(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092471
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】生体情報取得装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/02 20060101AFI20240701BHJP
【FI】
A61B5/02 310Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208414
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】319006047
【氏名又は名称】シャープセミコンダクターイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】柴田 慧一
(72)【発明者】
【氏名】舩尾 大輔
(72)【発明者】
【氏名】北奥 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】肥田 聡太
(72)【発明者】
【氏名】望月 裕太
【テーマコード(参考)】
4C017
【Fターム(参考)】
4C017AA09
4C017AC26
4C017AC40
4C017FF15
(57)【要約】
【課題】従来よりも高精度な生体情報を取得する。
【解決手段】生体(H)の生体情報を非接触的に取得する生体情報取得装置(1)において、IR光源(11)は、760nm以上かつ1100nm以下の近赤外波長帯において強度ピークを有する近赤外光を生体(H)に向けて出射する。固体撮像素子(23)は、620nm以上かつ1100nm以下の特定波長帯において感度ピークを有する特定画素(例:PIXIR)を含んでいる。情報処理装置は、(i)IR光源(11)の発光期間において固体撮像素子(23)によって撮像された発光時フレーム画像と、(ii)IR光源(11)の非発光期間において固体撮像素子(23)によって撮像された非発光時フレーム画像とを繰り返し取得し、当該発光時フレーム画像と当該非発光時フレーム画像とに基づき生体情報を導出する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の生体情報を非接触的に取得する生体情報取得装置であって、
760nm以上かつ1100nm以下の近赤外波長帯において強度ピークを有する近赤外光を上記生体に向けて出射する近赤外光源と、
上記生体から到来した光を受光することにより、上記生体の画像を撮像する固体撮像素子と、
上記画像に基づき上記生体情報を導出する情報処理装置と、を備えており、
上記固体撮像素子は、620nm以上かつ1100nm以下の特定波長帯において感度ピークを有する特定画素を含んでおり、
上記情報処理装置は、(i)上記近赤外光源の発光期間において上記固体撮像素子によって撮像された発光時画像フレームと、(ii)上記近赤外光源の非発光期間において上記固体撮像素子によって撮像された非発光時画像フレームと、を繰り返し取得し、
上記情報処理装置は、上記発光時画像フレームと上記非発光時画像フレームとに基づき上記生体情報を導出する、生体情報取得装置。
【請求項2】
複数の上記発光時画像フレームのうちの任意の1つを、発光時第1注目フレームと称し、
上記発光時第1注目フレームの次の上記発光時画像フレームを、発光時第2注目フレームと称し、
上記情報処理装置は、
上記発光時第1注目フレームが撮像されたタイミングと上記発光時第2注目フレームが撮像されたタイミングとの間の上記非発光期間における、仮想的な発光時画像フレームの信号値を、上記発光時第1注目フレームの信号値および上記発光時第2注目フレームの信号値に基づいて補間し、
上記仮想的な発光時画像フレームの信号値にさらに基づいて上記生体情報を導出する、請求項1に記載の生体情報取得装置。
【請求項3】
複数の上記非発光時画像フレームのうちの任意の1つを、非発光時第1注目フレームと称し、
上記非発光時第1注目フレームの次の上記非発光時画像フレームを、非発光時第2注目フレームと称し、
上記情報処理装置は、
上記非発光時第1注目フレームが撮像されたタイミングと上記非発光時第2注目フレームが撮像されたタイミングとの間の上記発光期間における、仮想的な非発光時画像フレームの信号値を、上記非発光時第1注目フレームの信号値および上記非発光時第2注目フレームの信号値に基づいて補間し、
上記仮想的な非発光時画像フレームの信号値にさらに基づいて上記生体情報を導出する、請求項1または2に記載の生体情報取得装置。
【請求項4】
上記特定画素は、(i)上記近赤外波長帯において感度ピークを有する近赤外画素と、(ii)620nm以上かつ740nm以下の第1波長帯において感度ピークを有する第1画素と、を含んでおり、
上記画像は、(i)上記近赤外画素に対応する近赤外画像成分と、(ii)上記第1画素に対応する第1画像成分と、を含んでおり、
上記情報処理装置は、
上記近赤外画像成分を上記第1画像成分に基づいて補正し、
補正後の上記近赤外画像成分にさらに基づいて上記生体情報を導出する、請求項1または2に記載の生体情報取得装置。
【請求項5】
上記固体撮像素子は、350nm以上かつ590nm以下の第2波長帯において感度ピークを有する第2画素をさらに含んでおり、
上記画像は、上記第2画素に対応する第2画像成分をさらに含んでおり、
上記情報処理装置は、
上記近赤外画像成分を上記第2画像成分に基づいてさらに補正し、
補正後の上記近赤外画像成分にさらに基づいて上記生体情報を導出する、請求項4に記載の生体情報取得装置。
【請求項6】
上記情報処理装置は、上記近赤外画像成分に対応する近赤外光由来生体情報を、上記近赤外画像成分に基づき導出する、請求項5に記載の生体情報取得装置。
【請求項7】
上記情報処理装置は、上記第1画像成分および上記第2画像成分に対応する非近赤外光由来生体情報を、上記第1画像成分および上記第2画像成分に基づき導出する、請求項5に記載の生体情報取得装置。
【請求項8】
1つの上記特定画素が1つの上記第2画素に隣接している、請求項5に記載の生体情報取得装置。
【請求項9】
上記固体撮像素子は、互いに離間している近赤外画素領域と第1画素領域と第2画素領域とを有しており、
上記近赤外画素領域は、互いに隣接している複数の上記近赤外画素を有しており、
上記第1画素領域は、互いに隣接している複数の上記第1画素を有しており、
上記第2画素領域は、互いに隣接している複数の上記第2画素を有している、請求項5に記載の生体情報取得装置。
【請求項10】
上記情報処理装置は、上記生体情報として容積脈波を導出する、請求項1に記載の生体情報取得装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、生体情報取得装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、生体情報(例:容積脈波)を取得するための装置の構成例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2017/104056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
より高精度な生体情報を取得することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る生体情報取得装置は、生体の生体情報を非接触的に取得する生体情報取得装置であって、760nm以上かつ1100nm以下の近赤外波長帯において強度ピークを有する近赤外光を上記生体に向けて出射する近赤外光源と、上記生体から到来した光を受光することにより、上記生体の画像を撮像する固体撮像素子と、上記画像に基づき上記生体情報を導出する情報処理装置と、を備えており、上記固体撮像素子は、620nm以上かつ1100nm以下の特定波長帯において感度ピークを有する特定画素を含んでおり、上記情報処理装置は、(i)上記近赤外光源の発光期間において上記固体撮像素子によって撮像された発光時画像フレームと、(ii)上記近赤外光源の非発光期間において上記固体撮像素子によって撮像された非発光時画像フレームと、を繰り返し取得し、上記情報処理装置は、上記発光時画像フレームと上記非発光時画像フレームとに基づき上記生体情報を導出する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様によれば、従来よりも高精度な生体情報を取得できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態1における生体情報取得装置の要部の構成を例示するブロック図である。
【
図2】実施形態1における受光装置の一構成例について説明するための模式的な正面図である。
【
図3】IR光源から出射されるIR光の波長スペクトルを例示する。
【
図4】情報処理装置における処理の例について説明するための図である。
【
図5】発光時画像フレームおよび非発光時画像フレームのそれぞれの信号値の時間的な推移を表す模式的なグラフを示す。
【
図6】実施形態2における受光装置の一構成例について説明するための模式的な正面図である。
【
図7】実施形態2における受光装置の分光特性を例示する。
【
図8】実施形態2の固体撮像素子における各画素の配置例を示す模式的な上面図である。
【
図9】実施形態3における受光装置の一構成例について説明するための模式的な正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔実施形態1〕
実施形態1について以下に説明する。説明の便宜上、実施形態1にて説明したコンポーネント(構成要素)と同じ機能を有するコンポーネントについては、以降の各実施形態では同じ符号を付し、その説明を繰り返さない。簡潔化のため、公知の技術事項についても説明を適宜省略する。本明細書にて述べる各コンポーネントおよび各数値は、特に矛盾のない限りいずれも単なる一例である。それゆえ、例えば、特に矛盾のない限り、各コンポーネントの位置関係および個数は、各図の例に限定されない。また、各図は必ずしもスケール通りに図示されていない。
【0009】
(生体情報取得装置1の構成例)
図1は、実施形態1の生体情報取得装置1の要部の構成を例示するブロック図である。生体情報取得装置1は、生体Hの生体情報を非接触的に取得する。生体Hは、生体情報取得装置1によって生体情報を取得可能な生物であればよく、特に限定されない。
図1では、生体Hとして人が例示されている。生体情報取得装置1は、発光装置10と受光装置20と情報処理装置30とを備えている。本明細書では、近赤外光をIR(Infra-Red)光とも称する。それゆえ、例えば、近赤外光源をIR光源とも称する。
【0010】
発光装置10は、生体Hの生体情報を取得するための検査光を出射する。後述の
図2に示す通り、発光装置10は、IR光源11を有している。IR光源11は、検査光として近赤外光を出射する。具体的には、IR光源11は、760nm以上かつ1100nm以下の近赤外波長帯(IR波長帯)において強度ピークを有するIR光を生体Hに向けて出射する。
【0011】
不可視光であるIR光を検査光として用いることにより、生体Hに検査光の存在を意識させないことができる。それゆえ、自然な状態にある生体Hの生体情報を取得できる。ただし、当業者であれば明らかである通り、検査光はIR光に限定されない。このため、発光装置10は、IR波長帯以外にピークを有する光(例:可視光)を検査光として出射する付加的な光源をさらに有していてもよい。
【0012】
受光装置20は、生体Hから到来した光を受光することにより、生体Hの画像(以下、単に「画像」と称する)を撮像する固体撮像素子を有している。実施形態1における画像は、生体Hの所定の部位が映った画像(例:生体Hの顔画像)であればよい。
図2における固体撮像素子23は、本発明の一態様に係る固体撮像素子の例である。固体撮像素子は、CIS(CMOS Image Sensor)またはCCD(Charge Coupled Device)であってよい。後述する通り、固体撮像素子は、複数の画素を有している。
【0013】
情報処理装置30は、固体撮像素子23によって撮像された画像に基づき、生体Hの生体情報を導出する。情報処理装置30は、当該画像を解析することにより(より具体的には、当該画像に対する信号処理を行うことにより)、生体情報を導出してよい。これにより、生体情報を非接触的に取得できる。実施形態1では、情報処理装置30が生体情報として生体Hの容積脈波を導出する場合を主に例示する。
【0014】
図1の例における情報処理装置30は、生体情報取得装置1の各部を統括的に制御する制御装置であってよい。したがって、情報処理装置30は、発光装置10および受光装置20を制御してよい。情報処理装置30は、固体撮像素子23が所定のフレームレートによって画像を撮像するように、受光装置20を制御してよい。本明細書では、所定のフレームレートによって撮像された画像を、画像フレームとも称する。また、情報処理装置30は、IR光源11によるIR光の出射を制御してよい。
【0015】
実施形態1の例では、生体Hが存在している空間は、環境光によって照らされているものとする。そして、環境光は白色光であるものとする。環境光の一部は、生体H(より具体的には、生体Hの皮膚)によって反射され、受光装置20に入射する。したがって、IR光源11の非発光期間(IR光源11が近赤外光を出射していない期間)においては、固体撮像素子23は、生体Hによって反射された白色光を受光する。このように、固体撮像素子23は、非発光期間においては、受光した白色光に応じた画像を撮像する。
【0016】
その一方、IR光源11の発光期間(IR光源11が近赤外光を出射している期間)内には、固体撮像素子23は、生体Hによって反射された近赤外光をさらに受光する。したがって、固体撮像素子23は、発光期間においては、受光した白色光と近赤外光とに応じた画像を撮像する。
【0017】
実施形態1の例では、IR光源11から出射されるIR光の強度は、環境光の強度よりも強く設定されているものとする。したがって、IR光源11の発光期間において固体撮像素子23によって撮像される画像は、IR光源11から出射されるIR光に主に依存する。このことから、発光期間において固体撮像素子23によって撮像された画像は、IR画像と称されてもよい。その一方、非発光期間において固体撮像素子23によって撮像された画像は、可視光画像と称されてもよい。
【0018】
図1に示す通り、情報処理装置30は、発光制御部31、撮像制御部32、および生体情報導出部33を有していてよい。情報処理装置30の処理の例については、後述する。
【0019】
図2は、受光装置20の一構成例について説明するための模式的な正面図である。受光装置20は、導光部材21、支持部材22、および固体撮像素子23を有していてよい。
図2では、説明の便宜上、IR光源11および生体Hについても図示されている。
図2に示す通り、IR光源11および受光装置20は、生体Hから離間している。IR光源11と受光装置20との位置関係は、IR光源11によって出射され、かつ、生体Hによって反射されたIR光が、受光装置20に入射するように設定されていればよい。一例として、IR光源11は、受光装置20の近傍に配置されていてよい。
【0020】
導光部材21は、受光装置20に入射した光を固体撮像素子23へと導く。
図2では、導光部材21としてレンズが例示されている。支持部材22は、導光部材21を支持する。
図2の例における支持部材22は、レンズホルダである。
【0021】
本明細書では、620nm以上かつ1100nm以下の波長帯を、特定波長帯と称する。また、620nm以上かつ740nm以下の波長帯を第1波長帯と称し、350nm以上かつ590nm以下の波長帯を第2波長帯と称する。
【0022】
本明細書では、特定波長帯において感度ピークを有する画素を、特定画素と称する。そして、本明細書におけるIR波長帯において感度ピークを有する画素を、IR画素(近赤外画素)と称する。また、第1波長帯において感度ピークを有する画素を第1画素と称し、第2波長帯において感度ピークを有する画素を第2画素と称する。
【0023】
当業者であれば明らかである通り、赤色(Red,R)波長帯は、第1波長帯に属する。したがって、後掲の実施形態2において述べるR画素は、第1画素の例である。また、上記の例から明らかである通り、特定波長帯は、IR波長帯の全体を含んでいるとともに、第1波長帯の全体を含んでいる。したがって、本明細書において述べるIR画素およびR画素はいずれも、特定画素の例である。
【0024】
また、当業者であれば明らかである通り、青色(Blue,B)波長帯および緑色(Green,G)波長帯はいずれも、第2波長帯に属する。したがって、実施形態2において述べるB画素およびG画素はいずれも、第2画素の例である。
【0025】
本発明の一態様に係る固体撮像素子は、特定画素を有していればよい。したがって、例えば、
図2に示す通り、固体撮像素子23は、IR画素PIXIRを有していてよい。
【0026】
図3は、IR光源11から出射されるIR光の波長スペクトルを例示するグラフである。
図3において、横軸は光の波長を示し、縦軸は光の強度を示す。
図3の縦軸は、規格化されている。
図3の例におけるIR光は、波長940nm付近に強度ピークを有する。そこで、固体撮像素子23は、IR波長帯において感度ピークを有するように設計されていてよい。この場合、分光フィルタを設けることなく、IR画素を具現化できる。
【0027】
ただし、実施形態2にて述べる通り、分光フィルタを設けることによってIR画素が具現化されてもよい。また、実施形態2からも明らかである通り、固体撮像素子23は、IR画素以外の画素を有していてもよい。IR画素以外の画素は、モノクローム画素であってもよいし、カラー画素であってもよい。
【0028】
続いて、
図4を参照し、情報処理装置30における処理の例について述べる。発光制御部31は、IR光源11の発光タイミングを設定してよい。したがって、例えば、発光制御部31は、IR光源11の発光期間(ON期間)と非発光期間(OFF期間)とを設定してよい。
図4に示す通り、発光制御部31は、発光期間と非発光期間とが交互に到来するように、IR光源11を制御してよい。
図4の例では、発光期間の長さと非発光期間の長さとが等しくなるよう設定されている。
【0029】
撮像制御部32は、非発光期間および発光期間のそれぞれにおいて1つの画像を撮像するように、固体撮像素子23を制御してよい。このように、情報処理装置30は、IR光源11の発光/非発光動作と固体撮像素子23の撮像動作とを同期させるように、IR光源11と固体撮像素子23とを制御してよい。IR光源11と固体撮像素子23との同期は、固体撮像素子23のフレームレートを発光期間および非発光期間に応じて設定することにより実現される。
図4の例では、固体撮像素子23のフレームレートは、発光期間の逆数に等しい値に設定されている。
【0030】
本明細書では、発光期間において固体撮像素子23によって撮像された画像を、発光時画像フレームと称する。その一方、非発光期間において固体撮像素子23によって撮像された画像を、非発光時画像フレームと称する。情報処理装置30は、発光時画像フレームと非発光時画像フレームとを繰り返し取得してよい。したがって、
図4に示す通り、撮像制御部32は、発光時画像フレームと非発光時画像フレームとを交互に撮像するように固体撮像素子23を制御してよい。
【0031】
生体情報導出部33は、繰り返し取得された発光時画像フレームと非発光時画像フレームとに基づき、生体情報を導出してよい。以下、発光時画像フレームと非発光時画像フレームとに基づく生体情報の導出手法の例について述べる。
【0032】
本明細書では、複数の発光時画像フレームのうちの任意の1つを、注目フレームと称する。そして、注目フレームが撮像されたタイミングを、注目タイミングと称する。また、注目タイミングに先行して撮像された非発光時画像フレームを、第1参照フレームと称する。その一方、注目タイミングに後続して撮像された非発光時画像フレームを、第2参照フレームと称する。
【0033】
第1の例として、生体情報導出部33は、注目フレームにおいて、生体Hの皮膚が映っている所定の領域(皮膚領域)の信号値(例:画素値)を平均化してよい。そして、生体情報導出部33は、注目フレームに対応する1つの非発光時画像フレームにおいて、当該皮膚領域の信号値を平均化してよい。注目フレームに対応する非発光時画像フレームは、第1参照フレーム(例:注目フレームの直前の非発光時画像フレーム)であってもよい。あるいは、当該非発光時画像フレームは、第2参照フレーム(例:注目フレームの直後の非発光時画像フレーム)であってもよい。
【0034】
次いで、生体情報導出部33は、注目フレームにおける皮膚領域の平均信号値(信号値の平均値)から、対応する非発光時画像フレームにおける皮膚領域の平均信号値を減算してよい。このように、生体情報導出部33は、注目フレームの信号値を、対応する非発光時画像フレームの信号値を用いて補正してよい。そして、生体情報導出部33は、補正後の注目フレームに基づいて、容積脈波を導出してよい。
【0035】
例えば、生体情報導出部33は、上述の通り複数の発光時画像フレームのそれぞれの信号値を補正してよい。そして、生体情報導出部33は、補正後の複数の発光時画像フレームのそれぞれの信号値に基づき、容積脈波を導出してよい。以上の通り、非発光時画像フレームは、発光時画像フレームを補正するための参照フレームとして使用されてよい。言い換えれば、非発光時画像フレームにおける信号値は、発光時画像フレームの信号値を補正するための参照フレームとして使用されてよい。
【0036】
一般的に、容積脈波の信号成分(以下、容積脈波成分と称する)は、比較的小さい。また、固体撮像素子によって撮像された画像における容積脈波成分には、ノイズ成分が重畳している場合がある。当該ノイズ成分は、例えば、環境光の光量の変動および生体Hの体動などに起因する。生体情報導出部33によれば、非発光時画像フレームを用いて発光時画像フレームを補正することにより、発光時画像フレームに含まれるノイズ成分を低減できる。次いで、補正後の発光時画像フレーム(ノイズ成分が低減された後の発光時画像フレーム)を用いて容積脈波を導出できるので、より高精度な容積脈波を得ることが可能となる。
【0037】
続いて、
図5を参照して、第2の例について述べる。
図5には、発光時画像フレームおよび非発光時画像フレームのそれぞれの信号値の時間的な推移を表す模式的なグラフが示されている。当該グラフにおける横軸は時刻(t)であり、縦軸は信号値である。
図5における曲線511は、各時刻における発光時画像フレームの信号値を補間することによって得られる補間曲線(フィッティングカーブ)である。その一方、曲線512は、各時刻における非発光時画像フレームの信号値を補間することによって得られる補間曲線である。
【0038】
第2の例における説明では、複数の発光時画像フレームのうちの任意の1つを、発光時第1注目フレームと称する。そして、発光時第1注目フレームの次の発光時画像フレームを、発光時第2注目フレームと称する。また、発光時第1注目フレームが撮像されたタイミングを発光時第1注目タイミングと称し、発光時第2注目フレームが撮像されたタイミングを発光時第2注目タイミングと称する。
【0039】
生体情報導出部33は、発光時第1注目フレームおよび発光時第2注目フレームに基づいて、発光時第1注目タイミングと発光時第2注目タイミングとの間の非発光期間における、仮想的な発光時画像フレームを生成してよい。具体的には、
図5に示す通り、生体情報導出部33は、発光時第1注目フレームの信号値および発光時第2注目フレームの信号値に基づいて、仮想的な発光時画像フレームの信号値を補間してよい。一例として、生体情報導出部33は、発光時第1注目フレームの信号値および発光時第2注目フレームの信号値を用いて、仮想的な発光時画像フレームの信号値を補間してよい。
【0040】
ただし、仮想的な発光時画像フレームの信号値の補間手法は、上記の例に限定されない。仮想的な発光時画像フレームの信号値の補間には、発光時第1注目フレームよりも以前の1つ以上の発光時画像フレームの信号値がさらに用いられてもよい。すなわち、仮想的な発光時画像フレームの信号値の補間には、当該仮想的な発光時画像フレームよりも以前の複数の発光時画像フレームの信号値が用いられてもよい。
【0041】
また、仮想的な発光時画像フレームの信号値の補間には、発光時第2注目フレームよりも後の1つ以上の発光時画像フレームの信号値がさらに用いられてもよい。すなわち、仮想的な発光時画像フレームの信号値の補間には、当該仮想的な発光時画像フレームよりも後の複数の発光時画像フレームの信号値が用いられてもよい。
【0042】
したがって、仮想的な発光時画像フレームの信号値の補間には、(i)当該仮想的な発光時画像フレームよりも以前の複数の発光時画像フレームの信号値と、(ii)当該仮想的な発光時画像フレームよりも後の複数の発光時画像フレームの信号値と、の両方が用いられてもよい。
【0043】
続いて、非発光時画像フレームの補間について述べる。第2の例における説明では、複数の非発光時画像フレームのうちの任意の1つを、非発光時第1注目フレームと称する。そして、非発光時第1注目フレームの次の非発光時画像フレームを、非発光時第2注目フレームと称する。また、非発光時第1注目フレームが撮像されたタイミングを非発光時第1注目タイミングと称し、非発光時第2注目フレームが撮像されたタイミングを非発光時第2注目タイミングと称する。
【0044】
生体情報導出部33は、非発光時第1注目フレームおよび非発光時第2注目フレームに基づいて、非発光時第1注目タイミングと非発光時第2注目タイミングとの間の発光期間における、仮想的な非発光時画像フレームを生成してよい。具体的には、
図5に示す通り、生体情報導出部33は、非発光時第1注目フレームの信号値および非発光時第2注目フレームの信号値に基づいて、仮想的な非発光時画像フレームの信号値を補間してよい。一例として、生体情報導出部33は、非発光時第1注目フレームの信号値および非発光時第2注目フレームの信号値を用いて、仮想的な非発光時画像フレームの信号値を補間してよい。
【0045】
ただし、仮想的な非発光時画像フレームの信号値の補間手法は、上記の例に限定されない。仮想的な非発光時画像フレームの信号値の補間には、非発光時第1注目フレームよりも以前の1つ以上の非発光時画像フレームの信号値がさらに用いられてもよい。すなわち、仮想的な非発光時画像フレームの信号値の補間には、当該仮想的な非発光時画像フレームよりも以前の複数の発光時画像フレームの信号値が用いられてもよい。
【0046】
また、仮想的な非発光時画像フレームの信号値の補間には、非発光時第2注目フレームよりも後の1つ以上の非発光時画像フレームの信号値がさらに用いられてもよい。すなわち、仮想的な非発光時画像フレームの信号値の補間には、当該仮想的な非発光時画像フレームよりも後の複数の非発光時画像フレームの信号値が用いられてもよい。
【0047】
したがって、仮想的な非発光時画像フレームの信号値の補間には、(i)当該仮想的な非発光時画像フレームよりも以前の複数の発光時画像フレームの信号値と、(ii)当該仮想的な非発光時画像フレームよりも後の複数の発光時画像フレームの信号値と、の両方が用いられてもよい。
【0048】
第2の例において、生体情報導出部33は、仮想的な発光時画像フレームの信号値にさらに基づいて、容積脈波を導出してよい。また、生体情報導出部33は、仮想的な非発光時画像フレームの信号値にさらに基づいて、容積脈波を導出することもできる。第2の例によれば、第1の例に比べてより多くの信号値のデータを用いて容積脈波を導出できる。それゆえ、第2の例によれば、第1の例に比べてさらに高精度な容積脈波を得ることが可能となる。
【0049】
(生体情報取得装置1の効果)
固体撮像素子を用いて生体情報(例:容積脈波)を検出する技術自体は、公知である。ただし、一般的な固体撮像素子は、可視光領域における被写体の撮像を目的として設計されている。人間の目は、G波長帯において高い視感度特性を有している。また、生体の皮膚に含まれるヘモグロビンは、G波長帯に属する波長550nmにおいて特に高い光吸収率を有している。このことから、従来では、容積脈波の導出においても、一般的な固体撮像素子がそのまま使用されていた。
【0050】
例えば、特許文献1の技術は、一般的な固体撮像素子によって、青色光受光信号と緑色光受光信号と赤色光受光信号とを取得している。そして、特許文献1の技術は、赤色光受光信号または青色光受光信号を、緑色光受光信号に対する参照信号として使用している。具体的には、特許文献1の技術は、参照信号を用いて、注目信号である緑色光受光信号からノイズ成分を除去する信号処理を行っている。
【0051】
一般的な固体撮像素子は、600nm付近の波長帯において強度ピークを有する赤色光を受光するとともに、450nm付近の波長帯において強度ピークを有する青色光を受光するように設計されている。ただし、これらの波長帯では、赤色光受光信号または青色光受光信号にある程度大きい容積脈波成分が含まれる。このため、特許文献1の技術における信号処理では、参照信号を用いたノイズ成分の除去に伴い、注目信号に含まれる容積脈波成分が減少してしまう。さらに、特許文献1の技術では、検査光としてIR光を用いるという着想について、そもそも何ら言及されていない。
【0052】
本願の発明者ら(以下、「発明者ら」と略記する)は、特許文献1の技術における上記問題点を踏まえ、本発明の一態様に係る生体情報取得装置(例:生体情報取得装置1)を新たに創作した。発明者らは、ヘモグロビンの光吸収率は、上述の第1波長帯において特に小さくなるという新たな知見を実験によって見出した。上記新たな知見に基づき、発明者らは、非発光時画像フレームを参照フレームとして用いるという新たな着想をさらに見出した。
【0053】
IR波長帯におけるヘモグロビンの光吸収率は、第1波長帯における当該光吸収率よりも高い。したがって、特定画素を有する固体撮像素子(例:IR画素を有する固体撮像素子23)によれば、非発光時画像フレームに比べて大きい容積脈波成分を含む発光時画像フレームを得ることができる。このため、非発光時画像フレームを参照フレームとして用いることにより、容積脈波成分をあまり減少させることなく、発光時画像フレームからノイズ成分を低減できる。それゆえ、本発明の一態様に係る生体情報取得装置における信号処理によれば、特許文献1の技術に比べて高精度に容積脈波を取得できる。生体情報を非接触的に取得する場合には、生体情報を接触的に取得する場合に比べて、ノイズ成分が大きくなる傾向が一般的にある。本発明の一態様に係る生体情報取得装置によれば、生体情報を非接触的に取得する場合においても、高精度な容積脈波を取得できる。
【0054】
また、当業者であれば明らかである通り、本発明の一態様に係る生体情報取得装置は、容積脈波に基づいて、別の生体情報をさらに導出することもできる。例えば、当該生体情報取得装置は、容積脈波に基づいて、生体の心拍数、血圧、またはストレスレベルなどを取得できる。以上の通り、本発明の一態様に係る生体情報取得装置によれば、容積脈波以外の生体情報を従来よりも高精度に取得することもできる。
【0055】
〔実施形態2〕
図6は、実施形態2の生体情報取得装置2における、受光装置20Aの一構成例について説明するための模式的な正面図である。
図6は、
図2と対になる図である。受光装置20Aにおける固体撮像素子を、固体撮像素子23Aと称する。
【0056】
受光装置20Aは、分光フィルタ24を有していてよい。
図6の例における分光フィルタ24は、赤色光フィルタ24Rと青色光フィルタ24Bと緑色光フィルタ24Gと近赤外光フィルタ24IRとを含んでいる。本明細書では、第1波長帯の光を透過する分光フィルタを第1フィルタと称し、第2波長帯の光を透過する分光フィルタを第2フィルタと称する。赤色光フィルタ24Rは、第1フィルタの例である。青色光フィルタ24Bおよび緑色光フィルタ24Gはいずれも、第2フィルタの例である。
【0057】
第1フィルタ(例:赤色光フィルタ24R)は、理想的には、第1波長帯の光(例:赤色光)のみを選択的に透過する分光特性を有している。したがって、第1フィルタは、第1波長帯(例:R波長帯)において高い光透過率(理想的には、光透過率100%)を有しており、かつ、当該第1波長帯を除いた波長帯において低い光透過率(理想的には、光透過率0%)を有している。第1フィルタの光透過率に関する上記の説明は、その他の波長帯に対応する分光フィルタについても同様に当てはまる。
【0058】
図7は、
図6の受光装置20A(具体的には、
図6の分光フィルタ24)の分光特性を例示するグラフである。
図7において、横軸は光の波長を示し、縦軸は光の透過率(光透過率)を示す。上述の通り、
図6の分光フィルタ24は、赤色光フィルタ24Rと青色光フィルタ24Bと緑色光フィルタ24Gと近赤外光フィルタ24IRとを含んでいる。この構成により、
図7に示す分光特性が実現される。当該分光特性によれば、受光装置20Aに入射した光が、R光(赤色光)とB光(青色光)とG光(緑色光)とIR光とに分光される。
【0059】
図7に示す通り、青色光フィルタ24Bは、波長470nm付近に光透過率のピークを有する。したがって、青色光フィルタ24Bによって分光されたB光は、波長470nm付近に強度ピークを有する。緑色光フィルタ24Gは、波長540nm付近に光透過率のピークを有する。したがって、緑色光フィルタ24Gによって分光されたG光は、波長540nm付近に強度ピークを有する。赤色光フィルタ24Rは、波長650nm付近に光透過率のピークを有する。したがって、赤色光フィルタ24Rによって分光されたR光は、波長650nm付近に強度ピークを有する。近赤外光フィルタ24IRは、波長850nm付近に光透過率のピークを有する。したがって、近赤外光フィルタ24IRによって分光されたIR光は、波長850nm付近に強度ピークを有する。
【0060】
再び
図6を参照する。
図6の例における固体撮像素子23Aは、PIXIRに加えて、R画素PIXRとB画素PIXBとG画素PIXGとをさらに有している。
図6に示す通り、青色光フィルタ24Bは、生体側(生体Hの側)から見た場合に、PIXBを覆っている。したがって、PIXBは、青色光フィルタ24Bによって分光されたB光を受光する。緑色光フィルタ24Gは、生体側から見た場合に、PIXGを覆っている。したがって、PIXGは、緑色光フィルタ24Gによって分光されたG光を受光する。赤色光フィルタ24Rは、生体側から見た場合に、PIXRを覆っている。したがって、PIXRは、赤色光フィルタ24Rによって分光されたR光を受光する。近赤外光フィルタ24IRは、生体側から見た場合に、PIXIRを覆っている。したがって、PIXIRは、近赤外光フィルタ24IRによって分光されたIR光を受光する。
【0061】
以上の説明から明らかである通り、第1画素は、例えばモノクローム画素を第1フィルタによって覆うことによって具現化されてよい。第1画素に関する上記説明は、その他の波長帯に対応する画素についても同様に当てはまる。
【0062】
図8は、
図6の固体撮像素子23Aにおける各画素の配置例を示す模式的な上面図である。
図8は、各フィルタの配置例を示す模式的な上面図と読み替えることもできる。
図8に示す通り、各画素は、2次元的に規則的に配置されてよい。このように、各画素の配置は、2次元的なアレイ状であってよい。
【0063】
図8の例では、列方向(紙面横方向)において、PIXRとPIXBとが交互に配置されている。そして、PIXRが属する列では、行方向(紙面縦方向)において、PIXRとPIXGとが交互に配置されている。その一方、PIXBが属する列では、行方向において、PIXBとPIXIRとが交互に配置されている。このように、1つの特定画素は、1つの第2画素に隣接していてよい。
【0064】
(生体情報取得装置2の効果)
以上の通り、固体撮像素子23Aは、特定画素としてIR画素と第1画素(例:R画素)とを有している。したがって、固体撮像素子23Aによって撮像された画像は、(i)IR画素に対応するIR画像成分(近赤外画像成分)と、(ii)第1画素に対応する第1画像成分(例:R画像成分)と、を含んでいる。
【0065】
上述の通り、IR波長帯におけるヘモグロビンの光吸収率は、第1波長帯における当該光吸収率よりも高い。そこで、生体情報導出部33は、IR画像成分を第1画像成分に基づいて補正してよい。次いで、生体情報導出部33は、補正後のIR画像成分にさらに基づいて容積脈波を導出してよい。これにより、さらに高精度な容積脈波を取得できる。
【0066】
一例として、生体情報導出部33は、注目フレームにおけるIR画像成分から、当該注目フレームにおける第1画像成分を減算してよい。IR画像成分と第1画像成分とが同時性を有しているので、この補正によれば、生体Hの体動に起因するノイズ成分をIR画像成分から効果的に低減できる。また、環境光の光量の変動に起因するノイズ成分をIR画像成分から効果的に低減することもできる。
【0067】
別の例として、注目フレームにおけるIR画像成分から、非発光時画像フレーム(例:参照フレーム)における第1画像成分を減算してよい。この補正によれば、環境光のスペクトル変動に起因するノイズ成分をIR画像成分から効果的に低減できる。
【0068】
また、固体撮像素子23Aは、第2画素(例:B画素およびG画素)をさらに有している。したがって、固体撮像素子23Aによって撮像された画像は、第2画素に対応する第2画像成分(例:B画像成分およびG画像成分)をさらに含んでいる。
【0069】
実施形態1における説明から明らかである通り、第2波長帯におけるヘモグロビンの光吸収率は、第1波長帯における当該光吸収率よりも高い。そこで、生体情報導出部33は、IR画像成分を第2画像成分に基づいてさらに補正してよい。次いで、生体情報導出部33は、補正後のIR画像成分にさらに基づいて容積脈波を導出してよい。
【0070】
発光時画像フレームにおける第2画像成分は、当該発光時画像フレームにおける第1画像成分に比べて容積脈波成分をより多く含んでいると期待される。そこで、一例として、生体情報導出部33は、注目フレームにおけるIR画像成分に対して、当該注目フレームにおける第2画像成分を加算してよい。あるいは、生体情報導出部33は、当該第2画像成分に所定の重み係数を乗じた値を、当該IR画像成分に対して加算してもよい。この補正によれば、容積脈波成分を増加させることができるので、より一層高精度な容積脈波を取得できる。
【0071】
人の皮膚に含まれるヘモグロビンの典型例としては、酸化ヘモグロビンを挙げることができる。酸化ヘモグロビンの光吸収率は、光の波長が短くなるにつれて高くなることが知られている。そこで、上述の重み係数は、例えば酸化ヘモグロビンの光吸収特性を踏まえて設定されてよい。
【0072】
また、人の皮膚にはメラニンが含まれている。しかしながら、皮膚におけるメラニンの含有率には個人差が大きいため、メラニンに由来するノイズ成分の波長帯を予め特定することは難しい。ただし、生体情報取得装置2によれば、生体情報取得装置1に比べて多様なタイプの画素を設けることにより、メラニンに由来するノイズ成分を、生体情報取得装置1に比べて効果的に低減できる、このことからも理解できる通り、生体情報取得装置2によれば、より一層高精度な生体情報を取得できる。
【0073】
情報処理装置30は、例えば任意の画像認識アルゴリズムを用いて画像中の皮膚領域を特定してよい。上述の通り、第1波長帯および第2波長帯は、概ね可視光波長帯に属する。したがって、固体撮像素子23Aが第1画素と第2画素とを有している場合には、第1画像成分および第2画像成分に基づいて、情報処理装置30に皮膚領域を容易に特定させることができる。
【0074】
さらに、実施形態2では、生体情報導出部33は、IR画像成分に対応するIR光由来生体情報(近赤外光由来生体情報)を、IR画像成分に基づき導出してよい。IR光は、人の皮膚に対して高い浸透性を有する。したがって、IR光由来生体情報は、皮膚の深い領域における生体情報の例である。このように、生体情報導出部33によれば、皮膚の深い領域における生体情報を選択的に取得することもできる。
【0075】
また、生体情報導出部33は、第1画像成分および第2画像成分に対応する非IR光由来生体情報(非近赤外光由来生体情報)を、第1画像成分および第2画像成分に基づき導出してよい。IR光よりも短波長の非IR光は、人の皮膚に対して、IR光よりも低い浸透性を有する。したがって、非IR光由来生体情報は、皮膚の浅い領域における生体情報の例である。このように、生体情報導出部33によれば、皮膚の浅い領域における生体情報を選択的に取得することもできる。
【0076】
さらに、生体情報導出部33は、IR光由来生体情報と非IR光由来生体情報とに基づいて、最終的な生体情報(総合的な生体情報)を導出してよい。言い換えれば、生体情報導出部33は、IR光由来生体情報と非IR光由来生体情報とを組み合わせることにより、最終的な生体情報(皮膚の深い領域および浅い領域におけるそれぞれの生体情報が統合された生体情報)を導出してよい。IR光由来生体情報と非IR光由来生体情報とを組み合わせる場合には、重み付けおよび平均化などの任意の数値処理がなされてもよい。
【0077】
IR光由来生体情報と非IR光由来生体情報とを組み合わせることにより、さらに高精度な生体情報を、最終的な生体情報として得ることができる。また、生体情報導出部33は、IR光由来生体情報と非IR光由来生体情報とを個別にユーザ(例:生体H)に提示してもよい。
【0078】
〔実施形態3〕
図9は、実施形態3の生体情報取得装置3における、受光装置20Bの一構成例について説明するための模式的な正面図である。
図9は、
図6と対になる図である。受光装置20Bにおける固体撮像素子を、固体撮像素子23Bと称する。そして、受光装置20Bにおける分光フィルタを分光フィルタ24Vと称し、受光装置20Bにおける導光部材を導光部材21Vと称する。
【0079】
図9の例における分光フィルタ24Vは、導光部材21Vに比べて生体側に位置している。このように、分光フィルタと導光部材との位置関係は、
図6の例に限定されない。そして、
図6の例とは異なり、分光フィルタ24Vは、青色光フィルタ24Bを含んでいなくともよい。このことから、固体撮像素子23Bは、PIXBを有していなくともよい。
【0080】
図9の例における導光部材21Vは、第1導光部材21VRと第2導光部材21VGと第3導光部材21VIRとを含んでいる。このように、
図9の例では、
図6の例とは異なり、各タイプの画素に対して個別の導光部材が設けられている。
図9の構成によれば、
図6の構成に比べて、導光部材を小型化できる。それゆえ、例えば、受光装置を薄型化できる。また、受光装置を軽量化することもできる。
【0081】
図9の例では、PIXR(第1画素)とPIXG(第2画素)とPIXIRとはそれぞれ、第1導光部材21VRと第2導光部材21VGと第3導光部材21VIRとに対応するように設けられていてよい。したがって、例えば、固体撮像素子23Bは、互いに離間している第1画素領域と第2画素領域とIR画素領域(近赤外画素領域)230IRとを有していてよい。
図9におけるR画素領域230Rは第1画素領域の例であり、G画素領域230Gは第2画素領域の例である。
【0082】
図9に示す通り、IR画素領域230IRは、互いに隣接している複数のPIXIRを有していてよい。同様に、第1画素領域は、互いに隣接している複数の第1画素を有していてよい。また、第2画素領域内は、互いに隣接している複数の第2画素を有していてよい。したがって、R画素領域230Rは、互いに隣接している複数のPIXRを有していてよい。また、G画素領域230Gは、互いに隣接している複数のPIXGを有していてよい。
【0083】
図9の例では、赤色光フィルタ24Rは、第1導光部材21VRに比べて生体側に位置している。そして、赤色光フィルタ24Rは、生体側から見た場合に、R画素領域230Rを覆っている。したがって、第1導光部材21VRは、赤色光フィルタ24Rによって分光されたR光をPIXRに導く。同様に、第2導光部材21VGは、緑色光フィルタ24Gによって分光されたG光を、PIXGに導く。第3導光部材21VIRは、近赤外光フィルタ24IRによって分光されたIR光を、PIXIRに導く。
【0084】
(実施形態3に関する補足)
当業者であれば明らかである通り、
図9の構成は単なる一例であることに留意されたい。したがって、例えば、固体撮像素子23Bは、PIXGに替えて、PIXBを有していてよい。この場合、分光フィルタ24Vは、緑色光フィルタ24Gに替えて、青色光フィルタ24Bを有していてよい。
【0085】
別の例として、固体撮像素子23Bは、PIXGとPIXBとの両方を有していてよい。この場合、分光フィルタ24Vは、青色光フィルタ24Bと緑色光フィルタ24Gとの両方を有していてよい。固体撮像素子23BがPIXGとPIXBとの両方を有している場合には、当該固体撮像素子23BがPIXGまたはPIXBの一方のみを有している場合に比べて、情報処理装置30によって皮膚領域をより高精度に判定できる。
【0086】
〔ソフトウェアによる実現例〕
生体情報取得装置1~3(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特に情報処理装置30に含まれる各部)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0087】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0088】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0089】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0090】
また、上記各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0091】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る生体情報取得装置は、生体の生体情報を非接触的に取得する生体情報取得装置であって、760nm以上かつ1100nm以下の近赤外波長帯において強度ピークを有する近赤外光を上記生体に向けて出射する近赤外光源と、上記生体から到来した光を受光することにより、上記生体の画像を撮像する固体撮像素子と、上記画像に基づき上記生体情報を導出する情報処理装置と、を備えており、上記固体撮像素子は、620nm以上かつ1100nm以下の特定波長帯において感度ピークを有する特定画素を含んでおり、上記情報処理装置は、(i)上記近赤外光源の発光期間において上記固体撮像素子によって撮像された発光時画像フレームと、(ii)上記近赤外光源の非発光期間において上記固体撮像素子によって撮像された非発光時画像フレームと、を繰り返し取得し、上記情報処理装置は、上記発光時画像フレームと上記非発光時画像フレームとに基づき上記生体情報を導出する。
【0092】
本発明の態様2に係る生体情報取得装置では、上記態様1において、複数の上記発光時画像フレームのうちの任意の1つを、発光時第1注目フレームと称し、上記発光時第1注目フレームの次の上記発光時画像フレームを、発光時第2注目フレームと称し、上記情報処理装置は、上記発光時第1注目フレームが撮像されたタイミングと上記発光時第2注目フレームが撮像されたタイミングとの間の上記非発光期間における、仮想的な発光時画像フレームの信号値を、上記発光時第1注目フレームの信号値および上記発光時第2注目フレームの信号値に基づいて補間してよく、上記仮想的な発光時画像フレームの信号値にさらに基づいて上記生体情報を導出してよい。
【0093】
本発明の態様3に係る生体情報取得装置では、上記態様1または2において、複数の上記非発光時画像フレームのうちの任意の1つを、非発光時第1注目フレームと称し、上記非発光時第1注目フレームの次の上記非発光時画像フレームを、非発光時第2注目フレームと称し、上記情報処理装置は、上記非発光時第1注目フレームが撮像されたタイミングと上記非発光時第2注目フレームが撮像されたタイミングとの間の上記発光期間における、仮想的な非発光時画像フレームの信号値を、上記非発光時第1注目フレームの信号値および上記非発光時第2注目フレームの信号値に基づいて補間してよく、上記仮想的な非発光時画像フレームの信号値にさらに基づいて上記生体情報を導出してよい。
【0094】
本発明の態様4に係る生体情報取得装置では、上記態様1から3のいずれか1つにおいて、上記特定画素は、(i)上記近赤外波長帯において感度ピークを有する近赤外画素と、(ii)620nm以上かつ740nm以下の第1波長帯において感度ピークを有する第1画素と、を含んでいてよく、上記画像は、(i)上記近赤外画素に対応する近赤外画像成分と、(ii)上記第1画素に対応する第1画像成分と、を含んでいてよく、上記情報処理装置は、上記近赤外画像成分を上記第1画像成分に基づいて補正してよく、補正後の上記近赤外画像成分にさらに基づいて上記生体情報を導出してよい。
【0095】
本発明の態様5に係る生体情報取得装置では、上記態様4において、上記固体撮像素子は、350nm以上かつ590nm以下の第2波長帯において感度ピークを有する第2画素をさらに含んでいてよく、上記画像は、上記第2画素に対応する第2画像成分をさらに含んでいてよく、上記情報処理装置は、上記近赤外画像成分を上記第2画像成分に基づいてさらに補正してよく、補正後の上記近赤外画像成分にさらに基づいて上記生体情報を導出してよい。
【0096】
本発明の態様6に係る生体情報取得装置では、上記態様5において、上記情報処理装置は、上記近赤外画像成分に対応する近赤外光由来生体情報を、上記近赤外画像成分に基づき導出してよい。
【0097】
本発明の態様7に係る生体情報取得装置では、上記態様5または6において、上記情報処理装置は、上記第1画像成分および上記第2画像成分に対応する非近赤外光由来生体情報を、上記第1画像成分および上記第2画像成分に基づき導出してよい。
【0098】
本発明の態様8に係る生体情報取得装置では、上記態様5から7のいずれか1つにおいて、1つの上記特定画素が1つの上記第2画素に隣接していてよい。
【0099】
本発明の態様9に係る生体情報取得装置では、上記態様5から8のいずれか1つにおいて、上記固体撮像素子は、互いに離間している近赤外画素領域と第1画素領域と第2画素領域とを有していてよく、上記近赤外画素領域は、互いに隣接している複数の上記近赤外画素を有していてよく、上記第1画素領域は、互いに隣接している複数の上記第1画素を有していてよく、上記第2画素領域は、互いに隣接している複数の上記第2画素を有していてよい。
【0100】
本発明の態様10に係る生体情報取得装置では、上記態様1から9のいずれか1つにおいて、上記情報処理装置は、上記生体情報として容積脈波を導出してよい。
【0101】
〔付記事項〕
本発明の一態様は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の一態様の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0102】
1、2、3 生体情報取得装置
10 発光装置
11 IR光源(近赤外光源)
20、20A、20B 受光装置
23、23A、23B 固体撮像素子
24、24V 分光フィルタ
30 情報処理装置
31 発光制御部
32 撮像制御部
33 生体情報導出部
230IR IR画素領域(近赤外画素領域)
230R R画素領域(第1画素領域)
230G G画素領域(第2画素領域)
PIXIR IR画素(近赤外画素,特定画素)
PIXR R画素(第1画素,特定画素)
PIXG G画素(第2画素)
PIXB B画素(第2画素)
H 生体