましく、450μm以下であることがより好ましく、400μm以下であることがより好ましく、350μm以下であることがより好ましく、250μm以下であることがより好ましい。
ワーク保持層3の厚さは、測定単位の直径(φ)が20mmである1/100ダイヤルゲージを用いて測定することができる。
【0036】
上記したように、ワーク保持層3は、樹脂組成物によって構成されている。
前記樹脂組成物は、シリコーン樹脂またはフッ素樹脂を含んでいることが好ましい。
ワーク保持層3は、上記したように、有機発泡体層として構成されていることが好ましい。
ワーク保持層3が有機発泡体層として構成されていることにより、ワーク保持層3はクッション性に優れるものとなる。
前記有機発泡体層は気泡を有する。
該気泡は種々の形状を有していてもよい。前記気泡の形状は、真球状であってもよいし、部分的にひずみのある略球状であってもよい。
また、前記気泡は、大きくひずんで不定形状となっていてもよい。
要すれば、前記気泡は、内部に空気などの気体を含んでいればどのような形状であってもよい。
【0037】
前記樹脂組成物がフッ素樹脂を含む樹脂組成物(以下、フッ素樹脂含有組成物ともいう)である場合には、フッ素樹脂含有組成物に、フッ素樹脂に加えて各種発泡剤を加えることにより、前記樹脂組成物を発泡させた状態とすることができる。
前記フッ素樹脂含有組成物に含まれるフッ素樹脂としては、例えば、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体(ETFE)などが挙げられる。
各種発泡剤としては、フロンガス、不活性ガス(アルゴンなど)、二酸化炭素、窒素、炭化水素(プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサンなど)が挙げられる。
また、前記フッ素樹脂含有組成物は、前記フッ素樹脂及び各種発泡剤に加えて、成核剤を含んでいてもよい。
前記成核剤としては、窒化ホウ素(BN)、二酸化ケイ素、二酸化チタン、アルミナ、マグネシアなどが挙げられる。
【0038】
前記樹脂組成物がシリコーン樹脂を含む樹脂組成物(以下、シリコーン樹脂含有組成物ともいう)である場合には、シリコーン樹脂含有組成物を熱硬化することにより発泡させて、ワーク保持層3を有機発泡体層として構成してもよい。
すなわち、ワーク保持層3を有機発泡体層として構成するに際しては、シリコーン樹脂含有組成物として熱硬化により発泡するものを用いてもよい。
このようなシリコーン樹脂含有組成物としては、少なくとも、以下のような(A)成分~(F)成分を以下の質量比率で含有するものが挙げられる。
(A)一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン100質量部、
(B)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン((A)成分中のアルケニル基1モルに対して(B)成分中のケイ素原子結合水素原子が0.4モル以上20モル以下となる量)、
(C)水と無機系増粘剤からなる混合物100質量部以上1000質量部以下
(D)(D-1)HLBの値が3以上であるノニオン系界面活性剤、及び、(D-2)HLBの値が3未満であるノニオン系界面活性剤0.1質量部以上15質量部以下(ただし、(D-2)成分に対する(D-1)成分の質量比が少なくとも1)
(E)ヒドロキシシリル化反応触媒、及び、
(F)硬化遅延剤0.001質量部以上5質量部以下。
【0039】
(A)成分は、本シリコーン樹脂含有組成物の主剤である。
(A)成分中のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基が挙げられ、好ましくは、ビニル基である。
また、(A)成分中のアルケニル基以外のケイ素原子結合有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などのアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基などのアリール基;ベンジル基、フェネチル基などのアラルキル基;3,3,3-トリフルオロプロピル基などのハロゲン置換アルキル基などが挙げられ、好ましくは、メチル基である。
【0040】
(A)成分は、具体的には、ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体が例示され、好ましくは、主鎖が実質的に直鎖状であるジオルガノポリシロキサンである。
【0041】
(B)成分は、本シリコーン樹脂含有組成物の架橋剤である。
(B)成分中のケイ素原子結合水素原子の結合位置は限定されず、分子鎖末端および/ または分子鎖側鎖が例示される。(B)成分中の水素原子以外のケイ素原子結合有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;3,3,3-トリフロロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基等が例示され、好ましくは、メチル基である。
【0042】
このような(B)成分としては、ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、(CH3)3SiO1/2で示されるシロキサン単位とH(CH3)2SiO1/2で示されるシロキサン単位とSiO4/2で示されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサンが例示され、好ましくは、直鎖状のオルガノポリシロキサンである。
【0043】
(B)成分の含有量は、(A)成分中のアルケニル基1モルに対して、(B)成分中のケイ素原子結合水素原子が0.4モル以上20モル以下の範囲内となる量であり、1.5モル以上20モル以下の範囲内となる量であることが好ましく、1.5モル以上10モル以下の範囲内となる量であることがより好ましい。
これは、(B)成分中のケイ素原子結合水素のモル数が上記範囲内であると、本シリコーン樹脂含有組成物で構成されたワーク保持層3の圧縮永久歪が改善されるからである。
【0044】
(C)成分は、本シリコーン樹脂含有組成物を架橋して得られるシリコーン架橋体から(C)成分中の水を除去することにより、得られるワーク保持層3をシリコーンスポンジとするための成分である。(A)成分中に(C)成分が安定して分散することから、(C)成分中の水はイオン交換水であることが好ましい。
本シリコーン樹脂含有組成物では、(C)成分中の水が除去されることにより架橋されて硬化された後において有機発泡体が形成される。
そのため、前記有機発泡体においては、水が除去されるときの経路が連通された構造となっている。
すなわち、本シリコーン樹脂含有組成物によって形成される前記有機発泡体は、連通気泡構造を有するものとなる。
【0045】
(C)成分中の無機系増粘剤は、水の粘度を高め、(A)成分中に(C)成分が容易に分散し、(C)成分の分散状態を安定させるために配合される。
この無機増粘剤としては、天然または合成のものがあり、ベントナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、サポナイト、ソーコナイト、バイデライトおよびノントロナイト等の天然または合成のスメクタイトクレー;ケイ酸アルミニウムマグネシウム;および、これらとカルボキシビニルポリマーなどの水溶性有機ポリマーとの複合品が例示され、好ましくは、ベントナイトやモンモリロナイトなどのスメクタイトクレーである。
このような、スメクタイトクレーとしては、例えば、水熱合成品であるスメクトンSA(クニミネ工業社製)、天然精製品であるベンゲル(ホージュン社製)が入手可能である。これらのスメクタイトクレーのpHは前記シリコーンスポンジの耐熱性を維持する点から5.0以上9.0以下の範囲内であることが好ましい。また、(C)成分中の無機系増粘剤の含有量は、水100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下の範囲内であることが好ましく、0.5質量部以上5質量部以下の範囲内であることがより好ましい。
【0046】
(C)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して100質量部以上1000質量部以下の範囲内であり、100質量部以上800質量部以下の範囲内であることが好ましく、100質量部以上500質量部以下の範囲であることがより好ましく、200質量部以上500質量部以下の範囲内であることがさらに好ましく、200質量部以上350質量部以下の範囲内であることが特に好ましい。これは、(C)成分の含有量が上記範囲の下限以上であると、得られるワーク保持層3を低密度とすることができるからであり、上記範囲の上限以下であると、得られるワーク保持層3を均一で微細な連続気泡構造を有するものとすることができるからである。
【0047】
(D)成分の界面活性剤は、(D-1)HLBの値が3以上であるノニオン系界面活性剤および(D-2)HLBの値が3未満であるノニオン系界面活性剤からなる。
(D)成分の界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、スクロース脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリプロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミドが例示される。
【0048】
(D)成分は、(D-1)成分と(D-2)成分からなり、(D-2)成分に対する(D-1)成分の質量比が1以上であり、5以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましく、10以上であることがさらに好ましく、15以上であることが特に好ましい。
また、(D-2)成分に対する(D-1)成分の質量比は、100以下であることが好ましく、80以下であることがより好ましく、70以下であることがさらに好ましく、60以下であることが特に好ましく、50以下であることがより特に好ましい。
これは、この質量比が上記下限より大きくなれば、ワーク保持層3を均一で微細な連続気泡構造を有する低密度のものとすることができ、上記上限より小さくなれば、(A)成分と(B)成分中に(C)成分を安定性良く分散することができ、結果として、ワーク保持層3を均一で微細な連続気泡構造を有するものとすることができるからである。
【0049】
(D)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対し、0.1質量部以上15質量部以下の範囲内であり、0.2質量部以上3質量部以下の範囲内であることが好ましい。
これは、(D)成分の含有量が上記範囲の下限以上であると、ワーク保持層3を均一で微細な連続気泡構造を有するものとすることができ、上記範囲の上限以下であると、ワーク保持層3を耐熱性に優れるものとすることができるからである。
【0050】
(E)成分は、本シリコーン樹脂含有組成物においてヒドロシリル化反応を促進するためのヒドロシリル化反応触媒であり、例えば、白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒が挙げられる。
これらの各種触媒の中でも、白金系触媒を用いることが好ましい。
このような(E)成分としては、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸とオレフィン類、ビニルシロキサン又はアセチレン化合物との配位化合物、白金のオレフィン類、ビニルシロキサン又はアセチレン化合物との配位化合物、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウムが挙げられる。
【0051】
(E)成分の含有量は、本シリコーン樹脂含有樹成物を架橋させるに十分な量である。
具体的には、(A)成分および(B)成分の合計量に対して、(E)成分中の触媒金属が質量換算で、0.01ppm以上500ppm以下の範囲内となる量であることが好ましく、0.1ppm以上100ppm以下の範囲内となる量であることがより好ましい。
【0052】
硬化速度や作業可使時間を調整するため、本シリコーン樹脂含有樹組成物は、(F)硬化遅延剤を含有してもいてもよい。
このような(F)成分としては、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、3-フェニル-1-ブチン-3-オール、1-エチニル-1-シクロヘキサノール等のアルキンアルコールが例示される。(F)成分の含有量は、本シリコーン樹脂含有組成物の使用方法や成形方法に応じて適宜選択されるが、一般的には、(A)成分100質量部に対して0.001質量部以上5質量部以下の範囲内である。
【0053】
得られるワーク保持層3の強度を向上させる観点から、本シリコーン樹脂含有組成物は、さらに(G)補強性シリカ微粉末を含有していてもよい。
このような(G)成分としては、BET比表面積が、50m2/g以上350m2/g以下であるシリカ微粉末が好ましく、80m2/g以上250m2/g以下であるシリカ微粉末がより好ましい。
このようなシリカ微粉末としては、ヒュームドシリカ、沈降シリカが挙げられる。
また、これらのシリカ微粉末は、オルガノシラン等で表面処理されていてもよい。
【0054】
(G)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましい。
また、(G)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましい。
【0055】
本シリコーン樹脂含有組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、カーボンブラックやベンガラ等の顔料を含有していてもよい。
【0056】
本シリコーン樹脂含有組成物は、上記各成分あるいはこれらに必要に応じて各種添加剤を配合した組成物を公知の混練手段により均一に混合することにより容易に製造することができる。
ここで使用するミキサーとしてはホモミキサー、パドルミキサー、ホモディスパー、コロイドミル、真空混合攪拌ミキサー、自転公転ミキサー等が例示されるが、(C)成分及び(D)成分を(A)成分に十分に分散させることができるものであれば特に限定されるものではない。
【0057】
なお、上で説明したフッ素樹脂含有組成物の例と同様にして、シリコーン樹脂含有組成物を用いてワーク保持層3を有機発泡体層として構成してもよい。
すなわち、シリコーン樹脂含有組成物として、シリコーン樹脂に加えて、各種発泡剤を含むものを用いて、ワーク保持層3を有機発泡体層として構成してもよい。
【0058】
有機発泡体層であるワーク保持層3は、シリコーン発泡体層であることが好ましい。
【0059】
前記シリコーン発泡体層の厚さは、1000μm以下であることが好ましく、800μm以下であることがより好ましく、700μm以下であることがより好ましく、500μm以下であることが好ましく、250μm以下であることがより好ましい。
また、前記シリコーン発泡体層の厚さは、20μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましく、40μm以上であることがより好ましく、50μm以上であることがより好ましい。
前記シリコーン発泡体層が上記のような範囲の厚さを有することにより、前記シリコーン発泡体層は、より十分なクッション性を発揮することができる。
さらに、前記シリコーン発泡体層の厚さは、50μm以上500μm以下であることがより一層好ましく、50μm以上250μm以下であることが特に好ましい。
前記シリコーン発泡体層が上記のような範囲の厚さを有することにより、前記シリコーン発泡体層は、より十分なクッション性を発揮できることに加えて、厚さのバラツキが大きくなることが抑制されたものとなる。
そして、厚さのバラツキが抑制された前記シリコーン発泡体層は、その表面に傾きが生じないようにワークを保持することができる。
そのため、このようなシリコーン発泡体層を用いて、後述するように、ワーク4の表面に取り付けられた半導体チップSCを封止樹脂ERにて樹脂封止して封止体を得る場合には、該封止体に厚さにバラツキが生じることを小さくすることができる。
【0060】
前記有機発泡体層の見掛け密度は、0.05g/cm3以上0.90g/cm3以下であることが好ましい。
前記有機発泡体層の見掛け密度は、0.10g/cm3以上であることがより好ましく、0.15g/cm3以上であることがさらに好ましい。
また、前記有機発泡体層の見掛け密度は、0.85g/cm3以下であることがより好ましく、0.80g/cm3以下であることがさらに好ましい。
【0061】
前記有機発泡体層の見掛け密度は、以下の手順にしたがって測定することができる。
(1)100mm×100mmの打抜き刃型にて有機発泡体層として構成されたワーク保持層3を平面視矩形状に打ち抜いて、試験体を得る。
(2)前記試験体の平面寸法を測定するとともに、測定端子の直径(φ)が20mmである1/100ダイヤルゲージを用いて、前記試験体の厚さを測定する。
(3)前記試験体の平面寸法と前記試験体の厚さとから、前記試験体の体積を算出する。
(4)最小目盛りが0.01g以上の上皿天秤を用いて、前記試験体の質量を測定する。
(5)前記試験体の体積と前記試験体の質量とから、前記試験体の見掛け密度を算出し、この算出値を、前記有機発泡体層の見掛け密度とする。
【0062】
前記有機発泡体層の平均気泡径は、1μm以上100μm以下であることが好ましい。
前記有機発泡体層の平均気泡径は、2μm以上であることがより好ましく、3μm以上であることがより好ましい。
また、前記有機発泡体層の平均気泡径は、80μm以下であることがより好ましく、70μm以下であることがさらに好ましい。
【0063】
前記有機発泡体層の平均気泡径は、低真空走査電子顕微鏡(「S-3400N型走査電子顕微鏡」、日立ハイテクサイエンスシステムズ社製)を用いて撮像した拡大画像を画像解析ソフト(商品名「Win ROOF」、三谷商事社製)にて画像解析することにより求めることができる。
なお、取り込んだ拡大画像にて確認される気泡数は100個程度である。
また、前記有機発泡体層の断面は、カミソリ刃を用いて、TD方向(樹脂流れ方向に直交する方向)、かつ、前記有機発泡体層の主面に対して垂直方向(厚さ方向)に前記有機発泡体層を切断して得られる断面である。
さらに、画像解析では、各気泡のTD方向の長さを求める。
【0064】
前記有機発泡体層は、連続気泡構造を有していることが好ましい。
連続気泡構造は、例えば、上で説明したような、シリコーン樹脂含有組成物を用いて形成することができる。
連続気泡構造とは、前記有機発泡体層において、隣接する気泡どうしが繋がっている構造を意味する。
前記有機発泡体層が連続気泡構造を有していることにより、有機発泡体層たるワーク保持層3の一方面を第1の被着体たる接着シート2に被着させたり、他方面を第2の被着体たるワーク(基板など)に被着させたりするときに、前記第1の被着体の被着面と有機発泡体層たるワーク保持層3の一方面との間、及び、前記第2の被着体の被着面と有機発泡体層たるワーク保持層3の他方面との間に気泡が噛み込むことを抑制できる。
そのため、前記第1の被着体及び前記第2の被着体を、有機発泡体層たるワーク保持層3に好適に保持させることができる。
また、前記有機発泡体層が連続気泡構造を備えていることにより、電子部品装置の製造において、電子部品をワークたる基板に実装した後に、有機発泡体層たるワーク保持層3から、前記基板を糊残りなく剥がし易くなる。
さらに、有機発泡体層たるワーク保持層3が汚れたとしても、水洗いすることでワーク保持層3の保持性(吸着性)を回復させることができ、ワーク保持層3の繰り返し使用性を向上させることができる。
また、前記有機発泡体層が連続気泡構造を有していることにより、前記有機発泡体層の厚みを薄くしたとしても、上記の各効果を十分に発現させることができる。
【0065】
前記有機発泡体層が連続気泡構造を有する場合、連続気泡率は、90%以上であることが好ましく、90%以上100%以下であることがより好ましく、92%以上100%以下であることがさらに好ましく、95%以上100%以下であることがよりさらに好ましく、99%以上100%以下であることが特に好ましく、実質的に100%であることが最適である。
連続気泡率が、上記数値範囲内であることにより、優れた気泡抜け性を発現でき、被着体たるワーク(基板など)や接着シート2などの被着面と前記有機発泡体層の表面との間に気泡が噛み込むことを抑制できる。
また、前記有機発泡体層から被着体たるワーク(基板など)を糊残りなく剥がし易くなる。
【0066】
前記有機発泡体層は、全気泡の90%以上の気泡径が80μm以下であることが好ましく、全気泡の92%以上の気泡径が80μm以下であることがより好ましく、全気泡の95%以上の気泡径が80μm以下であることがさらに好ましく、全気泡の97%以上の気泡径が80μm以下であることがよりさらに好ましく、全セルの実質的に100%の気泡径が80μm以下であることが最適である。
全気泡において気泡径80μmの気泡が上記数値範囲であることにより、前記有機発泡体層において、より優れた気抜け性を発現でき、被着体たるワーク(基板など)や接着シート2などの被着面と前記有機発泡体層の表面との間に気泡が噛み込むことをより一層抑制できる。
また、前記有機発泡体層から被着体たるワーク(基板など)をより一層糊残りなく剥がし易くなる。
【0067】
接着シート2は、上記したように、有機成分として、熱硬化性樹脂を含む。
すなわち、接着シート2は、前記熱硬化性樹脂を含むことにより熱硬化性を有する。
なお、本明細書において、前記熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂などのような一般的な熱硬化性樹脂に加えて、熱硬化性官能基を有するポリマーも含む概念である。
接着シート2中において前記熱硬化性樹脂を熱硬化させることにより、接着シート2は、被着体たる支持体1及びワーク保持層3に対して良好なる接着性を発揮することができる。
これにより、電子部品が実装された基板をワーク保持層3から取り外すときに、ワーク保持層3と支持体1との間に剥離が生じることを抑制することができる。
また、接着シート2においては、前記熱硬化性樹脂は、カルボキシ基を有する第1ポリマー、エポキシ基を有する第2ポリマー、及び、エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含む。
さらに、接着シート2においては、前記有機成分の全量に占める前記群から選択される少なくとも1種の質量比率が、20質量%以上である。
接着シート2が、上記のごとき熱硬化性樹脂を上記の質量比率で含むことにより、接着シート2は、被着体たる支持体1及びワーク保持層3に対して特に良好なる接着性を発揮することができる。
【0068】
前記熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂などが挙げられる。
また、前記熱硬化性樹脂としては、例えば、熱硬化性官能基として、エポキシ基(グリシジル基)、カルボキシ基、ヒドロキシ基、イソシアネート基などを有するポリマーも挙げられる。
なお、熱硬化性官能基を有するモノマーを用いることにより、上記のような熱硬化性官能基を有するポリマーを得ることができる。
例えば、エポキシ基(グリシジル基)を有するモノマーを用いることにより、前記熱硬化性官能基としてエポキシ基(グリシジル基)を有するポリマーを得ることができ、カルボキシ基を有するモノマーを用いることにより、前記熱硬化性官能基としてカルボキシ基を有するポリマーを得ることができる。
【0069】
前記熱硬化性官能基を有するポリマーは、熱硬化性官能基を有するアクリル樹脂であること、すなわち、熱硬化性官能基含有アクリル樹脂であることが好ましい。
前記熱硬化性官能基含有アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルに由来するモノマー単位を質量割合で最も多いモノマー単位として含むポリマーであることが好ましい。
前記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、及び、(メタ)アクリル酸アリールエステルなどが挙げられる。
なお、(メタ)アクリル酸は、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の少なくとも一方を意味する。
【0070】
本実施形態に係るワーク保持部材10においては、接着シート2は、上記したように、前記熱硬化性樹脂として、カルボキシ基を有する第1ポリマー、エポキシ基(グリシジル基)を有する第2ポリマー、及び、エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも一種を含んでいる。すなわち、接着シート2は、前記第1ポリマー、前記第2ポリマー、及びエポキシ樹脂からなる必須成分を含む。
本実施形態に係るワーク保持部材10においては、接着シート2は、上記したように、前記有機成分の全量に占める前記群から選択される少なくとも1種の質量比率が、20質量%以上である。すなわち、接着シート2では、前記必須成分の質量比率が、20質量%以上である。
【0071】
接着シート2においては、前記質量比率は、30質量%以上であってもよいし、40質量%以上であってもよいし、50質量%以上であってもよい。
また、前記質量比率は、99質量%以下であってもよいし、90質量%以下であってもよいし、80質量%以下であってもよいし、70質量%以下であってもよい。
前記質量比率が上記のような範囲であることにより、接着シート2中に、カルボキシ基及びエポキシ基の少なくとも一方を好適な量で存在させることができる。
そのため、このような接着シート2は、有機発泡体層たるワーク保持層3及び支持体1に対して、特に良好なる接着性を発揮することができる。
なお、ワーク保持層及び支持体1に対する接着シート2の接着メカニズムは、後述する通りである。
【0072】
前記有機成分の全量に占める前記第1ポリマーの質量比率は1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。
また、前記有機成分の全量に占める前記第1ポリマーの質量比率は80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることがより好ましい。
前記第1ポリマーの質量比率が上記範囲内であることにより、接着シート2は、有機発泡体層たるワーク保持層3に対してより十分な接着性を発揮することができる。
【0073】
前記有機成分の全量に占める前記第2ポリマー及び前記エポキシ樹脂の少なくとも一方の質量比率は1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。
また、前記有機成分の全量に占める前記第2ポリマー及び前記エポキシ樹脂の少なくとも一方の質量比率は、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることがより好ましい。
前記第ポリマー及び前記エポキシ樹脂の少なくとも一方の質量比率が上記範囲内であることにより、接着シート2は、支持体1に対してより十分な接着性を発揮することができる。
【0074】
前記第1ポリマーの酸価は、1mgKOH/g以上であることが好ましく、3mgKOH/g以上であることがより好ましく、5mgKOH/g以上であることがより好ましい。
また、前記第1ポリマーの酸価は、200mgKOH/g以下であることが好ましく、100mgKOH/g以下であることがより好ましく、80mgKOH/g以下であることがより好ましい。
前記第1ポリマーの酸価は、JIS K 2501:2003により求めることができる。
【0075】
前記第2ポリマーのエポキシ当量は、1000g/eq以上であることが好ましく、2000g/eq以上であることがより好ましく、3000g/eq以上であることがより好ましい。
また、前記第2ポリマーのエポキシ当量は、7000g/以下であることが好ましく、6000g/eq以下であることがより好ましく、5000g/eq以下であることがより好ましい。
前記エポキシ当量は、JIS K 7236:2001により求めることができる。
【0076】
なお、前記熱硬化性官能基を有するポリマーが前記熱硬化性官能基含有アルキル樹脂である場合、カルボキシ基を有する第1ポリマーは、カルボキシ基含有アクリル樹脂を意味し、エポキシ基(グリシジル基)を有する第2ポリマーは、エポキシ基(グリシジル基)含有アクリル樹脂を意味する。
【0077】
接着シート2が前記熱硬化性官能基含有アクリル樹脂を含む場合、該熱硬化性官能基含有アクリル樹脂に加えて、さらに、硬化剤を含んでいることが好ましい。
このような硬化剤としては、例えば、ポリフェノール系化合物が挙げられる。
【0078】
前記エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂などが挙げられる。
これらの中でも、フェノール樹脂などの硬化剤との反応性に富み、かつ、耐熱性にも優れる観点から、ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0079】
前記エポキシ樹脂のエポキシ当量は、30g/eq以上であることが好ましく、40g/eq以上であることがより好ましく、50g/eq以上であることがより好ましい。
また、前記エポキシ樹脂のエポキシ当量は、500g/eq以下であることが好ましく、400g/eq以下であることがより好ましく、300g/eq以下であることがより好ましい。
前記エポキシ当量は、JIS K 7236:2001により求めることができる。
【0080】
接着シート2が前記エポキシ樹脂を含む場合、接着シート2は、前記熱硬化性樹脂として、前記エポキシ樹脂に加えて、前記フェノール樹脂を含んでいてもよい。前記フェノール樹脂は、前記エポキシ樹脂の硬化剤として作用してもよい。
【0081】
エポキシ樹脂の硬化剤として作用し得るフェノール樹脂としては、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、ポリパラオキシスチレンなどが挙げられる。
前記ノボラック型フェノール樹脂としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert-ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂などが挙げられる。
前記フェノール樹脂は、一種のみが用いられてもよいし、二種以上が組み合わされて用いられてもよい。
接着シート2中において前記エポキシ樹脂の硬化反応を十分に進行させることにより、被着体たる支持体1及びワーク保持層3に対する接着シート2の接着性を十分に確保する観点から、前記フェノール樹脂としては、前記ノボラック型フェノール樹脂を用いることが好ましく、前記ノボラック型フェノール樹脂の中でも、前記フェノールノボラック樹脂及び前記フェノールアラルキル樹脂の少なくとも一方を用いることが好ましい。
【0082】
接着シート2が前記エポキシ樹脂と該エポキシ樹脂の硬化剤としての前記フェノール樹脂とを含む場合、前記フェノール樹脂は、前記エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量当たり、当該フェノール樹脂中の水酸基が0.5当量以上2.0当量以下となる量で含まれていることが好ましく、0.7当量以上1.5当量以下となる量で含まれていることがより好ましい。
これにより、接着シート2中において、前記エポキシ樹脂の硬化反応を好適に進行させることができる。
【0083】
ここで、支持体1は、上で説明したように、通常、金属板、ガラス板、及び、シリコン板などであり、これらの表面(被着面)には、水酸基(-OH)などの表面官能基か存在している。
そして、水酸基などの表面官能基は、通常、エポキシ基と高い親和性を有する。
そのため、接着シート2が、上記のように、エポキシ基を有する第2ポリマー及びエポキシ樹脂の少なくとも一方を含んでいる場合には、前記第2ポリマーや前記エポキシ樹脂が有するエポキシ基と支持体1の被着面が有する水酸基などの表面官能基との親和性によって、接着シート2は支持体1に対してより強固に接着されるようになる。
また、有機発泡体層たるワーク保持層3は、通常、上記したように、炭素原子を有するシリコーン樹脂や炭素原子を有するフッ素樹脂を含む樹脂組成物によって構成されていて、ワーク保持層3の表面(被着面)においては、前記炭素原子の一部が酸化されてカルボキシ基が形成されている。
そして、前記第2ポリマーや前記エポキシ樹脂が有するエポキシ基は、前記有機発泡体層が有するカルボキシ基とも親和性を示すようになる。
そのため、接着シート2は有機発泡体層たるワーク保持層3ともより強固に接着されるようになる。
また、前記カルボキシ基は、エポキシ基の開環反応を進行させた上で、開環されたエポキシ基と結合されるという性質を有している。
そのため、接着シート2が、上記のように、カルボキシ基を有する第1ポリマーと、エポキシ基を有する第2ポリマー及びエポキシ樹脂の少なくとも一方とを含んでいる場合には、前記第2ポリマーや前記エポキシ樹脂が有するエポキシ基の一部は、ワーク保持層3の表面に存在するカルボキシ基によって開環された上でワーク保持層3の表面近傍において前記カルボキシ基と結合される。
また、前記第2ポリマーや前記エポキシ樹脂が有するエポキシ基の別の一部は、接着シート2中に存在する前記第1ポリマーのカルボキシ基によって開環された上で、接着シート2中において前記カルボキシ基と結合されるようになる。
このようにして、ワーク保持層3の表面近傍に存在するカルボキシ基と開環された一部のエポキシ基との結合構造と、前記第1ポリマーのカルボキシ基と開環された別の一部のエポキシ基との結合構造とが存在するようになるので、接着シート2はワーク保持層3に対してより一層強固に接着されるようになる。
したがって、接着シート2が、前記熱硬化性樹脂として、カルボキシ基を有する第1ポリマーと、エポキシ基を有する第2ポリマーと、エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含んでいる場合には、電子部品が実装された基板をワーク保持層3から取り外すときに、ワーク保持層3と支持体1との間に生じる剥離を特に良好に抑制できるようになる。
【0084】
なお、有機発泡体層たるワーク保持層3の表面(被着面)にコロナ放電処理を施して、前記表面(被着面)において炭素原子を強制酸化させることにより、前記表面(被着面)により十分にカルボキシ基を存在させることができる。
これにより、接着シート2をワーク保持層3により十分に接着させることができる。
そして、コロナ放電による強制酸化をより十分に実施させ得る観点から、前記有機発泡体層は、シリコーン発泡体層であることが好ましい。
【0085】
前記第1ポリマーは、カルボキシ基に加えて、ヒドロキシ基、イソシアネート基などの他の熱硬化性官能基を備えていてもよい。
前記熱硬化性官能基としてヒドロキシ基を有するモノマーを用いることにより、前記第1ポリマーに前記熱硬化性官能基としてヒドロキシ基を備えさせることができ、また、前記熱硬化性官能基としてイソシアネート基を有するモノマーを用いることにより、前記第1ポリマーに前記熱硬化性官能基としてイソシアネート基を備えさせることができる。
【0086】
前記第2ポリマーは、エポキシ基(グリシジル基)に加えて、ヒドロキシ基、イソシアネート基などの他の熱硬化性官能基を備えていてもよい。
前記ヒドロキシ基及び前記イソシアネート基は、上記した、前記第1ポリマーの場合と同様にして、前記第2ポリマーに備えさせることができる。
【0087】
接着シート2は、前記有機成分として、前記熱硬化性樹脂に加えて、熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、ポリブタジエン樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアミド6やポリアミド6,6などのポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、PETやPBTなどの飽和ポリエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。
前記熱可塑性樹脂は、一種のみが用いられてもよいし、二種以上が組み合わされて用いられてもよい。
前記熱可塑性樹脂としては、前記アクリル樹脂を用いることが好ましい。
前記アクリル樹脂はイオン性不純物が少なく、かつ、耐熱性が高いという特性を有することから、前記熱可塑性樹脂として前記アクリル樹脂を用いることにより、被着体たる支持体1及びワーク保持層3に対する接着シート2の接着性を十分に確保することができる。
なお、熱可塑性樹脂としてのアクリル樹脂は、カルボキシ基やエポキシ基などの官能基を有さないアクリル樹脂を意味する。
【0088】
前記有機成分の全量に占める前記熱可塑性樹脂の質量比率は20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがより好ましい。
【0089】
前記アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルに由来するモノマー単位を質量割合で最も多いモノマー単位として含むポリマーであることが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、及び、(メタ)アクリル酸アリールエステルなどが挙げられる。
前記アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な他の成分に由来するモノマー単位を含んでいてもよい。
前記他の成分としては、酸無水物モノマー、ヒドロキシ基含有モノマー、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、アクリルアミド、アクリルニトリルなどの官能基含有モノマーや、各種の多官能性モノマーなどが挙げられる。
【0090】
接着シート2は、無機成分として無機フィラーを含んでいてもよい。
無機フィラーを含むことにより、熱伝導性及び弾性率などの各種物性を調整することができる。
前記無機フィラーとしては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ホウ酸アルミニウムウィスカ、窒化ホウ素、結晶質シリカ、非晶質シリカの他、アルミニウム、金、銀、銅、ニッケルなどの金属単体、合金、アモルファスカーボンブラック、グラファイトなどが挙げられる。
前記無機フィラーは、球状、針状、フレーク状などの各種形状を有していてもよい。
前記無機フィラーは、一種のみが用いられてもよいし、二種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0091】
接着シート2が前記無機フィラーを含む場合、前記無機フィラーの含有割合は、接着シート2の総質量に対して、30質量%以上であってもよいし、40質量%以上であってもよいし、50質量%以上であってもよい。
また、前記無機フィラーの含有割合は、接着シート2の総質量に対して、80質量%以下であってもよいし、70質量%以下であってもよいし、60質量%以下であってもよい。
【0092】
接着シート2は、必要に応じて、上記以外の他の成分を含んでいてもよい。
上記以外の他の成分としては、硬化触媒、難燃剤、シランカップリング剤、イオントラップ剤、染料などが挙げられる。
前記難燃剤としては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、臭素化エポキシ樹脂などが挙げられる。
前記シランカップリング剤としては、例えば、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
前記イオントラップ剤としては、例えば、ハイドロタルサイト類、水酸化ビスマス、ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
前記他の成分は、一種のみが用いられてもよいし、二種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0093】
接着シート2は、1μm以上200μm以下の厚みを有することが好ましく、3μm以上150μm以下の厚みを有することがより好ましい。
接着シート2の厚みは、例えば、ダイアルゲージ(PEACOCK社製、型式R-205)を用いて、ランダムに選んだ5点の厚みを測定し、これらの厚みを算術平均することにより求めることができる。
【0094】
[積層体]
本発明の一実施形態に係る積層体20は、
図2に示したように、支持体1’と、支持体1’上に積層される接着シート2’と、接着シート2’上に積層され、かつ、ワーク4を保持するワーク保持層3’と、を備えるワーク保持部材10’と、ワーク保持層3’上に保持されているワーク4と、を備える。
本実施形態に係る積層体20では、ワーク保持部材10’は、先に説明した、本実施形態に係るワーク保持部材10として構成されている。
すなわち、支持体1’、接着シート2’、及び、ワーク保持層3’も、先に説明した、支持体1、接着シート2、及び、ワーク保持層3と同様に構成されている。
また、ワーク4は、先に説明したように、セラミック基板、シリコン基板、ガラス基板、及び、樹脂フィルム基板からなる群から選択される1種であることが好ましい。
前記樹脂フィルム基板としては、ポリイミドフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムなどが挙げられる。
本実施形態に係る積層体20は、上記のように構成されているので、電子部品が実装されたワーク4(基板)をワーク保持層3’から取り外すときに、ワーク保持層3’と支持体1’との間に生じる剥離を特に良好に抑制することができる。
【0095】
[電子部品装置の製造方法]
本発明の一実施形態に係る電子部品の製造方法は、
支持体と、該支持体上に積層された接着シートと、該接着シート上に積層され、かつ、ワークを保持するワーク保持層と、を備えるワーク保持部材の前記ワーク保持層上にワークを保持させるワーク保持工程S1と、
前記ワーク保持層上に保持させた前記ワークの一表面上に電子部品を実装する電子部品実装工程S2と、
前記電子部品を実装させた前記ワークを前記ワーク保持部材の前記ワーク保持層から取り外すワーク取り外し工程S3と、を有する。
また、本実施形態に係る電子部品の製造方法では、前記ワーク保持部材は、先に説明した、本実施形態に係るワーク保持部材10として構成されている。
【0096】
以下では、電子部品装置の製造方法として半導体装置の製造方法を例に挙げて、
図3A~3Eを参照しながら説明する。
なお、以下では、ワーク4上に半導体チップSCを取り付けた後、封止樹脂によって樹脂封止するまでを電子部品実装工程S2として説明する。
【0097】
(ワーク保持工程S1)
図3A及び3Bに示したように、ワーク保持工程S1では、ワーク保持部材10のワーク保持層3上にワーク4たる基板を保持させる。
すなわち、先に説明したような積層体20を形成する。
半導体装置の製造方法においては、前記基板は、少なくとも一表面に回路が形成された配線回路基板であることが好ましい。
なお、ワーク保持部材10は、ワーク保持層3上にワーク4たる基板を保持させる前に、支持体1上に接着シート2を積層させた後、該接着シート2上にワーク保持層3を積層させることにより得ることができる。
支持体1への接着シート2の積層は、支持体1にフィルム状に形成された接着シート2を積層させることにより実施することができる。
あるいは、支持体1に接着シート2の原料となる樹脂組成物を塗布して乾燥させて、支持体1上にフィルム体の接着層を形成することにより実施することができる。
なお、支持体1に接着シート2の原料となる樹脂組成物を塗布して乾燥させる場合においては、該樹脂組成物を支持体1に塗布する前に、支持体1にプライマー液を塗布しておいてもよい。
すなわち、支持体1にプライマー液を塗布した後、さらに前記樹脂組成物を塗布して乾燥させることにより、支持体1上に接着シート2を形成してもよい。
前記プライマー液としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂などの各種公知の樹脂を含む樹脂組成物を用いることができる。
また、接着シート2へのワーク保持層3の積層も、上で説明した支持体1への接着シート2の積層と同様にして実施することができる。
上記のようにして、支持体1、接着シート2、及び、ワーク保持層3をこの順に積層させた後、接着シート2に含まれる熱硬化性樹脂を熱硬化させることにより、接着シート2に支持体1及びワーク保持層3を接着させる。
このようにして、接着シート2に支持体1及びワーク保持層3を十分に固定する。
以上のようにして、ワーク保持工程S1を実施する。
【0098】
(電子部品実装工程S2)
半導体装置の製造方法における電子部品実装工程S2では、まず、
図3Cに示したように、ワーク4たる基板上に半導体チップSCを取り付ける。
本実施形態に係る電子部品の製造方法では、半導体チップSCは、半導体チップ本体CBと、該半導体チップ本体CBの一表面に配されるバンプ電極BEとを備えている。
また、ワーク4たる基板の一表面には、接続用導体部が形成されている(図示せず)。
そのため、ワーク4たる基板上への半導体チップSCの取り付けは、ワーク4たる基板の接続用導体部に半導体チップSCのバンプ電極BEを接続することにより実施される。
ワーク4たる基板の接続用導体部への半導体チップSCのバンプ電極BEの接続は、前記接続用導体部にバンプ電極BEを当接させた状態で半導体チップSCをワーク4たる基板上に配した集合体を得た後、リフロー炉内で該集合体を加熱する(リフロー処理する)ことにより実施することができる。
前記リフロー処理は、通常、180℃以上の温度で所定時間実施される。
なお、前記リフロー処理での最高到達温度は、通常、270℃である。
【0099】
半導体装置の製造方法における電子部品実装工程S2では、次に、
図3Dに示したように、バンプ電極BEを前記接続用導体部に接続することによって、ワーク4たる基板上に取り付けられた半導体チップSCを封止樹脂ERで樹脂封止する。
封止樹脂ERとしては、通常、エポキシ樹脂やフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂が用いられる。
そのため、ワーク4たる基板上に取り付けられた半導体チップSCを樹脂封止するに際しては、半導体チップSCを封止樹脂ERで覆った後、該封止樹脂ERを熱硬化させる温度(例えば、150℃)で加熱する。
以上のようにして、半導体装置の製造方法における電子部品実装工程S2を実施する。
これにより、ワーク4たる基板上に半導体パッケージPが形成される。
【0100】
(ワーク取り外し工程S3)
半導体装置の製造方法におけるワーク取り外し工程S3では、半導体パッケージPが配されたワーク4たる基板をワーク保持部材10のワーク保持層3から取り外す(
図3E参照)。
ワーク保持層3からのワーク4たる基板の取り外しは、例えば、吸引装置を用いて、ワーク保持層3がワーク4たる基板を保持する力よりも大きな吸引力で、ワーク4たる基板が配されていない側の半導体パッケージPの面を吸引することにより実施することができる。
なお、半導体装置の製造方法に用いられるワーク保持部材は、本実施形態に係るワーク保持部材10であるので、リフロー処理後においては、ワーク4たる基板に対するワーク保持層3の保持力(接着力)は小さくなっている。
すなわち、ワーク保持層3からワーク4たる基板は取り外し易くなっている。
そのため、比較的小さな吸引力でも、ワーク保持層3からワーク4たる基板を効率良く取り外すことができる。
また、ワーク保持部材10では、支持体1及びワーク保持層3が熱硬化された接着シート2に強固に接着されている。
そのため、ワーク保持層3からワーク4たる基板を取り外すときに、ワーク保持層3と支持体1との間に生じる剥離を特に良好に抑制することができる。
【0101】
上記のように、ワーク4たる基板をワーク保持層3から取り外されたワーク4付の半導体パッケージPは、そのままの状態で半導体装置とされてもよい。
あるいは、ワーク4付の半導体パッケージPは、ダイシングブレードなどで所定数の半導体チップSCを含むような形で分割されて、複数の半導体装置とされてもよい。
【0102】
なお、ワーク保持工程S1と電子部品実装工程S2との間に、プラズマ放電でワーク4たる基板を処理するプラズマ処理工程S1’を実施してもよい。
プラズマ処理工程S1’は、各種公知のプラズマ洗浄装置を用いて実施することができる。
電子部品実装工程S2の前にプラズマ処理工程S1’を実施することにより、ワーク4たる基板の表面に露出している基板パッド金属表面などを洗浄して有機系汚染物を除去することができる。
【0103】
また、電子部品実装工程S2において、封止樹脂ERで樹脂封止を実施する前に、半導体チップSCにプラズマ処理を実施してもよい。
半導体チップSCのプラズマ処理は、先に説明したプラズマ処理工程S1’と同様にして実施することができる。
さらに、半導体チップSCにプラズマ処理を実施した後であって、封止樹脂ERで樹脂封止を実施する前に、バンプ電極BEの周辺をエポキシ樹脂などのアンダーフィル材によって封止させるアンダーフィル処理を実施してもよい。
アンダーフィル処理を実施すれば、封止樹脂ERが行き渡り難いバンプ電極BEの周辺に前記アンダーフィル材を配することができるので、封止樹脂ERでの樹脂封止を精度よく実施することができる。
【0104】
上では、半導体装置の製造方法を例に挙げて電子部品装置の製造方法について説明したが、該電子部品装置の製造方法は半導体装置の製造方法以外にも適用することができる。
例えば、前記電子部品装置の製造方法は、有機EL装置の製造方法にも適用することができる。
なお、有機EL装置の製造方法においては、ワークとして透明基板を用い、電子部品実装工程S2において、主として、ワークたる透明基板上に電子部品たるIZOやITOなどの透明電極膜をスパッタリングなどにより取り付ける。
そして、電子部品実装工程S2においては、前記透明基板上に前記透明電極膜を取り付けた後、該透明電極膜を150℃程度の温度でアニール処理する。
このような有機EL装置の製造方法においても、本実施形態に係るワーク保持部材10を用いれば、ワーク保持層3及び支持体1が熱硬化された接着シート2で十分に接着されているので、ワーク取り外し工程S3においてワーク保持層3からワーク4たる透明基板を取り外すときに、ワーク保持層3と支持体1との間に生じる剥離を特に良好に抑制することができる。
【0105】
本明細書によって開示される事項は、以下のものを含む。
【0106】
(1)
支持体と、該支持体上に積層される接着シートと、該接着シート上に積層され、かつ、ワークを保持するワーク保持層と、を備え、
前記接着シートは、有機成分として、熱硬化性樹脂を含み、
前記ワーク保持層は、有機多孔質体層であり、
前記熱硬化性樹脂は、カルボキシ基を有する第1ポリマー、エポキシ基を有する第2ポリマー、及び、エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含み、
前記有機成分の全量に占める前記群から選択される少なくとも1種の質量比率が、20質量%以上である
ワーク保持部材。
【0107】
(2)
前記有機多孔質層は、シリコーン発泡体層である
上記(1)に記載のワーク保持部材。
【0108】
(3)
前記シリコーン発泡体層の厚さは、500μm以下である
上記(2)に記載のワーク保持部材。
【0109】
(4)
前記支持体は、金属板、ガラス板、及び、シリコン板からなる群から選択される1種である
上記(1)乃至(3)のいずれかに記載のワーク保持部材。
【0110】
(5)
前記金属板は、ステンレス板、アルミニウム板、及び、アルミニウム合金板からなる群から選択される1種である
上記(4)に記載のワーク保持部材。
【0111】
(6)
支持体と、該支持体上に積層される接着シートと、該接着シート上に積層され、かつ、ワークを保持するワーク保持層と、を備えるワーク保持部材と、
前記ワーク保持層上に保持されているワークと、を備え、
前記ワーク保持部材が、上記(1)乃至(5)のいずれかに記載のワーク保持部材である
積層体。
【0112】
なお、本発明に係るワーク保持部材及び積層体は、上記実施形態によって限定されるものではない。
また、本発明に係るワーク保持部材及び積層体は、上記した作用効果によって限定されるものでもない。
本発明に係るワーク保持部材及び積層体は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【実施例0113】
次に、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。以下の実施例は本発明をさらに詳しく説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0114】
<実施例1>
[試験体の作製]
以下の手順にしたがって、支持体、接着シート、及び、ワーク保持層をこの順に積層させて、実施例1に係る試験体を得た。
(1)ハンドローラを用いて、温度70℃の条件にて、支持体の一表面に接着シートを貼り合わせる。
(2)一表面にコロナ放電処理を施したワーク保持層を準備し、該ワーク保持層のコロナ放電処理面を前記接着シートの露出面に当接させる。そして、ハンドローラを用いて、温度70℃の条件にて、前記接着シートの露出面に前記ワーク保持層のコロナ放電処理面を貼り合わせて、前記支持体、前記接着シート、及び、前記ワーク保持層がこの順に積層された積層体を得る。
(3)圧力約0.6kPa、温度175℃の条件下で、前記積層体を1時間加熱することにより、実施例1に係る試験体を得る。
【0115】
前記支持体としてはステンレス板(SUS304BA)を用いた。
前記ステンレス板(SUS304BA)の平面寸法は、30mm×30mmであり、厚さは0.5mmであった。
前記ステンレス板の厚さは、上記の実施形態の項で説明した方法にしたがって測定した。以下の各例についても同様である。
【0116】
前記接着シートとしては接着シートAを用いた。
接着シートAは、有機成分として、カルボキシ基を有する第1ポリマー(カルボキシ基含有樹脂。ナガセケミテックス社の商品名「SG-708-6」。酸価は9mgKOH/g)と、第1エポキシ樹脂(DIC社の商品名「N-665-EXP-S」。エポキシ当量は200~210g/eq)と、第2エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製の商品名「エピコートYL980」。エポキシ当量は180~190g/eq)と、第1フェノール樹脂(明和化成社製の商品名「MEHC-7800H」と、触媒としての硬化促進剤(北興化学工業社製の商品名「TPP-K」)とを含み、無機成分として、シリカフィラー(アドマテックス社製の商品名「SE2050MCV」)とを含むものであった。
なお、接着シートA中において、前記第1ポリマーの配合割合は10質量%であり、前記第1エポキシ樹脂の配合割合は2質量%であり、前記第2エポキシ樹脂の配合割合は12質量%であり、前記第1フェノール樹脂の配合割合は18質量%であり、前記触媒の配合割合は1質量%であり、前記シリカフィラーの配合割合は57質量%であった。
すなわち、接着シートAにおける前記有機成分の配合割合は43質量%であることから、前記有機成分の全量に占める前記第1ポリマー、前記第1エポキシ樹脂、及び、前記第2エポキシ樹脂の質量比率は、56質量%であった。
【0117】
前記ワーク保持層としてはシリコーン発泡体層を用いた。
シリコーン発泡体層は、下記表1に示した(1)~(10)の各材料を下記表1に示した配合量で用いて、以下の手順にしたがって作製した。
(a)撹拌装置(あわとり練太郎、型式「ARE-501」、シンキー社製)を用いて、下記表1の(1)~(10)の各材料を下記表1の配合量で15分間混合して乳化溶液を得る。
そして、該乳化溶液を室温(23±2℃)で5分間減圧乾燥して脱泡を行って樹脂組成物を得る。
(b)前記樹脂組成物をフロロシリコーン処理PETフィルム(ニッパシートPET38x1-SS4A、ニッパ社製)の表面にアプリケータを用いて塗布して樹脂層を形成した後、前記樹脂層の露出面にPETフィルム(ルミラーS10、東レ社製)を被せて、前記樹脂層の一方面に前記フロロシリコーン処理PETフィルムが配され、前記樹脂層の他方面に前記PETフィルムが配された三層積層体を得る。
(c)前記三層積層体を熱風オーブンによって85℃で6分間加熱して、前記樹脂層を硬化させる。
(d)前記樹脂層を硬化させた後、前記樹脂層の一方面から前記フロロシリコーン処理PETフィルムを剥離させるとともに、前記樹脂層の他方面から前記PETフィルムを剥離させて、前記樹脂層の硬化体を得る。
(e)前記樹脂層の硬化体を200℃で3分間加熱乾燥する。
上記の手順にしたがって得られたシリコーン発泡体の厚さは、0.2mm(200μm)であった。
また、前記シリコーン発泡体は、連続気泡構造を有しており、連続気泡率が100%であった。
さらに、前記シリコーン発泡体の見掛け密度は、0.55g/cm3であった。
なお、前記シリコーン発泡体の厚さ、前記シリコーン発泡体の連続気泡率、及び、前記シリコーン発泡体の見掛け密度は、上の実施形態の項で説明した方法にしたがって測定した。以下の各例についても同様である。
【0118】
【0119】
<実施例2>
[試験体の作製]
前記接着シートを接着シートBに代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例2に係る試験体を得た。
接着シートBは、接着シートAと同じ有機成分及び無機成分を含むものであった。
なお、接着シートB中において、前記第1ポリマー(SG-708-6)の配合割合は7質量%であり、前記第1エポキシ樹脂(N-665-EXP-S)の配合割合は2質量%であり、前記第2エポキシ樹脂(エピコートYL980)の配合割合は12質量%であり、前記第1フェノール樹脂(MEHC-7800-H)の配合割合は38質量%であり、前記触媒(TPP-K)の配合割合は1質量%であり、前記シリカフィラーの配合割合は40質量%であった。
すなわち、接着シートB中における前記有機成分の配合割合は60質量%であることから、前記有機成分の全量に占める前記第1ポリマー、前記第1エポキシ樹脂、及び、前記第2エポキシ樹脂の質量比率は、35質量%であった。
【0120】
<実施例3>
[試験体の作製]
前記接着シートを接着シートCに代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例3に係る試験体を得た。
接着シートCも、接着シートAと同じ有機成分及び無機成分を含むものであった。
なお、接着シートC中において、前記第1ポリマー(SG-708-6)の配合割合は5質量%であり、前記第1エポキシ樹脂(N-665-EXP-S)の配合割合は2質量%であり、前記第2エポキシ樹脂(エピコートYL980)の配合割合は5質量%であり、前記第1フェノール樹脂(MEHC-7800-H)の配合割合は47質量%であり、前記触媒(TPP-K)の配合割合は1質量%であり、前記シリカフィラーの配合割合は40質量%であった。
すなわち、接着シートC中における前記有機成分の配合割合は60質量%であることから、前記有機成分の全量に占める前記第1ポリマー、前記第1エポキシ樹脂、及び、前記第2エポキシ樹脂の質量比率は、20質量%であった。
【0121】
<実施例4>
[試験体の作製]
前記接着シートを接着シートDに代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例4に係る試験体を得た。
接着シートDは、有機成分として、エポキシ基を含有する第2ポリマー(エポキシ基含有アクリル樹脂。ナガセケミテックス社製の商品名「SG-P3」。エポキシ当量は0.21eq/kg(210eq/g))と、第1フェノール樹脂(MEHC-7800-H)と、カップリング剤(信越化学工業社製の商品名「KBM-303」)とを含み、無機成分として、シリカフィラー(SE2050MCV)を含むものであった。
なお、接着シートD中において、前記第2ポリマーの配合割合は50質量%であり、前記第1フェノール樹脂の配合割合は5質量%であり、前記カップリング剤の配合割合は1質量%であり、前記シリカフィラーの配合割合は44質量%であった。
すなわち、接着シートDにおける前記有機成分の配合割合は56質量%であることから、前記有機成分の全量に占める前記第2ポリマーの質量比率は、89質量%であった。
【0122】
<実施例5>
[試験体の作製]
前記接着シートを接着シートEに代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例5に係る試験体を得た。
接着シートEは、有機成分として、前記第2ポリマー(SG-P3)と、第1フェノール樹脂(MEHC-7800-H)と、カップリング剤(KBM-303)とを含み、無機成分として、シリカフィラー(SE2050MCV)を含むものであった。
なお、接着シートE中において、前記第2ポリマーの配合割合は50質量%であり、前記第1フェノール樹脂の配合割合は15質量%であり、前記カップリング剤の配合割合は1質量%であり、前記シリカフィラーの配合割合は34質量%であった。
すなわち、接着シートEにおける前記有機成分の配合割合は66質量%であることから、前記有機成分の全量に占める前記第2ポリマーの質量比率は、76質量%であった。
【0123】
<実施例6>
[試験体の作製]
前記接着シートを接着シートFに代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例6に係る試験体を得た。
接着シートFは、有機成分として、前記第2ポリマー(SG-P3)と、第1フェノール樹脂(MEHC-7800-H)と、カップリング剤(KBM-303)とを含み、無機成分として、シリカフィラー(SE2050MCV)を含むものであった。
なお、接着シートF中において、前記第2ポリマーの配合割合は40質量%であり、前記第1フェノール樹脂の配合割合は20質量%であり、前記カップリング剤の配合割合は1質量%であり、前記シリカフィラーの配合割合は39質量%であった。
すなわち、接着シートFにおける前記有機成分の配合割合は61質量%であることから、前記有機成分の全量に占める前記第2ポリマーの質量比率は、66質量%であった。
【0124】
<実施例7>
[試験体の作製]
前記接着シートを接着シートGに代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例7に係る試験体を得た。
接着シートGは、有機成分として、前記第1ポリマー(SG-708-6)と、前記第2ポリマー(SG-P3)と、カップリング剤(KBM-303)とを含むものであった。
なお、接着シートG中において、前記第1ポリマーの配合割合及び前記第2ポリマーの配合割合は共に49質量%であり、前記カップリング剤の配合割合は2質量%であった。
すなわち、接着シートGにおいて、前記有機成分の全量に占める前記第1ポリマー及び前記第2ポリマーの質量比率は、98質量%であった。
【0125】
<実施例8>
[試験体の作製]
前記支持体をガラス板に代えた以外は、実施例3と同様にして、実施例8に係る試験体を得た。
なお、前記ガラス板の平面寸法は、100mm×115mmであり、厚さは1.35mmであった。
前記ガラス板の厚さは、上記の実施形態の項で説明した方法にしたがって測定した。
【0126】
<実施例9>
[試験体の作製]
前記支持体をシリコンベアウェハに代えた以外は、実施例3と同様にして、実施例9に係る試験体を得た。
なお、前記シリコンベアウェハの平面寸法は、300mmφであり、厚さは775mmであった。
前記シリコンベアウェハの厚さは、上記の実施形態の項で説明した方法にしたがって測定した。
【0127】
<比較例1>
[試験体の作製]
前記接着シートを接着シートHに代えた以外は、実施例1と同様にして、比較例1に係る試験体を得た。
接着シートHは、有機成分として、カルボキシ基及びエポキシ基を有さない第3ポリマー(カルボキシ基及びエポキシ基を有さないアクリル樹脂。根上工業社製の商品名「W-248」)と、第2フェノール樹脂(明和化成工業社製の商品名「MEH-8005」と、第3フェノール樹脂(群栄化学工業社製の商品名「LVR8210」)と、触媒としての硬化促進剤(TPP-K)とを含み、無機成分として、シリカフィラー(SE2050MCV)を含むものであった。
なお、接着シートH中において、前記第3ポリマーの配合割合は25質量%であり、前記第2フェノール樹脂の配合割合は12質量%であり、前記第3フェノール樹脂の配合割合は20質量%であり、前記触媒の配合割合は1質量%であり、前記シリカフィラーの配合割合は42質量%であった。
【0128】
<比較例2>
[試験体の作製]
前記接着シートを接着シートIに代えた以外は、実施例1と同様にして、比較例2に係る試験体を得た。
接着シートIは、有機成分として、前記第3ポリマー(W-248)と、第3エポキシ樹脂(日本化薬社製の商品名「EPPN501HY」)と、前記第2フェノール樹脂(MEH-8005)と、前記第3フェノール樹脂(LVR8210)と、触媒としての硬化促進剤(TPP-K)とを含み、無機成分として、シリカフィラー(SE2050MCV)を含むものであった。
なお、接着シートI中において、前記第3ポリマーの配合割合は25質量%であり、前記第3エポキシ樹脂の配合割合は5質量%であり、前記第2フェノール樹脂の配合割合は15質量%であり、前記第3フェノール樹脂の配合割合は12質量%であり、触媒としての硬化促進剤(TPP-K)の配合割合は1質量%であり、前記シリカフィラーの配合割合は42質量%であった。
すなわち、接着シートIにおける前記有機成分の配合割合は58質量%であることから、前記有機成分の全量に占める前記第3エポキシ樹脂の質量比率は、8.6質量%であった。
【0129】
<比較例3>
前記接着シートを接着シートJに代えた以外は、実施例1と同様にして、比較例3に係る試験体を得た。
接着シートJは、有機成分として、前記第3ポリマー(W-248)と、前記第3エポキシ樹脂(EPPN501HY)と、前記第2エポキシ樹脂(エピコートYL980)と、前記第2フェノール樹脂(MEH-8005)と、前記第3フェノール樹脂(LVR8210)と、触媒としての硬化促進剤(TPP-K)とを含み、無機成分として、シリカフィラー(SE2050MCV)を含むものであった。
なお、接着シートJ中において、前記第3ポリマーの配合割合は15質量%であり、前記第3エポキシ樹脂の配合割合は5質量%であり、前記第2エポキシ樹脂の配合割合は5質量%であり、前記第2フェノール樹脂の配合割合は20質量%であり、前記第3フェノール樹脂の配合割合は12質量%であり、触媒としての硬化促進剤(TPP-K)の配合割合は1質量%であり、前記シリカフィラーの配合割合は42質量%であった。
すなわち、接着シートJにおける前記有機成分の配合割合は58質量%であることから、前記有機成分の全量に占める前記第3エポキシ樹脂及び前記第2エポキシ樹脂の質量比率は、17.2質量%であった。
【0130】
<比較例4>
前記支持体をシリコンベアウェハに代えた以外は、比較例1と同様にして、比較例4に係る試験体を得た。
なお、前記シリコンベアウェハの平面寸法及び厚さは、実施例9と同様であった。
【0131】
<比較例5>
前記支持体をシリコンベアウェハに代えた以外は、比較例2と同様にして、比較例5に係る試験体を得た。
なお、前記シリコンベアウェハの平面寸法及び厚さは、実施例9と同様であった。
【0132】
<比較例6>
前記支持体をシリコンベアウェハに代えた以外は、比較例3と同様にして、比較例6に係る試験体を得た。
なお、前記シリコンベアウェハの平面寸法及び厚さは、実施例9と同様であった。
【0133】
(接着性評価)
各例に係る試験体について、以下の手順にしたがって、前記支持体と前記接着シートとの間の接着性、及び、前記接着シートと前記ワーク保持層との間の接着性を評価した。
(1)室温(23±2℃)下において、ワーク保持層の露出面に剥離テープ(日東電工社製の商品名「No.336」)を貼り合わせる。
(2)30分放置した後、ワーク保持層の露出面から前記剥離テープを剥離させて、前記支持体と前記接着シートとの接着性、及び、前記接着シートと前記ワーク保持層との接着性を目視にて確認する。
なお、接着性については、以下の基準にしたがって評価した。
優:前記支持体と前記接着シートとの間、及び、前記接着シートと前記ワーク保持層との間のいずれにも剥離が視認されない。
不可:前記支持体と前記接着シートとの間、及び、前記接着シートと前記ワーク保持層との間のいずれかに剥離が視認される。
その結果について、以下の表2に示した。
【0134】
【0135】
表2より、各実施例では、接着性評価がいずれも「優」であるのに対し、各比較例では、接着性評価がいずれも「不可」であることが分かった。
この結果から、本発明に係るワーク保持部材は、電子部品が実装された基板(ワーク)をワーク保持層から取り外すときに、前記ワーク保持層と支持体との間に生じる剥離を抑制できるものとなることが分かる。